説明

ワイヤ放電加工機及びその自動結線方法

【課題】 ワイヤ電極の自動結線の際、ワイヤ電極が正常に装填されたか否かを確認し、ワイヤ電極装填の異常に起因する障害を防止するワイヤ放電加工機及びその自動結線方法を提供する。
【解決手段】 ワイヤ電極を自動結線する装置を有したワイヤ放電加工機において、繰り出しローラ9の回転軸にエンコーダ12を取付け、繰り出しローラ9と繰り出しモータ15との間にパウダクラッチ13を設け、そのパウダクラッチ13の伝達トルクを可変にして構成した。ワイヤ電極1に所定の張力を与えるために、パウダクラッチ13の伝達トルク値を予め設定、記憶して、ワイヤ電極装填動作後、ワイヤ電極を所定長さ引き上げることによって、ワイヤ電極が正常に装填されたか否かを確認するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ電極を自動結線する装置を有するワイヤ放電加工機及びその自動結線方法に関する。本願においては、ワイヤ電極を新規に装填するとき、又はワイヤ電極が断線したときに、ワイヤ電極を機械に自動的に装填することを自動結線という。
【背景技術】
【0002】
ワイヤ電極を自動結線する装置を有したワイヤ放電加工機は、本願出願人の出願に係わる特許文献1に開示されている。特許文献1の図1を参照すると、ワイヤ電極リール14から繰り出されたワイヤ電極10は、ワイヤ電極送りローラ30によって所定の速度で繰り出されている。そして、ワイヤ電極10は、圧力流体によってワイヤ電極案内装置12及びワイヤ電極方向転換器82を通過して、ワイヤ電極誘導管110に導かれ、ワイヤ電極巻上げ装置70に到達する。ワイヤ電極巻上げ装置70は、ワイヤ電極10を挟持し、ワイヤ電極10に所定の張力を与えながらワイヤ電極10を巻上げるものである。ワイヤ放電加工機で使用されるワイヤ電極の太さは、一般的には直径0.1mmないし0.3mm位のものが使用されている。近年、微細加工を行うために、更に細いワイヤ電極が使用されるようになり、例えば直径0.03mmないし0.1mm位のものも使用されるようになった。
【0003】
また、特許文献2は、ワイヤ電極の走行時にワイヤ電極に所望の張力を付与するワイヤ放電加工機のワイヤ張力発生装置を開示している。その張力発生装置は、細いワイヤ電極を使用し、小さい張力を発生させたい場合でも対応できる装置である。繰り出しローラの回転軸にパウダクラッチを連結し、伝達トルクを調節して所望の張力を発生させるものである。パウダクラッチの出力軸に繰り出しローラを設け、入力軸に繰り出しモータを連結して、パウダクラッチの励磁電流を可変にして所望の伝達トルクを発生させている。
【0004】
【特許文献1】特公昭62-19343号公報
【特許文献2】特許第3537251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献1及び特許文献2に記載のワイヤ放電加工機は、ワイヤ電極を自動結線する装置を有し、細いワイヤ電極を使用した場合に小さい張力を発生させるようにした装置である。しかし、ワイヤ電極を自動結線した際、ワイヤ電極が電極ガイドに正常に装填されたかどうか確認する装置がないので、細いワイヤ電極を使用した場合、ワイヤ電極が電極ガイドに異常に挟まれたままワイヤ電極が巻上げられると、ワイヤ電極が断線するという問題点があった。
本発明は、この問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、ワイヤ電極の自動結線の際、ワイヤ電極が正常に装填されたか否かを確認し、細いワイヤ電極であっても、ワイヤ電極が断線することなく自動結線が確実に行えるワイヤ放電加工機及びその自動結線方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の目的を達成するために、本発明によれば、ワイヤ電極を自動結線する装置を有し、ワイヤ電極とワークとの間に放電加工電圧を印加すると共に、ワイヤ電極とワークに相対送りを与えて加工間隙を制御し、ワークに所望の輪郭加工を行うワイヤ放電加工機において、前記ワイヤ電極の走行経路の前段に設けられ、加工部及びワイヤ電極の巻上げ部に向けてワイヤ電極を送り出す繰り出しローラと、前記繰り出しローラに連結され、繰り出しローラを正回転又は逆回転させる繰り出しモータと、前記繰り出しローラの近傍に取付けられ、繰り出しローラの回転を検知する回転検知手段と、前記繰り出しローラと前記繰り出しモータの間に設けられ、繰り出しローラに付与する伝達トルク値を可変にするため、入力軸と出力軸の間の伝達トルクを予め設定、記憶して伝達トルク値を切り換えることができる軸継手手段と、前記ワイヤ電極の走行経路の後段に設けられ、加工部を通過したワイヤ電極を押圧ローラと協働して挟持して引っ張る巻上げローラと、前記押圧ローラを前記巻上げローラに対して、弾性部材又はアクチェータの作用によって押圧、離隔して、ワイヤ電極を挟持、解放する押圧ローラ作動手段と、を具備し、ワイヤ電極の装填状態を確認するワイヤ放電加工機が提供される。
【0007】
前述のように、ワイヤ電極に所定の張力を与えるために、繰り出しローラと繰り出しモータの間に伝達トルクを変更することができる軸継手手段が設けてある。そして、巻上げローラから押圧ローラを離隔し、ワイヤ電極を解放した状態で、繰り出しローラを所定の伝達トルクで所定量逆回転駆動、すなわち、ワイヤ電極を引き上げる方向に回転駆動させたとき、ワイヤ電極が動くか否かを検知して、ワイヤ電極が電極ガイドに正常に装填されているかどうかを確認する構成にした。そのため、ワイヤ電極が電極ガイドに挟まれた状態では、ワイヤ電極を無理やり巻上げるようなことはない。
【0008】
また、前記繰り出しローラに所定の伝達トルク値を付与し、前記繰り出しモータを所定量逆回転駆動させて、繰り出しローラが所定量逆回転したらワイヤ電極の装填が正常であると判断する装填状態確認手段を更に具備したワイヤ放電加工機が提供される。
このように、ワイヤ電極を所定の張力で引き上げるように繰り出しモータを所定量逆回転駆動して、ワイヤ電極が引き上がればワイヤ電極の装填が正常であると判断し、ワイヤ電極が引き上がらなければワイヤ電極の装填が異常であると判断する手段を更に設けた。ワイヤ電極が断線しない程度の引っ張り力で確認動作を行なうので、細いワイヤ電極を使用した場合でも、ワイヤ電極を断線させることはない。
【0009】
また、前記軸継手手段は、入力軸と出力軸の間の伝達トルクを変更することが可能なパウダクラッチで構成したワイヤ放電加工機が提供される。このように、軸継手手段として、励磁電流を切り換えることにより、伝達トルクを変更することができるパウダクラッチを用いて構成した。そのため、ワイヤ電極に付与する所望の張力を得るように、予め設定、記憶しておけば、任意に選択して張力を付与することができる。
【0010】
更に、前述の目的を達成するために、ワイヤ放電加工機の自動結線方法であって、(a)ワイヤ電極に所定の張力を与えるために繰り出しローラに付与する伝達トルク値を予め設定、記憶する工程であり、少なくともワイヤ電極の自動装填の際にワイヤ電極を送り出すときの伝達トルク値Aと、ワイヤ電極の装填状態を確認するためにワイヤ電極を引き上げるときの伝達トルク値Bが設定、記憶されていること、(b)繰り出しローラに伝達トルク値Aを付与し、ワイヤ電極を送り出し、ワイヤ電極を自動装填する工程、(c)繰り出しローラに伝達トルク値Bを付与し、巻上げローラがワイヤ電極を解放した状態で繰り出しモータを所定量逆回転駆動させ、繰り出しローラが所定量逆回転したらワイヤ電極が正常に装填されていると判断する工程、を具備し、ワイヤ電極の装填状態を確認するワイヤ放電加工機の自動結線方法が提供される。
【0011】
前述のように、ワイヤ電極に所定の張力を与えるために、軸継手手段の伝達トルク値A及びBを予め設定、記憶しておき、ワイヤ電極の装填状態確認の際は、軸継手手段の伝達トルク値Bで、繰り出しモータを所定量逆回転駆動させ、繰り出しローラが所定量逆回転したことを検知したら、ワイヤ電極が正常に装填されたと判断するように構成した。この自動結線方法によれば、ワイヤ電極が電極ガイドに異常に挟まれた状態でワイヤ電極を無理に走行させることはないので、ワイヤ電極の自動結線に起因する障害が無くなった。
【0012】
また、前述の目的を達成するために、ワイヤ放電加工機の自動結線方法であって、(a)ワイヤ電極に所定の張力を与えるために繰り出しローラに付与する伝達トルク値を予め設定、記憶する工程であり、少なくともワイヤ電極の自動装填の際にワイヤ電極を送り出すときの伝達トルク値Aと、ワイヤ電極の装填状態を確認するためにワイヤ電極を引き上げるときの伝達トルク値Bが設定、記憶されていること、(b)繰り出しローラに付与する伝達トルク値をAに切り換え、繰り出しローラを回転させてワイヤ電極を送り出し、ワイヤ電極の先端部が巻上げローラの位置を越えたら繰り出しローラの回転を止める工程、(c)巻上げローラが押圧ローラと協働してワイヤ電極を挟持してワイヤ電極を所定長さ巻上げたとき、繰り出しローラが回転したことを検知したらワイヤ電極が装填されたと判断する工程、(d)繰り出しローラに付与する伝達トルク値をBに切り換え、巻上げローラがワイヤ電極を解放し、繰り出しモータを所定量逆回転駆動する工程、(e)繰り出しローラが所定量逆回転したことを検知したら、ワイヤ電極が正常に装填されていると判断し、繰り出しローラが所定量逆回転しなかったら、ワイヤ電極の装填が異常であると判断する工程、を具備し、ワイヤ電極の装填状態を確認するワイヤ放電加工機の自動結線方法が提供される。
【0013】
前述のように、ワイヤ電極の自動装填動作の後に、巻上げローラが押圧ローラと協働してワイヤ電極を挟持してワイヤ電極を所定長さ巻上げたとき、繰り出しローラが回転したことを検知したらワイヤ電極が装填されたと判断する工程を設けて構成した。そのため、自動結線が不完全のまま次の動作に移ることはない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、繰り出しローラに与える伝達トルクを可変にして、ワイヤ電極に所望の張力を付与すると共に、ワイヤ電極を自動結線した際にワイヤ電極が電極ガイドに正常に装填されているか否かを確認してからワイヤ電極を走行させるワイヤ放電加工機であるから、細いワイヤ電極を使用した場合でも、自動結線動作が確実に行なわれ、ワイヤ電極の断線が無くなり、長時間の自動運転が可能になった。
また、ワイヤ電極を自動結線した際に、ワイヤ電極が電極ガイドに正常に装填されているか否かを確認してからワイヤ電極を巻き上げ走行させるようにした自動結線方法であるから、細いワイヤ電極を使用した場合でも、ワイヤ電極の断線が無く、自動結線に起因する障害が無くなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明によるワイヤ放電加工機及びその自動結線方法の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のワイヤ放電加工機の構成を示す機構図である。図2は、ワイヤ電極が電極ガイドに装填される状態を示した図である。図3は、本発明の自動結線方法の動作を示すフロー図で、その前段部分を示す。図4は、本発明の自動結線方法の動作を示すフロー図で、その後段部分を示す。
【0016】
図1において、ワイヤ放電加工機は、NC制御されてXY方向に移動するワークテーブル(図示せず)上に取付けられたワークWと、ワイヤ電極走行経路を走行するワイヤ電極1との間に放電を行わせ、ワークWに輪郭加工を行う機械である。ワイヤ電極1は、ワイヤ電極ボビン3に巻付けられており、バックテンションモータ5により緩まないようにして引き出されている。ワイヤ電極1は、上ガイドローラ7を経て、繰り出しローラ9と押圧ローラ11とに挟まれて、繰り出しローラ9の回転により送り出される。押圧ローラ11は、ワイヤ電極1がすべらないように押圧部材(図示せず)により繰り出しローラ9に押圧されている。繰り出しローラ9には回転検知手段が取付けられ、その回転検知手段として、回転位置、回転角度などを検出するエンコーダ12が取付けられている。繰り出しローラ9とそれを駆動する繰り出しモータ15との間に軸継手手段が設けられ、その軸継手手段としてパウダクラッチ13が取付けられている。パウダクラッチ13は、その入力軸に繰り出しモータ15が連結され、その出力軸に繰り出しローラ9の回転軸が連結されている。このエンコーダ12及びパウダクラッチ13は、いずれも一般に市販され使用されている公知の装置である。
【0017】
繰り出しローラ9で送り出されたワイヤ電極1は、上ヘッド17に設けられた上電極ガイド19により案内されている。上ヘッド17には、ワイヤ電極1の自動結線時にワイヤ電極1に送りを与えるための高圧流体の供給口21が設けられ、矢印Aから高圧流体が供給され、繰り出しローラ9で送り出されたワイヤ電極をワークWのスタートホールに誘導する。ワイヤ電極1は、ワークWを通過し、下ヘッド23に設けられた下電極ガイド25で案内されている。下ヘッド23を通過したワイヤ電極1は、下ガイドローラ27に案内されて、高圧流体の供給口29から矢印Bで供給された高圧流体によって、巻上げローラ31に向けて横方向に誘導される。
【0018】
ワイヤ電極1の巻上げは、巻上げローラ31と押圧ローラ35とが協働してワイヤ電極1を挟持して、巻上げローラ31に取付けられた巻上げモータ33の駆動によってワイヤ電極1を巻上げる。押圧ローラ作動手段として、押圧ローラ35は弾性部材37の弾性力によって巻上げローラ31に押圧され、そして、押圧ローラ35はアクチェータによって弾性部材37の押圧力に抗して巻上げローラ31から図示の35aの位置に離隔される。そのアクチェータは、シリンダ39、ピストン41装置で構成され、図示せず圧力流体供給源からの高圧流体によって作動する。押圧ローラ35はピストン41に取付けられたブラケット43に回転自在に取付けられている。巻上げローラ31で巻上げられたワイヤ電極1は、図示せず回収ボックスに回収される。
【0019】
本実施の形態では、押圧ローラ35を巻上げローラ31に押圧する手段として弾性部材37を設け、また、押圧ローラ35を巻上げローラ31から離隔させる手段としてシリンダ39、ピストン41による圧力応動装置を設けた。しかし、公知のラック・ピニオン又はカムをモータで駆動する機構や圧電素子などの別のアクチェータを用いて、押圧ローラ35に所定の押圧力を発生させ、押圧ローラ35を巻上げローラ31から離隔させる動作を弾性部材の弾性力で行ってもよい。また、巻上げローラ31及び押圧ローラ35の装置を図1の下ガイドローラ27の位置に設けてもよい。
【0020】
図2において、(a)ないし(d)は、V溝形の割電極ガイドを示し、60度のV溝を有するVガイド51に押え板53が当接、離隔するように構成されている。(a)はワイヤ電極を自動装填するために押え板53を矢印の方向に離隔した状態を示す。(b)はVガイド51と離隔した押え板53の間にワイヤ電極1を挿通した状態を示す。(c)は押え板53を矢印の方向に当接して、ワイヤ電極1が電極ガイドに正常に装填された状態を示す。(d)は押え板53を矢印の方向に当接させたとき、ワイヤ電極1が電極ガイドのV溝部に正常に装填されておらず、ワイヤ電極1が電極ガイドの平担部に挟まれた異常な状態を示す。(c)の状態でワイヤ電極1を引張ったときは軽く動くが、(d)の状態では軽く動かない状態である。本実施の形態では、電極ガイドとしてV溝形の割電極ガイドを用いたが、同様の機能を持つ円形状凹溝の割電極ガイドを用いてもよい。
【0021】
次に、本発明のワイヤ放電加工機の自動結線方法を図3及び図4を参照して説明する。
本実施の形態においては、ワイヤ電極1に所定の張力を与えるために、繰り出しローラに付与する伝達トルク値を予め設定、記憶しておく。使用したい伝達トルク値を予め複数個決定する。それは例えば、ワイヤ電極1の自動装填の際にワイヤ電極1を送り出すときの伝達トルク値Aと、ワイヤ電極1が正常に装填されたか否かを確認するためにワイヤ電極1を引き上げるときの伝達トルク値Bと、ワイヤ電極1の自動装填動作後に、ワイヤ電極1が装填されたかどうか確認するために巻上げローラを回転させてワイヤ電極1を巻上げるときの伝達トルク値Cと、通常の放電加工時にワイヤ電極1を送り出すときの伝達トルク値Dが設定、記憶されている。伝達トルク値の切り換えは、パウダクラッチの励磁電流を切り換えることにより伝達トルク値を変更するものである。
【0022】
図3において、自動結線開始指令があると、ステップS1で、アクチェータによって巻上げローラ31から押圧ローラ35を離隔し、ワイヤ電極1が通過できるようにする。ステップS2で、パウダクラッチ13の伝達トルク値をAに切り換える。ステップS3で、押え板53を離隔し、繰り出しモータ15を起動し、繰り出しローラ9を回転させてワイヤ電極1を送り出す。ステップS4で、ワイヤ電極1の繰り出し量Fをエンコーダ12で検知する。繰り出し量F=πDNは、繰り出しローラ9の直径Dとその回転数Nで計算される。ステップS5で、繰り出し量Fがワイヤ電極1の先端部が巻上げローラの位置を越えるために必要な走行距離Lを越えたかを監視し、越えたらステップS6で、繰り出しモータ15を停止させる。ステップS7で、アクチェータを開放して弾性部材37の弾性力で押圧ローラ35を巻上げローラ31に押圧しワイヤ電極1を挟持する。ステップS8で、巻上げモータ33を起動してワイヤ電極1を巻上げる。ステップS9で、エンコーダ12で繰り出しローラ9が回転したかを検知して、繰り出しローラ9がワイヤ電極1に引っ張られて回転すれば、ワイヤ電極1が装填されたと判断する。ワイヤ電極1を巻上げても繰り出しローラ9が回転しなければ、ワイヤ電極1が接続されておらず、自動結線が失敗であり、自動結線動作をやり直す。
【0023】
図4は図3からの続きであり、ワイヤ電極1が電極ガイドに正常に装填されたかどうかの確認動作に入る。ステップS10で、パウダクラッチ13の伝達トルク値をBに切り換える。ステップS11で、押え板53を当接し、巻上げローラ31から押圧ローラ35を離隔し、ワイヤ電極1を解放する。ステップS12で、繰り出しモータ15を所定量逆回転駆動、すなわち、ワイヤ電極1を引き上げる方向に回転駆動する。ステップS13で、繰り出しローラ9が所定量逆回転、すなわち、ワイヤ電極1を引き上げる方向に回転したかを検知する。その検知は繰り出しローラ9の回転軸に取付けられたエンコーダ12で行う。繰り出しローラ9が所定量逆回転したら、ステップS14で、ワイヤ電極1の装填が正常であると判断し、自動結線完了とする。繰り出しローラ9が所定量逆回転しなかったら、ステップS15で、ワイヤ電極1の装填が異常であると判断し、自動結線動作を最初からやり直す。ワイヤ電極の装填状態確認手段は、ステップS12ないしステップS15の動作で構成されている。
【0024】
本実施の形態では、自動結線動作のステップの説明をS1からS15まで細かく分けて記載したが、これに限定されることなく、ポイント動作のみを記載したり、同様の目的を達成する範囲で動作順序を変えても良い。要は、ワイヤ電極1を装填する動作(ステップ)の後、その装填が正常であるか否かを確認する動作(ステップ)を設けたことが本発明の特徴である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のワイヤ放電加工機の構成を示す機構図である。
【図2】ワイヤ電極が電極ガイドに装填される状態を示した図である。
【図3】本発明の自動結線方法の動作を示すフロー図で、その前段部分を示す。
【図4】本発明の自動結線方法の動作を示すフロー図で、その後段部分を示す。
【符号の説明】
【0026】
1 ワイヤ電極
9 繰り出しローラ
12 エンコーダ
13 パウダクラッチ
15 繰り出しモータ
31 巻上げローラ
33 巻上げモータ
35 押圧ローラ
37 弾性部材
39 シリンダ
41 ピストン
51 Vガイド
53 押え板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤ電極を自動結線する装置を有し、ワイヤ電極とワークとの間に放電加工電圧を印加すると共に、ワイヤ電極とワークに相対送りを与えて加工間隙を制御し、ワークに所望の輪郭加工を行うワイヤ放電加工機において、
前記ワイヤ電極の走行経路の前段に設けられ、加工部及びワイヤ電極の巻上げ部に向けてワイヤ電極を送り出す繰り出しローラと、
前記繰り出しローラに連結され、繰り出しローラを正回転又は逆回転させる繰り出しモータと、
前記繰り出しローラの近傍に取付けられ、繰り出しローラの回転を検知する回転検知手段と、
前記繰り出しローラと前記繰り出しモータの間に設けられ、繰り出しローラに付与する伝達トルク値を可変にするため、入力軸と出力軸の間の伝達トルクを予め設定、記憶して伝達トルク値を切り換えることができる軸継手手段と、
前記ワイヤ電極の走行経路の後段に設けられ、加工部を通過したワイヤ電極を押圧ローラと協働して挟持して引っ張る巻上げローラと、
前記押圧ローラを前記巻上げローラに対して、弾性部材又はアクチェータの作用によって押圧、離隔して、ワイヤ電極を挟持、解放する押圧ローラ作動手段と、
を具備し、ワイヤ電極の装填状態を確認することを特徴としたワイヤ放電加工機。
【請求項2】
前記繰り出しローラに所定の伝達トルク値を付与し、前記繰り出しモータを所定量逆回転駆動させて、繰り出しローラが所定量逆回転したらワイヤ電極の装填が正常であると判断する装填状態確認手段を更に具備した請求項1に記載のワイヤ放電加工機。
【請求項3】
前記軸継手手段は、入力軸と出力軸の間の伝達トルクを変更することが可能なパウダクラッチで構成した請求項1又は2に記載のワイヤ放電加工機。
【請求項4】
ワイヤ放電加工機の自動結線方法であって、
(a)ワイヤ電極に所定の張力を与えるために繰り出しローラに付与する伝達トルク値を予め設定、記憶する工程であり、少なくともワイヤ電極の自動装填の際にワイヤ電極を送り出すときの伝達トルク値Aと、ワイヤ電極の装填状態を確認するためにワイヤ電極を引き上げるときの伝達トルク値Bが設定、記憶されていること、
(b)繰り出しローラに伝達トルク値Aを付与し、ワイヤ電極を送り出し、ワイヤ電極を自動装填する工程、
(c)繰り出しローラに伝達トルク値Bを付与し、巻上げローラがワイヤ電極を解放した状態で繰り出しモータを所定量逆回転駆動させ、繰り出しローラが所定量逆回転したらワイヤ電極が正常に装填されていると判断する工程、
を具備し、ワイヤ電極の装填状態を確認することを特徴としたワイヤ放電加工機の自動結線方法。
【請求項5】
ワイヤ放電加工機の自動結線方法であって、
(a)ワイヤ電極に所定の張力を与えるために繰り出しローラに付与する伝達トルク値を予め設定、記憶する工程であり、少なくともワイヤ電極の自動装填の際にワイヤ電極を送り出すときの伝達トルク値Aと、ワイヤ電極の装填状態を確認するためにワイヤ電極を引き上げるときの伝達トルク値Bが設定、記憶されていること、
(b)繰り出しローラに付与する伝達トルク値をAに切り換え、繰り出しローラを回転させてワイヤ電極を送り出し、ワイヤ電極の先端部が巻上げローラの位置を越えたら繰り出しローラの回転を止める工程、
(c)巻上げローラが押圧ローラと協働してワイヤ電極を挟持してワイヤ電極を所定長さ巻上げたとき、繰り出しローラが回転したことを検知したらワイヤ電極が装填されたと判断する工程、
(d)繰り出しローラに付与する伝達トルク値をBに切り換え、巻上げローラがワイヤ電極を解放し、繰り出しモータを所定量逆回転駆動する工程、
(e)繰り出しローラが所定量逆回転したことを検知したら、ワイヤ電極が正常に装填されていると判断し、繰り出しローラが所定量逆回転しなかったら、ワイヤ電極の装填が異常であると判断する工程、
を具備し、ワイヤ電極の装填状態を確認することを特徴としたワイヤ放電加工機の自動結線方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−247755(P2006−247755A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63576(P2005−63576)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000154990)株式会社牧野フライス製作所 (116)
【Fターム(参考)】