説明

ロードポートおよびカセット位置調整方法

【課題】載置されたカセットを所定の取り出し基準位置に移動して整合させ、また、取り出し基準位置から元の載置位置に戻すことができるロードポート及びロードポートのカセット位置調整方法を提供する。
【解決手段】載置部30は、水平面上の所定の位置に設置された基盤ステージ31、カセット50を載置する平面を有したフローティングステージ32、及び位置調整機構33を備え、位置調整機構33は、カセット50のサイズに基づいて、予め設定されているx方向およびy方向の基盤ステージ31に対するカセット50のカセット基準位置に、フローティングステージ32とともにカセット50を移動させる位置移動を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低清浄領域内に載置されており高い清浄度を保つ必要のあるウエハ基板等の物品を密閉収納しているカセットから、収納されている基板等の物品を高清浄室内に設置されている次処理のための処理装置へ供給し、または、処理された物品を高清浄室内からカセット内に収納するためのロードポートに関するものである。特に、載置されたカセットを所定の取り出し基準位置に移動して整合させ、また、取り出し基準位置から元の載置位置に戻すことができるロードポート及びロードポートのカセット位置調整方法に関するものである。以下では、当該物品としてシリコンウエハや液晶基板などの半導体基板、特に半導体ウエハを挙げて説明するが、これは例示のためであり、本願発明を限定するためのものではない。
【背景技術】
【0002】
運搬及び加工の際に高い清浄度を保つ必要がある物品としてシリコンウエハや液晶基板などの半導体基板等は、塵埃や気化した有機物など(以下単に「塵埃」という)が付着すると汚染されてしまい、汚染されると、半導体や製品の生産歩留まり、すなわち良品率を低下させてしまう。したがって、半導体ウエハ等を運搬や加工するときには、その周りを清浄度の高い環境にする必要がある。すなわち、半導体ウエハは、運搬及び加工の際に高い清浄度を維持する必要がある物品(以下「嫌塵埃物品」という)の一つである。
【0003】
一般に、半導体ウエハの加工処理は清浄度の高い部屋(以下「高清浄室」という)、いわゆるクリーンルームで行なわれる。一方、半導体ウエハの運搬においては、該半導体ウエハを密閉された清浄度の高い容器(以下「カセット」という)に入れて、カセットごと運搬する。これにより、半導体ウエハを清浄度の低い部屋や屋外など(以下「低清浄室」という)を経由して運搬することができ、運搬の際に半導体ウエハが塵埃によって汚染されることがない。
【0004】
また、高清浄室と低清浄室の境界に、閉鎖することの可能な開口部を備えたロードポートを設置し、これを用いて、半導体ウエハの加工などをするためのカセット内部の高い清浄度の空間から高清浄室の処理装置への半導体ウエハの移動(以下「ロード」という)と、加工された半導体ウエハを別の工程へ移すための高清浄室の処理装置からカセットの内部の高い清浄度の空間への半導体ウエハの移動(以下「アンロード」という)を行う。したがって、ロードポートの開口部を経由して半導体ウエハが移動することになる。カセットはロードポートの開口部側に蓋を備え、移動の際にはこの蓋が開けられる。
【0005】
ロードまたはアンロードにより半導体ウエハを移動する場合、特許文献1では、次のような手順で行われている。特許文献1では、コンテナがカセットに、ローダがロードポートに対応する。
(1)コンテナをローダの載置部のステージ上に載置する。
(2)載置したコンテナとステージとを固定して一体化させる。ここでは、一体化は予め決められた位置で行なうために、キネマティックカップリングによる位置決め機構を備えている。キネマティックカップリングによる位置決め機構は、コンテナの底面に設けられたキネマティックカップリングのV溝と、ステージ上に設けられたキネマティックカップリングのV溝と対応するキネマティックカップリングのピンとにより、ステージ上にコンテナの位置が決められる。
(3)ステージをローダの開口部へ移動させて、ローダの開口部を閉鎖させるドアとコンテナの蓋とを近接させる。
(4)ローダのドアとコンテナの蓋とを一体化させる。
(5)コンテナの蓋およびローダのドアを一体化して移動させ、コンテナおよびローダの開口部が開放される。
(6)最後に、開放されたコンテナの内部から高清浄室へ、または、高清浄室から開放されたコンテナへ半導体ウエハを移動する。
【特許文献1】特許第3827021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体ウエハは従来の30cmから45cmと大きくなってきているため、上述したような特許文献1の方法では、次のような問題が発生する。即ち、従来の径よりも大きい径の半導体ウエハを複数枚収納すると、必然的に半導体ウエハの収納重量が従来より重くなる。このような重いカセットをステージ上に載置する場合、キネマティックカップリングによる位置決め機構により、カセットとステージとを固定して一体化させると、プラスチック等の素材で形成されているカセットでは、カセットの底面に設けられたキネマティックカップリングとステージ上に設けられたキネマティックカップリングのピンによる固定では、カセットの底面が撓んでしまう場合がある。カセットの底面が撓むと、ロードポートの開口部のドアとカセットの蓋とを一体化させるための位置がずれ、蓋とドアを一体化させることができず、蓋の開閉ができなくなってしまう。
【0007】
また、カセットの底面の撓みを解決するために従来のようなプラスチック等よりも変形しづらい硬質の素材でカセットを形成した場合、半導体ウエハを収納したカセット全体の重量が重くなってしまい、ロードポートの載置部にカセットを搬送して載置するOHT(Overhead Hoist Transport)等の搬送車の重量制限で搬送できなくなってしまう等の問題も発生してしまう。
【0008】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、載置されたカセットを所定の取り出し基準位置に移動して整合させ、また、取り出し基準位置から元の載置位置に戻すことができるロードポート及びロードポートのカセット位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した従来の問題点を解決すべく下記の発明を提供する。
本発明の第1の態様にかかるロードポートは、低清浄領域内に設けられた載置部に載置された嫌塵埃物品を密閉収納したカセットから、前記嫌塵埃物品を取り出し、高清浄室内へ供給し、または、前記嫌塵埃物品を前記高清浄室から前記カセット内に収納するためのロードポートであって、前記載置部は、前記高清浄室に通ずる開口部が形成された隔壁に直行又は概ね直行する水平面上に設置された第1ステージと、前記第1ステージ上を該第1ステージと平行に自由な方向に移動可能な、前記カセットを載置する平面を有する第2ステージと、前記カセットが前記第2ステージに載置された後、前記第2ステージ上の前記カセットの側面を押圧することにより前記第2ステージを動かして、前記第2ステージを前記カセットの載置位置であるステージ基準位置から、前記カセットの配置位置であるカセット基準位置まで移動させる位置調整機構と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様にかかるロードポートは、本発明の第1の態様にかかるロードポートにおいて、前記第2ステージに対向する前記第1ステージの面にボールガイドを設置し、前記ボールガイドの回転により、前記ボールガイドの上に置かれた前記第2ステージが前記第1ステージに対して水平な所定の方向に移動可能となることを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様にかかるロードポートは、本発明の第1または2の態様にかかるロードポートにおいて、前記位置調整機構は、前記カセットの側面を挟み込むように接触する接触部を備えるカセット位置決め部材と、前記カセット位置決め部材と一体的に構成され、前記第2ステージの移動量を規定するステージ位置決め部材と、前記カセット位置決め部材と前記ステージ位置決め部材を所定の量だけ移動させる駆動部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の態様にかかるロードポートは、本発明の第3の態様にかかるロードポートにおいて、前記位置調整機構が、x方向の移動を調整するための前記カセット位置決め部材、前記ステージ位置決め部材及び前記駆動部を備えるx方向の位置調整部と、同一平面上でx方向と直交するy方向の移動を調整するための前記カセット位置決め部材、前記ステージ位置決め部材及び前記駆動部とを備えるy方向の位置調整部とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の態様にかかるロードポートは、本発明の第4の態様にかかるロードポートにおいて、前記x方向の位置調整部が、前記カセットを左右から挟み込むように前記カセットの側面を押圧する前記カセット位置決め部材、前記ステージ位置決め部材及び前記駆動部を備える位置調整部を左右に2個備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の態様にかかるロードポートは、本発明の第4の態様にかかるロードポートにおいて、前記y方向の位置調整部が、前記カセットを左右から挟み込むように前記カセットの側面を押圧する前記カセット位置決め部材、前記ステージ位置決め部材及び前記駆動部を備える位置調整部を左右に2個備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の第1の態様にかかるカセット位置調整方法は、低清浄領域内に設けられた載置部に載置された嫌塵埃物品を密閉収納したカセットから、前記嫌塵埃物品を取り出し、高清浄室内へ供給、または、前記嫌塵埃物品を前記高清浄室から前記カセット内に収納するためのロードポートの前記載置部に載置される前記カセットのカセット位置調整方法であって、(a)第1ステージ上に第1ステージと平行に自由な方向に移動可能な第2ステージであって、前記カセットを載置する位置であるステージ基準位置に停止している前記第2ステージ上に、前記カセットを載置する工程と、(b)前記カセットの載置された前記第2ステージを、前記カセットを押圧することにより、前記カセットのロードポート上の配置位置であるカセット基準位置まで移動させる工程と、を備えていることを特徴とする。
【0016】
本発明の第2の態様にかかるカセット位置調整方法は、本発明の第1の態様にかかるカセット位置調整方法の前記工程(a)において、前記第2ステージの前記ステージ基準位置を記憶しており、更に、(c)前記工程(b)によって移動した前記第2ステージを、記憶している前記ステージ基準位置まで移動させることにより、前記カセットを元の載置位置に戻す工程を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、径の大きい半導体ウエハの複数収納することによりカセットおよび半導体ウエハの総重量が大きい場合であっても、第1ステージに対して移動可能な第2ステージの平面上にカセットを直置きすることにより、プラスチック等の素材で形成されているカセットであってもカセットを変形することなく、所定の位置に設置されている第1ステージとカセットとを固定して一体化するためのカセット基準位置に第2ステージとともにカセットを移動させること、即ち、カセット位置決めを実行することができる。
【0018】
また、サイズの異なるカセットを載置する場合であっても、カセット位置決め部材およびステージ位置決め部材の移動量をサイズにより変えるだけで、カセット位置決めを簡単に実行することができる。
【0019】
また、カセットに従来のようなキネマティックカップリングを設ける必要もないことから、カセットの製造コストを低減することができる。
【0020】
また、位置調整機構が、カセット位置決め部材、ステージ位置決め部材および駆動部からなる簡単な構造で構成されることから、載置部の製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施態様は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと同等なもので置換した実施態様を採用することが可能であるが、これらの実施態様も本発明の範囲に含まれる。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るロードポートの外観の概略斜視図である。図2は、カセットの外観の一例を示す概略斜視図であり、図2(a)は、カセットのみの外観の概略斜視図であり、図2(b)は、ロードポートに載置された状態のカセットの外観の概略斜視図である。図3は、本発明に係る位置調整機構の一例を説明するための図である。図4は、図3に示す位置調整機構におけるx方向のみの位置調整機構を説明するための一部断面図である。
【0023】
図1、図3および図4に示すように、ロードポート10は、半導体ウエハを加工する処理装置が置かれている高清浄室に通ずる開口部21が形成されている隔壁20に直行又は概ね直行する水平面上にカセット50(図2参照)を載置するための載置部30を備えている。
【0024】
載置部30は、水平面上の所定の位置に設置された基盤ステージ31、カセット50を載置する平面を有したフローティングステージ32、位置調整機構33、および移動ステージ34を備えている。移動ステージ34には基盤ステージ31及び位置調整機構33が固定されており、移動ステージ34は、カセット50が位置決めされた後にフローティングステージ32上に位置決めされたカセット50を、基盤ステージ31共々開口部21方向に移動させるためのステージである。移動ステージ34は、カセット50の位置決めを実行している間は、所定の基準位置に停止している。また、隔壁20の開口部21にはドア22が設けられている。
【0025】
カセット50には、図2に示すように、蓋51が設けられている。カセット50がフローティングステージ32上に位置決めされた後に、移動ステージ34が隔壁20の開口部21方向に移動して、ドア22とカセット50の蓋51とを係合させて一体化させる。その後、蓋51をカセット50から外しながら一体化したドア22と蓋51を一方向へ移動させることにより、カセット50およびロードポート10の開口部が開放される構成となっている。
【0026】
基盤ステージ31は、移動ステージ34の固定された水平な面を有する板状部材である。フローティングステージ32は、基盤ステージ31の上面に設置されているボールガイド45(図4参照)の上に置かれ、ボールガイド45を回転することにより、基盤ステージ31に対して平行な水平面上の所定の方向に移動可能な板である。以下、所定の移動方向としてx方向およびy方向を例に挙げて説明する。ボールガイド45は、フローティングステージ32をx方向及びy方向に自由に移動させる手段の例示であり、他の手段を用いても良い。
【0027】
図5に、本発明に適用可能なボールガイド45の一例を示す。図5は、ボールガイド45の一例を示す拡大図で、図5(a)はその外観斜視図であり、図5(b)はその中央断面図である。図5に示すように、ボールガイド45は、半球状の空間44を有したケース48と、空間44に接するように回転しながら移動するボール47と、ボール47に接する回転するボール46と、ボール46の上部分をケース48の外部に露出させるための孔を有する上蓋49から構成されている。ケース48は基盤ステージ31基盤ステージ31の所定の位置に固定され、ボール46の上に置かれたフローティングステージ32は、ボール46の回転により、基盤ステージ31に対して平行な水平面上の所定の方向に移動可能となる。
【0028】
図1、図3および図4にカセット位置を調整する機構の一例として位置調整機構33を例示する。位置調整機構33は、フローティングステージ32上に載置されたカセット50(図1,3,4では図示せず)の側面を接触部43a乃至43dによって押すことにより、カセット50をフローティングステージ32と一緒にx方向およびy方向に移動させることができる。位置調整機構33の各位置調整部33a乃至33dは、それぞれピストン又はモータ等の駆動部42a乃至42dを備えており、カセット50の大きさに基づいて定められる所定量だけ位置調整部33a乃至33dの接触部43a乃至43dをそれぞれ前後方向に移動させることができる。これにより、カセットを所定の位置まで押圧移動させる。
【0029】
位置調整機構33は、x方向の位置移動を実行する位置調整部33a及び33bと、y方向の位置移動を実行する位置調整部33c及び33dとを有し、位置調整部33a,33bには、先端に接触部43a及び43bを有するカセット位置決め部材40a,40bと、ステージ位置決め部材41a,41bと、駆動部42a,42bを備えている。また、同様に、位置調整部33c,33dには、先端に接触部43c及び43dを有するカセット位置決め部材40c,40dと、ステージ位置決め部材41c,41dを備えている。
【0030】
また、カセット位置決め部材40a,40b,40c,40dと、ステージ位置決め部材41a,41b,41c,41dとは、それぞれ一体的に移動するように形成されている。
【0031】
また、ステージ位置決め部材41a,41bの先端凸部には、フローティングステージ32の下面のx方向の直線上に設けられた2個の凹部60a,60bに嵌って、凹部60a,60bの中の空間をx方向に移動することが可能な部材を備えており、ステージ位置決め部材41c,41dの先端凸部にも、ステージ位置決め部材41a,41bと同様に、フローティングステージ32の下面のy方向の直線上に設けられた2個の凹部(図示せず)に嵌って、2個の凹部の中をそれぞれy方向に移動することが可能な部材を備えている。ステージ位置決め部材41a乃至41dは、カセット50が載置されていないときには、一番外側に移動しており、ステージ位置決め部材41a乃至41dの先端凸部がそれぞれ対応する凹部60a乃至60dの外側の内壁と当接した状態となって停止している。
【0032】
x方向の位置調整を説明することにより、本実施形態にかかるロードポート10の位置調整機能及び作用効果を説明する。x方向の位置調整は、位置調整部33a及び33bを用いて行われる。フローティングステージ32とともにカセット50をx方向に移動させる位置移動は、駆動部42aにより、カセット位置決め部材40aを、カセット50のサイズに基づいて予め設定されている移動量だけx方向の直線上を互いの間隔を縮めるように移動させることにより行われる。この移動により、x方向の直線上に載置されたカセット50の側面をカセット位置決め部材40aと40bの接触部43aと43bとで押して、カセット50をフローティングステージ32とともにカセット基準位置まで移動させる。カセット位置決め部材40a及び40bの接触部43a及び43bがカセットの側面に接触するまでの間は、ステージ位置決め部材41a及び41bの先端凸部は、フローティングステージ32の下面に設けられた凹部60a及び60bの中を通過する。双方の接触部43a及び43bがカセット50の側面に接触してカセットを挟んだ状態でちょうどカセット基準位置となり移動は停止する。フローティングステージ32のカセット50を載置する表面は、カセット50の底面との摩擦係数が高くなるような構成とすることが望ましい。
【0033】
また、カセット基準位置からステージ基準位置にフローティングステージ32を戻すための位置移動は、駆動部42aにより、ステージ位置決め部材41aを、x方向の直線上を互いの間隔を広げるように外方向に移動させることにより行う。このように、ステージ位置決め部材41a及び41cを外方向に移動すると、所定量移動した時点で、ステージ位置決め部材41a及び41cの先端凸部が凹部60a及び60bの外側の内面と係合してフローティングステージ32を引っ張り、元のステージ基準位置までフローティングステージ32を移動させる。
【0034】
y方向の位置調整も、位置調整部33c及び33dを用いる点が異なるだけで、その作用効果はx方向の移動とまったく同様である。
【0035】
尚、上述した基盤ステージ31は本発明の請求項に記載の第1ステージに対応し、フローティングステージ32は本発明の請求項に記載の第2ステージに対応する。
【0036】
次に、図6及び図7を用いて、載置部に載置されたカセットのカセット位置調整方法の2つの手順を説明する。
【0037】
図6は、位置調整機構33を用いたロードポート10の載置部30に載置されたカセット50のカセット位置調整方法の第1の例を説明するための図である。以下はx方向について説明する。y方向についてもx方向と同様である。図6では、左側の位置調整部33bに駆動部42aが設けられておらず、基盤ステージ31に固定されている。
【0038】
(1)フローティングステージ32のホームポジション(ステージ基準位置)
図6(a)に示すように、駆動部42aにより、ステージ位置決め部材41aを、フローティングステージ32の下面のx方向の直線上に設けられた凹部60aの中を矢印70の方向に、基盤ステージ31に対する基準位置Cまで移動させた位置がフローティングステージ32のホームポジションである。ステージ位置決め部材41aの先端凸部と凹部60aの外側内壁とが接触した状態であっても、ボールガイド45により、基盤ステージ31に対してフローティングステージ32が移動可能であるので、ステージ位置決め部材41bの先端凸部が凹部60bの外側内壁と当接するまでフローティングステージ32はステージ位置決め部材41aとともに移動することができる。基準位置Cは、ステージ位置決め部材41aとステージ位置決め部材41bとの間隔が最大になる位置であり、ステージ位置決め部材41aとステージ位置決め部材41bによって、フローティングステージ32が一時的に基盤ステージ31に対して固定されるホームポジション(ステージ基準位置)である。即ち、ステージ位置決め部材41aが基準位置Cに移動することにより、フローティングステージ32がステージ基準位置へ移動する。
【0039】
(2)フローティングステージ32上へのカセット50の載置
図6(a)に示すように、OHT等によりホームポジション(ステージ基準位置)にあるフローティングステージ32上にカセット50が載置される。このときカセット50の載置基準位置は位置Aである。
【0040】
(3)カセット50の載置基準位置を、基盤ステージ31に対するカセット基準位置Bとなるようにカセット50を移動させるための調整手順
図6(b)に示すように、駆動部42aにより、カセット位置決め部材40aを、矢印71の方向に、カセット50のサイズに対応した移動量Hだけ移動させる。カセット50はフローティングステージ32に乗ったまま図の左方向に移動する。このとき、カセット位置決め部材40aの接触部43aとカセット50とが接触した状態であっても、ボールガイド45により、フローティングステージ32上のカセット50をカセット位置決め部材40aとともに移動させることができる。ここで、カセット50のサイズに対応した移動量Hは、カセット位置決め部材40aの接触部43aとカセット位置決め部材40bの接触部43bとの間隔がカセット50の幅Wとなる量である。即ち、カセット位置決め部材40bの位置は基盤ステージ31に固定されるので、カセット50の基準位置は、基盤ステージ31に対するカセット基準位置Bに移動する。これにより基準位置の誤差Lが調整される。
【0041】
(4)カセット50を載置したフローティングステージ32をステージ基準位置への移動
ウエハ等の処理終了後、ロードポート10の載置部30に載置されているカセット50をOHTにより別の場所に搬送するときは、カセット50をOHTが記憶している元の載置位置(載置基準位置)にカセット50を戻すことが要求される。そのための位置調整である。図6(c)に示すように、駆動部42aにより、ステージ位置決め部材41aを、フローティングステージ32の下面のx方向の直線上に設けられた凹部60aの中を矢印70の方向に、基盤ステージ31に対する基準位置Cまで移動させる。即ち、上述した(1)の処理により、フローティングステージ32がステージ基準位置へ移動する。
【0042】
(5)フローティングステージ32上のカセット50の移動
図6(c)に示すように、OHT等によりフローティングステージ32上のカセット50を別の場所に搬送する。
【0043】
このように、図6の構成では、一つの駆動装置のみで左右にステージ位置決め部材41a及びカセット位置決め部材40aを移動させることにより、ロードポート10の載置部30に載置されたカセット50の位置を調整する。これにより、径の大きい半導体ウエハを複数収納してカセットおよび半導体ウエハの総重量が大きくなった場合であっても、基盤ステージ31に対して移動可能なフローティングステージ32の平面上にカセット50を直置きすることにより、プラスチック等の素材で形成されているカセット50であってもカセットを変形することなく、所定の位置に設置されている基盤ステージ31とカセット50とを固定して一体化するためのカセット基準位置にフローティングステージ32とともにカセット50を移動させること、即ち、カセット位置決めを実行することができる。
【0044】
また、サイズの異なるカセット50を載置する場合であっても、カセット位置決め部材40およびステージ位置決め部材41の移動量をサイズにより変えるだけで、カセット位置決めを簡単に実行することができる。
【0045】
また、カセット50に従来のようなキネマティックカップリングを設ける必要もないことから、カセット50の製造コストを低減することができる。
【0046】
また、位置調整機構33が、カセット位置決め部材40、ステージ位置決め部材41および駆動部42からなる簡単な構造で構成されることから、載置部33の製造コストを低減することができる。
【0047】
上述した位置調整機構33は、x方向の位置調整部33a及びy方向の位置調整部33cにのみ、駆動部42a及び駆動部42cが備えられている構成であるが、全ての位置調整機構33に駆動部42を備えるよう構成しても良い。即ち、x方向の位置調整部33a,33bに駆動部42a,42bを備え、y方向の位置調整部33c,33dに駆動部42c,42dを備えても良い。
【0048】
このときのカセット位置調整方法を第2の例として以下に説明する。図7は、全ての位置調整機構33に駆動部42が備えられているときの、カセット50のカセット位置調整方法を説明するための図である。以下はx方向について説明する。y方向についてもx方向と同様である。
【0049】
(1)フローティングステージ32のホームポジション(ステージ基準位置)
図7(a)に示すように、駆動部42a,42bにより、ステージ位置決め部材41a,41bを、フローティングステージ32の下面のx方向の直線上に設けられた凹部60a,60bの中を矢印80a,80bの方向に、基盤ステージ31に対する基準位置C´,C´´まで移動させた位置がフローティングステージ32のホームポジションである。ステージ位置決め部材41aの先端凸部又は41bの先端凸部と凹部60aの外側内壁又は60bの外側内壁とが接触した状態であっても、ボールガイド45により、基盤ステージ31に対してフローティングステージ32が移動可能であるので、ステージ位置決め部材41aの先端凸部又は41bの先端凸部が凹部60aの外側内壁又は60bの外側内壁と当接するまでフローティングステージ32はステージ位置決め部材41a又は41bとともに移動することができる。基準位置C´,C´´は、ステージ位置決め部材41aとステージ位置決め部材41bとの間隔が最大になる位置であり、ステージ位置決め部材41aとステージ位置決め部材41bによって、フローティングステージ32が一時的に基盤ステージ31に対して固定されるホームポジション(ステージ基準位置)である。即ち、ステージ位置決め部材41a,41bが基準位置C´,C´´に移動することにより、フローティングステージ32がステージ基準位置へ移動する。
【0050】
(2)フローティングステージ32上へのカセット50の載置
図7(a)に示すように、OHT等によりホームポジション(ステージ基準位置)にあるフローティングステージ32上にカセット50が載置される。このときカセット50の載置基準位置は位置Aである。
【0051】
(3)カセット50の載置基準位置を、基盤ステージ31に対するカセット基準位置Bとなるようにカセット50を移動させるための調整手順
図7(b)に示すように、駆動部42a,42bにより、カセット位置決め部材40a,40bを、矢印81a,81bの方向に、カセット50のサイズに対応した移動量H´、H´´だけ移動させる。通常は移動量H´とH´´は同じ値である。図7の場合は、カセット50はフローティングステージ32に乗ったまま図の左方向に移動する。このとき、カセット位置決め部材40aの接触部43a又は40bの接触部43bとカセット50とが接触した状態であっても、ボールガイド45により、フローティングステージ32上のカセット50をカセット位置決め部材40a又は40bとともに移動させることができる。ここで、カセット50のサイズに対応した移動量H´は、カセット位置決め部材40aの接触部43aとカセット位置決め部材40bの接触部43bとの間隔がカセット50の幅Wとなる量である。即ち、カセット位置決め部材40a,40bの移動量移動量H´、H´´は予め決められるので、カセット50の基準位置は、基盤ステージ31に対するカセット基準位置Bに移動する。これにより基準位置の誤差L´が調整される。
【0052】
(4)カセット50を載置したフローティングステージ32をステージ基準位置への移動
ウエハ等の処理終了後、ロードポート10の載置部30に載置されているカセット50をOHTにより別の場所に搬送するときは、カセット50をOHTが記憶している元の載置位置(載置基準位置)にカセット50を戻すことが要求される。そのための位置調整である。図7(c)に示すように、駆動部42a,42bにより、ステージ位置決め部材41a,41bを、フローティングステージ32の下面のx方向の直線上に設けられた凹部60a,60bの中を矢印80a,80bの方向に、基盤ステージ31に対する基準位置C´,C´´まで移動させる。即ち、上述した(1)の処理により、フローティングステージ32がステージ基準位置へ移動する。
【0053】
(5)フローティングステージ32上のカセット50の移動
図7(c)に示すように、OHT等によりフローティングステージ32上のカセット50を別の場所に搬送する。
【0054】
上述したように、すべての位置調整機構33に駆動部42を備えた場合、1つの位置調整機構33による移動が短くなることから、即ち、図6の移動量Hに比較して図7の移動量H´,H´´が小さくなることから、短時間でカセット位置を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るロードポートの外観の概略斜視図である。
【図2】カセットの外観の概略斜視図である。
【図3】位置調整機構を説明するための図である。
【図4】図3のx方向の位置調整機構を説明するための一部断面図である。
【図5】ボールガイド45の拡大図である。
【図6】位置調整機構33を用いたロードポート10の載置部30に載置されたカセット50のカセット位置調整方法を説明するための図である。
【図7】全ての位置調整機構33に駆動部42が備えられているときの、カセット50のカセット位置調整方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0056】
10 ロードポート
21 開口部
30 載置部
31 基盤ステージ
32 フローティングステージ
33 位置調整機構
33a,33b,33c,33d 位置調整部
40a,40b,40c,40d カセット位置決め部材
41a,41b,41c,41d ステージ位置決め部材
42a,42b,42c,42d 駆動部
43a,43b,43c,43d 接触部
45 ボールガイド
50 カセット




【特許請求の範囲】
【請求項1】
低清浄領域内に設けられた載置部に載置された嫌塵埃物品を密閉収納したカセットから、前記嫌塵埃物品を取り出し、高清浄室内へ供給し、または、前記嫌塵埃物品を前記高清浄室から前記カセット内に収納するためのロードポートであって、
前記載置部は、
前記高清浄室に通ずる開口部が形成された隔壁に直行又は概ね直行する水平面上に設置された第1ステージと、
前記第1ステージ上を該第1ステージと平行に自由な方向に移動可能な、前記カセットを載置する平面を有する第2ステージと、
前記カセットが前記第2ステージに載置された後、前記第2ステージ上の前記カセットの側面を押圧することにより前記第2ステージを動かして、前記第2ステージを前記カセットの載置位置であるステージ基準位置から、前記カセットの配置位置であるカセット基準位置まで移動させる位置調整機構と、
を備えることを特徴とするロードポート。
【請求項2】
前記第2ステージに対向する前記第1ステージの面にボールガイドを設置し、前記ボールガイドの回転により、前記ボールガイドの上に置かれた前記第2ステージが前記第1ステージに対して水平な所定の方向に移動可能となることを特徴とする請求項1に記載のロードポート。
【請求項3】
前記位置調整機構は、
前記カセットの側面を挟み込むように接触する接触部を備えるカセット位置決め部材と、
前記カセット位置決め部材と一体的に構成され、前記第2ステージの移動量を規定するステージ位置決め部材と、
前記カセット位置決め部材と前記ステージ位置決め部材を所定の量だけ移動させる駆動部と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のロードポート。
【請求項4】
前記位置調整機構は、
x方向の移動を調整するための前記カセット位置決め部材、前記ステージ位置決め部材及び前記駆動部を備えるx方向の位置調整部と、
同一平面上でx方向と直交するy方向の移動を調整するための前記カセット位置決め部材、前記ステージ位置決め部材及び前記駆動部とを備えるy方向の位置調整部と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載のロードポート。
【請求項5】
前記x方向の位置調整部は、前記カセットを左右から挟み込むように前記カセットの側面を押圧する前記カセット位置決め部材、前記ステージ位置決め部材及び前記駆動部を備える位置調整部を左右に2個備えることを特徴とする請求項4に記載のロードポート。
【請求項6】
前記y方向の位置調整部は、前記カセットを左右から挟み込むように前記カセットの側面を押圧する前記カセット位置決め部材、前記ステージ位置決め部材及び前記駆動部を備える位置調整部を左右に2個備えることを特徴とする請求項4に記載のロードポート。
【請求項7】
低清浄領域内に設けられた載置部に載置された嫌塵埃物品を密閉収納したカセットから、前記嫌塵埃物品を取り出し、高清浄室内へ供給し、または、前記嫌塵埃物品を前記高清浄室から前記カセット内に収納するためのロードポートの前記載置部に載置される前記カセットのカセット位置調整方法であって、
(a)第1ステージ上に第1ステージと平行に自由な方向に移動可能な第2ステージであって、前記カセットを載置する位置であるステージ基準位置に停止している前記第2ステージ上に、前記カセットを載置する工程と、
(b)前記カセットの載置された前記第2ステージを、前記カセットを押圧することにより、前記カセットのロードポート上の配置位置であるカセット基準位置まで移動させる工程と、
を備えていることを特徴とするカセット位置調整方法。
【請求項8】
前記工程(a)において、前記第2ステージの前記ステージ基準位置を記憶しており、更に、(c)前記工程(b)によって移動した前記第2ステージを、記憶している前記ステージ基準位置まで移動させることにより、前記カセットを元の載置位置に戻す工程を備えていることを特徴とする請求項7に記載のカセット位置調整方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−170726(P2009−170726A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8435(P2008−8435)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(591213232)ローツェ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】