説明

ロボット

【課題】X軸方向に水平に延びる直動レールに沿って移動される移動体を備えるものにあって、必要な可動範囲及び移動速度を確保しながらも、上下方向の小型化を図る。
【解決手段】移動体3を、X軸移動用モータ5の駆動により直動レール2に沿ってX軸方向に移動するように設け、移動体3の前面部に、旋回アーム9を、r軸用モータ10の駆動によりr軸を中心に旋回するように設ける。旋回アーム9の先端に、テレスコピック型の伸縮アームからなる直動アーム12を、Y軸移動用モータの駆動によりY軸(前後)方向に自在に移動(伸縮)するように設け、直動アーム12の筒状部14aの先端に、作業用ツールが装着される手首部11を、T軸を中心に同軸回転するように設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X軸方向に水平に延びる直動レールに沿って移動される移動体を備えるロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
工場設備(ライン)において組立等の作業を行うロボットとして、例えば特許文献1に開示された直角座標ロボット(XYロボット)が知られている。この直角座標ロボットは、工場の床上に設置されるX軸直線方向搬送装置、このX軸直線方向搬送装置によってX軸方向に移動されるY軸直線方向搬送装置、このY軸直線方向搬送装置によってY軸方向に移動されるZ軸直線方向搬送装置、このZ軸直線方向搬送装置によって上下方向(Z軸方向)に移動されると共に、Z軸周り(T軸)に回転可能な手首部を備えて構成されている。前記手首部には、チャック等の作業用ツールが交換可能に取付けられ、もって、手首部(作業用ツール)を、X,Y,Zの3軸方向に自在に移動させながら作業を行うようになっている。
【特許文献1】特開平8−141949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のようなロボットが用いられている作業ラインにあっては、例えば工場内全体の見渡しを良くしてラインの動作状況を把握し易くするといった要望から、ライン容積の小型化、特に上下方向の小型化が望まれている。従って、そのようなラインに投入されるロボットについても、X軸方向がラインのワークの搬送方向に沿って設置されることが多いため、X軸以外の高さ方向(Z軸方向)や幅方向(Y軸方向)についての小型化、特に高さ方向の小型化が求められる。
【0004】
しかしながら、上記したような、X,Y,Zの3軸全てを直動軸とした一般的な直角座標ロボットでは、例えば、手首部の上下方向の可動範囲に対応したZ軸直線方向搬送装置の高さ方向の寸法が必要となり、可動範囲を維持したままで十分な小型化を図ることができない事情がある。また、ラインの容積を小型化したとしても、タクトタイムが長くなっては意味がなく、少なくとも従来通りのタクトタイム(ロボットの移動速度)を維持することが必要となる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、X軸方向に水平に延びる直動レールに沿って移動される移動体を備えるものにあって、必要な可動範囲及び移動速度を確保しながらも、上下方向の小型化を図ることができるロボットを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のロボットは、X軸方向に水平に延びる直動レールと、この直動レールに沿ってX軸方向に直線移動される移動体と、この移動体に、基端側が前記X軸方向と直交して水平方向に延びるr軸を中心に回転可能に連結され、先端側が前記r軸から放射方向に延び、該r軸を中心に旋回される旋回アームと、この旋回アームの先端部に連結され、作業用ツールが装着可能な手首部を前記r軸と平行なY軸方向に直線移動させる直動アームとを具備するところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0007】
これによれば、アーム先端の手首部は、移動体のX軸方向の直線移動によってX軸方向に移動され、また旋回アームがr軸を中心に旋回されることにより、X軸方向と直交して水平方向に延びるr軸を中心として縦方向に回転軌跡を描くように移動され、さらに直動アームによってY軸方向に移動される。この場合、水平方向に延びるr軸を中心に旋回する旋回アームによって、上下(Z軸)方向の移動が行われるので、Z軸直線方向搬送装置を用いたものと比べて、手首部のZ軸方向の同じ可動範囲を得る場合であっても、アーム全体としてZ軸方向の寸法が短くて済む。
【0008】
また、X軸方向の移動に関しては、移動体のX軸方向移動の移動速度と、旋回アームの旋回移動のX軸方向成分とを合成した速度で移動させることも可能となる。従って、必要な移動速度を確保することができ、タクトタイムの維持或いは短縮も可能となる。さらには、ロボットの可動範囲の一部に、設備や他の装置、ワーク等の障害物が存在するような場合でも、旋回アームを上げた状態或いは下げた状態として、その障害物を回避しながら、X軸方向に移動するといった動作が可能となるので、障害物回避動作などに対する適応性の高いものとすることができる。
【0009】
本発明においては、前記直動アームを、テレスコピック型の伸縮アームから構成することができる(請求項2の発明)。これによれば、手首部を、伸縮アーム自身の伸縮によってY軸方向に移動させるものであるから、伸縮アームを必要時にのみ延ばして、それ以外の通常時には、短縮状態としておくことができる。従って、Y軸方向に関する可動範囲を確保しつつ、アームのY軸方向についての小型化をも図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を、壁付け型(吊り型)のロボットに適用した一実施例について、図面を参照しながら説明する。図1及び図2は、本実施例に係るロボット1の全体の外観を示している。尚、図1(b)に示すように、このロボット1は、例えば工場内に設けられた垂直な壁面Wに取付面(背面)側を宛がうようにして取付けられるようになっており、以下、その取付面側を背面側とし、左右方向をX軸方向、前後方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向として説明する。
【0011】
図1及び図2に示すように、このロボット1は、左右方向(X軸方向)に水平に延びる直動レール2を備えている。その直動レール2には、移動体3がX軸方向にスライド移動可能に支持されていると共に、該移動体3を直動レール2に沿ってX軸方向に直線移動させるための図示しないボールねじ機構等の直動機構が組込まれている。前記移動体3は、直動レール2の前面及び上面に配置されるような側面ほぼL字状に構成されている。
【0012】
前記直動レール2の左端部には、矩形箱状をなすベース4が設けられており、このベース4には、前記直動機構の駆動源となるX軸移動用モータ5が組込まれていると共に、外部(ロボットコントローラ)との接続のためのコネクタ等が設けられている。図1(b)に示すように、ロボット1は、壁面Wに取付けられる際には、前記ベース4の背面が壁面Wに宛がわれるようになっており、その際、壁面Wと直動レール2との間には隙間ができるようになっている。
【0013】
図1(c)及び図2(b)に示すように、直動レール2には、その隙間部分に位置して、該直動レール2の下端後辺部から後方に延びる底板6が取付けられている。前記ベース4と移動体3との間を接続する電気配線(及びエア配管)は、ケーブルベア(登録商標)7により屈曲可能に保持され、その底板6上(壁面Wと直動レール2との間の隙間部分)に配置されている。尚、図1(a)に示すように、前記底板6の底面側には、左右2箇所に位置して、外部とのボルト締結用の取付板8,8が設けられている。このロボット1は、壁面Wに取付けずに、取付板8,8を図示しない支柱(支持台)上に載置して取付けることもできる。
【0014】
前記移動体3の前面側には、旋回アーム9が連結されている。この旋回アーム9は、その基端側(図1等では上端側)が、X軸方向と直交して水平方向(前後方向すなわちY軸方向)に延びるr軸を中心に回転可能に取付けられていると共に、その先端側が、r軸から放射方向に延びて設けられている。図1(b),(c)及び図2に示すように、この旋回アーム9は、前記移動体3の上部に設けられたr軸用モータ10により、r軸を中心に自在に回転駆動(旋回)されるようになっている。尚、図1〜図3では、旋回アーム9の先端側を下方に向けた状態で示しており、以下の説明では、その状態を、上下等の向きを述べる際の基準とする。
【0015】
前記旋回アーム9の先端部には、図3にも示すように、図示しない作業用ツール(ハンド等)が取付けられる手首部11を、前記r軸と平行なY軸方向に直線移動させる直動アーム12が取付けられる。本実施例では、この直動アーム12は、いわゆるテレスコピック型の伸縮アームから構成されている。以下、この直動アーム12の構成について、図3を参照しながら詳述する。
【0016】
この直動アーム12は、前記旋回アーム9の先端側(図で下面側)に配置された板状をなす第1の移動部材13と、その第1の移動部材13の更に下面側に配置された板状をなす第2の移動部材14とを備えている。前記第2の移動部材14の図で下面側には筒状部14aが設けられ、この筒状部14aの前端面部に前記手首部11がY軸方向に平行なT軸を中心に同軸回転可能に設けられている。このとき、筒状部14a内には、手首部11を回転駆動するためのT軸用モータ15が配設されている。
【0017】
前記第1の移動部材13の裏面(図で上面)には、Y軸(前後)方向に延びる第1のスライドレール16が設けられていると共に、Y軸(前後)方向に長い第1のラック17が設けられている。第1の移動部材13は、前記第1のスライドレール16が、前記旋回アーム9の先端面(図で下面)に設けられた第1のリニアガイドブロック18にスライド移動自在に支持されることにより、旋回アーム9に対しY軸(前後)方向に移動可能とされている。
【0018】
前記第2の移動部材14の裏面(図で上面)には、Y軸(前後)方向に延びる第2のスライドレール19が設けられていると共に、Y軸(前後)方向に長い第2のラック20が設けられている。第2の移動部材14は、前記第2のスライドレール19が、前記第1の移動部材13の表面(図で下面)に設けられた第2のリニアガイドブロック21にスライド移動自在に支持されていることにより、第1の移動部材13に対しY軸(前後)方向に移動可能とされている。
【0019】
そして、前記旋回アーム9内には、Y軸移動用モータ22が配設されている。このY軸移動用モータ22は、その回転軸22aが旋回アーム9の外壁を貫通して下方に突出しており、更にその先端側が、前記第1の移動部材13に形成されたY軸方向に長い長孔13aを通って第2の移動部材14の裏面側まで延びている。このY軸移動用モータ22の回転軸22aには、途中部に位置して、前記第1のラック17に噛合う第1のピニオン23が取付けられ、先端に位置して、前記第2のラック20に噛合う第2のピニオン24が取付けられている。尚、前記第2のピニオン24は、前記第1のピニオン23の2倍の径を有している。
【0020】
これにて、Y軸移動用モータ22の駆動により回転軸22aが回転されると、第1のピニオン23によって第1のラック17ひいては第1の移動部材13がY軸方向に移動すると共に、第2のピニオン24によって第2のラック20ひいては第2の移動部材14がY軸方向に移動し、もって、直動アーム12がY軸(前後)方向に自在に直線移動(伸縮)する。
【0021】
この場合、例えばY軸移動用モータ22の正方向回転により、直動アーム12が前方に移動(伸長)し、Y軸移動用モータ22の逆方向回転により、直動アーム12が後方に移動(縮む)ようになっている。この際、第2の移動部材14は、第1の移動部材13の2倍の距離だけ移動する。尚、通常時においては、図3(a)に示すように、直動アーム12は縮んだ状態にある。また、図3(b)は、直動アーム12が最も前方に伸長した状態を示している。
【0022】
次に、上記構成の作用について述べる。上記のように構成されたロボット1は、例えば工場設備(ライン)において、組立、加工、溶接、塗装等の作業を行うため、例えば、X軸方向(直動レール2の延びる方向)がラインのワークの搬送方向に沿うように、壁面W或いは図示しない支柱に支持されて設置される。このとき、図示はしないが、アーム先端の手首部11には、必要な作業用ツールが取付けられる。そして、前記X軸移動用モータ5、r軸用モータ10、Y軸移動用モータ22、T軸用モータ15、並びに前記作業用ツールは、図示しないロボットコントローラにより駆動制御される。
【0023】
このロボット1においては、移動体3が、X軸移動用モータ5の駆動により直動レール2に沿ってX軸方向に自在に移動され、移動体3の前面部に設けられた旋回アーム9が、r軸用モータ10の駆動により、X軸方向に直交して水平方向に延びるr軸を中心に回転(旋回)される。さらに、旋回アーム9の先端に設けられた直動アーム12が、Y軸移動用モータ22の駆動により旋回アーム9の先端をY軸(前後)方向に自在に移動(伸縮)され、直動アーム12(筒状部14a)の先端に設けられた手首部11が、T軸用モータ15の駆動によりT軸を中心に同軸回転される。これにより、手首部11(作業用ツール)を三次元方向(X軸、Y軸、Z軸方向)に自在に移動させながら、ロボット1による作業が行われるようになっている。
【0024】
ところで、上記のようなロボット1が用いられている作業ラインにあっては、例えば工場内全体の見渡しを良くしてラインの動作状況を把握し易くするといった要望から、ライン容積の小型化、特に上下方向の小型化が望まれている。本実施例にロボット1においては、水平方向に延びるr軸を中心に旋回する旋回アーム9によって、上下(Z軸)方向の移動が行われるので、X,Y,Zの3軸全てを直動軸とした従来の一般的な直角座標ロボットと比べて、手首部11のZ軸方向に関する同じ可動範囲を得る場合であっても、ロボット1全体としてZ軸方向の寸法が短くて済む。
【0025】
また、本実施例では、X軸方向の移動に関しては、移動体3のX軸方向移動の移動速度と、旋回アーム9の旋回移動のX軸方向成分とを合成した速度で移動させることも可能となる。従って、必要な移動速度を確保することができ、タクトタイムの維持或いは短縮も可能となる。さらには、ロボット1の可動範囲の一部に、設備や他の装置、ワーク等の障害物が存在するような場合でも、旋回アーム9を上げた状態或いは下げた状態として、その障害物を回避しながら、移動体3をX軸方向に移動させるといった動作が可能となるので、障害物回避動作などに対する適応性の高いものとすることができる。
【0026】
そして、本実施例のロボット1においては、直動アーム12としてテレスコピック型の伸縮アームを採用したので、手首部11を、直動アーム12自身の伸縮によってY軸方向に移動させることができ、直動アーム12を必要時にのみ延ばして、それ以外の通常時には、短縮状態としておくことができる。従って、Y軸方向に関する可動範囲を確保しつつ、直動アーム12のY軸方向についての小型化をも図ることができる。特に本実施例では、直動アーム12を、第1及び第2の2つの移動部材13及び14を備えて構成したので、直動アーム12を縮めた場合のY軸方向の長さ寸法を十分にコンパクトとしながらも、比較的大きい移動ストロークを得ることができたのである。
【0027】
このように本実施例のロボット1によれば、X軸方向に水平に延びる直動レール2に沿って移動される移動体3を備えるものにあって、必要な可動範囲及び移動速度を確保しながらも、全体の上下(Z軸)方向の小型化を図ることができるという優れた効果を得ることができるものである。
【0028】
尚、上記実施例では、直動アーム12をテレスコピック型の伸縮アームから構成したが、例えばボールねじ・ナット機構により直線移動される一般的な直線移動機構から構成しても良い。また、直動アーム12を伸縮アームから構成する場合でも、2つの移動部材13及び14を設けるものに限らず、1個の移動部材を移動させる構成としたり、3個以上の移動部材を移動させる構成としたりすることもできる。その他、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、ロボットの全体の外観構成を示す正面図(a),左側面図(b),上面図(c)
【図2】ロボットの正面側(a)及び背面側(b)からの斜視図
【図3】直動アーム部分の構成を、縮めた状態(a)及び伸長した状態(b)にて示す縦断面図
【符号の説明】
【0030】
図面中、1はロボット、2は直動レール、3は移動体、9は旋回アーム、11は手首部、12は直動アームを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸方向に水平に延びる直動レールと、
この直動レールに沿ってX軸方向に直線移動される移動体と、
この移動体に、基端側が前記X軸方向と直交して水平方向に延びるr軸を中心に回転可能に連結され、先端側が前記r軸から放射方向に延び、該r軸を中心に旋回される旋回アームと、
この旋回アームの先端部に連結され、作業用ツールが装着可能な手首部を前記r軸と平行なY軸方向に直線移動させる直動アームとを具備してなるロボット。
【請求項2】
前記直動アームは、テレスコピック型の伸縮アームから構成されていることを特徴とする請求項1記載のロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−99787(P2010−99787A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274263(P2008−274263)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】