説明

一体構造のアルミニウム合金ターゲットとそれを製造する方法

アルミニウムまたはアルミニウム合金スパッターターゲットと当該ターゲットを製造する方法を提供する。純アルミニウムまたはアルミニウム合金を機械的に加工して円形ブランクとしてから、当該ブランクに再結晶熱処理を加えて、必要な結晶粒径と結晶集合組織とを実現する。この熱処理ステップ後に当該ブランクに10〜50%の追加ひずみを与えて、機械的強度を増大させる。さらに、当該ターゲットのフランジ領域においては、ひずみは他のターゲット領域におけるよりも大きく、当該フランジ領域に約20〜60%の割合のひずみが与えられる。次に、当該ブランクを仕上げ加工して、必要な結晶集合組織と十分な機械的強度とを有するスパッタリングターゲットとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第61/205,675号(2009年1月22日出願)の優先利点を主張するものである。
【0002】
本発明は、Al合金スパッタリングターゲットおよびそれを製造する方法に関する。より詳しくは、本発明は、機械的強度と集合組織との必要な組合せを有する一体構造のAl合金スパッタリングターゲットとこれらのターゲットを製造する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
高純度アルミニウム合金スパッタリングターゲットは、半導体産業において広く使用されている。アルミニウム合金ターゲットブランクは、必要な結晶粒径と集合組織とを与えるために、一般に機械的加工と仕上げ再結晶熱処理とによって製造される。再結晶熱処理によりアルミニウム合金の機械的強度が相当に低下するために、そのようにして製造されるアルミニウム合金ブランクは通常ずっと強度の大きな市販のアルミニウム合金の支持板に接合される。しかし、場合によっては、製造が簡単で、剥離の問題がなく、リサイクル性が高まるため、一体構造のアルミニウム合金ターゲットのほうが望ましい。スパッタリング時のターゲットの湾曲を小さくし、機械的信頼性を高めるために、一体構造のアルミニウム合金ターゲットは、必要な金属組織特性のほかに十分な機械的強度を有する必要がある。いろいろな製造技術、たとえば等溝傾斜押出し(equal channel angular extrusion)(米国特許第7,017,382号)および低温(cryogenic)圧延(米国特許第6,942,763号)が、機械的強度の改善されたアルミニウム合金ターゲットを製造するのに使用されている。“一体構造”という言葉は、独立または取り付け支持板構造物のない単要素ターゲット単品を意味するものとする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術にはある種の制限がある。等溝傾斜押出し法は、複雑で高価なダイが必要であり、通常は長方形の板が製造され、したがって経済的に円形スパッタリングターゲットを製造することができない。低温圧延は、面倒な液体窒素の準備が必要であり、これは健康または安全の問題を生じうる。さらに、どちらの方法もエネルギーおよび労働集約的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の代表的な一つの側面においては、一体構造のアルミニウムまたはアルミニウム合金ターゲットを製造する方法が提供される。この方法は、アルミニウム加工物を機械的に加工して必要な寸法の円形ブランクを製造するステップを含む。次に、このブランクを熱処理して、再結晶させ、必要な結晶粒径と結晶集合組織とを得る。熱処理後に熱処理済みブランクを機械的に冷間加工して10〜50%の追加ひずみを与える。もう一つの代表的実施例においては、ターゲットのフランジ領域に20〜60%のひずみを与える。すなわち、この実施例においては、フランジ領域に、ターゲットのスパッター領域部分に与えられるひずみよりも大きなひずみが与えられる。次に、このブランクは、機械加工その他によって仕上げ加工して、必要な結晶集合組織と十分な機械的強度とを有する必要な寸法と形状のスパッタリングターゲットとする。
【0006】
もう一つの代表的実施例においては、熱処理ステップに先立つ機械的加工が冷間加工によってなされる。もう一つの実施形態においては、熱処理ステップ後にターゲットブランクに与えられるひずみは、再結晶温度よりも低い温度でなされる圧延ステップによって生じる。さらに、フランジ領域におけるひずみの生成において、一つの代表的実施例の場合、このひずみは再結晶温度よりも低い温度でブランクをプレス加工することによって与えることができる。
【0007】
もう一つの代表的実施形態においては、熱処理後にブランクに10〜50%の追加ひずみを与えるステップとフランジ領域にさらに20〜60%のひずみを生成するステップとが、両方とも、再結晶温度よりも低い温度でブランクをプレス加工することによって実施される。一つの実施例においては、ブランクが非対称ダイによってプレス加工される。もう一つの実施例においては、熱処理後にブランクに10〜50%のひずみを与えるステップとフランジ領域にさらに20〜60%のひずみを生成させる方法ステップとが、再結晶温度よりも低い温度で、片側が閉じられたダイによってなされる圧延ステップによって実施される。
【0008】
純アルミニウムを使用することができ、あるいはアルミニウムに、銅、シリコン、チタン、ゲルマニウム、タングステン、銀、鉄、バナジウムおよびニッケルから選択される一つ以上の合金元素を添加することができる。存在する合金元素の総量は約10%以下である。
【0009】
本発明のもう一つの側面においては、平板状の一体構造アルミニウムまたはアルミニウム合金スパッターターゲットが提供される。当該ターゲットは、第一の降伏強さを有するスパッター領域と、当該第一の降伏強さよりも大きな第二の降伏強さを有するフランジ領域とを有する。もう一つの実施例においては、ターゲットのスパッタリング領域の当該降伏強さが少なくとも1,050Kg/cm2(15 ksi)であり、フランジ領域の当該降伏強さが少なくとも1,400Kg/cm2(20 ksi)である。一つの実施例においては、スパッターターゲットのスパッタリング領域は、少なくとも約30%の(200)に近い方位を有し、いくつかの実施例においては、このターゲットは、スパッタリング領域における平均結晶粒径が100μmよりも小さく、少なくとも20 vol%のスパッタリング領域が5μmよりも小さな結晶粒径を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付の図面を参照しつつ、さらに詳しく説明する。
【0011】
本発明の代表的実施例においては、AlまたはAl合金ビレットを室温で必要な高さまでプレスする。得られるビレットを、次に、室温で圧延して、たとえば必要な直径と厚さとを有するターゲットブランクとすることができる。次に、このブランクの再結晶熱処理を行ってから、室温に急冷することができる。このようにして再結晶したブランクを、たとえばクロスローリングにより機械的冷間加工することができる。もう一つの代表的実施例においては、冷間加工したブランクを、次に、たとえば非対称形のダイによるプレス加工によってさらに冷間加工し、ニアネットシェイプターゲットとすることができる。この非対称形ダイとプレス加工ステップは、協働して、ターゲットスパッタリング領域となるニアネットシェイプターゲットの第一の領域にひずみを与える。さらに、ダイの形状によって、ターゲットのフランジ部分として作用するニアネットシェイプターゲットの第二の領域により大きなひずみが与えられる。このフランジ部分は、たとえばボルトその他の機械的固定具によるスパッタリングチャンバーまたは装置への取り付けに適している。第二の領域すなわちフランジ領域の応力は、ニアネットシェイプターゲットの第一の領域に与えられる応力よりも大きい。一般に、第一の領域のひずみ(すなわち、%冷間加工)は、約10〜50%(熱処理ブランクのもとの厚さに対して)であり、第二の領域(すなわち、ターゲットのフランジ領域)に与えられるひずみは、第一の領域のひずみよりも大きく、約20〜60%の範囲にある。
【0012】
以上のように処理された二アネットシェイプターゲットブランクは、機械加工して、適当な寸法のスパッターターゲットとすることができる。
【0013】
以下、本発明を特定実施例にもとづいて説明する。これらの例は、単に説明のためだけのものであり、本発明の限定を意図するものではない。
【実施例1】
【0014】
直径13.3cm(5.25インチ)、高さ34.16cm(13.45)インチの円柱形Al0.2%Si0.5%Cuビレットを、室温でプレス加工して、高さ11.4cm(4.5インチ)とした。得られたビレットを室温で圧延して、直径〜36.1cm(〜14.2インチ)、厚さ4.6cm(1.8インチ)の円形ブランクとした。このブランクを315.6℃(600゜F)で2時間熱処理して、室温に水焼入れし、室温でクロスローリングして、直径〜41.9cm(〜16.5インチ)、厚さ〜2.92cm(〜1.15インチ)のブランクとした。次に、このブランクを非対称形鋼ダイでプレスして、図1に示すようなニアネットシェイプターゲットブランクとした。次に、このブランクを機械加工してスパッタリングターゲットとした。図に示すように、スパッターターゲット2は、スパッタリング部分4と背面部分6とからなり、背面部分6は、通常の作業における熱交換関係のために冷却液体に隣接配置するのに適している。フランジ部分8は、部分6の周縁の周りに環状に備えられ、ターゲット2をスパッタリングチャンバーの結合部分に取りつけるための取り付け具として働く。ターゲットの機械的強度、微視組織および結晶集合組織を調べた。結果を図2〜4に示す。ターゲットの降伏強さ(>1,190Kg/cm2(>17 ksi))は、通常の完全熱処理ターゲット材料のそれ(通常<700Kg/cm2(<10 ksi))よりも相当に大きい。この例で製造したAl0.2%Si0.5%Cuターゲットを受注先の現場で1,000 kWhでスパッターしたところ、スパッタリング性能は十分であった。このスパッターされたターゲットは、高強度Al合金支持板に接合された通常の再結晶Al0.2%Si0.5%Cuターゲットと同じ無光沢の外観を示した。また、本発明のターゲットのずっと大きな降伏強さのため、スパッターされたターゲットの湾曲(たわみ)は背面でわずか0.046cm(0.018インチ)であった。
【0015】
図2は、図1のターゲットの半分の模式断面図である。一体構造ターゲットの位置10〜18で降伏強さを測定した。下記の表は、これらの位置とKg/cm2(およびksi)単位の降伏強さとを示す。
【表1】

【0016】
図3は、ターゲットの半分の断面を示す、図2と同様の模式図である。位置20〜32で平均粒径を測定した。下記の表は、これらの位置と平均粒径とを示す。
【表2】

【0017】
実施例1のターゲットの集合組織を図4に示す。これからわかるように、このターゲットは、平均約35%の優勢な(200)集合組織を有している。この図および図7と11においても、参照記号の意味は次のとおりである。IS=内側表面、IH=内側半分の深さ、IQ=内側1/4の深さ、OS=外側表面、OH=外側半分の深さ、OQ=外側1/4の深さ。
【実施例2】
【0018】
直径13.3cm(5.25インチ)、高さ31.0cm(12.2インチ)の円柱形Al0.5%Cuビレットを、室温で据え込み鍛造し、315.6℃(600°F)で4時間熱処理してから、室温に水焼入れした。次に、このビレットを室温でプレス加工して、高さ10.2cm(4インチ)とした。得られたビレットを室温で圧延して、直径〜36.8cm(〜14.5インチ)、厚さ4.19cm(1.65インチ)の円形ブランクとした。このブランクを、287.8℃(550°F)で、2時間熱処理して、室温に水焼入れし、鋼ダイで“非対称”プレス加工して、図1に示すものと同様のニアネットシェイプターゲットブランクとした。次に、このブランクを機械加工してスパッタリングターゲットとした。このターゲットの機械的強度、微視組織および結晶集合組織を調べた。結果を図5〜7に示す。
【0019】
図5は、図2に示すものと同様の模式図である。実施例2のターゲットのいろいろな位置で測定した降伏強さを下記の表に示す。
【表3】

【0020】
図6は、図3に示すものと同様の模式図であり、平均粒径を測定したターゲット全体のいろいろな位置を示す。
【表4】

【0021】
図7は、ターゲットのいろいろな位置における集合組織を示すグラフである。この場合、(220)集合組織が優勢であり、平均で40%よりも大きな量をしめている。(200)集合組織は約30%の量(たとえば、約26%)だけ存在している。ここで製造した二つの一体構造Al0.5%Cuターゲットと、接合Al0.5%Cuターゲット(すなわち、高強度Al6061-T6合金に接合した、通常のように圧延して熱処理した高純度Al0.5%Cu)に、ターゲット側を真空にし、背面にガス圧を与えて、加圧した。各圧力増大後、ターゲットを取り外し、背面の中心における湾曲(たわみ)を測定した。図8に示すように、一体構造ターゲットの中心湾曲(たわみ)は、接合ターゲットのそれよりも小さい。
【実施例3】
【0022】
直径13.3cm(5.25インチ)で、高さ31.0cm(12.2インチ)の円柱形Al0.2%Si0.5%Cuビレットを、室温でプレス加工して、高さ10.2cm(4インチ)とした。得られたビレットを室温で圧延して、直径〜36.8cm(〜14.5インチ)、厚さ4.19cm(1.65インチ)の円形ブランクとした。このブランクを、315.6℃(600°F)で、2時間熱処理し、室温に水焼入れしてから、鋼ダイによってプレス加工して、図1に示すものと同様のニアネットシェイプターゲットブランクとした。次に、このブランクを機械加工してスパッタリングターゲットとした。このターゲットの機械的強度、微視組織および結晶集合組織を調べた。結果を図9〜11に示す。
【0023】
図9に示すターゲット位置で測定した降伏強さを下記の表に示す。
【表5】

【0024】
図10に示すターゲット位置の平均粒径を、下記の表に示す。
【表6】

【0025】
実施例3の集合組織解析結果を図11に示す。この場合、(220)集合組織が優勢であり、40%よりも大きな量をしめている。
【0026】
先行技術に対する本発明の利点としては、次のものがある。1) この方法は製造における適用が容易である。2) ニアネットシェイププレス加工により、少なくとも10%の材料が節約できる。3) ターゲットに形成される集合組織は、スパッタリング性能が証明されている従来の再結晶Al合金ターゲットのそれに近い。
【0027】
適当な機械的強度を実現するために、通常、一体構造Al合金ターゲットブランクは、たとえば等溝傾斜押出しのような技術を使用する大きな塑性変形によって製造されている。この大きな塑性変形は必ずしも必要な結晶集合組織を与えない。本発明においては、機械的に加工して完全に再結晶させたAl合金ブランクを、さらに室温で機械的に加工し、それによって、実質的に再結晶ブランクの有益な結晶集合組織を保存して、同時に機械的強度が高められるようにする。本件の発明者の知識によれば、この考え方は新しいと思われる。
【0028】
平坦アルミニウムスパッタリングターゲット用途に対しては、実際上二つの主要タイプのOEMスパッター侵食パターンが存在する。第一の場合には、外側へりに近い環状部においてもっとも高速で侵食され、第二の場合には、中心に近い環状部が侵食される。したがって予想できるように、それぞれの特徴的な集合組織を有する同一のアルミニウム板を使用したとき、二種類のパターンは蒸着膜の厚さに異なる均一性を与えることになる。
【0029】
記録された侵食輪郭は、ターゲットの約50 mm上に配置された20.3cm(8インチ)ウェーハに関するものである。すべての場合に、外側侵食領域は、ウェーハの外側にあり、したがって、ターゲットのこの領域からアルミニウムの大部分は、ウェーハに当たらず、ウェーハ端の膜厚に影響を与えるだけである、と考えられる。これらのパターンの一つにおいては、外側溝はウェーハの端からさらに離れている。
【0030】
一つのケースでは、主侵食は直径約22.9cm(9インチ)のところで起こり、ターゲットとウェーハとの距離が膜の均一性にとって非常に重要である。この外側(主)侵食はへりの厚さに影響するだけである。
【0031】
AlまたはAl合金の加工熱処理においては、完全に熱処理された圧縮圧延(compression rolled)板は、熱処理手順、時間および温度に応じて、強い(200)集合組織と20〜400μmの粒径とを有する。平均粒径400μmの強い(200)集合組織は、平均粒径35μmの強い(200)集合組織として、ウェーハにも同じ特性を与える。蒸着速度と均一性とを変えるためには、異なる集合組織が必要である。
【0032】
非常に細かい粒径(1μmよりも小)が実現できたならば、周知の有益な強化効果が見られ、また強い(200)集合組織から少しずれた集合組織が見られる。集合組織のこの変化は、集合組織測定で検出できる粒界の体積分率の増大によるものであり、これは放出速度と方向とに影響する。この強化は、近接配置された粒界が転位の動きを制限するために起こる。
【0033】
ここでの発見によれば、完全熱処理アルミニウム板に適当な密度の大傾角粒界ではなく転位タングルを導入することにより、材料強度は大きく増大するが、完全熱処理板の集合組織の変化は引き起こされない。転位タングルは、それ以上の転位運動を制限し、したがって機械的強度を向上させる。転位の導入により、すべり系が活性化し、材料で検出される(220)集合組織が増大する。中心スパッタリングシステムの場合、これにより、大距離放出高エネルギー用途のために形成されるプラズマ形状がより最適化されうる。10〜50%ひずみの場合、熱処理された材料は仕事を吸収し、転位がサブミクロン間隔で堆積する。個々の結晶粒は、方位がわずかに異なる複数の集合組織のどれかに属する亜結晶粒からなることになる。その結果、もとの組織が、ある体積分率の(220)方位の転位によって変化するということになる。
【0034】
このことは微視組織のエッチングによって観察できる。転位タングルは、小傾角粒界になるが、元の大傾角粒界はそのままになる。これはまた、EBSD(電子後方散乱回折)によっても観察することができ、既存の結晶粒内の複数の集合組織要素の存在が示される。EBSD像はまた、粒径分布の測定にも使用することができる。図12は、従来の先行技術Al0.2wt%Si0.5%Cuターゲットと本発明の実施例1によって製造したAl0.2wt%Cu0.5wt%Siターゲットとのサブミクロン結晶粒分布を比較して示すグラフである。従来のターゲットは、室温プレス加工、室温クロスローリング、および315.6℃(600゜F)、2時間の再結晶熱処理のあと、機械加工することによって、製造した。
【0035】
図13は、対称ダイ100を使用するプレス加工操作を模式的に示す。このダイは、一つの実施例において、ニアネットシェイプ一体構造Alターゲットを製造するのに使用できる。このダイは、面積の狭いフランジキャビティ104を有し、このキャビティは、そこに配置された純AlまたはAl合金のプレス加工において、ターゲットのフランジ部分を形成する(図1参照)。また、ダイ100は、ダイ106のスパッター領域部分を有し、ダイ106は、最終的にターゲットのスパッター面を形成するダイの部分に対応するダイの表面108を有する。
【0036】
プレス200は、プレス定盤202を有し、この定盤は、ピストン204、206の動きによって、ダイ100に近づいたり離れたりする往復運動をするようになっている。容易にわかるように、ダイ100内で圧縮される金属(図示せず)は、スパッター領域106に比してダイのフランジ部分104が大きく加工される(厚さ減少)。したがって、このプレス作業によって最終的に形成されるターゲットのフランジ部分の降伏強さは、ターゲットスパッタリング領域のそれよりも大きくなる。
【0037】
以上の説明と添付の図面とは、本発明を説明するためだけのものであり、本発明の限定を意図するものではない。当業者には明らかなように、特許請求の範囲に示す本発明の真の意図と範囲とを逸脱するとなく、いろいろな変形と他の応用とが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明によって製造されたスパッターターゲットの模式側面図である。
【図2】本発明の実施例1によって製造されたスパッターターゲットの半分の模式断面図であり、降伏強さを測定したそれぞれの位置をターゲット全体にわたって示す。
【図3】本発明の実施例1によって製造されたスパッターターゲットの半分の模式断面図であり、結晶粒径を測定したそれぞれの位置をターゲット全体にわたって示す。
【図4】実施例1のターゲットの全体にわたるいろいろな位置で測定した、当該ターゲットの集合組織を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例2によって製造されたスパッターターゲットの半分の模式断面図であり、降伏強さを測定したそれぞれの位置をターゲット全体にわたって示す。
【図6】本発明の実施例2によって製造されたスパッターターゲットの半分の模式断面図であり、結晶粒径を測定したそれぞれの位置をターゲット全体にわたって示す。
【図7】実施例2のターゲットの全体にわたるいろいろな位置で測定した、当該ターゲットの集合組織を示すグラフである。
【図8】実施例2によって製造した二つの一体構造ターゲットの中心位置での湾曲を、先行技術による従来の接合ターゲットの場合と比較して示すグラフである。
【図9】本発明の実施例3によって製造されたスパッターターゲットの半分の模式断面図であり、降伏強さを測定したそれぞれの位置をターゲット全体にわたって示す。
【図10】本発明の実施例3によって製造されたスパッターターゲットの半分の模式断面図であり、結晶粒径を測定したそれぞれの位置をターゲット全体にわたって示す。
【図11】実施例3のターゲットの全体にわたるいろいろな位置で測定した、当該ターゲットの集合組織を示すグラフである。
【図12】通常のAl0.2%Si0.5%Cuターゲットの亜結晶粒径分布と本発明によって製造したAl3.2%Si0.5%Cuターゲットのそれとを対比して示すグラフである。
【図13】本発明によるニアネットシェイプターゲットの製造に使用することのできる非対称ダイと定盤との模式断面図である。
【符号の説明】
【0039】
2 スパッターターゲット
4 スパッタリング部分
6 背面部分
8 フランジ部分
10 ターゲット内の位置
12 ターゲット内の位置
14 ターゲット内の位置
16 ターゲット内の位置
18 ターゲット内の位置
20 ターゲット内の位置
22 ターゲット内の位置
24 ターゲット内の位置
26 ターゲット内の位置
28 ターゲット内の位置
30 ターゲット内の位置
32 ターゲット内の位置
100 対称ダイ
104 フランジキャビティ(ターゲットのフランジ部分に対応)
106 ダイ(ターゲットのスパッター領域に対応)
108 ダイの表面
200 プレス
202 プレス定盤
204 ピストン
206 ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体構造のAlまたはAl合金ターゲットを製造する方法であって、次のステップ
a. Al加工物を機械的に加工してブランクを製造し、
b. 当該ブランクを熱処理して、当該ブランクを再結晶させ、必要な結晶粒径と結晶集合組織とを得、
c. 熱処理後に10〜50%の追加ひずみを与えて、機械的強度を増大させ、
d. フランジ領域にさらに20〜60%のひずみを与え、
e. 当該ブランクを仕上げ加工して、必要な結晶集合組織と十分な機械的強度とを有するスパッタリングターゲットとする、
ことからなることを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップa)の当該機械的加工が圧延であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップc)のひずみを与えるための方法が再結晶温度よりも低い温度での圧延であり、ステップd)のひずみを与えるための方法が再結晶温度よりも低い温度でのプレス加工であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップc)およびd)におけるひずみを与えるための方法が、再結晶温度よりも低い温度でのプレス加工であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップc)およびd)におけるひずみを与えるための方法が、再結晶温度よりも低い温度での、片側が閉じたダイによる圧延であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
当該ターゲットが、純アルミニウムからなるか、または、Cu、Si、Ti、Ge、W、Ag、Fe、V、Niおよびこれらの混合物からなるグループから選択される一つ以上の合金元素が添加されたアルミニウム合金からなり、ここで当該合金において当該合金元素が10wt%以下の総量だけ存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
当該ターゲットが平板状で、ステップa)における当該ブランクが円形であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
当該ステップc)および当該ステップd)が両方とも室温で実施されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項9】
当該ステップc)およびd)が室温で実施されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項10】
当該ステップc)およびd)が室温で実施されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項11】
平板状の一体構造AlまたはAl合金スパッターターゲットであって、
第一の降伏強さを有するスパッター領域と、当該第一の降伏強さよりも大きな第二の降伏強さを有するフランジ領域とを有する、
ことを特徴とするスパッターターゲット。
【請求項12】
当該第一の降伏強さが少なくとも1,050Kg/cm2(15 ksi)であり、当該第二の降伏強さが少なくとも1,400Kg/cm2 (20 ksi)であることを特徴とする請求項11に記載のスパッターターゲット。
【請求項13】
当該スパッター領域が、少なくとも約30%の(200)に近い方位を有することを特徴とする請求項11に記載のスパッターターゲット。
【請求項14】
当該スパッター領域における平均結晶粒径が100μmよりも小さく、少なくとも20 vol%が5μmよりも小さな結晶粒径を有することを特徴とする請求項11に記載のスパッターターゲット。
【請求項15】
当該ターゲットが、純Alからなるか、または、Cu、Si、Ti、Ge、W、Ag、Fe、VおよびNiからなるグループから選択される一つ以上の合金元素が添加されたAl合金からなり、ここで当該合金において当該合金元素が10wt%以下の総量だけ存在することを特徴とする請求項11に記載のスパッターターゲット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−515847(P2012−515847A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547952(P2011−547952)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/000021
【国際公開番号】WO2010/085316
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(500190801)トーソー エスエムディー,インク. (7)
【Fターム(参考)】