説明

ローカバー

【課題】ブロンの発生が抑制されつつ、はみ出し部の発生が抑制されたローカバーの提供。
【解決手段】本発明に係るローカバー2は、金型32に投入される。この金型32は、トレッドセグメント20と、サイドプレート22、24と、ブラダー30とを備えている。このローカバー2は、トレッドセグメント20に接する外周面2aと、サイドプレートに接する外側面2bと、この外周面2aと外側面2bとの間に形成された段差とを備えている。この段差に連続する外周面2aの端は、段差に連続する外側面2bの端より軸方向外側に位置している。トレッドセグメント20とサイドプレート22との境界に対応する外側面の位置が位置Pとされると、この段差は、この位置Pより半径方向外側に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫されてタイヤが得られるローカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの加硫工程では、金型が用いられている。加硫工程では、予備成形されたローカバーが、金型に投入される。金型とブラダーとに囲まれて、キャビティが形成される。このローカバーは、キャビティ内で加圧されつつ加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーのゴム組成物がキャビティ内を流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。この加圧と加熱との際に、キャビティにエアーが残留すると、ブロンが生じる。このブロンは、タイヤの品質を低下させる。
【0003】
この金型は、トレッドセグメント及び一対のサイドプレートを備えている。このトレッドセグメントは、主にローカバーの半径方向外周面が当接するキャビティ面を備えている。サイドプレートは、主にローカバーの軸方向外側面に当接するキャビティ面を備えている。このキャビティでは、トレッドセグメントとサイドプレートとが密着して、トレッドセグメントのキャビティ面とサイドプレートのキャビティ面とが連続したキャビティ面を構成する。
【0004】
ローカバーが、金型に投入されると、このサイドプレートとトレッドセグメントとの間にローカバーが噛み込まれることがある。この噛み込みが生じると、加圧成形された空気入りタイヤの表面にはみ出し部が生じる。このはみ出し部は、タイヤの外観品質を損う。
【0005】
特開平6−23864号公報には、その表面に凹部が形成されたローカバーが開示されている。この凹部は、サイドプレートとトレッドセグメントとの境界に当接する表面に形成されている。この凹部を備えることで、このローカバーでは、噛み込みが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−23864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この凹部が小さいと、噛み込みが生じる恐れがある。凹部が小さいローカバーは、はみ出し部が生じやすい。一方で、この凹部が大きいと、凹部周辺で加圧の際に圧力がかかり難い。この凹部周辺にエアー残りが生じる。凹部が大きいローカバーは、ブロン(タイヤ内のエア残り)が生じやすい。このように、凹部が小さいと噛み込みを生じ、凹部が大きいとブロンが生じる。この凹部を備えるローカバーでも、はみ出し部が発生したり、ブロンが発生したりすることがある。この凹部の大きさの設定は、容易ではない。
【0008】
本発明の目的は、ブロンの発生が抑制されつつ、はみ出し部の発生が抑制されたローカバーの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るローカバーは、金型に投入されるローカバーである。この金型は、トレッドセグメントと、サイドプレートと、ブラダーとを備えている。このローカバーは、トレッドセグメントに接する外周面と、サイドプレートに接する外側面と、この外周面と外側面との間に形成された段差とを備えている。
この段差に連続する外周面の端は、段差に連続する外側面の端より軸方向外側に位置している。トレッドセグメントとサイドプレートとの境界に対応する外側面の位置が位置Pとされると、この段差は、この位置Pより半径方向外側に形成されている。
【0010】
好ましくは、上記位置Pから段差までの距離Lは、5mm以下である。
【0011】
好ましくは、上記段差の高さhは、1mm以上2mm以下である。
【0012】
好ましくは、上記金型は、更にビードリングを備えている。このビードリングの径を規定する直線BLから金型のキャビティ面の最深位置P1までの距離を距離Hbとし、上記位置Pから最深位置P1までの距離を距離Hpとしたときに、この距離Hbに対する距離Hpの比Hp/Hbは、0.2以上0.3以下である。
【0013】
好ましくは、このローカバーが架橋されてラジアルタイヤが得られる。
【0014】
好ましくは、このローカバーが架橋されてトレッドオーバーサイドウォール構造のタイヤが得られる。
【0015】
本発明に係るタイヤの製造法は、予備成形によりローカバーが得られる予備成形工程と、このローカバーが金型に投入される金型投入工程と、金型に投入されたローカバーが加圧及び加熱される加圧加熱工程とを含む。
この金型は、トレッドセグメントと、サイドプレートとを備えている。この予備成形工程で得られるローカバーは、トレッドセグメントに接する外周面と、サイドプレートに接する外側面と、この外周面と外側面との間に形成された段差とを備えている。この段差に連続する外周面の端は、段差に連続する外側面の端より軸方向外側に位置している。トレッドセグメントとサイドプレートとの境界に対応する外側面の位置が位置Pとされると、この段差は、この位置Pより半径方向外側に形成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るローカバーによれば、トレッドセグメントがローカバーの外周面を押し込むと、外側面も押し込まれる。段差が形成されているので、外側面がサイドプレートから離れる軸方向内側に押し込まれる。これにより、より小さい段差で、噛み込みの発生が抑制される。小さい段差で噛み込みの発生が抑制されるので、段差周辺でのブロンの発生が抑制されうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法に使用される加硫装置の一部が示された断面図である。
【図2】図2は、図1の加硫成形装置の金型及びブラダーが示された断面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係るローカバーが示された断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係るタイヤの製造方法の説明図である。
【図5】図5は、図4のタイヤの製造方法の他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1は、本発明に係るローカバー2が加硫成型装置4と共に示されている。この図1において、上下方向は軸方向であり、左右方向は半径方向であり、紙面に垂直な方向は周方向である。この加硫成型装置4は、アクチュータ6、セクターシュー8、上部コンテナプレート10、下部コンテナプレート12、上部クランプリング14、下部クランプリング16、モールドリング18、トレッドセグメント20、上部サイドプレート22、下部サイドプレート24、上部ビードリング26、下部ビードリング28及びブラダー30を備えている。
【0020】
この加硫成型装置4では、トレッドセグメント20と、一対のサイドプレートとしての上部サイドプレート22及び下部サイドプレート24と、一対のビードリングとしての上部ビードリング26及び下部ビードリング28とが、ローカバー2に当接する金型32を構成している。
【0021】
トレッドセグメント20は、軸方向に見て、実質的に円弧状である。周方向に多数のセグメント20がリング状に配置される。セグメント20の数は、通常3以上20以下である。この加硫成型装置4では、例えば、セグメント20の数は9である。図示されないが、このセグメント20が金型32に組み込まれたとき、このセグメント20の周方向の側面がその隣に配置される他のセグメント20の周方向の側面に対向する。
【0022】
図2に示されるように、トレッドセグメント20は、その円弧状の内周に、キャビティ面20a及び一対の当接面20bを形成されている。キャビテ面20aは、軸方向中央に位置している。キャビティ面20aは、半径方向外側に凹んだ面として形成さえている。一対の当接面20bは、キャビティ面20aを間にして軸方向外側に位置している。キャビティ面20aは、凸部及び凹部が形成されている。凸部は、タイヤのトレッドの溝に対応する。この凸部及び凹部により、タイヤにトレッドパターンが形成される。凸部及び凹部の形状は、トレッドパターンに応じて、適宜決定される。
【0023】
上部サイドプレート22は、実質的にリング状である。上部サイドプレート22には、軸方向内側に面するキャビティ面22aが形成されている。上部サイドプレート22の半径方向外周に、当接面22bが形成されている。上部サイドプレート22の半径方向内周に、当接面22cが形成されている。
【0024】
下部サイドプレート24は、上部サイドプレート22と同様に、実質的にリング状である。下部サイドプレート24には、軸方向内側に面するキャビティ面24aが形成されている。下部サイドプレート24の半径方向外周に、当接面24bが形成されている。下部サイドプレート24の半径方向内周に、当接面24cが形成されている。
【0025】
上部ビードリング26は、実質的にリング状である。上部ビードリング26には、外周に面するキャビティ面26a及び当接面26bが形成されている。キャビティ面26aは、当接面26bの軸方向内側に位置している。下部ビードリング28は、実質的にリング状である。下部ビードリング28には、外周に面するキャビティ面28a及び当接面28bが形成されている。キャビティ面28aは、当接面28bの軸方向内側に位置している。
【0026】
図2では、トレッドセグメント20の一方の当接面20bが上部サイドプレート22の当接面22bに当接している。上部サイドプレート22の当接面22cが上部ビードリング26の当接面26bに当接している。トレッドセグメント20の他方の当接面20bが下部サイドプレート24の当接面24bに当接している。下部サイドプレート24の当接面24cが下部ビードリング28の当接面28bに当接している。
【0027】
トレッドセグメント20のキャビティ面20aと、上部サイドプレート22のキャビティー面22aと、下部サイドプレート24のキャビティ面24aと、上部ビードリング26のキャビテー面26aと、下部ビードリング28のキャビティ面28aとブラダー30とで囲まれて、キャビティー34が形成されている。この金型32とブラダー30とにより、キャビティー34が形成されている。
【0028】
キャビティ面20aは、主にタイヤのトレッドを形成しうる。キャビティ面22a及びキャビティ面24aは、主にタイヤのサイドウォールを形成しうる。キャビティ面26a及びキャビティ面28aは、主にタイヤのビードを形成しうる。この金型32は、いわゆる「割モールド」である。
【0029】
図2の位置Pは、トレッドセグメント20と上部サイドプレート22との境界に対応しす位置である。この位置Pは、この境界を通る軸線方向の直線と外側面2bとが交差する位置として特定される。この位置Pは、ローカバー2が金型32に投入された状態で特定される。この位置Pは、トレッドセグメント20と一対のサイドプレート(22、24)とが当接した状態で特定される。
【0030】
図2の二点鎖線BLは、金型32のビードリング(26、28)の径を規定する直線である。点P1は、金型32の最深位置であって、キャビティ面20aの最深位置(半径方向で最も外側の位置)を示している。両矢印Hbは、直線BLから点P1までの距離を示している。両矢印Hpは点P1から点Pまでの距離を示している。この距離Hb及び距離Hpは、いずれも半径方向の直線距離として測られる。
【0031】
ここで、この加硫成型装置4の動作について説明がされる。図1は、この加硫成型装置4の金型32が閉じた状態が示されている。図示されないが、まず、この加硫成形装置4は、金型32が開いた状態にあって、ブラダー30が収縮した待機状態にある。
【0032】
この金型32が開いた状態では、上部コンテナプレート10及び上部サイドプレート22が、軸方向上方の待機位置にある。アクチュータ6が軸方向上方の待機位置にある。このアクチュータ6が待機位置にあることで、セクターシュー8及びトレッドセグメント20が半径方向外側の待機位置にある。
【0033】
この上部コンテナプレート10及び上部サイドプレート22が、待機位置から軸方向に下降する。ブラダー30は、ガスの充填により膨張する。アクチュータ6が待機位置から軸方向に下降する。アクチュエータ6の下降により、セクターシュー8及びトレッドセグメント20が待機位置から半径方向内側に移動する。このトレッドセグメント20の一方の当接面20bが上部サイドプレート22の当接面22bに当接する。このトレッドセグメント20の他方の当接面20bが下部サイドプレート24の当接面24bに当接する。金型32が閉じられて、加硫成形装置4は、図1に示す状態に至る。この様にして、金型32は、開いた状態から閉じた状態に移行しうる。
【0034】
この加硫成型装置4が用いられたタイヤの製造方法が説明される。この製造方法は、図示されないが、予備成形工程と、金型投入工程及び加圧加熱工程を含む加硫工程とを備えている。
【0035】
予備成形工程では、予備成形により、ローカバー2が得られる。このローカバー2は、複数の部材が組み合わされた組合せ部材が予備成形されて得られている。組合せ部材を構成する複数の部材として、インナーライナーを構成するインナーライナー部材と、カーカスを構成するカーカス部材と、ビードを構成するビード部材と、サイドウォールを構成するサイドウォール部材と、ベルトプライを構成するベルト部材と、トレッドを構成するトレッド部材とが例示される。
【0036】
図3には、予備成形により得られたローカバー2が示されている。図3の一点鎖線は、ローカバー2のセンターラインを示している。このローカバー2は、その外側に面する表面として、外周面2a、外側面2b及び段差36を備えている。外周面2aは、主に半径方向外側に面している。外側面2bは、主に軸方向外側に面している。この外周面2aの軸方向両端部は、軸方向外向きから半径方向内向きに徐々に湾曲して延びている。外周面2aの軸方向の端Eaは、段差36の一端に連続している。段差36の他端は外側面2bの半径方向外側の端Ebに連続している。外周面2aと外側面2bとは段差36を介して連続している。外側面2bの半径方向外側部は、軸方向内側から外側に向かって半径方向外側から内側向きに傾斜して延びている。外側面2bの半径方向外側部は、端Ebから半径方向内側に向かって徐々に軸方向外向きから半径方向内向きに湾曲して延びている。
【0037】
図3の両矢印Lは、点Pから端Eaまでの距離を示している。両矢印hは、この段差36の高さを示している。この段差は、端Eaから端Ebまでの距離である。この距離L及び高さhは、図3に示すローカバー2の断面において、直線距離として測定される。
【0038】
この製造方法は、このローカバー2が得られた後に、金型投入工程に移行する。加硫成型装置4は待機状態にある。金型32が開いた状態にある。ブラダー30が収縮した状態にある。ローカバー2が金型32に投入される。ローカバー2が投入された後に、ブラダー30は、ガスの充填により膨張する。上部コンテナプレート10及び上部サイドプレート22が下降して、上部サイドプレート22と下部サイドプレート24とがローカバー2を挟み込む。この挟み込まれた状態が、図4(a)に示されている。この図4(a)では、この金型32及びローカバー2は、センターラインに対してほぼ対称であるので、下部サイドプレート24は図示されない。
【0039】
この図4(a)の状態から、アクチュエータ6(図1参照)が軸方向に下降する。セクターシュー8及びトレッドセグメント20が待機位置から半径方向内側に移動する。このトレッドセグメント20と上部サイドプレート22及び下部サイドプレート24とが当接して、金型32が閉じられる。この様にして、図4(a)の状態から図4(b)の状態に移行する。
【0040】
この図4(a)の状態から図4(b)の状態への移行における、ローカバー2の段差36近傍の状態が説明される。図5(a)は、図4(a)の状態における、段差36近傍の状態を示している。図5(c)は、図4(b)の状態における、段差36近傍の状態を示している。図5(b)は、図5(a)の状態から図5(c)の状態に至る途中の状態を示している。
【0041】
図5(a)では、ローカバー2は、上部サイドプレート22とブラダー30とに挟まれている。ローカバー2の外側面2bがキャビティー面22aに押し付けられている。この外側面2bは、キャビティ面22aが当接する面である。外側面2bの一部が上部サイドプレート22の当接面22bに乗り上げている。
【0042】
図5(b)では、トレッドセグメント20がローカバー2の外周面2aに当接している。この外周面2aは、キャビティ面20aが当接する面である。トレッドセグメント20により、外周面2aが半径方向内側に押し込まれつつ、軸方向内側に押し込まれている。これにより、外側面2bも半径方向内側に押し込まれつつ、軸方向内側に押し込まれている。押し込まれることにより、外側面2bが段差36の近傍でキャビティ面20a及びキャビティ面22aから離れる向きに押し込まれる。これにより、当接面22bへの外側面2bの乗り上げが解消されている。
【0043】
更に、トレッドセグメント20が半径方向内側に移動して、上部サイドプレート22と当接する。当接面20bと当接面22bとが当接して、金型32が閉じられる。
【0044】
この金型投入工程の後に加圧加熱工程に移行する。ブラダー30の内圧が高められる。ローカバー2は、金型のキャビティ面(20a、22a、24a、26a及び28a)とブラダー30の外側表面とに挟まれて、加圧される。ローカバー2は、金型32及びブラダー30からの熱伝導により、加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバー2のゴム組成物が流動する。流動によって金型32内のエアーが移動し、金型から排出される。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。
【0045】
この金型32では、ローカバー2が段差36を備えているので、ローカバー2の噛み込みが抑制されている。この段差36の軸方向外側端が外周面2aに連続している。この段差36の軸方向内側端が外側面2bに連続している。即ち、この段差36に連続する外周面2aの端Eaは、段差36に連続する外周面2bの端Ebより軸方向外側に位置している。この段差36は、位置Pより半径方向外側に形成される。更には、この段差36の軸方向外側端は、位置Pより半径方向外側に形成される。これにより、外周面2aが押し込まれることにより、外側面2bが段差36の近傍でキャビティ面20a及び22aから離れる向きに押し込まれる。ローカバー2の噛み込みが抑制されている。
【0046】
この外側面2bが段差36の近傍でキャビティ面20a及び22aから離れる向き押し込まれるために、段差36は位置Pの近くに形成されることが好ましい。この観点から、位置Pから段差36までの距離Lは5mm以下が好ましい。
【0047】
この段差36の高さhが大きいローカバー2は、外側面2bがキャビティ面20a及び22aから大きく離れる。このローカバー2は、噛み込みの発生がより確実に抑制される。この観点から、高さhは、1mm以上が好ましい。
【0048】
この段差36の高さhが小さいローカバー2では、エアー残りの発生が抑制される。このローカバー2では、ブロンの発生が抑制される。この観点から、高さhは、2mm以下が好ましい。
【0049】
ローカバー2の外周面2aの軸方向両端部は、軸方向向きから半径方向内向きに徐々に湾曲して延びている。この外周面2aの軸方向両端部の端Eaに段差36が位置している。これにより、外周面2aがキャビティ面20aに押し込まれると、外周面2bが半径方向内側に押し込まれつつ軸方向内側に押し込まれる。この外周面2bを軸方向内側に押し込むために、この段差36は、軸方向向きから半径方向向きに徐々に湾曲して延びている外周面2aに形成されることが好ましい。この観点から、Hp/Hbは0.2以上が好ましい。またHp/Hbは0.3以下が好ましい。
【0050】
ラジアルタイヤが得られるローカバー2では、カーカスコードが周方向に対して直交する向きに延びている。このローカバー2では、このカーカスコードは、外周面2aの押し込みによる、外側面2bの押し込みに寄与する。この観点から、この段差36の形成は、ラジアルタイヤが得られるローカバー2に適している。
【0051】
所謂トレッドオバーサイドウォール構造(TOS構造)を備えるタイヤが得られるローカバー2では、トレッドを構成するトレッド部材がサイドウォールを構成するサイドウォール部材の半径方向外側に積層されている。この構造では、このトレッド部材の軸方向端を用いて段差36を形成し易い。この観点から、この段差36の形成は、所謂トレッドオバーサイドウォール構造(TOS構造)を備えるタイヤが得られるローカバー2に適している。
【0052】
ここでは、トレッドセグメント20と上部サイドプレート22との境界を例に説明がされたが、トレッドセグメント20と下部サイドプレート24との境界においても、同様に実施されうる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0054】
[実施例1]
図3の構成を備えるローカバーが100本準備された。このローカバーの段差高さhと、位置Pから段差までの距離Lとは、表1に示された。
【0055】
[実施例2から4]
段差高さhが表1に示されるようにされた。その他は、実施例1と同様にされたローカバーが、それぞれ100本準備された。
【0056】
[実施例5から7及び比較例1]
段差高さhと位置Pから段差までの距離Lとを表2に示されるようした。その他は、実施例1と同様にされたローカバーが、それぞれ100本準備された。
【0057】
[比較例2及び比較例3]
ローカバーの表面の位置Pに相当する部分に、段差に代えて凹部が形成されたローカバーがそれぞれ100本準備された。この凹部の深さdと凹部の幅wとは、表3に示すようにされた。これらのローカバーでは、その他は、実施例1と同様にされた。
【0058】
実施例1から実施例7及び比較例1から比較例3のローカバーが、図1に示された加硫成型装置を用いて加硫されて、タイヤが得られた。この得られたタイヤサイズは、「195/65R15」であった。このタイヤはラジアルタイヤであった。このタイヤは、所謂TOS構造を備えていた。この加硫成形装置の金型では、比Hp/Hbは0.23であった。
【0059】
[はみ出し部の有無及び厚みの評価]
得られたタイヤについて、はみ出し部の有無が検査された。また、はみ出し部が確認されたタイヤについては、はみ出し部の厚みが測定された。その結果が表1から3に示されている。表1から3の「はみ出し部厚み」の欄には、複数のタイヤに、はみ出し部が確認された場合には、はみ出し部が最も厚いタイヤで測定された最大厚みが記載されている。
【0060】
[ブロン評価]
得られたタイヤについて、ブロンの有無が検査された。表1から3には、それぞれ100本が検査されて、ブロンが確認された本数が記載されている。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
実施例3と比較例2とを対比すると、本発明に係るローカバーは、従来の凹部深さdより小さい段差高さhで、はみ出し部の発生が抑制されている。また、実施例4と比較例3とを対比すると、本発明に係るローカバーは、従来の凹部深さdより大きい段差高さhで、ブロンの発生が抑制されている。更に、実施例1及び2と比較例2及び3とを対比すると、本発明に係るローカバーは、従来の凹部深さdと同程度の大きさの段差高さhで、はみ出し部の発生が抑制され且つブロンの発生が抑制されている。これらの評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明されたローカバーは、トレッドセグメントとサイドプレートとを当接させる金型を用いる種々のタイヤの製造に適用されうる。
【符号の説明】
【0066】
2・・・・ローカバー
2a・・・外周面
2b・・・外側面
4・・・・加硫成型装置
6・・・・アクチュータ
8・・・・セクターシュー
10・・・上部コンテナプレート
12・・・下部コンテナプレート
14・・・上部クランプリング
16・・・下部クランプリング
18・・・モールドリング
20・・・トレッドセグメント
22・・・上部サイドプレート
24・・・下部サイドプレート
26・・・上部ビードリング
28・・・下部ビードリング
30・・・ブラダー
32・・・金型
34・・・キャビティー
36・・・段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に投入されるローカバーであって、
この金型がトレッドセグメントと、サイドプレートとを備えており、
トレッドセグメントに接する外周面と、サイドプレートに接する外側面と、この外周面と外側面との間に形成された段差とを備えており、
この段差に連続する外周面の端が段差に連続する外側面の端より軸方向外側に位置しており、
トレッドセグメントとサイドプレートとの境界に対応する外側面の位置が位置Pとされると、この段差がこの位置Pより半径方向外側に形成されているローカバー。
【請求項2】
上記位置Pから段差までの距離Lが5mm以下である請求項1に記載のローカバー。
【請求項3】
上記段差の高さhが1mm以上2mm以下である請求項1又は2に記載のローカバー。
【請求項4】
上記金型がビードリングを備えており、
ビードリングの径を規定する直線BLから金型のキャビティ面の最深位置P1までの距離を距離Hbとし、上記位置Pから最深位置P1までの距離を距離Hpとしたときに、
この距離Hbに対する距離Hpの比Hp/Hbが0.2以上0.3以下である請求項1から3のいずれかに記載のローカバー。
【請求項5】
架橋されてラジアルタイヤが得られる請求項1から4のいずれかに記載のローカバー。
【請求項6】
架橋されてトレッドオーバーサイドウォール構造のタイヤが得られる請求項1から5のいずれかに記載のローカバー。
【請求項7】
予備成形によりローカバーが得られる予備成形工程と、このローカバーが金型に投入される金型投入工程と、金型に投入されたローカバーが加圧及び加熱される加圧加熱工程とを含み、
この金型が、トレッドセグメントと、サイドプレートと、ブラダーとを備えており、
この予備成形工程で得られるローカバーが、トレッドセグメントに接する外周面と、サイドプレートに接する外側面と、この外周面と外側面との間に形成された段差とを備えており、
この段差に連続する外周面の端が段差に連続する外側面の端より軸方向外側に位置しており、
トレッドセグメントとサイドプレートとの境界に対応する外側面の位置が位置Pとされると、この段差がこの位置Pより半径方向外側に形成されているタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−103478(P2013−103478A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250886(P2011−250886)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】