説明

ロボット制御システム

【課題】スマートフォン等の携帯情報端末を利用して遠隔制御を行うロボットを制御するロボット制御システムを提供することを課題とする。
【解決手段】制御システム1は、ロボット2と、無線通信回線31と接続可能な携帯情報端末3と、ロボット2を制御する制御情報8を送出する遠隔制御端末7とを具備する。ロボット2は、携帯情報端末3を着脱自在に装着可能な頭部9及び胴体部10からなるロボット本体11と、ロボット本体11の下方に取設され、一対の走行車輪21a,21bを有する倒立二輪機構を採用した走行機構部5と、遠隔制御端末7から送出された制御情報8を携帯情報端末3を通じて受付け、ロボット2の動作制御及び走行制御を行うロボット制御部12とを具備して主に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御システムに関するものであり、特に、スマートフォン等の携帯情報端末をロボット制御のための一構成として利用し、ロボットと離れた遠隔地から動作及び走行の制御を行うことが可能なロボット制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、音声による通話機能(電話機能)に加え、電子メールの送受信、インターネット接続、動画・音声等の再生等の各種機能を有する多機能型の携帯情報端末(スマートフォン)が開発され、近年において特にその普及が進んでいる。スマートフォンは、製造メーカーによって出荷時に予め内蔵された各機能以外に、ウェブ等で有償若しくは無償で公開されている種々のアプリケーション・ソフトウェア等をインストールし、ユーザ自身によってスマートフォンの機能をさらに高めることができるカスタマイズ性を備えている。さらに、スマートフォンは、外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ等)と接続するためのコネクタを有し、外部機器との間で各種データの同期等の処理を行ったり、スマートフォンを介して接続された外部機器を操作することが可能な機能を有し、外部機器との接続に優れた親和性を有している。
【0003】
一方、近年のロボット技術の進歩によって人間と同じ二足歩行型のロボットやクローラタイプの走行機構を有するロボットが開発されている。さらに、互いに平行に配置した一対の走行車輪を備え、走行車輪と接続した車台部に加わる荷重や重心移動を検知し、任意の方向への走行を可能とする倒立二輪機構方式を採用した新規な移動体及び当該倒立二輪機構方式を採用した各種移動装置が開発されている。そして、倒立二輪機構方式を採用した新規な乗物(移動体)は、空港や大型ショッピングセンター等の大型施設における警備の際の見回り用の設備として利用されたり、広い面積の観光スポットをガイドする際のガイドツアー用の機材として採用される等、我々の日常的な生活に身近なものとなってきている。
【0004】
なお、倒立二輪機構の場合、一対の走行車輪によってバランスを取りながら直立した状態(倒立水平状態)で走行するものであり、走行時及び停止時の安定性が高く、さらに旋回性能に優れるため、凹凸の激しい悪路や狭い道等であっても、小回りの効いた安定走行が可能な性能を有し、実用性及び利便性の点で他の走行機構よりも優れた特性を有している。
【0005】
一方、所謂「産業用ロボット」として工場などの施設で主に利用されてきたロボット技術を、近年において一般家庭向けや小規模事業所向けのロボットに応用することが行われ、例えば、床上のゴミを自律移動しながら吸引し、室内を清掃する家庭用の清掃ロボットや、病院や老人介護施設等において看護師の看護業務を支援するための介護支援用ロボット等の開発も行われている。さらに、人工知能を有し、ペットの代替として使用される等のコミュニケーション用、エンターテイメント用のロボットも開発されている。すなわち、日常生活のあらゆる場面において、高度なロボット技術を利用したロボットが取り入れられるようになっている。一方、近年の高齢化社会によって、高齢者自身が屋外に買い物等のために外出する機会が制限され、上記ロボット技術を利用して屋外での作業(買い物等)を人間に代行する「おつかいロボット」のような新たな分野での応用も期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したロボット技術の多くは、操作性及びその用途が限られることがあり、特に室内でのロボットの利用を想定して開発されたものがほとんどであった。そのため、ロボットが屋外で走行しながら命令に基づいた要件を実施する「おつかいロボット」のようなロボット技術の応用はほとんど行われていなかった。
【0007】
加えて、ロボットを遠隔制御する場合、操作用の端末と制御対象となるロボットの間を、無線通信回線で接続する必要があった。この場合、無線通信回線は特定の周波数帯域のものが利用され、このための無線通信用の機器に要するコストが多大になることがあった。さらに、これらの周波数を利用した無線通信の出力が制限されることがあり、当該無線の到達する範囲が狭い場合があった。そのため、特定の施設(病院等)内でロボットを遠隔制御するなどに限られることがあった。一方、既存の携帯電話回線を利用してロボットを遠隔制御する試みもなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
さらに、主に屋外での使用を想定する場合、凹凸の激しい悪路を走行する際の安定性(走行安定性)あるいは実用的な走行速度での利用が可能か否かが問題となる。すなわち、上述した二足歩行タイプのロボットやクローラ走行機構の場合、移動速度が人間の歩行速度よりも遅いことがあり、係るロボットを利用した場合、実用性に乏しい可能性があった。一方、倒立二輪機構方式を採用し、既に警備活動等に採用されている実用化された移動体は、通常の走行速度が約6km/h、最大走行速度が約12km/hの走行性能を有することもあり、走行速度に係る点での実用性の問題をクリアしている。
【0009】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、屋外を自走可能なロボットの遠隔制御において、ロボット制御に係る制御情報をスマートフォンのような携帯情報端末を利用して受信し、かつ走行安定性及び実用性に優れる倒立二輪機構方式を採用した走行機構部を有するロボットを制御可能なロボット制御システムの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明のロボット制御システムは、「ロボットと、カメラ機能及びマイク機能を有し、無線通信回線と接続して双方向通信可能な携帯情報端末と、前記ロボットを制御する制御情報を、前記無線通信回線を通じて前記携帯情報端末に送出する遠隔制御端末とを具備し、前記ロボットは、前記ロボットの前方の映像を映像情報として取得可能に前記カメラ機能のレンズ部を前記ロボットの進行方向に向けた状態で前記携帯情報端末を装着支持する端末装着部を有するロボット本体と、前記ロボット本体の下方に取設され、前記制御情報に基づいて前記ロボットを自走可能にする走行機構部と、前記携帯情報端末と端末コネクタ部を介して電気的に接続され、前記遠隔制御端末から前記携帯情報端末を通じて送出される前記制御情報を受付け、前記ロボット本体の動作制御及び前記走行機構部の走行制御を行うロボット制御部とをさらに具備し、前記携帯情報端末は、前記遠隔制御端末から送出された前記制御信号を受付け、前記ロボット制御部に出力する制御情報出力手段と、前記カメラ機能によって取得された前記映像情報、前記マイク機能によって取得された前記ロボットの周囲の音声情報、及び、前記ロボットの動作状態及び前記走行機構部の走行状態を含む状態情報を、それぞれ前記無線通信回線を通じて前記遠隔制御端末に送出する情報送出手段と」を具備するものから主に構成されている。
【0011】
ここで、ロボットとは、遠隔制御端末を通じてリモート制御されるものであり、屋内及び屋外を自走可能な走行機構部を有している。ここで、走行機構部の一例を示すと、例えば、一対の走行車輪によってバランスを保持した状態(倒立水平状態)で自在に走行することが可能な倒立二輪機構や、一般的な走行機構である四輪走行機構、或いは二足歩行型、クローラタイプ等の周知の走行機構部を適宜採用することができる。
【0012】
一方、携帯情報端末とは、上述した多機能型の携帯電話(スマートフォン)等を例示することができ、ロボットのロボット本体に着脱自在なサイズの既存の機器を利用することができる。ここで、ロボット本体への装着は、端末コネクタ部を介して接続される有線タイプのもの或いはBluetooth(登録商標)のように無線によって接続されるものであり、携帯情報端末のカメラ機能のレンズ部をロボットの進行方向(ロボットの前方向)に向け、ロボットの周囲(主に前方)の状況を映像情報として捉えるようにしている。これにより、遠隔制御端末の操作者は、ロボットと離れた位置であっても周囲の状況を把握することができる。なお、遠隔制御端末は、携帯情報端末と無線通信回線を通じて各種情報を双方向通信することが可能なものであり、パーソナルコンピュータ、携帯電話、スマートフォン、PDA等の既存の情報通信機器を使用することができる。また、無線通信回線とは、例えば、一般的な3G回線や周知の無線通信方式等を想定することができる。
【0013】
したがって、本発明のロボット制御システムによれば、ロボットに装着されたスマートフォン等の携帯情報端末を介してロボット内部のロボット制御部に制御情報が送出され、係る制御情報に基づいてロボットの動作等の制御が行われる。これにより、ロボットを制御の一機能として既存のスマートフォン等を採用することにより、制御システムの構築に係るコストを大幅に削減することが可能となる。さらに、無線通信回線も既存の3G回線等を利用することにより、無線通信設備に新たな投資を必要とすることがない。そのため、遠隔地からのロボット制御を容易に確立することができる。さらに、携帯情報端末によって送受された制御情報に基づいて走行機構部を制御することができ、ロボットを遠隔制御によって自走させることが可能となる。これにより、屋外での使用が可能となる。その結果、おつかいロボット等の用途としての使用ができるようになる。さらに、携帯情報端末に内蔵されているカメラ機能、マイク機能等を利用し、ロボットの周囲の状況を遠隔制御端末を操作している場所まで映像や音声等で伝えることができ、さらに、携帯情報端末のスピーカー機能によって操作場所からロボットの周囲の人間に音声で意志の疎通を図ることも可能となる。これにより、おつかいロボットとしての役割を十分に発揮させることが可能となる。なお、ロボット本体を中空状に形成し、空いているスペースを荷物搭載用とするものであってもよい。また、ロボット本体及び走行機構部に取設された各種センサの信号を上記カメラ及びマイクの信号等ととともに状態情報として出力するものであっても構わない。
【0014】
さらに、本発明のロボット制御システムは、上記構成に加え、「前記走行機構部は、一対の前記走行車輪と、前記走行車輪の間に架渡され、前記ロボット本体が上部に載設される車台部と、前記走行車輪をそれぞれ独立して駆動するための一対の車輪用モータと、前記車台部に取設され、前記車輪用モータを駆動するための駆動力を与えるための駆動バッテリと、前記ロボットの重心位置を変化させる重心変化機構部と、前記車台部の前後方向の傾斜角度を計測する傾斜角度センサ及び前記走行機構部の加速度を計測する加速度センサを有するセンサ部とを具備した倒立二輪機構が採用され、前記ロボット制御部は、前記傾斜角度センサ及び前記加速度センサの計測に基づいて前記ロボットの重心位置を算出する重心位置算出手段と、算出された前記重心位置及び前記重心変化機構部に基づいて、前記ロボットの重心位置を変化させる重心位置制御手段と」をさらに具備するものであっても構わない。
【0015】
ここで、重心変化機構部とは、例えば、本発明のロボットに占める重量の割合が高い駆動バッテリ或いはその他の重量物を重心位置変化のためのウエイトとして使用し、車台部の上面に一対のレールを配置し、当該レール上を駆動バッテリを摺動させるものや、一対の走行車輪と車台部との接続位置を前後に変化させることにより、走行機構部の重心位置を変化させるものが例示される。なお、駆動バッテリ等のウエイトを摺動させるために、ウエイト摺動用(バッテリ摺動用)のモータ等の構成がさらに必要となる。
【0016】
したがって、本発明のロボット制御システムによれば、ロボットの重心位置を変化させる重心位置変化機構部が走行機構部に設けられている。本発明のロボットを「おつかいロボット」として使用した場合、上述した荷物搭載用のスペースに買い物後の荷物が搭載された場合、ロボット全体のバランスは搭載前に比べて著しく変化することになる。ここで、本発明は走行機構部として、倒立二輪機構を採用しているため、係るバランスのずれはその後の走行安定性に大きな影響を及ぼすことになる。そこで、重心位置変化機構部を利用し、ロボットの前後方向に重心位置を変化させ、搭載した荷物とバランスを取る位置に変化させる。これにより、ロボットの重心位置が搭載前とほぼ同じ位置にくることになる。その結果、荷物搭載後の走行であっても搭載前と同じ重心位置の状態で走行制御を行うことができる。なお、荷物搭載による重心位置の変化は、走行機構部に設置された加速度センサ及び傾斜角度センサに基づいて算出可能とされる。
【0017】
さらに、本発明のロボット制御システムは、上記構成に加え、「前記ロボット制御部は、前記ロボットが一対の前記走行車輪によって直立した倒立水平状態から、走行状態に遷移する際に前記重心位置制御手段を利用して前記重心変化機構部を制御し、前記ロボットを前傾させる前傾姿勢制御手段と、前記ロボットが前傾した状態で前記走行機構部を制御し、前記進行方向への走行を開始させる前傾走行制御手段と」を具備するものであっても構わない。
【0018】
したがって、本発明のロボット制御システムによれば、倒立二輪機構によってロボットを直立して停止させた状態から走行状態に変位させる際に、バッテリ摺動機構部を利用して重心位置を変化させ、ロボットを前傾姿勢に変位させた後に走行を開始させることが行われる。すなわち、直立停止した位置から後退することなく、前進走行をすることが可能となる。
【0019】
一般的な倒立二輪機構を採用した移動体等の場合、進行方向に前進しようとしていきなり走行機構部の走行車輪を回転させると、慣性の法則によって走行機構部の上部がそのままの位置に留まろうとするために、走行機構部のみが前進し、その上部(本発明の場合、ロボット本体部分)が後ろに反った状態、すなわち、後傾姿勢となり、走行時のバランスが崩れることがある。係る状況を回避するため、一般には、予め進行方向と逆方向に僅かに後退し、前傾姿勢に変位させた後に走行車輪を回転させて前進させる制御を行っている。そのため、走行を開始する場合、後方に一時的に後退するためのスペースが必要となる。これに対し、本発明の場合、直立停止した位置から後退する必要がなく、前傾姿勢に変位させた後、当該位置から走行を開始することが可能となる。
【0020】
さらに、本発明のロボット制御システムは、上記構成に加え、「前記端末装着部は、装着された前記携帯情報端末の装着角度を変位させ、前記カメラ機能の前記レンズ部の撮影範囲を変化させる角度変位機構部」を具備するものであっても構わない。
【0021】
したがって、本発明のロボット制御システムによれば、ロボット本体の端末装着部は、携帯情報端末の装着角度を変位させる機構を有している。これにより、携帯情報端末のカメラ機能を利用して、ロボットの前方の映像を遠隔制御端末に送出する場合、装着角度の変位によってロボット前方の広い範囲を映像情報として把握することが可能となる。なお、装着角度の変位は、遠隔制御端末から任意の位置に変位させることができる。
【0022】
さらに、本発明のロボット制御システムは、上記構成に加え、「前記走行機構部は、一対の前記走行車輪の後方に設けられ、前記ロボットの直立を三点支持によって補助する補助輪と、前記補助輪を昇降させる補助輪昇降機構部と」を具備するものであっても構わない。
【0023】
したがって、本発明のロボット制御システムによれば、走行機構部に昇降可能な補助輪が設けられている。これにより、ロボットの制御をオフにした場合、当該補助輪を下方に降ろし、一対の走行車輪及び補助輪の三点で三点支持状態でロボットを支持し、倒立水平状態を維持することが可能となる。一方、ロボットを走行させる場合には、補助輪を上方位置まで移動させ、走行時の邪魔にならないようにすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の効果として、スマートフォン等の多機能の携帯情報端末を、遠隔制御可能なロボットの一構成として使用することにより、無線通信回線を通じたロボットの遠隔制御のシステムを容易、かつ開発コストを抑えて構築することが可能となる。さらに、走行機構として、倒立二輪機構を採用した場合には、狭い道や悪路であっても高い旋回性能及び走行安定性を維持したロボットの自走が可能となる。さらに、駆動バッテリを摺動させ、重心位置を変化させることによって、重量物を搭載した場合であっても走行安定性を確保することができ、かつ倒立水平状態から走行状態に至るまでの制御を後退スペースを必要とすることなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態のロボット制御システムの概略構成及び機能的構成を示すブロック図である。
【図2】ロボット制御システムにおけるロボットの外観構成を示す(a)斜視図、及び(b)平面図である。
【図3】端末装着部の角度変位機構部の構成を示す(a)斜視図、及び(b)側面図である。
【図4】走行機構部におけるバッテリ摺動機構部の構成を示す(a)上方から視た説明図、及び(b)左側方から視た説明図である。
【図5】ロボット制御システムにおけるロボットの制御の一例を示すフローチャートである。
【図6】ロボット制御システムにおけるロボットの制御の一例を示すフローチャートである。
【図7】ロボット制御システムにおけるロボットの制御の一例を示すフローチャートである。
【図8】停止状態から走行状態に変位するロボットの態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態であるロボット制御システム1(以下、単に「制御システム1」と称す)について、図1乃至図8に基づいて主に説明する。ここで、図1は本実施形態の制御システム1の概略構成及び機能的構成を示す説明図であり、図2は制御システム1におけるロボット2の外観構成を示す(a)斜視図、及び(b)平面図であり、図3は端末装着部13の角度変位機構部4の構成を示す(a)斜視図、及び(b)側面図であり、図4は走行機構部5におけるバッテリ摺動機構部6の構成を示す(a)上方から視た説明図、及び(b)左側方から視た説明図であり、図5乃至図7はロボット制御システムにおけるロボットの制御の一例を示すフローチャートであり、図8は停止状態から走行状態に変位するロボット2の態様を示す説明図である。ここで、本実施形態の制御システム1は、屋外を移動するロボット2を遠隔制御端末7を利用してリモート制御し、所定の場所で買い物等の要件を済ますことができる所謂「おつかいロボット」として使用する場合について例示するものとする。なお、図1乃至図8において、説明を簡略するために、一部構成についての図示を省略している。さらに、本実施形態の制御システム1において、携帯情報端末3として、市販の多機能型携帯電話(スマートフォン)を利用し、遠隔制御端末7として市販のパーソナルコンピュータを利用し、無線通信回線31として通常の3G回線を利用するものについて例示をしている。なお、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、3G回線等については周知の構成及び技術であるため、詳細な説明は省略し、本実施形態の制御システム1に必要な機能及び構成について限定し、以下の説明を行うものとする。
【0027】
本実施形態の制御システム1は、図1乃至図8に示されるように、屋内及び屋外を自走可能な走行機構部5を有するロボット2と、ロボット2に対して着脱自在に装着される無線通信回線31と接続可能な携帯情報端末3と、ロボット2をリモート制御するための遠隔制御端末7とを具備して主に構成されている。ここで、携帯情報端末3及び遠隔制御端末7の間は、無線通信回線31を通じて相互に各種情報を送受することが可能であり、遠隔制御端末7から出力された制御情報8が、無線通信回線31を通じて携帯情報端末3に送出され、当該制御情報8の入力を受付けた携帯情報端末3がロボット2のロボット制御部12に係る制御情報8を出力することによって、ロボット2に対して各種動作制御及び走行制御を行うことができるものである。
【0028】
さらに具体的に説明すると、ロボット2は、図2等に示されるように、略半球状を呈する頭部9及び頭部9の下方に形成された円柱状を呈する胴体部10を組合わせて構成されたロボット本体11と、当該ロボット本体11の下部に取設された倒立二輪機構方式を採用した走行機構部5と、ロボット本体11に内蔵され、携帯情報端末3から送出される制御情報8を受付け、これに基づいてロボット本体11及び走行機構部5の動作制御、走行制御を行うロボット制御部12とを主に具備している。
【0029】
ロボット本体11の頭部9の前部には、前述の携帯情報端末3をロボット2に装着し、支持するための端末装着部13が設けられている。係る端末装着部3は、矩形状の携帯情報端末3の端末正面3aの上部位置に設けられたカメラ機能14のレンズ部15をロボット2の前方側に向け、携帯情報端末3の端末正面3aを走行面に対して直立した状態で支持することを可能とするものである。そのため、図3に示すように、携帯情報端末3の底面及び両側面の下部分の外観形状と略一致する内側面を有する支持ガイド部16を有し、係る支持ガイド部16に上方から携帯情報端末3を挿入することが装着支持することができる。なお、支持ガイド部16の内底部からは、携帯情報端末3の外部機器接続コネクタ(図示しない)と連結され、携帯情報端末3とロボット2(特に、ロボット制御部12)とを電気的に接続するための端末コネクタ部40が突出して設けられている。
【0030】
さらに、支持ガイド部16は、端末装着部13の基部13aと下端部で回転可能に軸支され、支持ガイド部16の裏面16bと連結した連結アーム18a等を有する伝達機構部18、及び伝達機構部18に角度変位用の駆動力を供給する角度変位用モータ17を有し、携帯情報端末3のレンズ部15の撮影方向を変化させることのできる角度変位機構部4を具備している。これにより、ロボット2の前方の幅広い範囲を携帯情報端末3のカメラ機能14によって映像として捉えることができる。係る角度変位機構部4の制御は、遠隔制御端末7によって操作することができ、取得された映像情報は後述する状態情報55の一部として遠隔制御端末7に送出される。そして、遠隔制御端末7の液晶ディスプレイ等の遠隔側出力手段39に出力することができる。
【0031】
さらに、ロボット本体11の頭部9には、上方に突出した左右一対のスピーカー部11aが形成されている。これにより、携帯情報端末3に予め内蔵された若しくは制御情報8とともに送出された音声情報を当該スピーカー部11aから出力することができる。さらに、遠隔制御端末7のマイク機能(図示しない)によって、遠隔操作者の音声を遠隔地のロボット2が出力することも可能となる。すなわち、おつかいロボットとして制御システム1におけるロボット2を使用する場合、おつかい先(商品購入先の店舗)の店員とのコミュニケーションや詳細な注文等を音声によって直接行うことが可能となる。なお、ロボット本体11は、全体として小動物をイメージしたキャラクターの外観で構成され、上記スピーカー部11aが上記キャラクターの耳の位置に設けられ、ロボット2の前方には目11b及び鼻11cに相当する構成も付されている。さらに、略円柱状の胴体部10の内部の一部には、荷物収容部19が形成され、胴体部10の前面に設けられた開閉扉20によって当該荷物収容部19を開放及び閉塞することが可能となっている。係る荷物収容部19に購入済みの物品等を収容することができる。
【0032】
ロボット本体11の下方に設けられた走行機構部5は、図2及び図4に示すように、一対の走行車輪21a,21bと、走行車輪21a,21bの間に架渡され、後述の駆動バッテリ22等の載置される下部車台23及び下部車台23から立設された支持脚部24によって支持され、ロボット本体11を載置する上部車台25を有する車台部26と、一対の走行車輪21a,21bをそれぞれ独立して駆動するための一対の車輪用モータ27a,27bと、下部車台23及び上部車台25の間に設置され、車輪用モータ27a等を駆動させるための電力を供給する駆動バッテリ22と、駆動バッテリ22の車台部26に対する相対的位置関係を変化させるバッテリ摺動機構部6と、車台部26の傾斜角度を計測する傾斜角度センサ28及びロボット2の走行方向に対する加速度を計測する加速度センサ29を有するセンサ部30とを具備している。ここで、バッテリ摺動機構部6が本発明における重心変化機構部に相当する。
【0033】
すなわち、本実施形態におけるロボット2は、一対の走行車輪21a,21bによってバランスを取りながら直立した状態で走行する倒立二輪機構を採用したものであり、センサ部30によってロボット2の傾きや加速度を計測し、ロボット制御部12によってバランス状態を制御しながら、所定方向への前進走行、後退走行、左右への転回、及びその場での倒立水平状態を行うことが可能となっている。ここで、倒立二輪機構は、既に周知のものであるため、ここでは詳細な説明は省略するものとする。なお、車台部26の下部車台23及び上部車台25は、図4等に示されるように、略矩形状を板状部材が利用されている。そのため、当該車台部26を囲み、ロボット本体11の胴体部10の下部形状と略一致する円筒状の走行機構部カバー32が設置されている。これにより、ロボット本体11の胴体部10の形状に合わせた外観を有することとなり、ロボット本体11と走行機構部5の上部とが一体的に構成されているように見える。
【0034】
また、走行機構部5は、一対の走行車輪21a,21bの後方(ロボット2の尾部近傍)に上下方向に昇降可能な補助輪47と、当該補助輪47を昇降させる補助輪昇降機構部48とをさらに具備している。これにより、ロボット2の起動をOFFにした場合、降下させた補助輪47と、一対の走行車輪21a,21bの接地面によってロボット2を三点支持することが可能となる。その結果、ロボット2をやや後傾状態で直立させた状態を維持することができる(図8(a)参照)。また、夜間での走行が可能なように走行機構部カバー32の前面側には左右一対のヘッドライト部49a,49bが設けられている。
【0035】
さらに、バッテリ摺動機構部6は、図4に示すように、下部車台23の上面に配置された一対のレール部材33a,33bと、当該レール部材33a,33bの間を架渡し、レール長手方向に沿って摺動可能な摺動架設部34と、摺動架設部34を摺動させるための摺動用モータ等を含む摺動駆動部35とを具備して構成されている。ここで、摺動架設部34の上に駆動バッテリ22が載置され、ロボット2の重心位置に一致するように駆動バッテリ22の初期位置が設定される。なお、ロボット2の重心位置は、前述のセンサ部30の傾斜角度センサ28及び加速度センサ29の計測結果に基づいて算出される。
【0036】
一方、ロボット本体11の内部に内蔵されたロボット制御部12は、ロボット本体11に装着された携帯情報端末3と端末コネクタ部40を介して電気的に接続されており、遠隔制御端末7から送出された制御情報8を受付けるとともに、ロボット2側の状態情報55等を携帯情報端末3を通じて遠隔制御端末7に送出可能なロボット側情報送受手段41と、受付けた制御情報8に基づいてロボット2のロボット本体11の動作制御を行う本体制御手段42a及び走行機構部5の倒立二輪制御及び走行制御を行う走行制御手段42bを有する制御手段42とを具備して主に構成されている。さらに、ロボット制御部12は、走行機構部5のセンサ部30によって計測された傾斜角度データ及び加速度データに従ってロボット2の重心位置を算出する重心位置算出手段43と、算出された重心位置に基づいてバッテリ摺動機構部6を制御し、摺動架設部34をロボット2の前後方向(図4(b)における左右方向に相当)に変位させ、重量物の駆動バッテリ22をウエイトとして利用し、重心位置を規定範囲に抑える重心位置制御手段44とを具備している。すなわち、買い物を完了し、前述したロボット本体11の荷物収容部19に物品(図示しない)を積載した場合、ロボット2の重心位置が初期状態からずれることがある。このとき、バッテリ摺動機構部6を作動させ、算出した重心位置と初期状態の重心位置のずれを計測し、当該ずれに応じた分だけ駆動バッテリ22を移動させる。例えば、重心位置が前に移動し、ロボット2が前傾姿勢となった場合には、ロボット2の後方に向かって駆動バッテリ22を摺動させ、一方、ロボット2が後傾姿勢となった場合には、ロボット2の前方に向かって駆動バッテリ22を摺動させ、ロボット2全体の重心位置を走行車輪21a,21bの車軸位置に一致させることができる。
【0037】
さらに、ロボット制御部12の走行制御手段42bは、バッテリ摺動機構部6と連携し、倒立二輪機構によって倒立水平状態にあるロボット2を走行状態に遷移させる際に、倒立水平状態にある位置でロボット2を重心位置制御手段44を利用して前傾姿勢を採らせる前傾姿勢制御手段45と、前傾姿勢になった状態から車輪用モータ27a,27bを駆動し、走行を開始させる前傾走行制御手段46とを具備している。また、ロボット制御部12は、走行機構部5に設けられた補助輪47の昇降を制御する補助輪昇降制御手段50を具備している。
【0038】
一方、携帯情報端末3は、図1等に示されるように、通常の3G回線等によって遠隔制御端末7と制御情報8及びその他各種情報の送受信をすることが可能なものであり、その機能的構成として遠隔制御端末7から送出された制御情報8を受付けロボット制御部12に出力するとともに、携帯情報端末3のカメラ機能14によって取得された映像情報及びロボット2の動作及び走行に係る各種状態を遠隔制御端末7に送出するための携帯側情報送受手段36を主に具備している。ここで、携帯側情報送受手段36が本発明における制御情報出力手段及び情報送出手段に相当する。さらに、携帯情報端末3に予め搭載されている機能及び構成として、動画及び静止画を撮像可能なカメラ機能14及び周囲の音声を音声情報として取得するマイク機能53、タッチパネル機能付きの端末液晶画面54等を含んでいる。これにより、携帯情報端末3の無線通信及び情報処理機能を利用して遠隔制御端末7から送出された制御情報8に基づいてロボット2を制御することができる。なお、遠隔制御端末7に送出される情報として、走行機構部5に設けられたセンサ部30によって取得されたセンサデータ等、及びロボット2の動作に係る状態情報55を遠隔制御端末7に送出することも可能となっている。
【0039】
一方、遠隔制御端末7は、無線通信回線31に接続可能なパーソナルコンピュータであり、携帯情報端末3に制御情報8を無線通信回線31を通じて送出し、当該携帯情報端末3からロボット2及び携帯情報端末3の状態情報55を受付ける遠隔側情報送受手段37と、制御情報8によるロボット2に対する命令を入力するための操作手段38と、制御情報8及び状態情報55等を出力するモニタ及びスピーカ等の遠隔側出力手段39とを具備して主に構成されている。携帯情報端末3及び遠隔制御端末7については、市販されている周知の機器を利用することができるため、ここでは詳細な説明は省略するものとする。
【0040】
次に、本実施携帯の制御システム1を利用したロボット2のリモート制御の一例を主に図5乃至図7のロボット2における制御処理の一例を示すフローチャート、及び図8のロボット2の姿勢変化を示す説明図に基づいて説明する。まず、制御システム1を構成するロボット2、携帯情報端末3、及び遠隔制御端末7のそれぞれの電源をONにして起動状態にする(ステップS1)。このとき、携帯情報端末3は、ロボット2の端末装着部13に装着され、端末コネクタ部40を介してロボット2と電気的に接続された状態にある。さらに、起動前の状態では、走行機構部5による倒立二輪機構による倒立水平制御がなされていないため、ロボット2は、走行機構部5の補助輪47を降下させ、一対の走行車輪21a,21bとの三点でロボット2を後傾させた状態で支持する三点支持状態で直立している(図8(a)参照)。
【0041】
制御システム1の各構成を起動状態とすることにより、無線通信回線31を介して携帯情報端末3及び遠隔制御端末7との接続を確立する(ステップS2)。これにより、相互に制御情報8及び状態情報55を送受する状態となる。そして、ロボット2の走行機構部5による倒立水平制御が開始される。具体的に説明すると、走行機構部5のセンサ部30の傾斜角度センサ28及び加速度センサ29によってそれぞれ傾斜角度データ及び加速度データが取得され(ステップS3)、取得した各データの値を利用してカルマンフィルタによる現時点からt秒後のロボット2の傾きの予測処理を行う(ステップS4)。そして、算出された傾き予測値に基づいて走行機構部5の制御を行う(ステップS5)。
【0042】
ここで、傾き予測値は、次の三通りに分けられる。すなわち、現時点よりもt秒後の傾きが+となる場合(ステップS5において+)、現時点よりもt秒後の傾きが−となる場合(ステップS5において−)、及び現時点とt秒後の傾きが同一の場合(ステップS5において0)に分けられる。ここで、倒立水平状態を基準としてロボット2の前方に傾く場合を“+”、後方に傾く場合を“−”、傾きの変化がない場合を“0”と本明細書では定義している。そして、傾き予測値の違いによって各処理を行う。t秒後の傾きが+となる場合(ステップS5において+)、車輪用モータ27a,27bを反時計回りに駆動し(ステップS6)、t秒後の傾きが−となる場合(ステップS5において−)、車輪用モータ27a,27bを時計回りに駆動し(ステップS8)、t秒後の傾きが同一の場合(ステップS5において0)、ブレーキ制御によりそのままの状態を保持する(ステップS7)。ここで、車輪用モータ27a,27bの駆動方向(反時計回り、時計回り)は図4(b)を基準に示している。すなわち、ロボット2が前傾姿勢になる場合(+)には、走行車輪21a,21bによって前進させる処理を行い(図4(b)における紙面左方向)、ロボット2が後傾姿勢になる場合(−)には、走行車輪21a,21bによって後退させる処理(図4(b)における紙面右方向)を行う。これにより、倒立水平状態になる(図8(b)参照)。
【0043】
その後、倒立水平状態になったロボット2は、自身の重心位置を算出し、当該重心位置が所定範囲内(走行車輪21a,21bの車軸と一致する範囲)にくるように重心位置の制御を行う。具体的には、前述した傾斜角度センサ28及び加速度センサ29によるデータを取得し(ステップS9)、計測結果に基づいてt秒後の傾きをカルマンフィルタによって予測し(ステップS10)、傾きが+の場合(ステップS11において+)、ロボット2の前傾姿勢を直立状態に戻すためにバッテリ摺動機構部6によって駆動バッテリ22をロボット2の後方側(後退方向)に摺動させる制御を行い(ステップS12)、傾きが−の場合(ステップS11において−)、ロボットの後傾姿勢を直立状態に戻すためにバッテリ摺動機構部6によって駆動バッテリ22をロボット2の前方側(前進方向)に摺動させる制御を行い(ステップS14)、t秒後の傾きが同一の場合(ステップS11において0)、ブレーキ制御によりそのままの状態を保持し、駆動バッテリ22の摺動を行わない(ステップS13)処理を行う。これにより、ロボット2の重心位置を規定範囲に補正する処理が完了する(ステップS15:図8(b)参照))。なお、実際には、上記ステップS3乃至ステップS15までの処理を繰り返し実施し、倒立水平状態及び重心位置の変位を僅かずつ修正することが行われる。
【0044】
その後、遠隔制御端末7から携帯情報端末3を通じて送出される制御情報8の入力の有無をロボット制御部12は検出する(ステップS16)。制御情報8の入力が検出される場合(ステップS16においてYES)、当該制御情報8の内容がロボット2の走行制御に関するもの、或いは動作制御に関するものかの判別を行う(ステップS17)。一方、制御情報8の入力が検出されない場合(ステップS16においてYES)、ステップS3の処理に戻り、倒立水平及び重心位置変位の制御を継続する。
【0045】
ステップS17において、制御情報8がロボット2の走行制御に係る場合(ステップS17においてYES)、ロボット制御部12の走行制御手段42bに基づいて走行機構部5を制御し、ロボット2を自走させる処理を行う(ステップS18)。具体的に説明すると、倒立水平状態のロボット2(図8(b)参照)に対し、バッテリ摺動機構部6を稼働し、駆動バッテリ22を前進側にわずかに摺動させる。その結果、ロボット2の重心位置が初期位置またはステップS11乃至S15による補正値からロボット2の前方に変位師、ロボット2は進行方向に傾いた状態(前傾状態)となる(図8(c)参照)。係る状態で車輪用モータ27a,27bを制御し、走行車輪21a,21bを前進方向(図8における紙面左方向)に回転させる。これにより、ロボット2は走行を開始することができる(図8(d)参照)。その後の左右方向への旋回、後退、或いは停止等の操作は、遠隔制御端末7からの制御情報8に基づいて行われるため、ここでは詳細な説明は省略する。なお、走行開始後は駆動バッテリ22は元の重心位置に復帰する。これにより、倒立水平状態での走行が可能となる。
【0046】
すなわち、本実施形態の制御システム1におけるロボット2の場合、倒立水平状態から走行を開始する際に、従来の倒立二輪機構を採用した移動体のように後進処理を行う必要がなく、その場で走行を開始することができる。つまり、駆動バッテリ22が摺動可能となっているため、倒立水平の状態でロボット2の重心位置を自由に変化させることができるため、走行開始前にその場で前傾姿勢に変位させることができる。その結果、後進する余裕のない狭い場所であっても小回りを効かせてロボット2の制御を行うことができる。なお、上述した駆動バッテリ22の摺動機構を利用することにより、走行状態から停止状態の移行も容易に行える。すなわち、倒立水平状態を保った走行状態から本実施形態におけるロボット2を停止させる場合、ロボット2の走行機構部5の停止処理により、走行機構部5は接地面に対してその場で停止する。しかしながら、ロボット2の頭部9の近傍は、慣性の法則に従ってそのまま前進しようとする力が作用する。その結果、ロボット2は前方に傾く前傾姿勢の状態で停止することになる。このとき、走行時の停止処理の際に駆動バッテリ22の重心位置をロボット2の後方にずらすことによって上記前傾姿勢を補正することができ、接地面に対して直立状態で停止させることが可能となる。これにより、走行開始時及び停止時のロボット2の前後方向の挙動を小さくすることができる。
【0047】
一方、制御情報8がロボット2の動作に関するものの場合(ステップS17においてNO)、制御情報8に基づいてロボット2の動作制御を行う(ステップS19)。例えば、遠隔制御端末7のマイク機能(図示しない)を使用して入力され、携帯情報端末3を介して受付けた音声情報をロボット本体11のスピーカー部11aを利用して出力する処理や,走行機構部5に取設されたヘッドライト部49a,49bを点灯させる処理等を行う。
【0048】
その後、遠隔制御端末7からロボット2の遠隔制御操作の停止に係る制御情報8の送出有無を検出し(ステップS20)、当該制御情報8の送出がない場合(ステップS20においてNO)、すなわち、遠隔制御端末7によるロボット2の遠隔制御が行われている場合には、上記ステップS3乃至ステップS19の処理を継続し、ロボット2の動作制御及び走行制御を行う。一方、操作停止に係る制御情報8の送出がある場合(ステップS20においてYES)、ロボット2の動作及び走行制御に係る処理を停止する(ステップS21)。これにより、ロボット2は倒立水平制御状態(図8(b)参照)を維持してその場で停止する。
【0049】
そして、本実施形態の制御システム1の終了指示の有無を検出し(ステップS22)、当該指示がある場合(ステップS22においてYES)、補助輪昇降機構部48を稼働させ、補助輪47を降下させ、倒立水平制御を停止し、三点支持状態(図8(a)参照)でロボット2を直立させる(ステップS23)。その後、本実施形態の制御システム1におけるロボット2、携帯情報端末3、及び遠隔制御端末7の電源をOFFにして停止させる(ステップS24)。これにより、制御システム1が終了する(ステップS25)。一方、当該指示がない場合(ステップS22においてNO)、ステップS3の処理に戻り、ロボット2による制御を継続する。
【0050】
上記示したように、本実施形態の制御システム1によれば、遠隔制御端末7から送出された制御情報8を、市販の携帯情報端末3(スマートフォン)を利用してロボット2に送出し、当該ロボット2を制御することが可能となる。特に、無線による遠隔制御において、既存の無線通信回線31(3G回線等)及びスマートフォンを利用することによって遠隔制御に必要な構成を低コストかつ簡易に構築することができる。さらに、スマートフォンの多機能性を利用し、スマートフォンのカメラ機能やマイク機能を利用して、ロボット2の周囲の映像や音声を取得し、遠隔であっても周囲の状況を把握した上で遠隔制御を行うことができる。特に、携帯情報端末3を装着する端末装着部13の角度変位機構部4によってスマートフォンの撮影範囲を変化させることができ、上記の周囲状況の把握がより容易なものとなる。また、無線通信回線31の双方向通信性を利用し、スマートフォンから送出される映像情報等、及びロボット2の状態を示す状態情報55とともに、遠隔制御端末3からスマートフォンに対して音声情報等を送出することが可能となり、遠隔制御端末7を操作する操作者と、ロボット2の周囲の人々(例えば、おつかい先の店舗の店員等)との間でコミュニケーションをとることができ、お互いの意志の疎通を図ることができる。
【0051】
さらに、ロボット2の走行機構部5として、倒立二輪機構方式を採用することにより、走行安定性の高い走行制御を行うことができるとともに、さらに駆動バッテリ22をウェイトとしてロボット2の前後方向に摺動可能な機構を有することによって、ロボット2の重心位置を任意に変化させることができる。これにより、重量物を積載し、ロボット2の重心位置が崩れた場合のバランス調整を行い、走行の安定性を図ったり、走行開始時及び走行停止時に前傾姿勢等の姿勢制御を行うことができるため、狭いスペースでの走行制御が可能となる。
【0052】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0053】
すなわち、本実施形態の制御システム1において、ロボット2を所謂「おつかいロボット」としての用途の例を示したが、これに限定されるものではなく、その他の遠隔制御によるロボット2の利用が可能な分野での応用が可能である。さらに、携帯情報端末3を装着する端末装着部13の角度変位機構部4及び駆動バッテリ22のバッテリ摺動機構部6の構成の一例を示したがこれに限定されるものではなく、携帯情報端末3のカメラ機能14の撮影範囲の変化機能、或いは駆動バッテリ22をウエイトとして使用し、ロボット2の重心位置を変位させる機能を有するものであれば構わない。さらに、重心変化機構部として、バッテリ摺動機構部6を用いるものを示したが、これに限定されるものではなく、駆動バッテリ22以外の重量物をウェイトとして利用するもの、或いは走行車輪21a,21bに対して車台部26の相対的位置関係を変化させ、重心位置の調整を図るものであっても構わない。さらに、走行機構部5として、倒立二輪機構方式を採用するものを例示したが、通常の四輪走行機構、二足歩行機構、或いはクローラタイプの周知の走行機構を採用し、スマートフォン等の多機能型の携帯情報端末3をロボット2の一構成として使用するものであれば構わない。
【0054】
さらに、本実施形態の制御システム1において、図5乃至図7に示したロボット2の制御処理の一例を示すフローチャートに限定されるものではなく、各ステップの順序等を適宜変更したものであっても構わない。特に、t秒後の傾きをセンサ部30によって算出し、倒立水平状態を維持する処理及びロボット2の重心位置を調整する処理は、同時に行うものであっても構わない。さらに、倒立水平状態の制御は、制御システム1の起動時に常に行う必要があるものであり、上述したフローチャートと独立して制御処理するものであっても構わない。
【符号の説明】
【0055】
1 制御システム(ロボット制御システム)
2 ロボット
3 携帯情報端末
4 角度変位機構部
5 走行機構部
6 バッテリ摺動機構部(重心変化機構部)
7 遠隔制御端末
8 制御情報
11 ロボット本体
12 ロボット制御部
13 端末装着部
14 カメラ機能
15 レンズ部
21a,21b 走行車輪
22 駆動バッテリ
26 車台部
27a,27b 車輪用モータ
28 傾斜角度センサ
29 加速度センサ
30 センサ部
31 無線通信回線
36 携帯側情報送受手段(制御情報出力手段、情報送出手段)
40 端末コネクタ部
43 重心位置算出手段
44 重心位置制御手段
45 前傾姿勢制御手段
46 前傾走行制御手段
47 補助輪
48 補助輪昇降機構部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【特許文献1】特開2002−321180号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと、
カメラ機能及びマイク機能を有し、無線通信回線と接続して双方向通信可能な携帯情報端末と、
前記ロボットを制御する制御情報を、前記無線通信回線を通じて前記携帯情報端末に送出する遠隔制御端末と
を具備し、
前記ロボットは、
前記ロボットの前方の映像を映像情報として取得可能に前記カメラ機能のレンズ部を前記ロボットの進行方向に向けた状態で前記携帯情報端末を装着支持する端末装着部を有するロボット本体と、
前記ロボット本体の下方に取設され、前記制御情報に基づいて前記ロボットを自走可能にする走行機構部と、
前記携帯情報端末と接続され、前記遠隔制御端末から前記携帯情報端末を通じて送出される前記制御情報を受付け、前記ロボット本体の動作制御及び前記走行機構部の走行制御を行うロボット制御部と
をさらに具備し、
前記携帯情報端末は、
前記遠隔制御端末から送出された前記制御信号を受付け、前記ロボット制御部に出力する制御情報出力手段と、
前記カメラ機能によって取得された前記映像情報、前記マイク機能によって取得された前記ロボットの周囲の音声情報、及び、前記ロボットの動作状態及び前記走行機構部の走行状態を含む状態情報を、それぞれ前記無線通信回線を通じて前記遠隔制御端末に送出する情報送出手段と
をさらに具備することを特徴とするロボット制御システム。
【請求項2】
前記走行機構部は、
一対の前記走行車輪と、
前記走行車輪の間に架渡され、前記ロボット本体が上部に載設される車台部と、
前記走行車輪をそれぞれ独立して駆動するための一対の車輪用モータと、
前記車台部に取設され、前記車輪用モータを駆動するための駆動力を与えるための駆動バッテリと、
前記ロボットの重心位置を変化させる重心変化機構部と、
前記車台部の前後方向の傾斜角度を計測する傾斜角度センサ及び前記走行機構部の加速度を計測する加速度センサを有するセンサ部と
を具備した倒立二輪機構が採用され、
前記ロボット制御部は、
前記傾斜角度センサ及び前記加速度センサの計測に基づいて前記ロボットの重心位置を算出する重心位置算出手段と、
算出された前記重心位置及び前記重心変化機構部に基づいて、前記ロボットの重心位置を変化させる重心位置制御手段と
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のロボット制御システム。
【請求項3】
前記ロボット制御部は、
前記ロボットが一対の前記走行車輪によって直立した倒立水平状態から、走行状態に遷移する際に前記重心位置制御手段を利用して前記重心変化機構部を制御し、前記ロボットを前傾させる前傾姿勢制御手段と、
前記ロボットが前傾した状態で前記走行機構部を制御し、前記進行方向への走行を開始させる前傾走行制御手段と
をさらに具備することを特徴とする請求項2に記載のロボット制御システム。
【請求項4】
前記端末装着部は、
装着された前記携帯情報端末の装着角度を変位させ、前記カメラ機能の前記レンズ部の撮影範囲を変化させる角度変位機構部をさらに具備することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のロボット制御システム。
【請求項5】
前記走行機構部は、
一対の前記走行車輪の後方に設けられ、前記ロボットの直立を三点支持によって補助する補助輪と、
前記補助輪を昇降させる補助輪昇降機構部と
をさらに具備することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一つに記載のロボット制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−56001(P2012−56001A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200537(P2010−200537)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(310017378)株式会社エフ・アイ・ティ (1)
【Fターム(参考)】