説明

ロボットハンド

【課題】種々の大きさや形状の部品を十分な把持力で把持することが可能なロボットハン
ドを提供する。
【解決手段】互いの距離を変更可能に設けられた複数の指部の間で対象物を把持する動作
を行うロボットハンドにおいて、複数の指部の間に、指部の根元側と指部の先端側とを結
ぶ方向に沿って移動可能な掌部を設けておく。こうすれば、複数の指部の間に対象物を把
持するとともに、把持した対象物に掌部を当接させることができる。従って、対象物と複
数の指部との間に生ずる摩擦力と、掌部が対象物を支持する力とによって、種々の大きさ
や形状の対象物を十分な把持力で把持することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を掴むことが可能なロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のロボット技術の進歩により、工業製品の製造現場では多くの産業用ロボットが使
用されるようになっている。例えば、工業製品の組み立てラインでは、ラインに沿って複
数台の産業用ロボットが設置され、ライン上を流れる製造中の製品に対して、ロボットが
自動で各種の部品を組み付けることで、生産効率を向上させることが広く行われている。
あるいは、このようなロボットが組み付ける部品をラインサイドまで搬送する際にも、ロ
ボットを用いて部品を搬送することで、工場全体としての生産効率を向上させることも広
く行われている。
【0003】
このように組み立てライン等で用いられる産業用ロボットは、部品を搬送したり、搬送
してきた部品を製品に組み付けたりする作業において、様々な大きさや形状の対象物を取
り扱う。このため、ロボットが対象物を把持する部分(ロボットハンド)には、様々な対
象物に対応可能な高い汎用性が要求される。そこで、種々の大きさや形状の部品を把持可
能なロボットハンドが提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−117677号公報
【特許文献2】特公平6−30862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、提案されているロボットハンドは、種々の大きさや形状の部品を十分な把持力
で把持することが難しいという問題があった。これは次の理由による。先ず、これらのロ
ボットハンドは、ほぼ向かい合わせに設けた複数本の指部で、対象物を挟むことによって
把持している。従って、対象物の大きさに合わせて指部の間の距離を変更することで、種
々の大きさ(あるいは形状)の対象物を把持することができるが、対象物は指部と指部と
の間に挟まれた状態で、接触部分での摩擦力によって保持されているに過ぎない。もちろ
ん、指部を対象物に強く押し付ければ摩擦力を増やすことができるが、対象物の表面に傷
を付けてしまう恐れがあるため限界がある。結局、対象物を十分な力で把持することがで
きない。その結果、たとえば小さな部品を把持して何かに組み付ける作業をする場合、組
み付ける際に部品が受ける反力で、把持した部品がずれてしまい、組み付けられなくなっ
てしまうなどの種々の問題が生じ得る。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題の少なくとも一部を解決するためになさ
れたものであり、種々の大きさや形状の部品を十分な把持力で把持することが可能なロボ
ットハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明のロボットハンドは次の構成
を採用した。すなわち、
互いの距離を変更可能に設けられた複数の指部の間で対象物を把持する動作を行うロボ
ットハンドにおいて、
前記複数の指部の間には、該複数の指部の根元側と該複数の指部の先端側とを結ぶ方向
に沿って移動可能な掌部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
このような構成を有する本発明のロボットハンドにおいては、対象物の大きさや形状に
合わせて複数の指部の間の距離を変更して対象物を把持するとともに、指部の先端側に掌
部を移動させて、掌部を対象物に当接させることができる。従って、対象物と複数の指部
との間に生ずる摩擦力によって対象物を保持するだけでなく、掌部によって指部の根元側
から対象物を支持しておくことができる。その結果、種々の大きさや形状の対象物を十分
な把持力で把持することが可能となる。
【0009】
また、上述したように、本発明のロボットハンドで把持した対象物は掌部によって指部
の根元側から支持されるので、例えば対象物を把持して何かに組み付ける作業をする場合
に対象物が反力を受けても、対象物が把持した位置から指部の根元側にずれてしまうこと
もない。従って、ロボットハンドで把持した対象物を確実に組み付けることが可能である

【0010】
また、上述した本発明のロボットハンドにおいては、複数の指部の動きとは独立して掌
部を移動可能としてもよい。こうすれば、種々の大きさや形状の対象物に対して複数の指
部と掌部とを確実に当接させて対象物を把持することができるので、ロボットハンドの汎
用性を高めることが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明のロボットハンドにおいては、複数の指部の先端に対して少なく
とも面位置の位置まで掌部を移動可能としてもよい。
【0012】
こうすれば、指部の先端の位置に掌部を露出させることができる。従って、例えばロボ
ットハンドでの組み立て作業時に、工業製品などの被対象物に位置決めされた対象物を掌
部で押し付けることにより、対象物を圧入する作業を行うことが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明のロボットハンドにおいては、複数の指部の動きと連動して掌部
を移動可能としてもよい。こうすれば、例えば複数の指部の間の距離が接近すると掌部が
指部の先端側に移動し、また複数の指部の間の距離が離間すると、掌部が指部の根元側に
移動するように設定しておくことで、種々の大きさや形状の対象物を把持することが可能
である。また、複数の指部の動きと掌部の動きとを一括して制御することにより、ロボッ
トハンドの制御を簡単にすることが可能となる。
【0014】
また、上述した本発明のロボットハンドにおいては、対象物を把持する際に対象物と当
接する把持面を複数の指部に形成しておき、互いに対向する指部の把持面の間隔が掌部側
から指部の先端に向かって末狭まりとなる部分を把持面に設けることとしてもよい。
【0015】
こうすれば、掌部と指部の把持面が末狭まりとなった部分とによって対象物を挟むよう
にして把持することができる。その結果、種々の大きさや形状の対象物をロボットハンド
の内部に確実に固定しておくことが可能である。
【0016】
また、上述した本発明のロボットハンドは、何れもたいへん構造が単純で、小型化およ
び軽量化が容易である。従って、これら本発明のロボットハンドを用いてロボットを構成
すれば、小型で高性能なロボットを構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施例のロボットハンドの構成を示す説明図である。
【図2】ロボットハンドの掌部の動きを示す説明図である。
【図3】本実施例のロボットハンドが対象物を把持する様子を示した説明図である。
【図4】本実施例のロボットハンドが把持した対象物を組み付ける場合の有利な効果を示した説明図である。
【図5】本実施例のロボットハンドの他の利用方法を示した説明図である。
【図6】変形例のロボットハンドの構成を示す説明図である。
【図7】ロボットハンドを備えたロボットを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施
例を説明する。
A.本実施例のロボットハンドの構成:
B.本実施例のロボットハンドの把持動作:
C.変形例:
【0019】
A.本実施例のロボットハンドの構成 :
図1は、本実施例のロボットハンド10の構成を示した説明図である。図示されるよう
に、本実施例のロボットハンド10は、略矩形の板状部材であってロボットハンド10の
土台部分を構成するハンド基部100や、ハンド基部100の上面に取り付けられた指部
ユニット110や、指部ユニット110の中央の位置に設けられた掌部130などから構
成される。
【0020】
指部ユニット110には、4本の指部112(指部112a,112b,112c,1
12d)が設けられており、これら指部112は、ハンド基部100の四隅の位置に配置
されるとともに、隣接する指部112どうしが根元の部分で互いに接続されて一体に構成
されている。尚、以下の説明において特に必要がない場合には、配置される位置によって
指部112を区別することなく指部112と表記することとする。
【0021】
上述した4本の指部112のうち、紙面手前側の2本の指部(指部112a,112d
)の間、および紙面奥側の2本の指部(指部112b,112c)の間には、略箱形のガ
イド部120がそれぞれ設けられており、ガイド部120に隣接する指部112の各々か
らは、異なる高さに設けられたガイド軸122がガイド部120に向かって延設されてい
る。そして、ガイド部120の対応する位置に設けられたガイド穴をそれぞれのガイド軸
122が貫通することにより、ガイド部120に隣接する2本の指部(指部112aと指
部112d、または指部112bと指部112c)が、互いに接近あるいは離間する方向
に摺動可能に接続されている。
【0022】
また、紙面右手前の指部112aと紙面右奥の指部112bとは、連結部材114で連
結されて一体となっており、紙面左手前の指部112dと紙面左奥の指部112cも連結
されて一体となっている。このように構成される本実施例の指部ユニット110では、上
述したガイド部120に内蔵された図示しないアクチュエーターを所定の方向に駆動する
と、図1(a)に示されるように、ロボットハンド10の紙面右側の指部(指部112a
,112b)、および紙面左側の指部(指部112c,112d)のそれぞれが一体とな
った状態で、右側の指部112と左側の指部112とが互いに離間する方向に移動する。
また、このように左右の指部112が互いに離間した状態(図1(a)の状態)で、ガイ
ド部120内のアクチュエーター(図示せず)を上述した所定の方向とは逆方向に駆動す
ると、図1(b)に示されるように、右側の指部112および左側の指部112のそれぞ
れが一体となって、互いに接近する方向に移動する。
【0023】
このように本実施例のロボットハンド10では、向かい合う左右の指部112を接近あ
るいは離間させることで、把持しようとする対象物の大きさや形状に合わせて指部112
の間の距離を変更することができる。また、これに加えて、本実施例のロボットハンド1
0では、指部ユニット110の中央の位置に設けた掌部130を次のように移動させるこ
とが可能となっている。
【0024】
図2は、本実施例のロボットハンド10の掌部130の動きを示した説明図である。図
2には、図1に示したロボットハンド10を手前側から見たときの様子が示されている。
図2(a)に示されるように、ロボットハンド10の掌部130は、対象物を把持してい
ない状態では、掌部130が指部112の根元のあたりに収容されており、掌部130の
裏面(指部112の根元側の面)には、ハンド基部100側から掌部130に向かって設
けられたボールねじ132が、回転可能な状態で取り付けられている。
【0025】
また、ボールねじ132は、掌部130と当接する側とは反対側で図示しない駆動モー
ターに接続されている。そして、駆動モーターによってボールねじ132を回転させるこ
とにより、掌部130を指部112の先端の方向に移動させたり(図2(b)を参照)、
掌部130を指部112の根元側に移動させたり(図2(a)を参照)することが可能と
なっている。このように掌部130を移動可能とすることで、本実施例のロボットハンド
10は、従来のロボットハンドに比べて十分な把持力で対象物を把持することが可能とな
る。以下ではこの点について説明する。
【0026】
B.本実施例のロボットハンドの把持動作 :
図3は、本実施例のロボットハンド10が対象物を把持する様子を示した説明図である
。尚、図3(a)には、参考として従来のロボットハンド20によって対象物Wを把持す
る様子が示されており、また、図3(b)および図3(c)には、本実施例のロボットハ
ンド10によって対象物Wを把持する様子が示されている。
【0027】
図3(a)に示した従来のロボットハンド20には、掌部230の上面に、向かい合う
一対の指部212が設けられており、これらの指部212は、図示しない駆動機構によっ
て互いに接近あるいは離間させることが可能となっている。このような従来のロボットハ
ンド20では、図3(a)に示されるように、指部212の間に対象物Wを挟むことによ
り対象物Wを把持する。このとき、対象物Wは、対象物Wと指部212との接触部分に生
ずる摩擦力によって指部212の間に保持されている。
【0028】
一方、本実施例のロボットハンド10を用いて対象物Wを把持する場合、図3(b)に
示されるように、先ず左右の指部112を接近させることにより、対象物Wと向かい合う
指部112の内側の面(把持面113)で対象物Wを挟み、この状態で掌部130を指部
112の先端の方向に移動させて、掌部130と対象物Wとを当接させる。また、図3(
b)に示した対象物Wよりも小さな対象物Wをロボットハンド10で把持する場合には、
図3(c)に示されるように、左右の指部112の把持面113をさらに接近させて小さ
な対象物Wを挟んだ状態で、掌部130をさらに指部112の先端側に移動させて小さな
対象物Wに当接させる。
【0029】
尚、本実施例のロボットハンド10では、上述したように、指部112で対象物Wを挟
んだ後に、掌部130を対象物Wに当接させるものと説明したが、掌部130を対象物W
に当接させてから指部112で対象物を挟んでもよいし、指部112で対象物Wを挟む動
作と、掌部130を対象物Wに当接させる動作を同時に行うこととしてもよい。
【0030】
このように本実施例のロボットハンド10は、指部112の根元側と先端側との間で掌
部130を移動可能とすることで、対象物Wの大きさ(あるいは形状)に関係なく、対象
物Wに掌部130を当接させることができる。これにより、対象物Wに対して、指部11
2との間に生ずる摩擦力に加えて、掌部130によって指部112の根元側から対象物W
を支持する力を作用させることができる。その結果、上述した従来のロボットハンド20
のように、対象物Wと指部212との接触部分に生ずる摩擦力によって対象物Wを保持す
る場合(図3(a)を参照)と比較して、種々の大きさや形状の対象物Wを十分な把持力
で把持することが可能となる。
【0031】
また、本実施例のロボットハンド10の指部112には、掌部130から見て、指部1
12の先端に向かって把持面113が末狭まりとなる部分が設けられている。このような
部分を指部112に設けておくことにより、対象物Wを、掌部130と把持面113の末
狭まりの部分とによって挟むようにして把持することができる。従って、種々の大きさや
形状の対象物Wをロボットハンド10の内部に確実に固定しておくことが可能である。
【0032】
ここで、従来のロボットハンド20のように対象物Wを指部212で挟んで把持する場
合、指部212を対象物Wに強く押し付けて摩擦力を大きくすれば、十分な力で対象物W
を把持することも可能である。しかしながら、対象物Wに指部212を押し付ける力を大
きくすると、指部212からの圧力によって対象物Wの表面が傷ついてしまう恐れがある
ので望ましくない。この点で、本実施例のロボットハンド10は、掌部130で対象物W
を支持しておくことで、指部112をそれほど強く押し付けなくても対象物Wを十分に把
持することができる。その結果、十分な把持力を確保することが可能でありながら、対象
物Wを傷つけてしまうことがない。
【0033】
また、前述したように、本実施例のロボットハンド10の掌部130は、指部112の
根元側と先端側とを結ぶ方向に直線的に移動するだけなので(図2を参照)、簡単な制御
によって掌部130を動作させることができる。従って、掌部130を移動可能とするこ
とで対象物Wを十分に把持可能としながら、ロボットハンド10の制御が複雑となってし
まうこともない。
【0034】
加えて、ロボットハンド10は単純な構造なので、ロボットハンド10を小型化および
軽量化することが可能である。このため、サイクルタイムを向上させるために、ロボット
ハンド10を高速移動させる場合でも、そのために必要なエネルギーの増加を抑制するこ
とができるので、ロボット全体(あるいはライン全体)としてのエネルギー効率が低下す
ることを回避することが可能となる。更に加えて、ロボットハンド10の構造が単純なこ
とから、このような優れた特性を有するロボットハンド10を安価に提供することも可能
となる。
【0035】
また、本実施例のロボットハンド10を用いれば、上述したように対象物Wを把持する
場合に限らず、例えば製造ライン上の製品などに対して把持した対象物Wを組み付ける作
業を行う場合においても、以下のような有利な効果を得ることができる。
【0036】
図4は、本実施例のロボットハンド10が把持した対象物Wを組み付ける場合の有利な
効果を示した説明図である。尚、図4(a)には、参考として前述した従来のロボットハ
ンド20を用いて対象物Wを製品Pに組み付ける様子が示されており、図4(b)には、
本実施例のロボットハンド10を用いて対象物Wを組み付ける様子が示されている。
【0037】
図4(a)に示されるように、従来のロボットハンド20で把持した対象物Wを製品P
に設けられた凹部に取り付ける場合、対象物Wと製品Pの凹部との接触部分には摩擦力が
生ずる。従って、対象物Wには、対象物Wを凹部に向かって取り付ける方向とは逆方向の
反力(図中では矢印によって表示)が作用する。ここで、前述したように、従来のロボッ
トハンド20は、指部212と対象物Wとの接触部分に生ずる摩擦力によって指部212
の間に対象物Wを保持しているに過ぎない(図3(a)を参照)。従って、対象物Wを組
み付ける時に対象物Wにかかる反力がある程度大きい場合には、対象物Wが指部212の
根元側にずれてしまうことがあり、結果として対象物Wを製品Pに組み付けることができ
なくなってしまうこととなる。
【0038】
ここで、図4(b)に示されるように、本実施例のロボットハンド10で把持した対象
物Wを製品Pに取り付ける場合においても、上述した従来のロボットハンド20を用いた
場合と同様に、対象物Wに対して組み付けを行う方向とは逆方向の反力が作用する。しか
しながら、本実施例のロボットハンド10によれば、掌部130によって対象物Wが指部
112の根元側から支持されるので、対象物Wにかかる反力が大きい場合でも、対象物W
が指部112の根元側にずれてしまうことが防止される。その結果、対象物Wを製品Pの
凹部に確実に組み付けることが可能となる。また、本実施例のロボットハンド10は、上
述したように対象物Wを把持する用途以外にも、次のような用途に用いることができる。
【0039】
図5は、本実施例のロボットハンド10の他の用途を示した説明図である。本実施例の
ロボットハンド10は、以下に説明するように、製品Pの所定の位置に位置決めされた対
象物Wを押し付けて、製品Pに圧入する作業を行うことができるようになっている。この
場合、先ず、左右の指部112を十分に離間させておき、掌部130を指部112の根元
から先端の方向に移動させていく。そして、最終的に指部112の先端よりも少し先の位
置まで掌部130が移動したら、離間させておいた左右の指部112を接近させて元の位
置(ロボットハンド10の中央の位置)に戻す。こうすると、図5(a)に示されるよう
に、ロボットハンド10の指先の部分が掌部130によって平坦な面となる。この状態で
、製品Pの所定の位置に位置決めされた対象物Wにロボットハンド10の指先(すなわち
掌部130)を当接させ、さらにロボットハンド10の全体を対象物Wの取り付け位置の
方向に移動させると、図5(b)に示されるように、製品Pに対象物Wを圧入する作業を
行うことができる。
【0040】
このような本実施例のロボットハンド10を用いれば、対象物Wを把持する作業(およ
び把持した対象物Wを組み付ける作業)と、対象物Wを押し付ける作業との両方を、1つ
のロボットハンド10によって行うことができる。従って、例えば対象物Wを圧入する作
業を行うロボットを別に設けておく必要がなくなるので、製造ラインを簡略化することが
可能となる。
【0041】
また、製品Pに対象物Wを圧入する作業は、対象物Wに指部112の先端を直接押し当
てることによっても実行可能であるが、指部112と対象物Wとの接触部分(指部112
の先端)の面積は小さいため、対象物Wに大きな圧力がかかってしまい対象物Wに傷を付
けてしまう恐れがある。この点で、指部112の先端よりも面積の大きな掌部130によ
って対象物Wを圧入することとすれば、対象物Wにかかる圧力を分散させることができる
ので、局所的に大きな圧力がかかることで、対象物Wに傷が付くことを防止することが可
能である。さらに、掌部130と対象物Wとの接触面積が大きくなることで、対象物Wに
大きな圧力を加えても、圧力を安定して作用させることができる。その結果、製品Pに位
置決めされた対象物Wを確実に圧入することが可能となる。
【0042】
C.変形例 :
以上に説明した実施例のロボットハンド10では、対象物Wに対して指部112と掌部
130とを当接させることにより、対象物Wを把持するものと説明した。ここで、対象物
Wを把持したことを検出する目的で、指部112および掌部130に圧力センサーを設け
ることとしてもよい。尚、以下に説明する変形例において、上述した実施例と同様の符号
を付し、その詳細な説明は省略する。
【0043】
図6は、変形例のロボットハンド10の構成を示した説明図である。図示した変形例の
ロボットハンド10の指部112および掌部130には、対象物を把持した時に対象物と
当接する面に圧力センサー140が設けられている。このような変形例のロボットハンド
10では、対象物Wを把持すると、対象物Wと圧力センサー140とが接触することによ
り、対象物Wと指部112(あるいは対象物と掌部130)とが当接したことが検出され
る。従って、圧力センサー140での検出結果をもとに、ロボットハンド10が対象物W
を把持したか否かを判断することができる。
【0044】
このような変形例のロボットハンド10によれば、対象物Wが上手く把持されなかった
と判断された場合に、ロボットハンド10に再度、対象物Wの把持動作を行わせたり、あ
るいはロボットハンド10の点検を行い、必要に応じて修理を行うことができる。その結
果、ロボットハンド10によって対象物Wを確実に把持することが可能となる。
【0045】
また、圧力センサー140を用いれば、対象物Wを把持した時に、指部112あるいは
掌部130が対象物Wを押す圧力を検出することもできる。従って、検出した圧力に応じ
て指部112の間の距離や掌部130の位置を微調整することで、対象物Wを把持する力
を加減することが可能となる。
【0046】
以上、各種実施例のロボットハンドについて説明したが、本発明は上記の実施例および
変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施す
ることが可能である。例えば、上述した各種実施例および変形例のロボットハンドは、四
方に設けられた指部が隣り合う指部どうしで2本ずつセットとなり、一の方向(左右方向
)に接近あるいは離間するものと説明したが、これら指部は、隣接する別の指部どうしが
2本ずつセットとなって、上述した一の方向と略直行する方向(前後方向)にも接近ある
いは離間可能としてもよい。
【0047】
また、上述した各種実施例および変形例のロボットハンドは、構造がたいへん単純であ
るため、小型化および軽量化が容易である。従って、図7に示したように、ロボットアー
ム12の先端に、これらのロボットハンドを装着してロボット500を構成すれば、様々
な対象物Wに対して対応可能でありながら、小型で軽量で、尚且つサイクルタイムを短く
してもエネルギー効率が低下し難い高性能のロボット500を得ることが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
10…ロボットハンド、 12…ロボットアーム、 20…ロボットハンド、
100…ハンド基部、 110…指部ユニット、 112…指部、
113…把持面、 114…連結部材、 120…ガイド部、
122…ガイド軸、 130…掌部、 140…圧力センサー、
212…指部、 230…掌部、 500…ロボット、
W…対象物、 P…製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの距離を変更可能に設けられた複数の指部の間で対象物を把持する動作を行うロボ
ットハンドにおいて、
前記複数の指部の間には、該複数の指部の根元側と該複数の指部の先端側とを結ぶ方向
に沿って移動可能な掌部が設けられていることを特徴とするロボットハンド。
【請求項2】
前記掌部は、前記複数の指部の動きとは独立して移動可能に設けられていることを特徴
とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記掌部は、前記複数の指部の何れについても該指部の先端に対して少なくとも面位置
の位置までは移動可能に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のロボットハン
ド。
【請求項4】
前記掌部は、前記複数の指部の動きと連動して移動するように設けられていることを特
徴とする請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載のロボットハンドであって、
前記複数の指部には、前記対象物を把持する際に該対象物と当接する把持面が形成され
ており、
互いに対向する前記指部の把持面には、該把持面の間隔が前記掌部側から該指部の先端
に向かって末狭まりとなる部分が設けられているロボットハンド。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載のロボットハンドを備えるロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−139808(P2012−139808A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−982(P2011−982)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】