説明

三次元光導波路および光通信システム

【課題】 光路を二次元または三次元にレイアウトできる三次元光導波路、および前記三次元光導波路を用いた光通信システムの提供。
【解決手段】 所定の方向に沿って2列2層以上に配置されたコアと、前記複数のコアが埋包されてなるとともに、前記コアとは屈折率の異なるクラッドと、少なくとも一部のコア上に設けられ、前記コアによって形成される光路を、前記所定の方向とは異なる別の方向に変換する光路変換手段とを有する三次元光導波路、および前記三次元光導波路を有する光通信システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元光導波路および光通信システムに係り、特に、光路を二次元または三次元にレイアウトできる三次元光導波路、および前記三次元光導波路を用いた光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次元光導波路を積層してコアを三次元の格子状に立体配置することにより、複数の光バスを形成して光導波路を大容量化することが検討されている(特許文献1、特許文献2)。また、光素子を光ファイバに接続するための光路直角変換導波路が提案されている。これは、導波路の一端に光路を90度曲げるための反射鏡を形成したものである。
【特許文献1】特開平11−183747号公報
【特許文献2】特開2004−177730号公報
【非特許文献1】JPCA Show 2004 最先端シンポジウム「光・電気モジュールの実装技術」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1および2に記載の光導波路は、コアが直線状であるので、一方の端面から光を入射させ、他方の端面において受光することはできるが、光路を任意の方向に曲げることができない。また、非特許文献1に示された光路直角変換導波路、光路を直角に曲げることはできるものの、更に別の方向に曲げるには、別の光路変換導波路を用いて光ファイバ等によって接続する必要があり、不便であった。
【0004】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、光路を二次元または三次元にレイアウトできる三次元光導波路、および前記三次元光導波路を用いた光通信システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、所定の方向に沿って2列2層以上に配置されたコアと、前記複数のコアが埋包されてなるとともに、前記コアとは屈折率の異なるクラッドと、少なくとも一部のコア上に設けられ、前記コアによって形成される光路を、前記所定の方向とは異なる別の方向に変換する光路変換手段とを有してなることを特徴とする三次元光導波路に関する。
【0006】
前記三次元光導波路においては、前記コアによって形成される光路のうち、少なくとも一部は光路変換手段によって前記所定の方向とは別の方向に屈曲されている。
【0007】
したがって、一部の光路が光路変換手段によって屈曲された三次元光導波路においては、前記光路変換手段によって屈曲されていない第1の光路と、前記光路変換手段によって屈曲された第2の光路とが一体化されている。
【0008】
また、全ての光路が光路変換手段によって屈曲された三次元光導波路も請求項1の三次元光導波路に包含される。
【0009】
これらの三次元光導波路においては、三次元光導波路における光導入部や光導出部の位置を発光素子や受光素子のような光素子の配置に合わせることが極めて容易である。
【0010】
前記光路変換手段は、コアの側壁面の所定の位置に形成された反射面であってもよく、コア上の所定の位置に配設された反射鏡であっても良い。また、コアを所定の位置において屈曲させても光路を変換できる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の三次元光導波路であって、前記コアに交差するように形成され、前記コアに光を導入または導出する光導出入光路を備えてなり、前記光路変換手段は、前記コアと前記光導出入光路との間で光路の方向を変換するものに関する。
【0012】
前記三次元光導波路においては、一の光導出入部から導入された光は、光導出入光路および光路変換手段を通って前記コアの一端に導入される。そして、前記光が導入されたコアの他端において光導出入光路および光路変換手段を通って他の光導出部から外部に導出される。
【0013】
したがって、発光素子からの光を前記一の光導出入部に入射させ、他の光導出入部において受光素子で受ければ、前記発光素子と受光素子との間で前記三次元光導波路を介して光を授受できるから、発光素子および受光素子を三次元光導波路に直接光接続でき、光接続用カプラ−などは不要になる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の三次元光導波路において、前記コアの少なくとも一部が、少なくとも1箇所において前記所定の方向とは異なる別の方向に屈曲してなり、前記コアの屈曲箇所に前記光路変換手段が設けられてなるものに関する。
【0015】
前記三次元光導波路においては、屈曲したコアに入射した光は、コアの屈曲した箇所において光路変換部材によって屈曲されコア内部を伝達される。一方、屈曲していないコアに入射した光は、コアの内部を所定の方向に進行する。
【0016】
したがって、前記三次元光導波路は、屈曲していない光路と屈曲した光路との少なくとも2種類の光路が一体化した態様と、全ての光路が屈曲した態様との2種類を包含する。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の三次元光導波路において、一部の層において少なくとも1列のコアが屈曲してなるものに関する。
【0018】
前記三次元光導波路は、屈曲していない光路と屈曲した光路との少なくとも2種類の光路が一体化されているから、発光素子と受光素子とを前記三次元光導波路に光接続するだけで立体的な光配線が行なえる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の三次元光導波路において、全ての層において少なくとも1列のコアが屈曲してなるものに関する。
【0020】
前記三次元光導波路においては、何れの層においても、少なくとも2方向の光路が形成されている。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の三次元光導波路において、前記屈曲してなるコアの屈曲方向が全て同一であるものに関する。
【0022】
前記三次元光導波路は、2方向の光路が一体化された光導波路である。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項4または5に記載の三次元光導波路において、前記屈曲してなるコアのうちの一部は、前記コアのうちの残りとは異なる方向に屈曲してなるものに関する。
【0024】
前記三次元光導波路は、第1の方向に延在するコアと、前記第1の方向とは異なる第2の方向に屈曲しているコアのほか、少なくとも、前記第1および第2の方向とは異なる第3の方向に屈曲したコアを有する。したがって、前記三次元光導波路においては3つの方向の光路が一体化されている。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れか1項に記載の三次元光導波路において、前記光路変換手段が反射鏡であるものに関する。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の三次元光導波路において、前記反射鏡が、金属光沢面および誘電体多層膜の何れかであるものに関する。
【0027】
前記三次元光導波路においては、光路変換手段として反射鏡を用いているから、コアの屈曲部やコアと光導出入光路との間で光路の方向が確実に変換される。
【0028】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9の何れか1項に記載の三次元光導波路において、前記コアがクラッドよりも屈折率が大きなものに関する。
【0029】
近年、光導波路用の材料として注目されているポリシランは、紫外光を照射すると屈折率が低下する性質がある。
【0030】
前記三次元光導波路は、ポリシランをスピンコータなどで塗布し、コアは、紫外線を照射することなくマスクし、クラッドは、光路のパターンに沿って紫外線を照射した後、250℃程度(材料によって最適な温度は異なる。)に加熱してベーキングすることにより作製できる。
【0031】
したがって、コアとクラッドとで異なる材料を使用したり、ドーピングによりコアを形成したりする必要がないから、作製が極めて容易である。
【0032】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10の何れか1項に記載の三次元光導波路と、前記三次元光導波路の少なくとも1つのコアの一端に光接続された発光素子と、前記発光素子が光接続されたコアの他端に光接続された受光素子とを有することを特徴とする光通信システムに関する。
【0033】
前記三次元光導波路は、光素子や電子素子の配置に合わせることが容易であるから、前記光通信システムは、三次元光導波路の形態による制約が少ない故に好ましい。また、光素子を立体的に配置した立体的光配線も容易である。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように本発明によれば、光路を三次元に自由にレイアウトできる三次元光導波路、および前記三次元光導波路を用いた光通信システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
1.実施形態1
【0036】
以下、本発明に係る三次元光導波路の一例について説明する。
【0037】
図1において(A)は、実施形態1に係る三次元光導波路100を上方から見たところを示し、(B)は、三次元光導波路を平面A−Aに沿って切断した断面を示す。図2は、三次元光導波路を図1における平面B−Bに沿って切断した断面を示す。
【0038】
図1において(A)および(B)に示し、更に図2に示すように、三次元光導波路100は、X方向に延在する主導波路102と、主導波路102の中央部からY方向に分岐する分岐導波路104とを有する。
【0039】
主導波路102および分岐導波路104の何れも、基板10上に形成されている。
【0040】
主導波路102の内部における分岐導波路104が分岐する部分には、X方向の光路をY方向に変換する光路変換手段である反射鏡6が埋設されている。反射鏡6は、二等辺直角三角形の平面形状を有する。
【0041】
主導波路102および分岐導波路104の内部には、コア2とコア3とが形成されている。コア2は、主導波路102内をX方向に貫通してX方向の光路を形成するコアである。コア3は、主導波路102の一端から反射鏡6まではX方向に沿って延在し、反射鏡6においてY方向に方向を転換して分岐導波路104内を貫通し、直角方向に屈曲した光路を形成する。コア2およびコア3は、何れもXY平面内において2列に配列されてなるとともに、Z方向に沿って4層に配列されている。
【0042】
コア2とコア3とは屈折率が同一であり、コア2およびコア3よりも小さな屈折率を有するクラッド4によって囲繞されている。なお、図1以下の図面において、コア2およびコア3は白抜きの区画として示され、クラッド4は、斜線を付した区画として示されている。
【0043】
コア2の両端は、Z方向に沿って形成された光導出入光路12に連通している。そして、コア3においては、主導波路102側の端部は、Z方向に沿って形成された光導出入光路14に連通し、分岐導波路104側の端部は、Z方向に沿って形成された光導出入光路14に連通している。光導出入光路12は、2列4層に設けられたコア2の夫々の両端に2本づつ計16本設けられている。光導出入光路14および光導出入光路16は、2列4層に設けられたコア3について1本づつ、計8本づつ設けられている。
【0044】
光導出入光路12、光導出入光路14、および光導出入光路16の上端は、図1および図2に示すように、主導波路102または分岐導波路104の上面に露出し、夫々光導出入部20、光導出入部22、および光導出入部24を形成する。
【0045】
主導波路102の両端における光導出入光路12にコア2が連通する部分、および光導出入光路14にコア3が連通する部分には、反射鏡7および反射鏡8が設けられている。また、分岐導波路104の先端部における光導出入光路16とコア3とが連通する部分には、反射鏡9が設けられている。
【0046】
反射鏡7、反射鏡8、および反射鏡9は、何れも二等辺直角三角形状の断面を有する反射鏡であり、反射面7A、反射面8A,および反射面9Aは斜面に形成されている。反射鏡7、反射鏡8、および反射鏡9は、金属光沢面であってもよく、誘電体多層膜による光の反射特性を利用した面であってもよい。金属光沢面は、金属素のものの面であってもよく、または樹脂やSiなどに金属光沢を有するコーティング(たとえばAg、Al、Auなど)を施したものであってもよい。
【0047】
三次元光導波路100を作製する手順について以下に説明する。
【0048】
先ず、図3において(A)および(B)に示すように、工程1において、基板10に反射鏡6、反射鏡7、反射鏡8、および反射鏡9を載置、固定する。そして、ポリシラン(日本ペイント(株)登録商標「グラシア」等)をスピンコートして250℃程度でベーキングし、クラッド層44を形成する。クラッド層44は、三次元光導波路100のクラッド4の一部を構成する。
【0049】
次ぎに図4において(A)および(B)に示すように、工程2において、クラッド層44に重ねて更にポリシランをスピンコートし、更に紫外線で露光してコア2およびコア3の形状に沿ってパターニングする。紫外線でパターニングした後、ベーキングしてコア層42を形成する。コア層42においては、マスクで紫外線が照射されなかった部分はコア2およびコア3を形成し、紫外線が照射された部分は屈折率が小さくなり、クラッド4を形成する。コア層42のクラッド4は、クラッド層44と一体化してコア2およびコア3を囲繞するクラッド4を形成する。
【0050】
次ぎに、図5において(A)および(B)に示すように、工程3において、コア層42に重ねてポリシランをスピンコートする。そして、紫外線露光によってパターニングしてZ方向の光路である光導出入光路12、光導出入光路14、および光導出入光路16を形成する。パターニング後、ベーキングしてコア層43を形成する。コア層43において紫外線でパターニングされた部分は屈折率が低下してクラッド4を形成する。コア層43のクラッド4は、コア層42のクラッド4と一体化する。
【0051】
以下、工程2および工程3を繰り返し行なって図1に示す三次元光導波路100を形成する。
【0052】
コア2およびコア3は、前述したように、X方向またはY方向に沿って2列に配列され、Z方向に沿って4層に配列されているから、何れも8本づつ形成されている。そして、8本のコア2の夫々について両端に光導出入光路12が連通し、同様に8本のコア3の夫々について光導出入光路14と光導出入光路16が連通している。
【0053】
したがって、三次元光導波路100においては、一方の光導出入部20と他方の光導出入部20との間には、コア2と、コア2の両端に連通する1対の光導出入光路12とによってX方向に延在する第1の方向の光路が8本形成されるとともに、光導出入部22と光導出入部24との間においては、コア3と光導出入光路14と光導出入光路16とによって途中でX方向からY方向に屈曲する第2の方向の光路が8本形成される。
【0054】
したがって、一方の光導出入部20に発光素子の発光面を、他方の光導出入部20に受光素子の受光面を載置することにより、前記発光素子と受光素子との間では、X方向に沿った光路に沿って光を授受できる。
【0055】
一方、光導出入部22に発光素子の発光面を、光導出入部24に受光素子の受光面を載置することにより、前記発光素子と受光素子との間では、X方向からY方向、またはY方向からX方向に屈曲した光路に沿って光を授受できる。
【0056】
また、光導出入部20、光導出入部22、または光導出入部24に発光素子の発光面を載置するだけで発光素子からの光を三次元光導波路100に導入でき、また、光導出入部20、光導出入部22、または光導出入部24に受光素子の受光面を載置するだけで三次元光導波路100に導入された光を受光できるから、発光素子および受光素子と三次元光導波路100とを光ファイバなどの光接続部材で接続する必要がない。
【0057】
2.実施形態2
【0058】
以下、本発明に係る三次元光導波路の別の例について説明する。
【0059】
図6において(A)は、実施形態2に係る三次元光導波路200を上方から見たところを示し、(B)は、三次元光導波路200をXZ平面に沿って切断した断面を、(C)は、YZ平面に沿って切断した断面を示す。図6以下において、図1および図2と同一の符号は、前記符号が前記図面において示すのと同一の構成要素を示す。
【0060】
図6に示すように、三次元光導波路200においては、X方向に沿って延在する4列のコア2が、Z方向に沿って4層に形成されている。したがって、コア2は合計16本形成されている。
【0061】
コア2は、より小さな屈折率を有するクラッド4によって囲繞されている。
【0062】
三次元光導波路200の両端には、コア2によって形成された光路の方向をX方向からZ方向に転換する反射鏡7および反射鏡8が配設されている。反射鏡7および反射鏡8は、傾斜面である反射面7Aおよび反射面8Aが互いに相対するように配設されている。反射鏡7および反射鏡8は、本発明の三次元光導波路における光路変換手段に相当する。
【0063】
三次元光導波路200の下面には基板10が設けられている。
【0064】
コア2の両端には、Z方向の光導出入光路12が形成され、反射鏡7および反射鏡8の反射面7Aおよび反射面8Aにおいてコア2と交差している。
【0065】
光導出入光路12の上端は三次元光導波路200の両端部における上面に露出し、光導出入部20を形成する。
【0066】
以下、三次元光導波路200を形成する手順について説明する。
【0067】
先ず、工程1において、図7の(A)および(B)に示すように、反射鏡7および反射鏡8を、反射面7Aおよび反射面8Aが相対向するように基板10上に載置、固定してポリシランをスピンコートしてベーキングする。これにより、クラッド層44が形成される。
【0068】
次ぎに、工程2において、図7の(C)および(D)に示すように、工程1で形成されたクラッド層44上にポリシランをスピンコートし、紫外線でパターニングしてコア2を形成する。コア2を形成後、ベーキングする。これにより、コア2とクラッド4とがX方向に沿って交互に配列されたコア層42が形成される。
【0069】
次ぎに、図8において(A)および(B)に示すように、工程3において、コア層42上に更にポリシランをスピンコートし、紫外線でパターニングしてコア2の両端に光導出入光路12を形成する。光導出入光路12を形成後、ベーキングを行い、クラッド4の両端に光導出入光路12が4個づつ配列されたコア層43が形成される。
【0070】
コア層43が形成されたら、図9において(A)および(B)に示すように、工程4においてコア層43上にポリシランをスピンコートし、紫外線でパターニングしてコア2を形成する。コア2を形成後、ベーキングする。これにより、コア2とクラッド4とがX方向に沿って交互に配列されたコア層42が形成される。
【0071】
更に、図9において(C)および(D)に示すように、工程5においてコア層42上に更にポリシランをスピンコートし、紫外線でパターニングしてコア2の両端に光導出入光路12を形成する。光導出入光路12は、工程2で形成されたコア2に連通するものだけでなく、工程4で形成されたコア2に連通するものも形成されるから、コア層43の一方の端部について8個づつ形成される。光導出入光路12を形成後、ベーキングを行い、クラッド4の両端に光導出入光路12が4個づつ配列されたコア層43が形成される。
【0072】
工程4および5を繰り返すことにより、図6に示す三次元光導波路200が形成される。
【0073】
三次元光導波路200においては、一方の光導出入部20から入射した光は、光法出入光路12を通って反射鏡7または反射鏡8の一方で反射されてコア2に入射する。コア2を通過した光は、反射鏡7または反射鏡8の他方で反射されて光法出入光路12に入射し、他方の光導出入部20から出射する。
【0074】
このように、一方の光導出入部20に光を入射することにより、他方の光導出入部20から光を出射させることができる。しかも、光導出入部20は、何れも三次元光導波路200の上面に設けられているから、発光素子および受光素子は、三次元光導波路200の上面における光導出入部20に実装できる。
【0075】
更に、コア2は4列4層設けられているから、光路は合計16本形成される。したがって、多数の発光素子および受光素子を用いた複雑な光配線も容易に行なえる。
【0076】
3.実施形態3
【0077】
以下、本発明に係る三次元光導波路の更に別の例について説明する。
【0078】
図10において(A)は、実施形態3に係る三次元光導波路300を上方から見たところを示し、(B)は、三次元光導波路300を、XZ方向の平面である平面A−Aに沿って切断した断面を、(C)は、三次元光導波路300を、XZ方向の平面である平面B−Bに沿って切断した断面を示す。そして図11は、三次元光導波路300をYZ方向の平面である平面C−Cに沿って切断した断面を示す。図10以下において、図1および図2と同一の符号は、前記符号が前記図面において示すのと同一の構成要素を示す。
【0079】
図10および図11に示すように、三次元光導波路300は、X方向に延在する主導波路302と、主導波路302の中央部からY方向に分岐する分岐導波路304とを有する。
【0080】
主導波路302および分岐導波路304の何れも、基板10上に形成されている。
【0081】
主導波路302における分岐導波路304が分岐した側とは反対側には、X方向に延在するコア2が2列4層に形成されている。一方、主導波路302における分岐導波路304が分岐した側には、コア2が2列2層に形成され、その下方に、分岐導波路304の部分でX方向からY方向に屈曲するコア3およびコア5が形成されている。コア3は、主導波路302の図10における左端部から右方に向って延在し、分岐導波路304の部分でX方向からY方向に屈曲する。一方、コア5は、主導波路302の図10における右端部から左方に向って延在し、分岐導波路304の部分でX方向からY方向に屈曲する。コア3は、コア5の上方に形成されている。コア2、コア3、およびコア5は、何れも、より低い屈折率を有するクラッド4によって囲繞されている。
【0082】
主導波路302の内部における分岐導波路304が分岐する部分には、X方向の光路をY方向に変換する光路変換手段である反射鏡62および反射鏡64が埋設されている。反射鏡62および反射鏡64は平面鏡である。反射鏡62は、コア5がX方向からY方向に屈曲する位置に設けられ、反射鏡62は、コア3がX方向からY方向に屈曲する位置に設けられている。
【0083】
主導波路302の右端部には反射鏡7が、左端部には反射鏡8が設けられている。そして、分岐導波路304の先端部には反射鏡9が設けられている。
【0084】
コア2の両端は光導出入光路12に連通している。一方、コア3における主導波路302側の端部は光導出入光路14に連通し、分岐導波路304側の端部は光導出入光路16に連通している。そして、コア5における主導波路302側の端部は光導出入光路15に連通し、分岐導波路304側の端部は光導出入光路18に連通している。光導出入光路12、光導出入光路14、光導出入光路15、光導出入光路16、および光導出入光路17は、何れもZ方向に沿って延在するとともに、コア2、コア3、およびコア5と同一の屈折率を有する光路である。
【0085】
コア2と光導出入光路12との間の光路の変換は、反射鏡7および反射鏡8によって行なわれる。コア3においては、光導出入光路14との間の光路の変換は反射鏡8で行なわれ、光導出入光路16との間の光路の変換は反射鏡9で行なわれる。コア5においては、光導出入光路15との間の光路の変換は反射鏡7で行なわれ、光導出入光路18との間の光路の変換は反射鏡9で行なわれる。
【0086】
以下、三次元光導波路300を作製する手順について説明する。
【0087】
先ず、工程1において、図12において(A)および(B)に示すように、基板10上に反射鏡7、反射鏡8、反射鏡9、および反射鏡62を載置、固定する。そして、ポリシランをスピンコートしてベーキングし、クラッド層44を形成する。
【0088】
工程2において、図13に示すように、クラッド層44上にポリシランをスピンコートして紫外線でコア2およびコア5を2列づつパターニングして形成してベーキングする。このようにして形成されたコア層42において露光された部分はクラッド4になる。
【0089】
工程3において、図14に示すように、コア層42上に反射鏡64を載置、固定した後、ポリシランをスピンコートし、紫外線でパターニングして夫々のコア2の両端に光導出入光路12を形成し、コア3の一端に光導出入光路15を、他端に光導出入光路18を形成する。紫外線でパターニング後、ベーキングする。このようにして形成したコア層43において露光された部分はクラッド4になる。
【0090】
工程4において、図15に示すように、コア層43上にポリシランをスピンコートし、紫外線でパターニングしてコア2およびコア3を2列づつ形成するとともに、光導出入光路15を形成し、250℃程度でベーキングする。このようにして形成されたコア層42において露光された部分はクラッド4になる。
【0091】
工程5において、図16に示すように、コア層42上にポリシランをスピンコートし、紫外線でパターニングして各コア2の両端に光導出入光路12を、各コア3の一端に光導出入光路14を、他端に光導出入光路16を形成するとともに、光導出入光路15および光導出入光路18を形成する。パターニング後、ベーキングする。このようにして形成したコア層43において露光された部分はクラッド4になる。
【0092】
工程6において、図17に示すようにコア層43上にポリシランをスピンコートする。そして、紫外線でパターニングしてコア2を4列形成し、ベーキングしてコア層42を形成する。
【0093】
工程7において、図18に示すようにコア層42上にポリシランを塗布する。そして紫外線でパターニングして前記4列のコア2の夫々の両端に光導出入光路12を形成するとともに、光導出入光路14、光導出入光路15、光導出入光路16、光導出入光路18を形成する。パターニング後、ベーキングしてコア層43を形成する。
【0094】
次ぎに、工程6と工程7とを繰り返して4列のコア2と光導出入光路12、光導出入光路14、光導出入光路15、光導出入光路16、光導出入光路18とを更にもう1層形成して三次元光導波路300が完成する。
【0095】
三次元光導波路300においては、主導波路302の左端に位置する光導出入光路12から光を入射すると、入射した光は反射鏡8で反射してコア2の左端に入射する。そしてコア2の右端において反射鏡7で反射されて主導波路302の右端に位置する光導出入光路12から出射する。
【0096】
一方、光導出入光路14から光を入射すると、入射した光は反射鏡8ので反射されてコア3に入射する。そして、反射鏡64で反射されて分岐導波路304に入射し、分岐導波路304に設けられた反射鏡9で反射されて光導出入光路16から出射する。
【0097】
他方、光導出入光路15から光を入射すると、入射した光は反射鏡7で反射されてコア5に入射する。そして、反射鏡62で反射されて分岐導波路304に入射し、反射鏡で反射されて光導出入光路18から出射する。
【0098】
このように、三次元光導波路300においては、3つの異なる方向の光路の何れを通して光を授受するかを選択することができる。
【0099】
また、コア2を経由する光路は8つ、コア3を経由する光路は2つ、コア5を経由する光路は2つ形成されているから、各光路毎に光データを授受するようにすれば、1つの三次元光導波路300を用いるだけで膨大な量の光データ通信が可能になる。また、光導出入光路12、光導出入光路14、光導出入光路15、光導出入光路16、光導出入光路18の何れにおいても、発光素子の発光面を接触させれば光を入射させることができ、受光素子の受光面を接触させれば出射した光を受光できるから、多数の発光素子および受光素子を用いた複雑な光配線も簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、実施形態1に係る三次元光導波路の構成を示す上面図、および前記三次元光導波路の備える主導波路の構成を示すXZ平面に沿った断面図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る三次元光導波路のの備える分岐導波路の構成を示す構成を示すYZ平面に沿った断面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る三次元光導波路を作製する工程のうちの工程1を示す説明図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る三次元光導波路を作製する工程のうちの工程2を示す説明図である。
【図5】図5は、実施形態1に係る三次元光導波路を作製する工程のうちの工程3を示す説明図である。
【図6】図6は、実施形態2に係る三次元光導波路の構成を示す上面図、XZ平面に沿った断面図、およびYZ平面に沿った断面図である。
【図7】図7は、実施形態1に係る三次元光導波路を作製する工程のうちの工程1および工程2を示す説明図である。
【図8】図8は、実施形態1に係る三次元光導波路を作製する工程のうちの工程3を示す説明図である。
【図9】図9は、実施形態1に係る三次元光導波路を作製する工程のうちの工程4および工程5を示す説明図である。
【図10】図10は、実施形態3に係る三次元光導波路の構成を示す上面図、および前記三次元光導波路の備える主導波路の構成を示すXZ平面に沿った断面図である。
【図11】図11は、実施形態3に係る三次元光導波路のの備える分岐導波路の構成を示す構成を示すYZ平面に沿った断面図である。
【図12】図12は、実施形態3に係る三次元光導波路を作製する工程のうちの工程1を示す説明図である。
【図13】図13は、実施形態3に係る三次元光導波路を作製する工程のうちの工程2を示す説明図である。
【図14】図14は、実施形態3に係る三次元光導波路を作製する工程のうちの工程3を示す説明図である。
【図15】図15は、実施形態3に係る三次元光導波路を作製する工程のうちの工程4を示す説明図である。
【図16】図16は、実施形態3に係る三次元光導波路を作製する工程のうちの工程5を示す説明図である。
【図17】図17は、実施形態3に係る三次元光導波路を作製する工程のうちの工程6を示す説明図である。
【図18】図18は、実施形態3に係る三次元光導波路を作製する工程のうちの工程7を示す説明図である。
【符号の説明】
【0101】
2 コア
3 コア
4 クラッド
5 コア
6 反射鏡
7 反射鏡
7A 反射面
8 反射鏡
8A 反射面
9 反射鏡
9A 反射面
10 基板
12 光導出入光路
14 光導出入光路
15 光導出入光路
15 光導出入光路
16 光導出入光路
17 光導出入光路
18 光導出入光路
20 光導出入部
22 光導出入部
24 光導出入部
42 コア層
43 コア層
44 クラッド層
62 反射鏡
64 反射鏡
100 三次元光導波路
102 主導波路
104 分岐導波路
200 三次元光導波路
300 三次元光導波路
302 主導波路
304 分岐導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に沿って2列2層以上に配置されたコアと、
前記複数のコアが埋包されてなるとともに、前記コアとは屈折率の異なるクラッドと、
少なくとも一部のコア上に設けられ、前記コアによって形成される光路を、前記所定の方向とは異なる別の方向に変換する光路変換手段とを
有してなることを特徴とする三次元光導波路。
【請求項2】
前記コアに交差するように形成され、前記コアに光を導入または導出する光導出入光路を備えてなり、前記光路変換手段は、前記コアと前記光導出入光路との間で光路の方向を変換する請求項1に記載の三次元光導波路。
【請求項3】
前記コアの少なくとも一部は、少なくとも1箇所において前記所定の方向とは異なる別の方向に屈曲してなり、前記コアの屈曲箇所に前記光路変換手段が設けられてなる請求項1または2に記載の三次元光導波路。
【請求項4】
一部の層において少なくとも1列のコアが屈曲してなる請求項3に記載の三次元光導波路。
【請求項5】
全ての層において少なくとも1列のコアが屈曲してなる請求項3に記載の三次元光導波路。
【請求項6】
前記屈曲してなるコアの屈曲方向は全て同一である請求項4または5に記載の三次元光導波路。
【請求項7】
前記屈曲してなるコアのうちの一部は、前記コアのうちの残りとは異なる方向に屈曲してなる請求項4または5に記載の三次元光導波路。
【請求項8】
前記光路変換手段は反射鏡である請求項1〜7の何れか1項に記載の三次元光導波路。
【請求項9】
前記反射鏡は、金属光沢面および誘電体多層膜の何れかである請求項8に記載の三次元光導波路。
【請求項10】
前記コアはクラッドよりも屈折率が大きい請求項1〜9の何れか1項に記載の三次元光導波路。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の三次元光導波路と、前記三次元光導波路の少なくとも1つのコアの一端に光接続された発光素子と、前記発光素子が光接続されたコアの他端に光接続された受光素子とを有することを特徴とする光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−251184(P2006−251184A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65618(P2005−65618)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】