説明

ローラの軸受部シール装置

【課題】ローラの軸受部のベアリングに錆の粉末が侵入するのを防止することにある。
【解決手段】金属製のパイプ1と、このパイプの両端内に前記パイプと共に回転するように設けた金属製のベアリングケース2と、上記パイプの軸芯に貫通させて上記ケース内に組み込んであるベアリングに両端部を軸承したシャフト3と、上記ベアリングの側面外側で迷路Bを形成するように上記シャフトに金属板製の内側シール板5を、上記ベアリングケースに金属板製の外側シール板をそれぞれ支持させ、この外側シール板と内側シール板との上記迷路の間隙にグリスCを充填したローラの軸受部シール装置において、中心の透孔に上記シャフトを貫通させて上記ベアリングケースと上記ベアリングとの間にバックシール8を介在させた構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各用途に使用する、例えばベルトコンベヤのベルトを支承するローラの軸受部のシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベヤに使用するローラは、周知のように、パイプと、このパイプの中心に貫通するシャフトと、上記パイプの両側端内に組み込むと共に、中心に貫通する上記シャフトを軸承する軸受(ベアリングの内蔵)とで構成され、コンベヤフレームのスタンドに上記シャフトの両側端を保持させて、パイプによりベルトを支承する。
【0003】
ローラの両側端は、絶えず外部にさらされていることから、運搬物の搬送中に発生する塵埃やダスト、雨水などが常にかかることが多く、ローラの回転を支持するベアリング部迄浸入することで、ベアリングの回転などの機能が損なわれることになるトラブルが多々あった。
【0004】
そこで、上述の問題を解決したローラの軸受部のシール装置がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3102664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の軸受部のシール装置によると、シャフトに金属板製の外側シール板を、ベアリングケースに金属板製の内側シール板をそれぞれ支持させて、この外側シール板と内側シール板とで迷路を形成し、この迷路にグリスを充填した構成になっている。
【0007】
このような構成によると、シャフトの両側端からダストや水分、塵埃の外部からの浸入を迷路に充填してあるグリスにより防止することで、ベアリングに到達するのを防止している。
【0008】
しかしながら、ベアリングケースの中心部に設けてある貫通孔と、この貫通孔に貫通させたシャフトとの間に空隙ができ、この空隙が常時開放状態にある。
【0009】
ところが、パイプ内の封入状態にある空気が、昼夜の外気温度差や、コンベヤの運転、休転中の温度差で空気中の水分の影響で結露が発生し、その結果パイプやハウジングの表面に錆が発生する。
【0010】
すると、その錆の粉末が上記空隙(ベアリングケースの中心部)からベアリングの内側に侵入することがあり、その結果ベアリングの機能停止や機能低下の原因となる不都合が発生した。
【0011】
そこで、この発明は、上記の問題を解消したローラの軸受部シール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明は、金属製のパイプと、このパイプの両端内に前記パイプと共に回転するように設けた金属製のベアリングケースと、上記パイプの軸芯に貫通させて上記ケース内に組み込んであるベアリングに両端部を軸承したシャフトと、上記ベアリングの側面外側で迷路を形成するように上記シャフトに金属板製の内側シール板を、上記ベアリングケースに金属板製の外側シール板をそれぞれ支持させ、この外側シール板と内側シール板との上記迷路の間隙にグリスを充填したローラの軸受部シール装置において、中心の透孔に上記シャフトを貫通させて上記ベアリングケースと上記ベアリングとの間にバックシールを介在させた構成を採用する。
【0013】
また、前記内側シール板が、シャフトに嵌装する内側筒状部と、この内側筒状部のベアリング側端縁から連なって延びる迷路形成屈曲板とで構成した第1内側シール板と、上記シャフト及び内側筒状部の外側に嵌装する外側筒状部と、この外側筒状部のベアリングの反対側端縁から連なって延びる迷路形成屈曲板とで構成した第2内側シール板とからなり、上記第1内側シール板の内側筒状部と上記屈曲板との境部分に設けた山形の突起に上記第2内側シール板の上記外側筒状部の開放縁を食い込みに係合し、また上記シャフトの外周に設けてある環状溝に上記内側筒状部の開放縁に設けてある屈曲条を嵌め込み係合した構成を採用する。
【0014】
また、突起及び屈曲条をプレスにより設ける構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明のローラの軸受部のシール装置によれば、中心の透孔にシャフトを貫通させてベアリングケースとベアリングとの間にバックシールを介在させてあるので、ベアリングケースの中心部に設けてある貫通孔とこの貫通孔に貫通させてシャフトとの空隙を上記バックシールにより閉鎖する。
【0016】
このため、ローラを構成するパイプ内の封入状態にある空気が外気の温度差や、コンベヤの運転、休転中の温度差で空気中の水分の影響で結露し、この結露にともないパイプやハウジングの表面に発生した錆の粉末がベアリング内に侵入するのを防止して、スムーズな運転の続行を保障することができる。
【0017】
また、内側シール板が、第1内側シール板と第2内側シール板とに二分割され、シャフトに第1内側シール板及び第2内側シール板の内側筒状部、外側筒状部を嵌装すると共に、内側筒状部と迷路形成屈曲板との境に設けてある山形の突起に外側筒状部の開放縁を押し込みながら食い込ませて係合状態にすると共に、シャフトの環状溝に内側筒状部の開放縁の屈曲条を嵌め込み係合してあるので、シャフトと共に第1内側シール板及び外側シール板を同体であり、しかも嵌め込み方式のため、組み立て作業が容易になると共に、ピンなどを用いた結合手段が不要になる。
【0018】
さらに、突起や屈曲条をプレスにより設けるので、製造が極めて容易になると共に、強度が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、この発明の第1の実施形態を示す一部切欠正面図である。
【図2】図2は、同上の要部を示す縦断拡大正面図である。
【図3】図3は、バックシールの一部切欠斜視図である。
【図4】図4は、第2の実施形態を示す縦断拡大正面図である。
【図5】図5は、内惻シール板を示す一部切欠斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
第1実施形態の図1から図3に示すAは、ローラを示すもので、金属製のパイプ1の両端内には、パイプ1と共に回転する金属製のベアリングケース2が設けてある。
【0022】
上記のベアリングケース2は、薄鋼板のプレス成型品で、パイプ1の両端内に嵌入して、パイプ1の内周面にベアリングケース2の周縁部を溶接に固着して共に回転するようにしたが、その他の固着手段(かしめ方式など)を採用することもある。
【0023】
また、パイプ1の軸芯にシャフト3を貫通させて、このシャフト3の両端部をベアリングケース2に組み込んであるベアリング4により回転自在に軸承してある。
【0024】
さらに、ベアリング4の外側には、水や粉塵の侵入を防止する迷路Bを形成すると共に、シャフト3に金属板製の内側シール板5が、ベアリングケース2に金属板製の外側シール板6が支持させてある。
【0025】
上記内側シール板5及び外側シール板6は、薄鋼板のプレス成型品で、シャフト3に対する内側シール板5、ベアリングケース2に対する外側シール板6の支持手段は、圧入方式により行なっている。
【0026】
そして、迷路Bの間隙には、シール効果を高めるためにグリスCが適量充填され、場合によっては、特に空間22を設けることもある。
【0027】
また、ベアリングケース2とベアリング4との間には、中心の透孔7にシャフト3を貫通させてバックシール8が介在してある。
【0028】
このバックシール8を介在する要因は、ベアリングケース2に設けてある貫孔9を閉鎖すると共に、パイプ1内に発生した錆の粉末などや水分が、ベアリング4に侵入することを阻止して、ベアリング4の機能低下をなくするもので、上記のバックシール8は、薄鋼板のプレス成型品を用いる。
【0029】
図中10はシャフト3の環状溝11に嵌め込んだベアリング4の位置決めストップリングである。
【0030】
第2実施形態の図4(図2も参照)に示す内側シール板5は、シャフト3に嵌装する内側筒状部12と、この内側筒状部12のベアリング4側端縁から連なって延びる迷路形成屈曲板13とで構成した第1内側シール板14と、シャフト3及び内側筒状部12の外側に嵌装する外側筒状部15と、この外側筒状部15のベアリング4の反対側端縁から連なって延びる迷路形成屈曲板16とで構成した第2内側シール板17とに二分割されている。
【0031】
そして、第1内側シール板14の内側筒状部12と迷路形成屈曲板13と境の内コーナーの所要位置には、山形の突起18が設けてある。
【0032】
この突起18は、プレス成型品の第1内側シール板14を形成の際、プレス成型の際設け、数も複数設けてある。
【0033】
すると、極めて容易に突起18を設け、かつ安価に製造することもでき、かつ強度が増大する。
【0034】
そして、内側筒状部12の外側に外側筒状部15を嵌装して組み立てる際、圧入することで突起18に外側筒状部15の開放縁が食い込み挟んで係合関係になるため、第1内側シール板14と第2内側シール板17との係合が良好に行なわれ、組み付け作業を容易にすると共に、ピンなどを用いた結合作業が不要になる。
【0035】
また、組み付けの際、シャフト3の環状溝19に内側筒状部12の開放縁に設けてあるプレス成形による外広がりの屈曲条20を嵌め込み係合させて、内側シール板5の定位置の位置決めを行なう。その際外側筒状部15の内側筒状部12に外接する部分と、シャフト3に外接する部分の境の段部21により屈曲条20を押え込むと移動止めになる。
そして、外側筒状部15の段部21の付近外周の全周或いは点在位置に上述の突起18と同様の山形突起23を設けておくと、強度を増す以外に、突起が屈曲条20に食い込んで屈曲条20を押さえ込み、この押さえ込みともない環状溝19に対する屈曲条20の係合関係が強力になる。
【0036】
なお、ローラAのパイプ1や、ベアリングケース2、迷路Bの形成用の内側シール板5、外側シール板6、バックシール8(鋼板のプレス成型品)を金属製とした要因は、環境面でのリサイクルや廃棄処分の問題を解消することにある。
【符号の説明】
【0037】
A ローラ
B 迷路
C グリス
1 パイプ
2 ベアリングケース
3 シャフト
4 ベアリング
5 内側シール板
6 外側シール板
7 透孔
8 バックシール
9 貫孔
12 内側筒状部
13 迷路形成屈曲板
14 第1内側シール板
15 外側筒状部
16 迷路形成屈曲板
17 第2内側シール板
19 環状溝
20 屈曲条
21 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のパイプと、このパイプの両端内に前記パイプと共に回転するように設けた金属製のベアリングケースと、上記パイプの軸芯に貫通させて上記ケース内に組み込んであるベアリングに両端部を軸承したシャフトと、上記ベアリングの側面外側で迷路を形成するように上記シャフトに金属板製の内側シール板を、上記ベアリングケースに金属板製の外側シール板をそれぞれ支持させ、この外側シール板と内側シール板との上記迷路の間隙にグリスを充填したローラの軸受部シール装置において、中心の透孔に上記シャフトを貫通させて上記ベアリングケースと上記ベアリングとの間にバックシールを介在させたことを特徴とするローラの軸受部シール装置。
【請求項2】
前記内側シール板が、シャフトに嵌装する内側筒状部と、この内側筒状部のベアリング側端縁から連なって延びる迷路形成屈曲板とで構成した第1内側シール板と、上記シャフト及び内側筒状部の外側に嵌装する外側筒状部と、この外側筒状部のベアリングの反対側端縁から連なって延びる迷路形成屈曲板とで構成した第2内側シール板とからなり、上記第1内側シール板の内側筒状部と上記屈曲板との境部分に設けた山形の突起に上記第2内側シール板の上記外側筒状部の開放縁を食い込みに係合し、また上記シャフトの外周に設けてある環状溝に上記内側筒状部の開放縁に設けてある屈曲条を嵌め込み係合したことを特徴とする請求項1に記載のローラ軸受部のシール装置。
【請求項3】
前記突起及び屈曲条が、プレスにより設けられたことを特徴とする請求項2に記載のローラ軸受部のシール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220513(P2011−220513A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99243(P2010−99243)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(504385982)株式会社JRC (17)
【Fターム(参考)】