説明

ロータリジョイント

【課題】 耐腐食性を有し、流体が薬品である場合にも用いることができるロータリジョイントの提供。
【解決手段】 固定側ボディ1、回転軸3およびフローティングシート2が耐薬品性を有する合成樹脂で構成され、シールリング部31がセラミックで構成され、シールリング部31が備えられる回転軸3の後端開口端面には該シールリング部31を装着可能な環状溝11eが形成され、該環状溝11eの底部とシールリング部31との間には摩擦係数の大きいフッ素ゴムで構成されるOリング15が収容されることにより回転軸3とシールリング部31との間における相対回転を阻止するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に金属腐蝕作用を有する化学薬品等の液体を回転軸側に供給するのに適したロータリジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械の主軸先端に取付けた回転工具等へ切削用のクーラント液を供給するような場合、主軸後端部、あるいは直結主軸モータのロータ軸後端部にロータリジョイントを直結し、夫々の軸心に設けた流路を介してこのロータリジョイントからクーラント液を圧送している。
【0003】
この種のロータリジョイントは、固定軸側流路と回転軸側流路との間にはそれぞれシールリングが装着され、工作機械駆動時には固定軸側に設けられたフローティングシート側のシールリングをコイルスプリングの付勢力によって回転軸側のシールリング方向に摺動させ、両シールリングの環状シール面を互いに密着させることにより回転シール部が構成されるようになっている。
【0004】
通常、前記シール部の固定側のシールリングと回転軸側のシールリングとの環状シール面は全面平滑に仕上げられ、内部の流路を流れる液体が漏れないように互いに完全に密着するようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平9−152077号 (明細書1頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来例(特許文献1)のロータリジョイントにおいては、固定側部材である本体ボディ、回転側部材である回転軸、および、本体ボディに対し回転軸を回転自在に軸支するためのベアリング等、その殆どの部品が金属で構成されているため、ロータリジョイントを介して供給される液体が金属を腐蝕させる酸やアルカリ等の薬品類である場合には用いることができないという問題がある。
【0007】
そこで、この問題点の解決策として、ロータリジョイントにおける流路の内面のみをPTFE樹脂でコーティングするようにしたものがあるが、樹脂コーティングの場合、ピンホールの発生は避けられないため、完全に金属製部品の腐蝕を防止することができない。
【0008】
また、前記シールリングは、一般的に耐磨耗性に優れたセラミックが用いられており、このセラミック製シールリングを回転軸側に固定する手段として従来では耐薬品性の面で好ましくない接着剤が用いられているため、流体が薬品である場合には用いることができない。
【0009】
本発明は、上述のような従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、耐腐食性を有し、流体が薬品である場合にも用いることができるロータリジョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明請求項1記載のロータリジョイントは、ボディ本体の一端側を開口して設けられた空間室の底部と該ボディ本体の外表面に開設されたボディ側供給口とがボディ側供給路で連通された固定側ボディと、前記ボディ側供給路内に環状摺動シール部材を介して摺動自在に装着されるボス部の一端にフランジ部が一体に設けられると共に前記ボス部からフランジ部の先端摺動面まで軸心方向に貫通する流路が設けられたフローティングシートと、後端シールリング部の摺動面を前記先端摺動面に密着させると共に先端部を前記ボディ本体の空間室から突出させた状態で該空間室内において回転軸支手段を介して回転自在に軸支されていて前記後端摺動面中心から先端部まで貫通する回転軸側供給路が形成された回転軸と、前記ボディ本体における空間室の底部と前記フローティングシートのフランジ部との間には互いに係合することにより該フローティングシートの軸方向摺動を許容しつつその回転を阻止する回転阻止手段と、前記ボディ本体における空間室の底部に設けられていて前記フローティングシートを前記回転軸方向に押圧してその先端摺動面を前記シールリング部の摺動面に常時密着させる方向に付勢するように前記フランジ部に対し作用させる付勢手段と、を備えたロータリジョイントにおいて、前記固定側ボディ、回転軸およびフローティングシートが耐薬品性を有する合成樹脂で構成され、前記シールリング部がセラミックで構成され、該シールリング部が備えられる前記回転軸の後端開口端面には該シールリング部を装着可能な環状溝が形成され、該環状溝の底部と前記シールリング部との間には摩擦係数の大きいゴムリングが収容されることにより前記回転軸とシールリング部との間における相対回転を阻止するように構成されていることを特徴とする手段とした。
【0011】
請求項2記載のロータリジョイントは、請求項1に記載のロータリジョイントにおいて、前記フローティングシートがその先端摺動面を含めてPTFEで構成されていることを特徴とする手段とした。
【0012】
請求項3記載のロータリジョイントは、請求項1または2に記載のロータリジョイントにおいて、前記ボディ本体における空間室の底部に摺動穴が設けられていてこの摺動穴内に前記フローティングシートのフランジ部から一体に突出形成された押圧ピストンが環状摺動シール部材を介して摺動自在に装着され、前記摺動穴内には前記押圧ピストンを介してフローティングシートを前記回転軸方向へ押圧付勢する金属製のコイルスプリングが収容されていることを特徴とする手段とした。
【0013】
請求項4記載のロータリジョイントは、請求項1または2に記載のロータリジョイントにおいて、前記ボディ本体における空間室の底部に摺動穴が設けられていてこの摺動穴内に前記フローティングシートのフランジ部から一体に突出形成された押圧ピストンが環状摺動シール部材を介して摺動自在に装着され、前記摺動穴内の底部には前記押圧ピストンを介してフローティングシートを前記回転軸方向へ押圧付勢する空気や液体等の圧力発生源が接続されていることを特徴とする手段とした。
【0014】
請求項5記載のロータリジョイントは、請求項1〜4のいずれか1項に記載のロータリジョイントにおいて、前記ボディ本体における空間室の内周面および前記回転軸の外周面がベアリングの内輪と外輪の形状に形成され、該内輪と外輪との間に複数の樹脂製のボールを収容させることにより前記回転軸支手段が構成されていることを特徴とする手段とした。
【0015】
請求項6記載のロータリジョイントは、請求項5に記載のロータリジョイントにおいて、前記回転軸支手段における内輪と外輪を構成するボディ本体および回転軸の素材が前記ボールを構成する素材より耐摩耗性に優れた樹脂で構成されていることを特徴とする手段とした。
【0016】
請求項7記載のロータリジョイントは、請求項1〜6のいずれか1項に記載のロータリジョイントにおいて、前記ボディ本体におけるボディ側供給口内周面に形成された環状溝内に摺動シール部材が装着されていて、外部接続パイプが摺動自在な状態で接続可能に構成されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載のロータリジョイントでは、上述のように、前記固定側ボディ、回転軸およびフローティングシートが耐薬品性を有する合成樹脂で構成され、シールリング部がセラミックで構成されることにより、少なくとも流路内面全体が耐腐食性を有すると共に、シールリング部が備えられる回転軸の後端開口端面には該シールリング部を装着可能な環状溝が形成され、該環状溝の底部とシールリング部との間には摩擦係数の大きいゴムリングが収容されることにより、シールリング部の取り付けに接着剤を用いることなしに、回転軸とシールリング部との間における相対回転を阻止するように構成されることにより、流体が薬品である場合にも用いることができるようになるという効果が得られる。
【0018】
請求項2記載のロータリジョイントでは、上述のように、前記フローティングシートがその先端摺動面を含めてPTFEで構成されることにより、フローティングシート側にセラミック製シールリングを取り付けする場合に比べ、コストを低減することができるようになると共に、回転軸側のシールリング部との回転摺動抵抗を低減させることができるようになる。
【0019】
請求項3記載のロータリジョイントでは、上述のように、前記ボディ本体における空間室の底部に摺動穴が設けられていてこの摺動穴内にフローティングシートのフランジ部から一体に突出形成された押圧ピストンが環状摺動シール部材を介して摺動自在に装着され、摺動穴内には前記押圧ピストンを介してフローティングシートを回転軸方向へ押圧付勢する金属製のコイルスプリングが収容されている構成とすることにより、金属製のコイルスプリングの腐食を防止することができるようになる。
【0020】
請求項4記載のロータリジョイントでは、上述のように、前記ボディ本体における空間室の底部に摺動穴が設けられていてこの摺動穴内に前記フローティングシートのフランジ部から一体に突出形成された押圧ピストンが環状摺動シール部材を介して摺動自在に装着され、摺動穴内の底部には押圧ピストンを介してフローティングシートを回転軸方向へ押圧付勢する空気や液体等の圧力発生源が接続されている構成とすることにより、腐蝕する可能性のある金属を排除することができるようになる。
【0021】
請求項5記載のロータリジョイントでは、上述のように、前記ボディ本体における空間室の内周面および回転軸の外周面がベアリングの内輪と外輪の形状に形成され、該内輪と外輪との間に複数の樹脂製のボールを収容させることにより回転軸支手段が構成されるようにしたことで、金属製のベアリングに比べて耐薬品性に優れると共に、コストの低減化と小型軽量化が可能になる。
【0022】
請求項6記載のロータリジョイントでは、上述のように、前記回転軸支手段における内輪と外輪を構成するボディ本体および回転軸の素材がボールを構成する素材より耐摩耗性に優れた樹脂で構成されている構成としたことにより、磨耗による部品の交換がボールのみですむため、部品交換時におけるコストを低減することができるようになる。
【0023】
請求項7記載のロータリジョイントでは、上述のように、前記ボディ本体におけるボディ側供給口内周面に形成された環状溝内に摺動シール部材が装着されていて、外部接続パイプが摺動自在な状態で接続可能に構成されるようにしたことで、外部接続パイプの熱による伸縮を、ボディ側供給口内で吸収することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例を図面により説明する。
【実施例1】
【0025】
実施例1のロータリジョイントは、請求項1〜3、5〜7に記載の発明に対応するものである。
図1は実施例1のロータリジョイントを示す縦断面図、図2は図1のII−II線における縦断面図、図3は本発明実施例のロータリジョイントを示す左側面図である。
本実施例1のロータリジョイントは、固定側ボディ1と、フローティングシート2と、回転軸3と、回転阻止手段5と、付勢手段6と、回転軸支手段7と、を主な構成として備えている。
【0026】
さらに詳述すると、前記固定側ボディ1は、ボディ本体11の一端側を開口して設けられた空間室12aの底部11aと該ボディ本体11の外表面に開設されたボディ側供給口11bとがボディ側供給路11cで連通されている。なお、この実施例1では、空間室12a部分を構成する円筒部分12はボディ側供給路11cが形成された円盤状本体部分13とは別体に形成されていて、両者がボルト14で締結固定された構造としているが、一体に形成するようにしてもよい。
【0027】
前記フローティングシート2は、前記ボディ側供給路11c内にフッ素ゴム製のOリング(環状摺動シール部材)2aを介して摺動自在に装着されるボス部21の一端にフランジ部22が一体に設けられると共に、前記ボス部21からフランジ部22の先端摺動面24まで軸心方向に貫通する流路23が設けられ、前記先端摺動面24がフランジ部22の先端面より環状に突出する状態で設けられている。
【0028】
また、前記ボディ本体11における空間室12aの底部11aにボルト2bがねじ込まれ、このボルト2bの頭部をフランジ部22に形成された摺動貫通孔25に挿通係止させることにより、フローティングシート2の軸方向摺動を許容しつつその回転を阻止する前記回転阻止手段5が構成されている。
【0029】
また、前記ボディ本体11における空間室12aの底部に摺動穴11dが設けられていて、この摺動穴11d内に押圧ピストン22aがフッ素ゴム製のOリング(環状摺動シール部材)2cを介して摺動自在に装着されると共に、摺動穴11d内には押圧ピストン22aを介してフローティングシート2を前記回転軸3方向へ押圧付勢する金属製のコイルスプリング(付勢手段)6が収容されることにより、押圧ピストン22aを介してフローティングシート2を回転軸3方向に押圧してその先端摺動面24を回転軸3の後端部に備えられた後述するシールリング部31の摺動面に常時密着させる方向に付勢するようになっている。なお、前記押圧ピストン22aは、フローティングシート2のフランジ部22から突出する状態で一体に形成してもよい。
そして、前記フローティングシート2は、その先端摺動面24を含めてその全体が摩擦抵抗の小さいPTFEで構成されている。
【0030】
前記回転軸3は、後端シールリング部31の後端摺動面31aを前記フローティングシート2の先端摺動面24に密着させると共に、先端部をボディ本体11の空間室12aから突出させた状態で、該空間室12a内において2組の回転軸支手段7を介して回転自在に軸支されていて、前記後端摺動面31aの中心から先端部まで貫通する回転軸側供給路3aが形成されている。
【0031】
前記シールリング部31は、回転軸3とは別体にセラミックでリング状に形成されていて、このシールリング部31が備えられる回転軸3の後端開口端面には、該シールリング部31を装着可能な環状溝32が形成され、該環状溝32の底部とシールリング部31との間には摩擦係数の大きいフッ素ゴムで構成されるゴムリング33が収容されることにより、接着剤を用いることなしに、回転軸3とシールリング部31との間における相対回転が阻止されるように構成されている。
【0032】
前記空間室12aを構成する円筒部分12の内周面および回転軸3の外周面がベアリングの内輪71、71と外輪72、72の形状に形成され、該内輪71、71と外輪72、72との間にそれぞれ複数(8個づつ)の樹脂製のボール73、73を収容させることにより、前記回転軸支手段7が構成されている。即ち、前記内輪71、71は、ボール73、73の外側円弧部にそれぞれ当接させる一方、前記外輪72、72は、ボール73、73の内側円弧面にそれぞれ当接させることにより、ボール73、73の軸方向移動が阻止されるようになっている。なお、前記円筒部分12の上部には、ボール73、73を出し入れ可能な孔12b、12bが形成されていて、この孔12b、12bは蓋体16、16により、それぞれ開閉自在な状態に閉塞されている。
【0033】
また、前記ボディ本体11におけるボディ側供給口11bの内周面に形成された環状溝11e内にフッ素ゴムで構成されるOリング(摺動シール部材)15が装着されていて、ボディ側供給口11bに対し固定側外部接続パイプP1が摺動自在な状態で接続可能に構成されている。
【0034】
そして、前記固定側ボディ1、回転軸3、ボルト2b、14、蓋体16は、耐薬品性を有する塩化ビニール(合成樹脂)で構成されている。
また、前記ボール73、73がポリプロピレンで構成されている。即ち、前記回転軸支手段7における内輪71、71と外輪72、72を構成する円筒部分12および回転軸3の素材がボール73、73を構成する素材より耐摩耗性に優れた塩化ビニールで構成されることにより、円筒部分12および回転軸3側が磨耗しにくい構成としている。
【0035】
また、円筒部分12の両側面には、固定側ボディ1の回転を阻止した状態で固定するための2面幅12c、12cが形成されている。
また、円筒部分12の底部には、ドレン孔12dが形成されている。
【0036】
なお、前記回転軸3の先端部には、回転側外部接続パイプP2をユニオン接続可能な雄ねじ部34が形成され、開口端面にはOリング35を装着する環状溝36が形成されている。
また、前記空間室12aから突出する回転軸3の外周には、空間室12aの先端開口部を非接触状態で閉塞するフランジ37が一体に突出形成されている。
【0037】
次に、実施例1の作用および効果を説明する。
この実施例1のロータリジョイントでは、上述のように、前記固定側ボディ1および回転軸3が、耐薬品性を有する塩化ビニール(合成樹脂)で構成され、フローティングシート2がPTFEで構成され、かつ、シールリング部31がセラミックで構成されることにより、少なくとも流体が触れる流路内面全体が耐腐食性を有すると共に、シールリング部31が備えられる回転軸3の後端開口端面には該シールリング部31を装着可能な環状溝32が形成され、該環状溝32の底部とシールリング部31との間には摩擦係数の大きいフッ素ゴムで構成されるゴムリング33が収容されることにより、シールリング部31の取り付けに接着剤を用いることなしに、回転軸3とシールリング部31との間における相対回転を阻止するように構成したため、流体が薬品である場合にも用いることができるようになるという効果が得られる。
【0038】
また、前記フローティングシート2がその先端摺動面24を含めてPTFEで構成されることにより、フローティングシート2側にセラミック製シールリングを取り付けする場合に比べ、コストを低減することができるようになると共に、回転軸3側のシールリング部31との回転摺動抵抗を低減させることができるようになる。
【0039】
また、前記ボディ本体11における空間室12aの底部に摺動穴11dが設けられていてこの摺動穴11d内に押圧ピストン22aがフッ素ゴム製のOリング2cを介して摺動自在に装着され、摺動穴11d内には前記押圧ピストンを介してフローティングシート2を回転軸方向へ押圧付勢する金属製のコイルスプリング6が収容されている構成とすることにより、金属製のコイルスプリング6の腐食を防止することができるようになる。
【0040】
また、前記ボディ本体11における空間室12aの内周面および回転軸3の外周面がベアリングの内輪71、71と外輪72、72の形状に形成され、該内輪71、71と外輪72、72との間に複数の樹脂製のボール73、73を収容させることにより回転軸支手段7が構成されるようにしたことで、コストの低減化と小型軽量化が可能になる。
【0041】
また、前記回転軸支手段7における内輪71、71と外輪72、72を構成するボディ本体11および回転軸3の素材がボール73、73を構成する素材より耐摩耗性に優れた樹脂で構成されている構成としたことにより、磨耗による部品の交換がボール73、73のみですむため、部品交換時におけるコストを低減することができるようになる。
【0042】
また、前記ボディ本体11におけるボディ側供給口11b内周面に形成された環状溝11e内にフッ素ゴムで構成されるOリング15が装着されていて、ボディ側供給口11bに対し固定側外部接続パイプP1が摺動自在な状態で接続可能に構成されるようにしたことで、固定側外部接続パイプP1の熱による伸縮を、ボディ側供給口11b内で吸収することができるようになる。
【0043】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、この他の実施例については、前記実施例と同様の構成部分の図示および説明は省略し、もしくは同一の符号を付してその説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【実施例2】
【0044】
本実施例2のロータリジョイントは、請求項1、2、4〜7に記載の発明に対応するものである。
この実施例2のロータリジョイントは、図4の縦断面図に示すように、前記ボディ本体11における空間室12aの底部に摺動穴11dが設けられていてこの摺動穴11d内に前記フローティングシート2のフランジ部22から一体に突出形成された押圧ピストン22aがフッ素ゴム製のOリング2cを介して摺動自在に装着されている点は前記実施例1と同様であるが、前記摺動穴11d内の底部には押圧ピストン22aを介してフローティングシート2を回転軸3方向へ押圧付勢する空気や液体等の圧力発生源8が接続されている点が前記実施例1とは相違したものである。
【0045】
従って、この実施例2では、腐蝕する可能性のある金属を完全に排除することができるようになるという追加の効果が得られる。
【0046】
以上、本発明の実施例を説明してきたが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施例では、前記固定側ボディ1および回転軸3を、耐薬品性を有する塩化ビニール(合成樹脂)で構成したが、その他の樹脂を用いることができる。
【0047】
また、実施例では、前記回転阻止手段5として、前記ボディ本体11における空間室12aの底部11aにボルト2bがねじ込まれ、このボルト2bの頭部をフランジ部22に形成された摺動貫通孔25に挿通係止させることにより、フローティングシート2の軸方向摺動を許容しつつその回転を阻止するようにしたが、フランジ部22から突出されたピンをボディ本体11における空間室12aの底部11aに形成された摺動係止穴に対し軸方向摺動自在に挿入係止させることにより、フローティングシート2の回り止めを行うようにしてもよい。
【0048】
また、実施例では、フローティングシート2は、その先端摺動面24を含めてその全体を摩擦抵抗の小さいPTFEで構成した例を示したが、PTFE以外の樹脂で構成させることができる。
また、実施例では、Oリング2a、2c、15、35およびゴムリング33をフッ素ゴムで構成した例を示したが、その他のゴムを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例のロータリジョイントを示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線における縦断面図である。
【図3】本発明実施例のロータリジョイントを示す左側面図である。
【図4】実施例2のロータリジョイントを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0050】
P1 固定側外部接続パイプ
P2 回転側外部接続パイプ
1 固定側ボディ
11 ボディ本体
11a 底部
11b ボディ側供給口
11c ボディ側供給路
11d 摺動穴
11e 環状溝
12 円筒部分
12a 空間室
12b 孔
12c 2面幅
12d ドレン孔
13 円盤状本体部分
14 ボルト
15 Oリング(摺動シール部材)
16 蓋体
2 フローティングシート
2a Oリング
2b ボルト
2c Oリング
21 ボス部
22 フランジ部
22a 押圧ピストン
23 流路
24 先端摺動面
25 摺動貫通孔
3 回転軸
3a 回転軸側供給路
31 シールリング部
31a 後端摺動面
32 環状溝
33 ゴムリング
34 雄ねじ部
35 Oリング
36 環状溝
37 フランジ
5 回転阻止手段
6 コイルスプリング(付勢手段)
7 回転軸支手段
71 内輪
72 外輪
73 ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディ本体の一端側を開口して設けられた空間室の底部と該ボディ本体の外表面に開設されたボディ側供給口とがボディ側供給路で連通された固定側ボディと、
前記ボディ側供給路内に環状摺動シール部材を介して摺動自在に装着されるボス部の一端にフランジ部が一体に設けられると共に前記ボス部からフランジ部の先端摺動面まで軸心方向に貫通する流路が設けられたフローティングシートと、
後端シールリング部の摺動面を前記先端摺動面に密着させると共に先端部を前記ボディ本体の空間室から突出させた状態で該空間室内において回転軸支手段を介して回転自在に軸支されていて前記後端摺動面中心から先端部まで貫通する回転軸側供給路が形成された回転軸と、
前記ボディ本体における空間室の底部と前記フローティングシートのフランジ部との間には互いに係合することにより該フローティングシートの軸方向摺動を許容しつつその回転を阻止する回転阻止手段と、
前記ボディ本体における空間室の底部に設けられていて前記フローティングシートを前記回転軸方向に押圧してその先端摺動面を前記シールリング部の摺動面に常時密着させる方向に付勢するように前記フランジ部に対し作用させる付勢手段と、
を備えたロータリジョイントにおいて、
前記固定側ボディ、回転軸およびフローティングシートが耐薬品性を有する合成樹脂で構成され、
前記シールリング部がセラミックで構成され、
該シールリング部が備えられる前記回転軸の後端開口端面には該シールリング部を装着可能な環状溝が形成され、該環状溝の底部と前記シールリング部との間には摩擦係数の大きいゴムリングが収容されることにより前記回転軸とシールリング部との間における相対回転を阻止するように構成されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項2】
請求項1に記載のロータリジョイントにおいて、前記フローティングシートがその先端摺動面を含めてPTFEで構成されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロータリジョイントにおいて、前記ボディ本体における空間室の底部に摺動穴が設けられていてこの摺動穴内に前記フローティングシートのフランジ部から一体に突出形成された押圧ピストンが環状摺動シール部材を介して摺動自在に装着され、
前記摺動穴内には前記押圧ピストンを介してフローティングシートを前記回転軸方向へ押圧付勢する金属製のコイルスプリングが収容されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項4】
請求項1または2に記載のロータリジョイントにおいて、前記ボディ本体における空間室の底部に摺動穴が設けられていてこの摺動穴内に前記フローティングシートのフランジ部から一体に突出形成された押圧ピストンが環状摺動シール部材を介して摺動自在に装着され、
前記摺動穴内の底部には前記押圧ピストンを介してフローティングシートを前記回転軸方向へ押圧付勢する空気や液体等の圧力発生源が接続されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のロータリジョイントにおいて、前記ボディ本体における空間室の内周面および前記回転軸の外周面がベアリングの内輪と外輪の形状に形成され、該内輪と外輪との間に複数の樹脂製のボールを収容させることにより前記回転軸支手段が構成されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項6】
請求項5に記載のロータリジョイントにおいて、前記回転軸支手段における内輪と外輪を構成するボディ本体および回転軸の素材が前記ボールを構成する素材より耐摩耗性に優れた樹脂で構成されていることを特徴とするロータリジョイント。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のロータリジョイントにおいて、前記ボディ本体におけるボディ側供給口内周面に形成された環状溝内に摺動シール部材が装着されていて、外部接続パイプが摺動自在な状態で接続可能に構成されていることを特徴とするロータリジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−22925(P2006−22925A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203654(P2004−203654)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000179328)リックス株式会社 (33)
【Fターム(参考)】