ワーク硬度計測装置
【課題】1個の計測装置で複数の計測点の硬度を計測することができるワーク硬度計測装置を提供することを課題とする。
【解決手段】センサー18は、歯車14を励磁する励磁コイル77と、歯車14の任意のポイントに発生する渦電流による磁界の変化を検出する検出コイル78と、歯車14の計測断面に対応した略同形状の構造を呈し励磁コイル77及び検出コイル78を支持するコイル支持治具81とからなる。コイル支持治具81は、歯車14の歯底82に臨む山部83と、歯車14の歯先84に臨む谷部85とを備えている歯車状貫通穴86を有し、全ての山部83に検出コイル78が設けられている。
【効果】歯車等のワークの形状に合わせ、検出コイルを複数個配置するので、1個の計測装置で複数の計測点の硬度を一括して計測することができる。
【解決手段】センサー18は、歯車14を励磁する励磁コイル77と、歯車14の任意のポイントに発生する渦電流による磁界の変化を検出する検出コイル78と、歯車14の計測断面に対応した略同形状の構造を呈し励磁コイル77及び検出コイル78を支持するコイル支持治具81とからなる。コイル支持治具81は、歯車14の歯底82に臨む山部83と、歯車14の歯先84に臨む谷部85とを備えている歯車状貫通穴86を有し、全ての山部83に検出コイル78が設けられている。
【効果】歯車等のワークの形状に合わせ、検出コイルを複数個配置するので、1個の計測装置で複数の計測点の硬度を一括して計測することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理されたワークの表面近傍の硬度を計測する硬度計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面処理が施されたワークの表面近傍の硬度を非破壊で計測する技術が知られている(例えば、特許文献1(図2、図3)参照。)。
【0003】
特許文献1の技術を図面に基づいて以下に説明する。
図27(a)に示すように、計測装置200において、表面処理が施された円柱ワーク201に、励磁コイル202と検出コイル203を隣接して配置する。次に、励磁コイル202に交流電源204から交流電圧(励磁電圧)を印加する。すると、円柱ワーク201の表層に渦電流が発生する。この渦電流により検出コイル203に交流電流が発生する。この発生した交流電流の電圧(検出電圧)を測定手段205で計測する。励磁電圧と検出電圧との相関を(c)で説明する。
【0004】
(c)は横軸が時間軸で縦軸が電圧であるグラフであり、正弦波V1が励磁電圧曲線であるときに、検出電圧は正弦波V2で表される。正弦波V1と正弦波V2の位相差をΦと定義する。
(b)で、cosΦで表されるX値は浸炭深さと良好な相関関係があり、sinΦで表されるY値は表面硬さに良好な相関関係がある。
【0005】
浸炭深さや表面硬さが変化すると、Φの大きさやV2の高さが変化する。そこで、cosΦやsinΦを計測で求めることにより、そのときの浸炭深さや表面硬さを特定することができる。
【0006】
ところで、表面処理が施されているワークには様々な形状のものがあり、それぞれの形状に適した構造のセンサーで計測ができれば好都合である。例えば、歯車では表面近傍の硬度が重要であり、特に歯車の重要な局部である歯底の硬度を計測することが望ましい。歯車の形状に適した構造のセンサーで全歯底を一括して計測すればサイクルタイムも短縮できる。
しかしながら、特許文献1では、仮に4点を計測する場合、4組(4個)の計測装置200を準備する必要がある。すなわち、1個の計測装置で複数の計測点の硬度を同時に計測することができるワーク硬度計測装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−108873公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、1個の計測装置で複数の計測点の硬度を計測することができるワーク硬度計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、センサーは、ワークの周囲に配置され前記ワークを励磁する励磁コイルと、前記ワークの任意のポイントに発生する渦電流による磁界の変化を検出する検出コイルと、前記ワークの表面に臨むように配置され前記ワークの計測断面に対応した略同形状の構造を呈し前記励磁コイル及び検出コイルを支持するコイル支持治具と、からなり、前記コイル支持治具に前記検出コイルを複数個配置することで前記ワークの必要な計測部を計測することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、コイル支持治具は、ワークに接触する複数の突起部を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、ワークの計測断面は角部を有し、コイル支持治具は、角部に臨む曲面部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明では、ワークは軸であり、コイル支持治具は、軸の外径より大きい貫通穴を有し、この貫通穴の円周に複数の検出コイルが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明では、ワークは角柱であり、コイル支持治具は、角柱の外形に対応し且つ角柱の外形より大きい多角形貫通穴を有し、この多角形貫通穴の周囲に複数の検出コイルが設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、ワークの計測部が平面であり、コイル支持治具は、平面に臨む直線部材を有し、この直線部材に複数の検出コイルが設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明では、ワークは歯車であり、コイル支持治具は、歯車の歯底に臨む山部と、歯車の歯先に臨む谷部とを備えている歯車状貫通穴を有し、複数の山部に前記検出コイルが設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明では、歯車状貫通穴は、全ての山部に検出コイルが設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項9に係る発明では、ワークの計測断面は任意曲線を有し、コイル支持治具は、任意曲線に対応した任意曲線形状部を有し、この任意曲線形状部に複数の検出コイルが設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項10に係る発明では、計測部はワークに設けられている穴の内面であり、コイル支持治具は、穴に挿入可能な挿入部材を有し、この挿入部材の外周に複数の検出コイルが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明では、センサーは、ワークの周囲に配置されワークを励磁する励磁コイルと、ワークの任意のポイントに発生する渦電流による磁界の変化を検出する検出コイルと、ワークの計測断面に対応した略同形状の構造を呈し励磁コイル及び検出コイルを支持するコイル支持治具とからなる。歯車等のワークの形状に合わせ、検出コイルを複数個配置するので、1個の計測装置で複数の計測点の硬度を一括して計測することができる。
加えて、ワークの複数ポイントの磁界変化を、別個の検出コイルでそれぞれ検出するので、ワークの不具合部分を特定することができる。
また、センサーはワークに対して複数回セットしデータ収集すれば、計測時間はかかるものの、センサー費用を抑えることが可能である。好ましくは、ワークの計測断面全領域に対応する略同形状の構造を有するコイル支持治具である。この治具に必要数の検出コイルを設置すれば、一括全計測点計測が可能となり、計測工数を節約できる。
【0020】
請求項2に係る発明では、コイル支持治具は、ワークに接触する複数の突起部を備えている。センサーの要部が直接ワークに接触しないので、センサーの破損を防止することができる。
加えて、ワークとセンサーとの距離を一定に保つことで、安定して正確な計測データを取得することができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、ワークの計測断面は角部を有し、コイル支持治具は、角部に臨む曲面部が設けられている。角部を曲面部で受けるので、センサーの要部が直接ワークに接触せず、センサーの破損を防止することができる。
加えて、ワークとセンサーとの距離を一定に保つことで、安定した計測データを取得することができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、ワークは軸であり、コイル支持治具は、軸の外径より大きい貫通穴を有し、この貫通穴の円周に複数の検出コイルが設けられている。本発明によれば、軸であっても1個の計測装置で複数の計測点の硬度を一括して計測することができる。この結果、検査の効率を向上させることができる。
【0023】
請求項5に係る発明では、ワークは角柱であり、コイル支持治具は、角柱の外形に対応し且つ角柱の外形より大きい多角形貫通穴を有し、この多角形貫通穴の周囲に複数の検出コイルが設けられている。本発明によれば、角柱であっても1個の計測装置で複数の計測点の硬度を一括して計測することができる。この結果、検査の効率を向上させることができる。
【0024】
請求項6に係る発明では、ワークの計測部が平面であり、コイル支持治具は、平面に臨む直線部材を有し、この直線部材に複数の検出コイルが設けられている。本発明によれば、平面であっても1個の計測装置で複数の計測点の硬度を一括して計測することができる。この結果、検査の効率を向上させることができる。
【0025】
請求項7に係る発明では、ワークは歯車であり、コイル支持治具は、歯車の歯底に臨む山部と、歯車の歯先に臨む谷部とを備えている歯車状貫通穴を有し、複数の山部に前記検出コイルが設けられている。検出コイルが歯底に臨むので、歯底の測定をすることができる。
【0026】
請求項8に係る発明では、歯車状貫通穴は、全ての山部に検出コイルが設けられている。
本発明によれば、歯車であっても1個の計測装置で全歯底の硬度を一括して計測することができる。この結果、検査の効率を向上させることができる。
【0027】
請求項9に係る発明では、ワークの計測断面は任意曲線を有し、コイル支持治具は、任意曲線に対応した任意曲線形状部を有し、この任意曲線形状部に複数の検出コイルが設けられている。本発明によれば、任意曲線径上部であっても1個の計測装置で複数の計測点の硬度を一括して計測することができる。この結果、検査の効率を向上させることができる。
【0028】
請求項10に係る発明では、計測部はワークに設けられている穴の内面であり、コイル支持治具は、穴に挿入可能な挿入部材を有し、この挿入部材の外周に複数の検出コイルが設けられている。本発明によれば、穴の内面であっても1個の計測装置で複数の計測点の硬度を一括して計測することができる。この結果、検査の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るワーク硬度計測装置の構成図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】ショックアブソーバを説明する図である。
【図5】ワーク支持機構を説明する図である。
【図6】歯車とコイル支持治具の位置関係を説明する図である。
【図7】計測時の歯車とコイル支持治具の断面図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】ワークとしての軸の斜視図である。
【図10】軸用のコイル支持治具の斜視図である。
【図11】計測時の軸とコイル支持治具の斜視図である。
【図12】計測時の軸とコイル支持治具の断面図である。
【図13】図12の13−13線断面図である。
【図14】別実施例に係る計測時の軸とコイル支持治具の斜視図である。
【図15】別実施例に係る計測時の軸とコイル支持治具の断面図である。
【図16】角柱とコイル支持治具の斜視図である。
【図17】計測時の角柱とコイル支持治具の断面図である。
【図18】図17の18−18線断面図である。
【図19】平面を有するワークとコイル支持治具の斜視図である。
【図20】平面を有するワークとコイル支持治具の正面図である。
【図21】計測時の平面を有するワークとコイル支持治具の断面図である。
【図22】任意曲線を有するワークとコイル支持治具の斜視図である。
【図23】任意曲線を有するワークとコイル支持治具の正面図である。
【図24】計測時の任意曲線を有するワークとコイル支持治具の断面図である。
【図25】穴を有するワークとコイル支持治具の斜視図である。
【図26】計測時の穴を有するワークとコイル支持治具の断面図である。
【図27】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0031】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、ワーク硬度計測装置10は、床11と、この床11に絶縁ゴム12を介して支持されているベースプレート13と、このベースプレート13に設けられワーク14を鉛直線(鉛直線は、水平面に直交する線を指す。)廻りに回転する回転軸15を備えている回転機構16と、回転軸15に設けられワーク14を支持するワーク支持機構17と、このワーク支持機構17で支持されたワーク14に臨むように設けられワーク14の表面近傍の硬度を検出するセンサー18と、このセンサー18で検出された情報を取得して硬度に換算する硬度換算部21と、この換算された情報を表示記録する表示記録部22と、ベースプレート13にL字支持部材23を介して設けられセンサー18をワーク14に進退するセンサー進退機構24とからなる。
【0032】
図2に示されるように、ワーク14を鉛直線に沿って移動させる第1スライド機構25と、ワーク14をセンサー18に向かって移動させる第2スライド機構26とからなる2つのスライド機構を介して回転機構16がベースプレート13に設けられている。
【0033】
第1スライド機構25は、ベースプレート13に設けられている縦板27と、この縦板27に設けられている2本の縦レール28、28と、この縦レール28、28にスライド自在に設けられている縦スライダー29、29と、縦スライダ29、29ーに設けられている縦移動プレート31とからなる。
【0034】
第2スライド機構26は、縦移動プレート31に設けられている横板32と、この横板32に設けられている2本の横レール33、33と、この横レール33、33にスライド自在に設けられている横スライダー34、34と、これらの横スライダー34、34に設けられている横移動プレート35とからなる。
【0035】
図1に戻って、第2スライド機構26は、床11に上下方向の衝撃を吸収するショックアブソーバ36を介して設けられている。
また、センサー18とセンサー進退機構24との間に、鉛直線に直交する軸廻りに回転するセンサー回転機構41が介在している。センサー進退機構24の進退スライダー42に固定部材43が設けられ、この固定部材43にセンサー回転機構41が設けられている。
【0036】
また、符号44は、交流電源を示す。交流電源44で励磁コイル(詳細後述)を印加する。また、符号45は、回転機構16、ワーク支持機構17及びセンサー進退機構24を制御する制御部である。
【0037】
図2に戻って、第1スライド機構25の縦板27が固定されているベースプレート13に、上下方向に高さ表示用の目盛り46が設けられている。横板32に目盛り46を指し示す指示部材47が設けられている。
【0038】
第2スライダー26には、横移動プレート35の移動をロックする横ロックレバー48が設けられている。横移動プレート35にボルト49を介して、回転機構16が設けられている。
【0039】
図3に示されるように、第1スライド機構25には、縦板27に設けられている支持板51、51と、この支持板51、51の上端に設けられているハンドル支持部材52と、このハンドル支持部材52に回転自在に支持されているハンドル53と、このハンドル53に接続されている長ねじ54と、縦移動プレート31に設けられ長ねじ54に噛み合っているナット部55と、ハンドル53をロックするハンドルロックレバー56とが備えられている。
ハンドルロックレバー56を開くことで、ハンドル53を回し、縦移動プレート31を上下に移動させることができる。ハンドルロックレバー56を閉めることで、バンドル53をロックし、縦移動プレート31を固定することができる。
【0040】
図4に示されるように、ショックアブソーバ36は、横板32にボルト57、57を介して固定されている固定板58と、この固定板58の上部に設けられている揺動部材61と、この揺動部材61に接続されているロッド62と、ロッド62に接続されているピストン63と、このピストン63に設けられている穴64と、床11にボルト65を介して固定されピストン63を摺動自在に収納するシリンダ66と、このシリンダ66内のオイル67とからなる。
【0041】
なお、ショックアブソーバ36は、上述した構成に限定されず、圧縮ばねで支える構成等、第2スライド機構(図1、符号26)等を支えてワーク(図1、符号14)の上下移動を無理なく実施させるものであれば、他の構成であっても差し支えない。
【0042】
図5(a)に示されるように、ワークとしての歯車14は、貫通穴68を有している。ワーク支持機構17は、ハウジング71と、ハウジング71の内部に設けられているレール72、72と、これらのレール72、72にスライド自在に設けられ貫通穴68の周面を押すことで歯車14を支持する複数のクランプ爪73、73と、ハウジング71に設けられクランプ爪73、73をハウジング71の内側に付勢する圧縮ばね74、74と、クランプ爪73、73の内側に接し上昇することでクランプ爪73、73を押し開くコーン75と、このコーン75を昇降させる昇降シリンダ76とからなる。
【0043】
(b)は(a)のb−b線断面図であり、クランプ爪73は3個備えられている。3個のクランプ爪73により、歯車14を確実に支持することができる。
なお、クランプ爪73は、3個に限定せず、4個等、ワーク14に合わせて適切な数のクランプ爪73を設けても差し支えない。また、ワーク支持機構17は、上述の構成に限定されず、ワーク14の外側を押さえる形式等、ワーク14を支持できれば、他の一般的なクランプ機構でも差し支えない。
【0044】
図6に示されるように、ワーク14は、歯車である。
センサー18は、歯車14の周囲に配置され歯車14を励磁する励磁コイル77と、歯車14の任意のポイントに発生する渦電流による磁界の変化を検出する検出コイル78と、歯車14の表面に臨むように配置され歯車14の計測断面に対応した略同形状の構造を呈し励磁コイル77及び検出コイル78を支持するコイル支持治具81と、からなる。
【0045】
コイル支持治具81は、歯車14の歯底82に臨む山部83と、歯車14の歯先84に臨む谷部85とを備えている歯車状貫通穴86を有し、全ての山部83に検出コイル78が設けられている。コイル支持治具81に検出コイル78を複数個配置することで歯車14の必要な計測部全域を計測することができる。
【0046】
以上の述べたワーク硬度計測装置の作用を次に述べる。
図7に示されるように、想像線で示すセンサー18を矢印(1)、(1)のように前進させる。センサー18の検出コイル78、78は、歯車14の歯底82に臨む。励磁コイル77、77で歯車14を励磁し、歯底82、82に発生する渦電流による磁界の変化を検出コイル78、78で検出する。
【0047】
図8に示されるように、検出コイル78は絶縁性に富む楔形断面形状のコイル支治具81に支持されている。コイル支持治具81の山部83は、楔形断面形状であるため歯先84、84の間に入り込むことができ、検出コイル78を歯車14の歯底82に接近させることができる。また、歯車14の全歯底82に検出コイル78が臨んでいるので、一つの歯車14の全歯底82を一括して計測することができる。
【実施例2】
【0048】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図9に示されるように、ワーク14は、軸である。
軸14の外周87の硬度を計測する。
【0049】
図10に示されるように、コイル支持治具81は、軸(図9、符号14)の外形より大きい貫通穴88を有し、この貫通穴88の円周89に複数の検出コイル78が設けられている。
【0050】
図11に示されるように、軸14がセンサー18を貫通する状態で、計測が行われる。コイル支持治具81に励磁コイル77が設けられており、この励磁コイル77とコイル支持体81とを軸14が貫通している。
【0051】
以上の述べた実施例2に係るワーク硬度計測装置の作用を次に述べる。
図12に示されるように、想像線で示すセンサー18を矢印(2)、(2)のように前進させる。センサー18の検出コイル78、78は、軸14の外周87に臨む。励磁コイル77、77で軸14を励磁し、外周87に発生する渦電流による磁界の変化を検出コイル78、78で検出する。
【0052】
図13に示されるように、コイル支持治具81は、軸14に接触する複数の突起部91、91を備えている。この突起部91、91により、検出コイル78から外周87までの距離が一定に保たれ、安定した計測データを取得することができる。
【実施例3】
【0053】
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。
図14に示されるように、コイル支持治具81は、ワークとしての軸14を囲う状態にある。コイル支持治具81は、軸14に臨むように設けられている検出コイル78と、励磁コイル77とからなる。
なお、図面上は、検出コイル78が1個であるが、検出コイル78は複数設けてあっても差し支えない。
【0054】
以上の述べた実施例3に係るワーク硬度計測装置の作用を次に述べる。
図15に示されるように、想像線で示すセンサー18を矢印(3)、(3)のように前進させる。センサー18の検出コイル78、78は、軸14の外周87に臨む。励磁コイル77、77で軸14を励磁し、外周87に発生する渦電流による磁界の変化を検出コイル78、78で検出する。
【実施例4】
【0055】
次に、本発明の実施例4を図面に基づいて説明する。
図16に示されるように、ワーク14は、角柱である。コイル支持治具81は、角柱14の外形に対応し且つ角柱14の外形より大きい多角形貫通穴92を有し、この多角形貫通穴92の周囲に複数の検出コイル78、78が設けられている。
【0056】
以上の述べた実施例4に係るワーク硬度計測装置の作用を次に述べる。
図17に示されるように、想像線で示すセンサー18を矢印(4)、(4)のように前進させる。センサー18の検出コイル78、78は、角柱14臨む。励磁コイル77、77で角柱14を励磁し、角柱14に発生する渦電流による磁界の変化を検出コイル78、78で検出する。
【0057】
図18に示されるように、ワークとしての角柱14の計測断面は角部93を有し、コイル支持治具81は、角部93に臨む曲面部94が設けられている。この曲面部94により、検出コイル78から角柱14の表面までの距離が一定に保たれ、安定した計測データを取得することができる。
【実施例5】
【0058】
次に、本発明の実施例5を図面に基づいて説明する。
図19に示されるように、ワーク14の計測部は平面95であり、コイル支持治具81は、平面95に臨む直線部材96を有し、この直線部材96に複数の検出コイル78が設けられている。
【0059】
図20に示されるように、コイル支持治具81は、ワーク14の平面95に接触する複数の突起部91、91を備えている。この突起部91、91により、検出コイル78から平面95までの距離が一定に保たれ、安定した計測データを取得することができる。
【0060】
以上の述べた実施例5に係るワーク硬度計測装置の作用を次に述べる。
図21に示されるように、想像線で示すセンサー18を矢印(5)のように前進させる。センサー18の検出コイル78、78は、ワーク14の平面95に臨む。励磁コイル77、77でワーク14を励磁し、ワーク14の平面95に発生する渦電流による磁界の変化を検出コイル78、78で検出する。
【実施例6】
【0061】
次に、本発明の実施例6を図面に基づいて説明する。
図22に示されるように、ワーク14の計測部は任意曲線101を有し、コイル支持治具81は、任意曲線101に対応した任意曲線形状部102を有し、この任意曲線形状部102に複数の検出コイル78が設けられている。
【0062】
図23に示されるように、コイル支持治具81は、ワーク14の任意曲線101に接触する複数の突起部91、91を備えている。この突起部91、91により、検出コイル78から計測部である任意曲線101までの距離が一定に保たれ、安定した計測データを取得することができる。
【0063】
以上の述べた実施例6に係るワーク硬度計測装置の作用を次に述べる。
図24に示されるように、想像線で示すセンサー18を矢印(6)のように前進させる。センサー18の検出コイル78、78は、ワーク14の任意曲線101に臨む。励磁コイル77、77でワーク14を励磁し、ワーク14に発生する渦電流による磁界の変化を検出コイル78、78で検出する。
【実施例7】
【0064】
次に、本発明の実施例7を図面に基づいて説明する。
図25に示されるように、計測部はワーク14に設けられている穴103の内面104であり、コイル支持治具81は、穴103に挿入可能な挿入部材105を有し、この挿入部材105の外周106に複数の検出コイル78及び励磁コイル77が設けられている。
【0065】
以上の述べた実施例7に係るワーク硬度計測装置の作用を次に述べる。
図26に示されるように、想像線で示すセンサー18を矢印(7)のように前進させる。センサー18の検出コイル78、78は、ワーク14の内面104臨む。励磁コイル77、77でワーク14を励磁し、ワーク14の内面104に発生する渦電流による磁界の変化を検出コイル78、78で検出する。
【0066】
尚、本発明のワーク硬度計測装置は、実施の形態では歯車、軸、角柱、平面、任意曲線部及び穴の内面に適用したが、他の形状にも適用可能であり、表面処理が施された部材であれば、一般の機械部品に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のワーク硬度計測装置は、歯車に好適である。
【符号の説明】
【0068】
10…ワーク硬度計測装置、14…ワーク(歯車、軸、角柱、平面、任意曲線、穴の内面)、18…センサー、77…励磁コイル、78…検出コイル、81…コイル支持治具、82…歯底、83…山部、84…歯先、85…谷部、86…歯車状貫通穴、88…貫通穴、89…円周、91…突起部、92…多角形貫通穴、93…角部、94…曲面部、95…平面、96…直線部材、101…任意曲線、102…任意曲線形状部、103…穴、104…内面、105…挿入部材、106…外周。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理されたワークの表面近傍の硬度を計測する硬度計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面処理が施されたワークの表面近傍の硬度を非破壊で計測する技術が知られている(例えば、特許文献1(図2、図3)参照。)。
【0003】
特許文献1の技術を図面に基づいて以下に説明する。
図27(a)に示すように、計測装置200において、表面処理が施された円柱ワーク201に、励磁コイル202と検出コイル203を隣接して配置する。次に、励磁コイル202に交流電源204から交流電圧(励磁電圧)を印加する。すると、円柱ワーク201の表層に渦電流が発生する。この渦電流により検出コイル203に交流電流が発生する。この発生した交流電流の電圧(検出電圧)を測定手段205で計測する。励磁電圧と検出電圧との相関を(c)で説明する。
【0004】
(c)は横軸が時間軸で縦軸が電圧であるグラフであり、正弦波V1が励磁電圧曲線であるときに、検出電圧は正弦波V2で表される。正弦波V1と正弦波V2の位相差をΦと定義する。
(b)で、cosΦで表されるX値は浸炭深さと良好な相関関係があり、sinΦで表されるY値は表面硬さに良好な相関関係がある。
【0005】
浸炭深さや表面硬さが変化すると、Φの大きさやV2の高さが変化する。そこで、cosΦやsinΦを計測で求めることにより、そのときの浸炭深さや表面硬さを特定することができる。
【0006】
ところで、表面処理が施されているワークには様々な形状のものがあり、それぞれの形状に適した構造のセンサーで計測ができれば好都合である。例えば、歯車では表面近傍の硬度が重要であり、特に歯車の重要な局部である歯底の硬度を計測することが望ましい。歯車の形状に適した構造のセンサーで全歯底を一括して計測すればサイクルタイムも短縮できる。
しかしながら、特許文献1では、仮に4点を計測する場合、4組(4個)の計測装置200を準備する必要がある。すなわち、1個の計測装置で複数の計測点の硬度を同時に計測することができるワーク硬度計測装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−108873公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、1個の計測装置で複数の計測点の硬度を計測することができるワーク硬度計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、センサーは、ワークの周囲に配置され前記ワークを励磁する励磁コイルと、前記ワークの任意のポイントに発生する渦電流による磁界の変化を検出する検出コイルと、前記ワークの表面に臨むように配置され前記ワークの計測断面に対応した略同形状の構造を呈し前記励磁コイル及び検出コイルを支持するコイル支持治具と、からなり、前記コイル支持治具に前記検出コイルを複数個配置することで前記ワークの必要な計測部を計測することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、コイル支持治具は、ワークに接触する複数の突起部を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、ワークの計測断面は角部を有し、コイル支持治具は、角部に臨む曲面部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明では、ワークは軸であり、コイル支持治具は、軸の外径より大きい貫通穴を有し、この貫通穴の円周に複数の検出コイルが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明では、ワークは角柱であり、コイル支持治具は、角柱の外形に対応し且つ角柱の外形より大きい多角形貫通穴を有し、この多角形貫通穴の周囲に複数の検出コイルが設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、ワークの計測部が平面であり、コイル支持治具は、平面に臨む直線部材を有し、この直線部材に複数の検出コイルが設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明では、ワークは歯車であり、コイル支持治具は、歯車の歯底に臨む山部と、歯車の歯先に臨む谷部とを備えている歯車状貫通穴を有し、複数の山部に前記検出コイルが設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明では、歯車状貫通穴は、全ての山部に検出コイルが設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項9に係る発明では、ワークの計測断面は任意曲線を有し、コイル支持治具は、任意曲線に対応した任意曲線形状部を有し、この任意曲線形状部に複数の検出コイルが設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項10に係る発明では、計測部はワークに設けられている穴の内面であり、コイル支持治具は、穴に挿入可能な挿入部材を有し、この挿入部材の外周に複数の検出コイルが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明では、センサーは、ワークの周囲に配置されワークを励磁する励磁コイルと、ワークの任意のポイントに発生する渦電流による磁界の変化を検出する検出コイルと、ワークの計測断面に対応した略同形状の構造を呈し励磁コイル及び検出コイルを支持するコイル支持治具とからなる。歯車等のワークの形状に合わせ、検出コイルを複数個配置するので、1個の計測装置で複数の計測点の硬度を一括して計測することができる。
加えて、ワークの複数ポイントの磁界変化を、別個の検出コイルでそれぞれ検出するので、ワークの不具合部分を特定することができる。
また、センサーはワークに対して複数回セットしデータ収集すれば、計測時間はかかるものの、センサー費用を抑えることが可能である。好ましくは、ワークの計測断面全領域に対応する略同形状の構造を有するコイル支持治具である。この治具に必要数の検出コイルを設置すれば、一括全計測点計測が可能となり、計測工数を節約できる。
【0020】
請求項2に係る発明では、コイル支持治具は、ワークに接触する複数の突起部を備えている。センサーの要部が直接ワークに接触しないので、センサーの破損を防止することができる。
加えて、ワークとセンサーとの距離を一定に保つことで、安定して正確な計測データを取得することができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、ワークの計測断面は角部を有し、コイル支持治具は、角部に臨む曲面部が設けられている。角部を曲面部で受けるので、センサーの要部が直接ワークに接触せず、センサーの破損を防止することができる。
加えて、ワークとセンサーとの距離を一定に保つことで、安定した計測データを取得することができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、ワークは軸であり、コイル支持治具は、軸の外径より大きい貫通穴を有し、この貫通穴の円周に複数の検出コイルが設けられている。本発明によれば、軸であっても1個の計測装置で複数の計測点の硬度を一括して計測することができる。この結果、検査の効率を向上させることができる。
【0023】
請求項5に係る発明では、ワークは角柱であり、コイル支持治具は、角柱の外形に対応し且つ角柱の外形より大きい多角形貫通穴を有し、この多角形貫通穴の周囲に複数の検出コイルが設けられている。本発明によれば、角柱であっても1個の計測装置で複数の計測点の硬度を一括して計測することができる。この結果、検査の効率を向上させることができる。
【0024】
請求項6に係る発明では、ワークの計測部が平面であり、コイル支持治具は、平面に臨む直線部材を有し、この直線部材に複数の検出コイルが設けられている。本発明によれば、平面であっても1個の計測装置で複数の計測点の硬度を一括して計測することができる。この結果、検査の効率を向上させることができる。
【0025】
請求項7に係る発明では、ワークは歯車であり、コイル支持治具は、歯車の歯底に臨む山部と、歯車の歯先に臨む谷部とを備えている歯車状貫通穴を有し、複数の山部に前記検出コイルが設けられている。検出コイルが歯底に臨むので、歯底の測定をすることができる。
【0026】
請求項8に係る発明では、歯車状貫通穴は、全ての山部に検出コイルが設けられている。
本発明によれば、歯車であっても1個の計測装置で全歯底の硬度を一括して計測することができる。この結果、検査の効率を向上させることができる。
【0027】
請求項9に係る発明では、ワークの計測断面は任意曲線を有し、コイル支持治具は、任意曲線に対応した任意曲線形状部を有し、この任意曲線形状部に複数の検出コイルが設けられている。本発明によれば、任意曲線径上部であっても1個の計測装置で複数の計測点の硬度を一括して計測することができる。この結果、検査の効率を向上させることができる。
【0028】
請求項10に係る発明では、計測部はワークに設けられている穴の内面であり、コイル支持治具は、穴に挿入可能な挿入部材を有し、この挿入部材の外周に複数の検出コイルが設けられている。本発明によれば、穴の内面であっても1個の計測装置で複数の計測点の硬度を一括して計測することができる。この結果、検査の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るワーク硬度計測装置の構成図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】ショックアブソーバを説明する図である。
【図5】ワーク支持機構を説明する図である。
【図6】歯車とコイル支持治具の位置関係を説明する図である。
【図7】計測時の歯車とコイル支持治具の断面図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】ワークとしての軸の斜視図である。
【図10】軸用のコイル支持治具の斜視図である。
【図11】計測時の軸とコイル支持治具の斜視図である。
【図12】計測時の軸とコイル支持治具の断面図である。
【図13】図12の13−13線断面図である。
【図14】別実施例に係る計測時の軸とコイル支持治具の斜視図である。
【図15】別実施例に係る計測時の軸とコイル支持治具の断面図である。
【図16】角柱とコイル支持治具の斜視図である。
【図17】計測時の角柱とコイル支持治具の断面図である。
【図18】図17の18−18線断面図である。
【図19】平面を有するワークとコイル支持治具の斜視図である。
【図20】平面を有するワークとコイル支持治具の正面図である。
【図21】計測時の平面を有するワークとコイル支持治具の断面図である。
【図22】任意曲線を有するワークとコイル支持治具の斜視図である。
【図23】任意曲線を有するワークとコイル支持治具の正面図である。
【図24】計測時の任意曲線を有するワークとコイル支持治具の断面図である。
【図25】穴を有するワークとコイル支持治具の斜視図である。
【図26】計測時の穴を有するワークとコイル支持治具の断面図である。
【図27】従来の技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0031】
先ず、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、ワーク硬度計測装置10は、床11と、この床11に絶縁ゴム12を介して支持されているベースプレート13と、このベースプレート13に設けられワーク14を鉛直線(鉛直線は、水平面に直交する線を指す。)廻りに回転する回転軸15を備えている回転機構16と、回転軸15に設けられワーク14を支持するワーク支持機構17と、このワーク支持機構17で支持されたワーク14に臨むように設けられワーク14の表面近傍の硬度を検出するセンサー18と、このセンサー18で検出された情報を取得して硬度に換算する硬度換算部21と、この換算された情報を表示記録する表示記録部22と、ベースプレート13にL字支持部材23を介して設けられセンサー18をワーク14に進退するセンサー進退機構24とからなる。
【0032】
図2に示されるように、ワーク14を鉛直線に沿って移動させる第1スライド機構25と、ワーク14をセンサー18に向かって移動させる第2スライド機構26とからなる2つのスライド機構を介して回転機構16がベースプレート13に設けられている。
【0033】
第1スライド機構25は、ベースプレート13に設けられている縦板27と、この縦板27に設けられている2本の縦レール28、28と、この縦レール28、28にスライド自在に設けられている縦スライダー29、29と、縦スライダ29、29ーに設けられている縦移動プレート31とからなる。
【0034】
第2スライド機構26は、縦移動プレート31に設けられている横板32と、この横板32に設けられている2本の横レール33、33と、この横レール33、33にスライド自在に設けられている横スライダー34、34と、これらの横スライダー34、34に設けられている横移動プレート35とからなる。
【0035】
図1に戻って、第2スライド機構26は、床11に上下方向の衝撃を吸収するショックアブソーバ36を介して設けられている。
また、センサー18とセンサー進退機構24との間に、鉛直線に直交する軸廻りに回転するセンサー回転機構41が介在している。センサー進退機構24の進退スライダー42に固定部材43が設けられ、この固定部材43にセンサー回転機構41が設けられている。
【0036】
また、符号44は、交流電源を示す。交流電源44で励磁コイル(詳細後述)を印加する。また、符号45は、回転機構16、ワーク支持機構17及びセンサー進退機構24を制御する制御部である。
【0037】
図2に戻って、第1スライド機構25の縦板27が固定されているベースプレート13に、上下方向に高さ表示用の目盛り46が設けられている。横板32に目盛り46を指し示す指示部材47が設けられている。
【0038】
第2スライダー26には、横移動プレート35の移動をロックする横ロックレバー48が設けられている。横移動プレート35にボルト49を介して、回転機構16が設けられている。
【0039】
図3に示されるように、第1スライド機構25には、縦板27に設けられている支持板51、51と、この支持板51、51の上端に設けられているハンドル支持部材52と、このハンドル支持部材52に回転自在に支持されているハンドル53と、このハンドル53に接続されている長ねじ54と、縦移動プレート31に設けられ長ねじ54に噛み合っているナット部55と、ハンドル53をロックするハンドルロックレバー56とが備えられている。
ハンドルロックレバー56を開くことで、ハンドル53を回し、縦移動プレート31を上下に移動させることができる。ハンドルロックレバー56を閉めることで、バンドル53をロックし、縦移動プレート31を固定することができる。
【0040】
図4に示されるように、ショックアブソーバ36は、横板32にボルト57、57を介して固定されている固定板58と、この固定板58の上部に設けられている揺動部材61と、この揺動部材61に接続されているロッド62と、ロッド62に接続されているピストン63と、このピストン63に設けられている穴64と、床11にボルト65を介して固定されピストン63を摺動自在に収納するシリンダ66と、このシリンダ66内のオイル67とからなる。
【0041】
なお、ショックアブソーバ36は、上述した構成に限定されず、圧縮ばねで支える構成等、第2スライド機構(図1、符号26)等を支えてワーク(図1、符号14)の上下移動を無理なく実施させるものであれば、他の構成であっても差し支えない。
【0042】
図5(a)に示されるように、ワークとしての歯車14は、貫通穴68を有している。ワーク支持機構17は、ハウジング71と、ハウジング71の内部に設けられているレール72、72と、これらのレール72、72にスライド自在に設けられ貫通穴68の周面を押すことで歯車14を支持する複数のクランプ爪73、73と、ハウジング71に設けられクランプ爪73、73をハウジング71の内側に付勢する圧縮ばね74、74と、クランプ爪73、73の内側に接し上昇することでクランプ爪73、73を押し開くコーン75と、このコーン75を昇降させる昇降シリンダ76とからなる。
【0043】
(b)は(a)のb−b線断面図であり、クランプ爪73は3個備えられている。3個のクランプ爪73により、歯車14を確実に支持することができる。
なお、クランプ爪73は、3個に限定せず、4個等、ワーク14に合わせて適切な数のクランプ爪73を設けても差し支えない。また、ワーク支持機構17は、上述の構成に限定されず、ワーク14の外側を押さえる形式等、ワーク14を支持できれば、他の一般的なクランプ機構でも差し支えない。
【0044】
図6に示されるように、ワーク14は、歯車である。
センサー18は、歯車14の周囲に配置され歯車14を励磁する励磁コイル77と、歯車14の任意のポイントに発生する渦電流による磁界の変化を検出する検出コイル78と、歯車14の表面に臨むように配置され歯車14の計測断面に対応した略同形状の構造を呈し励磁コイル77及び検出コイル78を支持するコイル支持治具81と、からなる。
【0045】
コイル支持治具81は、歯車14の歯底82に臨む山部83と、歯車14の歯先84に臨む谷部85とを備えている歯車状貫通穴86を有し、全ての山部83に検出コイル78が設けられている。コイル支持治具81に検出コイル78を複数個配置することで歯車14の必要な計測部全域を計測することができる。
【0046】
以上の述べたワーク硬度計測装置の作用を次に述べる。
図7に示されるように、想像線で示すセンサー18を矢印(1)、(1)のように前進させる。センサー18の検出コイル78、78は、歯車14の歯底82に臨む。励磁コイル77、77で歯車14を励磁し、歯底82、82に発生する渦電流による磁界の変化を検出コイル78、78で検出する。
【0047】
図8に示されるように、検出コイル78は絶縁性に富む楔形断面形状のコイル支治具81に支持されている。コイル支持治具81の山部83は、楔形断面形状であるため歯先84、84の間に入り込むことができ、検出コイル78を歯車14の歯底82に接近させることができる。また、歯車14の全歯底82に検出コイル78が臨んでいるので、一つの歯車14の全歯底82を一括して計測することができる。
【実施例2】
【0048】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図9に示されるように、ワーク14は、軸である。
軸14の外周87の硬度を計測する。
【0049】
図10に示されるように、コイル支持治具81は、軸(図9、符号14)の外形より大きい貫通穴88を有し、この貫通穴88の円周89に複数の検出コイル78が設けられている。
【0050】
図11に示されるように、軸14がセンサー18を貫通する状態で、計測が行われる。コイル支持治具81に励磁コイル77が設けられており、この励磁コイル77とコイル支持体81とを軸14が貫通している。
【0051】
以上の述べた実施例2に係るワーク硬度計測装置の作用を次に述べる。
図12に示されるように、想像線で示すセンサー18を矢印(2)、(2)のように前進させる。センサー18の検出コイル78、78は、軸14の外周87に臨む。励磁コイル77、77で軸14を励磁し、外周87に発生する渦電流による磁界の変化を検出コイル78、78で検出する。
【0052】
図13に示されるように、コイル支持治具81は、軸14に接触する複数の突起部91、91を備えている。この突起部91、91により、検出コイル78から外周87までの距離が一定に保たれ、安定した計測データを取得することができる。
【実施例3】
【0053】
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。
図14に示されるように、コイル支持治具81は、ワークとしての軸14を囲う状態にある。コイル支持治具81は、軸14に臨むように設けられている検出コイル78と、励磁コイル77とからなる。
なお、図面上は、検出コイル78が1個であるが、検出コイル78は複数設けてあっても差し支えない。
【0054】
以上の述べた実施例3に係るワーク硬度計測装置の作用を次に述べる。
図15に示されるように、想像線で示すセンサー18を矢印(3)、(3)のように前進させる。センサー18の検出コイル78、78は、軸14の外周87に臨む。励磁コイル77、77で軸14を励磁し、外周87に発生する渦電流による磁界の変化を検出コイル78、78で検出する。
【実施例4】
【0055】
次に、本発明の実施例4を図面に基づいて説明する。
図16に示されるように、ワーク14は、角柱である。コイル支持治具81は、角柱14の外形に対応し且つ角柱14の外形より大きい多角形貫通穴92を有し、この多角形貫通穴92の周囲に複数の検出コイル78、78が設けられている。
【0056】
以上の述べた実施例4に係るワーク硬度計測装置の作用を次に述べる。
図17に示されるように、想像線で示すセンサー18を矢印(4)、(4)のように前進させる。センサー18の検出コイル78、78は、角柱14臨む。励磁コイル77、77で角柱14を励磁し、角柱14に発生する渦電流による磁界の変化を検出コイル78、78で検出する。
【0057】
図18に示されるように、ワークとしての角柱14の計測断面は角部93を有し、コイル支持治具81は、角部93に臨む曲面部94が設けられている。この曲面部94により、検出コイル78から角柱14の表面までの距離が一定に保たれ、安定した計測データを取得することができる。
【実施例5】
【0058】
次に、本発明の実施例5を図面に基づいて説明する。
図19に示されるように、ワーク14の計測部は平面95であり、コイル支持治具81は、平面95に臨む直線部材96を有し、この直線部材96に複数の検出コイル78が設けられている。
【0059】
図20に示されるように、コイル支持治具81は、ワーク14の平面95に接触する複数の突起部91、91を備えている。この突起部91、91により、検出コイル78から平面95までの距離が一定に保たれ、安定した計測データを取得することができる。
【0060】
以上の述べた実施例5に係るワーク硬度計測装置の作用を次に述べる。
図21に示されるように、想像線で示すセンサー18を矢印(5)のように前進させる。センサー18の検出コイル78、78は、ワーク14の平面95に臨む。励磁コイル77、77でワーク14を励磁し、ワーク14の平面95に発生する渦電流による磁界の変化を検出コイル78、78で検出する。
【実施例6】
【0061】
次に、本発明の実施例6を図面に基づいて説明する。
図22に示されるように、ワーク14の計測部は任意曲線101を有し、コイル支持治具81は、任意曲線101に対応した任意曲線形状部102を有し、この任意曲線形状部102に複数の検出コイル78が設けられている。
【0062】
図23に示されるように、コイル支持治具81は、ワーク14の任意曲線101に接触する複数の突起部91、91を備えている。この突起部91、91により、検出コイル78から計測部である任意曲線101までの距離が一定に保たれ、安定した計測データを取得することができる。
【0063】
以上の述べた実施例6に係るワーク硬度計測装置の作用を次に述べる。
図24に示されるように、想像線で示すセンサー18を矢印(6)のように前進させる。センサー18の検出コイル78、78は、ワーク14の任意曲線101に臨む。励磁コイル77、77でワーク14を励磁し、ワーク14に発生する渦電流による磁界の変化を検出コイル78、78で検出する。
【実施例7】
【0064】
次に、本発明の実施例7を図面に基づいて説明する。
図25に示されるように、計測部はワーク14に設けられている穴103の内面104であり、コイル支持治具81は、穴103に挿入可能な挿入部材105を有し、この挿入部材105の外周106に複数の検出コイル78及び励磁コイル77が設けられている。
【0065】
以上の述べた実施例7に係るワーク硬度計測装置の作用を次に述べる。
図26に示されるように、想像線で示すセンサー18を矢印(7)のように前進させる。センサー18の検出コイル78、78は、ワーク14の内面104臨む。励磁コイル77、77でワーク14を励磁し、ワーク14の内面104に発生する渦電流による磁界の変化を検出コイル78、78で検出する。
【0066】
尚、本発明のワーク硬度計測装置は、実施の形態では歯車、軸、角柱、平面、任意曲線部及び穴の内面に適用したが、他の形状にも適用可能であり、表面処理が施された部材であれば、一般の機械部品に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のワーク硬度計測装置は、歯車に好適である。
【符号の説明】
【0068】
10…ワーク硬度計測装置、14…ワーク(歯車、軸、角柱、平面、任意曲線、穴の内面)、18…センサー、77…励磁コイル、78…検出コイル、81…コイル支持治具、82…歯底、83…山部、84…歯先、85…谷部、86…歯車状貫通穴、88…貫通穴、89…円周、91…突起部、92…多角形貫通穴、93…角部、94…曲面部、95…平面、96…直線部材、101…任意曲線、102…任意曲線形状部、103…穴、104…内面、105…挿入部材、106…外周。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサーは、ワークの周囲に配置され前記ワークを励磁する励磁コイルと、
前記ワークの任意のポイントに発生する渦電流による磁界の変化を検出する検出コイルと、
前記ワークの表面に臨むように配置され前記ワークの計測断面に対応した略同形状の構造を呈し前記励磁コイル及び検出コイルを支持するコイル支持治具と、からなり、
前記コイル支持治具に前記検出コイルを複数個配置することで前記ワークの必要な計測部を計測することを特徴とするワーク硬度計測装置。
【請求項2】
前記コイル支持治具は、前記ワークに接触する複数の突起部を備えていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度計測装置。
【請求項3】
前記ワークの計測断面は角部を有し、前記コイル支持治具は、前記角部に臨む曲面部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度計測装置。
【請求項4】
前記ワークは軸であり、前記コイル支持治具は、前記軸の外径より大きい貫通穴を有し、この貫通穴の円周に複数の前記検出コイルが設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度計測装置。
【請求項5】
前記ワークは角柱であり、前記コイル支持治具は、前記角柱の外形に対応し且つ前記角柱の外形より大きい多角形貫通穴を有し、この多角形貫通穴の周囲に複数の前記検出コイルが設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度計測装置。
【請求項6】
前記ワークの計測部が平面であり、前記コイル支持治具は、前記平面に臨む直線部材を有し、この直線部材に複数の前記検出コイルが設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度計測装置。
【請求項7】
前記ワークは歯車であり、前記コイル支持治具は、前記歯車の歯底に臨む山部と、前記歯車の歯先に臨む谷部とを備えている歯車状貫通穴を有し、複数の前記山部に前記検出コイルが設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度装置。
【請求項8】
前記歯車状貫通穴は、全ての山部に前記検出コイルが設けられていることを特徴とする請求項7記載のワーク硬度計測装置。
【請求項9】
前記ワークの計測断面は任意曲線を有し、前記コイル支持治具は、前記任意曲線に対応した任意曲線形状部を有し、この任意曲線形状部に複数の前記検出コイルが設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度計測装置。
【請求項10】
計測部は前記ワークに設けられている穴の内面であり、前記コイル支持治具は、前記穴に挿入可能な挿入部材を有し、この挿入部材の外周に複数の前記検出コイルが設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度計測装置。
【請求項1】
センサーは、ワークの周囲に配置され前記ワークを励磁する励磁コイルと、
前記ワークの任意のポイントに発生する渦電流による磁界の変化を検出する検出コイルと、
前記ワークの表面に臨むように配置され前記ワークの計測断面に対応した略同形状の構造を呈し前記励磁コイル及び検出コイルを支持するコイル支持治具と、からなり、
前記コイル支持治具に前記検出コイルを複数個配置することで前記ワークの必要な計測部を計測することを特徴とするワーク硬度計測装置。
【請求項2】
前記コイル支持治具は、前記ワークに接触する複数の突起部を備えていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度計測装置。
【請求項3】
前記ワークの計測断面は角部を有し、前記コイル支持治具は、前記角部に臨む曲面部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度計測装置。
【請求項4】
前記ワークは軸であり、前記コイル支持治具は、前記軸の外径より大きい貫通穴を有し、この貫通穴の円周に複数の前記検出コイルが設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度計測装置。
【請求項5】
前記ワークは角柱であり、前記コイル支持治具は、前記角柱の外形に対応し且つ前記角柱の外形より大きい多角形貫通穴を有し、この多角形貫通穴の周囲に複数の前記検出コイルが設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度計測装置。
【請求項6】
前記ワークの計測部が平面であり、前記コイル支持治具は、前記平面に臨む直線部材を有し、この直線部材に複数の前記検出コイルが設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度計測装置。
【請求項7】
前記ワークは歯車であり、前記コイル支持治具は、前記歯車の歯底に臨む山部と、前記歯車の歯先に臨む谷部とを備えている歯車状貫通穴を有し、複数の前記山部に前記検出コイルが設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度装置。
【請求項8】
前記歯車状貫通穴は、全ての山部に前記検出コイルが設けられていることを特徴とする請求項7記載のワーク硬度計測装置。
【請求項9】
前記ワークの計測断面は任意曲線を有し、前記コイル支持治具は、前記任意曲線に対応した任意曲線形状部を有し、この任意曲線形状部に複数の前記検出コイルが設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度計測装置。
【請求項10】
計測部は前記ワークに設けられている穴の内面であり、前記コイル支持治具は、前記穴に挿入可能な挿入部材を有し、この挿入部材の外周に複数の前記検出コイルが設けられていることを特徴とする請求項1記載のワーク硬度計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2010−230350(P2010−230350A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75653(P2009−75653)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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