ワイヤハーネス
【課題】電線を保護する保護板が設けられると共にパネルの取付孔に係止可能に形成された配線用クリップが当該電線に設けられたワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネス1は、パネルの取付孔に係止される配線用クリップ2が電線3に設けられている。前記配線用クリップ2は、板状に形成された本体部6と、前記本体部6の一方の面に設けられると共に前記電線3の軸方向に延長され当該電線3の外周面を覆う第1覆い部8と、前記第1覆い部8の一端部から前記電線3の軸方向に延長され当該電線3に並設された板状部9と、前記板状部9の一端部から前記電線3の軸方向に延長され当該電線3の外周面を覆う第2覆い部10と、前記本体部6の他方の面に設けられ前記パネルの前記取付孔に係止される係止部7と、を備えている。
【解決手段】ワイヤハーネス1は、パネルの取付孔に係止される配線用クリップ2が電線3に設けられている。前記配線用クリップ2は、板状に形成された本体部6と、前記本体部6の一方の面に設けられると共に前記電線3の軸方向に延長され当該電線3の外周面を覆う第1覆い部8と、前記第1覆い部8の一端部から前記電線3の軸方向に延長され当該電線3に並設された板状部9と、前記板状部9の一端部から前記電線3の軸方向に延長され当該電線3の外周面を覆う第2覆い部10と、前記本体部6の他方の面に設けられ前記パネルの前記取付孔に係止される係止部7と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を保護する保護板が設けられると共にパネルの取付孔に係止可能に形成された配線用クリップが当該電線に設けられたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等には、種々の電子機器と電装品とが搭載されている。これらの電子機器と電装品とにバッテリなどの電源等からの電力や制御装置等からの制御信号などを伝達する手段として、ワイヤハーネスが用いられている。
【0003】
ワイヤハーネスは、自動車等の車体を構成するパネルに配索されている。前記パネルの取付孔に係止される配線用クリップが設けられたワイヤハーネスが種々提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照。)。前記ワイヤハーネスには、当該ワイヤハーネスを構成する電線を収容するチューブが設けられる(例えば、特許文献4参照。)。
【0004】
前記チューブ内に電線が収容されたワイヤハーネスは、前記パネルの凸部などに前記電線が接触することを防止しているため、前記パネルと前記ワイヤハーネスとが干渉する部位で前記電線を保護する。このため、ワイヤハーネスの電線の断線等の故障が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−315164号公報
【特許文献2】特開2005−26178号公報
【特許文献3】特開2006−14569号公報
【特許文献4】特開平11−205943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したワイヤハーネスは、配線用クリップが設けられた箇所で、チューブ内に電線を収容するため、前記配線用クリップと前記チューブとを配線用テープ等で捲回して固定しなければならない。また、前記配線用クリップが設けられた箇所で、チューブ内に電線を挿通させるため、前記電線の挿通作業に手間がかかり、前記取付作業の所要時間が長時間化するという問題があった。また、配線用クリップが設けられた箇所で、前記チューブが必要なため、ワイヤハーネスの部品点数が増え、当該ワイヤハーネスのコストが上昇するという問題もあった。また、チューブを在庫として保管および管理しなければならないという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、電線を保護する保護板が設けられると共にパネルの取付孔に係止可能に形成された配線用クリップが当該電線に設けられたワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、パネルの取付孔に係止される配線用クリップが電線に設けられたワイヤハーネスにおいて、前記配線用クリップは、板状に形成された本体部と、前記本体部の一方の面に設けられると共に前記電線の軸方向に延長され当該電線の外周面を覆う第1覆い部と、前記第1覆い部の一端部から前記電線の軸方向に延長され当該電線に並設された板状部と、前記板状部の一端部から前記電線の軸方向に延長され当該電線の外周面を覆う第2覆い部と、前記本体部の他方の面に設けられ前記パネルの前記取付孔に係止される係止部と、を備えていることを特徴とするワイヤハーネスである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、前記板状部が、前記本体部に対して前記第1覆い部の外周面上の反対側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネスである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、前記板状部には、前記板状部から膨出され前記電線の外周面を覆う筒状部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネスである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、当該ワイヤハーネスに配線用クリップが設けられた箇所で、チューブ内に前記電線を挿通させる挿通作業が必要ではないため、前記ワイヤハーネスの製造が容易に行える上に製造にかかる所要時間が短縮される。
【0012】
また、ワイヤハーネスは、前記電線配線用クリップが一体成形されているため、組立工数が少なくなり、部品点数が少なくなる。このため、前記ワイヤハーネスを安価に提供することができる。
【0013】
また、ワイヤハーネスは、当該ワイヤハーネスとパネルとが干渉する部位に前記板状部を設けることができるため、全体に亘って電線を収容する従来のチューブを設けた場合よりも安価となる。
【0014】
また、ワイヤハーネスは、電線に沿って並設された板状部によって、前記ワイヤハーネスとパネルとが干渉する部位で前記電線が当該パネルに接触することを防止する。このため、前記ワイヤハーネスの前記電線の断線等が防止される。
【0015】
請求項2に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、当該ワイヤハーネスが配索されたパネルと、板状部との間に電線が挟まれた状態となるため、前記ワイヤハーネスが干渉する前記パネルの上方の部位に前記電線が接触することを防止する。このため、前記ワイヤハーネスの前記電線の断線等が確実に防止される。
【0016】
請求項3に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、筒状部によって電線が板状部の外側に露出することが防止されるため、前記電線の断線等が確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるワイヤハーネスの斜視図である。
【図2】図1に示すワイヤハーネスの配線用クリップの側面図である。
【図3】図2に示す配線用クリップの平面図である。
【図4】図2に示す配線用クリップの正面図である。
【図5】図1に示すワイヤハーネスを成形する金型の要部断面図である。
【図6】図5に示す金型の下型の斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかるワイヤハーネスの斜視図である。
【図8】図7に示すワイヤハーネスの配線用クリップの側面図である。
【図9】図8に示す配線用クリップの平面図である。
【図10】図8に示す配線用クリップの正面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態にかかるワイヤハーネスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図11を参照して説明する。
【0019】
本発明の第1の実施形態にかかるワイヤハーネスは、図1に示すように、パネルの取付孔に係止可能に形成された配線用クリップ2と、電線3とを備えている。ワイヤハーネス1は、前記電線3に前記配線用クリップ2が一体成形されて形成されている。
【0020】
配線用クリップ2は、図2に示すように、薄板状に形成された本体部6と、前記本体部6の一方の面に設けられ前記電線3の外表面に一体成形され当該電線を覆う第1覆い部8と、前記第1覆い部8の一端から前記電線3の外表面に沿って当該電線3の軸方向に延長された板状部9と、前記板状部9の一端から前記電線3の外表面に一体成形され当該電線を覆う第2覆い部10と、前記本体部6の他方の面に立設され前記パネルの前記取付孔に係止される係止部7と、を備えている。配線用クリップ2は、可撓性を有するポリプロピレン樹脂などの合成樹脂によって形成されている。
【0021】
電線3は、導電性の芯線と、絶縁性の被覆部とを備えている。芯線は、複数本の導線が撚られて形成されている。導線は、銅や銅合金等の導電性の金属からなる。被覆部は、ポリ塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂などからなり、前記芯線を被覆している。このため、電線3の外表面は、前記被覆部の外表面となっている。なお、芯線は、一本の導線から構成されても良い。なお、電線3は、一本であっても、複数本の電線を束ねて形成された電線束であっても良い。
【0022】
本体部6には、図2および図4に示すように、当該本体部6の他方の面に、前記係止部7が前記取付孔に係止された際に、前記パネルに当接する突起部12,12が設けられている。本体部6には、当該本体部6の一方の面に、前記第1覆い部8を支持する連結部26が設けられている。
【0023】
突起部12,12は、図2および図4に示すように、前記電線3の軸方向に間隔を空けて配置されている。突起部12,12は、後述する係止部7の係止片16,16に干渉しない位置に設けられている。突起部12,12は、前記電線3の軸方向に略直交する方向に延長されて形成されている。
【0024】
連結部26は、図2に示すように、前記本体部6の一方の面の一端側に立設されると共に、前記第1覆い部8の一端側に連結されている。連結部26は、図4に示すように、前記第1覆い部8よりも幅狭に形成されている。なお、連結部26は、前記第1覆い部8の一端側に限定されるものではなく、前記第1覆い部8の中央側などであっても良い。
【0025】
係止部7は、図2に示すように、前記本体部6の他方の面から略垂直に延長された二本の柱状部15,15と、前記柱状部15,15のそれぞれの先端から前記本体部6の他方の面に向かって延長された係止片16,16と、を備えている。
【0026】
柱状部15,15は、前記本体部6の他方の面の中央から前記第1覆い部8の先端寄りに偏倚して立設されている。係止片16,16は、前記電線3の軸方向に揺動可能に形成されている。係止片16,16は、互いに、基端部から自由端に向かって徐々に離間する傾斜に形成されている。係止片16,16は、それぞれの自由端に、前記パネルの取付孔に係止する係止爪が突設されている。
【0027】
第1覆い部8は、図2および図3に示すように、前記電線3の外表面を覆うと共に当該電線3の軸方向に延長して円筒形状に形成された筒状部18と、前記筒状部18の両側面に開孔され前記電線3の外表面に連通する開口部19,19と、を備えている。第1覆い部8は、前記電線3に一体成形されて当該電線3が固定されている。第1覆い部8は、一端側で前記連結部26に連結され、前記本体部6の一方の面に支持されている。
【0028】
板状部9は、図2および図3に示すように、前記電線3の軸方向に延長され薄板状に形成されると共に前記第1覆い部8の一端と後述する第2覆い部10の一端とに連結される保護板21と、前記電線3の外表面を覆って当該電線3を固定する筒状部22と、を備えている。筒状部22は、前記保護板21の中央部に設けられ、前記電線3の外周面を覆っている。なお、筒状部22は、前記保護板21の長さに応じて、前記電線3を当該保護板21から外部に露出させないように複数個設けても良く、また、前記保護板21が短尺の場合などには設けなくても良い。
【0029】
保護板21は、図2において、電線3の上方に設けられている。保護板21は、前記電線3の外径よりも幅広に形成されている。保護板21は、前記電線3の変形に追従できる可撓性を有して形成されている。保護板21は、前記第1覆い部8の外周面上で、前記本体部6の反対側に設けられている。
【0030】
このため、ワイヤハーネス1が所要の配索形態で前記パネルに配索された時に、前記電線3の変形に追従して前記保護板21が変形する。このため、電線3が保護板21から離間して前記パネル等に接触することが防止される。なお、保護板21は、電線3と前記パネル等が干渉する部位に設けられるため、電線3の上方の他に、電線3の下方や側方に設けても良い。
【0031】
第2覆い部10は、図2に示すように、前記第1覆い部8から間隔を空けて設けられると共に前記板状部9の一端に連結されている。第2覆い部10は、前記電線3の外表面を覆うと共に当該電線3の軸方向に延長して延長形状に形成された筒状部24から構成されている。筒状部24は、前記電線3に一体成形され当該電線3が固定されている。
【0032】
上述の如く構成されたワイヤハーネス1は、図5に示すように、金型30内で、射出成形によって、前記電線3に前記配線用クリップ2が一体成形されて形成される。
【0033】
金型30は、水平割金型であって、上型31と下型32とから構成されている。上型31と下型32とには、それぞれ、前記電線3の外形に沿って形成された線条キャビティ33と、前記配線用クリップ2の外形に沿って形成された配線用クリップキャビティ34と、が設けられている。
【0034】
下型32には、図6に示すように、線条キャビティ33と配線用クリップキャビティ34とがそれぞれ上向きに設けられている。線条キャビティ33には、前記金型30の両端から前記電線3を外部に導出させる導出口36,36が、上型31と下型32とにそれぞれ設けられている。配線用クリップキャビティ34は、図示しない射出成形機から射出された溶融樹脂を導入するランナが連通している。なお、金型30は垂直割金型であっても良い。
【0035】
なお、金型30は、線条キャビティ33上に複数の配線用クリップキャビティ34を設けても良い。この場合の金型30は、複数個の配線用クリップキャビティ34が、前述したワイヤハーネス1が前記パネルに取り付けられる時に、複数個の配線用クリップ2が前記パネルの前記取付孔に係止可能となる位置に配置される。即ち、複数個の配線用クリップ2は、電線3に対する相対的な位置が前記パネルの前記取付孔に係止可能となる位置に設けられる。
【0036】
本発明でいう、複数個の配線用クリップ2が、電線3に対する相対的な位置がパネルの取付孔に係止可能となる位置に設けられているとは、線条キャビティ33に対してワイヤハーネス1の設計時の相対的な位置に保たれた配線用クリップキャビティ34内に溶融樹脂を射出成形して得られたワイヤハーネス1において、複数個の配線用クリップ2の電線3に対する相対的な位置が、射出成形時に生じる誤差を除くと、設計時に定められた位置となっていることをいう。
【0037】
前述した金型30によって成形されたワイヤハーネス1は、配線用クリップ2が前記パネルの前記取付孔に係止して当該パネルに取り付けられる。このとき、前記配線用クリップ2の係止部7が前記取付孔内に侵入し、係止片16,16のそれぞれの自由端が互いに近接する方向に弾性変形する。その後、前記係止部7が前記取付孔を挿通し、前記係止片16,16のそれぞれの自由端が弾性回復力によって互いに離間する方向に変位する。
【0038】
互いに離間する方向に変位した前記係止片16,16のそれぞれの自由端は、前記取付孔の周縁に当接し、前記係止部7が前記取付孔に係止する。このとき、突起部12,12の先端部が前記パネルに当接し、前記係止部7の係止力が向上し、前記係止部7が前記取付孔に確実に係止する。そして、ワイヤハーネス1が、所要の配索形態でパネルに取り付けられる。
【0039】
上述の第1の実施形態にかかるワイヤハーネス1は、パネルの取付孔に係止される配線用クリップ2が電線3に設けられている。前記配線用クリップ2は、板状に形成された本体部6と、前記本体部6の一方の面に設けられると共に前記電線3の軸方向に延長され当該電線3の外周面を覆う第1覆い部8と、前記第1覆い部8の一端部から前記電線3の軸方向に延長され当該電線3に並設された板状部9と、前記板状部9の一端部から前記電線3の軸方向に延長され当該電線3の外周面を覆う第2覆い部10と、前記本体部6の他方の面に設けられ前記パネルの前記取付孔に係止される係止部7と、を備えている。
【0040】
このため、本発明にかかるワイヤハーネス1は、チューブ内に電線を挿通させる組み付け作業が必要ないため、前記ワイヤハーネス1の製造が容易となる上に、製造にかかる所要時間が短縮される。
【0041】
また、ワイヤハーネス1は、電線3に配線用クリップ2が一体成形されているため、部品点数を減少できる。また、金型30を用いて生産することができるため、大量生産ができる。このため、ワイヤハーネス1を安価に提供することができる。
【0042】
また、ワイヤハーネス1は、当該ワイヤハーネス1とパネルとが干渉する部位に板状部9を設けられるため、全体に亘って電線3を収容する従来のチューブを設けた場合よりも安価となる。
【0043】
また、ワイヤハーネス1は、当該ワイヤハーネス1とパネルとが干渉する部位に板状部9が設けられるため、電線3が前記干渉する部位に接触することを防止する。従って、前記電線3が前記パネルとの干渉によって断線することが防止される。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかるワイヤハーネス1Aの第2の実施形態について、図7〜図10を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
本実施形態にかかるワイヤハーネス1Aは、図7に示すように、配線用クリップ2Aと電線3とを備え、前記電線3に前記配線用クリップ2Aが一体成形されて形成されている。
【0046】
配線用クリップ2Aは、図8〜図10に示すように、本体部6の一方の面に設けられた第1覆い部8Aに、係合突起27,27,28,28が設けられている。係合突起27,27,28,28は、前記第1覆い部8Aの先端に向かって次第に突出量が減少する先細形状に形成されている。係合突起27,27は、前記第1覆い部8Aの筒状部18の外周面上に互いに逆方向に突出して設けられている。係合突起28,28は、前記筒状部18の外周面上に互いに逆方向に突出して設けられている。係合突起27,27と係合突起28,28とは、水平方向に突出して設けられている。係合突起27,27は、係合突起28,28よりも前記筒状部18の先端側に設けられている。係合突起28,28は、係合突起27,27よりも突出量が大きく形成されている。
【0047】
このため、ワイヤハーネス1Aは、第1覆い部8Aの外周面に、ゴムチューブやコルゲートチューブ等のチューブを圧入すると、前記第1覆い部8Aの係合突起27,27,28,28が前記チューブの内周面に係合する。このため、工具やテープを使用せずに、前記チューブをワイヤハーネス1Aに取り付けることができる。
【0048】
(第3の実施形態)
次に、本発明にかかるワイヤハーネス1Bの第3の実施形態について、図11を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
本実施形態にかかるワイヤハーネス1Bは、図11に示すように、配線用クリップ2Bと第2覆い部10Bと電線3とを備え、前記電線3に前記配線用クリップ2Bと前記第2覆い部10Bとが一体成形されて形成されている。
【0050】
配線用クリップ2Bは、本体部6の一方の面に設けられた第1覆い部8Bに、係合突起27,27,28,28が設けられている。係合突起27,27,28,28は、前記第1覆い部8Bの先端に向かって次第に突出量が減少する先細形状に形成されている。係合突起27,27は、前記第1覆い部8Bの筒状部18の外周面上に互いに逆方向に突出して設けられている。係合突起28,28は、前記筒状部18の外周面上に互いに逆方向に突出して設けられている。係合突起27,27と係合突起28,28とは、水平方向に突出して設けられている。係合突起27,27は、係合突起28,28よりも前記筒状部18の先端側に設けられている。係合突起28,28は、係合突起27,27よりも突出量が大きく形成されている。
【0051】
第1覆い部8Bは、前記本体部6の一方の面から立設された連結部に連結されており、前記係合突起27,27,28,28が設けられた筒状部18と、前記筒状部18の長手方向に沿って延長されて前記電線3を覆う延長筒状部18aと、を備えている。筒状部18と延長筒状部18aとは同一径に形成されている。
【0052】
第2覆い部10Bは、前記電線3を覆って該電線3の外周面に沿って円筒状に形成された筒状部24と、前記筒状部24の中央部から膨出されて直方体形状に形成された膨出部25と、を備えている。第2覆い部10Bは、ワイヤハーネス1Bを自動車などに配索した際に、パネルなどとの干渉を防止する必要がある箇所にのみ設けられる。なお、第2覆い部10Bは、図示例では、電線3上に1つ設けられているが、前述した必要な箇所に応じて、複数個設けても良い。
【0053】
筒状部24は、前記第1覆い部8Bの筒状部18よりも大径に形成されている。電線3の筒状部24に覆われた箇所は、前記電線3の外周面の全周に筒状部24が設けられている。なお、筒状部24は、膨出部25が設けられていないものであっても良い。
【0054】
膨出部25は、前記筒状部24に長手方向に対して直交する方向に膨出されて形成されている。なお、膨出部25は、前述した直方体形状に限定されるものではなく、他の形状であっても良い。
【0055】
上述の如く構成されたワイヤハーネス1Bは、配線用クリップ2Bと第2覆い部10Bとの間に位置する電線3には、該電線3の屈曲を規制する部材が設けられていないため、自動車等のパネルに沿って前記ワイヤハーネス1Bを容易に屈曲させることができ、自動車等に配索する際の作業性を向上することができる。
【0056】
また、ワイヤハーネス1Bは、自動車などに配索した際には、第1覆い部8Bと第2覆い部10Bとによってパネル等と電線3との干渉を防止することができる。
【0057】
また、ワイヤハーネス1Bは、金型30を用いて生産することができるため、大量生産ができる。このため、ワイヤハーネス1Bを安価に提供することができる。
【0058】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
1,1A,1B ワイヤハーネス
2,2A,2B 配線用クリップ
3 電線
6 本体部
7 係止部
8,8A,8B 第1覆い部
9 板状部
10,10B 第2覆い部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を保護する保護板が設けられると共にパネルの取付孔に係止可能に形成された配線用クリップが当該電線に設けられたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等には、種々の電子機器と電装品とが搭載されている。これらの電子機器と電装品とにバッテリなどの電源等からの電力や制御装置等からの制御信号などを伝達する手段として、ワイヤハーネスが用いられている。
【0003】
ワイヤハーネスは、自動車等の車体を構成するパネルに配索されている。前記パネルの取付孔に係止される配線用クリップが設けられたワイヤハーネスが種々提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照。)。前記ワイヤハーネスには、当該ワイヤハーネスを構成する電線を収容するチューブが設けられる(例えば、特許文献4参照。)。
【0004】
前記チューブ内に電線が収容されたワイヤハーネスは、前記パネルの凸部などに前記電線が接触することを防止しているため、前記パネルと前記ワイヤハーネスとが干渉する部位で前記電線を保護する。このため、ワイヤハーネスの電線の断線等の故障が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−315164号公報
【特許文献2】特開2005−26178号公報
【特許文献3】特開2006−14569号公報
【特許文献4】特開平11−205943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したワイヤハーネスは、配線用クリップが設けられた箇所で、チューブ内に電線を収容するため、前記配線用クリップと前記チューブとを配線用テープ等で捲回して固定しなければならない。また、前記配線用クリップが設けられた箇所で、チューブ内に電線を挿通させるため、前記電線の挿通作業に手間がかかり、前記取付作業の所要時間が長時間化するという問題があった。また、配線用クリップが設けられた箇所で、前記チューブが必要なため、ワイヤハーネスの部品点数が増え、当該ワイヤハーネスのコストが上昇するという問題もあった。また、チューブを在庫として保管および管理しなければならないという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、電線を保護する保護板が設けられると共にパネルの取付孔に係止可能に形成された配線用クリップが当該電線に設けられたワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、パネルの取付孔に係止される配線用クリップが電線に設けられたワイヤハーネスにおいて、前記配線用クリップは、板状に形成された本体部と、前記本体部の一方の面に設けられると共に前記電線の軸方向に延長され当該電線の外周面を覆う第1覆い部と、前記第1覆い部の一端部から前記電線の軸方向に延長され当該電線に並設された板状部と、前記板状部の一端部から前記電線の軸方向に延長され当該電線の外周面を覆う第2覆い部と、前記本体部の他方の面に設けられ前記パネルの前記取付孔に係止される係止部と、を備えていることを特徴とするワイヤハーネスである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、前記板状部が、前記本体部に対して前記第1覆い部の外周面上の反対側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネスである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、前記板状部には、前記板状部から膨出され前記電線の外周面を覆う筒状部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネスである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、当該ワイヤハーネスに配線用クリップが設けられた箇所で、チューブ内に前記電線を挿通させる挿通作業が必要ではないため、前記ワイヤハーネスの製造が容易に行える上に製造にかかる所要時間が短縮される。
【0012】
また、ワイヤハーネスは、前記電線配線用クリップが一体成形されているため、組立工数が少なくなり、部品点数が少なくなる。このため、前記ワイヤハーネスを安価に提供することができる。
【0013】
また、ワイヤハーネスは、当該ワイヤハーネスとパネルとが干渉する部位に前記板状部を設けることができるため、全体に亘って電線を収容する従来のチューブを設けた場合よりも安価となる。
【0014】
また、ワイヤハーネスは、電線に沿って並設された板状部によって、前記ワイヤハーネスとパネルとが干渉する部位で前記電線が当該パネルに接触することを防止する。このため、前記ワイヤハーネスの前記電線の断線等が防止される。
【0015】
請求項2に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、当該ワイヤハーネスが配索されたパネルと、板状部との間に電線が挟まれた状態となるため、前記ワイヤハーネスが干渉する前記パネルの上方の部位に前記電線が接触することを防止する。このため、前記ワイヤハーネスの前記電線の断線等が確実に防止される。
【0016】
請求項3に記載された発明によれば、ワイヤハーネスは、筒状部によって電線が板状部の外側に露出することが防止されるため、前記電線の断線等が確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるワイヤハーネスの斜視図である。
【図2】図1に示すワイヤハーネスの配線用クリップの側面図である。
【図3】図2に示す配線用クリップの平面図である。
【図4】図2に示す配線用クリップの正面図である。
【図5】図1に示すワイヤハーネスを成形する金型の要部断面図である。
【図6】図5に示す金型の下型の斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかるワイヤハーネスの斜視図である。
【図8】図7に示すワイヤハーネスの配線用クリップの側面図である。
【図9】図8に示す配線用クリップの平面図である。
【図10】図8に示す配線用クリップの正面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態にかかるワイヤハーネスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図11を参照して説明する。
【0019】
本発明の第1の実施形態にかかるワイヤハーネスは、図1に示すように、パネルの取付孔に係止可能に形成された配線用クリップ2と、電線3とを備えている。ワイヤハーネス1は、前記電線3に前記配線用クリップ2が一体成形されて形成されている。
【0020】
配線用クリップ2は、図2に示すように、薄板状に形成された本体部6と、前記本体部6の一方の面に設けられ前記電線3の外表面に一体成形され当該電線を覆う第1覆い部8と、前記第1覆い部8の一端から前記電線3の外表面に沿って当該電線3の軸方向に延長された板状部9と、前記板状部9の一端から前記電線3の外表面に一体成形され当該電線を覆う第2覆い部10と、前記本体部6の他方の面に立設され前記パネルの前記取付孔に係止される係止部7と、を備えている。配線用クリップ2は、可撓性を有するポリプロピレン樹脂などの合成樹脂によって形成されている。
【0021】
電線3は、導電性の芯線と、絶縁性の被覆部とを備えている。芯線は、複数本の導線が撚られて形成されている。導線は、銅や銅合金等の導電性の金属からなる。被覆部は、ポリ塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂などからなり、前記芯線を被覆している。このため、電線3の外表面は、前記被覆部の外表面となっている。なお、芯線は、一本の導線から構成されても良い。なお、電線3は、一本であっても、複数本の電線を束ねて形成された電線束であっても良い。
【0022】
本体部6には、図2および図4に示すように、当該本体部6の他方の面に、前記係止部7が前記取付孔に係止された際に、前記パネルに当接する突起部12,12が設けられている。本体部6には、当該本体部6の一方の面に、前記第1覆い部8を支持する連結部26が設けられている。
【0023】
突起部12,12は、図2および図4に示すように、前記電線3の軸方向に間隔を空けて配置されている。突起部12,12は、後述する係止部7の係止片16,16に干渉しない位置に設けられている。突起部12,12は、前記電線3の軸方向に略直交する方向に延長されて形成されている。
【0024】
連結部26は、図2に示すように、前記本体部6の一方の面の一端側に立設されると共に、前記第1覆い部8の一端側に連結されている。連結部26は、図4に示すように、前記第1覆い部8よりも幅狭に形成されている。なお、連結部26は、前記第1覆い部8の一端側に限定されるものではなく、前記第1覆い部8の中央側などであっても良い。
【0025】
係止部7は、図2に示すように、前記本体部6の他方の面から略垂直に延長された二本の柱状部15,15と、前記柱状部15,15のそれぞれの先端から前記本体部6の他方の面に向かって延長された係止片16,16と、を備えている。
【0026】
柱状部15,15は、前記本体部6の他方の面の中央から前記第1覆い部8の先端寄りに偏倚して立設されている。係止片16,16は、前記電線3の軸方向に揺動可能に形成されている。係止片16,16は、互いに、基端部から自由端に向かって徐々に離間する傾斜に形成されている。係止片16,16は、それぞれの自由端に、前記パネルの取付孔に係止する係止爪が突設されている。
【0027】
第1覆い部8は、図2および図3に示すように、前記電線3の外表面を覆うと共に当該電線3の軸方向に延長して円筒形状に形成された筒状部18と、前記筒状部18の両側面に開孔され前記電線3の外表面に連通する開口部19,19と、を備えている。第1覆い部8は、前記電線3に一体成形されて当該電線3が固定されている。第1覆い部8は、一端側で前記連結部26に連結され、前記本体部6の一方の面に支持されている。
【0028】
板状部9は、図2および図3に示すように、前記電線3の軸方向に延長され薄板状に形成されると共に前記第1覆い部8の一端と後述する第2覆い部10の一端とに連結される保護板21と、前記電線3の外表面を覆って当該電線3を固定する筒状部22と、を備えている。筒状部22は、前記保護板21の中央部に設けられ、前記電線3の外周面を覆っている。なお、筒状部22は、前記保護板21の長さに応じて、前記電線3を当該保護板21から外部に露出させないように複数個設けても良く、また、前記保護板21が短尺の場合などには設けなくても良い。
【0029】
保護板21は、図2において、電線3の上方に設けられている。保護板21は、前記電線3の外径よりも幅広に形成されている。保護板21は、前記電線3の変形に追従できる可撓性を有して形成されている。保護板21は、前記第1覆い部8の外周面上で、前記本体部6の反対側に設けられている。
【0030】
このため、ワイヤハーネス1が所要の配索形態で前記パネルに配索された時に、前記電線3の変形に追従して前記保護板21が変形する。このため、電線3が保護板21から離間して前記パネル等に接触することが防止される。なお、保護板21は、電線3と前記パネル等が干渉する部位に設けられるため、電線3の上方の他に、電線3の下方や側方に設けても良い。
【0031】
第2覆い部10は、図2に示すように、前記第1覆い部8から間隔を空けて設けられると共に前記板状部9の一端に連結されている。第2覆い部10は、前記電線3の外表面を覆うと共に当該電線3の軸方向に延長して延長形状に形成された筒状部24から構成されている。筒状部24は、前記電線3に一体成形され当該電線3が固定されている。
【0032】
上述の如く構成されたワイヤハーネス1は、図5に示すように、金型30内で、射出成形によって、前記電線3に前記配線用クリップ2が一体成形されて形成される。
【0033】
金型30は、水平割金型であって、上型31と下型32とから構成されている。上型31と下型32とには、それぞれ、前記電線3の外形に沿って形成された線条キャビティ33と、前記配線用クリップ2の外形に沿って形成された配線用クリップキャビティ34と、が設けられている。
【0034】
下型32には、図6に示すように、線条キャビティ33と配線用クリップキャビティ34とがそれぞれ上向きに設けられている。線条キャビティ33には、前記金型30の両端から前記電線3を外部に導出させる導出口36,36が、上型31と下型32とにそれぞれ設けられている。配線用クリップキャビティ34は、図示しない射出成形機から射出された溶融樹脂を導入するランナが連通している。なお、金型30は垂直割金型であっても良い。
【0035】
なお、金型30は、線条キャビティ33上に複数の配線用クリップキャビティ34を設けても良い。この場合の金型30は、複数個の配線用クリップキャビティ34が、前述したワイヤハーネス1が前記パネルに取り付けられる時に、複数個の配線用クリップ2が前記パネルの前記取付孔に係止可能となる位置に配置される。即ち、複数個の配線用クリップ2は、電線3に対する相対的な位置が前記パネルの前記取付孔に係止可能となる位置に設けられる。
【0036】
本発明でいう、複数個の配線用クリップ2が、電線3に対する相対的な位置がパネルの取付孔に係止可能となる位置に設けられているとは、線条キャビティ33に対してワイヤハーネス1の設計時の相対的な位置に保たれた配線用クリップキャビティ34内に溶融樹脂を射出成形して得られたワイヤハーネス1において、複数個の配線用クリップ2の電線3に対する相対的な位置が、射出成形時に生じる誤差を除くと、設計時に定められた位置となっていることをいう。
【0037】
前述した金型30によって成形されたワイヤハーネス1は、配線用クリップ2が前記パネルの前記取付孔に係止して当該パネルに取り付けられる。このとき、前記配線用クリップ2の係止部7が前記取付孔内に侵入し、係止片16,16のそれぞれの自由端が互いに近接する方向に弾性変形する。その後、前記係止部7が前記取付孔を挿通し、前記係止片16,16のそれぞれの自由端が弾性回復力によって互いに離間する方向に変位する。
【0038】
互いに離間する方向に変位した前記係止片16,16のそれぞれの自由端は、前記取付孔の周縁に当接し、前記係止部7が前記取付孔に係止する。このとき、突起部12,12の先端部が前記パネルに当接し、前記係止部7の係止力が向上し、前記係止部7が前記取付孔に確実に係止する。そして、ワイヤハーネス1が、所要の配索形態でパネルに取り付けられる。
【0039】
上述の第1の実施形態にかかるワイヤハーネス1は、パネルの取付孔に係止される配線用クリップ2が電線3に設けられている。前記配線用クリップ2は、板状に形成された本体部6と、前記本体部6の一方の面に設けられると共に前記電線3の軸方向に延長され当該電線3の外周面を覆う第1覆い部8と、前記第1覆い部8の一端部から前記電線3の軸方向に延長され当該電線3に並設された板状部9と、前記板状部9の一端部から前記電線3の軸方向に延長され当該電線3の外周面を覆う第2覆い部10と、前記本体部6の他方の面に設けられ前記パネルの前記取付孔に係止される係止部7と、を備えている。
【0040】
このため、本発明にかかるワイヤハーネス1は、チューブ内に電線を挿通させる組み付け作業が必要ないため、前記ワイヤハーネス1の製造が容易となる上に、製造にかかる所要時間が短縮される。
【0041】
また、ワイヤハーネス1は、電線3に配線用クリップ2が一体成形されているため、部品点数を減少できる。また、金型30を用いて生産することができるため、大量生産ができる。このため、ワイヤハーネス1を安価に提供することができる。
【0042】
また、ワイヤハーネス1は、当該ワイヤハーネス1とパネルとが干渉する部位に板状部9を設けられるため、全体に亘って電線3を収容する従来のチューブを設けた場合よりも安価となる。
【0043】
また、ワイヤハーネス1は、当該ワイヤハーネス1とパネルとが干渉する部位に板状部9が設けられるため、電線3が前記干渉する部位に接触することを防止する。従って、前記電線3が前記パネルとの干渉によって断線することが防止される。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、本発明にかかるワイヤハーネス1Aの第2の実施形態について、図7〜図10を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
本実施形態にかかるワイヤハーネス1Aは、図7に示すように、配線用クリップ2Aと電線3とを備え、前記電線3に前記配線用クリップ2Aが一体成形されて形成されている。
【0046】
配線用クリップ2Aは、図8〜図10に示すように、本体部6の一方の面に設けられた第1覆い部8Aに、係合突起27,27,28,28が設けられている。係合突起27,27,28,28は、前記第1覆い部8Aの先端に向かって次第に突出量が減少する先細形状に形成されている。係合突起27,27は、前記第1覆い部8Aの筒状部18の外周面上に互いに逆方向に突出して設けられている。係合突起28,28は、前記筒状部18の外周面上に互いに逆方向に突出して設けられている。係合突起27,27と係合突起28,28とは、水平方向に突出して設けられている。係合突起27,27は、係合突起28,28よりも前記筒状部18の先端側に設けられている。係合突起28,28は、係合突起27,27よりも突出量が大きく形成されている。
【0047】
このため、ワイヤハーネス1Aは、第1覆い部8Aの外周面に、ゴムチューブやコルゲートチューブ等のチューブを圧入すると、前記第1覆い部8Aの係合突起27,27,28,28が前記チューブの内周面に係合する。このため、工具やテープを使用せずに、前記チューブをワイヤハーネス1Aに取り付けることができる。
【0048】
(第3の実施形態)
次に、本発明にかかるワイヤハーネス1Bの第3の実施形態について、図11を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
本実施形態にかかるワイヤハーネス1Bは、図11に示すように、配線用クリップ2Bと第2覆い部10Bと電線3とを備え、前記電線3に前記配線用クリップ2Bと前記第2覆い部10Bとが一体成形されて形成されている。
【0050】
配線用クリップ2Bは、本体部6の一方の面に設けられた第1覆い部8Bに、係合突起27,27,28,28が設けられている。係合突起27,27,28,28は、前記第1覆い部8Bの先端に向かって次第に突出量が減少する先細形状に形成されている。係合突起27,27は、前記第1覆い部8Bの筒状部18の外周面上に互いに逆方向に突出して設けられている。係合突起28,28は、前記筒状部18の外周面上に互いに逆方向に突出して設けられている。係合突起27,27と係合突起28,28とは、水平方向に突出して設けられている。係合突起27,27は、係合突起28,28よりも前記筒状部18の先端側に設けられている。係合突起28,28は、係合突起27,27よりも突出量が大きく形成されている。
【0051】
第1覆い部8Bは、前記本体部6の一方の面から立設された連結部に連結されており、前記係合突起27,27,28,28が設けられた筒状部18と、前記筒状部18の長手方向に沿って延長されて前記電線3を覆う延長筒状部18aと、を備えている。筒状部18と延長筒状部18aとは同一径に形成されている。
【0052】
第2覆い部10Bは、前記電線3を覆って該電線3の外周面に沿って円筒状に形成された筒状部24と、前記筒状部24の中央部から膨出されて直方体形状に形成された膨出部25と、を備えている。第2覆い部10Bは、ワイヤハーネス1Bを自動車などに配索した際に、パネルなどとの干渉を防止する必要がある箇所にのみ設けられる。なお、第2覆い部10Bは、図示例では、電線3上に1つ設けられているが、前述した必要な箇所に応じて、複数個設けても良い。
【0053】
筒状部24は、前記第1覆い部8Bの筒状部18よりも大径に形成されている。電線3の筒状部24に覆われた箇所は、前記電線3の外周面の全周に筒状部24が設けられている。なお、筒状部24は、膨出部25が設けられていないものであっても良い。
【0054】
膨出部25は、前記筒状部24に長手方向に対して直交する方向に膨出されて形成されている。なお、膨出部25は、前述した直方体形状に限定されるものではなく、他の形状であっても良い。
【0055】
上述の如く構成されたワイヤハーネス1Bは、配線用クリップ2Bと第2覆い部10Bとの間に位置する電線3には、該電線3の屈曲を規制する部材が設けられていないため、自動車等のパネルに沿って前記ワイヤハーネス1Bを容易に屈曲させることができ、自動車等に配索する際の作業性を向上することができる。
【0056】
また、ワイヤハーネス1Bは、自動車などに配索した際には、第1覆い部8Bと第2覆い部10Bとによってパネル等と電線3との干渉を防止することができる。
【0057】
また、ワイヤハーネス1Bは、金型30を用いて生産することができるため、大量生産ができる。このため、ワイヤハーネス1Bを安価に提供することができる。
【0058】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
1,1A,1B ワイヤハーネス
2,2A,2B 配線用クリップ
3 電線
6 本体部
7 係止部
8,8A,8B 第1覆い部
9 板状部
10,10B 第2覆い部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの取付孔に係止される配線用クリップが電線に設けられたワイヤハーネスにおいて、
前記配線用クリップは、板状に形成された本体部と、前記本体部の一方の面に設けられると共に前記電線の軸方向に延長され当該電線の外周面を覆う第1覆い部と、前記第1覆い部の一端部から前記電線の軸方向に延長され当該電線に並設された板状部と、前記板状部の一端部から前記電線の軸方向に延長され当該電線の外周面を覆う第2覆い部と、前記本体部の他方の面に設けられ前記パネルの前記取付孔に係止される係止部と、を備えていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記板状部が、前記本体部に対して前記第1覆い部の外周面上の反対側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記板状部には、前記板状部から膨出され前記電線の外周面を覆う筒状部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項1】
パネルの取付孔に係止される配線用クリップが電線に設けられたワイヤハーネスにおいて、
前記配線用クリップは、板状に形成された本体部と、前記本体部の一方の面に設けられると共に前記電線の軸方向に延長され当該電線の外周面を覆う第1覆い部と、前記第1覆い部の一端部から前記電線の軸方向に延長され当該電線に並設された板状部と、前記板状部の一端部から前記電線の軸方向に延長され当該電線の外周面を覆う第2覆い部と、前記本体部の他方の面に設けられ前記パネルの前記取付孔に係止される係止部と、を備えていることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記板状部が、前記本体部に対して前記第1覆い部の外周面上の反対側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記板状部には、前記板状部から膨出され前記電線の外周面を覆う筒状部が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−253886(P2012−253886A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123969(P2011−123969)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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