説明

ロープ溝測定装置及びロープ溝測定方法

【課題】 非常にシンプルな構成で、かつ測定時の操作も簡単であり、綱車が測定作業の困難な場所に位置する場合であっても、ロープ溝の残存量を容易にかつ正確に測定することのできるロープ溝測定装置を提供する。
【解決手段】ロープを駆動する綱車のロープ溝の残存量を測定するロープ溝測定装置において、ロープ径と略同一の径を有する球状部材と、該球状部材の中心を貫通して自在にスライド可能とした棒状部材と、該棒状部材にスライド可能に装着され、前記球状部材を任意の位置で保持する保持部材とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ等のロープの駆動に用いる綱車の、ロープ溝の残存量を測定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にエレベータは、綱車のロープ溝にロープを巻き掛け、このロープの一端に乗りかごを、他端に釣合いおもりをそれぞれ懸吊し、該綱車を電動機で回転駆動することにより乗りかごを上下に移動させるように構成されている。そして、綱車からロープへの駆動力の伝達は、綱車のロープ溝とロープへの楔作用による摩擦力によって行われている。従って、ロープの駆動を繰返すとロープ溝は徐々に摩耗し、このロープ溝の摩耗が或る一定量進むと摩擦力が減少してロープと綱車との間にスリップが発生し、ロープに所要の駆動力が伝達されなくなる。このため、定期的にロープ溝の摩耗量や残存量を測定する必要があり、しかもその測定結果は綱車の交換時期の重要な判断材料になるため、より一層容易かつ正確に測定のできる装置或いは方法の出現が望まれていた。
【0003】
このロープ溝の測定装置或いは測定方法として、従来、ノギス固定部より突出させたノギス可動部にロープの断面形と同形の測定具を取り付けるとともに、ノギス固定部側にはその端部に、前記測定具を跨ぐように綱車表面からのロープの突出高さと同じ高さのコの字形の台を取り付けたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平1−235801公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1においては、ノギスに特殊な加工が必要となり、多大な費用がかかるばかりでなく、作業スペースの限られた狭い場所ではノギスのような長尺物を取扱うのは困難である。特に最近の中低層の建物では機械室なしエレベータが主流となり、薄形の巻上機が昇降路壁とかごとの間の狭い空間内に配置され、しかも綱車が電動機よりも昇降路壁側に位置するような場合には、作業スペースがほとんどないため、ロープ溝の測定は非常に困難となる。
【0006】
また、上記特許文献1に記載のものは、ロープ溝の摩耗量を測定するもので、ロープ溝の残存量、すなわちロープの下面から溝の底面までの距離を直接測定するものではないため、ロープ溝の残存量を綱車の交換基準としている場合には、特許文献1の測定具では正確な判断を行うことができない。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、非常にシンプルな構成で、かつ測定時の操作も極めて容易であり、綱車が測定作業の困難な場所に位置する場合であっても、ロープ溝の残存量を容易かつ正確に測定することのできるロープ溝測定装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ロープを駆動する綱車のロープ溝の残存量を測定するロープ溝測定装置において、ロープ径と略同一の径を有する球状部材と、該球状部材の中心を貫通して自在にスライド可能とした棒状部材と、該棒状部材にスライド可能に装着され、前記球状部材を任意の位置で保持する保持部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】
また本発明は、ロープ径と略同一の径を有する球状部材と、該球状部材の中心を貫通して自在にスライド可能とした棒状部材と、該棒状部材にスライド可能に挿通され、前記球状部材を任意の位置で保持する保持部材とからなるロープ溝測定装置を、前記球状部材と前記保持部材とを前記棒状部材の先端までずらした状態で綱車のロープ溝に押し当て、前記棒状部材を綱車の軸心方向に先端部がロープ溝の底面に達するまで押し込み、その後、前記棒状部材の前記球状部材より突出した部分の寸法を測定することにより、ロープの下面からロープ溝の底面までの距離を測定するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、構成がシンプルで安価なだけでなく、小形かつ軽量で測定に要する操作も極めて簡単であり、綱車が測定の困難なところに配置されていたとしても、ロープ溝に手が届きさえすれば、誰でも容易にロープ溝の残存量を正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、本発明の一実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態1におけるロープ溝測定装置の全体構成を示す図である。
【0012】
図1において、1は測定対象となるロープの公称径と略同一径の球状部材で、容易に変形しないものであれば、材質は木やプラスチック、ガラスなど何でも良い。2は球状部材1の中心を貫通して自在にスライド可能な棒状部材であり、ここでは細長い釘を棒状部材として利用した例を示している。2aは釘2の頭部であり、球状部材1が釘2から抜け落ちるのを防止する役割を果たしている。3は球状部材1を任意の位置で保持し、その位置から容易にずれないようにするための保持部材で、例えば内径が釘2の外径より僅かに小さいゴム管等を利用する。4は波板等を固定するための傘釘(図示せず)に付属している樹脂製の傘ワッシャーで、測定時に球状部材1と保持部材3を所定位置にずらすときに操作を容易にするため(特に保持部材が小さい場合など)のものである。5は釘2の先端部を覆うように取り付けられた取っ手で、ドライバーの柄のように操作を容易にするためのものであり、材質や大きさは手に馴染みやすいように適宜選択すればよい。
【0013】
図2〜図4は、図1のロープ溝測定装置を用いてロープ溝の測定を行う手順を説明するための図である。
【0014】
まず図2に示すように、傘ワッシャー4を指でずらすことにより、同時に保持部材3と球状部材1とを釘2の頭部2a側の先端までずらし、その状態で、頭部2aを綱車6の中心方向に向けて、球状部材1を測定対象のロープ溝7(ロープが掛っていない部分)に軽く押し当てる。
【0015】
次に図3に示すように、釘2の頭部2aがロープ溝7の底面7aに達するまで取っ手5を、すなわち釘2を綱車6の中心方向に向けて押し込む。
そして、釘2の頭部2aがロープ溝の底面7aに達したことを確認すると、このロープ溝測定装置をロープ溝7から取り外し、図4に示すように釘2の頭部2aが上になるようにする。このとき、保持部材3は図3における球状部材1の位置をそのまま保持することとなり、球状部材1から突出している釘2の寸法Aを直尺8等で測定すると、その値が図3に示した球状部材1の下面(ロープの下面)からロープ溝の底面までの距離Aに相当することになる。
【0016】
このように本発明によれば、小型軽量の装置で極めて簡単な操作によりロープ溝の測定を行うことができるので、作業スペースが狭くて測定が困難な場所であっても、また、測定の不慣れな作業者であっても、バラツキを生じることなく正確に測定を行うことができる。
【0017】
その他の実施形態
上記の実施形態では、球状部材の径をロープの公称径と略同一としたが、かごや釣合いおもりによる大きな張力がかかった状態では、ロープの伸びによりその有効径が減少する傾向にあることや、摩耗によりロープの有効径が徐々に減少していくことから、径の異なる球状部材を予め多数取り揃えておき、現場で実測したロープ径にできるだけ近いものを選択するようにすれば、測定精度をより一層高めることができる。
【0018】
また、上記の実施形態では、測定時に球状部材と保持部材の位置をずらすのに傘ワッシャーを用いたが、この傘ワッシャーは必ずしも必要なものではなく、同様に、取っ手5についても必須の構成部材ではなく、先端の尖っていない棒状部材を用いるのであれば、測定時に棒状部材を直接押すようにしてもよい。
【0019】
その他、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の改変を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1におけるロープ溝測定装置の全体構成を示す図である。
【図2】図1のロープ溝測定装置を用いてローブ溝の測定を行う手順を説明する図である。
【図3】図1のロープ溝測定装置を用いてローブ溝の測定を行う手順を説明する図である。。
【図4】図1のロープ溝測定装置を用いてローブ溝の測定を行う手順を説明する図である。。
【符号の説明】
【0021】
1 球状部材
2 釘(棒状部材)
3 保持部材
4 傘ワッシャー
5 取っ手
6 綱車
7 ロープ溝
8 直尺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープを駆動する綱車のロープ溝の残存量を測定するロープ溝測定装置において、ロープ径と略同一の径を有する球状部材と、該球状部材の中心を貫通して自在にスライド可能とした棒状部材と、該棒状部材にスライド可能に装着され、前記球状部材を任意の位置で保持する保持部材とを備えたことを特徴とするロープ溝測定装置。
【請求項2】
前記棒状部材に傘釘の傘ワッシャーをスライド可能に装着し、該傘ワッシャーをスライドさせることにより前記球状部材と前記保持部材とを同時にスライドさせることが可能な構成としたことを特徴とする請求項1記載のロープ溝測定装置。
【請求項3】
ロープ径と略同一の径を有する球状部材と、該球状部材の中心を貫通して自在にスライド可能とした棒状部材と、該棒状部材にスライド可能に挿通され、前記球状部材を任意の位置で保持する保持部材とからなるロープ溝測定装置を、前記球状部材と前記保持部材とを前記棒状部材の先端までずらした状態で綱車のロープ溝に押し当て、前記棒状部材を綱車の中心方向に先端部がロープ溝の底面に達するまで押し込み、その後、前記棒状部材の前記球状部材より突出した部分の寸法を測定することにより、ロープの下面からロープ溝の底面までの距離を測定するようにしたことを特徴とするロープ溝測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−18386(P2010−18386A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180077(P2008−180077)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000112705)フジテック株式会社 (138)
【Fターム(参考)】