ワークの保持方法および保持装置
【課題】 ワークの着脱時間を短縮することが可能なワーク保持方法および保持装置を提供すること。
【解決手段】 チャック10のエゼクタ部13ノズル14内には常時加圧空気が流通しており、吸着室18内はワークをチャックする前から負圧状態となっている。また、ワークをチャックした後には圧力センサ16の検出する圧力値に基づいてチャック完了を検出する。また、ワークをアンチャックするときには、開閉弁23が排出口22を閉じて排気室31内の圧力を上昇させ、エゼクタ部13から吸着室18内に加圧空気を導入する。
【解決手段】 チャック10のエゼクタ部13ノズル14内には常時加圧空気が流通しており、吸着室18内はワークをチャックする前から負圧状態となっている。また、ワークをチャックした後には圧力センサ16の検出する圧力値に基づいてチャック完了を検出する。また、ワークをアンチャックするときには、開閉弁23が排出口22を閉じて排気室31内の圧力を上昇させ、エゼクタ部13から吸着室18内に加圧空気を導入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着式のチャックによりワークを保持する方法および保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、下記特許文献1に開示されたワークの保持装置がある。このワーク保持装置は吸着式チャック装置であり、加圧ガスを流通するノズルと、ワークであるウェハーをチャック(吸着保持)するための吸着板に設けられた吸着室をなす減圧室と、減圧室とノズルとを連通する連通路とを備えている。
【0003】
そして、ウェハーをチャックするときには、まず、ウェハー上に吸着板を載せて閉塞された減圧室を形成する。次に、ノズルに加圧ガスを流通し、連通路内のガスを吸引する。これにより、連通路と繋がった減圧室は減圧され、ウェハーを吸着チャックする。
【0004】
また、ウェハーをアンチャックするときには、ノズルへの加圧ガスの供給を停止し、減圧室の気圧を大気圧と同等にする。これにより、ウェハーの吸着が解除されウェハーをアンチャックするようになっている。
【特許文献1】特開昭64−58486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の保持方法では、ワークをチャックするときには、ワークに接するように吸着室を配置した後、吸着室内を負圧状態とするようになっている。また、ワークをアンチャックするときには、加圧ガスの流通が停止されたノズルから連通路を介して吸着室内に大気が流入し、吸着室内の負圧状態が解除されるようになっている。
【0006】
したがって、ワークの着脱(チャックおよびアンチャック)には比較的時間を要し、ニーズが大きい着脱時間の短縮に対応し難いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、ワークの着脱時間を短縮することが可能なワーク保持方法および保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明の保持方法では、
ワーク(2)に対し操作を行なう対ワーク操作工程(C)の前に、ワーク(2)をチャックするチャック工程(B)と、
対ワーク操作工程(C)の後に、ワーク(2)をアンチャックするアンチャック工程(D)とを備え、
チャック工程(B)では、ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置する配置工程と、ノズル(14)に加圧ガスを流通してノズル(14)に連通する吸着室(18)内のガスを吸引し、ワーク(2)を吸着するために吸着室(18)内を負圧状態とする負圧状態形成工程とを同時に行なって、ワーク(2)をチャックし、
アンチャック工程(D)では、吸着室(18)内の負圧状態を解除して、ワーク(2)をアンチャックするワークの保持方法であって、
配置工程を行なう前に、負圧状態形成工程を開始することを特徴としている。
【0009】
これによると、吸着室(18)内を負圧状態とする負圧状態形成工程は、チャック工程(B)が開始される前から行なわれる。したがって、ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置する配置工程が行なわれチャック工程(B)が開始されると、速やかに吸着室(18)がワーク(2)を吸着し、ワーク(2)を保持することができる。
【0010】
このようにして、チャック工程(B)に要する時間を短縮し、ワーク(2)の着脱時間を短縮することができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明の保持方法では、請求項1に記載の発明の保持方法において、チャック工程(B)で吸着室(18)内の負圧が所定圧以下となったときに、対ワーク操作工程(C)に移行することを特徴としている。
【0012】
これによると、吸着室(18)内がワーク(2)を確実に保持できる所定圧力に到達した場合に、速やかに対ワーク操作工程(C)に移行することができる。すなわち、チャック工程(B)を必要以上に継続することなく対ワーク操作工程(C)に移行することができる。
【0013】
このようにして、チャック工程(B)に要する時間を一層短縮し、ワーク(2)の着脱時間を一層短縮することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明の保持方法では、請求項1または請求項2に記載の発明の保持方法において、アンチャック工程(D)では、吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴としている。
【0015】
これによると、吸着室(18)内の負圧状態を加圧により速やかに解除して、ワーク(2)をアンチャックすることができる。したがって、アンチャック工程(D)に要する時間を短縮し、ワーク(2)の着脱時間をより一層短縮することができる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明の保持方法では、
ワーク(2)に対し操作を行なう対ワーク操作工程(C)の前に、ワーク(2)をチャックするチャック工程(B)と、
対ワーク操作工程(C)の後に、ワーク(2)をアンチャックするアンチャック工程(D)とを備え、
チャック工程(B)では、ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置する配置工程と、ノズル(14)に加圧ガスを流通してノズル(14)に連通する吸着室(18)内のガスを吸引し、ワーク(2)を吸着するために吸着室(18)内を負圧状態とする負圧状態形成工程とを同時に行なって、ワーク(2)をチャックし、
アンチャック工程(D)では、吸着室(18)内の負圧状態を解除して、ワーク(2)をアンチャックするワークの保持方法であって、
チャック工程(B)において吸着室(18)内の負圧が所定圧以下となったときに、対ワーク操作工程(C)に移行することを特徴としている。
【0017】
これによると、吸着室(18)内がワーク(2)を確実に保持できる所定圧力に到達した場合に、速やかに対ワーク操作工程(C)に移行することができる。すなわち、チャック工程(B)を必要以上に継続することなく対ワーク操作工程(C)に移行することができる。
【0018】
このようにして、チャック工程(B)に要する時間を短縮し、ワーク(2)の着脱時間を短縮することができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明の保持方法では、請求項4に記載の発明の保持方法において、アンチャック工程(D)では、吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴としている。
【0020】
これによると、吸着室(18)内の負圧状態を加圧により速やかに解除して、ワーク(2)をアンチャックすることができる。したがって、アンチャック工程(D)に要する時間を短縮し、ワーク(2)の着脱時間を一層短縮することができる。
【0021】
また、請求項6に記載の発明の保持方法では、
ワーク(2)に対し操作を行なう対ワーク操作工程(C)の前に、ワーク(2)をチャックするチャック工程(B)と、
対ワーク操作工程(C)の後に、ワーク(2)をアンチャックするアンチャック工程(D)とを備え、
チャック工程(B)では、ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置する配置工程と、ノズル(14)に加圧ガスを流通してノズル(14)に連通する吸着室(18)内のガスを吸引し、ワーク(2)を吸着するために吸着室(18)内を負圧状態とする負圧状態形成工程とを同時に行なって、前記ワーク(2)をチャックし、
アンチャック工程(D)では、吸着室(18)内の負圧状態を解除して、ワーク(2)をアンチャックするワークの保持方法であって、
アンチャック工程(D)では、吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴としている。
【0022】
これによると、吸着室(18)内の負圧状態を加圧により速やかに解除して、ワーク(2)をアンチャックすることができる。したがって、アンチャック工程(D)に要する時間を短縮し、ワーク(2)の着脱時間を短縮することができる。
【0023】
また、請求項7に記載の発明の保持方法では、アンチャック工程(D)では、吸着室(18)内に前記加圧ガスを導入して、吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴としている。
【0024】
これによると、ノズル(14)に流通するための加圧ガスを利用して吸着室(18)内を加圧することができる。したがって、吸着室(18)内の加圧のために、他の高圧ガスを導入する必要がない。
【0025】
また、請求項8に記載の発明の保持方法では、アンチャック工程(D)では、ノズル(14)より上流側における加圧ガスの圧力とノズル(14)より下流側における加圧ガスの圧力とを近似させ、ノズル(14)から吸着室(18)内に加圧ガスを導入することを特徴としている。
【0026】
これによると、ノズル(14)の上流側と下流側との圧力を近似させるだけで(圧力差を低減するだけで)、容易に加圧ガスをノズル(14)から吸着室(18)内に導入することができる。
【0027】
また、請求項9に記載の発明の保持方法のように、ノズル(14)の下流側に設けた加圧ガスの排気室(31)内の圧力を上昇して、ノズル(14)より上流側における加圧ガスの圧力とノズル(14)より下流側における加圧ガスの圧力とを容易に近似させることができる。
【0028】
また、請求項10に記載の発明の保持方法のように、排気室(31)から外部への加圧ガスの排出路(22、32)断面積を減少して、排気室(31)内の圧力を容易に上昇させることができる。
【0029】
また、請求項11に記載の発明の保持方法では、
前記加圧ガスは清浄化されたガスであり、
チャック工程(B)では、ノズル(14)を通過した後の加圧ガスを、ワーク(2)を周状に取り囲むように噴出することを特徴としている。
【0030】
これによると、チャック工程(B)でノズル(14)を通過する加圧ガスによる吸引作用によりワーク(2)をチャックしているときには、ノズル(14)を通過した清浄化された加圧ガスはワーク(2)を取り囲むように噴出される。
【0031】
したがって、チャックされたワーク(2)は清浄化されたガスに囲まれ、ワーク(2)に異物等が付着することを防止することができる。
【0032】
また、請求項12に記載の発明の保持方法では、チャック工程(B)を開始する前には、噴出した加圧ガスを、吸着室(18)を介してノズル(14)に還流することを特徴としている。
【0033】
これによると、ワーク(2)がチャックされる前には、噴出した清浄化されたガスを吸着室(18)からノズル(14)に還流するので、噴出されるガスの清浄度を保つことができる。
【0034】
また、請求項13に記載の発明の保持方法では、アンチャック工程(D)を完了した後には、噴出した加圧ガスを、吸着室(18)を介してノズル(14)に還流することを特徴としている。
【0035】
これによると、ワーク(2)がアンチャックされた後には、噴出した清浄化されたガスを吸着室(18)からノズル(14)に還流するので、噴出されるガスの清浄度を保つことができる。
【0036】
また、請求項14に記載の発明の保持装置では、
加圧ガスを噴出するノズル(14)と、
ノズル(14)内と連通するとともに、ワーク(2)をチャックするときにワーク(2)に接するように配置する吸着室(18)と、
ワーク(2)をチャックする以前から、ノズル(14)に加圧ガスを供給する加圧ガス供給手段(90)とを備えることを特徴としている。
【0037】
これによると、請求項1に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置したときには、速やかに吸着室(18)がワーク(2)を吸着し、ワーク(2)を保持することができる。このようにして、ワーク(2)の着脱時間を短縮することができる。
【0038】
また、請求項15に記載の発明の保持装置では、請求項14に記載の発明の保持装置において、吸着室(18)内の圧力を検出する圧力検出手段(16)を備えることを特徴としている。
【0039】
これによると、請求項2に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、吸着室(18)内がワーク(2)を確実に保持できる所定圧力を圧力検出手段(16)が検出した場合に、速やかに次工程(C)に移行することができる。このようにして、ワーク(2)の着脱時間を一層短縮することができる。
【0040】
また、請求項16に記載の発明の保持装置では、請求項14または請求項15に記載の発明の保持装置において、吸着室(18)内を大気圧以上に加圧する加圧手段(22、23)を備えることを特徴としている。
【0041】
これによると、請求項3に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、吸着室(18)内の負圧状態を加圧手段(22、23)により速やかに解除して、ワーク(2)をアンチャックすることができる。したがって、ワーク(2)の着脱時間をより一層短縮することができる。
【0042】
また、請求項17に記載の発明の保持装置では、
加圧ガスを噴出するノズル(14)と、
ノズル(14)内と連通するとともに、ワーク(2)をチャックするときにワーク(2)に接するように配置する吸着室(18)と、
ノズル(14)に加圧ガスを供給する加圧ガス供給手段(90)と、
吸着室(18)内の圧力を検出する圧力検出手段(16)とを備えることを特徴としている。
【0043】
これによると、請求項4に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、吸着室(18)内がワーク(2)を確実に保持できる所定圧力を圧力検出手段(16)が検出した場合に、速やかに次工程(C)に移行することができる。このようにして、ワーク(2)の着脱時間を短縮することができる。
【0044】
また、請求項18に記載の発明の保持装置では、請求項17に記載の発明の保持装置において、吸着室(18)内を大気圧以上に加圧する加圧手段(22、23)を備えることを特徴としている。
【0045】
これによると、請求項5に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、吸着室(18)内の負圧状態を加圧手段(22、23)により速やかに解除して、ワーク(2)をアンチャックすることができる。したがって、ワーク(2)の着脱時間を一層短縮することができる。
【0046】
また、請求項19に記載の発明の保持装置では、
加圧ガスを噴出するノズル(14)と、
ノズル(14)内と連通するとともに、ワーク(2)をチャックするときにワーク(2)に接するように配置する吸着室(18)と、
ノズル(14)に加圧ガスを供給する加圧ガス供給手段(90)と、
吸着室(18)内を大気圧以上に加圧する加圧手段(22、23)とを備えることを特徴としている。
【0047】
これによると、請求項6に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、吸着室(18)内の負圧状態を加圧手段(22、23)により速やかに解除して、ワーク(2)をアンチャックすることができる。したがって、ワーク(2)の着脱時間を短縮することができる。
【0048】
また、請求項20に記載の発明の保持装置では、加圧手段(22、23)は、吸着室(18)内に前記加圧ガスを導入する加圧ガス導入手段(22、23)であることを特徴としている。
【0049】
これによると、請求項7に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、加圧ガス導入手段(22、23)によりノズル(14)に流通するための加圧ガスを導入して吸着室(18)内を加圧することができる。すなわち、吸着室(18)内の加圧のために、他の高圧ガスを導入する必要がない。
【0050】
また、請求項21に記載の発明の保持装置では、加圧ガス導入手段(22、23)は、ノズル(14)より上流側における加圧ガスの圧力とノズル(14)より下流側における加圧ガスの圧力とを近似させる圧力近似手段(22、23)を有することを特徴としている。
【0051】
これによると、請求項8に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、圧力近似手段(22、23)によりノズル(14)の上流側と下流側との圧力を近似させるだけで、容易に加圧ガスをノズル(14)から吸着室(18)内に導入することができる。
【0052】
また、請求項22に記載の発明の保持装置では、
ノズル(14)の下流側に設けられ、ノズル(14)を通過した加圧ガスが排出される排気室(31)を備え、
圧力近似手段(22、23)は、排気室(31)内の圧力を上昇する昇圧手段(22、23)であることを特徴としている。
【0053】
これによると、請求項9に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、昇圧手段(22、23)によりノズル(14)の下流側に設けた加圧ガスの排気室(31)内の圧力を上昇して、ノズル(14)より上流側における加圧ガスの圧力とノズル(14)より下流側における加圧ガスの圧力とを容易に近似させることができる。
【0054】
また、請求項23に記載の発明の保持装置では、
排気室(31)から外部への加圧ガスの排出路(22、32)の断面積を調節する排出路断面積調節手段(23)を備え、
排出路断面積調節手段(23)が排出路断面積を減少させて排気室(31)内の圧力を上昇することを特徴としている。
【0055】
これによると、請求項10に記載の発明の保持方法を行なうことができる。すなわち、排出路断面積調節手段(23)により排気室(31)から外部への加圧ガスの排出路(22、32)断面積を減少して、排気室(31)内の圧力を容易に上昇させることができる。
【0056】
また、請求項24に記載の発明の保持装置では、
前記加圧ガスは清浄化されたガスであり、
吸着室(18)の周囲に開口し、ノズル(14)を通過した加圧ガスを、ワーク(2)を取り囲むように噴出する周状の噴出口(32)を備えることを特徴としている。
【0057】
これによると、請求項11に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、ノズル(14)を通過する加圧ガスによる吸引作用によりワーク(2)をチャックしているときには、ノズル(14)を通過した清浄化された加圧ガスは周状の噴出口(32)からワーク(2)を取り囲むように噴出される。このようにして、チャックされたワーク(2)を清浄化されたガスによって囲み、ワーク(2)に異物等が付着することを防止することができる。
【0058】
また、請求項25に記載の発明の保持装置では、吸着室(18)と噴出口(32)とは、吸着室(18)からワーク(2)が離隔しているときに、噴出口(32)から噴出した加圧ガスが吸着室(18)に流れるように配置されていることを特徴としている。
【0059】
これによると、請求項12および請求項13の少なくともいずれかに記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、ワーク(2)がチャックされていないときには、噴出口(32)から噴出した清浄化されたガスを吸着室(18)からノズル(14)に還流するので、噴出口(32)から噴出されるガスの清浄度を保つことができる。
【0060】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0062】
図1は、本発明を適用した一実施形態におけるワーク保持装置である吸着式のチャック10の概略構成を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は下面図である。また、図2は、チャック10を利用したワーク2搬送装置1の概略構成図である。
【0063】
図1(a)に示すように、本実施形態のチャック10は、主要部をなすブロック体11と、ブロック体11の外周部に配置されたカバー21とにより構成されている。
【0064】
ブロック体11の内部には、後述する加圧ガス供給手段(図2のコンプレッサ90参照)からの加圧ガス(本例では加圧空気)を導入するための導入通路12が設けられている。導入通路12上流端の導入口12aは、ブロック体11の上面部に開口しており、加圧ガスを導くための導管92が接続している。
【0065】
ブロック体11の略中央部には、1次ノズルである加速ノズル14aと2次ノズル14bとからなるノズル14が図示左右方向に穿設されている。加速ノズル14aは、上流端が導入通路12の下流端に接続するとともに、導入通路12より通路断面積を小さく形成されている。
【0066】
また、2次ノズル14bは、加速ノズル14aと中心軸を略同一として形成され、上流側(図示右方の加速ノズル14a側)より下流側に向けて通路断面の直径が連続的に増大するように穿設されている。
【0067】
ブロック体11の下面は、ワークをチャックするためのチャック面17となっている。チャック面17には環状突起部17aに取り囲まれた凹状の吸着室18が形成されている。この吸着室18とノズル14(加速ノズル14aと2次ノズル14bとの間の部位)とは連通路15により連通している。
【0068】
加速ノズル14aおよび2次ノズル14bからなるノズル14と、加速ノズル14aと2次ノズル14bとの間に接続した連通路15とにより、エゼクタ部(エゼクタ機構)13を構成している。エゼクタ部13は、ノズル14を通過する高速のガス流により連通路15内のガスを吸引するようになっている。
【0069】
連通路15の図示上端部(吸着室18側とは反対側の端部)には、連通路15を介して吸着室18内の圧力を検出するための圧力検出手段である圧力センサ16が配設されている。
【0070】
本実施形態の圧力センサ16は、小型の半導体圧力センサであり、ブロック体11内に埋設されている。そして、この圧力センサ16は、吸着室18内の圧力情報を後述する制御装置100に出力するようになっている。
【0071】
ブロック体11の外周部には、上端部をブロック体11に接続された筒状のカバー21が設けられている。
【0072】
ブロック体11は、図示上下方向の略中央部に全周に亘って括れ形状部(周状凹部)が形成されており、前述したノズル14の2次ノズル14bの下流端は、この括れ形状部に開口している。すなわち、ブロック体11とカバー21との間には周状の空間が形成されており、この空間はノズル14から排出されるガスの排気室31となっている。
【0073】
排気室31の図示下方側においてブロック体11とカバー21とは隙間部を形成するように離設されており、この隙間部が排気室31から外部へのガスの噴出口32となっている。
【0074】
図1(b)に示すように、ブロック体11チャック面17は、本実施形態のワーク2(図2参照)形状に対応して略同一寸法の矩形状に形成されており、カバー21はチャック面17より一回り大きい矩形状をなしている。これにより、噴出口32も矩形周状に形成され、チャック面17にワーク2をチャックしたときのワーク2外周面に沿ってガスを噴出するようになっている。
【0075】
図1(a)に示すように、カバー21の図示右上部には、排気室31内のガスを排出するための排出口22が形成されている。そして、カバー21の外側には、この排出口22を開閉する開閉手段としての開閉弁23が設けられている。
【0076】
排出口22と噴出口32とが、排気室31から外部へ加圧ガスを排出するための本実施形態における排出路であり、開閉弁23は排出路断面積を調節する排出路断面積調節手段である。
【0077】
図2に示すように、搬送装置1は、例えばパレット3上に載置されたワーク2を加温等を行なう処理プレート4上に移動するものであって、前述したチャック10を上下動するシリンダ装置5と水平動(図示左右動)するシリンダ装置6とを備えている。
【0078】
フレキシブル性を有するチューブ体からなる導管92の一端はチャック10に接続され、導管92の他端は加圧ガス供給手段であるコンプレッサ90に接続されている。コンプレッサ90の加圧ガス吐出経路中には、加圧ガス(本例では加圧空気)中から異物等を除去するフィルタ部材91が配設されており、チャック10には清浄化されたガス(空気)が供給されるようになっている。
【0079】
制御手段である制御装置100は、チャック10内の圧力センサ16(図1参照)からの圧力情報、シリンダ装置5、6からの位置情報等に基づいて、シリンダ装置5、6を作動してチャック10位置を制御する信号や開閉弁23の図示しない駆動手段を制御する信号等を出力するようになっている。
【0080】
なお、本実施形態のワーク2は、例えば加速度センサチップを実装した微小ワーク(チャックされる面の寸法が約7mm×4mm)であり、0.5μmの異物が付着しても誤動作を起こす可能性があるため、搬送装置1全体がクラス100以上の清浄度を有するクリーンルーム内に配置されている。
【0081】
次に、上記構成に基づき本実施形態の搬送装置1のチャック10の作動について説明する。
【0082】
図3は、チャック10がワーク2をチャックする前の状態を示す図であり、図4は、チャック10がワーク2をチャックしたチャック工程を示す図である。また、図5は、チャックしたワーク2を移動する移動工程(本発明における対ワーク操作工程に相当)を示す図であり、図6は、チャック10がワーク2をアンチャックしたアンチャック工程を示す図である。
【0083】
図7(a)は、図3〜図6に示す4工程におけるチャック10の導入通路12内の圧力(細実線)、排気室31内の圧力(破線)、および吸着室18内の圧力(太実線、圧力センサ16検出圧力)の変化を示すグラフである。
【0084】
図7(a)に示すように、チャック10の導入通路12内にはコンプレッサ90側より略一定の圧力(約250kPa)が印加され、常時清浄化された加圧空気が供給されるようになっている。
【0085】
図3に示すように、チャック10がワーク2をチャックする前には(チャック前工程Aでは)、導入口12aから導入通路12内に導入された加圧空気は、エゼクタ部13のノズル14を通過するときに、連通路15を介して吸着室18内の空気を吸引する。このとき、チャック面17にワーク2が接する状態とはなっていないが、吸着室18内は若干負圧(約−10kPa)となる。
【0086】
ノズル14を通過した加圧空気は吸着室18内から流入した空気を伴なって排気室31内に排気される。これにより、排気室31内は若干正圧(約10〜20kPa)となる。この圧力により、排気室31内の空気は、開閉弁23が開く排出口22から排出されるとともに、噴出口32からカーテン状に噴出される。
【0087】
噴出口32から噴出された空気は、一部が図示する2本の一点鎖線の間の領域をワーク2方向に向かって流れるとともに、残部は若干負圧となっている吸着室18に向かって流れ、吸着室18から連通路15を介してノズル14に還流する。
【0088】
すなわち、噴出口32から噴出した清浄化された空気の一部は、吸着室18→連通路15→ノズル14(2次ノズル14b)→排気室31→噴出口32の経路を循環する。したがって、一点鎖線より外側の領域に浮遊する異物があったとしても、この異物を吸引することはない。このようにして、ワーク2チャック前には、チャック面17とワーク2との間の空間を清浄な状態に保つことができる。
【0089】
制御装置100がシリンダ装置5を駆動して、図3に示す状態からチャック10を下降させ、チャック面17の環状突起部17aにワーク2が当接すると、図4に示すチャック工程Bに移行する。チャック前工程Aから、吸着室18内を負圧状態とする本発明で言うところの負圧状態形成工程が行なわれており、ワーク2に接するように吸着室18を配置する本発明で言うところの配置工程を行なったところで、チャック工程Bに移行したことになる。
【0090】
チャック工程Bに移行すると、噴出口32から噴出した空気の吸着室18への流れ込みが停止されるので、エゼクタ部13の吸引作用により、図7(a)に示すように、吸着室18内の圧力は低下していく(負圧が増大していく)。この吸着室18内の負圧と外部の大気圧との圧力差によりワーク2はチャック10のチャック面17にチャック(吸着保持)される。
【0091】
エゼクタ部13のノズル14を通過して排気室31に排気された加圧空気は、開閉弁23が開く排出口22から排出されるとともに、噴出口32からカーテン状に噴出される。
【0092】
噴出口32から噴出された空気は、ワーク2の側方の全域を取り囲むように流れ(一点鎖線の間の領域を流れ)、ワーク2周囲の空間を清浄な状態に保つことができる。
【0093】
このように、ワーク2をチャック10のチャック面17にチャックしたら、図5に示す移動工程Cに移行する。
【0094】
ここで、本実施形態のチャック10では、導入通路12内に供給される加圧空気の圧力が約250kPaであり、開閉弁23により開かれた排出口22と噴出口32とから加圧空気が外部に排出されているときには、エゼクタ部13の吸引作用により吸着室18内は約−40kPaにまで到達する。
【0095】
前述したように、チャック10には、吸着室18内の圧力を検出する圧力センサ16が設けられている。そして、制御装置100は、圧力センサ16の検出する負圧が所定圧以下となったときに、シリンダ装置5、6に作動信号を出力して移動工程Cを実行する。
【0096】
制御装置100がチャック工程Bから移動工程Cへの移行タイミングを判定する前記所定圧は、ワーク2の重量や移動工程Cにおいて発生する応力に基づいて設定されるものである。すなわち、吸着室18内が前記所定圧以下の負圧となればワーク2を安定して保持しつつ移動することができる。
【0097】
そこで、制御装置100は、例えば設定所定圧が−30kPaである場合には、圧力センサ16が検出する負圧が−30kPaに到達した時点で、吸着室18内が−40kPaに到達するのを待つことなく、チャック工程Bから移動工程Cに移行させる。
【0098】
移動工程Cを実行中は、エゼクタ部13の吸引作用により、図7(a)に示すように、吸着室18内の圧力は略一定の負圧状態を維持し、この吸着室18内の負圧と外部の大気圧との圧力差によりワーク2はチャック10のチャック面17に吸着保持される。
【0099】
エゼクタ部13のノズル14を通過して排気室31に排気された加圧空気は、開閉弁23が開く排出口22から排出されるとともに、噴出口32からカーテン状に噴出される。
【0100】
噴出口32から噴出された空気は、ワーク2の側方から下面側の全域を取り囲むように流れ(一点鎖線の間の領域を流れ)、ワーク2周囲の空間を清浄な状態に保つことができる。
【0101】
このように、ワーク2をチャック10のチャック面17に吸着保持しつつ、図2に示す処理プレート4上まで移動したら、図6に示すアンチャック工程Dに移行する。
【0102】
具体的には、制御装置100が開閉弁23の図示しない駆動手段に信号を出力し、図6に示すように、開閉弁23により排出口22を閉塞する。
【0103】
排出口22が閉塞されると、排気室31から外部への排出路が噴出口32のみとなる。これにより、導入通路12に導入されエゼクタ部13のノズル14を通過して排気室31に排気された加圧空気は排気室31内の圧力を上昇させる。
【0104】
この排気室31内の昇圧により、排気室31内の圧力は導入通路12内の圧力に近づく(排気室31内と導入通路12内との圧力差が低減される)。本実施形態のチャック10では、図7(a)に示すように、排気室31内の圧力は速やかに約100kPaにまで上昇する。
【0105】
このように排気室31内の圧力と導入通路12内の圧力とが近似すると、換言すれば、エゼクタ部13のノズル14の上流側の圧力と下流側の圧力とが近似すると、エゼクタ部13の吸引作用が著しく減少する。この吸引作用の減少に伴ない、ノズル14を流れる加圧空気が連通路15内に進入し、吸着室18内に噴出する。
【0106】
これにより、図7(a)に示すように、吸着室18内は速やかに大気圧以上の圧力(正圧)となる。吸着室18内が大気圧以上に加圧されると、吸着室18内の圧力と外部の大気圧との圧力差により、ワーク2はチャック10のチャック面17から速やかにアンチャック(脱離)され、処理プレート4上に載置される。
【0107】
本実施形態のチャック10では、開閉弁23により排出口22を閉塞しない限り、吸着室18内の負圧状態が解除されないように、排出口22および噴出口32の開口面積を設定している。
【0108】
エゼクタ部13のノズル14を通過した加圧空気は、一部が排気室31を介して噴出口32からカーテン状に噴出される。また、残部は連通路15を介して吸着室18から噴出される。
【0109】
両経路から外部に噴出された空気は、ワーク2の上面から側方の全域を取り囲むように流れ(一点鎖線の間の領域を流れ)、チャック面17とワーク2との間の空間を清浄な状態に保つことができる。
【0110】
ここで、図7(a)には図示していないが、ワーク2のアンチャック工程Dを完了したら、次のチャック工程Bに備えて排出口22を開口するものであってもよい。アンチャック工程Dが完了した状態で排出口22を開口しても、図3に示した状態と同様に、噴出口32から噴出された空気は、一部が下方側に流れるとともに、残部は吸着室18に向かって流れノズル14に還流する。これにより、ワーク2アンチャック後においても、チャック面17とワーク2との間の空間を清浄な状態に保つことができる。
【0111】
排出路断面積調節手段を構成する排出口22と開閉弁23とからなる構成は、排気室31内の圧力を上昇させる昇圧手段であると言うことができ、ノズル14より上流側における加圧空気の圧力とノズル14より下流側における加圧空気の圧力とを近似させる圧力近似手段(圧力差低減手段)であると言うこともできる。
【0112】
また、排出口22と開閉弁23とからなる構成は、吸着室18内に加圧ガスを導入する加圧ガス導入手段であると言うこともでき、吸着室18内を大気圧以上に加圧する加圧手段であると言うこともできる。
【0113】
上述の構成および作動によれば、チャック工程Bにおいてワーク2に接するように吸着室18を配置する前から、エゼクタ部13のノズル14に加圧空気を流通して吸着室18内を負圧状態としている。したがって、ワーク2に接するように吸着室18を配置すると、速やかに吸着室18がワーク2を吸着し、ワーク2をチャックすることができる。
【0114】
また、チャック工程Bにおける吸着室18内の負圧が、次工程である移動工程(搬送工程)Cでのワーク保持に耐えられる所定圧以下となったときに、移動工程Cに移行している。したがって、チャック工程Bを必要以上に継続することなく移動工程Cに移行することができる。
【0115】
また、吸着室18内の圧力を検出する小型圧力センサ16を、吸着室18に近い連通路15の端部に設けているので、圧力検出応答性が良好であり、精度よく圧力を検出することができる。
【0116】
また、アンチャック工程Dでは、吸着室18内を大気圧以上に加圧して、吸着室18内の負圧状態を速やかに解除し、ワーク2をアンチャックしている。
【0117】
これらにより、チャック工程Bやアンチャック工程Dに要する時間を短縮し、チャック10によるワーク2の着脱時間を確実に短縮することができる。
【0118】
図7(b)は、従来技術によりワークの保持を行なったときの各部の圧力変化の例を、本実施形態と対応するように示したグラフである。
【0119】
従来秘術では、ワークをチャックするときには、ワークに接するように吸着室を配置した後、ノズルに加圧ガスを流通し吸着室内を負圧状態としている。また、ワークをアンチャックするときには、加圧ガスの流通を停止したノズルから連通路を介して吸着室内に大気を流入させ、吸着室内の負圧状態を解除している。
【0120】
したがって、チャック工程およびアンチャック工程に長い時間(例えば、それぞれ約1秒程度)を要していた。
【0121】
これに対し、本発明を適用した本実施形態によれば、チャック工程およびアンチャック工程に要する時間を、従来の1/10〜1/20(例えば、それぞれ約0.05〜0.1秒)に低減できることを本発明者らは確認している。
【0122】
また、従来から、吸着室内を真空ポンプ等の負圧源により負圧状態とする所謂バキュームチャックも用いられている。
【0123】
しかし、このチャック方式は、ワークチャック時、および搬送時に、ワーク周りの空気を吸い込み続けるため、真空配管中にワーク周囲の異物が堆積し易い。また、ワークを所定位置に移動後アンチャックするためには、真空配管内を大気圧に開放し、ワークをチャック面から外すために高圧ガスを供給する必要がある。そうすると、配管中に堆積した異物が高圧ガスでワークに吹き付けられてしまう。
【0124】
このような、チャック、アンチャック工程を繰り返すことにより、クラス100の環境で組み付け作業を行っても、異物がワークに付着する場合があるという問題があった。更に、微細なワークの搬送を行う場合でも、チャック面に設けた吸着室を上回る体積を有する真空配管容積を減圧するためにチャック時間が掛かるという問題があった。
【0125】
これに対し、本発明を適用した本実施形態によれば、ワークへの異物の付着を確実に防止しつつ、チャック、アンチャックに要する時間を大幅に短縮することが可能である。
【0126】
また、アンチャック工程Dでは、排出口22を閉塞するという簡単な動作により、排気室31から外部への加圧空気の排出路断面積を減少して排気室31内を昇圧し、ノズル14の上下流の圧力差を低減させている。
【0127】
これにより、ノズル14を流通する加圧空気の流量を低下させ、エゼクタ部13の吸引力を低減させて、ノズル14から吸着室18内に加圧空気を導入することで、吸着室18内を大気圧以上に加圧することができる。
【0128】
これによると、ノズル14に流通する加圧空気を利用して吸着室18内を加圧することができる。したがって、吸着室18内の加圧のために、他の高圧ガスを導入する構成を設ける必要がなく、チャック10を小型化することができる。また、加圧空気の供給および供給停止を切り替える必要もない。
【0129】
また、チャック10がチャック面17にワーク2を保持しているときには、清浄化された加圧空気を噴出口32からワーク2を取り囲むように噴出させて、ワーク2に異物等が付着することを防止することができる。
【0130】
また、チャック10のチャック面17とワーク2とが離れているときには、清浄化された加圧空気を噴出口32からワーク2の周囲に向けて噴出させるとともに、噴出した清浄化された空気の一部を吸着室18を介して還流させ、噴出口32から噴出されるガスの清浄度を保つことができる。
【0131】
これにより、チャック10がワーク2を保持していない場合であっても、ワーク2に異物等が付着することを防止することができる。
【0132】
また、本実施形態のチャック10は、微小なワーク2に対応して比較的小さい吸着室18を採用しており、吸引すべき容積が小さいためエゼクタ部13のノズル14も1つとしていた。すなわち、ノズル14(2次ノズル14b)の排気室31への出口は1つであった。
【0133】
そこで、本実施形態では、排気室31の周方向の断面積を比較的大きく確保し、噴出口32からの空気噴出抵抗に対し、排気室31内の周方向への空気流通抵抗を小さくしている。これにより、ノズル14が1つの場合であっても、周状の噴出口32から略均一に清浄化した空気を噴出することが可能となっている。
【0134】
(他の実施形態)
上記一実施形態では、ワーク着脱時間短縮のために、チャック工程の前から吸着室18内に負圧状態を形成し、チャック工程において吸着室18内が所定圧以下になったときに移動工程に移行し、アンチャック工程で吸着室18内を大気圧以上に加圧していたが、これらを全て採用するものでなく、少なくともいずれかを採用するものであれば、ワークの着脱時間を短縮する効果を得ることができる。
【0135】
また、上記一実施形態では、アンチャック工程において吸着室18内を大気圧以上に加圧するために、開閉弁23を作動して排出口22を閉塞して、排気室31内の圧力を上昇していたが、これに限定されるものではない。排気室31からの加圧ガス排出路の断面積を低減する他の方法を採用して、排気室31内の圧力を上昇するものであってもよい。
【0136】
例えば、図8に示すように、アンチャック工程を行なう位置に対応して設けられた閉塞部材(本例では処理プレート4から立設した固定部材)23Aにより排出口23を閉塞するものであってもよい。
【0137】
また、図9に示すように、排出口23を設けず、アンチャック工程を行なう位置に対応して設けられた閉塞部材(本例では処理プレート4から立設した周状壁部材)23Bにより噴出口32の一部あるいは全部を閉塞するものであってもよい。
【0138】
また、アンチャック工程において吸着室18内を大気圧以上に加圧するために、コンプレッサ90からの加圧ガスもしくは別系統からの加圧ガスを、排気室31内に直接導入して、排気室31内を昇圧するものであってもよい。
【0139】
また、コンプレッサ90から供給される加圧ガスの圧力を、アンチャック時のみ昇圧してノズル14の上流側圧力と下流側圧力とを近づけることも可能である。
【0140】
また、コンプレッサ90からの加圧ガスもしくは別系統からの加圧ガスを吸着室18内に直接導入して、吸着室18内を大気圧以上に加圧するものであってもよい。
【0141】
また、噴出口32から噴出するエアカーテンが不要であれば、カバーを設けず(排気室を形成せず)、アンチャック時にノズル14(2次ノズル14b)の出口面積を低減して、吸着室18内に加圧ガスを導入するものであってもよい。
【0142】
また、上記一実施形態では、チャック10の1つに吸着室18で1つのワーク2をチャックするものであったが、これに限定されるものではない。
【0143】
例えば、図10に示すように、吸着室18を複数備えたチャック10Aを採用し、それぞれの吸着室18にワーク2をチャックするものであってもよい。この例によれば、複数の吸着室18に対応した複数のエゼクタ部13に共通の導入通路12Aから加圧ガスを供給することができる。
【0144】
また、複数のワーク2を同時にチャックできるとともに、複数の吸着室18に対する共通の排出口22の開閉制御により、複数のワーク2を同時にアンチャックすることができる。なお、本例においては、一部の吸着室18だけにワーク2をチャックすることも可能である。
【0145】
また、図10に例示するチャック10Aにおいて、各エゼクタ部13の出口側の圧力を個別に昇圧できる構成を採用すれば、複数のワーク2のそれぞれのアンチャックのタイミングをずらすことも可能である。
【0146】
また、図11に示すように、複数のチャック10により1つの比較的大きなワーク(例えば、ウェハやガラス基板等)2Aを保持するものであってもよい。
【0147】
また、上記一実施形態では、チャック10は、ブロック体11とカバー21との2つの部材で構成していたが、1つもしくは3つ以上の部材で構成するものであってもよい。
【0148】
また、上記一実施形態では、エゼクタ部13のノズル14に加圧ガスを供給して吸着室18内を減圧する(負圧状態とする)ものであったが、吸着室18内に所望の負圧状態が形成できるのであれば、エゼクタ機構ではなく所謂アスピレータ機構を採用して吸着室内のガスを吸引するものであってもよい。
【0149】
また、上記一実施形態では、対ワーク操作工程はワークを移動する移動工程(搬送工程)であったが、これに限定されるものではない。例えば、対ワーク操作工程が、ワークに処理や加工を施す工程であったり、ワークを検査する工程であっても、その前後のチャック工程、アンチャック工程に本発明を適用して有効である。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明を適用した一実施形態におけるワーク保持装置である吸着式のチャック10の概略構成を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は下面図である。
【図2】チャック10を利用したワーク2搬送装置1の概略構成図である。
【図3】チャック10がワーク2をチャックする前の状態(チャック前工程A)を示す図である。
【図4】チャック工程Bを示す図である。
【図5】移動工程Cを示す図である。
【図6】アンチャック工程Dを示す図である。
【図7】(a)は、一実施形態のチャック10の各部の圧力変化を示すグラフであり、(b)は従来のチャック各部の圧力変化を示すグラフである。
【図8】他の実施形態におけるアンチャック工程を示す図である。
【図9】他の実施形態におけるアンチャック工程を示す図である。
【図10】他の実施形態におけるチャックを示す図である。
【図11】他の実施形態におけるチャックを示す図である。
【符号の説明】
【0151】
2 ワーク
10 チャック(保持装置)
12 導入通路
13 エゼクタ部(エゼクタ)
14 ノズル
16 圧力センサ(圧力検出手段)
18 吸着室(減圧室)
21 カバー
22 排出口(排出路の一部、加圧手段の一部、加圧ガス導入手段の一部、圧力近似手段の一部、昇圧手段の一部)
23 開閉弁(排出口の開閉手段、加圧手段の一部、加圧ガス導入手段の一部、圧力近似手段の一部、昇圧手段の一部)
31 排気室
32 噴出口(排出路の一部)
90 コンプレッサ(加圧ガス供給手段)
B チャック工程
C 移動工程(対ワーク操作工程)
D アンチャック工程
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着式のチャックによりワークを保持する方法および保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、下記特許文献1に開示されたワークの保持装置がある。このワーク保持装置は吸着式チャック装置であり、加圧ガスを流通するノズルと、ワークであるウェハーをチャック(吸着保持)するための吸着板に設けられた吸着室をなす減圧室と、減圧室とノズルとを連通する連通路とを備えている。
【0003】
そして、ウェハーをチャックするときには、まず、ウェハー上に吸着板を載せて閉塞された減圧室を形成する。次に、ノズルに加圧ガスを流通し、連通路内のガスを吸引する。これにより、連通路と繋がった減圧室は減圧され、ウェハーを吸着チャックする。
【0004】
また、ウェハーをアンチャックするときには、ノズルへの加圧ガスの供給を停止し、減圧室の気圧を大気圧と同等にする。これにより、ウェハーの吸着が解除されウェハーをアンチャックするようになっている。
【特許文献1】特開昭64−58486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術の保持方法では、ワークをチャックするときには、ワークに接するように吸着室を配置した後、吸着室内を負圧状態とするようになっている。また、ワークをアンチャックするときには、加圧ガスの流通が停止されたノズルから連通路を介して吸着室内に大気が流入し、吸着室内の負圧状態が解除されるようになっている。
【0006】
したがって、ワークの着脱(チャックおよびアンチャック)には比較的時間を要し、ニーズが大きい着脱時間の短縮に対応し難いという問題がある。
【0007】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、ワークの着脱時間を短縮することが可能なワーク保持方法および保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明の保持方法では、
ワーク(2)に対し操作を行なう対ワーク操作工程(C)の前に、ワーク(2)をチャックするチャック工程(B)と、
対ワーク操作工程(C)の後に、ワーク(2)をアンチャックするアンチャック工程(D)とを備え、
チャック工程(B)では、ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置する配置工程と、ノズル(14)に加圧ガスを流通してノズル(14)に連通する吸着室(18)内のガスを吸引し、ワーク(2)を吸着するために吸着室(18)内を負圧状態とする負圧状態形成工程とを同時に行なって、ワーク(2)をチャックし、
アンチャック工程(D)では、吸着室(18)内の負圧状態を解除して、ワーク(2)をアンチャックするワークの保持方法であって、
配置工程を行なう前に、負圧状態形成工程を開始することを特徴としている。
【0009】
これによると、吸着室(18)内を負圧状態とする負圧状態形成工程は、チャック工程(B)が開始される前から行なわれる。したがって、ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置する配置工程が行なわれチャック工程(B)が開始されると、速やかに吸着室(18)がワーク(2)を吸着し、ワーク(2)を保持することができる。
【0010】
このようにして、チャック工程(B)に要する時間を短縮し、ワーク(2)の着脱時間を短縮することができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明の保持方法では、請求項1に記載の発明の保持方法において、チャック工程(B)で吸着室(18)内の負圧が所定圧以下となったときに、対ワーク操作工程(C)に移行することを特徴としている。
【0012】
これによると、吸着室(18)内がワーク(2)を確実に保持できる所定圧力に到達した場合に、速やかに対ワーク操作工程(C)に移行することができる。すなわち、チャック工程(B)を必要以上に継続することなく対ワーク操作工程(C)に移行することができる。
【0013】
このようにして、チャック工程(B)に要する時間を一層短縮し、ワーク(2)の着脱時間を一層短縮することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明の保持方法では、請求項1または請求項2に記載の発明の保持方法において、アンチャック工程(D)では、吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴としている。
【0015】
これによると、吸着室(18)内の負圧状態を加圧により速やかに解除して、ワーク(2)をアンチャックすることができる。したがって、アンチャック工程(D)に要する時間を短縮し、ワーク(2)の着脱時間をより一層短縮することができる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明の保持方法では、
ワーク(2)に対し操作を行なう対ワーク操作工程(C)の前に、ワーク(2)をチャックするチャック工程(B)と、
対ワーク操作工程(C)の後に、ワーク(2)をアンチャックするアンチャック工程(D)とを備え、
チャック工程(B)では、ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置する配置工程と、ノズル(14)に加圧ガスを流通してノズル(14)に連通する吸着室(18)内のガスを吸引し、ワーク(2)を吸着するために吸着室(18)内を負圧状態とする負圧状態形成工程とを同時に行なって、ワーク(2)をチャックし、
アンチャック工程(D)では、吸着室(18)内の負圧状態を解除して、ワーク(2)をアンチャックするワークの保持方法であって、
チャック工程(B)において吸着室(18)内の負圧が所定圧以下となったときに、対ワーク操作工程(C)に移行することを特徴としている。
【0017】
これによると、吸着室(18)内がワーク(2)を確実に保持できる所定圧力に到達した場合に、速やかに対ワーク操作工程(C)に移行することができる。すなわち、チャック工程(B)を必要以上に継続することなく対ワーク操作工程(C)に移行することができる。
【0018】
このようにして、チャック工程(B)に要する時間を短縮し、ワーク(2)の着脱時間を短縮することができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明の保持方法では、請求項4に記載の発明の保持方法において、アンチャック工程(D)では、吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴としている。
【0020】
これによると、吸着室(18)内の負圧状態を加圧により速やかに解除して、ワーク(2)をアンチャックすることができる。したがって、アンチャック工程(D)に要する時間を短縮し、ワーク(2)の着脱時間を一層短縮することができる。
【0021】
また、請求項6に記載の発明の保持方法では、
ワーク(2)に対し操作を行なう対ワーク操作工程(C)の前に、ワーク(2)をチャックするチャック工程(B)と、
対ワーク操作工程(C)の後に、ワーク(2)をアンチャックするアンチャック工程(D)とを備え、
チャック工程(B)では、ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置する配置工程と、ノズル(14)に加圧ガスを流通してノズル(14)に連通する吸着室(18)内のガスを吸引し、ワーク(2)を吸着するために吸着室(18)内を負圧状態とする負圧状態形成工程とを同時に行なって、前記ワーク(2)をチャックし、
アンチャック工程(D)では、吸着室(18)内の負圧状態を解除して、ワーク(2)をアンチャックするワークの保持方法であって、
アンチャック工程(D)では、吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴としている。
【0022】
これによると、吸着室(18)内の負圧状態を加圧により速やかに解除して、ワーク(2)をアンチャックすることができる。したがって、アンチャック工程(D)に要する時間を短縮し、ワーク(2)の着脱時間を短縮することができる。
【0023】
また、請求項7に記載の発明の保持方法では、アンチャック工程(D)では、吸着室(18)内に前記加圧ガスを導入して、吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴としている。
【0024】
これによると、ノズル(14)に流通するための加圧ガスを利用して吸着室(18)内を加圧することができる。したがって、吸着室(18)内の加圧のために、他の高圧ガスを導入する必要がない。
【0025】
また、請求項8に記載の発明の保持方法では、アンチャック工程(D)では、ノズル(14)より上流側における加圧ガスの圧力とノズル(14)より下流側における加圧ガスの圧力とを近似させ、ノズル(14)から吸着室(18)内に加圧ガスを導入することを特徴としている。
【0026】
これによると、ノズル(14)の上流側と下流側との圧力を近似させるだけで(圧力差を低減するだけで)、容易に加圧ガスをノズル(14)から吸着室(18)内に導入することができる。
【0027】
また、請求項9に記載の発明の保持方法のように、ノズル(14)の下流側に設けた加圧ガスの排気室(31)内の圧力を上昇して、ノズル(14)より上流側における加圧ガスの圧力とノズル(14)より下流側における加圧ガスの圧力とを容易に近似させることができる。
【0028】
また、請求項10に記載の発明の保持方法のように、排気室(31)から外部への加圧ガスの排出路(22、32)断面積を減少して、排気室(31)内の圧力を容易に上昇させることができる。
【0029】
また、請求項11に記載の発明の保持方法では、
前記加圧ガスは清浄化されたガスであり、
チャック工程(B)では、ノズル(14)を通過した後の加圧ガスを、ワーク(2)を周状に取り囲むように噴出することを特徴としている。
【0030】
これによると、チャック工程(B)でノズル(14)を通過する加圧ガスによる吸引作用によりワーク(2)をチャックしているときには、ノズル(14)を通過した清浄化された加圧ガスはワーク(2)を取り囲むように噴出される。
【0031】
したがって、チャックされたワーク(2)は清浄化されたガスに囲まれ、ワーク(2)に異物等が付着することを防止することができる。
【0032】
また、請求項12に記載の発明の保持方法では、チャック工程(B)を開始する前には、噴出した加圧ガスを、吸着室(18)を介してノズル(14)に還流することを特徴としている。
【0033】
これによると、ワーク(2)がチャックされる前には、噴出した清浄化されたガスを吸着室(18)からノズル(14)に還流するので、噴出されるガスの清浄度を保つことができる。
【0034】
また、請求項13に記載の発明の保持方法では、アンチャック工程(D)を完了した後には、噴出した加圧ガスを、吸着室(18)を介してノズル(14)に還流することを特徴としている。
【0035】
これによると、ワーク(2)がアンチャックされた後には、噴出した清浄化されたガスを吸着室(18)からノズル(14)に還流するので、噴出されるガスの清浄度を保つことができる。
【0036】
また、請求項14に記載の発明の保持装置では、
加圧ガスを噴出するノズル(14)と、
ノズル(14)内と連通するとともに、ワーク(2)をチャックするときにワーク(2)に接するように配置する吸着室(18)と、
ワーク(2)をチャックする以前から、ノズル(14)に加圧ガスを供給する加圧ガス供給手段(90)とを備えることを特徴としている。
【0037】
これによると、請求項1に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置したときには、速やかに吸着室(18)がワーク(2)を吸着し、ワーク(2)を保持することができる。このようにして、ワーク(2)の着脱時間を短縮することができる。
【0038】
また、請求項15に記載の発明の保持装置では、請求項14に記載の発明の保持装置において、吸着室(18)内の圧力を検出する圧力検出手段(16)を備えることを特徴としている。
【0039】
これによると、請求項2に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、吸着室(18)内がワーク(2)を確実に保持できる所定圧力を圧力検出手段(16)が検出した場合に、速やかに次工程(C)に移行することができる。このようにして、ワーク(2)の着脱時間を一層短縮することができる。
【0040】
また、請求項16に記載の発明の保持装置では、請求項14または請求項15に記載の発明の保持装置において、吸着室(18)内を大気圧以上に加圧する加圧手段(22、23)を備えることを特徴としている。
【0041】
これによると、請求項3に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、吸着室(18)内の負圧状態を加圧手段(22、23)により速やかに解除して、ワーク(2)をアンチャックすることができる。したがって、ワーク(2)の着脱時間をより一層短縮することができる。
【0042】
また、請求項17に記載の発明の保持装置では、
加圧ガスを噴出するノズル(14)と、
ノズル(14)内と連通するとともに、ワーク(2)をチャックするときにワーク(2)に接するように配置する吸着室(18)と、
ノズル(14)に加圧ガスを供給する加圧ガス供給手段(90)と、
吸着室(18)内の圧力を検出する圧力検出手段(16)とを備えることを特徴としている。
【0043】
これによると、請求項4に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、吸着室(18)内がワーク(2)を確実に保持できる所定圧力を圧力検出手段(16)が検出した場合に、速やかに次工程(C)に移行することができる。このようにして、ワーク(2)の着脱時間を短縮することができる。
【0044】
また、請求項18に記載の発明の保持装置では、請求項17に記載の発明の保持装置において、吸着室(18)内を大気圧以上に加圧する加圧手段(22、23)を備えることを特徴としている。
【0045】
これによると、請求項5に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、吸着室(18)内の負圧状態を加圧手段(22、23)により速やかに解除して、ワーク(2)をアンチャックすることができる。したがって、ワーク(2)の着脱時間を一層短縮することができる。
【0046】
また、請求項19に記載の発明の保持装置では、
加圧ガスを噴出するノズル(14)と、
ノズル(14)内と連通するとともに、ワーク(2)をチャックするときにワーク(2)に接するように配置する吸着室(18)と、
ノズル(14)に加圧ガスを供給する加圧ガス供給手段(90)と、
吸着室(18)内を大気圧以上に加圧する加圧手段(22、23)とを備えることを特徴としている。
【0047】
これによると、請求項6に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、吸着室(18)内の負圧状態を加圧手段(22、23)により速やかに解除して、ワーク(2)をアンチャックすることができる。したがって、ワーク(2)の着脱時間を短縮することができる。
【0048】
また、請求項20に記載の発明の保持装置では、加圧手段(22、23)は、吸着室(18)内に前記加圧ガスを導入する加圧ガス導入手段(22、23)であることを特徴としている。
【0049】
これによると、請求項7に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、加圧ガス導入手段(22、23)によりノズル(14)に流通するための加圧ガスを導入して吸着室(18)内を加圧することができる。すなわち、吸着室(18)内の加圧のために、他の高圧ガスを導入する必要がない。
【0050】
また、請求項21に記載の発明の保持装置では、加圧ガス導入手段(22、23)は、ノズル(14)より上流側における加圧ガスの圧力とノズル(14)より下流側における加圧ガスの圧力とを近似させる圧力近似手段(22、23)を有することを特徴としている。
【0051】
これによると、請求項8に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、圧力近似手段(22、23)によりノズル(14)の上流側と下流側との圧力を近似させるだけで、容易に加圧ガスをノズル(14)から吸着室(18)内に導入することができる。
【0052】
また、請求項22に記載の発明の保持装置では、
ノズル(14)の下流側に設けられ、ノズル(14)を通過した加圧ガスが排出される排気室(31)を備え、
圧力近似手段(22、23)は、排気室(31)内の圧力を上昇する昇圧手段(22、23)であることを特徴としている。
【0053】
これによると、請求項9に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、昇圧手段(22、23)によりノズル(14)の下流側に設けた加圧ガスの排気室(31)内の圧力を上昇して、ノズル(14)より上流側における加圧ガスの圧力とノズル(14)より下流側における加圧ガスの圧力とを容易に近似させることができる。
【0054】
また、請求項23に記載の発明の保持装置では、
排気室(31)から外部への加圧ガスの排出路(22、32)の断面積を調節する排出路断面積調節手段(23)を備え、
排出路断面積調節手段(23)が排出路断面積を減少させて排気室(31)内の圧力を上昇することを特徴としている。
【0055】
これによると、請求項10に記載の発明の保持方法を行なうことができる。すなわち、排出路断面積調節手段(23)により排気室(31)から外部への加圧ガスの排出路(22、32)断面積を減少して、排気室(31)内の圧力を容易に上昇させることができる。
【0056】
また、請求項24に記載の発明の保持装置では、
前記加圧ガスは清浄化されたガスであり、
吸着室(18)の周囲に開口し、ノズル(14)を通過した加圧ガスを、ワーク(2)を取り囲むように噴出する周状の噴出口(32)を備えることを特徴としている。
【0057】
これによると、請求項11に記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、ノズル(14)を通過する加圧ガスによる吸引作用によりワーク(2)をチャックしているときには、ノズル(14)を通過した清浄化された加圧ガスは周状の噴出口(32)からワーク(2)を取り囲むように噴出される。このようにして、チャックされたワーク(2)を清浄化されたガスによって囲み、ワーク(2)に異物等が付着することを防止することができる。
【0058】
また、請求項25に記載の発明の保持装置では、吸着室(18)と噴出口(32)とは、吸着室(18)からワーク(2)が離隔しているときに、噴出口(32)から噴出した加圧ガスが吸着室(18)に流れるように配置されていることを特徴としている。
【0059】
これによると、請求項12および請求項13の少なくともいずれかに記載の発明の保持方法を行なうことができる。したがって、ワーク(2)がチャックされていないときには、噴出口(32)から噴出した清浄化されたガスを吸着室(18)からノズル(14)に還流するので、噴出口(32)から噴出されるガスの清浄度を保つことができる。
【0060】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0062】
図1は、本発明を適用した一実施形態におけるワーク保持装置である吸着式のチャック10の概略構成を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は下面図である。また、図2は、チャック10を利用したワーク2搬送装置1の概略構成図である。
【0063】
図1(a)に示すように、本実施形態のチャック10は、主要部をなすブロック体11と、ブロック体11の外周部に配置されたカバー21とにより構成されている。
【0064】
ブロック体11の内部には、後述する加圧ガス供給手段(図2のコンプレッサ90参照)からの加圧ガス(本例では加圧空気)を導入するための導入通路12が設けられている。導入通路12上流端の導入口12aは、ブロック体11の上面部に開口しており、加圧ガスを導くための導管92が接続している。
【0065】
ブロック体11の略中央部には、1次ノズルである加速ノズル14aと2次ノズル14bとからなるノズル14が図示左右方向に穿設されている。加速ノズル14aは、上流端が導入通路12の下流端に接続するとともに、導入通路12より通路断面積を小さく形成されている。
【0066】
また、2次ノズル14bは、加速ノズル14aと中心軸を略同一として形成され、上流側(図示右方の加速ノズル14a側)より下流側に向けて通路断面の直径が連続的に増大するように穿設されている。
【0067】
ブロック体11の下面は、ワークをチャックするためのチャック面17となっている。チャック面17には環状突起部17aに取り囲まれた凹状の吸着室18が形成されている。この吸着室18とノズル14(加速ノズル14aと2次ノズル14bとの間の部位)とは連通路15により連通している。
【0068】
加速ノズル14aおよび2次ノズル14bからなるノズル14と、加速ノズル14aと2次ノズル14bとの間に接続した連通路15とにより、エゼクタ部(エゼクタ機構)13を構成している。エゼクタ部13は、ノズル14を通過する高速のガス流により連通路15内のガスを吸引するようになっている。
【0069】
連通路15の図示上端部(吸着室18側とは反対側の端部)には、連通路15を介して吸着室18内の圧力を検出するための圧力検出手段である圧力センサ16が配設されている。
【0070】
本実施形態の圧力センサ16は、小型の半導体圧力センサであり、ブロック体11内に埋設されている。そして、この圧力センサ16は、吸着室18内の圧力情報を後述する制御装置100に出力するようになっている。
【0071】
ブロック体11の外周部には、上端部をブロック体11に接続された筒状のカバー21が設けられている。
【0072】
ブロック体11は、図示上下方向の略中央部に全周に亘って括れ形状部(周状凹部)が形成されており、前述したノズル14の2次ノズル14bの下流端は、この括れ形状部に開口している。すなわち、ブロック体11とカバー21との間には周状の空間が形成されており、この空間はノズル14から排出されるガスの排気室31となっている。
【0073】
排気室31の図示下方側においてブロック体11とカバー21とは隙間部を形成するように離設されており、この隙間部が排気室31から外部へのガスの噴出口32となっている。
【0074】
図1(b)に示すように、ブロック体11チャック面17は、本実施形態のワーク2(図2参照)形状に対応して略同一寸法の矩形状に形成されており、カバー21はチャック面17より一回り大きい矩形状をなしている。これにより、噴出口32も矩形周状に形成され、チャック面17にワーク2をチャックしたときのワーク2外周面に沿ってガスを噴出するようになっている。
【0075】
図1(a)に示すように、カバー21の図示右上部には、排気室31内のガスを排出するための排出口22が形成されている。そして、カバー21の外側には、この排出口22を開閉する開閉手段としての開閉弁23が設けられている。
【0076】
排出口22と噴出口32とが、排気室31から外部へ加圧ガスを排出するための本実施形態における排出路であり、開閉弁23は排出路断面積を調節する排出路断面積調節手段である。
【0077】
図2に示すように、搬送装置1は、例えばパレット3上に載置されたワーク2を加温等を行なう処理プレート4上に移動するものであって、前述したチャック10を上下動するシリンダ装置5と水平動(図示左右動)するシリンダ装置6とを備えている。
【0078】
フレキシブル性を有するチューブ体からなる導管92の一端はチャック10に接続され、導管92の他端は加圧ガス供給手段であるコンプレッサ90に接続されている。コンプレッサ90の加圧ガス吐出経路中には、加圧ガス(本例では加圧空気)中から異物等を除去するフィルタ部材91が配設されており、チャック10には清浄化されたガス(空気)が供給されるようになっている。
【0079】
制御手段である制御装置100は、チャック10内の圧力センサ16(図1参照)からの圧力情報、シリンダ装置5、6からの位置情報等に基づいて、シリンダ装置5、6を作動してチャック10位置を制御する信号や開閉弁23の図示しない駆動手段を制御する信号等を出力するようになっている。
【0080】
なお、本実施形態のワーク2は、例えば加速度センサチップを実装した微小ワーク(チャックされる面の寸法が約7mm×4mm)であり、0.5μmの異物が付着しても誤動作を起こす可能性があるため、搬送装置1全体がクラス100以上の清浄度を有するクリーンルーム内に配置されている。
【0081】
次に、上記構成に基づき本実施形態の搬送装置1のチャック10の作動について説明する。
【0082】
図3は、チャック10がワーク2をチャックする前の状態を示す図であり、図4は、チャック10がワーク2をチャックしたチャック工程を示す図である。また、図5は、チャックしたワーク2を移動する移動工程(本発明における対ワーク操作工程に相当)を示す図であり、図6は、チャック10がワーク2をアンチャックしたアンチャック工程を示す図である。
【0083】
図7(a)は、図3〜図6に示す4工程におけるチャック10の導入通路12内の圧力(細実線)、排気室31内の圧力(破線)、および吸着室18内の圧力(太実線、圧力センサ16検出圧力)の変化を示すグラフである。
【0084】
図7(a)に示すように、チャック10の導入通路12内にはコンプレッサ90側より略一定の圧力(約250kPa)が印加され、常時清浄化された加圧空気が供給されるようになっている。
【0085】
図3に示すように、チャック10がワーク2をチャックする前には(チャック前工程Aでは)、導入口12aから導入通路12内に導入された加圧空気は、エゼクタ部13のノズル14を通過するときに、連通路15を介して吸着室18内の空気を吸引する。このとき、チャック面17にワーク2が接する状態とはなっていないが、吸着室18内は若干負圧(約−10kPa)となる。
【0086】
ノズル14を通過した加圧空気は吸着室18内から流入した空気を伴なって排気室31内に排気される。これにより、排気室31内は若干正圧(約10〜20kPa)となる。この圧力により、排気室31内の空気は、開閉弁23が開く排出口22から排出されるとともに、噴出口32からカーテン状に噴出される。
【0087】
噴出口32から噴出された空気は、一部が図示する2本の一点鎖線の間の領域をワーク2方向に向かって流れるとともに、残部は若干負圧となっている吸着室18に向かって流れ、吸着室18から連通路15を介してノズル14に還流する。
【0088】
すなわち、噴出口32から噴出した清浄化された空気の一部は、吸着室18→連通路15→ノズル14(2次ノズル14b)→排気室31→噴出口32の経路を循環する。したがって、一点鎖線より外側の領域に浮遊する異物があったとしても、この異物を吸引することはない。このようにして、ワーク2チャック前には、チャック面17とワーク2との間の空間を清浄な状態に保つことができる。
【0089】
制御装置100がシリンダ装置5を駆動して、図3に示す状態からチャック10を下降させ、チャック面17の環状突起部17aにワーク2が当接すると、図4に示すチャック工程Bに移行する。チャック前工程Aから、吸着室18内を負圧状態とする本発明で言うところの負圧状態形成工程が行なわれており、ワーク2に接するように吸着室18を配置する本発明で言うところの配置工程を行なったところで、チャック工程Bに移行したことになる。
【0090】
チャック工程Bに移行すると、噴出口32から噴出した空気の吸着室18への流れ込みが停止されるので、エゼクタ部13の吸引作用により、図7(a)に示すように、吸着室18内の圧力は低下していく(負圧が増大していく)。この吸着室18内の負圧と外部の大気圧との圧力差によりワーク2はチャック10のチャック面17にチャック(吸着保持)される。
【0091】
エゼクタ部13のノズル14を通過して排気室31に排気された加圧空気は、開閉弁23が開く排出口22から排出されるとともに、噴出口32からカーテン状に噴出される。
【0092】
噴出口32から噴出された空気は、ワーク2の側方の全域を取り囲むように流れ(一点鎖線の間の領域を流れ)、ワーク2周囲の空間を清浄な状態に保つことができる。
【0093】
このように、ワーク2をチャック10のチャック面17にチャックしたら、図5に示す移動工程Cに移行する。
【0094】
ここで、本実施形態のチャック10では、導入通路12内に供給される加圧空気の圧力が約250kPaであり、開閉弁23により開かれた排出口22と噴出口32とから加圧空気が外部に排出されているときには、エゼクタ部13の吸引作用により吸着室18内は約−40kPaにまで到達する。
【0095】
前述したように、チャック10には、吸着室18内の圧力を検出する圧力センサ16が設けられている。そして、制御装置100は、圧力センサ16の検出する負圧が所定圧以下となったときに、シリンダ装置5、6に作動信号を出力して移動工程Cを実行する。
【0096】
制御装置100がチャック工程Bから移動工程Cへの移行タイミングを判定する前記所定圧は、ワーク2の重量や移動工程Cにおいて発生する応力に基づいて設定されるものである。すなわち、吸着室18内が前記所定圧以下の負圧となればワーク2を安定して保持しつつ移動することができる。
【0097】
そこで、制御装置100は、例えば設定所定圧が−30kPaである場合には、圧力センサ16が検出する負圧が−30kPaに到達した時点で、吸着室18内が−40kPaに到達するのを待つことなく、チャック工程Bから移動工程Cに移行させる。
【0098】
移動工程Cを実行中は、エゼクタ部13の吸引作用により、図7(a)に示すように、吸着室18内の圧力は略一定の負圧状態を維持し、この吸着室18内の負圧と外部の大気圧との圧力差によりワーク2はチャック10のチャック面17に吸着保持される。
【0099】
エゼクタ部13のノズル14を通過して排気室31に排気された加圧空気は、開閉弁23が開く排出口22から排出されるとともに、噴出口32からカーテン状に噴出される。
【0100】
噴出口32から噴出された空気は、ワーク2の側方から下面側の全域を取り囲むように流れ(一点鎖線の間の領域を流れ)、ワーク2周囲の空間を清浄な状態に保つことができる。
【0101】
このように、ワーク2をチャック10のチャック面17に吸着保持しつつ、図2に示す処理プレート4上まで移動したら、図6に示すアンチャック工程Dに移行する。
【0102】
具体的には、制御装置100が開閉弁23の図示しない駆動手段に信号を出力し、図6に示すように、開閉弁23により排出口22を閉塞する。
【0103】
排出口22が閉塞されると、排気室31から外部への排出路が噴出口32のみとなる。これにより、導入通路12に導入されエゼクタ部13のノズル14を通過して排気室31に排気された加圧空気は排気室31内の圧力を上昇させる。
【0104】
この排気室31内の昇圧により、排気室31内の圧力は導入通路12内の圧力に近づく(排気室31内と導入通路12内との圧力差が低減される)。本実施形態のチャック10では、図7(a)に示すように、排気室31内の圧力は速やかに約100kPaにまで上昇する。
【0105】
このように排気室31内の圧力と導入通路12内の圧力とが近似すると、換言すれば、エゼクタ部13のノズル14の上流側の圧力と下流側の圧力とが近似すると、エゼクタ部13の吸引作用が著しく減少する。この吸引作用の減少に伴ない、ノズル14を流れる加圧空気が連通路15内に進入し、吸着室18内に噴出する。
【0106】
これにより、図7(a)に示すように、吸着室18内は速やかに大気圧以上の圧力(正圧)となる。吸着室18内が大気圧以上に加圧されると、吸着室18内の圧力と外部の大気圧との圧力差により、ワーク2はチャック10のチャック面17から速やかにアンチャック(脱離)され、処理プレート4上に載置される。
【0107】
本実施形態のチャック10では、開閉弁23により排出口22を閉塞しない限り、吸着室18内の負圧状態が解除されないように、排出口22および噴出口32の開口面積を設定している。
【0108】
エゼクタ部13のノズル14を通過した加圧空気は、一部が排気室31を介して噴出口32からカーテン状に噴出される。また、残部は連通路15を介して吸着室18から噴出される。
【0109】
両経路から外部に噴出された空気は、ワーク2の上面から側方の全域を取り囲むように流れ(一点鎖線の間の領域を流れ)、チャック面17とワーク2との間の空間を清浄な状態に保つことができる。
【0110】
ここで、図7(a)には図示していないが、ワーク2のアンチャック工程Dを完了したら、次のチャック工程Bに備えて排出口22を開口するものであってもよい。アンチャック工程Dが完了した状態で排出口22を開口しても、図3に示した状態と同様に、噴出口32から噴出された空気は、一部が下方側に流れるとともに、残部は吸着室18に向かって流れノズル14に還流する。これにより、ワーク2アンチャック後においても、チャック面17とワーク2との間の空間を清浄な状態に保つことができる。
【0111】
排出路断面積調節手段を構成する排出口22と開閉弁23とからなる構成は、排気室31内の圧力を上昇させる昇圧手段であると言うことができ、ノズル14より上流側における加圧空気の圧力とノズル14より下流側における加圧空気の圧力とを近似させる圧力近似手段(圧力差低減手段)であると言うこともできる。
【0112】
また、排出口22と開閉弁23とからなる構成は、吸着室18内に加圧ガスを導入する加圧ガス導入手段であると言うこともでき、吸着室18内を大気圧以上に加圧する加圧手段であると言うこともできる。
【0113】
上述の構成および作動によれば、チャック工程Bにおいてワーク2に接するように吸着室18を配置する前から、エゼクタ部13のノズル14に加圧空気を流通して吸着室18内を負圧状態としている。したがって、ワーク2に接するように吸着室18を配置すると、速やかに吸着室18がワーク2を吸着し、ワーク2をチャックすることができる。
【0114】
また、チャック工程Bにおける吸着室18内の負圧が、次工程である移動工程(搬送工程)Cでのワーク保持に耐えられる所定圧以下となったときに、移動工程Cに移行している。したがって、チャック工程Bを必要以上に継続することなく移動工程Cに移行することができる。
【0115】
また、吸着室18内の圧力を検出する小型圧力センサ16を、吸着室18に近い連通路15の端部に設けているので、圧力検出応答性が良好であり、精度よく圧力を検出することができる。
【0116】
また、アンチャック工程Dでは、吸着室18内を大気圧以上に加圧して、吸着室18内の負圧状態を速やかに解除し、ワーク2をアンチャックしている。
【0117】
これらにより、チャック工程Bやアンチャック工程Dに要する時間を短縮し、チャック10によるワーク2の着脱時間を確実に短縮することができる。
【0118】
図7(b)は、従来技術によりワークの保持を行なったときの各部の圧力変化の例を、本実施形態と対応するように示したグラフである。
【0119】
従来秘術では、ワークをチャックするときには、ワークに接するように吸着室を配置した後、ノズルに加圧ガスを流通し吸着室内を負圧状態としている。また、ワークをアンチャックするときには、加圧ガスの流通を停止したノズルから連通路を介して吸着室内に大気を流入させ、吸着室内の負圧状態を解除している。
【0120】
したがって、チャック工程およびアンチャック工程に長い時間(例えば、それぞれ約1秒程度)を要していた。
【0121】
これに対し、本発明を適用した本実施形態によれば、チャック工程およびアンチャック工程に要する時間を、従来の1/10〜1/20(例えば、それぞれ約0.05〜0.1秒)に低減できることを本発明者らは確認している。
【0122】
また、従来から、吸着室内を真空ポンプ等の負圧源により負圧状態とする所謂バキュームチャックも用いられている。
【0123】
しかし、このチャック方式は、ワークチャック時、および搬送時に、ワーク周りの空気を吸い込み続けるため、真空配管中にワーク周囲の異物が堆積し易い。また、ワークを所定位置に移動後アンチャックするためには、真空配管内を大気圧に開放し、ワークをチャック面から外すために高圧ガスを供給する必要がある。そうすると、配管中に堆積した異物が高圧ガスでワークに吹き付けられてしまう。
【0124】
このような、チャック、アンチャック工程を繰り返すことにより、クラス100の環境で組み付け作業を行っても、異物がワークに付着する場合があるという問題があった。更に、微細なワークの搬送を行う場合でも、チャック面に設けた吸着室を上回る体積を有する真空配管容積を減圧するためにチャック時間が掛かるという問題があった。
【0125】
これに対し、本発明を適用した本実施形態によれば、ワークへの異物の付着を確実に防止しつつ、チャック、アンチャックに要する時間を大幅に短縮することが可能である。
【0126】
また、アンチャック工程Dでは、排出口22を閉塞するという簡単な動作により、排気室31から外部への加圧空気の排出路断面積を減少して排気室31内を昇圧し、ノズル14の上下流の圧力差を低減させている。
【0127】
これにより、ノズル14を流通する加圧空気の流量を低下させ、エゼクタ部13の吸引力を低減させて、ノズル14から吸着室18内に加圧空気を導入することで、吸着室18内を大気圧以上に加圧することができる。
【0128】
これによると、ノズル14に流通する加圧空気を利用して吸着室18内を加圧することができる。したがって、吸着室18内の加圧のために、他の高圧ガスを導入する構成を設ける必要がなく、チャック10を小型化することができる。また、加圧空気の供給および供給停止を切り替える必要もない。
【0129】
また、チャック10がチャック面17にワーク2を保持しているときには、清浄化された加圧空気を噴出口32からワーク2を取り囲むように噴出させて、ワーク2に異物等が付着することを防止することができる。
【0130】
また、チャック10のチャック面17とワーク2とが離れているときには、清浄化された加圧空気を噴出口32からワーク2の周囲に向けて噴出させるとともに、噴出した清浄化された空気の一部を吸着室18を介して還流させ、噴出口32から噴出されるガスの清浄度を保つことができる。
【0131】
これにより、チャック10がワーク2を保持していない場合であっても、ワーク2に異物等が付着することを防止することができる。
【0132】
また、本実施形態のチャック10は、微小なワーク2に対応して比較的小さい吸着室18を採用しており、吸引すべき容積が小さいためエゼクタ部13のノズル14も1つとしていた。すなわち、ノズル14(2次ノズル14b)の排気室31への出口は1つであった。
【0133】
そこで、本実施形態では、排気室31の周方向の断面積を比較的大きく確保し、噴出口32からの空気噴出抵抗に対し、排気室31内の周方向への空気流通抵抗を小さくしている。これにより、ノズル14が1つの場合であっても、周状の噴出口32から略均一に清浄化した空気を噴出することが可能となっている。
【0134】
(他の実施形態)
上記一実施形態では、ワーク着脱時間短縮のために、チャック工程の前から吸着室18内に負圧状態を形成し、チャック工程において吸着室18内が所定圧以下になったときに移動工程に移行し、アンチャック工程で吸着室18内を大気圧以上に加圧していたが、これらを全て採用するものでなく、少なくともいずれかを採用するものであれば、ワークの着脱時間を短縮する効果を得ることができる。
【0135】
また、上記一実施形態では、アンチャック工程において吸着室18内を大気圧以上に加圧するために、開閉弁23を作動して排出口22を閉塞して、排気室31内の圧力を上昇していたが、これに限定されるものではない。排気室31からの加圧ガス排出路の断面積を低減する他の方法を採用して、排気室31内の圧力を上昇するものであってもよい。
【0136】
例えば、図8に示すように、アンチャック工程を行なう位置に対応して設けられた閉塞部材(本例では処理プレート4から立設した固定部材)23Aにより排出口23を閉塞するものであってもよい。
【0137】
また、図9に示すように、排出口23を設けず、アンチャック工程を行なう位置に対応して設けられた閉塞部材(本例では処理プレート4から立設した周状壁部材)23Bにより噴出口32の一部あるいは全部を閉塞するものであってもよい。
【0138】
また、アンチャック工程において吸着室18内を大気圧以上に加圧するために、コンプレッサ90からの加圧ガスもしくは別系統からの加圧ガスを、排気室31内に直接導入して、排気室31内を昇圧するものであってもよい。
【0139】
また、コンプレッサ90から供給される加圧ガスの圧力を、アンチャック時のみ昇圧してノズル14の上流側圧力と下流側圧力とを近づけることも可能である。
【0140】
また、コンプレッサ90からの加圧ガスもしくは別系統からの加圧ガスを吸着室18内に直接導入して、吸着室18内を大気圧以上に加圧するものであってもよい。
【0141】
また、噴出口32から噴出するエアカーテンが不要であれば、カバーを設けず(排気室を形成せず)、アンチャック時にノズル14(2次ノズル14b)の出口面積を低減して、吸着室18内に加圧ガスを導入するものであってもよい。
【0142】
また、上記一実施形態では、チャック10の1つに吸着室18で1つのワーク2をチャックするものであったが、これに限定されるものではない。
【0143】
例えば、図10に示すように、吸着室18を複数備えたチャック10Aを採用し、それぞれの吸着室18にワーク2をチャックするものであってもよい。この例によれば、複数の吸着室18に対応した複数のエゼクタ部13に共通の導入通路12Aから加圧ガスを供給することができる。
【0144】
また、複数のワーク2を同時にチャックできるとともに、複数の吸着室18に対する共通の排出口22の開閉制御により、複数のワーク2を同時にアンチャックすることができる。なお、本例においては、一部の吸着室18だけにワーク2をチャックすることも可能である。
【0145】
また、図10に例示するチャック10Aにおいて、各エゼクタ部13の出口側の圧力を個別に昇圧できる構成を採用すれば、複数のワーク2のそれぞれのアンチャックのタイミングをずらすことも可能である。
【0146】
また、図11に示すように、複数のチャック10により1つの比較的大きなワーク(例えば、ウェハやガラス基板等)2Aを保持するものであってもよい。
【0147】
また、上記一実施形態では、チャック10は、ブロック体11とカバー21との2つの部材で構成していたが、1つもしくは3つ以上の部材で構成するものであってもよい。
【0148】
また、上記一実施形態では、エゼクタ部13のノズル14に加圧ガスを供給して吸着室18内を減圧する(負圧状態とする)ものであったが、吸着室18内に所望の負圧状態が形成できるのであれば、エゼクタ機構ではなく所謂アスピレータ機構を採用して吸着室内のガスを吸引するものであってもよい。
【0149】
また、上記一実施形態では、対ワーク操作工程はワークを移動する移動工程(搬送工程)であったが、これに限定されるものではない。例えば、対ワーク操作工程が、ワークに処理や加工を施す工程であったり、ワークを検査する工程であっても、その前後のチャック工程、アンチャック工程に本発明を適用して有効である。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明を適用した一実施形態におけるワーク保持装置である吸着式のチャック10の概略構成を示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は下面図である。
【図2】チャック10を利用したワーク2搬送装置1の概略構成図である。
【図3】チャック10がワーク2をチャックする前の状態(チャック前工程A)を示す図である。
【図4】チャック工程Bを示す図である。
【図5】移動工程Cを示す図である。
【図6】アンチャック工程Dを示す図である。
【図7】(a)は、一実施形態のチャック10の各部の圧力変化を示すグラフであり、(b)は従来のチャック各部の圧力変化を示すグラフである。
【図8】他の実施形態におけるアンチャック工程を示す図である。
【図9】他の実施形態におけるアンチャック工程を示す図である。
【図10】他の実施形態におけるチャックを示す図である。
【図11】他の実施形態におけるチャックを示す図である。
【符号の説明】
【0151】
2 ワーク
10 チャック(保持装置)
12 導入通路
13 エゼクタ部(エゼクタ)
14 ノズル
16 圧力センサ(圧力検出手段)
18 吸着室(減圧室)
21 カバー
22 排出口(排出路の一部、加圧手段の一部、加圧ガス導入手段の一部、圧力近似手段の一部、昇圧手段の一部)
23 開閉弁(排出口の開閉手段、加圧手段の一部、加圧ガス導入手段の一部、圧力近似手段の一部、昇圧手段の一部)
31 排気室
32 噴出口(排出路の一部)
90 コンプレッサ(加圧ガス供給手段)
B チャック工程
C 移動工程(対ワーク操作工程)
D アンチャック工程
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク(2)に対し操作を行なう対ワーク操作工程(C)の前に、前記ワーク(2)をチャックするチャック工程(B)と、
前記対ワーク操作工程(C)の後に、前記ワーク(2)をアンチャックするアンチャック工程(D)とを備え、
前記チャック工程(B)では、前記ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置する配置工程と、ノズル(14)に加圧ガスを流通して前記ノズル(14)に連通する前記吸着室(18)内のガスを吸引し、前記ワーク(2)を吸着するために前記吸着室(18)内を負圧状態とする負圧状態形成工程とを同時に行なって、前記ワーク(2)をチャックし、
前記アンチャック工程(D)では、前記吸着室(18)内の前記負圧状態を解除して、前記ワーク(2)をアンチャックするワークの保持方法であって、
前記配置工程を行なう前に、前記負圧状態形成工程を開始することを特徴とするワークの保持方法。
【請求項2】
前記チャック工程(B)において前記吸着室(18)内の負圧が所定圧以下となったときに、前記対ワーク操作工程(C)に移行することを特徴とする請求項1に記載のワークの保持方法。
【請求項3】
前記アンチャック工程(D)では、前記吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワークの保持方法。
【請求項4】
ワーク(2)に対し操作を行なう対ワーク操作工程(C)の前に、前記ワーク(2)をチャックするチャック工程(B)と、
前記対ワーク操作工程(C)の後に、前記ワーク(2)をアンチャックするアンチャック工程(D)とを備え、
前記チャック工程(B)では、前記ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置する配置工程と、ノズル(14)に加圧ガスを流通して前記ノズル(14)に連通する前記吸着室(18)内のガスを吸引し、前記ワーク(2)を吸着するために前記吸着室(18)内を負圧状態とする負圧状態形成工程とを同時に行なって、前記ワーク(2)をチャックし、
前記アンチャック工程(D)では、前記吸着室(18)内の負圧状態を解除して、前記ワーク(2)をアンチャックするワークの保持方法であって、
前記チャック工程(B)において前記吸着室(18)内の負圧が所定圧以下となったときに、前記対ワーク操作工程(C)に移行することを特徴とするワークの保持方法。
【請求項5】
前記アンチャック工程(D)では、前記吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴とする請求項4に記載のワークの保持方法。
【請求項6】
ワーク(2)に対し操作を行なう対ワーク操作工程(C)の前に、前記ワーク(2)をチャックするチャック工程(B)と、
前記対ワーク操作工程(C)の後に、前記ワーク(2)をアンチャックするアンチャック工程(D)とを備え、
前記チャック工程(B)では、前記ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置する配置工程と、ノズル(14)に加圧ガスを流通して前記ノズル(14)に連通する前記吸着室(18)内のガスを吸引し、前記ワーク(2)を吸着するために前記吸着室(18)内を負圧状態とする負圧状態形成工程とを同時に行なって、前記ワーク(2)をチャックし、
前記アンチャック工程(D)では、前記吸着室(18)内の負圧状態を解除して、前記ワーク(2)をアンチャックするワークの保持方法であって、
前記アンチャック工程(D)では、前記吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴とするワークの保持方法。
【請求項7】
前記アンチャック工程(D)では、前記吸着室(18)内に前記加圧ガスを導入して、前記吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴とする請求項3、請求項5、請求項6のいずれか1つに記載のワークの保持方法。
【請求項8】
前記アンチャック工程(D)では、前記ノズル(14)より上流側における前記加圧ガスの圧力と前記ノズル(14)より下流側における前記加圧ガスの圧力とを近似させ、前記ノズル(14)から前記吸着室(18)内に前記加圧ガスを導入することを特徴とする請求項7に記載のワークの保持方法。
【請求項9】
前記アンチャック工程(D)では、前記ノズル(14)の下流側に設けた前記加圧ガスの排気室(31)内の圧力を上昇して、前記ノズル(14)より上流側における前記加圧ガスの圧力と前記ノズル(14)より下流側における前記加圧ガスの圧力とを近似させることを特徴とする請求項8に記載のワークの保持方法。
【請求項10】
前記アンチャック工程(D)では、前記排気室(31)から外部への前記加圧ガスの排出路(22、32)断面積を減少して、前記排気室(31)内の圧力を上昇させることを特徴とする請求項9に記載のワークの保持方法。
【請求項11】
前記加圧ガスは清浄化されたガスであり、
前記チャック工程(B)では、前記ノズル(14)を通過した後の前記加圧ガスを、前記ワーク(2)を周状に取り囲むように噴出することを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載のワークの保持方法。
【請求項12】
前記チャック工程(B)を開始する前には、前記噴出した加圧ガスを、前記吸着室(18)を介して前記ノズル(14)に還流することを特徴とする請求項11に記載のワークの保持方法。
【請求項13】
前記アンチャック工程(D)を完了した後には、前記噴出した加圧ガスを、前記吸着室(18)を介して前記ノズル(14)に還流することを特徴とする請求項11または請求項12に記載のワークの保持方法。
【請求項14】
加圧ガスを噴出するノズル(14)と、
前記ノズル(14)内と連通するとともに、ワーク(2)をチャックするときに前記ワーク(2)に接するように配置する吸着室(18)と、
前記ワーク(2)をチャックする以前から、前記ノズル(14)に前記加圧ガスを供給する加圧ガス供給手段(90)とを備えることを特徴とするワークの保持装置。
【請求項15】
前記吸着室(18)内の圧力を検出する圧力検出手段(16)を備えることを特徴とする請求項14に記載のワークの保持装置。
【請求項16】
前記吸着室(18)内を大気圧以上に加圧する加圧手段(22、23)を備えることを特徴とする請求項14または請求項15に記載のワークの保持装置。
【請求項17】
加圧ガスを噴出するノズル(14)と、
前記ノズル(14)内と連通するとともに、ワーク(2)をチャックするときに前記ワーク(2)に接するように配置する吸着室(18)と、
前記ノズル(14)に前記加圧ガスを供給する加圧ガス供給手段(90)と、
前記吸着室(18)内の圧力を検出する圧力検出手段(16)とを備えることを特徴とするワークの保持装置。
【請求項18】
前記吸着室(18)内を大気圧以上に加圧する加圧手段(22、23)を備えることを特徴とする請求項17に記載のワークの保持装置。
【請求項19】
加圧ガスを噴出するノズル(14)と、
前記ノズル(14)内と連通するとともに、ワーク(2)をチャックするときに前記ワーク(2)に接するように配置する吸着室(18)と、
前記ノズル(14)に前記加圧ガスを供給する加圧ガス供給手段(90)と、
前記吸着室(18)内を大気圧以上に加圧する加圧手段(22、23)とを備えることを特徴とするワークの保持装置。
【請求項20】
前記加圧手段(22、23)は、前記吸着室(18)内に前記加圧ガスを導入する加圧ガス導入手段(22、23)であることを特徴とする請求項16、請求項18、請求項19のいずれか1つに記載のワークの保持装置。
【請求項21】
前記加圧ガス導入手段(22、23)は、前記ノズル(14)より上流側における前記加圧ガスの圧力と前記ノズル(14)より下流側における前記加圧ガスの圧力とを近似させる圧力近似手段(22、23)を有することを特徴とする請求項20に記載のワークの保持装置。
【請求項22】
前記ノズル(14)の下流側に設けられ、前記ノズル(14)を通過した前記加圧ガスが排出される排気室(31)を備え、
前記圧力近似手段(22、23)は、前記排気室(31)内の圧力を上昇する昇圧手段(22、23)であることを特徴とする請求項21に記載のワークの保持装置。
【請求項23】
前記排気室(31)から外部への前記加圧ガスの排出路(22、32)の断面積を調節する排出路断面積調節手段(23)を備え、
前記排出路断面積調節手段(23)が前記排出路断面積を減少させて前記排気室(31)内の圧力を上昇することを特徴とする請求項22に記載のワークの保持装置。
【請求項24】
前記加圧ガスは清浄化されたガスであり、
前記吸着室(18)の周囲に開口し、前記ノズル(14)を通過した前記加圧ガスを前記ワーク(2)を取り囲むように噴出する周状の噴出口(32)を備えることを特徴とする請求項14ないし請求項23のいずれか1つに記載のワークの保持装置。
【請求項25】
前記吸着室(18)と前記噴出口(32)とは、前記吸着室(18)から前記ワーク(2)が離隔しているときに、前記噴出口(32)から噴出した前記加圧ガスが前記吸着室(18)に流れるように配置されていることを特徴とする請求項24に記載のワークの保持装置。
【請求項1】
ワーク(2)に対し操作を行なう対ワーク操作工程(C)の前に、前記ワーク(2)をチャックするチャック工程(B)と、
前記対ワーク操作工程(C)の後に、前記ワーク(2)をアンチャックするアンチャック工程(D)とを備え、
前記チャック工程(B)では、前記ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置する配置工程と、ノズル(14)に加圧ガスを流通して前記ノズル(14)に連通する前記吸着室(18)内のガスを吸引し、前記ワーク(2)を吸着するために前記吸着室(18)内を負圧状態とする負圧状態形成工程とを同時に行なって、前記ワーク(2)をチャックし、
前記アンチャック工程(D)では、前記吸着室(18)内の前記負圧状態を解除して、前記ワーク(2)をアンチャックするワークの保持方法であって、
前記配置工程を行なう前に、前記負圧状態形成工程を開始することを特徴とするワークの保持方法。
【請求項2】
前記チャック工程(B)において前記吸着室(18)内の負圧が所定圧以下となったときに、前記対ワーク操作工程(C)に移行することを特徴とする請求項1に記載のワークの保持方法。
【請求項3】
前記アンチャック工程(D)では、前記吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のワークの保持方法。
【請求項4】
ワーク(2)に対し操作を行なう対ワーク操作工程(C)の前に、前記ワーク(2)をチャックするチャック工程(B)と、
前記対ワーク操作工程(C)の後に、前記ワーク(2)をアンチャックするアンチャック工程(D)とを備え、
前記チャック工程(B)では、前記ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置する配置工程と、ノズル(14)に加圧ガスを流通して前記ノズル(14)に連通する前記吸着室(18)内のガスを吸引し、前記ワーク(2)を吸着するために前記吸着室(18)内を負圧状態とする負圧状態形成工程とを同時に行なって、前記ワーク(2)をチャックし、
前記アンチャック工程(D)では、前記吸着室(18)内の負圧状態を解除して、前記ワーク(2)をアンチャックするワークの保持方法であって、
前記チャック工程(B)において前記吸着室(18)内の負圧が所定圧以下となったときに、前記対ワーク操作工程(C)に移行することを特徴とするワークの保持方法。
【請求項5】
前記アンチャック工程(D)では、前記吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴とする請求項4に記載のワークの保持方法。
【請求項6】
ワーク(2)に対し操作を行なう対ワーク操作工程(C)の前に、前記ワーク(2)をチャックするチャック工程(B)と、
前記対ワーク操作工程(C)の後に、前記ワーク(2)をアンチャックするアンチャック工程(D)とを備え、
前記チャック工程(B)では、前記ワーク(2)に接するように吸着室(18)を配置する配置工程と、ノズル(14)に加圧ガスを流通して前記ノズル(14)に連通する前記吸着室(18)内のガスを吸引し、前記ワーク(2)を吸着するために前記吸着室(18)内を負圧状態とする負圧状態形成工程とを同時に行なって、前記ワーク(2)をチャックし、
前記アンチャック工程(D)では、前記吸着室(18)内の負圧状態を解除して、前記ワーク(2)をアンチャックするワークの保持方法であって、
前記アンチャック工程(D)では、前記吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴とするワークの保持方法。
【請求項7】
前記アンチャック工程(D)では、前記吸着室(18)内に前記加圧ガスを導入して、前記吸着室(18)内を大気圧以上に加圧することを特徴とする請求項3、請求項5、請求項6のいずれか1つに記載のワークの保持方法。
【請求項8】
前記アンチャック工程(D)では、前記ノズル(14)より上流側における前記加圧ガスの圧力と前記ノズル(14)より下流側における前記加圧ガスの圧力とを近似させ、前記ノズル(14)から前記吸着室(18)内に前記加圧ガスを導入することを特徴とする請求項7に記載のワークの保持方法。
【請求項9】
前記アンチャック工程(D)では、前記ノズル(14)の下流側に設けた前記加圧ガスの排気室(31)内の圧力を上昇して、前記ノズル(14)より上流側における前記加圧ガスの圧力と前記ノズル(14)より下流側における前記加圧ガスの圧力とを近似させることを特徴とする請求項8に記載のワークの保持方法。
【請求項10】
前記アンチャック工程(D)では、前記排気室(31)から外部への前記加圧ガスの排出路(22、32)断面積を減少して、前記排気室(31)内の圧力を上昇させることを特徴とする請求項9に記載のワークの保持方法。
【請求項11】
前記加圧ガスは清浄化されたガスであり、
前記チャック工程(B)では、前記ノズル(14)を通過した後の前記加圧ガスを、前記ワーク(2)を周状に取り囲むように噴出することを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載のワークの保持方法。
【請求項12】
前記チャック工程(B)を開始する前には、前記噴出した加圧ガスを、前記吸着室(18)を介して前記ノズル(14)に還流することを特徴とする請求項11に記載のワークの保持方法。
【請求項13】
前記アンチャック工程(D)を完了した後には、前記噴出した加圧ガスを、前記吸着室(18)を介して前記ノズル(14)に還流することを特徴とする請求項11または請求項12に記載のワークの保持方法。
【請求項14】
加圧ガスを噴出するノズル(14)と、
前記ノズル(14)内と連通するとともに、ワーク(2)をチャックするときに前記ワーク(2)に接するように配置する吸着室(18)と、
前記ワーク(2)をチャックする以前から、前記ノズル(14)に前記加圧ガスを供給する加圧ガス供給手段(90)とを備えることを特徴とするワークの保持装置。
【請求項15】
前記吸着室(18)内の圧力を検出する圧力検出手段(16)を備えることを特徴とする請求項14に記載のワークの保持装置。
【請求項16】
前記吸着室(18)内を大気圧以上に加圧する加圧手段(22、23)を備えることを特徴とする請求項14または請求項15に記載のワークの保持装置。
【請求項17】
加圧ガスを噴出するノズル(14)と、
前記ノズル(14)内と連通するとともに、ワーク(2)をチャックするときに前記ワーク(2)に接するように配置する吸着室(18)と、
前記ノズル(14)に前記加圧ガスを供給する加圧ガス供給手段(90)と、
前記吸着室(18)内の圧力を検出する圧力検出手段(16)とを備えることを特徴とするワークの保持装置。
【請求項18】
前記吸着室(18)内を大気圧以上に加圧する加圧手段(22、23)を備えることを特徴とする請求項17に記載のワークの保持装置。
【請求項19】
加圧ガスを噴出するノズル(14)と、
前記ノズル(14)内と連通するとともに、ワーク(2)をチャックするときに前記ワーク(2)に接するように配置する吸着室(18)と、
前記ノズル(14)に前記加圧ガスを供給する加圧ガス供給手段(90)と、
前記吸着室(18)内を大気圧以上に加圧する加圧手段(22、23)とを備えることを特徴とするワークの保持装置。
【請求項20】
前記加圧手段(22、23)は、前記吸着室(18)内に前記加圧ガスを導入する加圧ガス導入手段(22、23)であることを特徴とする請求項16、請求項18、請求項19のいずれか1つに記載のワークの保持装置。
【請求項21】
前記加圧ガス導入手段(22、23)は、前記ノズル(14)より上流側における前記加圧ガスの圧力と前記ノズル(14)より下流側における前記加圧ガスの圧力とを近似させる圧力近似手段(22、23)を有することを特徴とする請求項20に記載のワークの保持装置。
【請求項22】
前記ノズル(14)の下流側に設けられ、前記ノズル(14)を通過した前記加圧ガスが排出される排気室(31)を備え、
前記圧力近似手段(22、23)は、前記排気室(31)内の圧力を上昇する昇圧手段(22、23)であることを特徴とする請求項21に記載のワークの保持装置。
【請求項23】
前記排気室(31)から外部への前記加圧ガスの排出路(22、32)の断面積を調節する排出路断面積調節手段(23)を備え、
前記排出路断面積調節手段(23)が前記排出路断面積を減少させて前記排気室(31)内の圧力を上昇することを特徴とする請求項22に記載のワークの保持装置。
【請求項24】
前記加圧ガスは清浄化されたガスであり、
前記吸着室(18)の周囲に開口し、前記ノズル(14)を通過した前記加圧ガスを前記ワーク(2)を取り囲むように噴出する周状の噴出口(32)を備えることを特徴とする請求項14ないし請求項23のいずれか1つに記載のワークの保持装置。
【請求項25】
前記吸着室(18)と前記噴出口(32)とは、前記吸着室(18)から前記ワーク(2)が離隔しているときに、前記噴出口(32)から噴出した前記加圧ガスが前記吸着室(18)に流れるように配置されていることを特徴とする請求項24に記載のワークの保持装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
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【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−327730(P2006−327730A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151584(P2005−151584)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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