説明

ローラ成形用金型、現像ローラ、電子写真装置用プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】熱硬化性弾性樹脂の金型成形において、硬化終了後、金型から弾性体を脱型する際に、冷却することなく、さらには離型剤を使用することなく、形状精度の良い弾性体を得ることができる金型を提供する。
【解決手段】軸芯体、弾性層及び表面層からなる現像ローラを製造する際の、軸芯体上に弾性層を形成して中間の弾性ローラを製造するのに使用するローラ成形用金型が、内壁面が窒化物層であり、かつその表面粗さRa(算術平均粗さ)が0.1μm以上0.7μm以下であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現像ローラ製造に際し用いるローラ成形用金型に係り、この金型を用いて成形される現像ローラ及びこの現像ローラ搭載した電子写真装置用プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属等の剛性のある軸芯体の外周上に、弾性、導電性等の様々な機能を有する種々の材料を配した多層ローラの弾性層の形成には、研磨などの後工程を必要とせずに比較的再現性良く、所望の形状精度の弾性ローラが得られることから、金型成形が多く行われている。
【0003】
この金型成形においては、軸芯体を円筒金型内にその両端を、注入口のついたコマにて支持することにより配し、その注入口から液状の弾性層材料を注入し、その後、加熱することにより液状材料を熱硬化させて所望の形状をもった弾性ローラを得る。
【0004】
ところで、加熱による熱硬化終了後に、弾性ローラを金型から取り出す(以後、脱型)際には、弾性層が、熱膨張により金型内壁面に強い力で押し付けられている状態である。そのため、脱型する前に金型及び内部の弾性ローラを充分に冷却し、弾性層の熱膨張を除去してから、脱型しなければならない。もし冷却が不十分であると、弾性層の形状が変形したり、変形に耐えない場合には破壊が起きたりする。
【0005】
また、金型内壁と弾性層との接触面での摩擦力を低減するために、金型内壁に離型剤を塗布する手法も多くとられている。
【0006】
しかしながら、金型の材質や弾性層の機械的特性、さらには両材質間の親和性の程度によっては、充分冷却した後に脱型をした場合においても、金型内壁との接触ストレスに弾性層が耐えられず、変形したり、さらには破壊したりして、問題となることがあった。
【0007】
このような問題に対し、金型内壁と弾性層との剥離性をよくするために、金型内壁面に改質処理(窒化処理等)を行う方法も提案されている(例えば、特許文献1)。
【0008】
このような金型表面処理を行う手法では、確かに金型内壁と弾性層との剥離性が向上している。しかし、それでも、弾性ローラを金型から脱型するには、上述したような理由から、ある程度冷却を行い、弾性ローラの外径を金型の内径よりも小さくしてから脱型を行う必要があった。この冷却工程には熱交換機等の設備が必要であり、さらに金型を弾性体の脱型後再び成形に使用する際に、常温から硬化温度までの昇温に大きな熱量が必要となり、成形サイクル時間が増加するだけでなく、使用する電力もまた大きくなり問題であった。
【特許文献1】特開平10−176258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、熱硬化性弾性樹脂の金型成形において、硬化終了後、金型から弾性体を脱型する際に、冷却することなく、さらには離型剤を使用することなく、形状精度の良い弾性体を得ることができる金型を提供することを課題とする。さらに、この金型を用いて成形された現像ローラ及びこの現像ローラを搭載した電子写真装置用プロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、金型内壁面が窒化物層を有していると離型性が良好となることに注目し、成形後に金型及び成形物を冷却せずとも容易に脱型可能な熱硬化性弾性樹脂用の金型として、該窒化物層表面の表面粗さRaを特定範囲にコントロールしておくとよいことを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明の課題は以下の構成により達成される。
【0012】
(1)軸芯体、弾性層及び表面層からなる現像ローラを製造するに際し、軸芯体上に弾性層を形成して中間の弾性ローラを製造するのに使用するローラ成形用金型であって、該金型内壁面が少なくとも窒化物層を有し、かつ内壁面の表面粗さRa(算術平均粗さ(JIS B0601−2001))が0.1μm以上0.7μm以下であることを特徴とするローラ成形用金型。
【0013】
(2)窒化物層が、金型の内壁の露出金属面を窒化処理することにより形成されたものである上記(1)のローラ成形用金型。
【0014】
(3)弾性層が、付加反応架橋型液状シリコーンゴムを用い形成される上記(1)又は(2)のローラ成形用金型。
【0015】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかのローラ成形用金型を用いて製造された弾性ローラの表面に表面層が形成されたものであることを特徴とする現像ローラ。
【0016】
(5)表面層が、ウレタン結合を有する材料で形成された上記(4)の現像ローラ。
【0017】
(6)現像ローラの表面に現像剤の薄層を形成した現像ローラを画像形成体に接触又は近接させ、画像形成体表面に形成された静電潜像に現像剤を供給することにより、該画像形成体表面に可視画像を形成させる電子写真装置用プロセスカートリッジにおいて、該現像ローラが、上記(4)又は(5)の現像ローラであることを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジ。
【0018】
(7)現像ローラの表面に現像剤の薄層を形成した現像ローラを画像形成体に接触又は近接させ、画像形成体表面に形成された静電潜像に現像剤を供給することより、該画像形成体表面に可視画像を形成させる画像形成装置において、該現像ローラが、上記(4)又は(5)の現像ローラであることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明のローラ成形用金型は、熱硬化性樹脂の金型成形において、硬化終了後に弾性ローラを脱型する際に冷却するは必要でなく、また、離型剤を使用しなくても脱型が可能であり、形状精度の良い弾性ローラを得ることが可能となる。
【0020】
さらに、この金型を用いて製造される弾性ローラは、形状精度が良く、形状ムラが非常に小さいため、電子写真装置用プロセスカートリッジあるいは画像形成装置の現像ローラとして用いると、印字面全体に渡って濃度ムラの無い良好な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の弾性ローラ形成用金型の一例の断面図を図1に示す。
【0022】
11は弾性ローラの軸芯体であり、該軸芯体11が駒22(23)の中心部に設けられた軸芯体保持部24(25)保持されて、円筒状金型21に載置されるようになっている。駒22(23)には、弾性層原料が注入或いは成形に際し、金型内のキャビティ20中の気体及び過剰の弾性層原料が溢流するための流路28(29)が形成されている。なお、流路28(29)は金型内のキャビティ20へ開口26(27)で繋がっている。
【0023】
本発明においては、少なくとも円筒状金型21の内壁面21aに窒化物層が形成されおり、さらに、その表面粗さRa(算術平均粗さ(JIS B0601−2001))が0.1μm以上0.7μm以下であることが必要である。
【0024】
すなわち、窒化物層が形成された表面粗さRaが0.1μm未満の平滑な面の場合、弾性層と金型内壁面との接触面積が非常に大きくなり、その結果両者間のすべり抵抗が大きくなる。そのために、脱型に際し、弾性層に大きなストレスが加わり、形状精度の良い弾性ローラを得ることができない。表面粗さRaが0.7μm超の場合には、金型内壁面の窪みに弾性層原料が入り込み、加熱によりその凹凸に添う形で硬化し、弾性層が形成されるので、脱型の際、脱型方向へのすべり移動が制約される。したがって、弾性層表面に大きなストレスがかかり、金型内壁面の窪みに硬化物が残ることもあり、形状精度の良い弾性ローラを得ることができない。
【0025】
これに対し、窒化物層の表面粗さRaが0.1μm以上0.7μm以下であると、金型内壁面の凹凸が非常に小さいので、弾性層原料がこの小さな窪みに入り込むことは殆ど無い。したがって、そのまま弾性層原料を硬化させても、硬化した弾性層は金型表面と面ではなく点で接触している状態となり、脱型の際に弾性体にかかるストレスは小さなものとなる。さらに両者間の接触面はその脱型初期に僅かにずれた後は、密着することが無いため、脱型に必要な力はより小さなものになる。
【0026】
本発明では、円筒状金型は鋼鉄製の金属内壁面を窒化物層としているが、該窒化物層の形成には、金属表面を窒化処理することが望ましい。窒化処理法としては、ガス窒化法、塩浴窒化法、ガス軟窒化法、プラズマ窒化法等があり、金型材質や形状により適宜選択して適用することができる。
【0027】
金型の内壁面への窒化処理により、内壁面の表面粗さは通常処理前より大きくなる。しかしながら、本発明で必要な金型内壁面表面粗さとしては不十分であり、窒化処理する前に予め表面粗さを上げておくことが好ましい。金型内壁面の表面粗さを上げる方法として、ブラスト処理、内面研磨等が挙げられるが、内壁面全域に渡って均一に且つ金型の長さ方向に無関係に表面凹凸を形成させることが可能であることから、ブラスト処理によることが好ましい。なお、本発明では、窒化処理後の金型内壁面の表面粗さRaが0.1μm以上0.7μm以下であることが必要であるので、窒化処理前には表面粗さRaを0.05μm以上0.6μm以下としておくことが好ましい。
【0028】
また、円筒状金型としては、製造する弾性ローラの大きさに応じて内径を適宜とするが、その厚みは、材質にもよるが、充分な強度及び熱伝導度等を勘案し、通常2mm以上10mm以内、好ましくは3mm以上7mm以内とされる。
【0029】
本発明が対象とする現像ローラの一例の断面図を図2に示す。
【0030】
図2において、11は少なくとも表面が導電性であり、現像ローラ自体の強度等を担保する軸芯体であり、その上に半導電性領域の導電性を有する弾性層12が形成されており、さらにその上に表面層13が形成されている。なお、軸芯体11と弾性層12の間に接着層が形成されていてもよく、また、弾性層12は単層である必要はなく、復層であっても良い。さらに、弾性層12と表面層13の間に機能付与のための層が形成されていてもよく、表面層13自体が復層であっても構わない。
【0031】
軸芯体11としては、表面が導電性で、現像ローラとしての強度が担保されれば丸棒状、パイプ形状の金属、硬質樹脂等から適宜選択すればよい。なお、金属としては、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、黄銅、アルミニウム等が使用可能であり、必要により表面を耐腐食性、導電性の均一化等の目的で、ニッケル、クロム等でメッキしたものが用いられる。また、硬質樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂等が使用可能である。これに導電性付与剤、例えば、カーボンブラック、金属粉、導電性金属酸化物を配合して、丸棒状あるいはパイプにして、また、丸棒状あるいはパイプ状にしたものの表面に金属メッキ、導電性塗料を塗布して表面を導電化したものも使用可能である。なお、強度、耐久性等からステンレス、鉄、黄銅等の丸棒の表面をニッケルメッキしたものが適当である。さらに、その外径は、通常、3.0mm以上10.0mm以下、好ましくは4.0mm以上9.0mm以下、さらに好ましくは5.0mm以上8.0mm以下である。
【0032】
弾性層12は、現像剤規制部材および感光体と圧接した場合に、適当な接触面積を得るために現像ローラに弾性をもたせるために設けられる層であり、単層でなく、複層とすることもできる。弾性層の形態としては、発泡体の形態でもソリッドの形態でも構わない。
【0033】
弾性層として用いるゴム材料としては、上記金型で成形することができれば、特に制限されることは無く、熱硬化性弾性樹脂から適宜使用することができる。例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、NBRの水素化物、エピクロロヒドリンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、フッ素ゴム、多硫化ゴム等のゴムを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。中でも加工性に優れている、硬化反応に伴う副生成物の発生が無い為寸法安定性が良好である、硬化後の物性が安定している等の理由から、付加反応架橋型シリコーンゴムポリマーであることが好ましい。
【0034】
このシリコーンゴムポリマーは、例えば、下記化学式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、及び化学式(2)で表されるオルガノハイドロジエンポリシロキサンを含み、さらに触媒や他の添加物と適宜混合させて用いることができる。
【0035】
【化1】

(但し、式中、Rはアルキル基を表し、xは正の整数である。)
【0036】
【化2】

(但し、式中、yは2以上の整数であり、zは正の整数である。また、y及びzで括られた繰り返し単位はランダムに結合していることが好ましい。)
【0037】
化学式(1)のオルガノポリシロキサンは、シリコーンゴム原料のベースポリマーであり、その平均分子量は特に限定されないが、10万以上100万以下、好ましくは40万以上70万以下が適当である。加工特性及び得られるシリコーンゴム組成物の特性等の観点から、粘度は、10Pa・s以上であることが好ましく、250Pa・s以下であることが好ましい。
【0038】
上記オルガノポリシロキサンのアルケニル基は、化学式(2)のオルガノハイドロジエンポリシロキサンの活性水素と反応して架橋点を形成する部位であり、その種類は特に限定されない。アルケニル基として、活性水素との反応性が高い等の理由から、ビニル基、イソプロペニル基及びアリル基から選ばれることが好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0039】
化学式(2)のオルガノハイドロジエンポリシロキサンは、硬化工程における付加反応の架橋剤の働きをする。したがって、一分子中のケイ素原子結合水素原子の数は2個以上が必要であり、また、硬化反応が適切に進行するために、比較的低分子であること、分子量1000以上5000以下であることが好ましい。
【0040】
また、これらの材料を導電化する手法としては、イオン導電機構による導電付与剤を上記材料に含有させるものと、電子導電機構による導電付与剤を材料に添加することにより導電化する手法があり、これら2種類を併用することも可能である。
【0041】
イオン導電機構による導電付与剤としては、LiCF3SO3、NaClO4、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCN、NaCl等の周期律表第1族金属の塩、NH4Cl、NH4SO4、NH4NO3等のアンモニウム塩、Ca(ClO42、Ba(ClO42等の周期律表第2族金属の塩などを挙げることができる。これらイオン導電機構による導電付与剤は、粉末状或いは繊維状の形態で、単独で、又2種類以上を混合して使用することができる。
【0042】
電子導電機構による導電付与剤としては、カーボンブラック、グラファイト等の炭素系物質、アルミニウム、銀、金、錫−鉛合金、銅−ニッケル合金等の金属或いは合金、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化銀等の金属酸化物、各種フィラーに銅、ニッケル、銀等の導電性金属のめっきを施した物質等を挙げることができる。これら電子導電機構による導電付与剤は、粉末状或いは繊維状の形態で、単独で、又2種類以上を混合して使用することができる。
【0043】
ゴム材料に上記導電性付与剤を加え、さらに、加硫剤、加硫促進剤、発泡剤等を加え、混練或いは混合して、弾性層形成に供される。
【0044】
なお、弾性層は、上記したローラ成形用金型に軸芯体を収納して用い、キャビティ内に弾性層原料を注入し、加熱硬化して成形される。なお、弾性層原料が注入された金型は加熱炉に納められ、棚段を有する加熱炉に並べられ、或いは、チェーン等の搬送手段に係止して加熱炉中を移動させてられて弾性層が加熱硬化される。
【0045】
本発明では、硬化終了後に、冷却することなく金型から駒が外され、ホットな状態で弾性ローラが取り出される。その後、必要により、弾性ローラは二次硬化処理が行われる。一方、金型は次の弾性ローラ製造に供される。
【0046】
上記で弾性層が形成された弾性ローラは、金型の接合部や駒の流路へのはみ出た部分をトリミングにより取り除かれて、その表面に表面層が形成され、現像ローラとされる。弾性ローラは、必要により、成形に先立って表面が研磨されることがある。
【0047】
弾性層の厚さとしては、通常、1mm以上6mm以下であり、1.5mm以上5.5mm以下であることが好ましい。厚さが1mmより薄くなると、現像ローラとして必要である、感光体への均一なニップを確保することが困難になる。一方、厚さを6mmより厚くしても、トナーの帯電性能の向上に繋がらないだけでなく、弾性層の成型コストが上昇しコスト的に不利である。
【0048】
現像ローラの弾性層としては、半導体領域の導電性があることが必要であり、通常、上記したように導電性付与剤が配合されている。なお、導電性付与剤としてカーボンブラックを使用したときは、ゴム材料100質量部に対し、5質量部以上60質量部以下とするのが適当であり、弾性層の形成後の導電性としては、通常、抵抗値102Ω以上1010Ω以下、好ましくは104Ω以上108Ω以下が適当である。
【0049】
また、弾性層の硬さとしても、ゴム硬さ計「マイクロゴム硬度計MD−1」(商品名、高分子計器株式会社製)によって、気温25℃、相対湿度50%RH環境下で、測定したマイクロゴム硬さで20°以上60°以下であることが望ましい。
【0050】
上記弾性層12の周りに形成されている表面層13は、現像ローラの表面の特性を制御するため、さらには弾性層の低分子量成分の染み出しを防止する等のために設けられた層で、単層であっても複層設けられていてもよい。
【0051】
該表面層は、通常、導電性付与剤の他、表面の特性制御に応じて、凹凸形成用微粒子等が表面層形成用樹脂と共に塗工液とされ、上記弾性層の周りに塗布形成されている。
【0052】
表面層形成樹脂としては、特に制限されること無く、通常現像ローラにおいて使用される樹脂類を用いることができる。具体的には、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリルウレタン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂等及びこれらの混合物が使用可能である。中では、トナーに対する非汚染性、圧縮永久ひずみ性能、トナーへの摩擦帯電性等からウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、特にウレタン結合を有する材料、例えば、ウレタン樹脂、ウレタン変成ポリエステル樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂が望ましい。
【0053】
ウレタン樹脂はポリオール化合物とイソシアネート化合物から得られるが、ここで使用できるポリオール化合物として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンブチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、テトラメチレングリコールポリエチレンジアジペート、ポリカーボネートポリオールなどの公知のポリウレタン用ポリオールが支障なく使用可能である。また、イソシアネート化合物としても、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等のジイソシアネート、及びそれらのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレタン変性体などが好ましく使用することができる。特に好ましいイソシアネート化合物は、MDI及びそのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、ウレタン変性体等が挙げられる。
【0054】
導電性付与剤としては、カーボンブラック、金属粉、金属酸化物および塩、シリカやアルミナの表面を金属化したもの、樹脂微粉末の表面を金属化したもの等が使用可能であり、中でも、カーボンブラックが少量の添加で導電性を付与できることから好ましい。また、石油ピッチやタールを焼成し、グラファイト化微粉にしたものも好ましい。
【0055】
現像ローラとしては、表面層中に平均粒径が1μm以上20μm以下の微粒子を分散させることにより、現像剤担持ローラ表面の現像剤の搬送を容易にすることができ、充分な量の現像剤を現像領域に搬送することができるので好ましい。
【0056】
この目的に使用する微粒子として、例えば、ポリメチルメタクリル酸メチル微粒子、シリコーンゴム微粒子、ポリウレタン微粒子、ポリスチレン微粒子、アミノ樹脂微粒子、フェノール樹脂微粒子等のプラスチックピグメントが挙げられる。特にポリメチルメタクリル酸メチル微粒子、ポリウレタン微粒子が好ましい。これらの微粒子はこの微粒子を除く表面層構成成分に対して3質量%以上200質量%以下の範囲とすることが好ましい。
【0057】
表面層の厚みとしては、電子写真プロセスに用いる現像ローラの場合、弾性層成分がしみ出してきて画像形成体を汚染することを優れて防止する観点から5μm以上が好ましく、現像ローラの表面が硬くなることを防止し、トナーの融着を防止する観点から500μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以上30μm以下である。
【0058】
表面層を弾性層の周りに形成するには、表面層形成用原料を、ペイントシェーカー、サンドミル、ダイノミル、パールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して分散させて、表面層形成用塗工液を得、該塗工液をディッピング法、ロールコーター法、スプレー塗工法等により弾性層の表面に塗工した後に、乾燥及び加熱処理を行う。
【0059】
なお、現像ローラとしては、その表面粗さが、算術平均粗さRaで表したとき、0.9μm以上2.1μm以下、好ましくは1.0μm以上2.0μm以下であることが望ましい。0.9μmより小さいと、画像を出力した際の画像濃度が低くなる恐れがあり、2.1μmを超えると、かぶり性能が悪化する恐れがある。
【0060】
現像ローラでの抵抗値は、1.0×104Ω以上5.0×106Ω以下、好ましくは3.0×104以上1.0×106Ω以下であることが望ましい。1.0×104Ωより小さいと、感光体上に小さなキズがある場合、リークが発生しやくなり、また、5.0×106Ωより大きいと、かぶり性能が悪化する恐れがある。
【0061】
次に、本発明の現像ローラを組込んでなるプロセスカートリッジを用いた接触現像方式の電子写真画像形成装置の一例の概略図を図3に示す。
【0062】
画像形成体である感光体31、帯電ローラ32、現像ローラ33、現像剤供給ローラ34、現像剤層厚規制部材35、撹拌羽36及び現像剤(トナー)37が一つのカートリッジにまとめられ、電子写真装置の中で一体的に交換可能なプロセスカートリッジとなっている。
【0063】
帯電ローラ32で均一に帯電された感光体31は矢印の方向に回転しており、帯電ローラ32と現像ローラ33との間でその表面に記録情報を乗せたレーザー光40が照射されて、静電潜像が形成される。一方、撹拌羽36で現像剤供給ローラ34に送られた現像剤37は現像剤層厚規制部材35によって現像ローラ33表面に均一にコートされ、感光体ドラム31表面へと運ばれ、感光体ドラム31表面上に形成されている静電潜像がトナー像として顕像化される。感光体31がさらに回転してトナー像が転写領域に到達すると、紙等の記録メディア43にトナー像が感光体31に対し対置された転写ローラ42により転写される。感光体31は表面がクリーニング部材38で記録メディア43に転写せずに残った現像剤が除去された後、帯電ローラ32で再び均一に帯電される。
【0064】
記録メディア43に転写された未定着のトナー像は、定着ローラ44と加圧ローラ45の間を通り、圧力と熱で記録メディア43に定着され、電子写真装置から排出される。
【0065】
一方、現像に使用されずに現像ローラ33表面に残った現像剤は現像ローラ表面に坦持したまま現像容器41に戻る。現像容器41の内部では現像剤供給ローラ34が戻ってきた現像剤を現像ローラ33表面から取り除くとともに、新しい現像剤を現像ローラ33表面に供給する。現像ローラ33表面に供給された新しい現像剤は、現像剤層厚規制部材35にて厚さが均一に整えられ、現像領域に搬送されていく。この繰り返しによって現像ローラ33は常に新しい現像剤を均一厚みで担持して静電潜像を現像する。
【実施例】
【0066】
以下の実施例によって本発明を詳細に説明するが、これは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下、特に明記しない限り、薬品等は市販の高純度品を用いた。
【0067】
〔金型内壁面の表面粗さRa測定〕
円筒状金型の内壁面の表面粗さは、JIS B0601−2001に準拠する株式会社小坂研究所製の表面粗さ測定器「サーフコーダーSE3500」(商品名)を用い、円筒状金型の端部より40mm付近及び中央部をそれぞれ3点ずつ測定する。そして、全測定値の平均を円筒状金型の内壁面の表面粗さRaとした。
【0068】
〔弾性ローラの真円度測定〕
弾性ローラの真円度測定には、株式会社キーエンス製の高速・高機能レーザー寸法測定器「LS−5040」(商品名)を用いた。弾性ローラを、図2に示すように、測定器のレーザー光間に挿入し、回転速度120°/sにて回転させ、その外径を0.33ms間隔(回転角3.6°毎)でローラ1周分(100個)測定する。その後、得られた外径データの最大値と最小値との差を、その測定ポイントでの真円度とする。この測定を弾性層片側端部から5mmの位置から5mm間隔で反対側まで測定し、各測定ポイントの真円度を求める。その最大値をその弾性ローラの真円度とした。
【0069】
実施例1
〔ローラ成形用金型の製造〕
内径16mm、外径26mmの鋼鉄製パイプを長さ30.0cmに切断し、内面をサンドブラストして、表面粗さRaで0.1μmとした。次いで、アンモニアガスによるガス窒化処理でブラスト面に窒化物層を形成して、内壁面の表面粗さRaが0.2μmである円筒状金型を製造した。
【0070】
〔弾性層成形(弾性ローラの製造)〕
上記円筒状金型を図1に示すロール成形用金型の円筒状金型として用い、直径8mm、長さ280mmの鉄製丸棒に厚み5μmの化学ニッケルメッキをしたものを軸芯体として配して、金型を組み立てた。なお、駒間の距離は240mmとした。この金型を垂直に立て、下方の駒に設けられた流路から、付加反応架橋型液状シリコーンゴムからなる弾性層原料(オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジエンポリシロキサン、導電性カーボンブラック、白金触媒、石英及びシリカの配合物。液状状態での粘度150Pa・s。硬化後のゴム硬さ(アスカーC硬度)40度。)を、上方の駒の流路に原料がオーバーフローしてくるまで約10秒間一定流速で注入した。その後金型を100℃の加熱炉に並べて入れ、30時間加熱し、弾性層を硬化させた。次いで、冷却することなく両側の駒を取り除いた後脱型し、次いで200℃のオーブン中で4時間二次硬化して、外径約16mm、弾性層長さ240mmの弾性ローラを得た。
【0071】
〔表層形成方法〕
この弾性層外周上に、ポリウレタン樹脂原料に平均粒径15μmのウレタン粒子及び導電性カーボンブラックを配合した塗工液をディップ塗工により配し、その後150℃のオーブンにて4時間硬化することで、シリコーンゴム弾性層の外周上にウレタン樹脂からなる表層を配した現像ローラを得た。
【0072】
実施例2、3
窒化物層を形成した後の内壁面の表面粗さRaが0.1μm又は0.7μmである円筒状金型を使用する以外は実施例1と同様にして、弾性ローラ、現像ローラを製造した。
【0073】
比較例1
窒化処理に代えて化学ニッケルメッキ処理をした円筒状金型を使用する以外は実施例1と同様にして、弾性ローラ、現像ローラを製造した。
【0074】
比較例2、3
窒化物層を形成した後の内壁面の表面粗さRaが0.02μm又は0.8μmである円筒状金型を使用する以外は実施例1と同様にして、弾性ローラ、現像ローラを製造した。
【0075】
実施例及び比較例にて得られた現像ローラを現像ローラとして使用し、電子写真式レーザービームプリンター(キヤノン株式会社製、LBP−2510)を用いて、ベタ画像及びハーフトーン画像を画出しした。なお、このプリンターは、A4版出力用装置で、記録メディアの出力スピードはA4縦16枚/分、画像の解像度は600dpiである。感光体はアルミシリンダーにOPC(有機光導電体)層をコートした反転現像方式であり、最外層は変性ポリカーボネートをバインダー樹脂とする電荷輸送層となっている。次いで、得られた出力画像を目視により下記基準で画像評価した。結果を表1に示す。
○:画像濃度が十分に濃く、印字面全体に渡って濃度ムラがない。
△:微小な濃度ムラが観察されるが、実用上問題がない。
×:濃度ムラが出力面全体に渡って発生している。
【0076】
さらに、弾性ローラの真円度及び画像評価から、下記基準で総合判断した。
○:真円度9μm以下及び画像評価△以上。
×:真円度9μm超及び/又は画像評価×。
【0077】
【表1】

【0078】
実施例1〜3に示すように、金型内壁面が窒化物層で形成され、その表面粗さRaが0.1μm以上0.7μm以下であれば、成形した弾性ローラの形状は、非常に均一性が高く、これらの弾性ローラを使用した現像ローラも、現像ローラとして、濃度ムラも無くきれいな画像が得られた。
【0079】
これに対し、比較例2、3に示すように、金型内壁面の表面粗さRaが0.1μmより小さいか0.7μmより大きいような場合は、弾性ローラ成形後に脱型する際に弾性層と金型内壁面とのストレスが大きくなっているために、形状ムラが大きくなっている。また、これらの弾性ローラから製造した現像ローラは、現像ローラとして用いたとき、濃度ムラが大きく問題のある画像が出力された。また、金型の内壁面を実施例1と表面粗さ同じであるが、化学ニッケルメッキ面では、比較例2、3と同様に不良であった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明のローラ成形用金型の一例の概念的断面図である。
【図2】本発明の現像ローラの一例の断面図及び斜視図である。
【図3】本発明の画像形成装置の一例の説明図である。
【図4】本発明の弾性ローラの外径を測定する装置の概念図である。
【符号の説明】
【0081】
11 :軸芯体
12 :弾性層
13 :表面層
20 :キャビティ
21 :円筒状金型
22、23 :駒
24、25 :軸芯体保持部
26、27 :開口
28、29 :流路
31 :感光体
32 :帯電ローラ
33 :現像ローラ
34 :現像剤供給ローラ
35 :現像剤層厚規制部材
36 :撹拌羽
37 :現像剤(トナー)
38 :クリーニング部材
40 :レーザー光
41 :現像容器
42 :転写ローラ
43 :記録メディア(紙)
44 :定着ローラ
45 :加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体、弾性層及び表面層からなる現像ローラを製造するに際し、軸芯体上に弾性層を形成して中間の弾性ローラを製造するのに使用するローラ成形用金型であって、該金型内壁面が少なくとも窒化物層を有し、かつ内壁面の表面粗さRa(算術平均粗さ(JIS B0601−2001))が0.1μm以上0.7μm以下であることを特徴とするローラ成形用金型。
【請求項2】
窒化物層が、金型の内壁の露出金属面を窒化処理することにより形成されたものである請求項1に記載のローラ成形用金型。
【請求項3】
弾性層が、付加反応架橋型液状シリコーンゴムを用い形成される請求項1又は2に記載のローラ成形用金型。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のローラ成形用金型を用いて製造された弾性ローラの表面に表面層が形成されたものであることを特徴とする現像ローラ。
【請求項5】
表面層が、ウレタン結合を有する材料で形成された請求項4に記載の現像ローラ。
【請求項6】
現像ローラの表面に現像剤の薄層を形成した現像ローラを画像形成体に接触又は近接させ、画像形成体表面に形成された静電潜像に現像剤を供給することにより、該画像形成体表面に可視画像を形成させる電子写真装置用プロセスカートリッジにおいて、
該現像ローラが、請求項4又は5に記載の現像ローラであることを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジ。
【請求項7】
現像ローラの表面に現像剤の薄層を形成した現像ローラを画像形成体に接触又は近接させ、画像形成体表面に形成された静電潜像に現像剤を供給することより、該画像形成体表面に可視画像を形成させる画像形成装置において、
該現像ローラが、請求項4又は5に記載の現像ローラであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−212516(P2007−212516A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29543(P2006−29543)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】