説明

一酸化窒素を含む血管内、組織内または器官内医療用アクセス用具、ならびにその製造方法

【解決課題】感染の防止および抗血栓効果を可能にする血管内、組織内または器官内医療用具、ならびに前記医療用具の製造方法が提供される。
【解決手段】該医療用具は、一酸化窒素(NO)溶出ポリマーから一酸化窒素の治療的用量が溶出されるように、隣接哺乳動物組織に配置された一酸化窒素溶出ポリマーを含んでなる。前記担体材料が、使用中に、一酸化窒素(NO)の前記治療的用量の溶出を調節し制御するように、該一酸化窒素(NO)溶出ポリマーは該担体材料と合体している。さらに、前記医療用具の製造方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、一酸化窒素(NO)の使用を含む医療用具の分野に関する。より具体的には、本発明は、一酸化窒素(NO)の使用を含む、血管内、組織内または器官内医療用アクセス用具、ならびに前記用具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医学の分野では、ヒトなどの哺乳動物の身体に、多くの医療用具の挿入、移植、または取り付けがなされる。これらの用具は、創傷または手術創の閉鎖、および、例えば、薬剤、薬物、生理食塩水などのカテーテル、および注射の助けによる、例えば、胸膜、膀胱、内耳、または血管系などの内器官からの種々の体液の排液など、種々の医療目的を遂行することが意図されている。いくつかの医療用具は、人工肛門形成バッグなど、単に哺乳動物の身体との接触、または血圧、血液ガスなどの監視が意図されている。これらの医療用具が哺乳動物の身体に挿入、移植、または取り付けられる際の感染の危険性増大は深刻である。
【0003】
カテーテルは、液体の通過または他の医療用具のための通路を提供するために身体の様々な部分に挿入される、可撓性のゴム、またはプラスチックの管である。カテーテルは、例えば、経尿道切除、または肺の外科手術の後に、身体から廃液を除去できる。
【0004】
フォーリーカテーテルまたはバルーンカテーテルなどの尿カテーテルは、尿を排液するために膀胱に挿入される。それは、一定の期間、膀胱内に置くことができるために、留置カテーテルとも称される。それは、末端に、該カテーテルを正しい位置に保持するために滅菌水または空気を満たしたバルーンで、正しい位置に保持される。該カテーテルは一定期間置かれるために、細菌の感染、少ないが尿路性敗血症など、多数の副作用が生じ得る。カテーテル内、およびカテーテル近傍に存在する細菌は、カテーテルの詰まりをもたらし得る石を形成する細菌でもあり得る。これらの障害は今日、抗生物質により処置されるが、抗生物質による処置は、抗生物質に対する細菌学的耐性の発現をもたらし、感染時に重篤な合併症に至らしめることがあり得ることは、今日、一般的に知られていることである。
【0005】
静脈内カテーテルは、反復注射、注入、輸血および血液サンプル採取を補助するために、静脈血管内に挿入されるもので、中心静脈カテーテル(CVC)、末梢静脈カテーテル(PVC)、および皮下静脈カテーテル(SVP)が挙げられる。このタイプのカテーテルもまた、今日、上記による副作用を伴う抗生物質により処置される感染を引き起こし得る。しかし、局所部位の感染、敗血症性血栓静脈炎、心内膜炎、および他の転移性感染、例えば、肺膿瘍、脳膿瘍、骨髄炎、および眼内炎などの局所性および全身性の合併症に至らしめないために、この感染を抑えることが重要である。
【0006】
先行技術による静脈内カテーテルに生じ得る他の問題は、カテーテル内に存在する血液の凝固によるカテーテルの詰まりである。したがって、先行技術によるカテーテルは、欠陥のない注入または注射を確実にするために、各注射、注入、輸血および血液サンプル採取の前後に生理食塩水でフラッシュしなければならない。
【0007】
創傷または手術創の閉鎖に関しては、内部および外部の創傷の双方で、縫合糸およびステイプルが最も一般的に用いられる医療用具である。これらのステイプルおよび縫合糸は、皮膚または組織の周縁の閉鎖を保つためのものである。これらのステイプルおよび縫合糸は、適用の14日以内に除去しなければならない。そうしないと、それらは、上記による副作用を伴う抗生物質により今日処置されている感染の形態における合併症を引き起こし得る。
【0008】
一酸化窒素(NO)は、多くの細胞機能に関与している反応性の高い分子である。実際、一酸化窒素は、免疫系において重要な役割を演じており、マクロファージにより、それらが真菌、ウィルス、細菌などの多数の病原体に対して自らを防御するためのエフェクター分子として利用されている。この治癒改善は部分的に、血小板の活性化または凝固を阻害するNO、および移植部位での炎症過程の減少を生じさせるNOによっても引き起こされる。
【0009】
また、NOは抗病原性効果、特に抗ウィルス効果を有し、さらにNOは、治療的濃度において細胞毒性および細胞増殖抑制であり、すなわち、それは、他の効果の中でもとりわけ、殺腫瘍性効果および殺細菌性効果を有することも知られている。NOは例えば、白血病またはリンパ腫に罹っている患者のヒト血液学的悪性細胞に対して細胞毒性効果を有することから、細胞がたとえ従来の抗癌薬に抵抗性となった場合でも、血液疾患を治療する化学療法剤としてNOを使用することができる。NOのこの抗病原性効果および抗腫瘍効果は、有害作用を有さずに本発明によって利用される。
【0010】
NOの半減期が短いため、NOによってウィルス、細菌、ウィルス、真菌または酵母の感染を処置することが、今まで非常に困難であった。これは、NOが、高濃度で実際は毒性であり、身体に大量に適用される場合は負の効果を有するためである。
【0011】
NOは実際、血管拡張剤でもあり、身体に非常に大量のNOを導入すると、循環系の完全な破壊が生じる。他方、NOはいったん放出されると、1秒の数分の一から数秒の短い半減期を有する。したがって、今まで、NOの短い半減期および毒性による投与限界が、抗病原処置および抗癌処置の分野におけるNOの使用の限定因子となっていた。
【0012】
最近、水に接触した際に一酸化窒素を放出する能力を有するポリマーに対する研究がなされてきた。このようなポリマーは、例えば、L−PEI(線状ポリエチレンイミン)およびB−PEI(分枝状ポリエチレンイミン)などのポリアルキレンイミンであり、このようなポリマーは、一酸化窒素の放出後、天然産物に生体適合性であるという利点を有する。
【0013】
NO溶出ポリマーに関する他の例は、該ポリマーの1200原子質量単位当たり、少なくとも1つの−NO基により誘導体化されたポリマーが開示されている米国特許第5,770645号に提供されており、ここでxは、1または2である。一例は、S−ニトロシル化ポリマーであり、遊離チオール基のニトロシル化に好適な条件下、ポリチオール化ポリマーをニトロシル化剤と反応させることによって調製される。
【0014】
アクロン大学は、移植片など、身体内に永久的に移植される医療用具の表面上にナノスピニングされうるNO溶出L−PEI分子を開発し、このような用具を移植した際に、治癒過程の著しい改善および炎症の減少を示している。米国特許第6,737,447号によると、医療用装置に対するコーティングによって、線状ポリ(エチレンイミン)−ジアゼニウムジオレートのナノ線維を用いた一酸化窒素の送達が提供される。線状ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレートは、組織および器官に対する制御された様式で一酸化窒素(NO)を放出し、治癒過程を助け、損傷の危険性のある組織に対する損傷を防ぐ。
【0015】
しかし、米国特許第6,737,447号の文脈における「制御された」の意味は、一酸化窒素がある一定の期間、該コーティングから溶出されるという事実にのみ関するものである。したがって、米国特許第6,737,447号に関する「制御された」の解釈は、本発明の「調節性」の意味とは異なっている。本発明による「調節」は、一酸化窒素の溶出を変化させ、それによって異なる溶出プロフィルを達成する可能性として解釈されることが意図されている。
【0016】
線状ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレートの電子スピニングされたナノ線維は、医療用具の周囲の組織に治療的レベルのNOを送達する一方、該用具の性質の変化を最少化する。ナノ線維コーティングは、小さなサイズ、およびナノ線維の単位質量当たりの大きな表面積により、単位質量当たりはるかに大きな表面積を提供する一方、該用具の他の性質の変化を最少化する。
【0017】
米国特許出願第2001/041184号は,一酸化窒素を持続放出できる生体適合性の金属医療用具を開示している。これらの金属用具は、アミン官能化シランなどの一体式求核性残基を有する化合物によってシラン処理される。この操作は、求核性残基を金属表面に予備結合させる工程によって提供されるが、これはまた、米国特許出願第2001/041184号によるコーティングを、金属用具に制限させる。さらに、米国特許出願第2001/041184号による用具からの一酸化窒素の溶出は、全く調節されない。
【0018】
米国特許出願第2004/0131753号は、L−PEIのナノ線維を使用することによりNO送達を提供する、医療用具用コーティングを開示しているが、米国特許出願第2004/0131753号による一酸化窒素の溶出がどのように開始されるかが不明確である。実際、米国特許出願第2004/0131753号は、該コーティングが水に不溶性であることを指摘し、強調している。これは、NOの放出が何か水以外のものによって開始されると解釈できる。さらに、米国特許第2004/0131753号によるコーティングからの一酸化窒素の溶出は、全く調節されない。
【0019】
国際公開第02/17880号は、一酸化窒素を放出または生成するヒドロゲルを記載している。該ヒドロゲルは、薄膜、コーティング、または微粒子の形態で製造でき、ステント、血管移植片、およびカテーテルなどの医療用具に適用できる。したがって、国際公開第02/17880号によるヒドロゲルからの一酸化窒素の溶出は、全く調節されない。
【0020】
米国特許出願第2004/0259840号は、脂質分子を放出する一酸化窒素を開示している。これらの脂質は、ポリマーのマトリックスに組み込むことができる。一酸化窒素を溶出するのは脂質分子であって、ポリマーマトリックスではない。さらに、米国特許出願第2004/0259840号による脂質からの一酸化窒素の溶出は、全く調節されない。
【0021】
米国特許第6,261,594号は、創傷用包帯のための修飾キトサンポリマーを含んでなる、キトサン基材の一酸化窒素供与組成物を開示している。米国特許第6,261,594号による該組成物からの一酸化窒素の溶出は、全く調節されない。
【0022】
しかし、双方の開示とも、NOの使用による感染防止および抗血栓効果のための医療用具に関する当該技法の改善に関しては、言及がない。したがって、創傷治癒の促進および抗感染、抗微生物、抗炎症、抗血栓、および/または抗ウィルス効果を提供する、感染防止用の、改善された、または有利な、血管内、組織内または器官内医療用アクセス用具、およびその製造方法は、有利であると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、本発明は、好ましくは、当業界における上記で特定した欠陥の1つまたは複数、ならびに不利益の1つまたはそれらのいずれかの組み合わせの緩和、軽減、または除去を探求し、感染の防止および抗血栓効果を達成するための、添付の請求項による医療用具、その製造方法、および一酸化窒素の使用法を提供することにより、他の中でもとりわけ、上記の問題の少なくともいくつかを解決する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の一態様により、感染の防止および抗血栓効果の達成を可能にする医療用具が提供される。該用具は、一酸化窒素溶出ポリマーから一酸化窒素の治療的用量が哺乳動物の組織または体液の部位へと溶出するように、前記部位に隣接した前記一酸化窒素(NO)溶出ポリマーを含んでなる。
本発明の他の態様により、そのような医療用具の製造方法が提供され、該方法は、感染の防止および抗血栓効果の達成を可能にする用具を形成する方法である。該方法は、ナノ線維、線維、ナノ粒子、またはミクロスフェアなどの複数種の一酸化窒素溶出ポリマー粒子を選択し、前記一酸化窒素溶出粒子を、前記医療用具の内、または上に配置することを含んでなる。
【0025】
本発明は、NOへ標的曝露する医療用具を提供し、それによって、抗ウィルス、抗炎症、および抗微生物療法と同時に、感染の防止および抗血栓効果の獲得を達成できる点で、少なくとも先行技術より有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の可能なこれらのおよび他の態様、特徴ならびに利点は、以下の添付の図面を参照にして、本発明の実施形態の以下の記述から明らかであろうし、明瞭にされるであろう。
以下の説明は、NOへの標的曝露を可能にし、それによって、抗ウィルス、抗炎症、および抗微生物療法が提供できると同時に、感染の防止および抗血栓効果の獲得が達成される、血管内、組織内または器官内医療用具に適用できる実施形態に焦点を当てている。
【0027】
一酸化窒素(亜酸化窒素、NO)に関しては、その生理学的および薬理学的な役割は大きな注意を引き、研究が行われてきた。NOは一酸化窒素シンターゼ(NOS)の基質としてのアルギニンから合成される。NOSは構成的酵素、cNOSに分類され、生体の通常の状態にも存在し、誘導酵素、iNOSは、一定の刺激に応答して大量に産生される。cNOSによって産生されるNO濃度に比較して、iNOSによって産生されるNO濃度は、2桁から3桁高いこと、およびiNOSはきわめて大量のNOを産生することが知られている。
【0028】
iNOSにより産生される場合のように大量にNOが生成される場合、NOは活性酸素と反応して外来微生物および癌細胞を攻撃するが、炎症および組織損傷も引き起こすことが知られている。他方、cNOSにより産生される場合のように少量のNOが生成される場合、NOは血管拡張作用、血液循環の改善、抗血小板凝集作用、抗細菌作用、抗ウィルス作用、抗炎症作用、抗癌作用、消化管における吸収促進、腎臓機能の調節、神経伝達作用、勃起(生殖)、学習、食欲などのサイクリックGMP(cGMP)を介する、生体に対する種々の防御作用を担っている。今まで、生体において大量に産生されたNOに帰すると考えられている炎症および組織損傷の防止のために、NOSの酵素活性の阻害剤が調べられてきた。しかし、NOSの酵素活性の促進および適切なNO産生による種々の生体防御作用を示す目的で、NOS(特にcNOS)の酵素活性(または発現量)の促進が調べられてはこなかった。
【0029】
最近、水に接触した際に一酸化窒素を放出する能力を有するポリマーに対する研究がなされている。このようなポリマーは、例えば、L−PEI(線状ポリエチレンイミン)およびB−PEI(分枝状ポリエチレンイミン)などのポリアルキレンイミンであり、このようなポリマーは、生体適合性であるという利点を有する。他の利点は、望ましくない副作用を導き得る二次産物なしにNOが放出されることである。
【0030】
本発明によるポリマーは、電子スピニング、ガススピニング、空気スピニング、湿スピニング、乾スピニング、融解スピニング、およびゲルスピニングにより製造できる。電子スピニングは、懸濁化ポリマーを荷電させる方法である。特定の電圧において、印加された電場と該ジェットにより担持された電荷との相互作用によって生成した牽引力に応答して、ポリマーの微細なジェットが表面から放出される。この方法により、ナノ線維などの一束のポリマー線維が生成する。このポリマー線維のジェットは処理される表面へと方向付けることができる。
【0031】
さらに、米国特許第6,382,526号、米国特許第6,520,425号、および米国特許第6,695,992号は、このようなポリマー線維の製造に関する方法および用具を開示している。これらの技法は、線維形成業界で、線維を形成できる液体および/または溶液の空気スピニングとしても知られているガス流スピニングに、一般に基づいている。
【0032】
NO溶出ポリマーに関する他の例は、米国特許第5,770,645号に提供されており、そこでは、ポリマー1200原子量単位当たり、少なくとも1つの−NOX基で誘導体化されたポリマーが開示されており、Xは、1または2である。一例は、S−ニトロシル化ポリマーであり、遊離チオール基のニトロシル化に好適な条件下、ポリチオール化ポリマーをニトロシル化剤と反応させることによって調製される。
【0033】
アクロン大学は、移植片など、永久的に移植される医療用具の表面上にナノスピニングされうるNO溶出L−PEI分子を開発し、このような用具を移植した際に、治癒過程の著しい改善および炎症の減少を示している。米国特許第6,737,447号によると、医療用具に対するコーティングによって、線状ポリ(エチレンイミン)−ジアゼニウムジオレートのナノ線維を用いた一酸化窒素の送達が提供される。線状ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレートは、制御された様式で一酸化窒素(NO)を放出する。
【0034】
しかし、米国特許第6,737,447号の文脈における「制御された」の意味は、一酸化窒素がある一定の期間、該コーティングから溶出する、すなわち、一酸化窒素が一度には溶出しないという事実にのみ関するものである。したがって、米国特許第6,737,447号に関する「制御された」の解釈は、本発明の「調節性」の意味とは異なっている。本発明による「調節または制御」は、一酸化窒素の溶出を変化させ、それによって異なる溶出プロフィルを達成する可能性として解釈されることが意図されている。
【0035】
O−ニトロシル化基を含んでなるポリマーもまた可能性のある一酸化窒素溶出ポリマーである。したがって、本発明の一実施形態において、一酸化窒素溶出ポリマーは、ジアゼニウムジオレート基、S−ニトロシル化基およびO−ニトロシル化基、またはそれらの組み合わせを含んでなる。
【0036】
本発明のさらに他の実施形態において、前記一酸化窒素溶出ポリマーは、ジアゼニウムジオレート基を介して一酸化窒素が装填され、処置部位で一酸化窒素を放出するように処理される、L−PEI−NO(線状ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレート)などのポリ(アルキレンイミン)ジアゼニウムジオレートである。
【0037】
好適な一酸化窒素溶出ポリマーのいくつかの他の例は、アミノセルロース、アミノデキストラン、キトサン、アミノ化キトサン、ポリエチレンイミン、PEI−セルロース、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリウレタン、ポリ(ブタンジオールスペルメート)、ポリ(イミノカルボネート)、ポリペプチド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレン、ポリ(ビニルクロリド)、およびポリジメチルシロキサン、またはこれらの任意の組み合わせを含んでなる群から選択され、上記のこれらのポリマーは、多糖主鎖またはセルロース主鎖などの不活性の主鎖に移植される。
【0038】
本発明のさらに他の実施形態において、一酸化窒素溶出ポリマーはO−誘導体化NONOエートであり得る。この種のポリマーは、一酸化窒素の放出に酵素反応を必要とすることが多い。
【0039】
一酸化窒素溶出ポリマーとして好適であり得るポリマーの他の記述法は、L−PEIなど、第二級アミン基(=N−H)を含んでなるポリマー、またはアミノセルロースなど、側鎖として第二級アミン(=N−H)を有するポリマーである。
【0040】
一酸化窒素溶出ポリマーは、先に記述したように、主鎖内に、または側鎖として、第二級アミンを含んでもよい。これは良好な一酸化窒素溶出ポリマーになる。第二級アミンは、一酸化窒素の装填が容易となる強い負電荷を有するはずである。第二級アミンの近く、炭素原子などの窒素原子の隣接原子上に、窒素(N)よりも高い電気陰性度を有するリガンドが存在する場合、ポリマーに一酸化窒素を装填することはきわめて難しい。他方、第二級アミンの近く、炭素原子などの窒素原子の隣接原子上に、陽電性のリガンドが存在する場合、アミンの電気陰性度は高まり、それによって、一酸化窒素溶出ポリマーに一酸化窒素を装填する可能性が増大する。
【0041】
本発明の一実施形態において、一酸化窒素ポリマーは、塩によって安定化できる。ジアゼニウムジオレート基などの一酸化窒素溶出基は通常陰性なので、一酸化窒素溶出基を安定化させるためには、カチオンなどの陽性の対イオンが使用できる。このカチオンは、例えば、Na、K、Li、Be2+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、および/またはSr2+などの周期律表の第1族または第2族のいずれかのカチオンを含んでなる群から選択できる。同一の一酸化窒素溶出ポリマーの異なる塩は異なる性質を有する。この方法で、異なる目的のために、好適な塩(またはカチオン)を選択できる。カチオン安定化ポリマーの例は、L−PEI−NO−Na、すなわち、ナトリウムにより安定化したL−PEIジアゼニウムジオレート、およびL−PEI−NO−Ca、すなわち、カルシウムにより安定化したL−PEIジアゼニウムジオレートである。
【0042】
本発明の他の実施形態は、一酸化窒素溶出ポリマー、または一酸化窒素溶出ポリマーと担体材料との混合物と、吸収剤とを混合することを含んでなる。該ポリマー、またはポリマー混合物は、吸収剤を介して、水または体液などの活性化性の液体をはるかに速やかに吸収し得るため、この実施形態により、一酸化窒素の溶出促進という利点が提供される。一実施形態において、一酸化窒素溶出ポリマー、または一酸化窒素溶出ポリマーと担体材料との混合物に、80%(w/w)の吸収剤を混合し、他の実施形態において、一酸化窒素溶出ポリマー、または一酸化窒素溶出ポリマーと担体材料との混合物に、10%(w/w)から50%(w/w)の吸収剤を混合する。
【0043】
一酸化窒素の溶出は、水などのプロトン供与体によって活性化されるため、一酸化窒素溶出ポリマー、または一酸化窒素溶出ポリマーと担体材料との混合物の、前記プロトン供与体への接触を保持することは有利であり得る。適応症が、長時間の一酸化窒素溶出を必要とする場合、一酸化窒素溶出ポリマー、または一酸化窒素溶出ポリマーと担体材料との混合物の、前記プロトン供与体への接触を保持する可能性を提供するシステムは有利である。したがって、本発明のさらに他に実施形態において、一酸化窒素の溶出は、吸収剤の添加によって調節できる。吸収剤は、水などのプロトン供与体を吸収し、長時間の間、プロトン供与体の一酸化窒素溶出ポリマーへの接触を保持する。前記吸収剤は、ポリアクリレート、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロースおよび微結晶セルロース、綿、および澱粉を含んでなる群から選択できる。この吸収剤は、充填剤としても使用できる。この場合、前記充填剤は、一酸化窒素溶出ポリマー、または前記一酸化窒素溶出ポリマーと担体材料との混合物に、所望のテクスチャーを与え得る。
【0044】
一実施形態において、該用具は、図1によるカテーテルの形態であり、このカテーテルは、カテーテルの補助により、例えば、胸膜、膀胱、血管系、耳などからの種々の体液の排液、および薬剤、薬物、生理食塩水などの注入のための使用に好適である。
【0045】
本発明によるカテーテルのコア材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリ乳酸、澱粉、セルロース、ポリヒドロキシルアルカノエート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質ベースのポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、シリコーン、ポリテトラフルオロエタン、ポリビニルクロリド、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ゴム類、および/またはこれらの任意の組み合わせなど、先行技術による任意の好適な材料であり得る。
【0046】
次いで、前記コア材料の表面を本発明によるNO溶出ポリマーによって被覆する。これは、前記コア材料上への前記NO溶出ポリマーの電子スピニング、空気スピニング、ガススピニング、湿スピニング、乾スピニング、融解スピニング、またはゲルスピニングにより達成される。
【0047】
本発明の他の実施形態において、本発明によるNO溶出ポリマーは、コア材料に組み込まれる。この実施形態は、血液などの体液に面しているカテーテルの表面にNO溶出ポリマーを提示し、それによって、カテーテルのこの側面の抗血栓効果を得るという利点を有する。
【0048】
これは、前記カテーテルをモールドする前に、本発明によるNO溶出ポリマーの線維、ナノ粒子またはミクロスフェアを該コア材料に組み込むことによって達成できる。
【0049】
これらの線維、ナノ粒子、またはミクロスフェアは、L−PEI(線状ポリエチレンイミン)およびB−PEI(分枝状ポリエチレンイミン)などの、本発明に含まれたNO溶出ポリマーから形成でき、これらのポリマーは、一酸化窒素の放出後、生体適合性であるという利点を有する。
【0050】
それらはまた、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリ乳酸、澱粉、セルロース、ポリヒドロキシルアルカノエート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質ベースのポリマー、ゼラチン、生物分解性ポリマー、綿、およびラテックス、またはこれらの任意の組み合わせなど、任意の好適な材料にカプセル化することもできる。このカプセル化は、任意の理由で、時間に関してNOの溶出を調節する必要がある場合に実施される。
【0051】
本発明の内容において、用語の「カプセル化」は、ナノ線維または線維の発泡体、薄膜、非織マットなどの三次元マトリックス、NO溶出ポリマーを固定する能力を有する他の材料に、一酸化窒素溶出ポリマーを固定するか、または任意の好適な材料に一酸化窒素溶出ポリマーを封入することと解釈されることが意図されている。
【0052】
一酸化窒素溶出ポリマーからの一酸化窒素の溶出を制御または調節することにおいて、3つの重要な因子は、水または体液などのプロトン供与体がジアゾリウムジオレート基などの一酸化窒素放出ポリマーといかに速く接触するか、一酸化窒素溶出ポリマー周囲の環境の酸性度、および一酸化窒素放出ポリマー周囲の環境の温度(高温は一酸化窒素の溶出を促進する)である。
【0053】
本発明の一実施形態において、L−PEI−NOなどの一酸化窒素溶出ポリマーを担体ポリマーと混合して、一酸化窒素の溶出を遅速化または延長化する。また、他の実施形態において、一酸化窒素溶出ポリマーを1つ超の担体ポリマーと混合し、それによって溶出または放出を、特定の必要に合わせて調整することもできる。このような必要とは、例えば、一酸化窒素溶出ポリマーの環境が疎水性である第1の期間中は、低溶出で、一酸化窒素溶出ポリマーの環境が親水性である第2の期間中は、高溶出であることが考えられる。これは例えば、生分解性ポリマーを用いることにより、第1の期間中は低溶出が得られ、その後、疎水性ポリマーが溶解してしまったら、親水性ポリマーが一酸化窒素の高溶出を提供することによって達成できる。したがって、より疎水性の担体ポリマーは、水または体液などの活性化プロトン供与体が該担体ポリマーをより緩やかに浸透するために、一酸化窒素の溶出をより緩徐にする。他方、親水性ポリマーは逆に作用する。親水性ポリマーの一例はポリエチレンオキシドであり、疎水性ポリマーの一例はポリスチレンである。これらの担体ポリマーは、一酸化窒素溶出ポリマーと混合してから好適な線維に電子スピニングされうる。当業者は、同様な目的に他のどのポリマーを使用し得るかを知っている。図2は、2種の異なるポリマー混合物:酸性環境中、親水性担体ポリマーと混合した一酸化窒素溶出ポリマー(A)、および中性環境中、疎水性担体ポリマーと混合した一酸化窒素溶出ポリマー(B)に関する2種の溶出プロフィル(NO濃度対時間)を示している。
【0054】
一実施形態において、この担体ポリマーは、疎水性または親水性を有する他の材料と置換される。本内容において、用語の「担体材料」は、親水性または疎水性を有する担体ポリマーおよび他の材料を含むものとして解釈する必要がある。
【0055】
本発明の他の実施形態において、L−PEI−NOなどの一酸化窒素溶出ポリマーからの一酸化窒素の溶出は、プロトンの存在に影響される。これは、より酸性の環境は一酸化窒素のより速やかな溶出を提供することを意味する。一酸化窒素溶出ポリマー、または一酸化窒素溶出ポリマーと担体材料との混合物を、アスコルビン酸溶液などの酸性液によって活性化することによって、一酸化窒素の溶出を加速できる。
【0056】
上記の担体ポリマーおよび担体材料は、一酸化窒素溶出の調節以外の特徴に影響を及ぼし得る。このような特徴の一例は機械的強度である。
【0057】
担体ポリマーまたは担体材料に関して、NO溶出ポリマーは本発明の実施形態全てにおいて、これらの材料のいずれかに組み込むか、共にスピニングするか、その上部にスピニングすることができる。このスピニングとしては、電子スピニング、空気スピニング、ガススピニング、乾スピニング、湿スピニング、融解スピニング、およびゲルスピニングが挙げられる。この方法で、予め規定された溶出特性を有する一酸化窒素溶出ポリマーおよび担体ポリマーまたは担体材料を含んでなるポリマー混合物の線維を製造することができる。これらの特性は、異なる適用における異なる溶出プロフィルに関して特注できる。
【0058】
さらに他の実施形態において、粉末、ナノ粒子またはミクロスフェアなどの一酸化窒素溶出ポリマーは、発泡体に組み込むことができる。該発泡体は、一酸化窒素溶出ポリマーへのプロトン供与体の輸送を促進する開放細胞構造を有し得る。該発泡体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリ乳酸、澱粉、セルロース、ポリヒドロキシルアルカノエート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質ベースのポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ポリオレフィン、およびラテックス、またはこれらの任意の組み合わせ、またはラテックスなどの任意の好適なポリマーであり得る。
【0059】
該用具は、尿道、血流、胸膜、咽頭、気管などの意図される領域に適用される。
【0060】
該用具を適用する場合、NOの溶出は、本発明によるNO溶出ポリマーを含む該用具が、哺乳動物の身体の隣接組織中の湿分または水分に接触する時に開始される。
【0061】
適用領域の治療効果は、NO溶出ポリマーが適用領域にNOを溶出し、それによって、対象となっている組織の抗微生物、抗炎症、抗血栓または抗ウィルスの効果が達成される際に得られる。
【0062】
本発明の他の実施形態において、他の活性成分と組み合わせた場合、血液潅流および血管拡張の増加により、効果の改善がもたらされる。このように、NOおよび他の活性成分の相乗効果は、本発明の範囲内にある。
【0063】
セルディンガー(Seldinger)法は、経皮血管カテーテル化とも称される、動脈系の経皮穿刺およびカテーテル化のための方法である。これは、スウェーデンの放射線学者、スヴェン−イヴァル セルディンガー(Sven−Ivar Seldinger)に因んで名づけられている。この方法は、局所麻酔および少皮膚切開の後、例えば、中心マンドレルを有する、または有さない1.0mmから1.2mmの外径を有する薄壁針を用いて穿刺することに基づいている。その針を、およそ45度の角度で動脈内に進める。マンドリルの除去後、その針を拍動逆流が見られるまで引き戻す。次いで、可撓性の先端を有するガイドワイヤ(通常、J−ガイドワイヤ)を該血管内に進める。手動圧縮下、該針を引き抜き、ガイドワイヤ上、動脈内にカテーテルを進め、所望の位置に配置する。次いで、ガイドワイヤを引き戻し、該カテーテルの逆流をチェックして、生理食塩水で慎重にすすぐ。該セルディンガー法は、以下のステップを含んでなる:1)薄壁穿刺進入針により、動脈などの血管の穿刺、2)マンドリルを除去し、進入針の管腔を介してガイドワイヤを通し、該血管にガイドワイヤ全長の一部を進入させること、3)該針の引き抜き、4)任意に、メスで穿刺部位を広げること、5)例えば、捻り運動により、ガイドワイヤ上、血管内にカテーテルを進めること、および6)カテーテルを配置後、ガイドワイヤを除去して、カテーテル使用の準備ができる。
【0064】
胆管、腎臓の集合系などの他の管構造のカテーテル化、ならびに腫瘍排液などにも同一の技法が使用できる。
【0065】
本発明のアクセス用具の一定の実施形態により、セルディンガー法に用いられるカテーテルが、本明細書に記載されたNO溶出ポリマーを組み込む。
【0066】
本発明の実施形態において、該用具は、ベンフロン(venflones);尿道カテーテル、中心静脈カテーテル(CVC)、末梢静脈カテーテル(PVC)、および皮下静脈口(SVP)などのカテーテル;胸膜排液および他の創傷排液のための管などの排液管;圧力および/または血液ガスの監視を意図した製品;および静脈内包帯からなる群から選択できる。
【0067】
該用具が尿道カテーテルの形態である場合、前記尿道カテーテルに、抗微生物、抗炎症、抗血栓および抗ウィルスの効果を備える。それにより、細菌の感染、より少数ではあるが、尿路性敗血症、および/または細菌学的石形成などの、先行技術による副作用の大部分を抑えながら、該尿道カテーテルは長期間機能を果たすことができる。したがって、さらに、抗生物質による処置の必要がない。
【0068】
該用具がベンフロン中心静脈カテーテル、末梢静脈カテーテル、および皮下静脈口の形態である場合、前記用具は抗微生物、抗炎症、抗血栓および抗ウィルスの効果を備える。それにより、細菌の感染、カテーテル内に存在する血液の凝集による該用具の詰まりなどの先行技術による副作用の大部分を抑えながら、該尿道カテーテルは長期間機能を果たすことができる。したがって、欠陥のない注入または注射を確実にするために、各注射、注入、輸血および血液採取の前後に本発明による用具をフラッシュする必要がない。
【0069】
該用具が排液管の形態である場合、前記排液管に、抗微生物、抗炎症、抗血栓および抗ウィルスの効果を備える。それにより、細菌の感染、排液管内に存在する血液の凝集による該用具の詰まりなどの先行技術による副作用の大部分を抑えながら、該用具は長期間機能を果たすことができる。
【0070】
該用具が血圧また血液ガスなどの監視のための装置の形態である場合、該用具に、抗微生物、抗炎症、抗血栓および抗ウィルスの効果を備える。それにより、細菌の感染、カテーテル内に存在する血液の凝集による該用具の詰まりなどの先行技術による副作用の大部分を抑えながら、該用具は長期間機能を果たすことができる。
【0071】
他の実施形態において、該用具は縫合糸またはステイプルの形態である。本発明による縫合糸またはステイプルに、抗微生物、抗炎症、および抗ウィルスの効果を備える。それにより、細菌の感染などの先行技術による副作用の大部分を抑えながら、前記縫合糸およびステイプルは長期間機能を果たすことができる。したがって、本発明による縫合糸またはステイプルは、先行技術による縫合糸またはステイプルの場合のように、適用14日以内に除去する必要がない。本発明による縫合糸またはステイプルは抗炎症効果を提供するため、抗生物質による処置が必要となる危険性が著しく減少する。
【0072】
該用具が静脈内包帯の形態である場合、静脈内カテーテル周囲の領域に、抗微生物、抗炎症、抗血栓および抗ウィルスの効果を備える。この実施形態は、そうでない場合には、感染性物質に接触する高い可能性にさらされる領域を防御する利点を有する。
【0073】
NO溶出ポリマーは、本発明の実施形態全てにおいて、これらの用具のいずれかに合体させるか、共にスピニングするか、その上部にスピニングすることができる。
【0074】
前述の実施形態には、NOを装填したL−PEI材料を使用することが好ましい。本発明の全ての実施形態による用具が、哺乳動物の隣接組織の湿分および/または水分に接触する時に、NO放出の活性化が達成される。
【0075】
他の実施形態において、可溶性薄膜が哺乳動物の隣接組織の湿分および/または水分に接触する際に、対象となっている領域でNOを溶出させるために、線維、ナノ線維、またはミクロスフェアを、本発明による用具の内側で崩壊する可溶性薄膜に組み込むことができる。
【0076】
本発明の他の実施形態において、該用具は、一方向のみにNOを溶出させる。この種の実施形態では、本発明による用具の一側面は、NOに対して非浸透性である。これは、一酸化窒素に対して低浸透性、実質的に非浸透性、または非浸透性を有する本発明による用具の一側面に材料を適用することによって達成できる。このような材料は、フルオロポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリ乳酸、澱粉、セルロース、ポリヒドロキシルアルカノエート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質ベースのポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、およびラテックス、またはこれらの任意の組み合わせを含んでなる群から選択できる。この実施形態はまた、NO溶出ポリマーとして製造することが容易であり、例えば、L−PEIナノ線維は、記載したプラスチック、ラテックス、または綿の本発明による用具の表面に電子スピニングまたはガスジェットスピニングされうる。これは、機械的(該ポリマーの磨耗)、化学的(使用前に該用具を失活させる湿分)などの外的影響から、包装中、輸送中、および使用前のNO溶出ポリマーを保護できる。
【0077】
本発明のさらに他の実施形態において、該NO溶出ポリマーは、薬剤および医薬品のための増強剤として作用する。この実施形態により、重要な価値のある2つの処置を1つの処置に合わせる利点を有する用具が提供される。
【0078】
したがって、このような用具は、該用具からNOが溶出する際、相乗効果を達成できる。NOは血管拡張効果を有する。血管の拡張した組織は、一定の薬剤および医薬品の影響をより受けやすく、したがって、医薬製剤による処置がより容易であり、しかもNOは、抗炎症、抗菌、抗血栓、および抗ウィルスの効果を有する。したがって、予想外の驚くべき効果的な処置が提供される。
【0079】
カテーテルは通常、押出しによって製造される。本発明によるカテーテルおよびベンフロンを製造する場合、NO溶出ポリマーは、押出されるポリマー混合物に組み込むことができる。この製造方法により、前記カテーテル/ベンフロンを通って液体または体液にNOを溶出させる能力を有するカテーテルおよびベンフロンが提供される。
【0080】
本発明による他の製造方法において、該カテーテルおよびベンフロンは、2ステップの方法で製造される。第1のステップにおいて、該カテーテル/ベンフロンの押出しを行う。第2のステップにおいて、電子スピニング、空気スピニング、ガススピニング、湿スピニング、乾スピニング、融解スピニング、またはゲルスピニングにより、該カテーテル/ベンフロンの内側および外側をNO溶出ポリマーによって被覆する。
【0081】
該用具は、0.001ppmから5000ppmの間など、0.01ppmから3000ppmの間など、0.1ppmから1000ppmの間など、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100ppmなどの治療的用量において、前記溶出ポリマーから一酸化窒素(NO)を溶出させる。濃度は、該濃度が測定される場所に依って大きく変化し得る。濃度が実際のNO溶出ポリマーの近くで測定される場合、該濃度は数千ppmの高さになり得、一方、この場合の組織内部での濃度は1ppmから1000ppmの間などとかなり低いことが多い。
【0082】
本発明による用具におけるNO溶出ポリマーは、ヒドロ活性化銀などの銀と組み合わせることができる。本発明による装置へ銀を合体させることにより、治療的処置にさらなる増強が与えられる。銀は、銀イオンの形態で該用具から放出できることが好ましい。該用具への銀の合体により、いくつかの利点が提供できる。このような利点の一例は、銀が装置それ自体を細菌またはウィルスの無い状態に保ち得る一方で、一酸化窒素溶出ポリマーは、標的部位に一酸化窒素の治療的用量を溶出することである。
【0083】
該用具は、例えば、L−PEIまたはL−PEIを含んでなる他のポリマーの電子スピニングにより、またはL−PEIと組み合わせ処理して製造できる。L−PEIは、特有の電圧で荷電し、L−PEIに微細なジェットがL−PEIポリマー線維の束として放出される。ポリマー線維のこのジェットを、処置すべき表面に方向づけできる。処置すべき表面は、例えば、任意の好適な材料であり得る。次いで、L−PEIの電子スピニングされた線維が前記材料に付着し、本発明による用具上にL−PEIのコーティング/層を形成する。
【0084】
勿論、上記による他のNO溶出ポリマーを、本発明による用具上に電子スピンすることが可能であり、それもまた、本発明の範囲内にある。
【0085】
一実施形態において、本発明によるNO溶出ポリマーは、純粋なNO溶出ポリマー線維を得ることができるような方法で電子スピンされる。
【0086】
NO溶出ポリマーを、他の好適なポリマー(単数または複数)と共に電子スピンすることもまた本発明の範囲内にある。
【0087】
該用具上への、前記NO溶出ポリマーのガス流スピニング、空気スピニング、湿スピニング、乾スピニング、融解スピニング、またはゲルスピニングもまた本発明の範囲内にある。
【0088】
本発明による製造方法は、処置すべき領域とNO溶出ポリマー線維との広い接触面、NO溶出ポリマーの効果的使用、および該用具のコスト効果的方法という利点を提供する。
【0089】
本発明は任意の好適な形態で実施できる。本発明による実施形態の要素および成分は、任意の好適な方法で、物理的に、機能的に、および論理的に実施できる。実際、機能性は、単一の単位で、複数の単位で、または他の機能的単位の一部として実施できる。
【0090】
本発明を、特定の実施形態に関して、上記に記載したが、本明細書に記載された特定の形態に限定する意図はなく、本発明は、添付の請求項によってのみ限定されるのであって、上記の特定の実施形態以外の他の実施形態が、等しくこれらの添付請求項の範囲内にあり得る。
【0091】
該請求項において、用語の「含んでなる/含んでなり」は、他の要素または工程の存在を除外するものではない。さらに、個々に挙げられていても、複数の手段、要素、または方法工程が実施できる。また、個々の特徴を異なる請求項に含み得るが、これらを有利に組み合わせることが可能であり、異なる請求項に含まれていることは、特徴の組み合わせが実行できないおよび/または有利でないということを意味するものではない。また、単数での記述が複数を除外するものではない。用語の「a」、「an」、「第1の」、「第2の」などは、複数を除外するものではない。請求項に記述された記号は、明確にする例としてのみ提供されており、決して請求項の範囲を限定するものとして考えるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態によるカテーテルを示す略図である。
【図2】一酸化窒素溶出ポリマーと担体材料との2種の異なる混合物に関する2つの異なる溶出プロフィルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染の防止および/または抗血栓効果の獲得を可能にする血管内、組織内または器官内医療用アクセス用具であって、
前記用具が治療的用量の一酸化窒素(NO)を溶出するように構成された一酸化窒素(NO)溶出ポリマーを含んでなり、
使用中、前記ポリマーが一酸化窒素(NO)を溶出する際、前記用具が、哺乳動物組織の隣接領域を、前記一酸化窒素に曝露させるように構成されており、
担体材料が、使用中、前記治療的用量の一酸化窒素(NO)の溶出を調節し、制御するように、前記一酸化窒素(NO)溶出ポリマーが、前記担体材料に合体していることを特徴とする医療用具。
【請求項2】
前記一酸化窒素(NO)溶出ポリマーが、ジアゼニウムジオレート基、S−ニトロシル化基、およびO−ニトロシル化基、またはこれらの任意の組み合わせを含んでなる請求項1に記載の医療用具。
【請求項3】
前記一酸化窒素(NO)溶出ポリマーが、前記ジアゼニウムジオレート基、S−ニトロシル化基、およびO−ニトロシル化基、またはこれらの任意の組み合わせを介して一酸化窒素(NO)が装填されており、隣接した哺乳動物組織への一酸化窒素(NO)の放出のために処理されたL−PEI(線状ポリエチレンイミン)である請求項1または2に記載の医療用具。
【請求項4】
前記一酸化窒素溶出ポリマーが、アミノセルロース、アミノデキストラン、キトサン、アミノ化キトサン、ポリエチレンイミン、PEI−セルロース、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリウレタン、ポリ(ブタンジオールスペルメート)、ポリ(イミノカルボネート)、ポリペプチド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリスチレン、ポリ(ビニルクロリド)、およびポリジメチルシロキサン、またはこれらの任意の組み合わせを含んでなる群から選択され、挙げられたこれらのポリマーが、多糖主鎖またはセルロース主鎖などの不活性な主鎖に移植されている請求項1に記載の用具。
【請求項5】
ベンフロン(venflones);尿道カテーテル、中心静脈カテーテル(CVC)、末梢静脈カテーテル(PVC)、および皮下静脈口(SVP)などのカテーテル;胸膜排液および他の創傷または器官の排液のための管などの排液管;圧力および/または血液ガスの監視を意図した製品;人工肛門バッグ用ガスケット;咽頭および気管用の管;および静脈内包帯からなる群から選択される請求項1に記載の医療用具。
【請求項6】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリ乳酸、澱粉、セルロース、ポリヒドロキシルアルカノエート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質ベースのポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、シリコーン、ポリテトラフルオロエタン、ポリビニルクロリド、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ゴム類、および/またはこれらの任意の組み合わせなどのコア材料と混合した前記NO溶出ポリマーを含む請求項5に記載の医療用具。
【請求項7】
前記用具が湿分または水分に供された際に部分的に崩壊性である請求項1に記載の用具。
【請求項8】
前記用具が、前記哺乳動物組織の治療的処置のために構成された銀を含んでなる請求項1から請求項7のいずれかに記載の用具。
【請求項9】
前記ポリマーが、線維、ナノ粒子またはミクロスフェアの形態において前記用具中に含まれる請求項1から請求項8のいずれかに記載の用具。
【請求項10】
前記ナノ粒子、またはミクロスフェアが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリ乳酸、澱粉、セルロース、ポリヒドロキシルアルカノエート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質ベースのポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料と合体、好ましくは、その中にカプセル化されている請求項9に記載の用具。
【請求項11】
前記担体材料が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ポリ乳酸、澱粉、セルロース、ポリヒドロキシルアルカノエート、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、タンパク質ベースのポリマー、ゼラチン、生分解性ポリマー、綿、ラテックス、またはこれらの任意の組み合わせを含んでなる群から選択される請求項1に記載の用具。
【請求項12】
前記一酸化窒素溶出ポリマーが、主鎖内の第二級アミン、または側鎖としての第二級アミンを含んでなる請求項1に記載の用具。
【請求項13】
陽性リガンドが、前記第二級アミンの隣接原子上に位置する請求項12に記載の用具。
【請求項14】
吸収剤を含んでなる請求項1から11に記載の用具。
【請求項15】
前記吸収剤が、ポリアクリレート、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロース(CMC)、微結晶セルロース、綿、または澱粉、あるいはそれらの任意の組み合わせを含んでなる群から選択される請求項14に記載の用具。
【請求項16】
カチオンを含んでなり、前記カチオンが一酸化窒素溶出ポリマーを安定化している、請求項1、11、または14に記載の用具。
【請求項17】
前記カチオンが、Na、K、Li、Be2+、Ca2+、Mg2+、Ba2+、および/またはSr2+、あるいはそれらの任意の組み合わせを含んでなる群から選択される請求項16に記載の用具。
【請求項18】
前記感染の防止および/または抗血栓効果の獲得のために使用される際に、治療的用量の一酸化窒素(NO)を溶出するように構成された一酸化窒素(NO)溶出ポリマーを選択すること、
前記治療的用量の一酸化窒素(NO)の溶出を調節および制御するように構成されている担体材料を選択すること、
前記用具の使用中、前記担体材料が、前記治療的用量の一酸化窒素(NO)の溶出を調節および制御するように、一酸化窒素(NO)溶出材料内に、NO溶出ポリマーを前記担体材料に組み込むこと、および
前記NO溶出ポリマーが、使用中、一酸化窒素(NO)を溶出する際、前記用具が、その使用中、前記用具に隣接した部位を前記一酸化窒素に曝露させるために構成されるように、前記一酸化窒素溶出材料を好適な形態内に、または担体へのコーティングとして配置して、前記用具の少なくとも一部を形成すること、
を含んでなる、請求項1に記載の、感染の防止および/または抗血栓効果の獲得を可能にする、血管内、組織内または器官内医療用アクセス用具のための製造方法。
【請求項19】
前記配置が、NO溶出ポリマーの電子スピニング、空気スピニング、ガススピニング、湿スピニング、乾スピニング、融解スピニング、またはゲルスピニングを含んでなる請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記一酸化窒素(NO)溶出ポリマーの前記選択が、複数種の一酸化窒素(NO)溶出ポリマー粒子、好ましくはナノ線維、ナノ粒子またはミクロスフェアの選択を含んでなる請求項18または19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記用具の一酸化窒素溶出特性を既定するために、前記担体材料への前記NO溶出ポリマーの前記組み込みが、前記担体材料へ前記NO溶出ポリマーを合体すること、前記担体材料と共に前記NO溶出ポリマーをスピニングすること、または前記担体材料の上部に前記NO溶出ポリマーをスピニングすることを含んでなる請求項18または19に記載の製造方法。
【請求項22】
前記装置に銀を合体することをさらに含んでなる請求項18に記載の製造方法。
【請求項23】
請求項1から17のいずれかに記載の血管内、組織内または器官内医療用具の製造のための一酸化窒素(NO)溶出ポリマーの使用法であって、
前記用具が、哺乳動物組織に隣接して使用される際、前記溶出ポリマーから治療的用量の一酸化窒素(NO)を溶出するような方法で一酸化窒素が前記用具に装填される、使用法。
【請求項24】
前記治療的用量が、0.01ppmから3000ppmなど、0.1ppmから1000ppmなど、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100ppmなど、0.001ppmから5000ppmである請求項23に記載の使用法。
【請求項25】
請求項1から17に記載の血管内、組織内または器官内医療用具を哺乳動物の身体に進入する部位に配置すること、および
哺乳動物組織の隣接領域を前記用具のポリマーから、使用中、溶出された一酸化窒素に曝露させること、
を含んでなる、血管内、組織内または器官内医療用具を使用する際に、感染を防止および/または抗血栓効果を獲得するための治療方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−534037(P2008−534037A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502365(P2008−502365)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050896
【国際公開番号】WO2006/100156
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507271798)ノーラブズ エービー (11)
【Fターム(参考)】