説明

ワイパ装置

【課題】異なる形状の取付対象物へのワイパ装置の取り付けに容易に対応可能とすることにある。
【解決手段】ワイパ装置に設けられるワイパモータ27は、モータ本体30と、モータ本体30の回転を減速して出力軸に伝達する減速機構とを有しており、減速機構がギヤハウジング35内に収容されている。ギヤハウジング35の側面には、出力軸の軸方向基端側に開口するホルダ部51が一体に形成されている。このホルダ部51の開口側から取付部材52が嵌め込まれて取付部材52がホルダ部51に保持されており、取付部材52をモータ側車体パネルに形成された挿入孔に差し込むことによって、ワイパモータ27がモータ側車体パネルに取り付けられるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ワイパモータによりワイパ部材を揺動駆動して払拭面を払拭するワイパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、ウィンドシールドに付着した雨水や埃等をワイパ部材により払拭して運転者の視界を確保するためにワイパ装置が搭載されている。ワイパ装置は、ワイパ部材が装着されるピボット軸と、ピボット軸を駆動するワイパモータとを備えており、ピボット軸を揺動駆動することにより、ワイパ部材がウィンドシールド上を摺動してウィンドシールドに付着した雨水や埃等を払拭するようになっている。
【0003】
タンデム型や対向払拭型のワイパ装置など、一対のワイパ部材を備えたワイパ装置には、各ワイパ部材がそれぞれ装着される一対のピボット軸が設けられている。各ピボット軸とワイパモータとの間にはリンク機構が設けられており、リンク機構によりワイパモータの回転運動を揺動運動に変換し、各ピボット軸を同期して揺動させている。このようなワイパ装置としては、例えば、特許文献1に記載されるように、各ピボット軸をそれぞれ回転自在に支持する一対のピボットホルダをパイプ状のフレーム部材の両端に固定するとともに、ワイパモータをフレーム部材の略中央部に固定した、所謂フレーム一体型のモジュラー型ワイパ装置が知られている。
【0004】
ところで、特許文献1に記載されたワイパ装置では、車体への取り付けの際に、ワイパモータのハウジングに突出形成された支持ピンを車体側のパネルの挿通孔に差し込むようにしている。また、ワイパ装置の車体への取付箇所は、この他に一対のピボットホルダにそれぞれ設けられた取付孔があり、取付孔に挿通される固定ボルトにより各ピボットホルダが車体に固定されている。このように、特許文献1に記載されたワイパ装置は、ワイパモータの支持ピン(1箇所)および各ピボットホルダの取付孔(2箇所)による計3箇所で車体に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3492938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載されたワイパ装置によれば、車体側のパネルに差し込まれる支持ピンを、ワイパモータのハウジングに一体に突出形成しているため、パネル形状の異なる車体への流用性が低かった。すなわち、異なるパネル形状に形成された種々の車両にワイパ装置を取り付けるためには、それぞれのパネル形状に対応した支持ピンを備えた複数種類のハウジングを製造する必要が生じてしまう。したがって、ワイパ装置の製造工程が煩雑化するとともに、ワイパ装置のコスト上昇を招くことになる。そこで、できる限りワイパ装置の構成部品の共通化を図りつつ、異なるパネル形状に容易に対応できるワイパ装置の開発が望まれていた。
【0007】
本発明の目的は、異なる形状の取付対象物へのワイパ装置の取り付けに容易に対応可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のワイパ装置は、ワイパ部材がそれぞれ装着される一対のピボット軸を有するワイパ装置であって、取付対象物に取り付けられ、前記各ピボット軸を回転自在に支持する一対のピボットホルダと、前記一対のピボットホルダを相互に連結するフレーム部材と、モータ本体と、当該モータ本体の回転を減速して出力軸に伝達する減速部と、前記モータ本体に取り付けられ前記減速部を収容するハウジングとを備え、前記フレーム部材に固定され前記一対のピボット軸を駆動するワイパモータと、前記ワイパモータと前記各ピボット軸との間に設けられ、前記出力軸の回転運動を揺動運動に変換して前記各ピボット軸に伝達するリンク機構と、前記ハウジングに一体に形成され、少なくとも一方側に開口するホルダ部と、前記ホルダ部に開口側から嵌め込まれて前記ホルダ部に保持され、前記取付対象物に対して差し込み状態で取り付けられる取付部材とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明のワイパ装置は、前記ホルダ部は、前記出力軸の軸方向に開口していることを特徴とする。
【0010】
本発明のワイパ装置は、前記取付部材は、ピン形状の芯部材と、前記芯部材に装着される弾性部材とを有しており、前記芯部材と前記ホルダ部との間には前記弾性部材が介在していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、取付部材をワイパモータのハウジングと別体に形成するようにしたので、取付部材の形状を変更することによって、形状が異なる種々の取付対象物に対応することが可能となる。したがって、ワイパ装置の流用性を高めてその製造工程を簡素ができ、ひいてはワイパ装置のコスト低減を実現できる。また、ワイパモータのハウジングに一体に形成されたホルダ部に取付部材を嵌め込むことにより取付部材をホルダ部に保持するようにしたので、ボルト等の固定部材を用いることなく、ハウジングに別体に設けられた取付部材をハウジングに取り付けることが可能となる。したがって、ボトルレス構造としたことで部品点数の削減、およびワイパ装置の重量の低減を図ることができる。
【0012】
本発明によれば、ホルダ部を出力軸の軸方向に開口させ、ホルダ部の開口側から取付部材をホルダ部に嵌め込むことにより取付部材をホルダ部に保持するようにしたので、ワイパ装置に外部から荷重が掛かったときに取付部材がホルダ部から外れ、ワイパ装置を取り付け対象物に対して脱落させることができる。これにより、ワイパ装置の脱落時にホルダ部や取付部材が破損することが抑制され、ワイパ装置を再び取り付ける際に取付部材等を再利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態であるワイパ装置を搭載した車両の前方側を示す説明図である。
【図2】車両上方側から見たワイパ装置の平面図である。
【図3】車両後方側から見たワイパ装置の背面図である。
【図4】ギヤユニット部の内部構造を示す説明図である。
【図5】ワイパモータの斜視図である。
【図6】ワイパモータの側面図である。
【図7】ワイパモータの平面図である。
【図8】モータ側取付部の分解斜視図である。
【図9】図6におけるA−A線に沿うモータ側取付部の断面図である。
【図10】図7におけるB−B線に沿うモータ側取付部の断面図である。
【図11】モータ側車体パネルに対してワイパ装置が脱落した状態を示す説明図である。
【図12】取付部材の変形例を示す断面図である。
【図13】取付部材の他の変形例を示す分解斜視図である。
【図14】図13に示す取付部材がホルダ部に保持された状態を示す断面図である。
【図15】図13に示す取付部材をホルダ部に組み付ける際の一工程を示す説明図である。
【図16】ホルダ部と取付部材との嵌め込み構造の変形例を示す断面図である。
【図17】ホルダ部と取付部材との嵌め込み構造の他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、車両10の前方側にはフロントウィンドシールド11が設けられ、フロントウィンドシールド11上には、フロントウィンドシールド11に付着した雨水や埃等を払拭するDR側(運転席側)ワイパ部材12aと、AS側(助手席側)ワイパ部材12bとが設けられている。
【0016】
各ワイパ部材12a,12bは、払拭面としてのフロントウィンドシールド11上を摺動するワイパブレード13a,13bと、ワイパブレード13a,13bを揺動するワイパアーム14a,14bとを備えている。ワイパブレード13a,13bは、ワイパアーム14a,14bの先端に回動自在に取り付けられ、ワイパアーム14a,14bの内側に設けられた図示しない引っ張りばねによってフロントウィンドシールド11に弾性接触されている。
【0017】
ワイパブレード13a,13bは、ワイパアーム14a,14bによりフロントウィンドシールド11上の下反転位置LRPと上反転位置URPとの間で揺動され、下反転位置LRPと上反転位置URPとの間で形成される払拭範囲11a,11bをそれぞれ同期して同一方向に往復払拭動作するようになっている。つまり、ワイパ部材12a,12bの払拭パターンはタンデム型となっている。
【0018】
車両10には、フロントウィンドシールド11の前方側に位置して、ワイパ部材12a,12bを往復払拭動作させるためのワイパ装置15が搭載されている。ワイパ装置15は、車両前方側に形成されるカウル16内に配置され、カウル16の開口側(図中手前側)を閉塞するカウルトップパネル17によって覆われている。図2は車両上方側から見たワイパ装置の平面図であり、図3は車両後方側から見たワイパ装置の背面図である。
【0019】
ワイパ装置15は、DR側ワイパ部材12aが装着されるDR側ピボット軸18aと、AS側ワイパ部材12bが装着されるAS側ピボット軸18bとを有している。各ピボット軸18a,18bは、その軸方向先端部がカウルトップパネル17を貫通してカウル16の外部へ突出されており、各ピボット軸18a,18bの軸方向先端部にワイパアーム14a,14bの基端部がそれぞれ装着されている。
【0020】
図2および図3に示すように、DR側ピボット軸18aの軸方向基端側は、カウル16内に配置されたDR側ピボットホルダ20aの円筒支持部21aに挿通されており、DR側ピボット軸18aがDR側ピボットホルダ20aにより回転自在に支持されている。DR側ピボットホルダ20aには、取付対象物としての車両10のDR側車体パネル10aにDR側ピボットホルダ20aを固定するためのDR側取付部22aが設けられている。DR側取付部22aにはゴム製のブッシュ23が装着されており、このブッシュ23に挿通される図示しない固定ボルトをDR側車体パネル10aに締結することによって、DR側ピボットホルダ20aがDR側車体パネル10aに固定されている。
【0021】
同様に、AS側ピボット軸18bの軸方向基端側は、カウル16内に配置されたAS側ピボットホルダ20bの円筒支持部21bに挿通されており、AS側ピボット軸18bがAS側ピボットホルダ20bにより回転自在に支持されている。AS側ピボットホルダ20bには、取付対象物としての車両10のAS側車体パネル10bにAS側ピボットホルダ20bを固定するためのAS側取付部22bが設けられている。AS側取付部22bにはゴム製のブッシュ23が装着されており、このブッシュ23に挿通される図示しない固定ボルトをAS側車体パネル10bに締結することによって、AS側ピボットホルダ20bがAS側車体パネル10bに固定されている。
【0022】
各ピボットホルダ20a,20bには、ピボットホルダ20a,20bの相互に対向する側に延びる連結部24a,24bがそれぞれ設けられている。これらピボットホルダ20a,20bの間には、車両10の車幅方向(図中左右方向)に延びるフレーム部材25が配置されており、フレーム部材25の両端部にピボットホルダ20a,20bの連結部24a,24bがそれぞれカシメ固定されている。つまり、フレーム部材25は、各ピボットホルダ20a,20bを互いに所定の相対位置関係となるように連結している。したがって、形状の異なるフレーム部材25を用意することで、フレーム部材25以外の構成部品を共通化しつつ、車両10側の異なる組み付けスペースに対応することができるようになっている。なお、フレーム部材25としては中空の円筒パイプに限らず、フレーム部材25に必要とされる剛性等を考慮し、例えば断面形状が六角形の中空部材や中実部材等を用いるようにしても良い。
【0023】
フレーム部材25の略中央部には、一対の固定ボルト26によりワイパモータ27が固定されており、ワイパモータ27および各ピボットホルダ20a,20bがフレーム部材25により支持されている。つまり、ワイパ装置15は、ワイパモータ27と各ピボットホルダ20a,20bとをフレーム部材25により連結するようにした所謂フレーム一体型のモジュラー型ワイパ装置となっている。ワイパモータ27は、各ピボット軸18a,18bを駆動する駆動源であり、モータ本体(電動モータ)30と、モータ本体30の回転を減速させて伝達する減速機構を備えたギヤユニット部31とを有する減速機構付モータである。図4はギヤユニット部の内部構造を示す説明図である。
【0024】
モータ本体30にはブラシ付直流モータが用いられており、コネクタ32を介してモータ本体30に駆動電流を供給することにより、モータ本体30に設けられるモータシャフト33が回転駆動されるようになっている。モータ本体30は、薄板鋼板等をプレス加工することにより有底筒状に形成されたモータケース34を有しており、モータシャフト33の軸方向一端部がモータケース34により回転自在に支持されている。このモータ本体30は、モータケース34の開口側において、ギヤユニット部31のギヤハウジング35に取り付けられている。
【0025】
ギヤハウジング35は、モータシャフト33の軸方向と直交する側に開口する有底のアルミ製のギヤケース36と、ギヤケース36の開口側を閉塞する樹脂製のギヤカバー37とを備えている。ギヤケース36のフレーム部材25側の側面には、ワイパモータ27をフレーム部材25に固定するためのモータ固定部36aが一体に形成されており、モータ固定部36aにおいて一対の固定ボルト26によりワイパモータ27がフレーム部材25に固定されている。ギヤハウジング35の内部には、図4に示すように、モータシャフト33の軸方向他端側が突出されており、モータシャフト33の軸方向他端側には相互に捩れ方向が逆向きに形成された一対のウォーム33a,33bが一体に形成されている。
【0026】
一対のウォーム33a,33bにそれぞれ隣接させて、ギヤハウジング35の内部には一対のカウンタギヤ38a,38bが収容されている。一対のカウンタギヤ38a,38bは、モータシャフト33の軸線に対して相互に反対側に配置されており、モータシャフト33の軸方向と直交する方向つまりギヤケース36の開口方向に延びる支軸39a,39bにより、それぞれギヤハウジング35内に回転自在に支持されている。各カウンタギヤ38a,38bは、それぞれ隣接するウォーム33a,33bに噛み合うウォームホイール40a,40bと、ウォームホイール40a,40bと一体に回転されるピニオンギヤ41a,41bとを備えた二段ギヤとなっている。各カウンタギヤ38a,38bにはそれぞれウォーム33a,33bの回転が減速して伝達され、各カウンタギヤ38a,38bが同一回転速度で同一回転方向に回転される。
【0027】
また、一対のピニオンギヤ41a,41bに隣接させて、ギヤハウジング35の内部には単一の出力ギヤ42が収容されている。出力ギヤ42の軸心には、支軸39a,39bと平行に延びる出力軸43の軸方向基端部が固定されており、出力軸43により出力ギヤ42がギヤハウジング35内に回転自在に支持されている。出力ギヤ42は各ピニオンギヤ41a,41bよりも多い歯数に形成されており、各ピニオンギヤ41a,41bと噛み合っている。出力ギヤ42には一対のピニオンギヤ41a,41bの回転が減速して伝達され、出力軸43が出力ギヤ42とともに回転される。
【0028】
これらウォーム33a,33b、カウンタギヤ38a,38b、出力ギヤ42により減速機構(減速部)44が形成されており、ギヤハウジング35内に収容された減速機構44によってモータ本体30の回転が減速されて出力軸43に伝達される。出力軸43の軸方向先端部はギヤケース36の底壁を貫通してギヤハウジング35の外部に突出されている。なお、減速機構44としては、上述した構造に限られず、他の構造を用いるようにしても良い。
【0029】
図3に示すように、出力軸43の軸方向先端部には、クランクアーム45の一端部が固定されている。また、DR側ピボット軸18aの軸方向基端部にはDR側駆動レバー46aの一端部が固定されており、クランクアーム45の他端部とDR側駆動レバー46aの他端部とがボールジョイントを介してDR側連結ロッド47aの両端部にそれぞれ回動自在に連結されている。同様に、AS側ピボット軸18bの軸方向基端部にはAS側駆動レバー46bの一端部が固定されており、クランクアーム45の他端部とAS側駆動レバー46bの他端部とがボールジョイントを介してAS側連結ロッド47bの両端部にそれぞれ回動自在に連結されている。
【0030】
これらクランクアーム45、駆動レバー46a,46b、連結ロッド47a,47bによりリンク機構48が形成されており、ワイパモータ27と各ピボット軸18a,18bとの間に設けられたリンク機構48により、出力軸43の回転運動が揺動運動に変換されて各ピボット軸18a,18bに伝達される。これにより、車室内に設けられた操作スイッチを操作してワイパモータ27が作動されると、ワイパモータ27の出力が各ピボット軸18a,18bに伝達され、ワイパ部材12a,12bが揺動駆動されるようになっている。
【0031】
ワイパモータ27には、取付対象物としての車両10のモータ側車体パネル10cにワイパモータ27を取り付けるためのモータ側取付部50が設けられている。図5はワイパモータの斜視図であり、図6はワイパモータの側面図であり、図7はワイパモータの平面図である。図8はモータ側取付部の分解斜視図であり、図9は図6におけるA−A線に沿うモータ側取付部の断面図であり、図10は図7におけるB−B線に沿うモータ側取付部の断面図である。
【0032】
モータ側取付部50は、ギヤハウジング35のギヤケース36に一体に形成されたホルダ部51と、ホルダ部51に保持される取付部材52とを有しており、取付部材52をモータ側車体パネル10cに形成された挿通孔10dに差し込むことによって、ワイパモータ27がモータ側車体パネル10cに取り付けられるようになっている。
【0033】
ギヤケース36のホルダ部51は、モータ固定部36aとは反対側へ突出するようにギヤケース36の側面に一体に形成されている。ホルダ部51は、図8に示すように、出力軸43の軸方向と直交する方向に互いに所定の間隔をあけて対向して配置された一対の端壁51a,51bと、端壁51a,51bの外周部を相互に連結する側壁51cとを備え、出力軸43の軸方向基端側つまり車両上方側に開口する収容孔54が一対の端壁51a,51bの相互間に形成されたポケット形状をしている。各端壁51a,51bの閉塞側は半円形状となっており、収容孔54は出力軸43の軸方向基端側に開口した略円孔形状をしている。
【0034】
一対の端壁51a,51bのうち一方の端壁51aはギヤケース36の側面に突き当てて設けられており、他方の端壁51bは一方の端壁51aよりも外側つまりモータ固定部36aから離れた位置に配置されている。この端壁51bには、出力軸43の軸方向と直交する方向に貫通する円形の係合孔55が形成されており、係合孔55は組み付け溝56を介して収容孔54の開口方向と同一方向に開口している。組み付け溝56は係合孔55側に向かうにつれて窄まるように形成されており、図10に示すように、組み付け溝56と係合孔55との連通部分における開口寸法L1は係合孔55の直径D1よりも小さく設定されている。つまり、端壁51bには、係合孔55における出力軸43の軸方向基端側の開口部に位置して、相互の間隔L1が係合孔55の直径D1よりも小さく設定された一対の楔形状の保持爪57が設けられている。
【0035】
一方、取付部材52は、ピン形状に形成された金属製の芯金部材(芯部材)60と、芯金部材60に装着されるゴム製のラバー部材(弾性部材)61とを有している。芯金部材60は、円環板形状の鍔部60aと、鍔部60aの内周部から軸方向一方側に延びる円筒部60bとを備えており、鍔部60aが円筒部60bの軸方向基端部から径方向外側へ突出して形成されている。但し、芯金部材60の形状は種々変更可能であり、例えば、円板形状の鍔部と鍔部から軸方向一方側に延びる円柱部とを備えるピン形状としても良い。また、芯部材として金属製の芯金部材60を用いたが、樹脂等の金属以外の材料により芯部材を形成するようにしても良い。
【0036】
ラバー部材61は、芯金部材60を装着するための装着孔62が内側に形成された略円筒形状をしており、装着孔62がラバー部材61の軸方向基端側に開口している。ラバー部材61の軸方向基端側には、径方向外側へ突出する一対の環状の突出部61a,61bがラバー部材61の軸方向に相互に所定の間隔をあけて設けられており、一対の突出部61a,61bの相互間により径方向外側に開口する環状の係合溝63が形成されている。但し、本実施の形態においてはラバー部材61の軸方向先端部を半球形状とすることで、ラバー部材61の軸方向先端側をモータ側車体パネル10cの挿通孔10dに差し込み易い形状としたが、ラバー部材61の形状は種々変更可能である。
【0037】
図8に矢印(1)で示すように、ラバー部材61は芯金部材60に対して芯金部材60の軸方向先端側から組み付けられ、芯金部材60がラバー部材61の装着孔62内に装着されることにより取付部材52が形成される。つまり、装着孔62の開口側から芯金部材60をラバー部材61の装着孔62に圧入することにより、芯金部材60とラバー部材61とが互いに組み付けられる。
【0038】
芯金部材60にラバー部材61が装着された状態では、図9に示すように、芯金部材60の円筒部60bの外周面がラバー部材61の装着孔62の内周面に接触されており、芯金部材60の円筒部60aの外周面がラバー部材61により覆われている。また、芯金部材60の鍔部60aの軸方向基端側の端面はラバー部材61により覆われておらず、鍔部60aの軸方向基端側の端面とラバー部材61の軸方向基端側の端面とが略同一平面上に配置されている。
【0039】
この取付部材52は、ギヤケース36のホルダ部51に嵌め込まれる軸方向基端側の嵌合部52aと、モータ側車体パネル10cの挿通孔10dに差し込まれる軸方向先端側のピン部52bとを備えている。また、取付部材52の嵌合部52aには、ラバー部材61に形成された係合溝63の径方向内側に位置して、つまり外周面が係合溝63に対向するように、円筒形状の係合部64が設けられている。
【0040】
図8に矢印(2)で示すように、取付部材52は、その軸方向をホルダ部51に形成された係合孔55の貫通方向に平行にして配置した状態で、ホルダ部51に対して出力軸43の軸方向基端側つまり収容孔54の開口側から組み付けられる。そして、取付部材52の嵌合部52aがギヤケース36のホルダ部51に嵌め込まれ、取付部材52がホルダ部51に保持されることによりモータ側取付部50が形成される。
【0041】
ホルダ部51と取付部材52とが互いに組み付けられた状態では、取付部材52のピン部52aがモータ固定部36aとは反対側へ突出するように、取付部材52がその軸方向を出力軸43の軸方向と直交する方向に向けて配置されている。図9に示すように、ホルダ部51の収容孔54内には、ラバー部材61の一対の突出部61a,61bのうち軸方向基端側の突出部61aと芯金部材60の鍔部60aとが圧入され、鍔部60aの軸方向基端側の端面がホルダ部51の端壁51aに突き当てられている。すなわち、ラバー部材61の突出部61aと芯金部材60の鍔部60aとの軸方向両端側つまりワイパモータ27の挙動方向側がホルダ部51の一対の端壁51a,51bにより覆われている。また、ホルダ部51の端壁51bがラバー部材61の係合溝63内に圧入され、図10に示すように、取付部材52の係合部64が端壁51bに形成された係合孔55内に嵌め込まれている。
【0042】
ここで、係合孔55内に嵌め込まれた取付部材52の係合部64の外径は、係合孔55の直径D1に対応して形成されており、一対の保持爪57の相互の間隔L1よりも大きく設定されている。したがって、モータ側車体パネル10cの挿通孔10dに差し込まれた取付部材52に対して、ギヤハウジング35のホルダ部51にワイパ装置15の自重による車両下方側への荷重が作用しても、一対の保持爪57により取付部材52の係合部64が係合孔55から抜けることが抑制され、取付部材52がホルダ部51に保持されるようになっている。なお、ホルダ部51と取付部材52との組み付け時に取付部材52の係合部64が組み付け溝56を介して係合孔55に嵌め込まれる際には、ラバー部材61が圧縮された状態で係合孔55内へ押し込むようにして組み付けられる。
【0043】
このモータ側取付部50は、図9に示すように、ホルダ部51に保持された取付部材52のピン部52aをモータ側車体パネル10cの挿通孔10dに差し込むことによりモータ側車体パネル10cに組み付けられる。つまり、取付部材52がモータ側車体パネル10cに対して差し込み状態で取り付けられる。
【0044】
モータ側取付部50がモータ側車体パネル10cに組み付けられた状態では、ラバー部材61の突出部61bがモータ側車体パネル10cに突き当てられ、ラバー部材61の突出部61bがホルダ部51の端壁51bとモータ側車体パネル10cとの間で挟み込まれている。これにより、ワイパ作動時の振動や挙動によってワイパモータ27がモータ側車体パネル10cに対してがたつくことが抑制されるようになっている。但し、必ずしも突出部61bがモータ側車体パネル10cに突き当てられるまで、取付部材52のピン部52aをモータ側車体パネル10cの挿通孔10dに差し込む必要はなく、ピン部52aの先端部のみを挿通孔10dに差し込むようにしても良い。
【0045】
ワイパ装置15は、モータ側取付部50がモータ側車体パネル10cに組み付けられ、ワイパモータ27がモータ側車体パネル10cに対して位置決め且つ支持された状態で、各ピボットホルダ20a,20bの取付部22a,22bをそれぞれDR側車体パネル10a、AS側車体パネル10bに固定することにより、カウル16内に取り付けられる。ワイパ装置15は、ワイパモータ27のモータ側取付部50と、一対のピボットホルダ20a,20aの取付部22a,22bとの3点により、車体パネル10a〜10cに支持されるようになっている。
【0046】
このように、取付部材52をワイパモータ27のギヤハウジング35と別体に形成するようにしたので、取付部材52のピン部52bの形状を変更することで、モータ側車体パネル10cの形状が異なる種々の車両10へのワイパ装置15の取り付けに容易に対応することが可能となる。つまり、形状の異なる種々の取付部材52を用意しておくことで、ワイパモータ27の共通化を図りつつ、異なる形状のモータ側車体パネル10cにワイパ装置15を装着することができる。したがって、ワイパ装置15の流用性を高めてその製造工程を簡素化でき、ひいてはワイパ装置15のコスト低減を実現できる。例えば、ピン部52bの軸長の異なる種々の取付部材52を用意することで、ワイパモータ27のギヤハウジング35を設計変更することなく、ワイパモータ27とモータ側車体パネル10cとの間の距離が異なる種々の車両10に対応することができる。
【0047】
また、ワイパモータ27のギヤハウジング35に一体に形成されたホルダ部51に取付部材52を嵌め込むことにより取付部材52をホルダ部51に保持するようにしたので、ボルト等の固定部材を用いることなく、ギヤハウジング35に別体に設けられた取付部材52をギヤハウジング35に取り付けることが可能となる。したがって、ボトルレス構造としたことで部品点数の削減、およびワイパ装置15の重量の低減を図ることができる。
【0048】
また、取付部材52をホルダ部51に嵌め込む構造としたので、ボルト等の締結作業が必要なく、取付部材52をギヤハウジング35に取り付ける作業が容易となる。さらに、取付部材をボルト等によりギヤハウジングに固定するようにした場合に比べて、取付部材52をギヤハウジング35に取り付けるための取付構造をコンパクトに設定できるため、取付部材52の材料を低減することが可能となる。
【0049】
また、芯金部材60の鍔部60aの軸方向基端側の端面をホルダ部51の端壁51aを介してギヤハウジング35に突き当てるようにしたので、芯部材をギヤハウジングに一体に形成した場合と同等に、ワイパ作動時の振動や挙動によってワイパモータ27がモータ側車体パネル10cに対してがたつくことを抑制することができる。さらに、芯金部材60の鍔部60aとラバー部材61の突出部61aとをホルダ部51の収容孔54内に圧入するようにしたので、取付部材52がホルダ部51から外れてしまうことを抑制することができる。
【0050】
このワイパ装置15は歩行者保護のための脱落機能を有しており、カウルトップパネル17に物体が衝突するなどしてワイパ装置15に車両上方側から荷重が掛かったときに、ワイパ装置15が各車体パネル10a〜10cに対して脱落するようになっている。図11はモータ側車体パネルに対してワイパ装置が脱落した状態を示す説明図である。図11において、ワイパ装置15がモータ側車体パネル10cに取り付けられた状態を二点鎖線で示し、モータ側車体パネル10cに対してワイパ装置15が脱落した状態を実線で示している。
【0051】
モータ側車体パネル10cの挿通孔10dに差し込まれる取付部材52は、出力軸43の軸方向基端側つまり車両上方側に開口するホルダ部51に開口側から嵌め込まれることによりホルダ部51に保持されている。そのため、ワイパ装置15に車両上方側(図中上側)から荷重が掛かると、つまりワイパ装置15にホルダ部51の開口方向と逆向きの荷重が掛かると、取付部材52の係合部64がホルダ部51の係合孔55から抜け、取付部材52がホルダ部51から外れることとなる。そして、図11に矢印で示すように、取付部材52がモータ側車体パネル10cの挿通孔10dに差し込まれた状態のまま、ワイパ装置15がモータ側車体パネル10cに対して脱落する。なお、ワイパ装置15をDR側車体パネル10a、AS側車体パネル10bに対して脱落可能なように、各ピボットホルダ20a,20bにも図示しない脱落機能が設けてある。
【0052】
このように、ホルダ部51を出力軸43の軸方向基端側つまり車両上方側に向けて開口させ、ホルダ部51の開口側から取付部材52をホルダ部51に嵌め込むことにより取付部材52をホルダ部51に保持するようにしたので、ワイパ装置15に外部から荷重が掛かったときに取付部材52がホルダ部51から外れ、ワイパ装置15をモータ側車体パネル10cに対して脱落させることができる。これにより、ワイパ装置15の脱落時にホルダ部51や取付部材52が破損することが抑制され、ワイパ装置15を再び取り付ける際に取付部材52等を再利用することが可能となる。
【0053】
図12は取付部材の変形例を示す断面図である。図12において、上述した部材と同様の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0054】
図12に示す取付部材52のラバー部材61には、その軸方向先端部から径方向外側に突出する環状の突出部61cが設けられている。突出部61cは、ラバー部材61の軸方向基端側に設けられた環状の突出部61bに対してラバー部材61の軸方向に所定の間隔をあけて設けられており、一対の突出部61b,61cの相互間により径方向外側に開口する環状の嵌め込み溝71が形成されている。この取付部材52のピン部52bには、ラバー部材61に形成された嵌め込み溝71の径方向内側に位置して、つまり外周面が嵌め込み溝71に対向するように円環形状の嵌め込み部72が設けられている。また、ラバー部材61の装着孔62はラバー部材61の軸方向両端側へ開口しており、装着孔62内に芯金部材60が装着された状態では、芯金部材60の円筒部60bの軸方向先端面がラバー部材61により覆われないようになっている。
【0055】
ホルダ部51に保持された取付部材52は、車両の上方、下方、または横方向に開口するモータ側車体パネル10cの挿通孔10dに対して、その開口側からスライドして差し込まれる。取付部材52がモータ側車体パネル10cに組み付けられた状態では、取付部材52のピン部52bに設けられた嵌め込み部72が挿通孔10d内に固定されている。また、ラバー部材61の嵌め込み溝71内にはモータ側車体パネル10cが圧入され、一対の突出部61b,61cの間でモータ側車体パネル10cが挟み込まれている。これにより、取付部材52がモータ側車体パネル10cから外れることが防止されるとともに、ワイパ作動時の振動や挙動によってワイパモータ27がモータ側車体パネル10cに対してがたつくことがさらに抑制されるようになっている。図12に示す取付部材52を用いた場合でも、図8に示す取付部材52を用いた場合と同様の効果を奏することはもちろんである。
【0056】
図13は取付部材の他の変形例を示す分解斜視図であり、図14は図13に示す取付部材がホルダ部に保持された状態を示す断面図であり、図15は図13に示す取付部材をホルダ部に組み付ける際の一工程を示す説明図である。図13乃至図15において、上述した部材と同様の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0057】
図13に示す取付部材52の芯金部材(芯部材)80は、第1芯金半体82と第2芯金半体83とにより形成されている。第1芯金半体82は、円環板形状の鍔部82aと、鍔部82aの内周部から軸方向一方側に延びる円筒部82bとを備えており、鍔部82aが円筒部82bの軸方向基端部から径方向外側へ突出して形成されている。第1芯金半体82の円筒部82bの外径は、ラバー部材61の装着孔62の内径よりも小さく設定されている。
【0058】
一方、第2芯金半体83は、円環板形状の鍔部83aと、鍔部83aの内周部から軸方向他方側に延びる円筒部83bとを備えており、鍔部83aが円筒部83bの軸方向先端部から径方向外側へ突出して形成されている。第2芯金半体83の円筒部83bの内径は第1芯金半体82の円筒部82bの外径に対応して設定され、第2芯金半体83の円筒部83bの外径はラバー部材61の装着孔62の内径に対応して設定されている。
【0059】
次に、取付部材80とホルダ部51との組み付け工程について説明する。まず、図13に矢印(1)で示すように、ラバー部材61を第1芯金半体82に対して第1芯金半体82の軸方向先端側から組み付け、第1芯金半体82をラバー部材61の装着孔62内に収容する。第1芯金半体82がラバー部材61に収容された状態では、第1芯金半体82の円筒部82bの外周面とラバー部材61の装着孔62の内周面との間に所定の隙間84が形成されており、第1芯金半体82の円筒部82bの外周面が隙間84を介してラバー部材61により覆われている。
【0060】
続いて、図8に矢印(2)で示すように、第1芯金半体82およびラバー部材61の軸方向をホルダ部51に形成された係合孔55の貫通方向に平行にして配置した状態で、ホルダ部51に対して収容孔54の開口側から第1芯金半体82およびラバー部材61を組み付ける。このとき、第1芯金半体82およびラバー部材61が組み付け溝56を介して係合孔55に嵌め込まれる際には、図15に示すように、ラバー部材61が隙間84を埋めるように径方向内側に向けて弾性変形された状態で、係合孔55内に押し込むようにして組み付けられる。
【0061】
そして、図13に矢印(3)で示すように、ホルダ部51に組み付けられた第1芯金半体82およびラバー部材61に対して第2芯金半体83を第1芯金半体82の軸方向先端側から組み付け、第2芯金半体83を第1芯金半体82とラバー部材61との間の隙間84に装着する。つまり、ラバー部材61に対して第1芯金半体82とは反対側から第2芯金半体83を組み付け、第2芯金半体83をラバー部材61の装着孔62に圧入することにより、芯金半体82,83とラバー部材61とが互いに組み付けられて取付部材52が形成される。
【0062】
各芯金半体82,83とラバー部材61とが互いに組み付けられた状態では、図14に示すように、第2芯金半体83の円筒部83bの外周面がラバー部材61の装着孔62の内周面に接触されており、第2芯金半体83の円筒部83bの外周面がラバー部材61により覆われている。また、第2芯金半体83の円筒部83bの内周面が第1芯金半体82の円筒部82bの外周面に接触されており、第1芯金半体82の円筒部82bの外周面が第2芯金半体83により覆われている。つまり、第1芯金半体82とラバー部材61との間の隙間84を埋めるように第2芯金半体83が装着されている。これにより、ラバー部材61が径方向内側に向けて弾性変形されることが抑制されるため、一対の保持爪57により取付部材52の係合部64が係合孔55から抜けることが防止され、取付部材52がホルダ部51に保持されることとなる。
【0063】
このように、第1芯金半体82とラバー部材61との間に隙間84を設けた状態で、第1芯金半体82とラバー部材61とをホルダ部51に組み付けるようにしたので、ラバー部材61が隙間84を埋めるように径方向内側に向けて弾性変形することによって、第1芯金半体82とラバー部材61とをホルダ部51の係合孔55に容易に嵌め込むことが可能となる。したがって、図9に示す取付部材52のようにラバー部材61を圧縮させた状態で係合孔55内へ押し込むようにした場合に比べて、取付部材52をホルダ部51へ嵌め込む際の作業負担を軽減させることができる。
【0064】
また、第1芯金半体82とラバー部材61とをホルダ部51に組み付けた状態で、第1芯金半体82とラバー部材61との間の隙間84を埋めるように第2芯金半体83を装着するようにしたので、ラバー部材61が径方向内側に向けて弾性変形されることが抑制され、取付部材52をホルダ部51に強固に保持することが可能となる。図13に示す取付部材52を用いた場合でも、図8に示す取付部材52を用いた場合と同様の効果を奏することはもちろんである。
【0065】
図16はホルダ部と取付部材との嵌め込み構造の変形例を示す断面図であり、図17はホルダ部と取付部材との嵌め込み構造の他の変形例を示す断面図である。図16および図17において、上述した部材と同様の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0066】
図16に示すホルダ部51の端壁51bには、出力軸43の軸方向と直交する方向に貫通する係合孔90が形成されており、係合孔90は収容孔54の開口方向と直交する方向に延びる長孔形状をしている。係合孔90は組み付け溝91を介して収容孔54の開口方向と同一方向に開口している。組み付け溝91の開口寸法L2は係合孔90の長手方向寸法D2よりも小さく設定されており、ホルダ部51の端壁51bには、係合孔90と組み付け溝91とにより略T字形状の溝が形成されている。一方、ホルダ部51の係合孔90に嵌め込まれる取付部材52の係合部93は、係合孔90の形状に対応させて断面略小判形の筒形状に形成されている。
【0067】
図16に一点鎖線で示すように、取付部材52は、係合部93の長手方向をホルダ部51に形成された係合孔90の長手方向と直交して配置した状態で、係合部93が組み付け溝92内に挿入されるように、ホルダ部51に対して収容孔54の開口側から組み付けられる。そして、図16に二点鎖線で示すように、取付部材52を回転させながら係合部93がホルダ部51の係合孔90に圧入して嵌め込まれる。ここで、係合孔90内に嵌め込まれた取付部材52の係合部93の長手方向寸法は係合孔90の長手方向寸法D2に対応して形成されており、組み付け溝91の開口寸法L2よりも大きく設定されている。したがって、モータ側車体パネル10cの挿通孔10dに差し込まれた取付部材52に対して、ギヤハウジング35のホルダ部51にワイパ装置15の自重による車両下方側への荷重が作用しても、取付部材52の係合部93が係合孔90から抜けることが抑制され、取付部材52がホルダ部51に保持されるようになっている。
【0068】
また、図17に示すホルダ部51の端壁51bには、出力軸43の軸方向と直交する方向に開口する円形の係合孔100が形成されており、係合孔100は組み付け溝101を介して収容孔54と同一方向に開口している。組み付け溝101は収容孔54の開口方向と直交する方向において係合孔100に連通しており、ホルダ部51の端壁51bには、係合孔100と組み付け溝101とにより略L字形状の溝が形成されている。一方、ホルダ部51の係合孔100に嵌め込まれる取付部材52の係合部103は、係合孔100の形状に対応させて略円筒形状に形成されている。
【0069】
図17に一点鎖線で示すように、取付部材52は、係合部103が組み付け溝101内に挿入されるように、ホルダ部51に対して収容孔54の開口側から組み付けられる。そして、図17に二点鎖線で示すように、取付部材52が係合孔100と組み付け溝101との連通方向に移動され、係合部103がホルダ部51の係合孔100に嵌め込まれる。係合孔100内に嵌め込まれた取付部材52の係合部103の車両上方側(図中上側)は、ホルダ部51の端壁51bにより覆われている。したがって、モータ側車体パネル10cの挿通孔10dに差し込まれた取付部材52に対して、ギヤハウジング35のホルダ部51にワイパ装置15の自重による車両下方側への荷重が作用しても、取付部材52の係合部103が係合孔100から抜けることが抑制され、取付部材52がホルダ部51に保持されるようになっている。
【0070】
このように、ホルダ部51と取付部材52との嵌め込み構造は任意に変更可能であり、図16および図17に示すホルダ部51と取付部材52との嵌め込み構造を適用した場合においても、図10に示すホルダ部51と取付部材52との嵌め込み構造を適用した場合と同様の効果を奏することはもちろんである。但し、図10に示すホルダ部51と取付部材52との嵌め込み構造を適用した場合には、取付部材52を回転させながらホルダ部51に嵌め込むようにしたり、取付部材52を収容孔54の開口方向と直交する方向つまり係合孔100と組み付け溝101との連通方向に移動させたりする必要がない。そのため、ワイパ装置15に外部からの荷重が掛かったときに取付部材52がホルダ部51から外れるようにすることが可能であり、ワイパ装置15に十分な脱落機能を持たせることができる。
【0071】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態においては、取付部材52を芯金部材60とラバー部材61とにより形成したが、ラバー部材61を設けずに芯金部材60のみにより取付部材52を形成するようにしても良い。
【0072】
また、上記実施の形態においては、ホルダ部51に形成された収容孔54および係合孔55を出力軸43の軸方向基端側つまり車両上方側に開口させることでワイパ装置15に脱落機能を持たせたが、ワイパ装置15に脱落機能を持たせない場合にはホルダ部51の収容孔54および係合孔55を出力軸43の軸方向基端側以外の方向に開口させるようにしても良い。
【0073】
さらに、上記実施の形態においては、ピン形状の取付部材52をモータ側車体パネル10cに形成された挿通孔10dに差し込むようにしたが、ギヤハウジング35のホルダ部51に挿入孔が形成された取付部材を保持し、モータ側車体パネル10cに設けられたピン部材を取付部材の挿入孔に差し込むことで、取付部材をモータ側車体パネル10cに差込状態で取り付けるようにしても良い。
【0074】
さらに、上記実施の形態においては、ワイパ装置15の払拭パターンをタンデム型としたが、本発明はこれに限定されず、対向払拭型などの他の払拭パターンにも対応することができる。
【0075】
さらに、上記実施の形態においては、車両10の前方側のフロントウィンドシールド11を払拭するワイパ装置15を示したが、本発明はこれに限定されず、車両の後方側のリヤウィンドシールドを払拭するワイパ装置や、鉄道車両や航空機等のウィンドシールドを払拭するワイパ装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 車両
10a DR側車体パネル(取付対象物)
10b AS側車体パネル(取付対象物)
10c モータ側車体パネル(取付対象物)
10d 挿通孔
11 フロントウィンドシールド
11a,11b 払拭範囲
12a DR側ワイパ部材
12b AS側ワイパ部材
13a,13b ワイパブレード
14a,14b ワイパアーム
15 ワイパ装置
16 カウル
17 カウルトップパネル
18a DR側ピボット軸
18b AS側ピボット軸
20a DR側ピボットホルダ
20b AS側ピボットホルダ
21a,21b 円筒支持部
22a DR側取付部
22b AS側取付部
23 ブッシュ
24a,24b 連結部
25 フレーム部材
26 固定ボルト
27 ワイパモータ
30 モータ本体
31 ギヤユニット部
32 コネクタ
33 モータシャフト
33a,33b ウォーム
34 モータケース
35 ギヤハウジング
36 ギヤケース
36a モータ固定部
37 ギヤカバー
38a,38b カウンタギヤ
39a,39b 支軸
40a,40b ウォームホイール
41a,41b ピニオンギヤ
42 出力ギヤ
43 出力軸
44 減速機構(減速部)
45 クランクアーム
46a DR側駆動レバー
46b AS側駆動レバー
47a DR側連結ロッド
47b AS側連結ロッド
48 リンク機構
50 モータ側取付部
51 ホルダ部
51a,51b 端壁
51c 側壁
52 取付部材
52a 嵌合部
52b ピン部
54 収容孔
55 係合孔
56 組み付け溝
57 保持爪
60 芯金部材
60a 鍔部
60b 円筒部
61 ラバー部材(弾性部材)
61a〜61c 突出部
62 装着孔
63 係合溝
64 係合部
71 嵌め込み溝
72 嵌め込み部
80 芯金部材
82 第1芯金半体
82a 鍔部
82b 円筒部
83 第2芯金半体
83a 鍔部
83b 円筒部
84 隙間
90 係合孔
91 組み付け溝
93 係合部
100 係合孔
101 組み付け溝
103 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパ部材がそれぞれ装着される一対のピボット軸を有するワイパ装置であって、
取付対象物に取り付けられ、前記各ピボット軸を回転自在に支持する一対のピボットホルダと、
前記一対のピボットホルダを相互に連結するフレーム部材と、
モータ本体と、当該モータ本体の回転を減速して出力軸に伝達する減速部と、前記モータ本体に取り付けられ前記減速部を収容するハウジングとを備え、前記フレーム部材に固定され前記一対のピボット軸を駆動するワイパモータと、
前記ワイパモータと前記各ピボット軸との間に設けられ、前記出力軸の回転運動を揺動運動に変換して前記各ピボット軸に伝達するリンク機構と、
前記ハウジングに一体に形成され、少なくとも一方側に開口するホルダ部と、
前記ホルダ部に開口側から嵌め込まれて前記ホルダ部に保持され、前記取付対象物に対して差し込み状態で取り付けられる取付部材とを有することを特徴とするワイパ装置。
【請求項2】
請求項1記載のワイパ装置において、前記ホルダ部は、前記出力軸の軸方向に開口していることを特徴とするワイパ装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のワイパ装置において、前記取付部材は、ピン形状の芯部材と、前記芯部材に装着される弾性部材とを有しており、前記芯部材と前記ホルダ部との間には前記弾性部材が介在していることを特徴とするワイパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−46104(P2012−46104A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191034(P2010−191034)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】