説明

一酸化窒素放出ポリマー

本発明は、一酸化窒素(NO)を放出する疎水性ポリマーに結合した炭素系ジアゼニウムジオラートを含む組成物に関する。炭素系ジアゼニウムジオラートポリマーは、その後ニトロソアミンを形成することなく、生理学的条件下においてNOを自発的に放出する。本発明はまた、炭素系ジアゼニウムジオラートポリマーを調製する方法、このようなポリマーを含む組成物、このような組成物を使用する方法、およびこのようなポリマー組成物を使用する装置にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、米国特許法第120条の下で、2005年12月6日に出願された米国仮出願第60,742,264号に対する優先権を主張する。
【0002】
連邦政府支援研究に対する声明
本研究は、米国国立衛生研究所の国立心肺血液研究所の米国公衆衛生局助成金第R44HL062729号による支援を受けたものである。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
本発明は概して、一酸化窒素放出ポリマーに関する。より具体的には、本発明は、炭素系ジアゼニウムジオラート一酸化窒素放出ポリマーに関する。本発明はまた、NO放出炭素系ジアゼニウムジオラートが表面に共有結合されており、それによってNOの放出が高い生体適合性またはその他の有益な特性を被覆表面に与える、新規クラスのコーティングのための方法も提供する。一つの可能な好ましい用途として、このクラスのコーティングは医療装置において使用される。
【0004】
一酸化窒素(NO)は、心血管系の恒常性、神経伝達、および免疫応答において種々の機能的役割を有する生体調節分子である(Moncada et al., 1990; Marletta et al., 1990)。NOはこのような広範な生理学的活動に影響を与えるので、薬物ならびに生理学的および薬理学的な研究ツールとして使用するために化合物にNOを放出させることが望ましい。治療的および臨床的な用途のために生理学的条件下においてNOを発生することができる無毒性で非発癌性の化合物が、さらに望ましい。しかし、そのような化合物の開発は困難であった。
【0005】
NOを放出する低分子(式量600未満の分子として一般に記載される)が周知であり、有機硝酸塩などの一部のクラスが数十年の間治療的に使用されている。しかし、これらは、体全体を循環して無数の生理学的影響を生じ、それによって恒常性の妨害につながりうるので、投与が困難である。多くの治療用途に関しては、より局在化されたNO放出が好ましいと思われる。
【0006】
より最近になって、NOドナー分子がポリマーマトリックスの一部である、ポリマーマトリックスに会合している、ポリマーマトリックスに組み込まれている、またはさもなくばポリマーマトリックスに結合している、ポリマー形態のNO放出化合物が記載されている。大多数のポリマーNOドナーは、窒素系すなわちN系ジアゼニウムジオラートクラスであり、これらは以下に開示されている:米国特許第5,405,919号、Keefer and Hrabie;同第5,525,357号、Keefer et al;同第5,632,981号、Saavedra et al.;同第5,676,963号、Keefer and Hrabie;同第5,691,423号、Smith et al.;同第5,718,892号、Keefer and Hrabie;同第5,962,520号、Smith and Rao;同第6,200,558号、Saavedra et al.;同第6,270,779号、Fitzhugh et al.;米国特許出願公開番号US 2003/0012816 A1、West and Masters。ジアゼニウムジオラートは、-[N(O)NO]-官能基を含むクラスの化合物であり、100年以上公知である(Traube, 1898)。
【0007】
N系ジアゼニウムジオラートポリマーは、生理学的条件下での局所的、自発的、かつ一般に制御可能なNOの放出という利点を有するが、全てのN系ジアゼニウムジオラートに関連する大きな欠点は、式1に示されるように、分解の際に発癌性ニトロソアミンを形成する可能性があることである(Parzuchowski et al., 2002)。多くのニトロソアミンは高い発癌性を有し、ニトロソアミン形成の可能性によって、安全性の問題から、N系ジアゼニウムジオラートクラスのNOドナーを治療剤として考慮することが制限される。

【0008】
S-ニトロソ化合物(米国特許第5,770,645号および同第6,232,434号、Stamler et al.)およびC-ニトロソ化合物(米国特許第5,665,077号、Rosen et al.;および米国特許第6,359,182号、Stamler et al.)を含む、その他の非ジアゼニウムジオラート型のポリマーNOドナーが記載されている。S-ニトロソ化合物に関しては、それらの治療的な素質は、微量のCu(I)イオンおよびおそらくCu(II)イオンの存在下におけるそれらの迅速かつ予測不可能な分解(NOの放出)により制限されている(Dicks et al., 1996; Al-Sa’doni et al., 1997)。さらに、還元型組織チオールへのNOの直接移行によってS-ニトロソ化合物が分解されうる(Meyer et al., 1994; Liu et al., 1998)。最後に、多数の哺乳類酵素が、S-ニトロソ化合物からのNOの放出を触媒しうる(Jourd”heuil et al, 1999a; Jourd”heuil et al., 1999b; Askew et al., 1995; Gordge et al., 1996; Freedman et al., 1995; Zai et al., 1999; Trujillo et al., 1998)。しかし、イオン、酵素、およびチオールの組織レベルおよび血中レベルは各個人における広範な変動性に曝され、それによって、NO放出が被験者ごとに予測不可能になる。血液および組織の成分に対するNO放出の依存性および感受性は、薬物中のニトロソ化合物の治療可能性を制限する。
【0009】
NOを放出する、炭素系すなわちC系ジアゼニウムジオラート低分子(低分子とは一般に、式量600以下の分子と記載されている)へのいくつかの言及が開示されている(米国特許第6,232,336号;同第6,511,991号;同第6,673,338号;Arnold et al. 2000;Arnold et al. 2002a;Arnold et al. 2002b)。N系ジアゼニウムジオラートとは対照的に、C系ジアゼニウムジオラートは、構造的にニトロソアミンを形成することができないが、生理学的条件下において自発的にNOを放出する能力を維持しているので、望ましい。さらに、化合物1モルあたり2モルのNOを放出したNO放出イミデート、1,4-ベンゾキノンジオキシムに由来するメタントリスジアゼニウムジオラートおよびビスジアゼニウムジオラートに関する報告が最近発表されている(Arnold et al. 2000; Arnold et al. 2002a; Arnold et al. 2002b)。これらの低分子のNO放出特性は好ましいが、低分子を投与後に体内で局在化させることは非常に困難で、身体全体に容易に拡散する傾向があり、これによって、NOの全身性副作用を生じる可能性がある。イミデート由来分子およびチオイミデート由来分子に特有のさらなる問題点とは、イミデートは組織タンパク質と反応して共有結合を形成しうるので、血液、血漿、細胞、または組織との接触を伴う適用においてイミデートのタンパク質結合特性が望ましくない可能性があるということである(以下参照)。
【0010】
最近、炭素系すなわちC系ジアゼニウムジオラートポリマーが開示された(米国特許第6,673,338号、Arnold et al., 2004)。N系ジアゼニウムジオラートとは対照的に、C系ジアゼニウムジオラートは、構造的にニトロソアミンを形成することができないが、生理学的条件下において自発的にNOを放出する能力を維持するので、望ましい。Arnoldらは、以下の一般式(A)のイミデートおよびチオイミデートを開示している:

ある態様において、式中、R1はポリマーである。イミデート官能基は通常、タンパク質を結合させるおよび/または架橋させるために使用されるので、イミデート官能基を使用してポリマーまたはバイオポリマー(タンパク質)に分子を結合させる態様もまた、彼らによって開示されている(Sekhar et al., 1991; Ahmadi and Speakman, 1978)。しかし、イミデートはタンパク質組織と反応する可能性があるので、イミデートのタンパク質結合特性は、血液、血漿、細胞、または組織との接触を伴う用途において望ましくないと考えられる。
【0011】
従って、生理学的条件下において予測可能かつ調節可能な量で自発的にNOを放出するNO放出ポリマーの必要性が未だに存在するが、ここで、NO放出は、金属、チオール、酵素、または変動可能なNO放出をもたらしうるその他の組織因子の影響を受けず、かつ、ポリマーは、分解してニトロソアミンを形成できず、タンパク質に共有結合しない。
【0012】
従って、本発明の目的は、生理学的条件下においてNOの局在化した流れを自発的に発生することができるポリマー骨格に共有結合したC系ジアゼニウムジオラートを含む組成物を提供することである。本発明のさらなる目的とは、予測可能かつ調節可能なNO放出速度を生じるNO放出ポリマーを提供することである。本発明のさらなる目的とは、分解してニトロソアミンを形成せずタンパク質にも共有結合しない、ジアゼニウムジオラートポリマーを提供することである。
【0013】
さらに、本発明の目的とは、ポリマー結合C系ジアゼニウムジオラートを合成する方法を提供することである。本発明のさらなる目的とは、生物学および医学においてC系ジアゼニウムジオラートポリマーを使用する方法を提供することである。本発明のさらなる目的および利点は以下の説明から明らかになるであろう。
【発明の開示】
【0014】
発明の概要
本発明は、ニトロソアミンを形成する可能性なしに、生理学的条件下においてNOを自発的に放出するポリマー組成物を提供することによって、上記の目的を達成する。本発明は、ポリマー骨格に共有結合しているまたはその一部であるC系ジアゼニウムジオラートからのNO発生に関する組成物を提供する。本発明は、酸性プロトンを含むポリマー骨格上の部位で調製されたC系ジアゼニウムジオラートをさらに提供する。
【0015】
本発明は、式1に示す一般構造のNO放出ポリマーを含む。本ポリマーは任意の標準的なポリマー骨格で作製することができる。ある態様において、本ポリマーは、生理学的用途(例えばインプラント)のための生体適合性基質(例えば、ポリ2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル)である。別の態様において、本ポリマーは、疎水性ポリマー基質(例えば、ポリスチレン、PET、ポリメチルメタクリレート)である。任意の置換基Xは、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、R6およびR7がHであってもよいCR6(R7)-、または、置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基を含むがこれらに限定されるわけではない、二価、三価、または四価のリンカー基である。任意の置換基Rは、置換されていないまたは置換された、脂肪族基またはアリール基である。置換基には電子吸引基(例えば、NO2、CN、カルボニル、置換アルキル [例えば-CF3])が含まれるが、これらに制限されるわけではない。任意の置換基Yは、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、R6およびR7がHであってもよいCR6(R7)-、または、置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基を含むがこれらに限定されるわけではない、任意の二価、三価、または四価のリンカー基である。R4置換基は、Na+およびK+などであるがこれらに限定されないアルカリ金属イオン、または米国特許第6,610,660号に記載のジアゼニウムジオラート保護基、またはその他のジアゼニウムジオラート保護基を含むが、これらに限定されるわけではない。本ポリマーは、-R-C(R1)(R2)R3基を有するモノマーを利用して調製されるか、または、Xへのカップリングによる重合の後に添加されてもよい。-R-C(R1)(R2)R3追加(appended)ポリマーは、NOガスの存在下で塩基を使用して、C系ジアゼニウムジオラートに変換される。

【0016】
さらなる態様は、式2に示すポリマー骨格の一部としてC基を含む酸性プロトンを有しうる。本ポリマーは、酸性プロトンを有する適切な接触可能C原子を含む任意の標準的なポリマー骨格で作製することができる。ある態様において、本ポリマーは、生理学的用途(例えばインプラント)のための生体適合性基質(例えば、ポリ2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル)である。別の態様において、本ポリマーは、疎水性ポリマー基質(例えば、ポリスチレン、PET、ポリメチルメタクリレート)である。R1は、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、R6およびR7がHであってもよいCR6(R7)、または、置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基を含むがこれらに限定されるわけではない、二価、三価、または四価のリンカー基である。R4置換基は、Na+およびK+などであるがこれらに限定されないアルカリ金属イオン、または米国特許第6,610,660号に記載のジアゼニウムジオラート保護基、またはその他のジアゼニウムジオラート保護基を含むが、これらに限定されるわけではない。置換基R2=-N2O2R4、H、またはその他の基である。式2のポリマーは、NOガスの存在下で塩基を使用して、C系ジアゼニウムジオラートに変換される。

【0017】
さらなる態様は、式3に示す各モノマー単位における複数の活性部位としてC基を含む酸性プロトンを有しうる。本ポリマーは、酸性プロトンを有する適切な接触可能C原子を含む任意の標準的なポリマー骨格で作製することができる。ある態様において、本ポリマーは、生理学的用途(例えばインプラント)のための生体適合性基質(例えば、ポリ2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル)である。別の態様において、本ポリマーは、疎水性ポリマー基質(例えば、ポリスチレン、PET、ポリメチルメタクリレート)である。置換基Xは、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、R6およびR7がHであってもよいCR6(R7)、または、置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基を含むがこれらに限定されるわけではない、二価、三価、または四価のリンカー基である。好ましくは、置換基Xは、置換されたまたは置換されていない脂肪族基またはアリール基である。R1およびR2は同じであっても同じでなくてもよく、かつこれらは、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、R6およびR7がHであってもよいCR6(R7)、または、置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基を含むがこれらに限定されるわけではない、二価、三価、または四価のリンカー基である。R4置換基は、Na+およびK+などであるがこれらに限定されないアルカリ金属イオン、または米国特許第6,610,660号に記載のジアゼニウムジオラート保護基、またはその他のジアゼニウムジオラート保護基を含むが、これらに限定されるわけではない。置換基R3、R5=-N2O2R4、H、またはその他の基である。式3のポリマーは、NOガスの存在下で塩基を使用して、C系ジアゼニウムジオラートに変換される。

【0018】
本発明のさらなる態様は、式4に示す一般構造のNO放出ポリマーを含む。本ポリマーは任意の標準的なポリマー骨格で作製することができる。ある態様において、本ポリマーは、生理学的用途(例えばインプラント)のための生体適合性基質(例えば、ポリ2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル)である。別の態様において、本ポリマーは、疎水性ポリマー基質(例えば、ポリスチレン、PET、ポリメチルメタクリレート)である。Rは、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、R6およびR7がHであってもよいCR6(R7)、または、置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基を含むがこれらに限定されるわけではない、二価、三価、または四価のリンカー基である。ペンダントアリール基は1つまたは複数の置換基Gを有しうり、GはHまたはその他の基であってよい。R1基は、-N2O2R4、H、またはその他の基であってよい。R4置換基は、Na+およびK+などであるがこれらに限定されないアルカリ金属イオン、または米国特許第6,610,660号に記載のジアゼニウムジオラート保護基、またはその他のジアゼニウムジオラート保護基を含むが、これらに限定されるわけではない。本ポリマーは、ベンジル基が結合したモノマーを用いて調製されうり、またはこれを重合後に加えてもよい。ベンジル追加ポリマーは、NOガスの存在下で塩基を使用して、C系ジアゼニウムジオラートに変換される。

【0019】
本発明のさらなる態様は、式5に示す構造の一部としてフェニル基を含有するNO放出ポリマーを含む。この態様は、以下の一般式によって表される:
R3-C(R1)x(N2O2R2)y 式5
式中、yは1〜3であってよく、xは0〜2であってよく、x+y=3であり、R1はイミデートでもチオイミデートでもない。xが2である場合、R1は同じでも異なってもよい。R1は以下によって表されうるが、これらに限定されるわけではない:シアノ基などであるがこれに限定されない電子吸引基;-OCH3、-OC2H5、および-OSi(CH3)3などであるがこれらに限定されないエーテル基;三級アミン;または、-SC2H5および-SPh(置換されたまたは置換されていない)などであるがこれに限定されないチオエーテル。R1基は、-N(C2H5)2などであるがこれに限定されないアミンであってもよい。R2は、Na+、K+、または米国特許第6,610,660号に記載のジアゼニウムジオラート保護基、またはその他のジアゼニウムジオラート保護基を含むがこれらに限定されるわけではなく、R3はフェニル基である。フェニル基は、(式6に示すように)ポリマー骨格由来のペンダントであってもよく、(式7に示すように)ポリマー骨格の一部であってもよく、または、上記で式4に示したようにリンカーによってポリマー骨格に結合してもよい。従来技術を上回るこの技術の上述の利点に加えて、後述のように、式4、式6、および式7におけるR1基の操作によって、放出されるNOの放出動態および量を変更することができる。本明細書に記載の全態様(式1〜式7)に関しては、-N2O2R4基を有する炭素原子に結合した基の改変によって、放出されるNOの量および動態が変更される。

【0020】
発明の詳細な説明
ジアゼニウムジオラートを形成するために酸性プロトンを含むポリマーを用いる態様
ケトンおよびエステルを含む、酸性プロトンを含む特定のクラスの化合物は、C系ジアゼニウムジオラートを形成することができる [Arulsamy, N.; Bohle, D.S. J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 10860-10869; Arulsamy, N.; Bohle, D.S.; Korich, A.L.; Mondanaro, K.R. Tetrahedron Lett. 2003, 44, 4267-4269]。類推によって、アルカンニトリル、ニトロアルカン、およびアリール置換トルエン誘導体(例えばニトロ、フルオロ、トリフルオロメチルなどの電子吸引基を1つまたは複数含む)などの化合物も、穏やかな条件下で制御可能な様式で(例えば、巨大塩基(bulky base)、有機溶媒中で周囲温度にて80 psiのNO)、構造に応じてモノ、ビス、またはトリスジアゼニウムジオラート誘導体を形成するであろう。現在まで、NO放出膜のための固定化されたN系ジアゼニウムジオラートの利用に関する報告が存在するにもかかわらず [a) Keefer, L. Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 2003; b) 43, 585-607; Zhang, H.; Annich, G.M.; Miskulin, J.; Stankiewicz, K.; Osterholzer, K.; Merz, S.I.; Bartlett, R.H., Meyerhoff, M.E. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 5015-5024; c) Parzuchowski, P.G.; Frost, M.C. Meyerhoff, M.E. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 12182-12191]、C系ポリマーの報告は限定されている。米国特許第6,673,338号は、ポリマー結合したC系のイミデートジアゼニウムジオラートおよびチオイミデートジアゼニウムジオラートの組成物のみに焦点を当てており、これらは、上記で論じた望ましくないタンパク質結合特性を有する。
【0021】
本発明は、炭素原子に結合した-[N(O)NO]-官能基を含む、新規クラスのポリマー材料を提供する。本発明のC系ポリマージアゼニウムジオラートは、いくつかの理由に関して有用である。例えば、C系ポリマージアゼニウムジオラートは、強力なニトロソアミン発癌物質を形成する可能性なしに、生理学的条件下において薬理学的に関連のあるレベルの一酸化窒素を放出する能力のために、薬理学的作用物質として、調査ツールとして、または医療装置の一部として有益である。本発明のC系ポリマージアゼニウムジオラートは不溶性である。この特性によって、このクラスの材料は、1) 静止したまたは流動している水溶液へのNOの送達;および2) 一酸化窒素送達後のろ過または分離による溶液または懸濁液からのポリマーの除去能力を含むがこれらに限定されない、いくつかの用途および利点が与えられている。さらに、本材料の不溶性ポリマー特性によって、NO放出医療装置を構成するために本発明の態様を使用することができる。
【0022】
本発明は、式1に示す一般構造のNO放出ポリマーを含む。本ポリマーは任意の標準的なポリマー骨格で作製することができる。ある態様において、本ポリマーは、生理学的用途(例えばインプラント)のための生体適合性基質(例えば、ポリ2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル)である。別の態様において、本ポリマーは、疎水性ポリマー基質(例えば、ポリスチレン、PET、ポリメチルメタクリレート)である。任意の置換基Xは、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、R6およびR7がHであってもよいCR6(R7)、または、置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基を含むがこれらに限定されるわけではない、二価、三価、または四価のリンカー基である。任意の置換基Rは、置換されていないまたは置換された、脂肪族基またはアリール基である。置換基には電子吸引基(例えば、NO2、CN、カルボニル、置換アルキル [例えば-CF3])が含まれるが、これらに制限されるわけではない。任意の置換基Yは、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、R6およびR7がHであってもよいCR6(R7)、または、置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基を含むがこれらに限定されるわけではない、任意の二価、三価、または四価のリンカー基である。R4置換基は、Na+およびK+などであるがこれらに限定されないアルカリ金属イオン、またはジアゼニウムジオラート保護基を含むが、これらに限定されない。本ポリマーは、-R-C(R1)(R2)R3基を有するモノマーを利用して調製されるか、または、Xへのカップリングによる重合の後に添加されてもよい。-R-C(R1)(R2)R3追加ポリマーは、NOガスの存在下で塩基を使用して、C系ジアゼニウムジオラートに変換される。

【0023】
さらなる態様は、式2に示すポリマー骨格の一部としてC基を含む酸性プロトンを有しうる。本ポリマーは、酸性プロトンを有する適切な接触可能C原子を含む任意の標準的なポリマー骨格で作製することができる。ある態様において、本ポリマーは、生理学的用途(例えばインプラント)のための生体適合性基質(例えば、ポリ2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル)である。別の態様において、本ポリマーは、疎水性ポリマー基質(例えば、ポリスチレン、PET、ポリメチルメタクリレート)である。R1は、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、R6およびR7がHであってもよいCR6(R7)、または、置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基を含むがこれらに限定されるわけではない、二価、三価、または四価のリンカー基である。R4置換基は、Na+およびK+などであるがこれらに限定されないアルカリ金属イオン、または米国特許第6,610,660号に記載のジアゼニウムジオラート保護基、またはその他のジアゼニウムジオラート保護基を含むが、これらに限定されるわけではない。置換基R2=-N2O2R4、H、またはその他の基である。式2のポリマーは、NOガスの存在下で塩基を使用して、C系ジアゼニウムジオラートに変換される。

【0024】
さらなる態様は、式3に示す各モノマー単位における複数の活性部位としてC基を含む酸性プロトンを有する。本ポリマーは、酸性プロトンを有する適切な接触可能C原子を含む任意の標準的なポリマー骨格で作製することができる。ある態様において、本ポリマーは、生理学的用途(例えばインプラント)のための生体適合性基質(例えば、ポリ2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル)である。別の態様において、本ポリマーは、疎水性ポリマー基質(例えば、ポリスチレン、PET、ポリメチルメタクリレート)である。置換基Xは、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、R6およびR7がHであってもよいCR6(R7)-、または、置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基を含むがこれらに限定されるわけではない、二価、三価、または四価のリンカー基である。好ましくは、置換基Xは、置換されていないまたは置換された脂肪族基またはアリール基である。R1およびR2は同じであっても同じでなくてもよく、かつこれらは、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、R6およびR7がHであってもよいCR6(R7)、または、置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基を含むがこれらに限定されるわけではない、二価、三価、または四価のリンカー基である。R4置換基は、Na+およびK+などであるがこれらに限定されないアルカリ金属イオン、または米国特許第6,610,660号に記載のジアゼニウムジオラート保護基、またはその他のジアゼニウムジオラート保護基を含むが、これらに限定されるわけではない。置換基R3、R5=-N2O2R4、H、またはその他の基である。式3のポリマーは、NOガスの存在下で塩基を使用して、C系ジアゼニウムジオラートに変換される。

【0025】
本発明のさらなる態様は、式4に示す一般構造のNO放出ポリマーを含む。本ポリマーは任意の標準的なポリマー骨格で作製することができる。ある態様において、本ポリマーは、生理学的用途(例えばインプラント)のための生体適合性基質(例えば、ポリ2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル)である。別の態様において、本ポリマーは、疎水性ポリマー基質(例えば、ポリスチレン、PET、ポリメチルメタクリレート)である。Rは、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、R6およびR7がHであってもよいCR6(R7)、または、置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基を含むがこれらに限定されるわけではない、二価、三価、または四価のリンカー基である。ペンダントアリール基は1つまたは複数の置換基Gを有しうり、GはHまたはその他の基であってよい。R1基は、-N2O2R4、H、またはその他の基であってよい。R4置換基は、Na+およびK+などであるがこれらに限定されないアルカリ金属イオン、または米国特許第6,610,660号に記載のジアゼニウムジオラート保護基、またはその他のジアゼニウムジオラート保護基を含むが、これらに限定されるわけではない。本ポリマーは、ベンジル基が結合したモノマーを用いて調製されうり、またはこれを重合後に加えてもよい。ベンジル追加ポリマーは、NOガスの存在下で塩基を使用して、C系ジアゼニウムジオラートに変換される。

【0026】
本発明の文脈において、多種多様なポリマーのいずれかを使用することができる。必要なのは、選択されるポリマーが生物学的に許容可能であることだけである。本発明における使用に適しており、かつ一般式において「ポリマー」、「ポリマー1」、または「ポリマー2」(「ポリマー」と総称される)として使用されるポリマーの例には以下が含まれるが、これらに限定されるわけではない: ポリスチレン;ポリ(α-メチルスチレン);ポリ(4-メチルスチレン);ポリビニルトルエン;ポリステアリン酸ビニル;ポリビニルピロリドン;ポリ(4-ビニルピリジン);ポリ(4-ビニルフェノール);ポリ(1-ビニルナフタレン);ポリ(2-ビニルナフタレン);ポリ(ビニルメチルケトン);ポリ(フッ化ビニリデン);ポリ(ビニルベンジルクロリド);ポリビニルアルコール;ポリ(酢酸ビニル);ポリ(4-ビニルビフェニル);ポリ(9-ビニルカルバゾール);ポリ(2-ビニルピリジン);ポリ(4-ビニルピリジン);ポリブタジエン;ポリブテン;ポリ(アクリル酸ブチル);ポリ(1,4-ブチレンアジペート);ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート);ポリ(エチレンテレフタレート);ポリ(コハク酸エチレン);ポリ(ブチルメタクリレート);ポリ(エチレンオキシド);ポリクロロプレン;ポリエチレン;ポリテトラフルオロエチレン;ポリ塩化ビニル;ポリプロピレン;ポリジメチルシロキサン;ポリアクリロニトリル;ポリアニリン;ポリスルホン;ポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコール;ポリアクリル酸;ポリアリルアミン;ポリ(ベンジルメタクリレート):ポリエチレンイミンなどの誘導体化ポリオレフィン;ポリ(エチルメタクリレート);ポリイソブチレン;ポリ(イソブチルメタクリレート);ポリイソプレン;ポリ(DL-ラクチド);ポリ(メチルメタクリレート);ポリピロール;ポリ(カルボネートウレタン);ポリ[ジ(エチレングリコール)アジペート];ポリエピクロロヒドリン;フェノール樹脂(ノボラックおよびレゾール);ポリ(アクリル酸エチル);ならびに、グラフトおよび共重合を含むそれらの組み合わせ。
【0027】
ポリマーは、以下を含むがこれらに限定されないスチレン樹脂によって表すこともできる:アクリロニトリルブタジエンスチレンターポリマー;アクリロニトリル-塩素化ポリエチレン-スチレンターポリマー;アクリルスチレンアクリロニトリルターポリマー;スチレンアクリロニトリルコポリマー;オレフィン修飾スチレンアクリロニトリルコポリマー;およびスチレンブタジエンコポリマー。
【0028】
さらに、ポリマーは、以下を含むがこれらに限定されないポリアミドによって表すこともできる:ポリアクリルアミド;ポリ[4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-alt-1,4-ブタンジオール/ジ(プロピレングリコール)/ポリカプロラクトン];ポリ[4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-alt-1,4-ブタンジオール/ポリ(ブチレンアジペート)];ポリ[4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-alt-1,4-ブタンジオール/ポリ(エチレングリコール-co-プロピレングリコール)/ポリカプロラクトン];ポリ[4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)-alt-1,4-ブタンジオール/ポリテトラヒドロフラン];芳香族ポリアミドのテレフタル酸およびイソフタル酸誘導体(例えば、それぞれNylon 6TおよびNylon 6I);ポリ(イミノ-1,4-フェニレンイミノカルボニル-1,4-フェニレンカルボニル);ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド);ポリ(p-ベンズアミド);ポリ(トリメチルヘキサメチレンテレフタレータミド(terephthalatamide));ポリ-m-キシレンアジパミド;ポリ(メタ-フェニレンイソフタルアミド)(例えばNomex);これらのコポリマーおよび組み合わせなど。
【0029】
同様に、ポリマーは、以下を含むがこれらに限定されないポリマーによって表すこともできる:ポリエステル;ポリアリレート;ポリカーボネート;ポリエーテルイミド;ポリイミド(例えばKapton);ならびに、ポリケトン(ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトンなど);これらのコポリマーおよび組み合わせなど。
【0030】
ポリマーは、以下を含むがこれらに限定されない生分解性ポリマーによって表すこともできる:ポリ乳酸;ポリグリコール酸;ポリ(ε-カプロラクトン);コポリマー;ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗生物質、および核酸などのバイオポリマー;スターバーストデンドリマー、ならびにそれらの組み合わせ。
【0031】
ポリマーはまた、シランおよびシロキサンの単層および多層によって表すこともできる。
【0032】
ベンジル炭素のジアゼニウムジオラート化
本発明のさらなる態様は、式5に示す構造の一部としてフェニル基を含有するNO放出ポリマーを含む。この態様は、以下の一般式によって表される:
R3-C(R1)x(N2O2R2)y 式5
式中、yは1〜3であってよく、xは0〜2であってよく、x+y=3であり、R1はイミデートでもチオイミデートでもない。xが2である場合、R1は同じでも異なってもよい。R1は、シアノ基などであるがこれに限定されない電子吸引基;-OCH3、-OC2H5、および-OSi(CH3)3などであるがこれらに限定されないエーテル基;三級アミン;または、-SC2H5および-SPh(置換されたまたは置換されていない)などであるがこれに限定されないチオエーテルによって表されうるが、これらに限定されない。R1基は、-N(C2H5)2などであるがこれに限定されないアミンであってもよい。R2は、Na+、K+、または米国特許第6,610,660号に記載のジアゼニウムジオラート保護基、またはその他の保護基を含むがこれらに限定されるわけではなく、R3はフェニル基である。フェニル基は、(式6に示すように)ポリマー骨格由来のペンダントであってもよく、(式7に示すように)ポリマー骨格の一部であってもよく、または、上記で式4に示したようにリンカーによってポリマー骨格に結合してもよい。従来技術を上回る本技術の上述した利点に加えて、式4、式6、および式7におけるR1基の操作によって、放出されるNOの放出動態および量を変更することができる。放出されるNOの量および動態を変更するためのR1基の改変を以下に記載する。

【0033】
本発明は、炭素原子に結合した-[N(O)NO]-官能基を含む新規クラスのポリマー材料を提供する。本発明のC系ポリマージアゼニウムジオラートは数多くの理由により有用である。例えば、C系ポリマージアゼニウムジオラートは、強力なニトロソアミン発癌物質を形成する可能性なしに、生理学的条件下において薬理学的に関連のあるレベルの一酸化窒素を放出できるその能力のために、薬理学的作用物質として、調査ツールとして、または医療装置の一部として有益である。本発明のC系ポリマージアゼニウムジオラートは不溶性である。この特性によって、1) 静止したまたは流動している水溶液へのNOの送達;および2) 一酸化窒素送達後のろ過または分離による溶液または懸濁液からのポリマーの除去能力を含むがこれらに限定されないいくつかの用途および利点が、このクラスの材料に与えられている。さらに、本材料の不溶性ポリマー特性によって、本発明の態様をNO放出医療装置を構築するために使用することができる。
【0034】
式4、式5、式6、および式7において、R1はイミデートでもチオイミデートでも表されない。R1は、シアノ基などであるがこれに限定されない電子吸引基;-OCH3、-OC2H5、および-OSi(CH3)3などであるがこれらに限定されないエーテル基;三級アミン;または、-SC2H5および-SPh(式中、Phは置換されているまたは置換されていない)などであるがこれらに限定されないチオエーテルによって表されうるが、これらに限定されるわけではない。R1基はまた、-N(C2H5)2などであるがこれに限定されないアミンであってもよく、別の態様においては、エナミン以外のアミンである。
【0035】
式1〜式4におけるR4基ならびに式5、式6、および式7におけるR2基は、それぞれカウンターカチオンまたは共有結合保護基でありうる。R4基またはR2基がカウンターカチオンである態様において、該基は、以下を含むがこれらに限定されない、薬学的に許容されるまたは許容されない任意のカウンターカチオンでありうる:ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属;カルシウムおよびマグネシウムなどのIIa族金属;鉄、銅および亜鉛などの遷移金属、ならびに銀および金などのその他のIb族元素。使用されうるその他の薬学的に許容されるカウンターカチオンには、アンモニウム、コリンなどであるがこれに限定されないその他の四級アミン、ベンザルコニウムイオン誘導体が含まれるが、これらに限定されるわけではない。当業者によって理解されるように、負荷電ジアゼニウムジオラート基は等価な正の電荷により均衡されるはずである。従って、式5を参照すると、1つまたは複数のカウンターカチオン(R2)の原子価数は、ジアゼニウムジオラート基の化学量論数に一致するはずであり、共にyで表される。2つ以上のジアゼニウムジオラートがベンジル炭素に結合しておりかつR4またはR2が1価である態様において、R4またはR2は同じカチオンであっても異なるカチオンであってもよい。
【0036】
また、R4(式1〜式4)またはR2(式5)は、置換されたまたは置換されていないアリール基、およびスルホニル基、グリコシル基、アシル基、アルキル基、またはオレフィン基を含むがこれらに限定されない、ジアゼニウムジオラート官能基のO2-酸素に共有結合した任意の無機基または有機基であってよい。アルキル基およびオレフィン基は、直鎖、分岐鎖、または置換鎖であってよい。R4(式1〜式4)またはR2(式5)は、メチルもしくはエチルなどの飽和アルキルまたは(アリルまたはビニルなどの)不飽和アルキルであってよい。ビニル保護ジアゼニウムジオラートは、チトクロームP-450によって代謝的に活性化されることが公知である。R4(式1〜式4)またはR2(式5)は、2-ブロモエチル、2-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシエチル、またはS-アセチル-2-メルカプトエチルなどであるがこれに限定されない、官能基化アルキルであってもよい。後者の例はエステラーゼ感受性の保護基である。前者の例は、化学的官能基ハンドルを提供する。ペプチドをジアゼニウムジオラート分子に連結するためにこのような戦略の使用が成功している。メトキシメチル保護基を付加することによって、加水分解を延長することができる。R4(式1〜式4)またはR2(式5)は、2,4-ジニトロフェニルなどのアリール基であってもよい。この種類の保護基は、グルタチオンおよびその他のチオールなどの求核試薬に対して感受性を有する。いくつかの異なる保護基を使用できること、および/または、全てのジアゼニウムジオラート部分が同一の保護基で保護されるわけではないか全てのジアゼニウムジオラート基が全く保護されないように保護基付加の化学量論を調整できることが、当業者には明らかである。異なる保護基を使用することによってまたはジアゼニウムジオラートに対する保護基の比の化学量論を変動させることによって、実施者はNO放出を操作して所望の速度にすることができる。
【0037】
R3(式5)はフェニル基である。フェニル基は、(式6に示すように)ポリマー骨格由来のペンダントであってもよく、または(式7に示すように)ポリマー骨格の一部であってもよい。非ポリマー態様において、R3は、置換されたまたは置換されていないフェニル基であってもよい。
【0038】
ペンダントフェニル基による態様
ポリマー由来のペンダントフェニル環は置換基を有してもよい。置換フェニルは、化合物のNO放出特性を妨害せずポリマー骨格への共有結合を維持する任意の部分で、置換されてもよい。適当な部分には、脂肪族、芳香族および非芳香族の環状基が含まれるが、これらに限定されるわけではない。脂肪族部分は炭素および水素からなるが、ハロゲン、窒素、酸素、硫黄、またはリンを含有することもできる。芳香族環状基は少なくとも1つの芳香環からなる。非芳香族環状基は、芳香環を含有しない環構造からなる。また、フェニル環は多環系に組み込まれてもよく、その例には、アクリジン、アントラセン、ベンザゼピン(benzazapine)、ベンゾジオキセピン(benzodioxepin)、ベンゾチアジアゼピン(benzothiadiazapine)、カルバゾール、シンノリン(cinnoline)、フルオレセイン、イソキノリン、ナフタレン、フェナントレン、フェナントラジン(phenanthradine)、フェナジン、フタラジン(phthaladine)、キノリン、キノキサリン、および、多環式芳香族炭化水素などその他が含まれるが、これらに限定されるわけではない。フェニル環に対して置換可能な追加の部分には、モノ置換アミノまたはジ置換アミノ、非置換アミノ、アンモニウム、アルコキシ、アセトキシ、アリールオキシ、アセトアミド、アルデヒド、ベンジル、シアノ、ニトロ、チオ、スルホン基、ビニル、カルボキシル、ニトロソ、トリハロシラン、トリアルキルシラン、トリアルキルシロキサン、トリアルコキシシラン、ジアゼニウムジオラート、ヒドロキシル、ハロゲン、トリハロメチル、ケトン、ベンジル、およびアルキルチオが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0039】
本発明によるポリマーは、市販のクロロメチル化ポリスチレンに由来してもよい。または、クロロメチル化ポリスチレンは、以下を含むがこれらに限定されない、いくつかの方法で合成してもよい:ルイス酸触媒存在下でのクロロメチルアルキルエーテルの使用(Merrifield, 1963);塩化リチウム存在下での酢酸コバルト(III)を用いたポリ(4-メチルスチレン)の酸化(Sheng and Stover, 1997);または相間移動触媒存在下での次亜塩素酸ナトリウム溶液によるp-メチルスチレンの処理(Mohanraj and Ford, 1986; Le Carre et al., 2000)。
【0040】
本発明の一態様において、スキーム1に概説するように、ポリマーは、式6を使用して二段階法で合成されうる。第1の段階(1)において、-Cl原子を求核置換基で置換するために、当技術分野において公知の方法を用いてクロロメチル化ポリスチレンを処理する。求核置換基は、ジアゼニウムジオラート官能基を導入するためにベンジル炭素プロトンを活性化することが望ましい。本発明の別の態様において、クロロメチル化ポリスチレンの-Cl原子を置換する原子は電気陰性のヘテロ原子である。-Cl原子を置換する求核基は電子吸引性であることが好ましい。置換基はシアノ基であることが最も好ましい。追加の置換基は、-OR、-NR1R2、および-SRを含む群から選択されうる。-OR基は、-OCH3、-OC2H5、および-OSi(CH3)3でありうるが、これらに限定されない。置換基は、-SC2H5および-SPh(式中、Ph基は置換されているか置換されていない)などであるがこれらに限定されないチオール基であってもよい。また置換基は、-N(C2H5)2などであるがこれに限定されないアミンであってもよい。
【0041】
スキーム1の第2の段階(2)は、NOガスの存在下での塩基によるポリマーの処理を必要とする。反応の溶媒は、塩基の存在下においてNOと反応すべきではない(例えば、アセトニトリルまたはエタノール)。選択される溶媒は、ポリスチレンを膨潤させることが好ましい。好適な溶媒にはTHFおよびDMFが含まれるが、これらに限定されるわけではない。好適な塩基にはナトリウムメトキシド、ナトリウムトリメチルシラノレート、およびカリウムtert-ブトキシドが含まれるが、これらに限定されるわけではない。本発明の方法によると、これらの手法に従ってクロロメチル化ポリスチレンから誘導された、得られた樹脂は、水性媒体中で自発的にNOを放出する多数の-[N(O)NO]-官能基を含む。式5、式6、式7、およびスキーム1において言及されるR2置換基は、上記の薬学的に許容される対イオン、加水分解性の基、または酵素的に活性化された加水分解性の基を表す。

【0042】
シラン/シロキサンポリマーを用いる態様
本発明の別の態様において、シラン/シロキサンポリマーは、式1のポリマー骨格、およびフェニルを含む式6を構成しうる。ポリマーがシロキサンで表される式6のシロキサン態様において、NO放出シロキサンポリマーはスキーム1で概説されたのと同様の手法で合成することができ、ここで、材料にまずシラン/シロキサンをコーティングし、次いでNO放出物質に変更する。表面調製およびシラン/シロキサン沈着の一般的な説明を以下に記載する。
【0043】
表面調製
本発明の一態様である、基板表面に共有結合したNO放出コーティングを作製するためには、ペンダントヒドロキシル基を提示する表面を有することが重要である。当業者に公知であるように、多数の表面を、表面にヒドロキシル基ペンダントを含むように容易に変更する(酸化する)ことができる。そのような表面処理には、濃NaOHまたはKOHへの浸漬または過酸化水素の濃縮液への曝露が含まれるが、これらに限定されるわけではない(Srinivasan, 1988; Endo, 1995;Yoshida, 1999; Fitzhugh, Unites States Patent No.: 6,270,779; Kern, 1995)。実施例の項では、表面ヒドロキシル基を製造するための具体的な方法論を説明する。
【0044】
表面が適当な化学的形態となったら、シロキサンコーティングを沈着させることができる。高密度な水平方向の単層を必要とする態様のためにはトリクロロシロキサン誘導体が好ましく、より厚い垂直方向のコーティングのためにはアルコキシシロキサン誘導体が好ましい。各態様には、特異的な化学的方法論が必要である。
【0045】
単層の形成
C系ジアゼニウムジオラートコーティングの高密度な単層が好ましい本発明の態様において、式1に従ってジアゼニウムジオラート化ポリマーを調製するために、市販の3-アセトキシトリメトキシシランの沈着が使用されうる。市販の4-シアノメチルフェニルトリエトキシシラン、4-クロロメチルフェニルトリクロロシラン、または、ベンジル炭素原子に対するジアゼニウムジオラート官能基の置換を可能にする任意の基でベンジル炭素が置換されていてもよいペンダントメチルフェニル基を含む任意のトリクロロシランの沈着によって、式6が調製される。シアノ置換ベンジル炭素が望ましい態様に関しては、市販の4-シアノメチルフェニルトリエトキシシランを表面に沈着させることが好ましい。他の全ての態様に関しては、市販の4-クロロメチルフェニルトリクロロシランを表面に沈着させ、その後の段階において、後述の「求核試薬の置換」の項に記載する適切な求核試薬を使用してクロロ(chloro)原子を所望の置換基で置換することが好ましい。この方法は、所望のベンジル炭素置換基を有するトリクロロシロキサン誘導体の潜在的に複雑な合成の必要性を排除する。類似の条件下でトリアルコキシシランを使用して単層を産生できることは注目されるべきであるが(Bierbaum, 1995)、しかし、ごく少量の表面の水に対するトリクロロシロキサン誘導体の高い反応性によって、トリクロロ誘導体は単層適用に好ましくなっている。
【0046】
典型的には、トリクロロシランは、不活性雰囲気下においてトルエンまたはヘキサデカンなどの炭化水素溶媒の0.1〜3%トリクロロシラン溶液を使用して、無水条件を用いて沈着される。トリクロロシラン溶液は、液浸、蒸着、スプレーコーティング、フローコーティング、ブラッシング、および当業者に公知のその他の方法を含むがこれらに限定されない種々の方法によって、無水条件下および不活性雰囲気下で所望の表面に適用することができる。重合は、通常、1〜24時間で完了する。次に材料を炭化水素溶媒で濯ぎ、110℃において20〜60分間熱硬化させて、以下に記載するように表面のヒドロキシルと共有結合を形成させ、さらなる使用のために調製する。任意の特定の理論に結びつけることを望むわけではないが、単層は以下のように形成される。トリクロロシラン誘導体の重合に必要な水は、大部分の基板の表面に認められる内在性の(intrinsic)水によって提供される。この固有の表面の水は重合反応を駆動するために利用可能な唯一の水であるので、シラン誘導体の重合は材料の表面でのみ起こりうる。従って、表面への水の局在化によって重合は表面の単層に限定され、固体表面に接触しているトリクロロシラン分子だけが加水分解されて、密に充填された単層を産生する。溶媒中で厳密な無水条件が観察されない場合など、水が多すぎると、おそらく基板表面に沈着する機会を得る前であってさえシランが迅速に重合することになる(Silberzan, 1991)。比較すると、95%アルコール溶液におけるアルコキシシランの加水分解により、コーティング対象の基板が溶液中に導入される前にシランの有意なオリゴマー化が生じる。数多くの報告がこのスキームを裏付けている(Ulman, 1996;Sagiv, 1980;Wasserman, 1989;Bierbaum, 1995)。
【0047】
トリクロロシラン誘導体の複数回適用を用いてこの単層沈着過程を反復し、それによって以降の単層を多数構築できることは注目すべきであり、当業者に公知である(Tillman, 1989)。
【0048】
三次元ネットワークの形成
厚く、より垂直方向に重合されたC系ジアゼニウムジオラートコーティングが好ましい本発明の態様において、アルコキシシランクラスのシロキサンが好ましい。3-アセトキシプロピルアルコキシシラン、シアノメチルフェニルアルコキシシラン誘導体、クロロメチルフェニルアルコキシシラン誘導体、または、そのマトリックス内にクロロメチルフェニル基またはシアノメチルフェニル基を持続的に捕捉できる任意のアルコキシシラン誘導体などであるがこれらに限定されない、適当なアルコキシシランが好ましい。一般に、95%エタノール5%水溶液を酢酸でpH 5±0.5に調節し、適切なアルコキシシランを1〜10%(v/v)濃度まで添加する。その後数分間のうちに、アルコキシシラン誘導体は加水分解を受けてシラノールを形成し、これが縮合してオリゴマーを形成する。この時点において、基板を液浸するか、またはさもなくば当業者に公知の方法によりコーティングすることができる。任意の特定の理論に結びつけることを望むわけではないが、シラノールは縮合してより長いオリゴマーとなり、これが、基板表面のヒドロキシルと水素結合して、表面で「毛」のように手を伸ばすことができる。シロキサンは重合し続け、垂直方向のマトリックスを形成する。基板をアルコキシシラン誘導体に曝露する期間は、一般に、形成されるコーティングの厚さに比例する。所望の時点において、コーティングされた材料をエタノールで濯ぎ、望ましい場合には110℃で20〜60分間熱硬化させ、さらなる使用のために調製する。
【0049】
適切なメチルフェニルシロキサン誘導体を、純粋状態で、または、コーティングを形成するための他のシロキサンおよび他の適合可能なポリマーと任意の分画で、使用することができる。
【0050】
所望のシロキサンコーティングが沈着されたら、コーティングと酸化基板表面との間の共有結合の形成が達成できる。これは、限定するわけではないが典型的には110℃で20〜60分間の、乾熱の印加によって実施される。任意の特定の理論に結びつけるわけではないが、乾熱の印加に典型的な条件下で、基板のヒドロキシル化表面に水素結合しているシロキサンコーティング中のヒドロキシル部分は脱水反応によって反応して、強力なケイ素-酸素共有結合を形成する。
【0051】
クロロメチルフェニル基板に対する求核試薬の置換
シアノメチルフェニルシロキサンをコーティング段階で使用する場合には、シアノ基がすぐれた活性化基であるので、ベンジル炭素への求核試薬の添加は必要ない。シアノメチルフェニルシロキサンを使用することにより、実施者はジアゼニウムジオラート化段階に直接進むことができる。クロロメチルフェニルシロキサンまたは他のクロロメチルフェニル誘導体を使用する場合、または実施者が、求核試薬を変更し、それによってジアゼニウムジオラート基の特徴を変化させ、従ってコーティングからのNOの放出速度を改変することを望む場合には、クロロ基を、上記のジアゼニウムジオラート基の導入を可能にする求核試薬と交換しなければならない。この段階は以下のように実施される。コーティング後の基板を、触媒量のヨウ化カリウムおよび最適な求核試薬を含有するDMF溶液に浸す。溶液を、最長24時間、80℃まで加熱する。この間に置換反応が生じる。次に、基板を溶媒から取り出し、新鮮なDMFで洗浄し、窒素気流で乾燥させるかまたは乾燥するまで空気中に放置する。
【0052】
ジアゼニウムジオラート化段階
適切な求核試薬が適切なシロキサン誘導体のベンジル炭素に付加されたら、コーティング後の材料を、THF、DMF、またはMeOHなどの溶媒を含有するParr圧力容器に入れる。ナトリウムトリメチルシラノレートなどの立体障害塩基を添加する。シロキサンネットワークのケイ素-酸素結合は、水酸化物およびアルコキシドなどの攻撃的な求核試薬に感受性であるので、塩基の選択は重要である。不活性ガスで容器から大気を除去し、数気圧の純粋なNOガスに曝露する前に圧力を確認する。1〜3日後、コーティングした材料を取り出し、洗浄して空気乾燥し、アルゴン雰囲気下で4℃で保存する。
【0053】
示された実施例(後述)全てにおいて、C系ジアゼニウムジオラート化合物は、報告された生成物を産生するためにNOガスの存在下で塩基触媒性の(base catalyzed)カルバニオン形成を用いて、対応する非ジアゼニウムジオラート化合物から調製されている。当業者に公知であるその他の公知のジアゼニウムジオラート形成法も、同様に使用できる。一例として、HClおよびNaNO2の存在下での、N-アルキル-O-アルキルヒドロキシルアミンのアルキル保護C系ジアゼニウムジオラート化合物への変換が挙げられる(Kano, K.; Anselme, J.-P. J. Org. Chem. 1993, 58, 1564-1567)。NO放出前にジアゼニウムジオラート部分のアルカリ塩を得るために、本化合物を直接使用することができ、または、脱保護することができる。
【0054】
フェニル基を含むポリマー骨格による態様
上記の種々の例に記載されているポリマーNO放出樹脂は、ポリマー骨格に対する-[N(O)NO]-官能基ペンダントを有する。本発明はまた、ポリマーの骨格内に認められる任意のフェニル環を修飾する方法も提供する。従って、求核試薬を導入して式5に示す分子配列を得るためのその他の手段は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0055】
式7を考慮すると、ポリマー1およびポリマー2は互いに等価であっても異なってもよく、また、ポリブチレンテレフタレート;ポリトリメチレンテレフタレート;およびポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートを含みうるが、これらに限定されるわけではない。また、アラミド(テレフタル酸とジアミンとの反応から合成されるナイロンファミリーのポリマーのクラス)もポリマー1およびポリマー2で表すことができる。このようなアラミドの例は、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)およびポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)を含むが、これらに限定されるわけではない。上記の本発明のその他の態様と同様、ジアゼニウムジオラート官能基を導入するために、求核置換はベンジル炭素プロトンを活性化することが望ましい。
【0056】
好ましい態様において、クロロメチル化ポリスチレンの-Cl原子を置換する原子は電気陰性のヘテロ原子である。-Cl原子を置換する求核基は電子吸引性であることが好ましい。R1に対する好ましい置換基は、これらに限定されるわけではないが以下によって表されうる:シアノ基;-OCH3、-OC2H5、および-OSi(CH3)3などであるがこれらに限定されないエーテル基;三級アミン;ならびに、-SC2H5および-SPh(ここで、Ph基は置換されていてもいなくてもよい)などであるがこれらに限定されないチオエーテル。またR1基は、-N(C2H5)2などであるがこれに限定されないアミンであってもよい。
【0057】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は本発明の例示的な態様において使用され、ここで、式7におけるポリマー1およびポリマー2はエチレン-テレフタレートの反復構造を表す。テレフタル酸とエチレングリコールなどのジオールとの縮合によってポリエステルが産生される。ポリエステルのその他の例は、ジオールを変更することによって作製できる。そのようなポリエステルを、4段階過程でNO放出材料に変換することができる。
【0058】
限定ではなく一例として、スキーム2に示すように、PETのポリマーに含まれる芳香環をホルムアルデヒドおよび酢酸で処理して、ベンジルアルコールを作製することができる(Yang, 2000)。塩化トシルによる処理によって、効果的な脱離基をポリマーに導入する。最適な求核試薬を用いたさらなる処理によってトシレートを置換し、-[N(O)NO]-官能基の導入に必要な構造を提供する。従って、本発明の開示によって、炭素系ジアゼニウムジオラートへと変換するために必要な化学構造を含むように修飾されうる芳香族フェニル基を含む多種多様なポリマーが存在しうることは、当業者には明らかであろう。

【0059】
式1、式5、式6、および式7のベンジル態様からのNOの放出を制御するための包括的な化学的性質および戦略
任意の1つの理論に制約されるわけではないが、本発明にとってベンジル構造(メチルフェニル基)の重要性とは3つの面を有する。第一に、ベンジル炭素は比較的酸性のプロトンを有し、求核試薬の選択は、塩基がプロトンを容易に引きぬくことができるようにベンジルプロトンの酸性度を増加させなければならない。塩基非存在下でのベンジル化合物のNOガスへの曝露は、ジアゼニウムジオラート官能基を産生しないことが知られている。第二に、芳香環の共鳴は、塩基によるプロトンの引き抜きによって形成されるカルバニオンを安定化する。安定化されたカルバニオンによってカルバニオンとNOとの反応が可能になり、炭素中心ラジカルおよびニトロキシルアニオン(NO-)が生じる。炭素中心ラジカルとNOまたはNOダイマーとのさらなる反応によって、ジアゼニウムジオラート官能基が生じる。アニオン性ジアゼニウムジオラート官能基は、残ったベンジルプロトンの酸性度を増大し、追加のジアゼニウムジオラート基を炭素に付加させる。この様式で、最高3つのジアゼニウムジオラート官能基が、ベンジル炭素を介してポリマーに導入される。第三に、芳香環における共鳴電子の存在は、水性媒体中の-[N(O)NO]-基の自発的な分解の促進を助ける。その他のビスジアゼニウムジオラート、すなわちメチレンビスジアゼニウムジオラート[H2C(N2O2Na)2]は、分解過程に関与する電子の共鳴力(resonant electronic force)を欠いており、従って、溶液中で顕著な安定性を示す(NOを放出することができない)(Traube, 1898)。
【0060】
ニトロソアミン発癌物質を形成することなく生理学的条件下においてNOを放出するそれらの利点に加えて、数種類の操作を使用して、これらのポリマー材料のNO放出の程度および速度を設計することができる。図1および図2は、メチルポリスチレンに結合した2つの異なるC系NO放出ヘッド基のNO放出プロファイルを示す。NO放出ヘッド基の構造的な違いは、R1置換基を生じる求核試薬を変更することによって生じた。図1における放出プロファイルはシアノ修飾(R1)ベンジル炭素の結果であり、図2はエトキシ修飾(R1)ベンジル炭素を示す。シアノ修飾ポリマーは迅速な放出プロファイルを示し、一方でエトキシ修飾ポリマーは強力ではないが長期のNO放出を示すことが、図面の考察で示されている。NO放出プロファイルに対するR1の操作の結果のさらなる例のいくつかを、実施例に記載する。隣接するポリマーが二種類以上の求核置換基を含みうることは当業者には明らかであろう。スキーム3に示すように、ジビニルベンゼンで架橋されたクロロメチル化ポリスチレンを2つの異なる求核試薬、R1aおよびR1bで修飾して、異なる2種類のNOドナー部分を生じることができる。R1の操作によりNOの放出速度を制御できることによって、ポリマーからのマクロスケールのNO放出の正確な設計が可能になる。

【0061】
マクロスケールのNO放出の所望の量および速度に到達する別の好ましい方法とは、個別に合成した2種以上のポリマーを共に混和して、ポリマーからの所望のNO放出速度を達成することである。この方法は、所望の放出速度を達成するための合成化学的性質の化学量論的な制御の必要性がないので、単一ポリマーのNO放出ヘッド基におけるR1の操作を上回る利点を有する。しかし、この方法はミクロスケールおよびナノスケールの用途には容易に適用できない可能性がある。
【0062】
特にポリスチレン系ポリマーと関連する、ポリマーからのNO放出の速度および程度に影響を与えるための別の方法とは、ポリマーの架橋の程度を変更することである。一般に、架橋の程度が低いと、より多孔性のポリマー構造が提供される。これは求核置換およびジアゼニウムジオラート化の程度を変更するものではないが、活性NO放出部位は水性溶媒への接触可能性が高いので、ポリマーからのより迅速かつ程度の大きなNO放出が提供される。ポリマーの架橋を増大させるとポリマーの多孔性が減少し、これは、水性溶媒の接触を阻害するよう働く。高度に架橋されたポリマーは、より長期間NOを放出する(米国特許第6,703,046号)。従って、ポリマーの架橋程度によって-[N(O)NO]-官能基への水溶液の接触を制御することにより、種々のNO放出速度を得ることができる。
【0063】
また、本発明のC系ジアゼニウムジオラートポリマーは、合成期間およびNO発生量に関しても従来技術に対する改善となる。例えば、米国特許第5,405,919号の開示によると、ポリアミンをクロロメチル化ポリスチレンに連結し、その後、アセトニトリル中のアミノポリスチレンのスラリーをNOに曝露して、N系ジアゼニウムジオラートを作製した。しかし、このようなN系ジアゼニウムジオラートは合成に1週間を要し、生理学的条件下では非常に低レベルのNOしか発生させず、これは多くの用途について有用でない。本発明の方法は、樹脂を膨潤するのに好適な溶媒、および求核置換反応を促進するための触媒としてのヨウ化カリウムの添加を使用するが、これは、米国特許第5,405,919号における開示と比較すると、反応時間(2日間に対して8日間)およびNO放出レベル(ppm NOに対して超低レベル)に関して有意な改善である。
【0064】
NOを放出するポリマーは、特定の標的部位における局所的なNOの流れを提供するために望ましい。NOは、インビボにおいて局在化させてもよく、細胞、組織、および臓器のエクスビボ適用において使用されてもよく、または、インビトロ試薬として使用されてもよい。NOを培養中の細胞に適用する用途において、ポリマー材料の使用は、そのサイズおよび/または密度のためにこれらが細胞懸濁液から容易に分離されるという点において別個の利点を提供する。
【0065】
ポリマー形態のジアゼニウムジオラート一酸化窒素ドナーは一酸化窒素の局所送達を提供するために使用でき、従って、ステント、人工器官、インプラント、および種々のその他の医療装置などの装置において有用である。またポリマー材料は、インビトロおよびエクスビボにおける生物医学的用途にも使用できる。
【0066】
医療装置用のコーティングにおける本発明の使用
本発明は、NO放出炭素系ジアゼニウムジオラートを表面に共有結合でき、それにより、NOの放出が高い生体適合性またはその他の有益な特性を被覆表面に与える、新規クラスのコーティング法を提供する。NOが治療的であるためには、NOが関心対象の部位において送達される/発生することが最も好ましい。本明細書に記載のポリマーは、関心対象の所望の領域で時間的および空間的にNOを発生する可能性を有する。従って、NO放出ポリマーからなる医療装置は、低血圧などの任意の有害な全身作用を生じることなく、NOの局所的な流れを提供することができる。NOの有益な生理学的特性は、所望の適用部位に直接標的化することができる。本発明におけるNO放出ポリマーの構造的および物理的な特徴を、生物学的障害の治療に適合するように操作することができる。本ポリマーは、動脈ステント、人工血管、パッチ、またはインプラントなどの装置の形態でありうる。また、摂食用に、NO放出ポリマーをマイクロカプセル化または腸溶コーティングしてもよい。さらに、当業者によって実施される共重合、沈殿、または沈着によって、本発明のNO放出ポリマーをその他のポリマー構造に組み込むことができる。
【0067】
当業者が認識しているとおり、本発明の例示的な態様は、生理学的な障害に応じて多種多様な用途において使用される。このクラスのコーティングの可能な好ましい用途の一つとは、以下からなってもよいがこれらに限定されるわけではない表面を有する、医療装置内であろう:チタン、Ti6Al4V、およびニチノールを含むチタンの合金、ニオブ、モリブデン、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、金、銀、白金、バナジウム、それらの全ての合金および組み合わせ、手術用を含む全ての種類のステンレス鋼、ならびに表面酸化物基を形成することができる任意の金属を含む、金属;ガラス、溶融石英ガラス、96%石英ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、ソーダ石灰ガラスを含むがこれらに限定されない、ケイ酸塩;シラスティック、ヒドロキシル化ポリオレフィン、または、バイオポリマーを含むペンダント表面ヒドロキシル基を有する任意のプラスチックもしくはポリマー材料からなるがこれらに限定されない、ポリマー。
【0068】
血管ステント
米国において毎年、冠動脈硬化、心臓に向かう動脈の閉塞または狭窄を患う患者約700,000人が、心臓への正常な血行を回復する手段として経皮経管冠動脈形成術(PTCA)を受ける。この手法は、冠動脈の狭窄領域におけるバルーンカテーテルの膨張を伴い、したがって、径を拡大して罹患領域への血流を増加させる。しかし、約30〜50%の確率で、再狭窄と呼ばれる過程により動脈閉塞が再発する。PTCA後の予防手段とは、動脈内の支持体としてはたらく血管ステントを配置することである。この処置にもかかわらず、ステント術を受けた患者の15〜25%においてさえ再狭窄が生じ、追加の治療が必要になる。
【0069】
現在の最先端の血管ステントは、再狭窄を阻害する手段としてシロリムスなどの抗増殖薬を溶出するように設計されている。しかし、これらの薬物は抗血栓性ではなく、患者は命にかかわる凝血を発生させている。さらに、抗増殖薬は、血管形成術後の治癒過程に有益である血管内皮細胞の成長を阻害する。抗増殖薬溶出ステントは、薬物溶出ステントの開発の根底にある基礎的な問題を例示するものである。この疾病に対する効果的な治療として卓越した単一の薬物は存在しない。
【0070】
再狭窄治療に対する別のアプローチとは、血小板凝集を阻害し、平滑筋細胞増殖を防止し、かつ損傷した血管の再内皮形成およびステント表面の内皮形成を促進する天然産物を組み込むことである。一酸化窒素(NO)はこれらの生理学的機能を実施することができる。血管ステントを本発明でコーティングして治療量のNOを溶出させることができるが、これは、PTCAステント配置後の治癒過程を加速し、それによって現在の最先端の薬物溶出ステントよりも患者の予後を改善すると考えられる。
【0071】
限定ではなく一例として、本発明のNO放出ポリマーからなるまたはそれでコーティングされた心血管ステントは、血小板の付着を阻止し(実施例25)、血小板凝集を防止し、血管平滑筋細胞の増殖を阻害し(Mooradian et al., 1995)、かつ血管内皮細胞の増殖を刺激する(実施例26)能力を有する。現在の最先端の抗増殖性溶出ステントは凝血塊形成を阻害しない。これらのステントを移植された患者は、抗凝血性投薬療法を長期間維持しなければならない。最近の報告では、この種類のステントを移植された数十人の患者において凝血塊が検出されたことが開示されている(Neergaard, 2003)。当業者は、抗増殖剤とNOの両方を同時に放出するコーティングを利用することができる。
【0072】
NOによる内皮細胞(EC)の増殖は、新血管新生に至る第1段階であるので、非常に興味深い(Ausprunk, 1977)。NOがEC増殖を刺激できる場合には、本発明のNO放出コーティングによって改良された血管ステントまたは移植片などの挿入医療装置は、内皮組織による装置の過成長を促進できると考えられる。この方法では、装置と接触した血液は、NO放出コーティングから天然の細胞層に移動する。最近、ある研究グループは、人工血管上でのEC保持を増強する試みで、内皮細胞を遺伝子操作して内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)を過剰発現させた(Kader、2000)。
【0073】
その他の血管装置
心血管系におけるNOの種々の有益な効果を、本発明を使用してさらに発揮することができる。人工血管へのコーティングとして適用される場合または本発明のポリマーを人工血管へと形成する場合に抗血小板作用が有用であることを、当業者は認識するであろう。移植片が内皮細胞で覆われるまで、NO放出ポリマーは、凝血事象を起こさないために十分なNOを十分な期間にわたって発生する。
【0074】
また、当業者は、体外膜型酸素化(ECMO)回路または人工心肺装置において本発明のポリマーを使用できることも認識するであろう。これらの手技の主要な合併症とは、体外回路を形成するために使用する管系の内側表面に沿った付着による、血小板の損失である。ポリマーマトリックス中に包埋されたN系ジアゼニウムジオラート低分子から製造した抗血栓性表面は、ウサギECMOモデルにおいて血小板の損失を低下させた(Annich et al., 2000)。しかし、この試験におけるポリマーは、N系ジアゼニウムジオラートポリマー(すなわち潜在的な発癌物質)に関連する欠点を有する。本発明のポリマーは、N系ジアゼニウムジオラートに関連する毒性の可能性がない。
【0075】
本発明の別の有益な用途とは、血液透析を受けている患者用である。血液透析に使用されるシャント、体外管系、および透析膜それ自体への本発明の適用は、表面への血小板の付着を減少させるために使用されうり、それによって、患者の循環血小板が増加する。
【0076】
本発明の別の用途には、経皮的針の開通性の増大、留置センサーおよび手術器具の抗血栓性の増大、新規血管形成の設計、高血圧の処置、人工弁の抗血栓性および生体適合性の増大、ならびに、治療レベルの局在化NOが患者に有益でありうるその他の用途が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0077】
留置カテーテル
カテーテル、シャント、およびプローブなどの医療装置の挿入に直接関連する感染例および死亡例の数において、入院に関連する固有の問題が顕在化している。血管カテーテル処置に由来する感染症により、最大20,000名が毎年死亡すると推定される。挿入された医療装置によって、好都合な皮膚微生物が体内へ直接侵入する。これらの細菌は挿入装置に付着してコロニー形成し、その過程において、バイオフィルムとして公知の抗生物質耐性マトリックスを形成する。バイオフィルムが成長すると、浮遊細胞が放出されて患者への感染がさらに拡大する。感染を予防するためには、挿入される医療装置がバイオフィルム形成を予防しなければならない。これは、医療装置にコロニー形成する前に細菌を死滅させることによって達成でき、または、バイオフィルムを形成できないように装置への細菌の付着を防止することもできる。
【0078】
NOは血小板が種々の表面に付着するのを防止できること、および、NOが抗微生物特性を有することが、周知である。最近の報告によって、NOが細菌の付着も阻害できることが実証されている(Nablo et al, 2001)。ポリアミノシロキサンをスライドガラス上に沈着させ、誘導体化してNOドナーとした。緑膿菌(P. aeruginosa)は、NO放出ゾル-ゲルによって、用量依存的な様式で阻害された。NOを放出するよう設計された表面によって細菌付着が影響されうることを、この初期の報告は強く示唆している。従って、本発明のNO放出ポリマーをコーティングしたカテーテルはバイオフィルム形成を阻害しうり、かつ患者の健康管理を改善することができる。
【0079】
コンタクトレンズケース
コンタクトレンズに関連する眼の感染症は毎年数百万人に影響を与えている。レンズケアのための標準的なガイドラインによって眼の感染症を最小にすることができるが、適切なガイドラインを遵守しているのはレンズ装着者の約50%のみであることが示されている。推奨ガイドラインに従っているコンタクトレンズ装着者の中でさえ、レンズに関連する感染症が発生する。通常の使用中および保管手順中に、微生物がコンタクトレンズに付着する。毎日のレンズ洗浄によってこれらの微生物のほとんどが除去されるが、しかし、細菌はレンズ上にバイオフィルムを樹立することができる。現在利用可能なシステムによる消毒および洗浄にもかかわらず、そのようなバイオフィルムは十分に除去されないことが多い。多くの場合において、微生物源はレンズケースである(McLaughlin et al. 1998)。無症状のレンズ装着者についてさえレンズケースが細菌性バイオフィルムを含んでおり、消毒法および洗浄液の使用にもかかわらず、この元凶がレンズの重大な汚染経路として働く可能性が高い(McLaughlin et al. 1998)。さらに、病原微生物によって形成されたバイオフィルムは、抗生物質に対するその耐性および宿主の免疫応答、ならびに留置医療装置上で発達できる能力により、高い臨床的重要性を有する。コンタクトレンズケースに対する本発明の適用の例を、実施例23に記載する。
【0080】
医療装置の製造における本発明の使用
医療装置をコーティングする能力に加えて、本発明はまた、NO放出ポリマーを用いて医療装置または装置の構成要素を製造する方法も提供する。本発明の例示的な態様の多くが、PET、PS、シロキサン系ポリマーなどであるがこれらに限定されない、その全てが医療装置全体またはその構成要素を製造するために使用されうる出発材料を使用する。
【0081】
NOを放出しかつ医療装置を含む、均質の(solid)装置または装置の構成要素を製造するための当業者に公知の方法を使用して、本発明のNO放出ポリマーを合成し、かつ、押出、成形、射出成形、吹込み成形、熱成形、またはその他の方法で形成して、完全な装置またはその構成要素とすることができる。
【0082】
別の方法においては、適切なNO非放出ポリマーを用いて装置または装置の構成要素を製造して、実施例8に記載するように、NOを放出するように装置または装置の構成要素を改良する。
【0083】
血小板保存用途における使用
NO放出ポリマーの利用についての非限定な一例は、血小板のエクスビボ阻害である。一酸化窒素は、血小板凝集の強力な阻害剤であることが示されている(Moncada et al., 1991)。血小板へのNOの適用によって、アゴニストに対する細胞内カルシウム応答の減少(Raulli, 1998)、および、顆粒成分の放出などのカルシウム依存性のその他の細胞内プロセスももたらされる(Barrett et al., 1989)。実施例20は、NO放出ポリマーがアゴニスト誘導性の血小板凝集を阻害できることを示している。
【0084】
NO放出ポリマーがエクスビボにおいて血小板活性化を阻害できるこの能力は、血小板貯蔵病変(PSL)の治療において相当に有用でありうる。血小板貯蔵病変は、その採取、調製、および保存の後に血小板に生じる変化の合計として定義されており(Chrenoff, 1992)、これは、保存期間の延長と共に増大する血小板機能性損失の原因である。これらの変化には、細胞骨格および表面抗原の構造変化、密顆粒およびα顆粒成分の放出、リソソーム成分の放出、膜強度の損失、ならびに代謝の欠損が含まれる(Klinger, 1996)。PSLをもたらす機序は十分に理解されていないが、保存期間中の血小板活性化の結果にPSLが(少なくとも部分的に)関連するというのが、一般的な統一見解である(Snyder (ed), 1992)。NOは血小板活性化(Moncada et al., 1991)および保存顆粒の活性化(Barrett et al., 1989)の公知の阻害剤であるので、保存中の血小板をNO放出剤で処理することによってPSLの程度を低下させることができ、このことは、活性化可能な血小板数、例えば、無傷のα顆粒および密顆粒を有する血小板数を増加させ、細胞壊死組織片を減少させ、保存血漿のオータコイド濃度を低下させ、かつ、血小板の働きに影響しうる形態的変化を減少させる。
【0085】
当業者は、保存中の血小板をNO放出ポリマーで処理するためのいくつかの方法を考案することができる。本発明の例示的な態様は、血液保存区画への事前添加により製造される炭素系一酸化窒素放出ポリマーを使用する。本ポリマーは、特定の量の多血小板血漿(PRP)、濃縮血小板(PC)、血小板アフェレーシス(APP)、または従来保存されると思われるその他の血小板製品の血小板活性化を、部分的または完全に阻害するのに適した量および放出速度であるべきである。ポリマーは、血小板製品の予測される全持続期間をカバーするのに十分な期間にわたって阻害レベルの一酸化窒素を放出するべきであるが、全保存期間の間一酸化窒素の阻害流が存在する必要のない、パラダイムを想定することもできる。
【0086】
NO放出ポリマーは、最適な放出速度およびNO放出期間に達するように設計されている単一の実体であってもよくポリマーの混合物であってもよい。さらに、血小板保存容器内での血小板の撹拌を妨害することなくその表面積を最大にするように、本ポリマーを設計することができる。本ポリマーは、保存容器に固定されてもよく、遊離状態であってもよく、または、血液細胞および血漿に適合する任意の材料からなる透過膜もしくは半透膜内に含まれてもよい。遊離のポリマー態様は、血液製剤をレシピエントへと送達する出口穴に流入したり詰まったりしないような適切なサイズおよび形状でなければならない。好ましい態様は、ペンダント炭素系ジアゼニウムジオラート基からなるポリマーを使用すると思われるが、これに限定されるわけではない。NO放出ポリマーが、Raulliらの米国仮特許出願第60/471,724号であるSystems and Methods for Pathogen Reduction in Blood Productsに記載されているような、血小板保存用の完全な製造システムの一部であってもよいことを、当業者は認識するであろう。
【0087】
また、本発明のNO放出ポリマーの使用は、血小板阻害剤としての他の用途においても有用でありうる。ヒト血小板を低温に曝すことによって、血小板細胞内カルシウムレベルの急激な上昇(Oliverら、1999)および形態の変化(WinokurおよびHartwig、1995)を特徴とする「低温誘導性」活性化が生じることは、周知である。最近の研究は、血小板を凍結乾燥する方法を記載している(Beattieら、米国特許第5,827,741号)。凍結乾燥されて再構成された最終製品は、生存血小板数の15〜30%の低下を示す(Wolkersら、2002)。これは、最初の凍結乾燥過程中の血小板の低温誘導性活性化または融解過程の結果による可能性がある。凍結乾燥過程の前、その間、またはその後に本発明のNO放出ポリマーに血小板を曝露させると、任意の低温誘導性活性化を低下または消失させることができ、結果として、凍結乾燥血小板の生存度を増加させることができる。
【0088】
当業者は、血小板製剤を冷却する、凍結させる、または凍結乾燥する方法に本発明のC系NO放出ポリマーを組込むための種々の方法を開発することができる。例示的な態様は、保存中の血小板の阻害について上記されたものと同様である。
【0089】
保存中のヒト血小板の病原体減少における使用
一酸化窒素が種々の細菌性、真菌性、およびウイルス性の病原体を死滅させることができることは十分に確立されている(DeGroote and Fang, 1995)。本発明の例示的な態様は、血液製剤を汚染している可能性のある生存可能な微生物を減少または消失させるのに十分なレベルの一酸化窒素を送達する血液保存区画内で一酸化窒素放出ポリマーを使用する(Raulliらによる米国仮特許出願第60/471,724号、Systems and Methods for Pathogen Reduction in Blood Products)。実施例21は、血液保存容器内で保存中の血液製剤における病原体のレベルを減少させる本発明の態様の能力を示す。
【0090】
本ポリマーは、血液製剤を汚染する病原体を死滅させる、不活性化する、またはそのさらなる成長を遅延させるのに十分なレベルの一酸化窒素を、適切な速度で、十分な期間にわたって放出する。さらに、本ポリマーは、血液細胞および血漿に適合する材料からなる。また本ポリマーは、血小板保存容器の場合に血小板の撹拌を妨害することなく表面積を最大にするように設計されうる。例示的な態様において、本ポリマーは、保存容器に固定されてもよく、浮動性でもよく、または、血液細胞および血漿に適合する任意の材料からなる透過膜もしくは半透膜内に含まれてもよい。浮動性ポリマー態様は、血液製剤をレシピエントへ送達する出口穴に流入したり詰まったりしないような適切なサイズおよび形状でなければならない。好ましい態様では、ペンダントC系ジアゼニウムジオラート基からなるポリマーを使用する。
【0091】
虚血の治療、保存、および移植のための臓器および組織の灌流における使用
一酸化窒素は、哺乳類の血管に対して強力でかつ甚大な血管拡張作用を有する(Palmer et al., 1989)。NOのこの薬理学的特性および化学的抗酸化特性(Espey et al., 2002)のために、NOは移植医療において有用になっている。灌流中の臓器に適用すると、血管拡張剤として作用する一酸化窒素によって、臓器の深い組織の十分な灌流が可能になり、これによって酸素および栄養素が組織に運ばれる。また、灌流液のより深い浸透は、深部組織へより多くのNOを輸送する上で臓器に有益でもあり、これによって、再灌流傷害に典型的な酸化的損傷を防止するための一酸化窒素の抗酸化能力がさらに増強される(Ferdinandy and Schultz, 2003; Wink et al., 1993 および内部参考文献)。
【0092】
数多くの種類のNOドナーが血管拡張剤として有効であるが、ニトロプルシッドナトリウム(Kowaluk et al., 1992)およびニトロソチオール(Dicks et al, 1996)など多くが代謝的活性化を必要とし、このことによって、これらの予測可能性が低くなっている。血液と比較して、灌流液が、これらの化合物の活性化に必要な必須因子を含まない可能性があるという事実を考慮すると、このことは特に関連性がある。組織チオールまたは金属が活性化に必要である場合には、組織自体は、虚血関連損傷により、これらの因子が予想外なことに欠損しているまたは豊富である可能性がある。さらに、これらのNOドナーは好ましい抗酸化種(NO・)を放出しないか、または、放出種をNO・に変換するためにCuなどの追加の因子を必要とする。最後に、一般的なNO放出血管拡張剤であるニトロプルシッドナトリウム(SNP)は、NOを供与後にシアン化物を発生する可能性がある。このような問題は、本発明の例示的な態様の利点の一部、すなわち、装置はNOしか発生せず、灌流液中に存在するドナー分子は消費されないことを強調したものである。
【0093】
放出されるNOの酸化還元状態は特に興味深いことがある。SNPなどの多数のNOドナーはニトロソニウムイオン(NO+)を放出し、一部はニトロキシルイオン(NO-)を生ずる。どちらの種も、虚血再灌流傷害において酸化的組織損傷を最終的に引き起こす作用物質である活性酸素種(ROS)の影響を悪化させることが示されている。本発明によって放出される一酸化窒素種はNO・であり、これはROSを相殺することが示されている(Wink et al, 1996)。
【0094】
本発明のポリマーの自発的かつ予測可能にNO・を放出する能力は、臓器灌流過程における可能な処理としての可溶性NOドナーを上回る利点を表す。NO放出ヘッド基およびそれが結合しているポリマーマトリックスは、静止または流動している水溶液中では不溶性のままであるが、溶液中に可溶性NOを放出する能力を維持しているので、このNOの「ドナー無し(donorless)」送達は可能である。好ましい抗酸化剤である酸化還元種のNOを送達するための本発明の固有の利点以外に、このドナー無しアプローチは、ドナー分子が消費される循環の問題を排除する。
【0095】
本発明によるポリマーはインライン装置に含まれてもよく、それによって、装置を通る灌流液の流れが、臓器血管系の血管拡張および灌流臓器のROSの中和をもたらすように、灌流液中に十分なNOを放出する。限定的ではなく例示的な態様を、図3に示す。装置300は、円筒形またはその他適切な形状であってよいチャンバー310を含む。チャンバー310は、セルフシール式かまたはガスケット340でシールされるフリットディスク(fritted disc)330を使用して、両端で閉じられる。円筒形チャンバー310は、流体を小型ノズル350へと導く漏斗形コレクター320で両端が塞がれており、それによって、装置300の両端の灌流ライン360への取り付けの促進が可能になる。
【0096】
本発明による固体ポリマー370はチャンバー310内に含まれる。ポリマー370は任意の望ましい形状であってよく、チャンバー310の壁に取り付けられてもよく、さもなくば固定されてもよく、または、チャンバー内で遊離状態にあってもよい。ポリマー370のサイズも変動しうる。しかし、ポリマー370は、チャンバー310のいずれかの端部においてフリットディスク330に容易に包含される大きさでなければならない。チャンバー310内のポリマー370の密度は、装置300を通じた灌流液の自由流動を可能にするようなものであることが好ましい。
【0097】
また、フリットディスク330のメッシュサイズも、灌流液の自由流動を可能にするように最適化されねばならない。所定の流速に対するチャンバーが大きいほど、NO放出ポリマーへの灌流液の曝露時間が長くなり、これによって灌流液に溶解するNOがより多くなるので、チャンバー310のサイズは、任意の所定の流速に対して灌流液中に放出されるNOのレベルに影響を与えうることを、当業者は認識するであろう。装置300のサイズ、形状、および結合構造は例示にすぎず、これらは容易に変更されうりかつ灌流液内にNOを放出する際に有効性を保有しうることを、当業者は認識するであろう。このような変更は全て本発明の範囲内である。
【0098】
実施例22は、チャンバー内にNO放出ポリマーを含むフリットチャンバーからなるインライン容器を通って流れる緩衝液に有意な量のNOを送達できる、本発明によるポリマーの能力を実証している。流出液に含まれるNOの量は、大動脈ストリップを使用する組織浴実験において血管拡張作用を達成するのに必要なNOの濃度より1〜2桁大きい(Morley et al. 1993)。
【0099】
参照によりそれぞれの全文が本明細書に組み入れられる、米国仮特許出願第60/534,395号;同第60/575,421号;および同第60/564,589号に記載されているように、本発明の化合物が携帯用滅菌のための完全な製造システムの一部であってもよいことも、当業者は認識するであろう。
【0100】
薬学的作用物質としての使用
本発明を使用して有効な量の一酸化窒素を提供するための、動物、好ましくは哺乳類、特にヒトの処置のために、いくつかの好適な投与経路を使用することができる。経口剤形および直腸剤形が好ましい。しかし、皮下、筋肉内、静脈内、および経皮的な投与経路を使用することも可能である。可能な固体経口剤形のうち、好ましい態様には、錠剤、カプセル剤、トローチ、カシェ剤、散剤、分散剤等が含まれる。その他の剤形も可能である。好ましい液体剤形には、非水性懸濁液および水中油型エマルジョンが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0101】
固体経口剤形の一態様において、錠剤には、有効成分としての本発明による薬学的組成物または薬学的に許容されるその塩が含まれるが、これには、デンプン、糖および微結晶セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、および任意でその他の治療成分などの、薬学的に許容される担体も含まれうる。ジアゼニウムジオラートの酸不安定性のために、胃が治療標的臓器でない場合には、腸溶コーティングまたは徐放性コーティングで経口固体剤形を被覆して胃内の全用量の一酸化窒素の放出を回避することが有利である。
【0102】
固体剤形を被覆する好ましい方法には、被覆過程中に一酸化窒素が剤形から放出される可能性を低減するために、剤形の腸溶コーティングまたは持効性コーティングのための非水性過程の使用が含まれる。米国特許第6,576,258号に記載されているものなどのこれらの非水性コーティング技術は当業者に公知である。持効性コーティングは米国特許第5,811,121号に記載されているが、これは、アルカリ性水溶液を使用して固体剤形を被覆するものである。このコーティング過程はまた、高pHレベルにおいて一酸化窒素の放出が大幅に阻害されるとき、剤形内のジアゼニウムジオラートのレベルを保つようにも働く。
【0103】
ジアゼニウムジオラートクラスの化合物の酸不安定性および中性pHの水溶液に対するそれらの感受性に留意しつつ、当業者は直腸剤形および追加の剤形も開発できる。所望の薬学的製剤に好適な賦形剤に関する知識に基づいて、当業者は適切な剤形を開発できよう。
【0104】
実施例
下記の実施例によって本発明をさらに説明する。特記されない限り、全ての試薬および溶媒はAldrich Chemical Company(Milwaukee, WI)から入手する。一酸化窒素ガスはMatheson Gas Productsにより供給されたものである。NOガス雰囲気下で反応を実施するのに使用される機器および技術の詳細な説明が報告されており(Hrabie et al., 1993)、参照によりその全文が本明細書に組み入れられている。IRスペクトルはPerkin Elmer 1600シリーズFTIRで得られる。発生するNOガスのモニタリングおよび定量は、認可されたNOガス標準を使用して毎日較正されているThermo Environmental Instruments Model 42C NO-NO2-NOx検出装置を使用して実施する。放出されるNOの量を10億分率ppbで測定するが、これは以下のように決定される:それを通じて窒素ガスが定常的に流動しているチャンバー内にNO放出材料を入れる。窒素は、チャンバー内で発生する全NOを検出装置内に押し流すよう働くキャリヤーガスである。測定値100 ppbとは、チャンバーを押し流す10億の窒素ガスあたり100分子のNOが発生したことを意味する。
【0105】
実施例1
本実施例は、市販のクロロメチル化ポリスチレンを、ニトリル基を含む炭素系ジアゼニウムジオラートに変換する方法を提供する。DMFの50 mlアリコートを硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いで事前乾燥した溶媒を使用して2.37 g(4.42 mmol/gのCl)のクロロメチル化ポリスチレンを膨潤させる。30分後、3.39 g(52 mmol)のKCNおよび0.241 g(1.4 mmol)のKIを添加する。溶液を一晩、60℃まで加熱する。この間に、樹脂の色がオフホワイトから赤レンガ色に変わる。20 ml部のDMF、DMF:H2O、H2O、EtOH、およびEt2Oで連続的に樹脂を洗浄し、空気乾燥させる。1265 cm-1における-CH2-Cl伸長(stretch)の消失および2248 cm-1におけるニトリル吸収の出現が、置換の指標である。
【0106】
ジアゼニウムジオラート化:
Parr圧力容器において、修飾樹脂-CNを20 mlのDMFに添加する。この溶液をゆっくりと撹拌し、1.0 MのナトリウムトリメチルシラノレートのTHF溶液20 ml(20 mmol)で処理する。容器を脱気し、54 psiのNOガスを充填する。ヘッドスペースにアルゴンを通気し、樹脂を水、メタノール、およびエーテルで洗浄した。黄褐色/淡橙色の生成物を空気乾燥させた。このジアゼニウムジオラート化法は、塩基としてアルコキシドを使用する場合に生じるイミデート形成の可能性を回避する。この材料は、図1に示すように、NOの大量放出を生じる。
【0107】
実施例2
本実施例は、市販のクロロメチル化ポリスチレンを、-OCH3基を含む炭素系ジアゼニウムジオラートに変換する方法を提供する。
【0108】
1:1 DMF/MeOHの50 ml溶液に以下を添加する:1.0 gクロロメチル化ポリスチレン(4.38 mmol Cl/g)、0.014 g KI(0.08 mmol)、および1.0 ml 25% NaOMe(4.37 mmol)。溶液を室温で一晩撹拌する。次いで、それを真空ろ過し、MeOHおよびエーテルで洗浄する。生成物の総重量1.0 gは、理論量0.979 gよりもわずかに大きい。
【0109】
ジアゼニウムジオラート化:
樹脂-OCH3をParr圧力容器に入れ、50 mlの1:1 DMF/MeOHを添加する。撹拌しながら、2.0 mlの25% NaOMe(8.76 mmol)を添加する。不活性ガス加圧/排気サイクルを交互に行うことによって溶液を脱気してから、50 psiのNOガスに曝露する。ガスと樹脂との反応の指標であるNOガスの消費を、翌日測定する。一例において、10 psiのNOガスが消費されたことが観察された。真空ろ過し、洗浄し、空気乾燥した後、増量を観察する。増量が観察されないとしても、生成された組成物は、化学発光によって検出すると、陽性Greiss反応(Greiss反応については、Schmidt and Kelm, 1996参照)およびNO放出を有することがある。
【0110】
実施例3
本実施例は、市販のクロロメチル化ポリスチレンを、-OC2H5基を含む炭素系ジアゼニウムジオラートに変換する方法を提供する。1:1 DMF/EtOHの50 ml溶液に、以下を添加する:1.0 gのクロロメチル化ポリスチレン(4.38 mmol Cl/g)、0.016 gのKI(0.09 mmol)、および1.7 mlの24% KOEt(4.38 mmol)。溶液を室温で一晩撹拌する。次いで、それを真空ろ過し、EtOHおよびエーテルで洗浄する。一例において、観察された重量は1.22 gであり、これは予想された1.04 gよりもわずかに大きかった。
【0111】
ジアゼニウムジオラート化:
1:1 DMF/MeOHの50 ml溶液を添加したParr圧力容器に樹脂-OC2H5を入れ、2.0 mlの25% NaOMe(8.76 mmol)を添加する。容器を脱気し、60 psiのNOガスに一晩曝露する。次いで、樹脂をメタノールおよびエーテルで洗浄し、空気乾燥する。一例において、図2に示すように、この材料は、NOガス検出装置により検出すると、陽性Greiss反応を有し、生理学的条件下において自発的にNOを発生する。
【0112】
実施例4
本実施例は、市販のクロロメチル化ポリスチレンを、-SC2H5基を含む炭素系ジアゼニウムジオラートに変換する方法を提供する。
【0113】
ドラフト内で、50 mlの乾燥DMFに以下を添加する:1.00 gのクロロメチル化ポリスチレン(4.42 mmol Cl/g)、40 mg(0.24 mmol)のヨウ化カリウム、および372 mg(4.42 mmol)のエタンチオレート。この混合物を室温において72時間撹拌する。それをろ過し、25 ml部の1:1 DMF:MeOH、MeOH、およびEt2Oで洗浄し、空気乾燥させる。
【0114】
ジアゼニウムジオラート化:
Parr圧力容器中の1グラムの樹脂-SC2H5に以下を添加する:25 mlのTHFおよび2.0 ml(8.84 mmol)の25%ナトリウムメトキシド。圧力容器へのアルゴンの充填および放出を交互に行うことによって混合物を脱気してから、60 psiのNOガスに一晩曝露する。樹脂をろ過し、50 mlの0.01M NaOH、エタノール、およびジエチルエーテルで洗浄する。得られる樹脂は陽性Greiss反応を生じる。化学発光NO検出装置で測定すると、100 mgの樹脂は、室温において1時間にpH 7.4緩衝液中でNO 4.1×10-11 mol/mg樹脂/minを発生した。
【0115】
実施例5
本実施例は、市販のクロロメチル化ポリスチレンを、-OSi(CH3)3基を含む炭素系ジアゼニウムジオラートに変換する方法を提供する。50 mlの乾燥DMFに以下を添加する:1.00 gのクロロメチル化ポリスチレン(4.42 mmol Cl/g)、10 mlの1.0 M(10 mmol)のナトリウムトリメチルシラノレート、および100 mg(0.6 mmol)のヨウ化カリウム。混合物を24時間100℃に加熱する。その後、樹脂をろ過し、20 ml部のDMF、MeOH、およびジエチルエーテルで洗浄し、空気乾燥させる。
【0116】
ジアゼニウムジオラート化:
以下をParr圧力容器に入れる:1.0 gの修飾樹脂、30 mlのDMF、および2.0 ml(8.84 mmol)の25%ナトリウムメトキシド。圧力容器を脱気し、次いで60 psiのNOに24時間曝露する。次いで、樹脂をろ過し、DMF、MeOH、およびジエチルエーテルで連続的に洗浄する。その後、樹脂は空気乾燥され、陽性Greiss反応を生じる。化学発光NO検出装置で測定すると、100 mgの樹脂は、40分間で室温において、pH 7.4緩衝液中でNO 4.1×10-11 mol/mg樹脂/minを発生した。
【0117】
実施例6
本実施例は、市販のクロロメチル化ポリスチレンを、ジエチルアミン基を含む炭素系ジアゼニウムジオラートに変換する方法を提供する。
【0118】
クロロメチル化ポリスチレン(4.42 mmol Cl-/g)の試料2.17 gを50 mlのDMFに添加する。この懸濁液に以下を添加する:0.123 g(0.74 mmol)のKIおよび5 ml(72 mmol)のジエチルアミン。懸濁液を45℃で24時間撹拌し、その後ろ過して、DMF、MeOH、およびエーテルで2回洗浄する。樹脂を空気乾燥させる。
【0119】
ジアゼニウムジオラート化:
Parr圧力容器に以下を添加する:100 mlのMeOH、1.0 gの修飾樹脂、および2.0 ml(8.7 mmol)の25% NaOMe。脱気後、溶液を60 psiのNOガスに24時間曝露する。次いで、樹脂をろ過し、メタノールおよびエーテルで洗浄し、空気乾燥させる。150分間で、100 mgの樹脂は室温においてpH 7.4緩衝液中でNO 9.3×10-11 mol/mg樹脂/minを発生した。
【0120】
実施例7
本実施例は、樹脂由来のNOが、樹脂に結合しているが隙間空間(interstitial space)中に捕捉された非局在化遊離NOガス分子には結合していないNOドナー基に起因することを実証する。
【0121】
これらの材料に生じる一般的な懸念とは、樹脂内の隙間空間でNOが捕捉される可能性であり、これは、樹脂から発生する総NO量を歪曲しうる。対照実験として、0.50 gのメリフィールド樹脂を40 mlの1:1 DMF/MeOH溶液に入れ、脱気し、80 psiのNOガスに24時間曝露する。次いで、樹脂をろ過し、MeOH、アセトン、およびエーテルで数回洗浄した。空気乾燥後、試料50 mgをGreiss試薬5 mlに入れたが、これによって、NOが速やかに酸化されて亜硝酸塩となり、任意の亜硝酸塩の存在が比色測定により明らかになる。試薬は、亜硝酸塩の存在の指標である特徴的な紫色に変わらなかった。従って、樹脂から検出されるNOはNOドナー基の形成によるものであって、捕捉されたNOによるものではない。
【0122】
実施例8
本実施例は、その骨格に芳香環を含むポリマー、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)を、炭素系ジアゼニウムジオラートに変換する方法を提供する。
【0123】
150 mlビーカー中で、2.0 gのPETペレット(Sigma-Aldrich, Milwaukee, WI)を10 mlの酢酸および10 mlの37重量%ホルムアルデヒドで処理する。反応液を24時間撹拌する。次いで、ヒドロキシル化PETをろ過し、25 ml部の水で3回洗浄し、100℃で1時間乾燥させる。
【0124】
その後、ヒドロキシル化PETを50 mlのピリジンに懸濁し、氷浴で冷却し、4.67 g(2.4×10-2 mol)のp-トルエンスルホニルクロリドで処理する。p-トルエンスルホニルクロリド添加の2分後、反応液を室温まで温める。24時間後、反応液をろ過し、2部(25 ml)の乾燥DMFで洗浄する。
【0125】
次いで、トシル化PETを25 mlの乾燥DMFに入れ、穏やかに撹拌しながら2.03 g(3.1×10-2 mol)のKCNを添加する。24時間後、シアノメチル化PETをろ過し、DMF(25 ml)、1:1 DMF:H2O(25 ml)、H2O(2×25 ml)、およびMeOH(2×25 ml)で洗浄する。
【0126】
次いで、シアノメチル化PETを、25 mlのMeOHを添加した300 mlのParr圧力容器に入れる。懸濁液を穏やかに撹拌し、テトラヒドロフラン中のナトリウムトリメチルシラノレートの1.0 M溶液1.0 mlを該懸濁液に添加する。圧力容器をアルゴンで10回パージおよび換気し、その後、NO(80 psi)を充填する。24時間後、ジアゼニウムジオラート化PETをろ過し、25 mlのEtOHおよび25 mlのEt2Oで洗浄する。この化合物の放出特性を実施例22に記載する。
【0127】
実施例9
本実施例では、金属をシロキサンで被覆して、NO放出作用物質に変換する。
【0128】
まず、1片のニチノール(5 mm×25 mm)をエメリー紙で研磨する。次いで、1.0 M HClと30% H2O2の1:1混合物からなる酸化液に10分間浸漬させる。水およびアセトンで洗浄してから、アルゴン通気で乾燥する。清潔な酸化ニチノール細片を、アルゴン雰囲気下で6 mlの無水ヘキサデカンに浸漬させる。これに0.2 mlのドデシルトリクロロシラン、0.2 mlのクロロメチルフェニルトリクロロシラン、および50μlのn-ブチルアミンを添加する。24時間後、ニチノール細片を取り出し、エタノールに浸漬して未結合粒子を除去し、110℃のオーブンに15分間入れて硬化させる。次いで、シロキサン修飾ニチノール細片を、7 mlの無水ヘキサデカンを含む丸底フラスコに入れ、80℃まで加熱する。これに0.3 mlのクロロトリメチルシランを添加し、1時間反応させる。末端キャップ付き(end-capped)ニチノール細片をエタノールに浸漬して全ての粒子を除去した後、110℃で20分間乾燥させる。
【0129】
次に、クロロメチルフェニルシロキサンニチノール片を15 mlのDMFに入れ、80℃まで加熱して、10 mgのシアン化カリウム、80 gのテトラブチルアンモニウムブロミド、および触媒用の数粒のヨウ化カリウムを添加する。反応を一晩進行させる。ニチノール細片をエタノールで洗浄した後、50 ml DMFを含むParr圧力容器に浸漬する。これに250μlのナトリウムトリメチルシラノレートを添加する。穏やかに撹拌(ニチノール細片の衝突を回避)しながら、容器を脱気し、60 psiのNOガスに24時間曝露する。次いで、ニチノール片をエタノールおよびエーテルで洗浄し、アルゴンガス下で乾燥する。この様式で処理したニチノール片をGreiss試薬に浸漬すると、陽性反応を生じる。遊離NOが酸化されて亜硝酸塩になるので、ニチノール片が紫色になる。
【0130】
実施例10
本実施例では、シリカゲルをシロキサンで被覆し、NO放出作用物質へと変換する。50 mlのトルエンに2.01 gのシリカゲルを入れる。ヘッドスペースをアルゴンでパージする。次いで、0.45 mlのクロロメチルフェニルトリクロロシランを添加する。懸濁液を室温において一晩穏やかに撹拌する。次いで、シリカをろ過し、トルエンで洗浄し、空気乾燥する。その後、シロキサン修飾シリカを50 ml DMFに入れ、1.0 gのKIおよび1.0 gのKCNで処理する。次いで、温度を110℃まで上昇させ3時間維持する。この間にシリカは暗淡赤(dark off-red)色に変わる。次いで、シリカをろ過して、DMF、H2O、およびメタノールで洗浄する。その後、110℃のオーブンで20分間乾燥させ、50 mLのTHFを添加したParr圧力容器に入れる。これに2.0 mlの1.0 M NaOSi(CH3)3を添加する。容器を脱気し、60 psiのNOガスに24時間曝露する。シリカをろ過し、THF、MeOH、およびEt2Oで洗浄し、空気乾燥させる。修飾シリカゲルは陽性Greiss反応を生じる。
【0131】
実施例11
本実施例では、実施例9のNO放出金属を保護基で処理して、NO放出期間を増大させる。実施例9由来のニチノール片を、DMFを含有するバイアルに浸漬する。これに、Sanger試薬である2,4-ジニトロフルオロベンゼンを50μl添加する。反応は室温において一晩進行させる。翌日ニチノール片を取り出し、エタノールで洗浄し、空気乾燥する。
【0132】
実施例12

本実施例では、公知のアセチルポリスチレンをC系ジアゼニウムジオラートへと変換する。300mL Ace圧力ボトルに、0.25 gアセチルポリスチレン樹脂を加え、次に、25 mL THFおよび0.112 gナトリウムトリメチルシラノレート(NaOTMS)をそれぞれ加えた。容器をArガスで脱気し、66 psiのNOガスで加圧して、18時間穏やかに振とうした。この時点において、容器をArガスでパージし、修飾樹脂をTHF、10 mM NaOH/DMF(1:3)、DMF、MeOH、エーテルで洗浄して吸引乾燥し、0.211 gの淡黄色ビーズを回収した。同時に、0.100 g樹脂および25 mL THFを用いるが塩基を用いない同じ様式で、対照反応を実施する。修飾樹脂は陽性Griess反応を生じるが、一方で対照試料(塩基無し)は陰性Griess反応を生じる。
【0133】
実施例13

本実施例では、3-oxo-3-フェニルプロピルポリスチレンをC系ジアゼニウムジオラートへと変換する。3-oxo-3-フェニルプロピルポリスチレンを、0℃におけるTHF中でのアセトフェノンおよびNaHによるMerrifield樹脂の処理によって調製した。MeOHによって反応をクエンチし、樹脂を洗浄して乾燥させた。添加されたケトンの存在を、FT-IRを用いて確認した。
【0134】
ジアゼニウムジオラート化:
300mL Ace圧力ボトルに、0.25 gの3-oxo-3-フェニルプロピルポリスチレン樹脂を加え、次に、25 mL THFおよび0.112 gナトリウムトリメチルシラノレート(NaOTMS)をそれぞれ加えた。容器をArガスで脱気し、66 psiのNOガスで加圧して、18時間穏やかに振とうした。この時点において、容器をArガスでパージし、修飾樹脂をTHF、10 mM NaOH/DMF(1:3)、DMF、MeOH、エーテルで洗浄して吸引乾燥し、0.243 gの橙色/黄色ビーズを回収した。同時に、0.100 g樹脂および25 mL THFを用いるが塩基を用いない同じ様式で、対照反応を実施する。修飾樹脂は陽性Griess反応を生じるが、一方で対照試料(塩基無し)は陰性Griess反応を生じる。
【0135】
実施例14

本実施例では、ポリ(エチレン酢酸ビニル)コポリマー(PEVA、40%酢酸ビニル)をC系ジアゼニウムジオラートへと変換する。ポリエチレンピペットチップを100 mg/mLのPEVAのTHF溶液で含浸被覆(dip-coating)し、50℃で1時間硬化させることによって、PEVAフィルムを調製した。
【0136】
ジアゼニウムジオラート化:
300 mL Ace圧力ボトルに、6本の被覆ピペットチップを加え、次に、50 mL DMFおよび1.07 gナトリウムトリメチルシラノレート(NaOTMS)をそれぞれ加えた。容器をArガスで脱気し、76 psiのNOガスで加圧して、18時間穏やかに振とうした。この時点において、容器をArガスでパージし、被覆ピペットチップをTHF、エーテルで洗浄して吸引乾燥し、淡黄色コーティングを得た。NO処理ピペットチップは、陽性Griess反応を生じた。同様に、リン酸緩衝液(0.1 M、pH 7.4)中でTEI NOx分析器を用いて、NO放出も確認された。
【0137】
実施例15

本実施例では、公知のポリエチレンアジペートをC系テトラジアゼニウムジオラートへと変換する。本実施例においては、X=-CH2CH2-)、R1=-OCH2CH2OC(O)-、およびR2=-C(O)-である。
【0138】
実施例16

本実施例において、いわゆる「ポリアスピリン」を、巨大塩基および80 psiのNOの存在下で、ジアゼニウムジオラート官能性の発生のためのポリマー支持体として利用する。ポリアスピリンは、腹痛なしにアスピリンを送達するための方法として、ラトガーズ大学のKathryn Uhrich博士により開発された [a) Schmeltzer, R.C; Anastasiou, T.J; Uhrich, K.E Polym. Bull. 2003, 49, 441-448; b) Anastasiou, T.;Uhrich, K.E J. Polym. Sci. A: Polym. Chem. 2003, 41, 3667-3679]。現在、関連製品と共にポリマーはPolymerix Corp.(Piscataway, NJ)により販売されている。
【0139】
実施例17

本実施例では、巨大塩基および80 psiのNOの存在下で、市販のシアノ酢酸であるWang樹脂(Aldrichカタログ番号537489、X=O、R=-ArOC(O)-、R1=-CN)を、ビスジアゼニウムジオラート形態へと変換する。メチレンプロトンは比較的酸性であるはずであり(〜pKa 11)、それによって、容易な脱プロトン化およびその後の反応が可能になる。市販の製品は、脱炭酸作用を付随することなく、メチレン基においてアシル化されている [Sim, M.M.; Lee, C.L.; Ganesan, A. Tetrahedron Lett. 1998, 39, 2195-2198]。脱炭酸作用によって固体由来の製品からの除去を促進するためのトリフルオロ酢酸による樹脂の処理まで、樹脂結合化合物は安定である。
【0140】
300 mL Parr圧力ボトルに、0.25 gシアノ酢酸Wang樹脂を加え、次に、25 mLのTHFおよび0.112 gのNaOTMSをそれぞれ加えた。容器をArガスで脱気し、76 psiのNOガスで加圧して、18時間穏やかに振とうした。この時点において、容器をArガスでパージし、修飾樹脂をTHF、10 mM NaOH/DMF(1:3)、DMF、MeOH、エーテルで洗浄して吸引乾燥し、0.276 gの淡橙色/黄色ビーズを回収した。修飾樹脂は陽性Griess反応を生じるが、一方で対照試料は陰性Griess反応を生じる。同様に、リン酸緩衝液(0.1 M、pH 7.4)中でTEI NOx分析器を用いて、NO放出も確認された。塩基としてトリエチルアミンを用いて反応を繰り返し、類似の結果を生じた。
【0141】
シアノ酢酸は容易に入手可能であり、エステル化またはアミド化反応によって様々な低分子および固体支持体に結合させることができる(例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ポリビニルアルコールなど)。ニトリル基は有さないが生理学的問題が潜在的に少ないカルボン酸またはエステルの官能性を有するマロン酸誘導体を含む、その他の活性メチレン化合物を利用することも可能である。
【0142】
実施例18

本実施例では、市販の3-アセトキシプロピルトリメトキシシランから調製したポリシロキサンをC系トリスジアゼニウムジオラートへと変換する。本実施例において、ポリマーはX=OおよびR=-C(O)-を有する。
【0143】
実施例19

本実施例において、2-ベンジルオキシエチルメタクリレートをモノマーとして用いてポリマーを予め形成することができ、これを次にC系ジアゼニウムジオラートへと変換する。
【0144】
実施例20
本実施例では、ヒト血小板のエクスビボ阻害における、実施例1、3、および4に記載の炭素系ジアゼニウムジオラートポリマーの使用を実証する。過去10日間以内にアスピリンを摂取していないかまたは過去48時間以内にNSAID(非ステロイド系抗炎症剤)を全く摂取していない健康なボランティアから、0.105 Mクエン酸ナトリウム入りバキュテナー中に採血する。Sorvall臨床遠心器において、クエン酸全血を2000 rpmで10分間遠心分離することによって、多血小板血漿(PRP)を単離する。微小遠心管において7000 rpmで5分間PRPを遠心分離することによって、乏血小板血漿(PPP)を調製する。PRPを、穏やかに振とうしながら37℃の水浴中で維持する。
【0145】
凝集測定:
5.0 mlのPRPを14 mlのポリプロピレンチューブに入れ、20 mg/mlのNO放出ポリマーを添加する。穏やかに振とうしながら、血小板を37℃で15分間インキュベーションする。500μlアリコートを凝集キュベットに入れ、Chronolog Aggregometer(37℃、900 rpm)においてPPPに対するブランクとする。ベースライントレースを1分間測り、10μlのコラーゲン(1 mg/ml)を加える。Aggro-linkソフトウェア(Chronolog)を使用して、5分トレース後の%凝集応答を算出する。
【0146】
結果を以下の表にまとめる。

【0147】
実施例21
本実施例は、炭素系ジアゼニウムジオラートポリマーが、保存中のヒト血小板における病原体のレベルを低下させる能力を実証する。
【0148】
滅菌技術を使用して、PediPak血小板保存容器に、実施例1由来のシアノ修飾クロロメチル化ポリスチレンジアゼニウムジオラート3 g、および、実施例3由来のエトキシ修飾クロロメチル化ポリスチレンジアゼニウムジオラート2 g(処理群)を充填するか、または、そのままで使用する(対照群)。滅菌接続ラインを使用して、ヒト濃縮血小板由来の血小板を各バッグに添加する(容器あたり25 ml)。102コロニー形成単位/ml(CFU/ml)の表皮ブドウ球菌(S. epidermides)の一晩培養物を、各群に接種する。CFU/mlの評価のために各群由来のアリコートを速やかに取り出す。次いで、22℃の典型的な保存条件下で穏やかに撹拌しながら血小板を保存する。24時間後、CFU/mlの評価のために追加のアリコートを取り出す。
【0149】
滅菌ブロスでアリコートを連続希釈し、希釈物を滅菌寒天上に播種し、37℃で24時間のインキュベーション後にプレート上に形成したコロニーの数を計数することによって、CFU/mlを測定する。結果を以下の表にまとめる。

【0150】
実施例22
本実施例は、PET由来の炭素系ジアゼニウムジオラートポリマーからなる装置が該装置を通って流れる液体にNOを添加できる能力を示す。
【0151】
直径0.5 cmで長さ10 cmのFPLCカラムに、実施例8由来の1.2446 gの炭素系ジアゼニウムジオラートニトリルポリ(エチレンテレフタレート)(概算で表面積1914 mm2/gを有する)を添加する。最大量の充填を確実にするために、カラムを軽くたたきながらポリマーを挿入する。
【0152】
充填後のカラムをTygon管系の長さ方向に取り付け、カラムを介して40 mlの7.4リン酸緩衝液を5 ml/minの流速でくみ上げる。1分画分を20 mlバイアルに回収する。各画分からアリコート(0.5 ml)を取り出し、Griessアッセイ法を使用して亜硝酸塩について分析する(亜硝酸塩の分析は、NO測定のための優れた代替法である)。Griess試薬1 mlを3 mlキュベット中の画分に添加し、546 nmにおいて吸光度を読みとる。最初の画分における最初のNO噴出、および、残りの画分について低下したが安定したNO放出が、結果により示される。

【0153】
実施例23
PETから製造されて本明細書に記載のように修飾されたコンタクトレンズケースの調製、およびその抗菌特性の分析
【0154】
PETを使用し、当業者に公知の最も適切な方法を使用して、標準的なコンタクトレンズケースを製造する。実施例8に記載されているように、ケースを酢酸および37重量%ホルムアルデヒドで処理する。ケースをピリジン中で懸濁し、氷浴で冷却し、少なくとも4.67 gのp-トルエンスルホニルクロリドで処理する。p-トルエンスルホニルクロリド添加の2分後、反応液を室温まで温める。24時間後、コンタクトレンズケースを取り出し、2部の乾燥DMFで洗浄する。
【0155】
次いで、トシル化PETを適切な量の乾燥DMF中に入れ、穏やかに撹拌しながら少なくとも2.03 g(3.1×10-2 mol)のKCNを添加する。24時間後、シアノメチル化したPETをろ過し、DMF、1:1 DMF:H2O、H2O、およびMeOHで洗浄する。
【0156】
次いで、シアノメチル化PETを、適切な量のMeOHを添加した300 ml Parr圧力容器に入れる。懸濁液を穏やかに撹拌し、テトラヒドロフラン中のナトリウムトリメチルシラノレートの1.0 M溶液少なくとも1.0 mlを、該懸濁液に添加する。圧力容器をアルゴンで10回パージおよび換気し、その後、NO(80 psi)を充填する。24時間後、ジアゼニウムジオラート化したPETコンタクトレンズケースを取り出し、十分量のEtOHおよびEt2Oで洗浄する。
【0157】
ジアゼニウムジオラート化したコンタクトレンズケース数個および等しい数の対照ケースを、NOの代わりに80 psiの窒素でガス処理し、次いで、以下を含むがこれらに限定されるわけではない、コンタクトレンズケースを汚染することが一般に認められている細菌の1種又は複数に曝露した:緑膿菌、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球菌、バチルス属(Bacillus spp.)、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium spp.)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium spp.)、およびマイコバクテリウム属(Mycobacterium spp.)。24時間のインキュベーション期間後、レンズケースを弱緩衝液(mild buffer)中で穏やかに3回濯ぎ、細菌コロニー形成の程度について定量的に評価するが、そのような評価には以下が非限定的に含まれる:当業者に公知の、走査型電子顕微鏡、物理的(超音波)もしくは化学的(界面活性剤による除去)手段による付着細菌の除去、および/または、顕微鏡法もしくは分光光度法による微生物の計数。ジアゼニウムジオラート化したコンタクトレンズケースの抗菌作用は、対照コンタクトレンズケース表面に認められる量に対する、付着細菌の量の統計学的に有意な減少によって示される。
【0158】
実施例24
本実施例は、医療用または産業用の容器における、細菌性、真菌性、および混合型のバイオフィルムの成長を阻害するための方法を実証する。
【0159】
本実施例において、容器はコンタクトレンズケースのウェルである。公知の量の細菌、真菌、またはこれらの組み合わせを、コンタクトレンズケースウェルのウェルに接種する。バイオフィルムが形成されることが多い条件を模倣するために、接種の前に、200μlの50%無菌唾液/50%PBSまたは50%唾液/50%の市販のコンタクトレンズ液で、レンズケースのウェルを処理する。ゆっくりと振とうしながら、27℃で60分間、プレコーティング手順を実施した。プレコーティング後、ウェルまたはケースを無菌PBSで濯ぎ、一晩培養したカンジダ(Candida)株、細菌株、または混合物200μlを、レンズケースウェルに加えた。微生物を27℃において60分間付着させ、その後、PBSで2回濯ぐことによって非付着細胞を除去し、次に増殖培地(70%TSB/30%YNB+AA+デキストロース)500μlを加えた。この時点で、播種されたバイオフィルムは成長を開始し、バイオフィルム成長に対する処理を試験することができる。
【0160】
本発明の一酸化窒素放出ポリマーを、環、ディスク、ペレット、またはその他の形状の固体送達系の形態にすることができる。決して限定的な実施例であることを意味するわけではないが、本実施例においては、実施例1記載の一態様を型どりして、結合剤としてのポリ酢酸ビニルポリマーを有するディスクへと形成した。一酸化窒素放出ディスクを、微生物が播種されたコンタクトレンズケースのウェル中に、播種の直後またはバイオフィルム成熟から48時間後に配置した。実施例1由来の(クロロメチルポリスチレンと架橋した)開始材料を型どりしてディスクへと形成し、ディスク対照群として用いた。
【0161】
バイオフィルム播種の時点で加えたディスク:
バイオフィルム成長培地(70%TSB/30%YNB+AA+デキストロース)と共に、微生物の付着後に、一酸化窒素放出ディスクを加えた。48時間後に、機械的破壊を用いて細胞をウェル表面から引き離し、培地中に懸濁し、プレート計数分析用に希釈した。コロニー形成単位(cfu)/mlを測定した。ディスク対照群は非処理対照群との統計学的な違いを示さず、それぞれ4.3 cfu/mlおよび4.85 cfu/mlを示した。一酸化窒素放出ディスクで処理した群では0.0014 cfu/mlと測定されたが、これは、生存可能なカンジダ・アルビカンス(C. albicans)がほぼ1/3500に減少したことを表す。
【0162】
48時間のバイオフィルム成熟の後に加えたディスク:
一酸化窒素放出ディスクまたはディスク対照を、少なくとも48時間のバイオフィルム成熟期間を経たウェルに加えた。添加されたディスクを、27℃でさらに24〜72時間、ウェル中で放置し、その後、ディスクを除去して、機械的破壊を用いてバイオフィルムを懸濁し、懸濁および希釈した細胞のcfu/mlを測定した。72時間後、非処理対照群は29×105 cfu/mlであったが処理群は2.0×105 cfu/mlを示し、これは1/10を上回る減少を表す。
【0163】
実施例25
血小板付着に対するNO放出表面の耐性
実施例10に記載したのと同じ手法を使用して、ガラス製のカバーガラスを被覆する。対照カバーガラスは、NOの代わりに窒素でガス処理する。ビデオ録画カメラ付き蛍光顕微鏡のステージに取り付けられたフローセル中に対照スライドおよびNO放出スライドを密閉し、高剪断条件(1000s-1)下で、37℃においてセルを通じてヒト全血を循環させ、蛍光をモニターする。表面への血小板の沈着はビデオ画像における白色蛍光スポットによって示される。NO放出コーティングおよび対照コーティングを使用して同一の血液ドナーが試験されるように、実験を制御する。対照コーティングの場合には強い蛍光画像であり被覆面積は20%を超えるのに対して、NO放出コーティングの場合には蛍光がゼロであり被覆面積が5%未満であることによって、効果的な抗血小板コーティングが示される。
【0164】
実施例26
NO放出コーティングが人工表面上での内皮細胞の成長を増強する能力の実証
ニトリル修飾した(実施例1参照)シロキサンジアゼニウムジオラート単層ポリマー(実施例9と同様)、または、NOの代わりに窒素でガス処理した同一のポリマー(NOを放出しない対照として)を、スライドガラスに被覆する。スライドガラスをアルカリ化70%エタノール中で少なくとも20分間滅菌する。スライドガラスをそれぞれ滅菌したペトリ皿に入れる。4つのモール(mall)を使用して、C166ウシ内皮細胞を1×104細胞/mlでペトリ皿中に播種する。試料を5%CO2雰囲気下で37℃においてインキュベーションする。24時間後、被覆スライドガラスに付着した内皮細胞の数を以下の方法で計数する。スライドガラスを新鮮なペトリ皿に移し、EDTAおよびトリプシン処理による抽出を使用して細胞をスライドガラスから遊離させ、その後、洗浄し、染色し、遠心分離して細胞を濃縮し、血球計数器を使用して計数する。これらの実験は、異種表面の内皮形成を促進するNO放出コーティングの能力を実証している。

【0165】
実施例27
本願に記載のようにNO放出コーティングで被覆した心血管ステントの評価
本発明に記載するようにステントを被覆する。Schwartz and Edelman, 2002のガイドラインおよび手法により、ブタ冠動脈再狭窄モデルを使用してステントを移植する。NO放出被覆ステント、NO非放出被覆ステント(すなわち、本発明にしたがって被覆されたがNOガスに曝露されていない)、および被覆無しの金属ステントを含む3種類の実験群を、抗血小板薬で処置した動物(アスピリンおよびクロピドグレル、手術の24時間前から持続的)に移植する。ステント:動脈比1.0〜1.1のステントを使用する。ステントの移植は麻酔下で実施する。実験群あたり約10例のステント術を受けた動脈を7日目、28日目、および3ヶ月目に評価する。
【0166】
NO放出コーティングの効果は、Schwartz and Edelmanに記載の定量的および半定量的な方法を使用して、血栓が存在しないことおよび未処理ステントと比較して新生内膜増殖が統計学的有意に減少していることによって判定される。
【0167】
実施例28
本実施例において、経口治療としての本発明の有用性を実証する。成体ラットをストレプトゾトシンで処理してその膵臓β細胞を破壊し、糖尿病を発症させた。糖尿病治療用の標準的モデルである7週間糖尿病ラット(seven week diabetic rat)を用いて、本発明の一態様が胃排出時間に対する糖尿病の影響を逆行させる能力を決定した。ラットには測定可能な色素を含む食餌を与え、胃の内容物の比色測定を可能にした。非糖尿病ラット(対照群)には、塩化物をシアノ基で置換するよう修飾されたがさらに一酸化窒素を放出するようには修飾されていないクロロメチル化ポリスチレンと共に、染色食餌を与えた。糖尿病ラット(糖尿病対照)にも、対照群について説明したのと同じ一酸化窒素非放出シアノ誘導体と共に、染色食餌を与えた。追加の群の糖尿病ラットには、実施例1記載の一酸化窒素放出シアノメチル化ポリスチレンビーズと共に、染色食餌を与えた(糖尿病処置群)。各群について、15分後に胃内に残存する染色食餌の量を測定した。実施例1記載の本発明の一態様を用いた処置による胃排出時間の糖尿病誘発性増大の逆行を示す結果を、以下の表に示す。

【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】pH 7.4の緩衝液中でシアノ修飾クロロメチル化ポリスチレンジアゼニウムジオラート5.5 mgから15分間にわたって放出されたNOの量を示す。この期間の間、樹脂1mgあたり0.49μmolのNOが発生した。放出されたNOの量は10億分率(ppb)で測定するが、これを本明細書に記載のように評価および測定する(実施例を参照されたい)。
【図2】エトキシ修飾クロロメチル化ポリスチレンジアゼニウムジオラートからのNO放出量を示す。このポリマー組成物を4 mmの透析膜(MWCO 3500)に充填し、反応容器に入れ、pH 7.4の緩衝液に沈めた。26分後、透析チューブを取り出して、NO放出物質の浸出(NO-releasing leachable material)がないことを実証した。35分の時点でチューブを反応容器に再度挿入し、その後2時間にわたってNOが放出され、NO 5.3×10-11mol/樹脂1mg/分の速度でNOが発生した。
【図3】一酸化窒素を流動中の灌流液に送達するための装置の一態様の断面図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーに結合したC系ジアゼニウムジオラート化合物を含む組成物であって、該化合物がイミデートでもチオイミデートでもない、組成物。
【請求項2】
生理学的条件下で予測可能な量のNOを放出し、生理学的条件下でニトロソアミンを発生しない、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
下記式1によって構造が示される、請求項2記載の組成物:

式中、Xは任意の二価、三価、または四価のリンカーであり;
Rは、置換されたまたは置換されていない、任意の脂肪族置換基またはアリール置換基を表し;
Yは任意の二価、三価、または四価のリンカーを表し;
R1、R2、R3は、少なくとも1つの置換基が-N2O2R4であるという条件で、-N2O2R4、H、またはその他の基を表し;かつ
R4は、Na+およびK+などであるがこれらに限定されないアルカリ金属イオン、またはジアゼニウムジオラート保護基を含むが、これらに限定されない。
【請求項4】
ポリマー骨格が、ポリアスピリン、ポリエチレンアジペート、ポリビニルアセトフェノン、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリレート、ポリ-2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリシロキサン、およびこれらの誘導体からなる群より選択される、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
Xが、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、ならびにR6およびR7がHであってもよい-CR6(R7)-、または、置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基からなる群より選択される、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
Rが置換されていない脂肪族基またはアリール基を表す、請求項3記載の組成物。
【請求項7】
Rが置換された脂肪族基またはアリール基を表し、置換基が電子吸引(electronwithdrawing)基を含むがこれに限定されない、請求項3記載の組成物。
【請求項8】
Rが置換された脂肪族基またはアリール基を表し、置換基が、-NO2、-CN、カルボニル、置換アルキル、および-CF3の群より選択される、請求項3記載の組成物。
【請求項9】
Yが、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、ならびにR6およびR7がHであってもよい-CR6(R7)-、または、置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基からなる群より選択される、請求項3記載の組成物。
【請求項10】
R4がアルカリ金属イオンである、請求項3記載の組成物。
【請求項11】
アルカリ金属がNa+およびK+からなる群より選択される、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
R4がジアゼニウムジオラート保護基である、請求項3記載の組成物。
【請求項13】
ポリマーが、以下に示される構造

を有するポリビニルアセトフェノンであり、式中、Z=1〜3であり、Y=0〜2であり、Y+Z=3である、請求項4記載の組成物。
【請求項14】
ポリマーが、以下に示される構造

を有するポリ(エチレン酢酸ビニル)コポリマー(PEVA)であり、式中、Z=1〜3であり、Y=0〜2であり、Y+Z=3である、請求項4記載の組成物。
【請求項15】
ポリマーが、以下に示される構造

を有するメチル置換ポリスチレンであり、式中、G=NONONaまたはHである、請求項4記載の組成物。
【請求項16】
ポリマーが、以下に示される構造

を有するヒドロキシメチル置換ポリスチレンであり、式中、G=NONONaまたはHである、請求項4記載の組成物。
【請求項17】
ポリマーが、以下に示される構造

を有する3-アセトキシプロピル置換シロキサンであり、式中、Z=1〜3であり、Y=0〜2であり、Y+Z=3である、請求項4記載の組成物。
【請求項18】
ポリマーが、以下に示される構造

を有するポリ-2-ヒドロキシエチルメタクリレートであり、式中、G=NONONaまたはHである、請求項4記載の組成物。
【請求項19】
下記の構造

を有し、
式中、R1は、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、ならびにR6およびR7がHであってもよい-CR6(R7)-、または置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基からなる群より選択される、二価、三価、または四価のリンカーであり;
R2=-N2O2R4、H、またはその他の基であり;
R4は、Na+およびK+などであるがこれらに限定されないアルカリ金属イオン、またはジアゼニウムジオラート保護基を含むが、これらに限定されない、
請求項2記載の組成物。
【請求項20】
下記の構造

を有し、
式中、Xは二価、三価、または四価のリンカーであり;
R1およびR2は二価、三価、または四価のリンカーを表し;
X、R1、およびR2は、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、ならびにR6およびR7がHであってもよい-CR6(R7)-、または、置換されたもしくは置換されていない脂肪族基もしくはアリール基からなる群より選択されうり;
R3およびR5=-N2O2R4、H、またはその他の基であり;
R4は、Na+およびK+などであるがこれらに限定されないアルカリ金属イオン、またはジアゼニウムジオラート保護基を含むが、これらに限定されない、
請求項2記載の組成物。
【請求項21】
以下に示される構造

を有し、式中、G=NONONaまたはHである、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
以下に示される構造

を有し、式中、G=NONONaまたはHである、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
下記の構造

を有し、
式中、アリール基が1つまたは複数の置換基Gを有してもよく;
Rが二価、三価、または四価のリンカー基であり;
R1が-N2O2R4、H、またはその他の基であり;
R4が、Na+およびK+などであるがこれらに限定されないアルカリ金属イオン、またはジアゼニウムジオラート保護基を含むが、これらに限定されず;かつ
ポリマーがポリマー骨格で作製されてもよい、
請求項2記載の組成物。
【請求項24】
Rが、-C(O)-、-OC(O)-、-NHC(O)-、-O-、-S-、R8がHではない-NR8-、R6およびR7がHであってもよいCR6(R7)、置換されたまたは置換されていない脂肪族基およびアリール基からなる群より選択される、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
ポリマーが、生理学的用途のための生体適合性基質である、請求項23記載の組成物。
【請求項26】
ポリマーが、ポリ2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリウレタン、およびポリエステルからなる群より選択され、生理学的用途がインプラントである、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
ポリマーが疎水性ポリマー基質である、請求項23記載の組成物。
【請求項28】
疎水性ポリマー基質が、ポリスチレン、PET、およびポリメチルメタクリレートからなる群より選択される、請求項27記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−518516(P2009−518516A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544411(P2008−544411)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/046214
【国際公開番号】WO2007/067477
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(508168778)アミュレット ファーマシューティカルズ インコーポレイティッド (1)
【Fターム(参考)】