説明

ワーク撮像装置及びワークの撮像方法

【課題】板状ワークが透明であるか否かにかかわらず、板状ワークの外形の認識を可能とする。
【解決手段】板状ワークWを保持する保持テーブル2と、保持テーブル2に保持された板状ワークWを撮像する撮像手段3と、板状ワークWの撮像時に板状ワークWを照らす撮像用照明40,41とを備えるワーク撮像装置1において、撮像手段3は板状ワークWの上方に配設され、撮像用照明は、板状ワークWに対して上方から撮像光を照射する第1の照明40と、板状ワークWに対して下方から撮像光を照射する第2の照明41とを備え、板状ワークWが透明か否かに応じていずれかの照明を選択して撮像を行うことにより、透明な板状ワークと透明でない板状ワークの双方の外形を認識可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形の板状ワークの中心を認識するために板状ワークを撮像するワーク撮像装置及びワークの撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円形またはほぼ円形の板状ワークを保持テーブルにおいて保持して加工等する装置においては、正確な加工等を行うために、板状ワークの中心と保持テーブルの中心とを位置あわせする必要がある。かかる位置あわせについては、例えば、板状ワークを保持テーブルに搬送する前に、位置あわせテーブルに板状ワークを載置し、円弧状に配置された複数のピンを当該円弧の中心に向けて駆動することにより、板状ワークの中心を位置あわせテーブルの中心に位置あわせする技術が開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、シリコンウェーハ等の遮光性材料からなる板状ワークについては、板状ワークとその周囲とのコントラストを明確とするために、板状ワークの下方に照明を配置し、上方から撮像を行って板状ワークの外形(輪郭)を認識し、その認識結果に基づき板状ワークの中心位置を求める技術も開示されている(例えば、特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−211766号公報
【特許文献2】特開2003−133392号公報
【特許文献3】特開2007−317982号公報
【特許文献4】特開2010−186863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1,2に記載された方法では、ピンを駆動するために特別な機構が必要となり、コストが増大するという問題がある。一方、上記特許文献3,4に記載された方法では、透明な材料によって形成される板状ワークについては、板状ワークの下方から光を照射して上方から撮像しても、板状ワークの外形を認識することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題にかんがみなされたもので、板状ワークが透明であるか否かにかかわらず、板状ワークの外形の認識を可能とし、板状ワークの中心を求めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の発明は、板状ワークを保持する保持テーブルと、保持テーブルに保持された板状ワークを撮像する撮像手段と、板状ワークの撮像時に板状ワークを照らす撮像用照明とを備えるワーク撮像装置に関するもので、撮像手段は、保持テーブルに保持された板状ワークの上方に配設され板状ワークの外形を認識する撮像カメラと、板状ワークの外形から板状ワークの中心を判断する判断部とで構成され、撮像用照明は、撮像カメラの周囲にリング状に形成され板状ワークに対して上方から撮像光を照射する第1の照明と、板状ワークに対して下方から撮像光を照射する第2の照明とを備える。
【0008】
第二の発明は、上記ワーク撮像装置を用いて板状ワークを撮像する撮像方法に関するもので、撮像光が透過可能な板状ワークの撮像時は板状ワークの上方から第1の照明によって板状ワークを照らし、撮像光が透過不可能な板状ワークの撮像時は板状ワークの下方から第2の照明によって板状ワークを照らす。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、板状ワークに対して上方から撮像光を照射する第1の照明と、板状ワークに対して下方から撮像光を照射する第2の照明とを備えたため、板状ワークが透明か否かに応じていずれかの照明を選択して撮像を行うことにより、透明な板状ワークと透明でない板状ワークの双方の外形を認識可能となるように撮像を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ワーク撮像装置の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】ワーク撮像装置において透明な板状ワークを撮像する状態を模式的に示す断面図である。
【図3】透明な板状ワークの撮像により取得した画像の例を示す説明図である。
【図4】板状ワークの中心を求める処理を示す説明図である。
【図5】ワーク撮像装置において透明でない板状ワークを撮像する状態を模式的に示す断面図である。
【図6】透明でない板状ワークの撮像により取得した画像の例を示す説明図である。
【図7】オリエンテーションフラットが形成された半導体ウェーハの中心を求める処理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すワーク撮像装置1は、板状ワークWを保持する保持テーブル2と、保持テーブル2に保持された板状ワークWを撮像する撮像手段3と、撮像手段3による板状ワークWの撮像時に板状ワークWを照らす撮像用照明である第1の照明40と第2の照明41とを備えている。板状ワークWは、円形に形成されている。
【0012】
保持テーブル2は、軸部20の上端に連結されている。保持テーブル2は板状ワークWより小径であり、保持テーブル2に保持された板状ワークWの上方に、撮像手段3が配設されている。撮像手段3は、保持テーブル2に保持された板状ワークWの上方に配設され板状ワークWの外形を認識する撮像カメラ30と、板状ワークWの外形から板状ワークWの中心を判断する判断部31とから構成されている。
【0013】
軸部20の下部には、つやなし半透明黒色板50と半透明白色拡散板51とが貼り合わされて構成される拡散板5が配設されている。拡散板5は、その面方向が板状ワークWの面方向と平行になるように固定されている。
【0014】
つやなし半透明黒色板50としては、例えば制電塩化ビニルにより形成されたタキロン株式会社製のタキロン制電プレートを使用することができる。このタキロン制電プレートの上面50a、すなわち第1の照明40に向く面には、例えば#100(平均粒径が850〜1180[μm])の流体を用いてショットブラストを施すことにより凹凸を形成し、光が乱反射するようにしておく。一方、半透明白色拡散板51としては、例えばアクリルにより形成された三菱レーヨン製の「ALK3-432」を使用することができる。
【0015】
第1の照明40は、板状ワークWの上方から撮像光を照射する照明であり、撮像カメラ30の光軸30aの周囲にリング状に形成されている。第1の照明40は、リング状に形成され、鉛直方向に貫通する空洞部400aを有する基台400を備えている。基台400の内周面400bは下方に傾斜しており、内周面400bには多数の発光部(例えばLED)401がリング状に固定されている。
【0016】
基台400の下部には、半透明白色拡散板403が固定されている。半透明白色拡散板403は、光軸30aが通る中心部が貫通したリング状に形成されており、第1の照明40から発せられた光を白色として拡散させることができる。発光部401からの撮像光の照射範囲402は、少なくとも保持テーブル2に保持された板状ワークWの上面全面を照らすことができる範囲となっている。
【0017】
第2の照明41は、板状ワークWに向けて下方から撮像光を照射する照明であり、拡散板5の下方に位置している。第2の照明41は、円形に形成されており、第2の照明41から上方に向けて照射される撮像光は、拡散板5を介して照射範囲410を照らすことができる。保持テーブル2が板状ワークWより小径であるため、照射範囲410は、少なくとも保持テーブル2に保持された板状ワークWの外形を照らすことができる範囲となっている。
【0018】
次に、以上のように構成される板状ワーク撮像装置1において、例えば図2に示すように、サファイアウェーハ等の透明な円形板状ワークW1を保持テーブル2において保持し、円形板状ワークW1の中心を検出する場合について説明する。
【0019】
図2に示すように、図1に示した第2の照明41を取り外すか、または第2の照明41をオフとしておき、第1の照明40をオンにして上方から円形板状ワークW1に光を照らす。このときの光は、半透明白色拡散板403を透過して拡散し、円形板状ワークW1の外側の照射範囲402を照らす。
【0020】
このようにして第1の照明40から照射範囲402を照らした状態で、撮像手段3によって撮像を行うと、つやなし半透明黒色板50において光が乱反射するため、撮像カメラ30が取得する画像は、図3に示す画像100のように、円形板状ワークW1が白色、その周囲が黒色となり、コントラストが明確となって円形板状ワークW1の外形10が明確となる。なお、第1の照明40から板状ワークを照らして撮像を行う場合は板状ワークが白く写るとともにその周囲が黒く写るように、第2の照明41から板状ワークを照らして撮像を行う場合は板状ワークが黒く写るとともにその周囲が白く写るように、あらかじめコントラスト調整がなされている。
【0021】
撮像カメラ30によって取得された画像100は、図2に示した判断部31に送られる。判断部31においては、円形板状ワークW1の中心位置を検出する。判断部31における処理内容は以下のとおりである。
【0022】
判断部31においては、図4に示すように、直交平面座標系において、撮像された円形板状ワークW1の外形100が描かれる。そして、外形10を構成するプロットのうち、X軸方向に対向する2点の中間に位置する中間点a1、a2、・・・の座標を求めてプロットしていき、すべての中間点を結ぶことによりラインL1を描く。同様に、円形板状ワークWの外形を構成するプロットのうち、Y軸方向に対向する2点の中間に位置する中間点b1、b2、・・・の座標を求めてプロットしていき、すべての中間点を結ぶことによりラインL2を描く。円形板状ワークW1は円形であるため、ラインL1とラインL2との交点が、円形板状ワークW1の中心o1となる。
【0023】
このようにして円形板状ワークW1の中心o1の座標が求まると、あらかじめ求めた保持テーブル2の中心の座標とのずれを認識することができる。
【0024】
次に、板状ワーク撮像装置1において、例えば図5に示すように、シリコンウェーハ等の遮光性のある(透明でない)円形板状ワークW2を保持テーブル2において保持し、円形板状ワークW2の中心を検出する場合について説明する。
【0025】
図5に示すように、第1の照明40をオフとし、第2の照明41をオンとする。第2の照明41から発せられる光は、半透明白色拡散板51及びつやなし半透明黒色板50を透過し、半透明白色拡散板51によって拡散されて拡散板5全体に光が行き渡り、照射範囲410を照らす。
【0026】
このようにして第2の照明41から照射範囲410を照らした状態で、撮像手段3によって撮像を行うと、図6に示す画像200のように、円形板状ワークW2が黒色、その周囲が白色となり、コントラストが明確となって円形板状ワークW2の外形20が明確となる。第2の照明41から照射された光は、つやなし半透明黒色板50によってわずかに遮られるが、明らかに遮光される円形板状ワークW2との間で明暗を判別することが可能であるため、円形板状ワークW2が黒色、その周囲が白色となり、円形板状ワークW2の外形20が明確となる。
【0027】
撮像カメラ30によって取得された画像200は、判断部31に送られ、判断部31においては、円形板状ワークW2の中心位置を検出する。中心位置の検出方法は、円形板状ワークW1の場合と同様である。
【0028】
以上のように、円形板状ワークW1の如く撮像光が透過可能な板状ワークの撮像時は、板状ワークの上方から第1の照明40によって板状ワークを照らし、円形板状ワークW2のように撮像光が透過不可能な板状ワークの撮像時は、板状ワークの下方から第2の照明41によって板状ワークを照らすことにより、1台の撮像装置で、透明な板状ワークと透明でない板状ワークの双方の外形を認識可能となる。
【0029】
第1の照明40から照射される光を撮像光として円形板状ワークW1を撮像した場合は、第1の照明40の下部には半透明白色拡散板403が配設されているために、円形板状ワークW1は白色に写る。また、保持テーブル2の下方に配設されたつやなし半透明黒色板50においては、第1の照明40に向く面である上面50aにあらかじめ凹凸が形成されており、第1の照明40から照らされた光がつやなし半透明黒色板50において鏡面反射しないため、円形板状ワークW1の周囲は黒色に写る。したがって、円形板状ワークW1とその周囲との境界、すなわち円形板状ワークW1の外形10を明確に認識することができる。
【0030】
第2の照明41から照射される光を撮像光として円形板状ワークW2を撮像した場合は、円形板状ワークW2の上面には光が当たらないため、円形板状ワークW2は黒色に写る。また、第2の照明41の上方には半透明白色拡散板51及びつやなし半透明黒色板50が配設されているため、円形板状ワークW2の外側は白色となり、円形板状ワークW2とその周囲との境界が明確となる。したがって、円形板状ワークW2とその周囲との境界である円形板状ワークW2の外形20を明確に認識することができる。
【0031】
なお、板状ワークが完全に円形でなく、例えば図7(a)に示す半導体ウェーハW3のようにオリエンテーションフラットOFが形成されている場合も、判断部31は、図7(b)に示すように、外形を構成するプロットのうち、X軸方向に対向する2点の中間に位置する中間点の座標を求めてプロットしていき、すべての中間点を結ぶことによりラインL3を描く。同様に、外形を構成するプロットのうち、Y軸方向に対向する2点の中間に位置する中間点の座標を求めてプロットしていき、すべての中間点を結ぶことによりラインL4を描く。半導体ウェーハW2は円形でないため、ラインL3及びラインL4が直線にはならない。このため、ラインL3とラインL4との交点を半導体ウェーハW2の中心とすることはできない。
【0032】
次に、図7(c)に示すように、ラインL3を構成するプロットのX座標の平均値を算出し、この平均値を通りY軸に平行な平均ラインL5を描く。そして、ラインL3について、平均ラインL5の左側に位置するプロットの数と右側に位置するプロットの数とを比較し、ラインL3のうちラインL5を基準としてプロットの少ない側の線を削除する。図7(d)においては、平均ラインL5の右側が削除されている。
【0033】
同様に、図7(c)に示すように、ラインL4を構成するプロットのY座標の平均値を算出し、この平均値を通りX軸に平行な平均ラインL6を描く。そして、ラインL4について、平均ラインL6の上側に位置するプロットの数と下側に位置するプロットの数とを比較し、ラインL4のうちラインL6を基準としてプロットの少ない側の線を削除する。図7(d)においては、平均ラインL6の上側が削除されている。
【0034】
次に、図7(e)に示すように、再びラインL3を構成する点から、削除した部分以外について平均ラインL7を描く。そして、ラインL3の残った部分について、平均ラインL7の左側に位置するプロットの数と右側に位置するプロットの数とを比較し、ラインL3のうちラインL7を基準としてプロットの少ない側の線を削除する。
【0035】
このように、平均ラインを描いてその線を基準としてプロットの少ない方を削除していくことにより、ラインL3の平均ラインとラインL4平均ラインとの交点が半導体ウェーハW3の中心に近づいていくため、半導体ウェーハW3の中心を求めることができる。本実施形態では、上記の処理を繰り返した後の平均ラインL9、L10の交点を半導体ウェーハW2の仮の中心としている。
【0036】
このようにして、オリエンテーションフラットやノッチが形成された半導体ウェーハについても、中心座標を求めることができる。
【符号の説明】
【0037】
1:ワーク撮像装置
2:保持テーブル 20:軸部
3:撮像手段 30:撮像カメラ 31:判断部 30a:光軸
40:第1の照明
400:基台 400a:空洞部 400b:内周面
401:発光部 402:照射範囲 403:半透明白色拡散板
41:第2の照明 410:照射範囲
5:拡散板
50:つやなし半透明黒色板 51:半透明白色拡散板
W1:透明な円形板状ワーク 10:外形
W2:透明でない円形板状ワーク 20:外形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状ワークを保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された板状ワークを撮像する撮像手段と、該板状ワークの撮像時に該板状ワークを照らす撮像用照明と、を備えるワーク撮像装置において、
該撮像手段は、該保持テーブルに保持された板状ワークの上方に配設され該板状ワークの外形を認識する撮像カメラと、該板状ワークの外形から該板状ワークの中心を判断する判断部とで構成され、
該撮像用照明は、該撮像カメラの周囲にリング状に形成され該板状ワークに対して上方から撮像光を照射する第1の照明と、該板状ワークに対して下方から撮像光を照射する第2の照明と、
を備える板状ワーク撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の板状ワーク撮像装置を用いて板状ワークを上方から撮像する撮像方法であって、
撮像光が透過可能な板状ワークの撮像時は、該板状ワークの上方から前記第1の照明によって該板状ワークを照らし、
撮像光が透過不可能な板状ワークの撮像時は、該板状ワークの下方から前記第2の照明によって該板状ワークを照らす
撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−89803(P2013−89803A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229697(P2011−229697)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】