説明

ロボットハンド及びロボット装置

【課題】簡素に低コストで異種形状や寸法違いを含む多種の対象物を把持することが可能なロボットハンドを提供する。
【解決手段】第1の指部103と第2の指部104とを含む3以上の指部と、3以上の指部を開閉動作させる駆動部MTRと、第1の指部103と第2の指部104の開閉動作を行う向きを変更する指部移動機構と、を備え、指部移動機構は、ウオームホイール131と、モーターと、ウオーム133と、を備え、第1の指部103にはウオーム133の回転に連動してウオーム133の回転方向とは異なる方向に回転する第1歯車141が設けられ、第2の指部104にはウオーム133の回転に連動して第1歯車141の回転方向とは反対の方向に回転する第2歯車142が設けられており、第1の指部103と第2の指部104とは、モーターが回転することにより互いに近づく方向もしくは遠ざかる方向に回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンド及びロボット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットアーム等のロボット装置に取り付けて、対象物を把持又は開放することで所定の作業を行うロボットハンドが知られている。近年では、例えば工具を把持して部品の組み付け等の作業を行うと共に、微小な部品を把持して精度良く配置する多機能なロボットハンドが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1のロボットハンドでは、カムフォロア機構により、対象物を把持する3本の指部が開閉可能とされ、更に、3本の指部のうち2本の指部が同一平面上に形成された一対の周溝に案内されて対称に旋回可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−55532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術にあっては、カムフォロア機構により、指部の開閉動作と旋回動作とが制御されるので、異種形状や寸法違いを含む多種の対象物を把持することができると考えられる。
しかしながら、カムフォロア機構は構造が複雑であるため、カムフォロア機構を備えたロボットハンドの構成を実現することは容易ではなく、製造コストが高くなるという問題が生じる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、簡素に低コストで異種形状や寸法違いを含む多種の対象物を把持することが可能なロボットハンド及びロボット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のロボットハンドは、第1の指部と第2の指部とを含む3以上の指部と、前記3以上の指部を開閉動作させる駆動部と、前記第1の指部と前記第2の指部の開閉動作を行う向きを変更する指部移動機構と、を備え、前記指部移動機構は、ウオームホイールと、前記ウオームホイールを回転させるモーターと、前記ウオームホイールの回転に連動して前記ウオームホイールの回転方向とは異なる方向に回転するウオームと、を備え、前記第1の指部には前記ウオームの回転に連動して前記ウオームの回転方向とは異なる方向に回転する第1歯車が設けられ、前記第2の指部には前記ウオームの回転に連動して前記第1歯車の回転方向とは反対の方向に回転する第2歯車が設けられており、前記第1の指部と前記第2の指部とは、前記モーターが回転することにより互いに近づく方向もしくは遠ざかる方向に回転することを特徴とする。
【0008】
このロボットハンドによれば、モーターが回転することにより、3以上の指部のうち第1の指部と第2の指部の開閉動作を行う向きが変更されるので、対象物の形状に応じて各指部が対象物を把持する方向を変更することができる。例えば、対象物が球体の場合は、各指部が対象物を包み込むよう(各指部が対象物を中心に均等に配置されるよう)に変更することができる。一方、対象物が棒状部材の場合は、各指部が対象物を挟み込むよう(各指部が対象物を介して対向するよう)に変更することもできる。このような指部の開閉動作を行う向きの変更によって、球体や棒状部材を安定して把持することができる。したがって、異種形状や寸法違いを含む多種の対象物を把持することが可能なロボットハンドを提供することができる。また、ウオームホイールとウオームとを組み合わせた機構(ウオームギア機構)を採用しており、カムフォロア機構を必要としないので、簡素な構造とすることができ、低コスト化を図ることができる。
【0009】
前記ロボットハンドにおいて、前記第1歯車の回転軸と前記第2歯車の回転軸との間の間隔は一定の間隔に保持されていてもよい。
【0010】
このロボットハンドによれば、第1歯車が設けられた第1の指部、第2歯車が設けられた第2の指部がそれぞれ定位置で回転するので、第1歯車の回転軸と第2歯車の回転軸との間の間隔が変動する構成に比べて、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0011】
前記ロボットハンドにおいて、前記第1歯車と前記第2歯車とが同じ回転数で回転した場合に、前記第1歯車が回転して前記第1の指部が回転する回転角度と前記第2歯車が回転して前記第2の指部が回転する回転角度とは互いに等しくてもよい。
【0012】
このロボットハンドによれば、第1歯車が設けられた第1の指部、第2歯車が設けられた第2の指部が同一回転数において互いに同じ角度で回転するので、対象物の姿勢制御が容易となる。また、第1歯車と第2歯車とが同じ回転数で回転した場合に第1歯車の回転角度と第2歯車の回転角度とが異なる構成に比べて、装置構成を簡素化することができる。
【0013】
前記ロボットハンドにおいて、前記3以上の指部は3つの指部により構成されており、前記指部移動機構は、前記3つの指部のうち2つの指部の開閉動作を行う向きを変更してもよい。
【0014】
このロボットハンドによれば、モーターが回転することにより、3つの指部のうち2つの指部の開閉動作を行う向きが変更されるので、対象物の形状に応じて3つの指部が対象物を把持する方向を変更することができる。例えば、対象物が球体の場合は、3つの指部が対象物を包み込むよう(3つの指部が対象物を中心に均等に配置されるよう)に変更することができる。一方、対象物が棒状部材の場合は、3つの指部が対象物を挟み込むよう(2つの指部と1つの指部とが対象物を介して対向するよう)に変更することもできる。よって、指部の配置数を必要最小限に抑えつつ、球体や棒状部材を安定して把持することができる。
【0015】
前記ロボットハンドにおいて、前記3以上の指部は4つ以上の指部により構成されていてもよい。
【0016】
このロボットハンドによれば、4つ以上の指部で対象物を把持することになる。よって、対象物を所定の位置で安定して把持しやすくなる。また、重い物を把持することも容易となる。
【0017】
前記ロボットハンドにおいて、前記3以上の指部の一端部と連結する連結部を備え、前記駆動部は、前記連結部を駆動させることにより前記3以上の指部が同期して互いに近づくまたは遠ざかる方向に移動させてもよい。
【0018】
このロボットハンドによれば、3以上の指部で対象物を把持しやすくなる。よって、対象物を所定の位置で安定して把持しやすくなる。
【0019】
前記ロボットハンドにおいて、前記第1の指部の前記連結部と連結する部分には前記ウオームの回転に連動して前記第1歯車の回転方向と同じ方向に回転する第1連結部材が設けられ、前記第2の指部の前記連結部と連結する部分には前記ウオームの回転に連動して前記第2歯車の回転方向と同じ方向に回転する第2連結部材が設けられていてもよい。
【0020】
このロボットハンドによれば、第1の指部と第2の指部とが連結部に連結した状態で回転するので、第1の指部と第2の指部の開閉動作を行う向きの変更が安定する。
【0021】
前記ロボットハンドにおいて、前記連結部は、ねじ軸に取り付けられており、前記駆動部の駆動により前記ねじ軸に沿って移動し、前記第1の指部と前記第2の指部とは、前記連結部の移動に従って前記第1連結部材と前記第2連結部材とが移動することにより開閉動作を行ってもよい。
【0022】
このロボットハンドによれば、第1の指部と第2の指部の開閉動作を行う向きの変更と、第1の指部と第2の指部の開閉動作とを同時に行うことができる。例えば、連結部を上下方向に移動させつつ指部移動機構を駆動させることにより実現することが可能である。
【0023】
前記ロボットハンドにおいて、前記第1歯車の回転軸と前記第1連結部材の回転軸とは互いに同軸であり、前記第2歯車の回転軸と前記第2連結部材の回転軸とは互いに同軸であってもよい。
【0024】
このロボットハンドによれば、第1の指部と第2の指部の開閉動作を行う向きの変更が安定する。また、第1連結部材の回転軸及び第2連結部材の回転軸を新たに設けた構成に比べて、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0025】
前記ロボットハンドにおいて、前記駆動部は、前記3以上の指部を、互いに異なる方向から近づかせ、互いに異なる方向に遠ざけてもよい。
【0026】
このロボットハンドによれば、3以上の指部が互いに干渉することなく中心に向かって閉じることとなる。これにより、例えば微小な部品を把持する場合においても安定な把持が可能となる。
【0027】
前記ロボットハンドにおいて、前記3以上の指部のうち少なくとも1つの指部は、屈曲部を有する接触部材と、前記接触部材を前記屈曲部で回転可能に支持する支持部材と、前記接触部材と前記支持部材とを接続する弾性部材と、を備えていてもよい。
【0028】
このロボットハンドによれば、指部が対象物に接触する部分を、対象物の位置や形状に対して受動的に変化させることができる。これにより、指部の大部分において対象物との接触が可能となるため、安定して対象物を把持することができる。なお、対象物が所定位置から僅かにずれる場合であっても、指部が閉じていく過程で把持対象が所定位置に移動するので、結果的に安定した把持が可能となる。
【0029】
前記ロボットハンドにおいて、前記接触部材は前記指部が閉じる方向へ屈曲していてもよい。
【0030】
このロボットハンドによれば、接触部材が対象物に接触しやすくなる。よって、対象物を所定の位置で安定して把持しやすくなる。
【0031】
前記ロボットハンドにおいて、前記3以上の指部のうち少なくとも1つの指部は、前記接触部材が回転する場合の回転角度を規制するストッパーを有していてもよい。
【0032】
このロボットハンドによれば、弾性部材の機能を一時的に停止させることができる。これにより、駆動部の駆動力に応じて能動的に接触部材に発生する力を制御することができる。
【0033】
本発明に係るロボット装置は、上記のロボットハンドを備えたことを特徴とする。
【0034】
このロボット装置によれば、簡素に低コストで異種形状や寸法違いを含む多種の対象物を把持することが可能なロボット装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1実施形態に係るロボットハンドの全体構成を示す側面図である。
【図2】同、ロボットハンドの全体構成を示す斜視図である。
【図3】同、ロボットハンドの全体構成を示す平面図である。
【図4】同、ロボットハンドの連結部を示す部分拡大図である。
【図5】同、ロボットハンドの動作時の状態を示す図である。
【図6】同、ロボットハンドの動作時の状態を示す図である。
【図7】同、2つの指部の開閉動作を行う向きを変更する動作を示す平面図である。
【図8】同、ロボットハンドの動作時の状態を示す図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るロボット装置の全体構成を示す図である。
【図10】ロボットハンドの第1変形例を示す図である。
【図11】同、ロボットハンドの動作時の状態を示す図である。
【図12】同、ロボットハンドの動作時の状態を示す図である。
【図13】同、4つの指部の開閉動作を行う向きを変更する動作を示す平面図である。
【図14】同、4つの指部の開閉動作を行う向きを変更する動作を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0037】
以下の説明においては、図1中に示されたXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸が水平面に対して平行かつ互いに直交する方向に設定され、Z軸がX軸及びY軸のそれぞれと直交する方向(鉛直方向)に設定されている。
【0038】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るロボットハンドRHの全体構成を示す側面図である。図2は、ロボットハンドRHの全体構成を示す斜視図である。図3は、ロボットハンドRHの全体構成を示す平面図である。図4は、ロボットハンドRHの連結部CNを示す部分拡大図である。
図1に示すように、ロボットハンドRHは、3つの指部102〜104(第1の指部103、第2の指部104、第3の指部102)と、指部102〜104を連結する連結部CNと、連結部CNを駆動する駆動部ACTと、連結部CN及び駆動部ACTを収容するカバー109と、第1の指部103と第2の指部104の開閉動作を行う向きを変更する指部移動機構130と、を備えている。
【0039】
なお、「開閉動作を行う向き」とは、第1の指部103については、3つの指部102〜104の基端部(指部の先端と反対側の根本の部分、例えば歯車が取り付けられる部分)が配置される面と交差する面であって第1の指部103の中心線(第1の指部103の長手方向に沿う線)を含む面において当該第1の指部103が開く方向もしくは閉じる方向を意味し、第2の指部104については、3つの指部102〜104の基端部が配置される面と交差する面であって第2の指部104の中心線(第2の指部104の長手方向に沿う線)を含む面において当該第2の指部104が開く方向もしくは閉じる方向を意味する。
【0040】
このロボットハンドRHは、例えば工具や部品などの対象物を把持する産業用ロボットの把持装置として用いられる。なお、ロボットハンドRHとしては、産業ロボットに限られず、他の用途(宇宙関連、遊具など)に用いても構わない。
【0041】
指部102〜104は、対象物を把持する部分である。第1の指部103、第2の指部104は、それぞれ接触部材111と、関節部112と、支持部材120、弾性部材113と、固定部材122と、を備えている。第1の指部103の固定部材121の基端部には第1歯車141が取り付けられ、第2の指部104の固定部材121の基端部には第2歯車142が取り付けられている。第3の指部102は、対象物に接触する接触部材111と、関節部112と、接触部材111を回転可能に支持する支持部材120と、弾性部材113と、支持部材120を回転可能に支持する固定部材122と、を備えている。なお、第1の指部103、第2の指部104のそれぞれの固定部材121と第3の指部102の固定部材122とは形状が異なっている。
【0042】
接触部材111は、指部が閉じる方向へ屈曲している。接触部材111は、屈曲部111Cを有するように例えばL字型に形成された剛性部材である。例えば、接触部材111の屈曲部111Cには貫通穴(図示略)が形成されており、この貫通穴に両端が支持部材120に固定された軸状の関節部112が挿通された構成となっている。これにより、接触部材111は、関節部112を中心に回転可能になっている。なお、これに限らず、支持部材120の屈曲部111Cに重なる部分に貫通穴が形成されており、この貫通穴に中央部が接触部材111の屈曲部111Cに固体された軸状の関節部112の両端部が挿通された構成であっても、接触部材111は関節部112を中心に回転可能となる。
【0043】
接触部材111には、複数(2つ)の接触部(第1接触部111A及び第2接触部111B)が設けられている。第1接触部111A及び第2接触部111Bは、対象物に接触する部分である。第1接触部111Aは、接触部材111のうち屈曲部111Cから一方の端部までの間(屈曲部111Cに対して指部の先端側)に設けられている。第2接触部111Bは、接触部材111のうち屈曲部111Cから他方の端部までの間(屈曲部111Cに対して指部の基端側)に設けられている。
【0044】
接触部材111は、関節部112を中心として第1接触部111Aが対象物に接する方向に回転可能に設けられるとともに、関節部112を中心として第2接触部111Bが対象物に接する方向に回転可能に設けられている。
【0045】
接触部材111と支持部材120との間には、弾性部材113が接続されている。具体的には、接触部材111の第2接触部111Bには弾性部材113の一端が接続されており、支持部材120には弾性部材113の他端が接続されている。弾性部材113としては、例えばバネなどを用いることができる。
【0046】
支持部材120は、例えばL字状に形成された剛性部材である。支持部材120は、接触部材111を、関節部112を介して屈曲部111Cで回転可能に支持している。
【0047】
固定部材122は、第3の指部102の基端に位置する剛性部材である。固定部材122は、第3の指部102の支持部材120を、関節部114を介して回転可能に支持している。例えば、固定部材122の支持部材120と重なる部分には貫通穴(図示略)が形成されており、この貫通穴に両端が支持部材120に固定された軸状の関節部114が挿通された構成となっている。これにより、支持部材120は関節部114を中心に回転可能になっている。なお、これに限らず、支持部材120の固定部材122と重なる部分に貫通穴が形成されており、この貫通穴に中央部が固定部材122に固定された軸状の関節部114の両端部が挿通された構成であっても、支持部材120は関節部114を中心に回転可能となる。
【0048】
固定部材121は、第1の指部103(第2の指部104)の基端に位置する剛性部材である。固定部材121は、第1の指部103(第2の指部104)の支持部材120を、関節部114を介して回転可能に支持している。例えば、固定部材121の支持部材120と重なる部分には貫通穴(図示略)が形成されており、この貫通穴に両端が支持部材120に固定された軸状の関節部114が挿通された構成となっている。これにより、支持部材120は関節部114を中心に回転可能になっている。なお、これに限らず、支持部材120の固定部材121と重なる部分に貫通穴が形成されており、この貫通穴に中央部が固定部材121に固定された軸状の関節部114の両端部が挿通された構成であっても、支持部材120は関節部114を中心に回転可能となる。
【0049】
指部102〜104には、接触部材111の回転を規制するストッパー117が設けられている。ストッパー117は、例えば支持部材120から接触部材111の第1接触部111A側に伸びるように突出した部分である。ストッパー117は、例えば接触部材111が関節部112を基準に所定角度以上回転しないように回転角度(接触部材111が関節部112を中心として回転する場合の回転角度)を規制する機能を有している。例えば弾性部材113が自然長の場合においては、接触部材111(接触部111Aと反対側の面)がストッパー117に接触した状態になっている。
【0050】
連結部CNは、連結板123、連結部材124、関節部115,116及び連結基板105を有している。連結板123は、例えば板状の剛性部材である。2つの連結板123は、支持部材120を挟んで対向して配置されており、それぞれの一端が関節部115を介して支持部材120の基端部に取り付けられているとともに、それぞれの他端が関節部116を介して連結部材124に取り付けられている。
【0051】
連結板123の一端部は、関節部115の周りに回転可能になっている。例えば、支持部材120の連結板123と重なる部分には貫通穴(図示略)が形成されており、この貫通穴に両端が連結板123に固定された軸状の関節部115が挿通された構成となっている。なお、これに限らず、連結板123の支持部材120と重なる部分に貫通穴が形成されており、この貫通穴に中央部が支持部材120に固定された軸状の関節部115の両端部が挿通された構成であってもよい。
【0052】
一方、連結板123の他端部は、関節部116の周りに回転可能になっている。例えば、連結部材124の連結板123と重なる部分には貫通穴(図示略)が形成されており、この貫通穴に両端が連結板123に固定された軸状の関節部116が挿通された構成となっている。なお、これに限らず、連結板123の連結部材124と重なる部分に貫通穴が形成されており、この貫通穴に中央部が連結部材124に固定された軸状の関節部116の両端部が挿通された構成であってもよい。連結部材124の関節部116が設けられた側とは反対側の部分は、連結基板105とカバー143とを挿通する回転軸144に回転可能に取り付けられている。連結基板105は、駆動部ACTに接続されている。
【0053】
駆動部ACTは、連結基板105に含まれるボールネジのナット部に接続され、連結基板105を一体的に昇降させるボールネジのねじ軸107と、ねじ軸107を駆動する駆動部MTRと、駆動部MTRの回転を伝達するプーリー108とを有している。
【0054】
指部移動機構130は、ウオームホイール131と、ウオームホイール131を回転させるモーター132と、ウオームホイール131の回転に連動してウオームホイール131の回転方向とは異なる方向に回転するウオーム133と、を備えている。例えば、ウオームホイール131は、モーター132の回転によりZ軸周りに回転し、ウオーム133は、ウオームホイール131の回転に連動してウオームホイール131の回転軸(モーター132の回転軸)と直交する軸を中心に(X軸周りに)回転する。
【0055】
第1の指部103の基端部(第1の指部103の固定部材121の基端)には、ウオーム133の回転に連動してウオーム133の回転方向とは異なる方向に回転する第1歯車141が設けられている。第2の指部104の基端部(第2の指部104の固定部材121の基端)には、ウオーム133の回転に連動して第1歯車141の回転方向とは反対の方向に回転する第2歯車142が設けられている。例えば、第1の指部103は、ウオーム133の回転に連動してZ軸周りに回転し、第2の指部104は、ウオーム133の回転に連動してZ軸周りに回転するとともに第1の指部103の回転方向とは反対の方向に回転する。例えば、第2の指部104は、第1の指部103がZ軸を中心に右回りに回転したときはZ軸を中心に左回りに回転し、第1の指部103がZ軸を中心に左回りに回転したときはZ軸を中心に右回りに回転する。
【0056】
第1歯車141と第2歯車142とが同じ回転数で回転した場合に、第1歯車141が回転して第1の指部103が回転する回転角度と第2歯車142が回転して第2の指部104が回転する回転角度とは互いに等しい。つまり、第1の指部103と第2の指部104とは、同一回転数においてZ軸周りに互いに反対の方向に同じ角度だけ回転するようになっている。なお、第1の指部103と第2の指部104とでウオーム133のピッチを異ならせることで、第1歯車141と第2歯車142とが同じ回転数で回転した場合に、第1歯車141が回転して第1の指部103が回転する回転角度と第2歯車142が回転して第2の指部104が回転する回転角度とを互いに異ならせることもできる。この構成によれば、非対称物などの特殊な形状を把持することも可能となる。
【0057】
第1歯車141と第2歯車142との間の間隔は一定の間隔に保持されている。第1歯車141と第2歯車142とは、それぞれの固定部材121の基端部に固定された状態で、軸144を介して連結基板105とカバー143との間に挟まれている。
【0058】
例えば、連結基板105には軸144の一端が挿通されており、カバー143には軸144の他端が固定されている。第1歯車141、第2歯車142、及び固定部材121には軸144を挿入する貫通穴(図示略)が形成されている。これにより、第1歯車141、第2歯車142、及び固定部材121、つまり第1の指部103及び第2の指部104は、軸144の周りに回転可能になっている。
【0059】
ウオーム133には、螺旋状の溝133A0,133A1,133A2が形成されている。ウオーム133がウオームホイール131と噛み合う位置には溝133A0が形成されている。ウオーム133が第1歯車141と噛み合う位置には溝133A1が形成されている。ウオーム133が第2歯車142と噛み合う位置には溝133A2が形成されている。溝133A1と溝133A2とは互いに異なる形状となっている。例えば、溝133A1と溝133A2とはウオーム133の中心を基準に対称形状となっている。これにより、第1の指部103と第2の指部104とは、それぞれウオーム133の回転に連動してZ軸周りに互いに反対の方向に回転するようになっている。また、第1の指部103の回転角度と第2の指部104の回転角度が互いに等しくなるようになっている。
【0060】
図3に示すように、接触部材111は、所定位置Pの周辺に互いに所定の間隔を空けて配置されている。接触部材111は、例えば所定位置Pを中心とした同一円周上に配置されている。接触部材111は、所定位置Pに対してそれぞれ異なる方向から近づく。接触部材111は、第1接触部111A及び第2接触部111Bが所定位置Pに向くように構成されている。
【0061】
なお、図3では、接触部材111が所定位置Pを中心とした同一円周上に配置された構成を示しているが、これに限らず、他の構成としても構わない。また、図3では、接触部材111が、所定位置Pを中心とした同一円周上の異なる角度ずつずれた位置に配置されているが、この位置に限られることはない。例えば、接触部材111が所定位置Pを中心としてそれぞれ等しい角度だけ回転した位置に配置された構成としてもよい。これにより、球体の対象物を把持しやすくなる。
【0062】
図4に示すように、第1の指部103の連結部CNと連結する部分にはウオーム133の回転に連動して第1歯車141の回転方向と同じ方向に回転する連結部材(第1連結部材)124が設けられている。第2の指部104の連結部CNと連結する部分にはウオーム133の回転に連動して第2歯車142の回転方向と同じ方向に回転する連結部材(第2連結部材)124が設けられている。例えば、第1の指部103の連結部材124は、第1歯車141がZ軸を中心に右回りに回転したときはZ軸を中心に右回りに回転する。また、第2の指部104の連結部材124は、第2歯車142がZ軸を中心に左回りに回転したときはZ軸を中心に左回りに回転する。
【0063】
連結部CNは、駆動部MTRの駆動によりねじ軸107に沿って上下方向に移動する。第1の指部103と第2の指部104とは、連結部CNの上下方向の移動に従って各連結部材124が上下方向に移動することにより開閉動作を行うようになっている。
【0064】
第1歯車141の回転軸と第1の指部103の連結部材124の回転軸とは互いに同軸となっている。第2歯車142の回転軸と第2の指部104の連結部材124の回転軸とは互いに同軸となっている。
【0065】
第1の指部103の固定部材121と連結部材124との間、第2の指部104の固定部材121と連結部材124との間には、スペーサー125が設けられている。これにより、第1の指部103と第2の指部104の開閉動作を行う向きをスムーズに変更することが可能となる。
【0066】
スペーサー125の一端は連結基板105と固定されている。このため、第1の指部103の連結部材124と第2の指部104の連結部材124とは、連結基板105及びスペーサー125に挟まれた状態で移動する。つまり、第1の指部103の連結部材124と第2の指部104の連結部材124とは、連結部CNの上下方向の移動に従って、連結基板105及びスペーサー125と一体に上下方向に移動するようになっている。
【0067】
図5及び図6は、ロボットハンドRHの動作時の状態を示す図である。なお、図5はロボットハンドRHが対象物を把持していない状態、図6はロボットハンドRHが対象物として球体R1を把持している状態を示している。
【0068】
例えば、図5に示すように、駆動部MTRが回転するとプーリー108を介してボールネジ107が回転する。ボールネジのねじ軸107が回転すると、ボールネジのナット部を含む連結基板105が、ねじ軸107に対して相対的に上下に運動する。関節部116、連結板123、連結部材124は、連結基板105の上下運動に伴って上下に運動する(図2参照)。
【0069】
指部102〜104は、それぞれ支持部材120の基端部が連結板123を介して連結基板105に取り付けられている。このため、連結基板105が上下に運動すると、各指部102〜104は関節部114を中心に一体として回転する。例えば連結基板105が下方に移動すると、指部102〜104が所定位置P(図3参照)に近づく方向に同期して移動する。また、連結基板105が上方に移動すると、指部102〜104が所定位置Pから遠ざかる方向に同期して移動する。
【0070】
指部102〜104がそれぞれ所定位置Pに近づく方向に同期して移動する場合、例えば接触部材111の第2接触部111Bが対象物に接触すると、第2接触部111Bには関節部112を軸とするモーメントが発生する。第2接触部111Bの関節部112を軸とするモーメントが、弾性部材113の関節部112を軸とするモーメントよりも大きければ、接触部材111が関節部112を中心にして回転する。また、第2接触部111Bの関節部112を軸とするモーメントと弾性部材113の関節部112を軸とするモーメントとが釣り合えば、接触部材111の関節部112を中心とした回転が停止する。
【0071】
このように、連結基板105が昇降することにより、指部102〜104を同期させて所定位置Pに対して近づく又は遠ざかる方向に移動させることができる。例えば所定位置Pに対象物Rが配置されている場合には、連結基板105の昇降動作により、指部102〜104の各接触部材111によって少なくとも3点で対象物Rが把持されることになる。
【0072】
なお、接触部材111の回転運動がストッパー117によって規制された状態で指部102〜104を移動させる場合には、弾性部材113が機能しなくなる。このため、駆動部MTRが発生するトルクを制御することにより、各接触部材111の先端に発生する力を制御することが出来るようになるため、能動的に力を制御することが可能になる。
【0073】
また、図6に示すように、第1接触部111Aと第2接触部111Bとが同時に対象物R1に接触することも可能である。この場合、接触部材111の回転運動は、第1接触部111Aが対象物R1に接触することで発生するモーメント(第1接触部111Aの関節部112を軸とするモーメント)と、弾性部材113の関節部112を軸とするモーメントと、第2接触部111Bが対象物に接触することで発生するモーメント(第2接触部111Bの関節部112を軸とするモーメント)の合モーメントが0になると停止する。
【0074】
この時、対象物R1と各指部102〜104との間では、第1接触部111A上の点(各指部102〜104における3点)と、第2接触部111B上の点(各指部102〜104における3点)の、計6点で接触している。これにより、対象物R1と3本の指部102〜104との間の摩擦力が増大し、安定した把持が可能となる。
【0075】
図7は、ロボットハンドRHを構成する第1の指部103、第2の指部104の開閉動作を行う向きを変更する動作を示す平面図である。なお、図7においては、第1の指部103、第2の指部104が遠ざかった方向から近づく方向に回転する場合の動作を例に挙げて説明する。また、図7において、符号CL0は第1歯車141と第2歯車142との間の中心線、符号CL1は第1の指部103の中心線、符号CL2は第2の指部104の中心線、符号Pは所定位置、符号CPは第1の指部103の中心線CL1と第2の指部104の中心線CL2との交点である。
【0076】
例えば、図7(a)に示すように、モーター132の回転開始時においては、第1の指部103の先端と第2の指部104の先端とが互いに遠い位置に配置されている。このとき、第1歯車141が回転して第1の指部103が回転する回転角度θ1a(中心線CL0と中心線CL1とのなす角度)と第2歯車142が回転して第2の指部104が回転する回転角度θ2a(中心線CL0と中心線CL2とのなす角度)とは互いに等しくなっている(θ1a=θ2a)。
【0077】
図7(b)に示すように、モーター132を回転させるとウオームホイール131が同期してZ軸周りに回転し、ウオームホイール131のZ軸周りの回転に連動してウオーム133がX軸周りに回転する。すると、ウオーム133のX軸周りの回転に連動して第1歯車141がZ軸を中心に右回りに回転するとともに、ウオーム133のX軸周りの回転に連動して第2歯車142がZ軸を中心に左周りに回転する。このとき、第1歯車141が回転して第1の指部103が回転する回転角度θ1b、第2歯車142が回転して第2の指部104が回転する回転角度θ2bは、それぞれモーター132の回転開始時における回転角度θ1a、θ2aよりも小さくなっている(θ1b<θ1a、θ2b<θ2a)。また、回転角度θ1bと回転角度θ2bとは互いに等しくなっている(θ1b=θ2b)。また、交点CPと所定位置Pとの間の距離は、モーター132の回転開始時に比べて長くなっている。
【0078】
図7(c)に示すように、モーター132をさらに回転させると、ウオーム133のX軸周りの回転に連動して第1歯車141がZ軸を中心にさらに右回りに回転するとともに、ウオーム133のX軸周りの回転に連動して第2歯車142がZ軸を中心にさらに左周りに回転する。このとき、第1歯車141が回転して第1の指部103が回転する回転角度θ1c、第2歯車142が回転して第2の指部104が回転する回転角度θ2cは、それぞれモーター132の回転時における回転角度θ1b、θ2bよりも小さくなっている(θ1c<θ1b、θ2c<θ2b)。また、回転角度θ1cと回転角度θ2cとは互いに等しくなっている(θ1c=θ2c)。また、交点CPと所定位置Pとの間の距離は、モーター132の回転時に比べて長くなっている。
【0079】
このように、モーター132を回転させることにより、2つの指部103,104が互いに遠ざかった方向から近づく方向に回転するようになる。これにより、例えばモーター132の回転前においては所定位置Pを中心に各指部102〜104が等間隔に開いた状態にすることができ、モーター132の回転後においては第3の指部102と第1の指部103、第2の指部104とが所定位置Pを挟んで対向した状態(第1の指部103と第2の指部104とが閉じた状態)にすることができる。具体的には、モーター132の回転前においては回転角度θ1a,θ2aをそれぞれ60度に調整し、モーター132の回転後においては回転角度θ1a,θ2aをそれぞれ0度(交点CPと所定位置Pとの間の距離を無限遠)に調整する。なお、第1歯車141と第2歯車142との間の間隔は、モーター132の回転前後を通じて終始一定の間隔に保持されている。
【0080】
図8は、ロボットハンドRHの動作時の状態を示す図である。なお、図8はロボットハンドRHが対象物として円柱部材R2を把持している状態を示している。円柱部材R2としては、円柱状の工具(例えば、ドライバーなど)などが挙げられる。このような円柱部材R2を把持する場合には、指部102〜104の中心を通るように工具R2を配置させるようにする。また、第3の指部102と第1の指部103、第2の指部104とが所定位置Pを挟んで対向した状態(第1の指部103と第2の指部104とが閉じた状態)にすることにより、安定した保持が可能となる。
【0081】
本実施形態のロボットハンドRHによれば、モーター132が回転することにより、3つの指部のうち第1の指部103と第2の指部104の開閉動作を行う向きが変更されるので、対象物の形状に応じて各指部102〜104が対象物を把持する方向を変更することができる。例えば、対象物が球体の場合は、各指部102〜104が対象物を包み込むよう(各指部102〜104が対象物を中心に均等に配置されるよう)に変更することができる。一方、対象物が棒状部材の場合は、各指部102〜104が対象物を挟み込むよう(各指部102〜104が対象物を介して対向するよう)に変更することもできる。このような指部の開閉動作を行う向きの変更によって、球体や棒状部材を安定して把持することができる。したがって、異種形状や寸法違いを含む多種の対象物を把持することが可能なロボットハンドRHを提供することができる。また、ウオームホイール131とウオーム133とを組み合わせた機構(ウオームギア機構)を採用しており、カムフォロア機構を必要としないので、簡素な構造とすることができ、低コスト化を図ることができる。
【0082】
この構成によれば、第1歯車141が設けられた第1の指部103、第2歯車142が設けられた第2の指部104がそれぞれ定位置で回転するので、第1歯車の回転軸と第2歯車の回転軸との間の間隔が変動する構成に比べて、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0083】
この構成によれば、第1歯車141が設けられた第1の指部103、第2歯車142が設けられた第2の指部104が同一回転数において互いに同じ角度で回転するので、対象物の姿勢制御が容易となる。また、第1歯車と第2歯車とが同じ回転数で回転した場合に第1歯車の回転角度と第2歯車の回転角度とが異なる構成に比べて、装置構成を簡素化することができる。
【0084】
この構成によれば、モーター132が回転することにより、3つの指部102〜104のうち2つの指部103,104の開閉動作を行う向きが変更されるので、対象物の形状に応じて3つの指部102〜104が対象物を把持する方向を変更することができる。例えば、対象物が球体の場合は、3つの指部102〜104が対象物を包み込むよう(3つの指部102〜104が対象物を中心に均等に配置されるよう)に変更することができる。一方、対象物が棒状部材の場合は、3つの指部102〜104が対象物を挟み込むよう(2つの指部103,104と1つの指部102とが対象物を介して対向するよう)に変更することもできる。よって、指部の配置数を必要最小限に抑えつつ、球体や棒状部材を安定して把持することができる。
【0085】
この構成によれば、連結部CNを備え、駆動部MTRが連結部CNを駆動させることにより3つの指部102〜104が同期して互いに近づくまたは遠ざかる方向に移動させるので、3つの指部102〜104で対象物を把持しやすくなる。よって、対象物を所定の位置で安定して把持しやすくなる。
【0086】
この構成によれば、第1の指部103と第2の指部104とが連結部CNに連結した状態で回転するので、第1の指部103と第2の指部104の開閉動作を行う向きの変更が安定する。
【0087】
この構成によれば、第1の指部103と第2の指部104の開閉動作を行う向きの変更と、第1の指部103と第2の指部104の開閉動作とを同時に行うことができる。例えば、連結部CNを上下方向に移動させつつ指部移動機構130を駆動させることにより実現することが可能である。
【0088】
この構成によれば、各歯車の回転軸と各連結部材の回転軸が同軸であるので、第1の指部103と第2の指部104の開閉動作を行う向きの変更が安定する。また、第1連結部材の回転軸及び第2連結部材の回転軸を新たに設けた構成に比べて、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0089】
この構成によれば、駆動部MTRが3つの指部102〜104を互いに異なる方向から近づかせ、互いに異なる方向に遠ざけるので、3つの指部102〜104が互いに干渉することなく中心に向かって閉じることとなる。これにより、例えば微小な部品を把持する場合においても安定な把持が可能となる。
【0090】
この構成によれば、各指部102〜104が接触部材111と支持部材120と弾性部材113とを備えているので、各指部102〜104が対象物に接触する部分を、対象物の位置や形状に対して受動的に変化させることができる。これにより、各指部102〜104の大部分において対象物との接触が可能となるため、安定して対象物を把持することができる。なお、対象物が所定位置から僅かにずれる場合であっても、各指部102〜104が閉じていく過程で把持対象が所定位置Pに移動するので、結果的に安定した把持が可能となる。
【0091】
この構成によれば、接触部材111が指部が閉じる方向へ屈曲しているので、接触部材111が対象物に接触しやすくなる。よって、対象物を所定の位置で安定して把持しやすくなる。
【0092】
この構成によれば、各指部102〜104がストッパー117を有するので、弾性部材113の機能を一時的に停止させることができる。これにより、駆動部MTRの駆動力に応じて能動的に接触部材111に発生する力を制御することができる。
【0093】
なお、本実施形態では、3つの指部102〜104のうち2つの指部103,104の開閉動作を行う向きが指部移動機構130によって変更される構成となっているが、これに限らない。例えば、3つの指部102〜104のすべての指部の開閉動作を行う向きが指部移動機構130によって変更される構成となっていてもよい。具体的には、第3の指部にもウオームの回転に連動してウオームの回転方向とは異なる方向に回転する歯車を設けることにより実現することができる。
【0094】
また、本実施形態では、各指部102〜104がストッパー117を有する構成としたが、これに限らない。例えば、指部102〜104にストッパー117が設けられないようにした構成であってもよい。また、3以上の指部のうち一部の指部のみにストッパー117が設けられない構成であってもよい。このような構成によれば、ストッパー117を設けない分だけ構成部品が削減されるため、低コスト化を図ることができる。
【0095】
(第2実施形態)
図9は、本実施形態に係るロボット装置RAの構成を示す斜視図である。
図9に示すように、ロボット装置RAは、例えば産業用ロボットアームとして用いられる。ロボット装置RAは、取付部ATC、第一関節10、第二関節20、第三関節30、第四関節40、第五関節50及び第六関節60を有している。
【0096】
取付部ATCは、例えば床部や壁部、天井部などに取り付けられる部分である。第一関節10〜第六関節60は、例えば取付部ATCから順に直列に接続されている。第一関節10〜第六関節60は、例えば隣接する関節との間で回転軸を介して接続されており、互いにその回転軸を中心に回転可能に設けられている。第一関節10〜第六関節60のそれぞれが回転可能に設けられているため、それぞれの関節を適宜回転させることで、ロボットアームRA全体としての複合的な動作が可能になっている。
【0097】
第六関節60は、ロボット装置RAの先端部分である。この第六関節60の先端部に、上記実施形態に記載のロボットハンドRHが取り付けられている。
【0098】
本実施形態のロボット装置RAによれば、簡素に低コストで異種形状や寸法違いを含む多種の対象物を把持することが可能なロボット装置RAを提供することができる。
【0099】
(変形例1)
図10は、本発明に係るロボットハンドの第1変形例を示す図である。図10(a)は、本変形例に係るロボットハンドRH1を示す平面図である。図10(b)は、本変形例に係るロボットハンドRH1を示す側面図である。なお、図10においては便宜上指部移動機構の図示を省略している。
【0100】
本変形例のロボットハンドRH1は、指部が4つ設けられている点で、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと異なる。その他の構成は、上述の第1実施形態で説明したロボットハンドRHと同様であるので詳細な説明は省略する。
【0101】
図10に示すように、4つの指部201〜204は、所定位置Pを向くように配置されている。4つの指部201〜204は、所定位置Pに対して90度ずつ回転させた位置、すなわち、正方形の4つの頂点の位置に配置された構成となっている。なお、4つの指部201〜204の配置構成は、これに限らず、例えば長方形の4つの頂点の位置に配置された構成としても構わないし、他の四角形(例えば、平行四辺形、ひし形、台形など)の頂点の位置に配置された構成であっても構わない。
【0102】
本変形例のロボットハンドRH1によれば、4つの指部201〜204で対象物を把持することになる。よって、対象物を所定の位置で安定して把持しやすくなる。また、重い物を把持することも容易となる。さらに、細い物、薄い物及び弾性部材を安定して把持しやすくなる。これに対して、3つの指部の場合は、細い物、薄い物及び弾性部材を把持したときに対象物が撓んでしまうことがある。また、3つの指部の場合は全く異なる部分を3点で支持する構成であるが、4つの指部の場合は、対になる2箇所だけで支持する構成であるため、3点で支持することができない形状(例えば、中央が極端にくびれて細い段つきシャフトなど)をも把持することができる。
【0103】
図11及び図12は、ロボットハンドRH1の動作時の状態を示す図である。なお、図11はロボットハンドRH1が対象物として球体R1を把持している状態を示している。図12はロボットハンドRH1が対象物として円柱部材R2を把持している状態を示している。円柱部材R2としては、円柱状の工具(例えば、ドライバーなど)、円柱状の材料(例えば、細い線材、ゴムや樹脂の配管チューブ、電線など)が挙げられる。なお、円柱部材に替えて板状部材(例えば、薄板など)でもよい。
【0104】
図11に示すように、球体R1を把持する場合には、4つの指部201〜204を、所定位置Pに対して90度ずつ回転させた位置に配置させるようにする。第1の指部201と第3の指部203、第2の指部202と第4の指部204とが所定位置Pを挟んで対向した状態にすることにより、安定した保持が可能となる。
【0105】
図12に示すように、円柱部材R2を把持する場合には、指部201〜204の中心を通るように工具R2を配置させるようにする。第1の指部201と第4の指部204、第2の指部202と第3の指部203とが所定位置Pを挟んで対向した状態(第1の指部201と第2の指部202とが閉じた状態であり第3の指部203と第4の指部204とが閉じた状態)にすることにより、安定した保持が可能となる。
【0106】
図13は、ロボットハンドRH1を構成する第1の指部201、第2の指部202、第3の指部203、第4の指部204の開閉動作を行う向きを変更する動作(4指同時駆動)を示す平面図である。なお、図13においては、第1の指部201、第2の指部202(第3の指部203、第4の指部204)が遠ざかった方向から近づく方向に回転する場合の動作を例に挙げて説明する。
【0107】
例えば、図13(a)に示すように、モーターの回転開始時においては、第1の指部201の先端と第2の指部202の先端とが互いに遠い位置に配置されている。一方、第3の指部203の先端と第4の指部204の先端とも互いに遠い位置に配置されている。
【0108】
図13(b)に示すように、モーターを回転させるとウオームホイール231が回転し、ウオームホイール231の回転に連動してウオーム233が回転する。すると、ウオーム233の回転に連動して第1歯車241が回転軸を中心に右回りに回転するとともに、ウオーム233の回転に連動して第2歯車242が回転軸を中心に左周りに回転する。一方、ウオーム233の回転に連動して第3歯車243が回転軸を中心に右回りに回転するとともに、ウオーム233の回転に連動して第4歯車244が回転軸を中心に左周りに回転する。
【0109】
図13(c)に示すように、モーターをさらに回転させると、ウオーム233の回転に連動して第1歯車241が回転軸を中心にさらに右回りに回転するとともに、ウオーム233の回転に連動して第2歯車242がZ軸を中心にさらに左周りに回転する。一方、ウオーム233の回転に連動して第3歯車243が回転軸を中心にさらに右回りに回転するとともに、ウオーム233の回転に連動して第4歯車244がZ軸を中心にさらに左周りに回転する。
【0110】
このように、モーターを回転させることにより、2つの指部201,202(2つの指部203,204)が互いに遠ざかった方向から近づく方向に回転するようになる。これにより、例えばモーターの回転前においては所定位置Pを中心に各指部201〜204が等間隔に開いた状態にすることができ、モーターの回転後においては第1の指部201と第4の指部204とが所定位置Pを挟んで対向した状態、第2の指部202と第3の指部203とが所定位置Pを挟んで対向した状態(第1の指部201と第2の指部202とが閉じた状態、第3の指部203と第4の指部204とが閉じた状態)にすることができる。
【0111】
図14は、ロボットハンドRH1を構成する第1の指部201、第2の指部202、第3の指部203、第4の指部204の開閉動作を行う向きを変更する動作(2指ごとに独立駆動)を示す平面図である。
【0112】
図14に示すように、第1の指部201及び第2の指部202を第1ウオームホイール231A及び第1ウオーム233Aにより回転させ、第3の指部203及び第4の指部204を第2ウオームホイール231B及び第2ウオーム233Bにより回転させる構成とすることもできる。これにより、第1の指部201及び第2の指部202、第3の指部203及び第4の指部204をそれぞれ別個に独立して駆動させることができる。
【0113】
なお、本変形例では、ロボットハンドRH1が4つの指部201〜204を備える構成を例に挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ロボットハンドが5つ以上の指部を備える構成となっていてもよい。この構成によれば、さらに重い物を把持することが容易となる。
【符号の説明】
【0114】
103…第1の指部、104…第2の指部、107…ねじ軸、111…接触部材、111C…屈曲部、113…弾性部材、117…ストッパー、120…支持部材、124…第1連結部材、第2連結部材、130…指部移動機構、131…ウオームホイール、132…モーター、133…ウオーム、141…第1歯車、142…第2歯車、144…回転軸、CN…連結部、MTR…駆動部、R1,R2…対象物、RA…ロボット装置、RH,RH1…ロボットハンド、θ1a,θ1b,θ1c…第1の指部が回転する回転角度、θ2a,θ2b,θ2c…第2の指部が回転する角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の指部と第2の指部とを含む3以上の指部と、
前記3以上の指部を開閉動作させる駆動部と、
前記第1の指部と前記第2の指部の開閉動作を行う向きを変更する指部移動機構と、を備え、
前記指部移動機構は、
ウオームホイールと、
前記ウオームホイールを回転させるモーターと、
前記ウオームホイールの回転に連動して前記ウオームホイールの回転方向とは異なる方向に回転するウオームと、を備え、
前記第1の指部には前記ウオームの回転に連動して前記ウオームの回転方向とは異なる方向に回転する第1歯車が設けられ、前記第2の指部には前記ウオームの回転に連動して前記第1歯車の回転方向とは反対の方向に回転する第2歯車が設けられており、
前記第1の指部と前記第2の指部とは、前記モーターが回転することにより互いに近づく方向もしくは遠ざかる方向に回転することを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記第1歯車の回転軸と前記第2歯車の回転軸との間の間隔は一定の間隔に保持されていることを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記第1歯車と前記第2歯車とが同じ回転数で回転した場合に、前記第1歯車が回転して前記第1の指部が回転する回転角度と前記第2歯車が回転して前記第2の指部が回転する回転角度とは互いに等しいことを特徴とする請求項1または2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記3以上の指部は3つの指部により構成されており、
前記指部移動機構は、前記3つの指部のうち2つの指部の開閉動作を行う向きを変更することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項5】
前記3以上の指部は4つ以上の指部により構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項6】
前記3以上の指部の一端部と連結する連結部を備え、
前記駆動部は、前記連結部を駆動させることにより前記3以上の指部を同期させて互いに近づくまたは遠ざかる方向に移動させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記第1の指部の前記連結部と連結する部分には前記ウオームの回転に連動して前記第1歯車の回転方向と同じ方向に回転する第1連結部材が設けられ、前記第2の指部の前記連結部と連結する部分には前記ウオームの回転に連動して前記第2歯車の回転方向と同じ方向に回転する第2連結部材が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のロボットハンド。
【請求項8】
前記連結部は、ねじ軸に取り付けられており、前記駆動部の駆動により前記ねじ軸に沿って移動し、
前記第1の指部と前記第2の指部とは、前記連結部の移動に従って前記第1連結部材と前記第2連結部材とが移動することにより開閉動作を行うことを特徴とする請求項7に記載のロボットハンド。
【請求項9】
前記第1歯車の回転軸と前記第1連結部材の回転軸とは互いに同軸であり、
前記第2歯車の回転軸と前記第2連結部材の回転軸とは互いに同軸であることを特徴とする請求項7または8に記載のロボットハンド。
【請求項10】
前記駆動部は、前記3以上の指部を、互いに異なる方向から近づかせ、互いに異なる方向に遠ざけることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項11】
前記3以上の指部のうち少なくとも1つの指部は、
屈曲部を有する接触部材と、
前記接触部材を前記屈曲部で回転可能に支持する支持部材と、
前記接触部材と前記支持部材とを接続する弾性部材と、
を備えていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のロボットハンド。
【請求項12】
前記接触部材は前記指部が閉じる方向へ屈曲していることを特徴とする請求項11に記載のロボットハンド。
【請求項13】
前記3以上の指部のうち少なくとも1つの指部は、前記接触部材が回転する場合の回転角度を規制するストッパーを有することを特徴とする請求項11または12に記載のロボットハンド。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のロボットハンドを備えたロボット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−166297(P2012−166297A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28574(P2011−28574)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】