説明

一方向間欠送りユニット

【課題】ラチェットの歯に係合させた駆動爪を作動させるための揺動アームを設け、その揺動アームに駆動リンクを連結し、該駆動リンクを往復運動させることにより前記ラチェットと一体の送り歯車を間欠送りさせるようにした一方向間欠送りユニットにおいて、送り歯車によって送られる部品搬送部材の停止位置の精度を向上させることである。
【解決手段】駆動爪12を作動させる揺動アーム2の前進揺動限界位置を定めるストッパーを偏心軸29により構成し、その偏心軸29の回転に伴う偏心量の変化により、揺動アーム2の前進揺動限界位置を調整することにより、部品搬送部材50の停止位置の精度を上げるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インデックステーブル等の部品供給装置等における送りユニットとして使用される一方向間欠送りユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の一方向間欠送りユニットの使用例として、キャリアテープ等の部品搬送部材のカバーテープ巻取り装置を挙げることができる(特許文献1)。この場合の一方向間欠送りユニットは、ラチェットホイール62(符号は特許文献1に記載されたもの。以下同様)にストッパレバー74を係合させるとともに、回動板64に取付けたラチェット爪66を係合させた構成であり、これによってラチェットホイール62と一体のスプロケット58を駆動し、キャリアテープ18を一定方向に間欠送りするようになっている。キャリアテープ18に保持された電子部品14はスプロケット58の一時的な停止中に部品吸着ヘッド110により吸着される。なお、前記の回動板64は、軸84によりテープ駆動板82に回転自在に連結される。
【特許文献1】特開2000−332490号公報(段落0014、0015、0016、図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記の一方向間欠送りユニットは、これによって間欠送りされるキャリアテープ18に保持された部品14が正確に部品吸着ヘッド110の直下で停止するように送りピッチを定める必要がある。
【0004】
しかし、前記のテープ駆動板82に作用する駆動ピッチをたとえ正確に設定したとしても、当該テープ駆動板82、これに連結された回動板64、その回動板64に取付けられたラチェット爪66、さらにそのラチェット爪66が係合するラチェットホイール62等の部品の寸法公差及び軸84の取付け精度等の影響を受けてキャリアテープ18の送り精度が低下し部品14の停止位置が吸着ヘッド110直下からずれることがある。また、ラチェット爪66のラチェットホイール62に対する係合も不正確となってキャリアテープ18の送りに円滑性を欠くことがある。
【0005】
そこで、この発明は部品の寸法公差、取付け位置の精度等に起因する不都合を解消すべく関係部品の取付け位置の調整を可能とすることにより、精度が高く、かつ円滑な送りができる一方向間欠送りユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、この発明は、逆止手段を有するラチェット、該ラチェットと一体回転する出力手段、前記ラチェットと出力手段と同軸に取付けられた揺動アーム、該揺動アームに回転自在に取付けた駆動爪、及び前記揺動アームに連結された入力手段としての駆動リンクからなり、前記駆動リンクの前後動による揺動アームの前進揺動時に前記駆動爪をラチェットの歯に係合させて該ラチェットを正回転させ、その後退揺動時に前記逆止手段により逆回転を防止しつつ駆動爪を後退させるという作動を繰り返すことにより前記出力手段を一方向に間欠送りするようにした一方向間欠送りユニットにおいて、前記揺動アームの揺動限界位置を定めるストッパーに調整手段を設けた構成を採用した。
【0007】
上記構成の一方向間欠送りユニットは、揺動アームの前進・後退の揺動運動によって送り歯車等の出力手段を一定方向に間欠的に回転させ、その出力手段に係合されたキャリアテープ等の部品搬送部材を間欠送りする作用を行う。揺動アームが前進揺動して部品搬送部材に送りをかける時は逆止手段がフリーとなって出力手段の回転を許容し、後退揺動時はロックして出力手段の逆転を防止しつつ部品搬送部材の送り作用を一時停止する。この一時停止中に部品搬送部材中の部品が部品吸着ヘッドにより外部に取り出される。部品搬送部材の停止位置は部品の寸法公差等の影響を受けバラツキを生じるが、揺動アームの揺動限界位置を定めるストッパーの調整手段を操作することにより停止位置の調整を行うことができる。
【0008】
また、前記の構成に加え、前記揺動アームの後退揺動限界位置における駆動爪と、当該駆動爪が次の前進揺動時に係合されるべき前位の歯との間に、その次に係合されるべき後位の歯を越えない範囲の一定の間隔を置くように当該駆動爪の揺動アームに対する取付け位置を調整する調整手段を設けた構成をとることができる。このような調整手段を設けると、部品寸法の公差等の影響によって駆動爪とラチェットの歯との位置関係にバラツキが生じても、その調整手段の調整によって駆動爪の歯に対する位置関係が一定するので、一歯ごと確実に係合させることができる。
【0009】
駆動爪の歯に対する位置関係の調整は、揺動アームと駆動リンクの相対位置関係を調整する調整手段を設けることによっても行うことができる。この場合の調整手段としては、前記揺動アームと駆動リンクが相互に実質的に直交する揺動軌跡を有する位置関係に配置され、前記揺動アームと駆動リンクが偏心軸により連結され、その偏心軸の中心軸部と偏心軸部がそれぞれ前記の揺動軌跡上に配置された構成をとることができる。この構成においては、前記の偏心軸を操作するとその中心軸部と偏心軸部が前記の軌跡上を移動しながら回転するため、駆動リンクに対する揺動リンクの相対位置関係が変化し、駆動爪の歯に対する位置関係を調整することができる。
【0010】
また、前記駆動リンクに対し駆動力を与える駆動源と、ばね力を与えるばねを関連せしめ、前記駆動源の駆動力により前記揺動アームを後退揺動させるとともに、前記ばね力により該揺動アームを前進揺動させるようにした構成をとることができる。揺動アームの揺動限界はストッパーの調整手段の操作によって調整されるが、その調整手段の操作によって生じる調整量は前記ばねによって吸収されるので、他に吸収手段を必要としない。逆に駆動源によって前進揺動させる構成をとった場合は、ストッパーの操作によって生じる調整量を駆動源自体で吸収することは一般に不可能であるので、その吸収のためにトルクリミッタ等の吸収手段を別途設ける必要がある。
【0011】
なお、前記逆止手段は逆止爪をラチェットに係合させる通常の手段でもよいが、一方向クラッチ型のトルクリミッタを使用してもよい。この場合は該トルクリミッタが所定の空転トルクを有して空転する方向を前記ラチェットの正回転方向に一致させた構成をとると、部品搬送部材の送り出しの際に該トルクリミッタにより一定のトルクを付加することができため、部品搬送部材に作用する慣性の影響を排除することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明は揺動アームの揺動限界を定めるストッパーの調整手段を適宜操作することにより、部品の寸法公差や取付け精度の影響等を排除して部品搬送部材の停止位置の精度を上げることができる。また、駆動爪の揺動アームに対する取付け位置の調整手段、又は揺動アームと駆動リンクの相対的位置関係の調整手段を設けたことにより、駆動爪の後退揺動限界位置における該駆動爪と次に当該駆動爪と係合されるべき前位の歯との間に一定の間隔が存在するように調整することができるので、部品の寸法公差や取付け精度の影響を排除して、駆動爪によるラチェットの送り作用を確実に行わせることができる。なお、上記の各調整手段として偏心軸を用いることにより、調整作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいてこの発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1から図4に示した実施例1の一方向間欠送りユニットは、一方向間欠送り手段1、揺動アーム2、出力手段としての送り歯車3が同軸状態に一体に組み合わされ、ボルト4a、ナット4b(図2参照)によりフレーム5の片面に設けられた凹部10に取付けられる。前記揺動アーム2の先端に軸6を介して入力手段としての駆動リンク7が回動自在に連結される。
【0015】
図1に示したように、一方向間欠送り手段1は、外歯形式のラチェット8、これと一体に設けられた一方向クラッチ型のトルクリミッタ9、及びそのラチェット8の歯11に係脱自在となる駆動爪12とからなり、その駆動爪12が前記の揺動アーム2に取付けられる。ラチェット8の歯11は、送り方向の回転方向A(以下、正回転方向Aと称する。)に対向するように傾斜し、半径方向の歯面11aと円弧状の歯面11bを有する。
【0016】
図2に示したように、前記ラチェット8のフレーム5側外周面に前記の送り歯車3が一体に設けられる。送り歯車3はラチェット8より大径に形成され、キャリアテープ等の部品搬送部材50の送り穴51に係合される。ラチェット8と送り歯車3の共通のボス部は同時にトルクリミッタ9の外輪13をなし、その外輪13は前記ボルト4aに螺合されたスリーブ状の支軸15の周りに回転自在に挿通される。
【0017】
前記外輪13の内周面には等間隔をおいて複数箇所にポケット16が設けられる。各ポケット16の底面に前記支軸15との間で正回転方向Aに狭小となるくさび角θ(図1参照)が形成され、そのポケット16にローラ17と付勢ばね18が収納される。該付勢ばね18によりローラ17をくさび角θの方向に付勢する。この付勢ばね18の付勢力は、外輪13が正回転方向Aへの空転時に通常の一方向クラッチの空転トルク値(0.1kgf・cm)に比べて大きい空転トルク値(1〜5kgf・cm)が得られるように設定されている。なお、ポケット16相互間の外輪13内径面は支軸15に摺接し軸受20を形成する。
【0018】
前記揺動アーム2の円板形のボス板19がボルト4aの周りに揺動自在に嵌合され、トルクリミッタ9の外面を閉塞する。ボス板19はワッシャ21を介してボルト4aの頭部22により揺動自在に取付けられる。揺動アーム2の正回転側の側縁部裏面に軸23とナット28により前記の駆動爪12が揺動自在に取付けられる。駆動爪12はばね24により揺動アーム2側に付勢され、その先端部がラチェット8の前位の歯11の半径方向の歯面11aに係合するとともに、後位の歯11の円弧歯面11bに接触する。
【0019】
また、前記揺動アーム2の正回転側の側辺に接してその前進揺動限界を規定するストッパーとしての偏心軸29がフレーム5に取付けられ(図2参照)、ナット30により固定される。偏心軸29は中心軸部29aがフレーム5に回転自在に挿通され、その先端に設けられた偏心軸部29bが揺動アーム2の正回転側辺に当接される。偏心軸部29bの先端の溝29cにドライバーを差し込んで回転操作することにより、揺動アーム2の前進揺動の揺動限界位置が調整される。
【0020】
その他、図1において、25は部品搬送部材50上に設置された部品吸着ヘッド、27は部品搬送部材50に一定間隔で付着された部品、52はフレーム5の上端縁に設けられたガイド溝である。
【0021】
実施例1の一方向間欠送りユニットは以上のような構成であり、図1に示した状態から、適宜な駆動源により駆動リンク7を介して揺動アーム2を後退揺動(矢印b参照)させる。このとき駆動爪12はラチェット8の歯11上を後退するため送り作用は行わない。また、トルクリミッタ9はロック状態となり、送り歯車3は停止状態に保持される。次に、駆動リンク7を介して揺動アーム2が図示省略のばねによって前進揺動(矢印a参照)すると、駆動爪12が前位の歯11に係合して送り作用を行う。これによりラチェット8は1歯分回転され、同時に送り歯車3が矢印Aで示した正回転方向に回転し、それに係合した部品搬送部材50に1ピッチの送りが掛けられる。
【0022】
このとき、トルクリミッタ9は空転状態となるが、前述のように空転状態においても比較的大きい空転トルクを発生するため、部品搬送部材50に対して所要の制動が掛けられる。このため、送り速度が大きくなっても部品搬送部材50に慣性が作用し難くなる。また、段取り作業等において部品搬送部材50が勝手に長く引き出されるような不都合も避けられる。
【0023】
揺動アーム2の前進揺動の限界位置は偏心軸29に当接することにより制限されるため、揺動アーム2が偏心軸29に当接して停止する。次に、揺動アーム2が後退揺動(矢印b参照)するときは駆動爪12が歯11から外れて後退し送り作用を行わない。このときトルクリミッタ9は、送り歯車3及びラチェット8の逆回転方向(矢印Aと反対方向)に対してロック状態となり部品搬送部材50の逆送りを防止する。この間部品搬送部材50の送りは一時的に停止され、停止中に部品吸着ヘッド25が部品27を吸着する。以下、以上の作用を繰り返す。
【0024】
部品吸着ヘッド25によって部品を確実に吸着するには、部品搬送部材50の停止位置の精度が良好であることが必要であるが、その停止位置の調整は偏心軸29を操作することにより行う。いま、図4に示したように、揺動アーム2の前進方向の揺動限界が実線で示す位置である場合に、ナット30を緩め偏心軸部29bの先端の溝29cにドライバーを差し込んで回転させると、中心軸部29aの部分が回転し、偏心軸部29bの位置が偏芯回転する。これによって、揺動アーム2の前進揺動限界位置が変るため(同図の一点鎖線参照)、送り歯車3とともに部品搬送部材50の停止位置が調整される(同図の調整量x参照)。
【実施例2】
【0025】
図5から図7に示した実施例2の一方向間欠送りユニットは、トルクリミッタ9の外輪13がラチェット8及び送り歯車3とは別体に形成されたものである。ラチェット8と送り歯車3は一体であり、これらの共通のボス31がフレーム5側に突き出して形成される。トルクリミッタ9の外輪13は、D形カット面32を有し(図7参照)、これに合致するD形カット面33を有するフレーム5の凹部10に嵌合固定される。
【0026】
前記のボス31はトルクリミッタ9の内径側に回転自在に挿通され、その外輪13内周面に前記の実施例1の場合と同様の複数のポケット16が形成され、各ポケット16にローラ17及び付勢ばね18が収納される。ただし、実施例1の場合と異なりポケット16のくさび角θ(図5参照)の方向は、正回転方向Aと逆方向である。これは、トルクリミッタ9に対する駆動力が、外輪13側からではなくボス31側から入力されることによる。ポケット16相互間に軸受20が形成されることは同様である。
【0027】
なお、外輪13及び凹部10にD形カット面32、33を設けた構成としたのは、フレーム5の高さをできるだけ低く構成するためである。
【0028】
前記の揺動アーム2の前進方向揺動限界位置を偏心軸29によって調整することにより部品搬送部材50の停止位置の精度を高める構成は、前記の実施例1の場合と同様である。
【実施例3】
【0029】
図8から図10に示した実施例3の一方向間欠送りユニットは、ラチェット8が内歯形式のものであり、歯11が内径面に形成される。そのラチェット8の内側外径面に前記各実施例と同様の送り歯車3が一体に設けられる。ラチェット8のボスがトルクリミッタ9の外輪13を兼用し、その外輪13がフレーム5の凹部10に回転自在に嵌合される。また、その凹部10の中心に固定軸35がそれ自身に設けられたねじ軸38をフレーム5に貫通しナット39で締結固定される。
【0030】
トルクリミッタ9の外輪13はその内周面に所要数のポケット16が設けられ、
前記固定軸35との間で正回転方向Aに狭小となるくさび角を有し、ローラ17及び付勢ばね18が収納される。
【0031】
また、揺動アーム2のボス板19は、ラチェット8の全体をカバーする大きさに形成され(図9、図10参照)、その内面に1個の駆動爪12が軸23により回転自在に取付けられ、そのボス板19との間に設けられた付勢ばね24により、前記内歯式のラチェット8に対し駆動方向に傾斜して係合される。なお、揺動アーム2はそのボス板19が固定軸35の外端部に回転自在に嵌合され、ワッシャ21を介してビス37で抜け止めが図られている。
【0032】
前記の揺動アーム2の前進方向揺動限界位置を偏心軸29によって調整し、部品搬送部材50の停止位置の精度を高める構成は、前記の実施例1の場合と同様である。
【0033】
以上述べた実施例1から3は、いずれも揺動アーム2の前進揺動(矢印a参照)を駆動リンク7に関連されたばね力で行い、後退揺動を電磁ソレノイド等の駆動力によって作動させることを前提にして説明している。この場合において揺動アーム2の前進揺動限界位置を偏心軸29によって調整したときのストロークの調整量の吸収は、ばねの伸縮によって行うことができる。前記と逆に前進揺動を駆動力で、また後退揺動をばね力で行うようにした場合は、揺動アーム2の前進揺動限界位置の調整によるストロークの調整量は、これを駆動源において吸収することは困難であるので、トルクリミッタ等の部品を介在して吸収する必要がある。
【0034】
その他の変形例として、揺動アーム2の揺動限界を定めるストッパーを後退揺動限界側に設け、そのストッパーを前記と同様の偏心軸29で形成するようにしてもよい。また、ラチェット8の逆回転防止手段として一方向クラッチ型トルクリミッタ9に代えて、単なる逆止爪を歯11に係合させた構成をとる場合もある。
【0035】
また、図11に示したように、揺動アーム2の揺動限界を定めるストッパー(偏心軸29)は、揺動アーム2と一体のボス板19の周縁から径方向外向きに設けた突起53に当接させるようにしてもよい。
【実施例4】
【0036】
以上述べた実施例1から3においては、部品搬送部材50の送り精度の調整のために、揺動アーム2の揺動限界位置を偏心軸29によって調整する手段について述べたが、一方向間欠送りユニットの作動の精度を左右する要素として、前記各実施例における駆動爪12とラチェット8の歯11の係合精度がある。即ち、揺動アーム2の揺動を確実に送り歯車3に伝達するためには、駆動爪12が確実にラチェット8の歯11に係合する必要がある。しかし、実際の製品においては部品の公差、取付け位置の精度、部品の摩耗等により、歯11に対する駆動爪12の位置関係にバラツキが生じ、その係合作用が不正確になる場合がある。
【0037】
そこで、図12及び図13に示した実施例4は、駆動爪12の取付け軸を偏心軸41とナット42で揺動アーム2に取付けた構成としたものである。図13に示したように、駆動爪12の基部は揺動アーム2の裏面に添って配置され、これに偏心軸41の偏芯軸部41bが挿通される。また小径の中心軸部41aが揺動アーム2に貫通され、中心軸部41aの先端のねじ部にナット42が螺合される。中心軸部41aの先端に溝41cが設けられる。
【0038】
駆動爪12の揺動アーム2に対する取付け位置を調整する際は、図12(a)に示したように、揺動アーム2を後退揺動限界位置において停止させ、そのときの駆動爪12の先端と、次の前進揺動時にその駆動爪12が係合されるべき前位の歯11Aとの間に一定の間隔yを置くように調整する。その調整は中心軸部41aの先端の溝41cにドライバーを嵌合して回転操作し、偏芯軸部41bを偏心回転させることにより行う。前記の間隔yの最小値は、部品の公差、取付け精度、部品の摩耗等の影響によってもゼロとなることがない所定の大きさに設定される。また、その最大値は、前記と同様に部品の寸法公差等の影響によってもその次に係合されるべき後位の歯11Bを越えない範囲に設定される。
【0039】
このような間隔yが存在するように駆動爪12の取付け位置を調整することにより、駆動爪12は確実に次の歯11Aに係合することができ、正確で円滑な爪送りを行うことができる。間隔yがゼロ又はゼロに近い大きさであると、揺動アーム2の後退揺動限界位置において、部品の寸法公差等の影響により、前位の歯11Aの後方に落ち込まず、当該歯11A上に残ったままとなる事態が生じ、正確な送り作用が阻害される。
【0040】
なお、揺動アーム2の前進揺動限界位置の偏心軸29による調整構造は前記の場合と同様である(図12(b)参照)。
【0041】
上述した実施例4の駆動爪12の歯11に対する偏芯軸41による位置調整の構造は、前記の実施例1及び2に示した外歯形式のラチェットの場合において適用することができる。内歯形式の場合は図14に示したように、駆動爪12の基部を偏心軸41により揺動アーム2のボス板19に取付ける。この場合も同様に駆動爪12の歯11に対する位置調整が行われる(図14(a)の調整量y参照)。揺動アーム2の前進揺動限界位置の偏心軸29による調整構造は前記の場合と同様である(図14(b)参照)。
【実施例5】
【0042】
次に、図15及び図16に示した実施例5について説明する。この場合は、駆動爪12は揺動アーム2に対して軸23とナット28により揺動自在であるが調整不可能な状態に取付けられる。また、揺動アーム2の前進揺動限界位置が偏心軸29により調整できるようになっている。
【0043】
また、揺動アーム2と駆動リンク7が偏心軸54により連結され、駆動リンク7に対する揺動アーム2の連結位置の調整ができるようになっている。偏心軸54は、図16に示したように、大径の偏心軸部54bと、ねじ部を有する中心軸部54aを有し、偏心軸部54b側に操作溝54cを有する軸頭部54dを中心軸部54aと同軸に設けたものである。
【0044】
駆動リンク7の前端部は揺動アーム2の下端部内面に接して配置される。また、前記の中心軸部54aが駆動リンク7の先端部に挿通され、偏心軸部54bが揺動アーム2に挿通される。軸頭部54dが揺動アーム2の前面に係合される。また、駆動リンク7の後面に突き出した中心軸部51aのねじ部にナット55が螺合される。偏心軸部54bの中心をMで示し、中心軸部54aの中心をNで示す。また、中心Mの揺動軌跡をα、中心Nの揺動軌跡をβで示す。揺動アーム2はボルト4a(図1参照)を中心として揺動し、駆動リンク7は駆動側のピン(図示省略)を中心として揺動するが、いずれも十分大きい揺動半径を有するので、前記の揺動軌跡αとβは実質上直交する関係にある。
【0045】
図15(a)において、駆動爪12の歯11に対する位置調整の方法を説明する。いま、駆動爪12が歯11に接触した実線の状態にある場合において、一定の間隔yが存在するように調整するときは、軸頭部54dの溝54cにドライバーを差し込んで右回転させると、前記の中心Mは軌跡α上を移動してM’の位置に移動し、中心Nは軌跡β上を移動してN’の位置に移動する。即ち、揺動アーム2と駆動リンク7の連結位置が実質上の直交線上でM、NからM’、N’へ移動したことになる。
【0046】
上記のように連結点が移動する結果、揺動アーム2と駆動リンク7が実線の状態から一点鎖線の状態に相対的に移動し、同時に駆動爪12も歯11に対して一点鎖線の状態に移動し所定の間隔yを生じさせることができる。
【0047】
なお、偏心軸29による揺動アーム2の前進揺動限界位置の調整は前記した他の実施例の場合と同様に行われる(図15(b)参照)。
【0048】
なお、上記のように、揺動リンク2と駆動リンク7を偏心軸54により連結することにより駆動爪12の歯11に対する位置調整を行うようにした構成は、前述した各実施例においても同様に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1の縦断正面図
【図2】図1のX−X線の断面図
【図3】同上の分解斜視図
【図4】同上の調整作用の説明図
【図5】実施例2の縦断正面図
【図6】同上のY−Y線の断面図
【図7】同上の分解斜視図
【図8】実施例3の縦断正面図
【図9】同上のZ−Z線の断面図
【図10】同上の分解斜視図
【図11】変形例の一部正面図
【図12】(a)(b)実施例4の一部正面図
【図13】実施例4の一部断面図
【図14】(a)(b)変形例の一部正面図
【図15】(a)(b)実施例5の調整作用の説明図
【図16】(a)実施例5の一部断面図、(b)(a)図b−b矢視図
【符号の説明】
【0050】
1 一方向間欠送り手段
2 揺動アーム
3 送り歯車
4a ボルト
4b ナット
5 フレーム
6 軸
7 駆動リンク
8 ラチェット
9 トルクリミッタ
10 凹部
11 歯
12 駆動爪
13 外輪
15 支軸
16 ポケット
17 ローラ
18 付勢ばね
19 ボス板
20 軸受
21 ワッシャ
22 頭部
23 軸
24 ばね
25 部品吸着ヘッド
27 部品
28 ナット
29 偏心軸
29a 中心軸部
29b 偏心軸部
30 ナット
31 ボス
32、33 D形カット面
37 ビス
38 ねじ軸
39 ナット
41 偏心軸
41a 中心軸部
41b 偏心軸部
42 ナット
50 部品搬送部材
51 送り穴
52 ガイド溝
53 突起
54 偏心軸
54a 中心軸部
54b 偏心軸部
54c 溝
54d 軸頭部
55 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆止手段を有するラチェット、該ラチェットと一体回転する出力手段、前記ラチェットと出力手段と同軸に取付けられた揺動アーム、該揺動アームに回転自在に取付けた駆動爪、及び前記揺動アームに連結された入力手段としての駆動リンクからなり、前記駆動リンクによる揺動アームの前進揺動時に前記駆動爪をラチェットの歯に係合させて該ラチェットを正回転させ、その後退揺動時に前記逆止手段により逆回転を防止しつつ駆動爪を後退させるという作動を繰り返すことにより前記出力手段を一方向に間欠回転させるようにした一方向間欠送りユニットにおいて、前記揺動アームの揺動限界位置を定めるストッパーに調整手段を設けたことを特徴とする一方向間欠送りユニット。
【請求項2】
前記揺動アームの後退揺動限界位置における駆動爪と、当該駆動爪が次の前進揺動時に係合されるべき前位の歯との間に、その次に係合されるべき後位の歯を越えない範囲の一定の間隔を置くように当該駆動爪の揺動アームに対する取付け位置を調整する調整手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の一方向間欠送りユニット。
【請求項3】
前記の調整手段が偏心軸により形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の一方向間欠送りユニット。
【請求項4】
前記揺動アームの後退揺動限界位置における駆動爪と、当該駆動爪が次の前進揺動時に係合されるべき前位の歯との間に、その次に係合されるべき後位の歯を越えない範囲の一定の間隔を置くように前記揺動アームと前記駆動リンクとの相対的位置関係を調整する調整手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の一方向間欠送りユニット。
【請求項5】
前記調整手段が、前記揺動アームと駆動リンクが相互に実質的に直交する揺動軌跡を有する位置関係に配置され、前記揺動アームと駆動リンクが偏心軸により連結され、その偏心軸の中心軸部と偏心軸部がそれぞれ前記の揺動軌跡上に配置されたことを特徴とする請求項4に記載の一方向間欠送りユニット。
【請求項6】
前記駆動リンクに対し駆動力を与える駆動源と、ばね力を与えるばねを関連せしめ、前記駆動源の駆動力により前記揺動アームを後退揺動させるとともに、前記ばね力により該揺動アームを前進揺動させるようにしたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の一方向間欠送りユニット。
【請求項7】
前記逆止手段が、一方向クラッチ型のトルクリミッタにより形成され、該トルクリミッタが所定の空転トルクを有して空転する方向を前記ラチェットの正回転方向に一致させたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の一方向間欠送りユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−125440(P2006−125440A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311307(P2004−311307)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】