説明

三次元形状樹脂成形品に回路を形成する回路形成装置

【課題】 三次元形状樹脂成形品に導電材料を均一に塗布することができ、交差ラインの変形、傷つき、断線なしに高品質に液状の導電材料で回路を形成できる回路形成装置を提供する。
【解決手段】 三次元形状樹脂成形品に対して液状の導電材料を吐出する少なくとも1つのノズルを備える吐出部と、前記吐出部を把持し、前記三次元形状樹脂成形品表面に沿って前記吐出部を三次元に移動させる移動体と、前記ノズルに前記導電材料を供給する供給手段と、を有する回路形成装置であって、前記ノズルが前記三次元形状樹脂成形品の表面に非接触で基準距離に保持するように前記移動体の位置を三次元に調整する調整手段をさらに有することを特徴とする回路形成装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元形状樹脂成形品に回路を形成する回路形成装置に関する。さらに、本発明は、寸法誤差のある三次元形状樹脂成形品の表面に液状の導電材料を塗布して所望の回路幅及び厚みを有する回路を形成するための回路形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
比較的単純な形状をした三次元回路体を製造する場合、1つには平面基板に液状の導電材料をスクリーン印刷し、その後、室温でまたは加熱して曲げ加工を施し、液状の導電材料を加熱乾燥させている。
別の方法としては、熱可塑性樹脂フィルムにスクリーン印刷によって回路を形成し、これを真空成形で所望の形状にし、その後、射出成形によるインサートもしくはアウトサートで三次元回路体を製造する等の方法が取られている。
【0003】
ところで、近年、車載用のガラス素材も多様化しつつあり、無機ガラスだけでなく、ポリカーボネート製の樹脂ガラスを搭載しているものもある。車載用ガラスには部位によっては霜取りのための熱線や、アンテナ線等の回路が配設されている。無機ガラスに対して回路を設ける場合、平面状態の無機ガラスにスクリーン印刷によって表面に液状の導電材料を付与し、熱を加えて曲げ加工を施し、約600℃で液状の導電材料を加熱乾燥させて回路を形成している。
【0004】
これに対し射出成形で得られた樹脂ガラスの場合、当初から曲面状に形成されることから、スクリーン印刷では対応出来ない。このため、前述した回路が形成されたフィルムをインサートもしくはアウトサートで成形するか(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)、ノズルの先端が自在伸縮して成形品に接触させながら液状の導電材料を吐出させるディスペンサーで三次元形状樹脂成形品に直接回路を形成する(例えば、特許文献3)等の提案がなされている。
【0005】
【特許文献1】特開平07−241872号公報
【特許文献2】特開2000−289458号公報
【特許文献3】特開2005−81337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これまで述べた方法には以下の問題点がある。すなわち、スクリーン印刷後に曲げ加工を施す方法、又は回路形成されたフィルムをインサートもしくはアウトサート成形する方法では、回路の伸びにより形状の変化を引き起こし、断線や抵抗値変化を起しやすく、造形自由度に制約がある。
また、上記の特許文献3に開示の装置のように、接触子を有し、且つ、ノズル先端が伸縮構造になっているディスペンサーを用いたオンデマンドでの方法でも三次元曲面に液状の導電材料の付与が可能であるが、回路のラインが交差するような場合、接触子でディスペンサーと三次元局面との距離を調整していることから、始めに描いた回路のライン(線)を接触子により変形させたり傷をつけたりし、設計通りの回路形成が困難であり、断線する恐れもある。
【0007】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、三次元形状樹脂成形品に、交差ラインの変形、傷つき、断線なしに高品質に液状の導電材料で回路を形成できる回路形成装置を提供するものである。さらには、寸法バラツキ(面に対して垂直方向)を持つ三次元形状樹脂成形品に対しても安定して、交差ラインの変形、傷つき、断線なしに高品質に液状の導電材料で回路を形成できる回路形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、導電材料を三次元形状樹脂成形品表面に吐出する際に、三次元形状樹脂成形品を非接触で認識し、吐出部がある程度距離を設けた非接触式で液状の導電材料を吐出し回路を形成することにより、達成できることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)三次元形状樹脂成形品に対して液状の導電材料を吐出する少なくとも1つのノズルを備える吐出部と、
前記吐出部を把持し、前記三次元形状樹脂成形品表面に沿って前記吐出部を三次元に移動させる移動体と、
前記ノズルに前記導電材料を供給する供給手段と、を有する回路形成装置であって、
前記ノズルが前記三次元形状樹脂成形品の表面に非接触で基準距離に保持するように前記移動体の位置を三次元に調整する調整手段をさらに有することを特徴とする回路形成装置。
【0010】
(2)前記調整手段は、赤外線センサ、超音波センサ、又は前記三次元形状樹脂成形品を予め測定してデータ化したプログラムのいずれかにより、前記三次元形状樹脂成形品の形状を認識し、前記移動体の位置を調整することを特徴とする上記(1)に記載の回路形成装置。
(3)前記移動体が多軸型ロボットであることを特徴とする上記(1)又は上記(2)に記載の回路形成装置。
(4)前記吐出部がコンティニュアス方式のインクジェットガンであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の回路形成装置に関する。
(5)前記吐出部が非接触式ディスペンサーガンであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の回路形成装置に関する。
(6)前記基準距離は、0.1〜30mmの間隔で、寸法誤差で、前記吐出部ノズル先端と前記三次元形状樹脂成形品の表面との実際の距離が0.1〜30mm内で変動してもライン描画可能であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の回路形成装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の回路形成装置によれば、三次元形状樹脂成形品に非接触で導電材料を均一に塗布することができ、交差ラインの変形、傷つき、断線なしに高品質に液状の導電材料で回路を形成することが出来る。また、寸法誤差のある三次元形状樹脂成形品に回路を設けるに際し、非接触で導電材料を均一に塗布することができ、寸法バラツキ(特に、成形品表面に対して垂直方向の寸法バラツキ)を持つ曲面の樹脂成形品にも安定して交差ラインの変形、傷つき、断線なしに高品質に液状の導電材料で回路を形成することが出来る。
【0012】
コンティニュアス方式のインクジェットガンを用いた場合、ノズルから吐出した液滴を回収して、再利用することが出来るので、高価な導電材料を無駄にすることなく回路形成ができる。また、穴径の小さなノズルを使用すると微細配線にも適用可能である。
非接触式ディスペンサーガンを用いた場合、非常に簡易なメカニズムであるためメンテナンスが容易で、使用可能な材料の粘度幅を広くでき、比較的安価な導電材料を選択出来、低コストな三次元回路体を形成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の回路形成装置は、三次元形状樹脂成形品に対して、液状の導電材料を吐出する少なくとも1つのノズルを備える吐出部と、
前記吐出部を把持し、前記三次元形状樹脂成形品表面に沿って前記吐出部を三次元に移動させる移動体と、
前記ノズルに前記導電材料を供給する供給手段と、を有する回路形成装置であって、
前記ノズルが前記三次元形状樹脂成形品の表面に非接触で基準距離に保持するように前記移動体の位置を三次元に調整する調整手段をさらに有することを特徴とする。
【0014】
前記移動体の位置を三次元形状樹脂成形品の形状にあわせて三次元に調整する調整手段としては、液状の導電材料を吐出する際に、三次元形状樹脂成形品の形状を非接触で認識し、三次元形状樹脂成形品の形状に合わせた動きをする専用機、例えば赤外線センサ、超音波センサ等の三次元形状樹脂成形品の形状を認識するセンサを用いても良い。汎用性を考慮すると、予め三次元形状樹脂成形品の形状を測定しておき、そのティーチングよって動きをプログラミングできる手段(例えば、NC「numeric control」)であることも本発明においては好ましい。いずれにしても回路形成の際は、吐出部のノズルが三次元形状樹脂成形品に対して、ある程度距離を設けた非接触式で液状の導電材料を吐出するように吐出部の位置を調整することが好ましい。これにより、たとえ、交差する回路が形成される場合であっても回路の変形、傷つき、断線等を回避することができる。
上記調整手段を有する移動体としては、多軸型ロボットを用いるのが好ましい。
【0015】
本発明で用いる吐出部は、ノズル先端が三次元形状樹脂成形品の表面に接触させずに液状の導電材料を吐出し、回路形成することの出来る装置であれば良いが、特に、コンティニュアス方式のインクジェットガンや非接触式ディスペンサーが好ましい。
【0016】
コンティニュアス方式のインクジェットガンを用いた場合、ノズルから吐出した液滴を回収して、再利用することが出来るので、高価な導電材料を無駄にすることなく回路形成ができる。また、より穴径の小さなノズルを使用すると微細配線にも適用可能である。さらに液状の導電材料の加熱装置があれば常温で比較的粘度の高いものでも用いることも可能である。
【0017】
コンティニュアス方式のインクジェットガンは、供給手段により連続的に押出された液状の導電材料が微滴化され、1つ以上のノズルから三次元形状樹脂形成品の表面に直接吹き付けられて回路を形成するものである。コンティニュアス方式のインクジェット印刷技術を採用していれば、導電性回路形成に用いられるインクジェットガンを用いることができる。
【0018】
インクジェットガンのノズルから吐出される液状の導電材料の量の制御は、導電材料の供給手段であるポンプにより行われる。また、塗布量は、液滴の帯電制御により行う。具体的には、印字に用いる液滴を帯電・偏向し、印字に用いない液滴を回収することで、または、逆に印字に用いない液滴を帯電・偏向し、印字に用いる液滴を回収することで塗布量の制御を行う。
【0019】
非接触式ディスペンサーガンを用いた場合、非常に簡易なメカニズムであるためメンテナンスが容易で、使用可能な材料の粘度幅を広くでき、比較的安価な導電材料を選択出来、低コストな三次元回路体を形成することが出来る。
非接触式ディスペンサーガンは、供給手段により必要なときに所望量の液状の導電材料がポンプ等の供給手段により吐出部に供給され、吐出部のノズル内側にあるバルブシートをロッドが叩くことにより、導電材料が微滴化し、微滴化された液状の導電材料が電磁弁の開閉により1つ以上のノズルから三次元形状樹脂形成品の表面に直接吹き付けられて回路を形成するものである。ある程度距離を設けて非接触式で使用する形態とする以外は、導電性回路形成に用いられる通常のディスペンサーガンを用いることができる。
【0020】
非接触式ディスペンサーガンのノズルから吐出される液状の導電材料の量の制御は、電磁弁の開閉速度、導電材料を供給するポンプ等の供給圧(以下、「シリンジ圧」ともいう)、ノズル径、ロッドのストローク距離等により行われる。
【0021】
本発明において用いられる液状の導電材料は、樹脂上に回路を形成するために用いられる通常の液状の導電材料を用いることができる。例えば、銅、銀、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO等の導電材料を、溶媒やバインダー樹脂としての絶縁性樹脂に分散させ調製した導電性ペーストを用いることができる。
【0022】
導電性ペーストに用いられる溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の極性溶剤;トルエン、テトラデカン等の炭化水素系溶剤等から選ばれる1種、または2種以上の組み合わせが挙げられる。
導電性ペーストのバインダー樹脂としての絶縁性樹脂としては、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、キシレン樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂等から選ばれる1種、または2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0023】
なお、コンティニュアス方式のインクジェットガンにおいては、常温で粘度20Pa・s以下の導電性ペーストが好ましく、加熱装置を用い粘度20Pa・s以下とすればより高い粘度の導電性ペーストを使用することも可能である。非接触ディスペンサーガンにおいては、粘度80Pa・s以下と広範囲の粘度範囲とすることができる。
【0024】
これらの装置は三次元形状樹脂成形品の表面から一定の距離を離した状態で、つまり、前記ノズルが三次元形状樹脂成形品の表面に非接触で基準距離に保持するように前記調整手段で調整されている。本発明において、基準距離とは、0.1〜30mmの範囲が好ましい。三次元形状樹脂成形品に寸法誤差(成形品表面に対して垂直方向の誤差)があった場合でも、ノズル先端と三次元形状樹脂成形品との距離がこの範囲内であれば、ある程度変動しても安定して回路を形成することができる。
【0025】
寸法誤差のある三次元形状樹脂成形品にも回路形成が可能であると、大量生産された同形状同寸法の製品に、例え製品ごとに、表面に対する垂直方向に若干の寸法誤差があった場合でも、その都度形状の測定をする必要がない。調整手段が予め三次元形状樹脂成形品の形状を測定しておき、そのティーチングよって動きをプログラミングできる手段(例えば、NC「numeric control」)である場合は、特に好ましい。また、回路を交差させる等、回路を形成した部分に新たな回路を形成するでも、既に形成した回路の厚み分の寸法変更に対して再度測定することなく、回路形成に用いることができる。
より好ましい基準距離は、コンティニュアス方式のインクジェットガンにおいては10mm程度で、非接触式ディスペンサーガンにおいては0.1〜4mmである。
【0026】
基準距離が0.1mm未満であると、ノズルと三次元形状樹脂成形品が接触する可能性があり好ましくない。また、基準距離が30mmを超えると、液滴の着弾精度が劣化する傾向があることから好ましくない。
本発明の回路形成装置における供給手段は、液状の導電材料をノズルに供給できるものであれば特に制限はないが、ポンプ等を用いることができ、それによりタンク等により貯蔵された液状の導電材料がノズルに供給される。
【0027】
次に、本発明の回路形成装置について、具体例をあげて説明する。
本発明の回路形成装置の概略構成図を図1、図2に示す。
【0028】
図1は、吐出部にインクジェットガンを用いた構成を示す。図1において、三次元形状樹脂成形品6を受け台8に乗せ、移動体としての六軸型ロボット3aに、吐出部としてのコンティニュアス方式のインクジェットガン2aを把持させる。インクジェットガン2aのノズル20から吐出させる液状の導電性材料は、タンク9に貯蔵され、供給手段であるポンプ4により、インクジェットガン2aのノズルに供給される。インクジェットガン2aは、あらかじめティーチングされた手順により三次元形状樹脂成形品6の表面を走査する調整手段(不示図)により六軸型ロボット3aの位置が調整されることで、基準距離を保つことができる。
【0029】
インクジェットガン2aのノズル20の先端と三次元形状樹脂成形品6との基準距離は0.1〜30mmに設定する。すなわち、ノズル先端と三次元形状樹脂成形品6の表面との距離を上記範囲としつつ、三次元形状樹脂成形品6表面に対して常に垂直になるように六軸型ロボット3aを動かしてノズル20から液状の導電性材料の液滴5を吐出させ、三次元形状樹脂成形品6の表面に塗布して回路7を形成する。
【0030】
基準距離(吐出距離)が0.1〜30mmの範囲であると安定して回路を形成することができる。成形品の表面垂直方向に寸法誤差があっても、ノズル先端と三次元形状樹脂成形品との距離がその範囲内であれば許容することができる。
【0031】
回路形成後、表面に回路7が形成された三次元形状樹脂成形品6を受け台8から取り外して、乾燥炉中で、60〜130℃で10〜60分乾燥させ、液状の導電材料を硬化させる。
【0032】
図2は吐出部に非接触式ディスペンサーガンを用いた構成を示す。図2において、三次元形状樹脂成形品6を受け台8に乗せ、移動体としての六軸型ロボット3bに、吐出部としての非接触ディスペンサーガン2bを把持させる。非接触ディスペンサーガン2bのノズル20から吐出させる液状の導電性材料は、タンク9に貯蔵され、供給手段であるポンプ4により、非接触ディスペンサーガン2bのノズルに供給される。非接触ディスペンサーガン2bは、あらかじめティーチングされた手順により三次元形状樹脂成形品6の表面を走査する調整手段(不示図)により六軸型ロボット3bの位置が調整されることで、基準距離を保つことができる。
【0033】
非接触ディスペンサーガン2bのノズル20の先端と三次元形状樹脂成形品6との基準距離は0.1〜30mmに設定する。すなわち、ノズル先端と三次元形状樹脂成形品6の表面との距離を上記範囲としつつ、三次元形状樹脂成形品6表面に対して常に垂直になるように六軸型ロボット3bを動かしてノズル20から液状の導電性材料の液滴5を吐出させ、三次元形状樹脂成形品6の表面に塗布して回路7を形成する。
【0034】
基準距離(吐出距離)が0.1〜30mmの範囲であると安定して回路を形成することができる。成形品の表面垂直方向に寸法誤差があっても、ノズル先端と三次元形状樹脂成形品との距離がその範囲内であれば許容することができる。
非接触ディスペンサーガン2bの仕様として、液状の導電材料を吐出するノズル20の穴径は60〜1450μmのものが使用できる。液状の導電材料をタンク9からノズル20に供給するポンプ4の圧力(シリンジ圧)は、液状の導電材料の粘度及びノズルの穴径により異なるが、0.005〜0.7kPa、電磁弁の開閉を制御する電磁弁圧は0.5MPa以上とし、電磁弁開閉サイクルを4〜19.8ms/回とし、液状の導電材料を加圧してノズルより吐出させるためにバルブシートを叩くロッドのストローク(動作距離)幅を0.5〜4mmとし、塗布動作速度を10〜200mm/sとする。ノズル20からは液状の導電材料5の液滴が1秒間に50〜270個形成されるようにすればよい。
【0035】
回路形成後、表面に回路7が形成された三次元形状樹脂成形品6を受け台8から取り外して、乾燥炉中で、80〜130℃で30〜60分乾燥させ、液状の導電材料を硬化させる。
非接触式ディスペンサーは、六軸型ロボットの塗布動作速度、シリンジ圧、ノズルの穴径、ロッドのストローク、吐出時間、吐出する液状の導電材料温度、及び液状導電材料の粘度により、形成する回路のライン幅が変化するため、適宜調整して回路形成を行う。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を用いて本発明の回路形成装置を具体的に説明する。
【0037】
(実施例1)
図1に示すような、吐出部にインクジェットガンを備えた構成の回路形成装置を用いた。三次元形状樹脂成形品6を受け台8に乗せ、移動体としての六軸型ロボット3aに、吐出部としてのコンティニュアス方式のインクジェットガン2aを把持させた。インクジェットガン2aから吐出させる液状の導電材料として、銀粒子をγ−ブチロラクトンの溶媒中に分散させ、粘度が常温(15〜28℃)で3mPa・s程度に調整した低温硬化型の銀ペーストを用いた。
【0038】
所定のタンク9に入れられた銀ペーストはタンク9から、供給手段であるポンプ4でインクジェットガン2aのノズル20へ送られる。インクジェットガン2aはあらかじめティーチングされた手順により三次元形状樹脂成形品6の表面を走査する調整手段(不示図)により六軸型ロボット3aの位置が調整されることで、基準距離を保つことができた。
インクジェットガン2aとノズル20との基準距離は3mmに設定した。すなわち、吐出部ノズル20の先端と三次元形状樹脂成形品6の表面との距離を3mmとし、三次元形状樹脂成形品6表面に対して常に垂直になるように、六軸型ロボット3aを動かしてノズル20から液状の導電材料の液滴5を吐出させて、三次元形状樹脂成形品6の表面に塗布して回路7を形成した。この基準距離(吐出距離)は3mm±1mmの範囲では安定して回路を形成することができた。すなわち成形品の寸法誤差はその範囲内であれば許容することができた。
【0039】
回路形成後、表面に回路7が形成された三次元形状樹脂成形品6を受け台8から取り外して、乾燥炉中で、100℃で30分乾燥させ、銀ペーストを硬化させた。
本実施例で用いたインクジェットガンの仕様について詳述する。銀ペーストを吐出するノズルの穴径は65μmで、銀ペーストをノズルに供給する圧力は約0.25MPa、ノズルの圧電アクチュエータに与える励振周波数は70KHzとした。ノズルからは銀ペーストの液滴が1秒間に70000個形成され、速度20m/s、液滴径130μmで飛行するようにした。銀ペーストの液滴は、ノズルから約50mmの距離を飛行することができ、非接触で回路を形成できるため、交差ラインの変形、傷つき、断線なしに高品質に回路を形成することが出来る。インクジェットヘッドガン(吐出部ノズル)から飛び出し、インクジェットヘッドガンから3mm離れた三次元形状樹脂成形品上に直径約350μmのドットを形成することができる。
【0040】
コンティニュアス方式のインクジェットガンは、ノズルから吐出した液滴を回収して、再利用することが出来る。このため、高価な導電材料を無駄にすることなく回路形成ができる。また、本実施例では、穴径65μmのノズルを使用したが、より穴径の小さなノズルの使用が可能であるため、さらなる微細配線にも適用可能である。
【0041】
(実施例2)
図2に示すような、吐出部に非接触式ディスペンサーガンを備えた構成の回路形成装置を用いた。三次元形状樹脂成形品6を受け台8に乗せ、移動体としての六軸型ロボット3bに、吐出部としての非接触式ディスペンサーガン2bを把持させた。非接触式ディスペンサーガン2bのノズル20から吐出させる液状の導電材料として、銀粒子が含有された低温乾燥型の銀ペースト(藤倉化成株式会社製、製品名:ドータイト、平均粒径:8〜10μm、15〜28℃での粘度:60〜80dPa)を用いた。
【0042】
所定のタンク9に入れられた銀ペーストはタンク9から供給手段であるポンプ4で非接触式ディスペンサーガン2bのノズル20へ送られる。非接触式ディスペンサーガン2bはあらかじめティーチングされた手順により三次元形状樹脂成形品6の表面を走査する調整手段(不示図)により六軸型ロボット3bの位置が調整されることで、基準距離を保つことができた。
ノズル20の先端と成形品との基準距離は3mmで設定し、三次元形状樹脂成形品6の表面に対して常に垂直になるように六軸型ロボット3bを動かしてノズル20から液状の導電性材料の液滴5を吐出させて、三次元形状樹脂成形品6の表面に塗布して回路7を形成した。この吐出距離は3mm±1mmの範囲では安定して回路を形成することができた。すなわち成形品の寸法誤差はその範囲内であれば許容することができた。
【0043】
回路形成後、表面に回路7が形成された三次元形状樹脂成形品6を受け台8から取り外して、乾燥炉に125℃で1時間乾燥させ、銀ペーストを硬化させた。
【0044】
非接触式ディスペンサーは、六軸型ロボットの塗布動作速度、シリンジ圧、ノズル径、ストローク、吐出時間、吐出する液状導電材料の温度、及び液状導電材料の粘度により、形成する回路のライン幅が変化する。
本実施例においては、非接触式ディスペンサーのノズルの穴径を0.1mmで、銀ペーストを供給するための圧力(シリンジ圧)は約0.15MPa、銀ペーストの吐出を制御する電磁弁圧0.5MPa、電磁弁開閉サイクルを6ms/回、銀ペーストを加圧してノズルより吐出させるロッドのストローク(動作距離)幅を1mm、六軸型ロボットの塗布動作速度を50mm/s、銀インクの粘度を5Pa・sとした。ここで、ノズル先端から1〜10mm離れた樹脂基板上に吐出させると、0.5〜2.5mmのラインを形成することができた。
【0045】
非接触式ディスペンサーは、非常に簡易なメカニズムであるためメンテナンスが容易であり、使用可能な材料の粘度幅が広いことから、比較的安価な導電材料を選択出来るため、低コストで三次元回路体を形成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の回路形成装置の一つの実施の形態を示す概略図であり、吐出部にコンティニュアス方式のインクジェットガンを用いた回路形成装置を示す。
【図2】本発明の回路形成装置の一つの実施の形態を示す概略図であり、吐出部に非接触式ディスペンサーガンを用いた回路形成装置を示す。
【符号の説明】
【0047】
1 回路形成装置
2a インクジェットガン
2b 非接触式ディスペンサーガン
3a、3b 六軸型ロボット
5 導電材料の液滴
6 三次元形状樹脂成形品
7 回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元形状樹脂成形品に対して液状の導電材料を吐出する少なくとも1つのノズルを備える吐出部と、
前記吐出部を把持し、前記三次元形状樹脂成形品表面に沿って前記吐出部を三次元に移動させる移動体と、
前記ノズルに前記導電材料を供給する供給手段と、を有する回路形成装置であって、
前記ノズルが前記三次元形状樹脂成形品の表面に非接触で基準距離に保持するように前記移動体の位置を三次元に調整する調整手段をさらに有することを特徴とする回路形成装置。
【請求項2】
前記調整手段は、赤外線センサ、超音波センサ、又は前記三次元形状樹脂成形品を予め測定してデータ化したプログラムのいずれかにより、前記三次元形状樹脂成形品の形状を認識し、前記移動体の位置を調整することを特徴とする請求項1に記載の回路形成装置。
【請求項3】
前記移動体が多軸型ロボットであることを特徴とする請求項1又は2に記載の回路形成装置。
【請求項4】
前記吐出部がコンティニュアス方式のインクジェットガンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路形成装置。
【請求項5】
前記吐出部が非接触式ディスペンサーガンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路形成装置。
【請求項6】
前記基準距離は、0.1〜30mmの間隔であり、寸法誤差で、前記吐出部ノズル先端と前記三次元形状樹脂成形品の表面との実際の距離が0.1〜30mm内で変動してもライン描画可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の回路形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−113033(P2009−113033A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264857(P2008−264857)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】