説明

上方障害物検知装置、衝突防止装置および上方障害物検知方法

【課題】道路の状態や車両の姿勢の変化にかかわらず、路面の上方に存在する物標から路面までの距離を求めることができる上方障害物検知装置、衝突防止装置および上方障害物検知方法を提供する。
【解決手段】頭上物標検知手段11,12,13によりレーザ光が出射されてから戻るまでの第1の時間と、当該レーザ光が頭上物標検知手段11から出射された際の出射角である仰角を検知し、頭上物標算出手段15は、第1の時間および仰角に基づいて頭上物標距離および頭上物標高さを算出する。その一方で、路面検知手段11,12,14によりレーザ光が路面で反射して路面検知手段に戻るまでの第2の時間と、当該レーザ光が出射された際の出射角である俯角を検知し、路面高さ算出手段15は、第2の時間および俯角に基づいて路面高さを算出する。道路高さ幅算出手段15は、頭上物標高さ、および、路面高さを足し合わせて道路高さ幅を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を用いて車両前方をスキャンした結果に基づいて衝突の可能性がある上方障害物を検知する上方障害物検知装置、衝突防止装置および上方障害物検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の前方に障害物などの物標が存在する場合、車両が物標に衝突することなく通り抜けできるかどうかを事前に知りたいという要望があった。通り抜けの可否を事前に知るためには、車両が物標の近傍を通過する際に、車両の左右方向および上下方向に、物標との間に適当な空間があるか否かの判断を行う必要がある。具体的には、電波レーダなどの手段を用いて車両から物標までの方位や距離を測定し、これらの測定値に基づいて、通り抜け可否の判断を行うことが考えられていた。
【0003】
しかしながら、電波レーダを用いる方法では、物標に向けて照射されるビームの広がり角が広いため、上述の通り抜け可否の判断を行うのに十分な精度で障害物の方位や距離を測定できないという問題があった。
【0004】
この問題を解決することを目的として、電波レーダよりも精度の高い測定が可能なレーザレーダを用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。具体的には、レーザ光を発射点から路面上方(車両の前方上方)に照射して、2次元に走査することにより、路面上方に存在する物標の下端までの距離や、角度(方位)を測定し、その測定結果から、物標の下端の高さと、車両の頂部高さとを比較し、通り抜け可否の判断を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55−096475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1の技術では、実際には車両が物標の下を通り抜けできるのに、通り抜けができないという誤った判断がなされ、その判断に従って、誤警報が出されたり、その逆に、車両が物標の下を通り抜けできないのに、通り抜けができるという誤った判断がなされ、その判断に従って、警報が出されなかったりする可能性があるという問題があった。
【0007】
つまり、特許文献1の技術では、実質的には、車両が存在する位置の路面高さを基準にして、物標の高さを求めているため、物標が存在する位置の路面高さが、レーザ光の発射点における路面高さと異なっていると、路面から物標の下端までの距離が実際の値とは異なったものとなってしまい、誤判断がなされてしまうのである。
【0008】
具体的には、図13に示すように、鉄道や高速道路などの頭上物標51の下を通過する際に、頭上物標51と重なる部分の路面高さが、その他の路面高さよりも低い道路では、頭上物標51から離れた(路面が比較的高い)位置から、頭上物標51における道路がくぐる部分の桁等までの距離RUや、仰角θUを測定することとなる。そのため、車両水平中心軸線CLから頭上物標51までの高さHUを求めることはできても、路面53から頭上物標51までの高さHTを求めることができなかった。
【0009】
その他にも、車両のピッチング(左右水平方向を軸とした回転運動)によっても、レーザ光の照射される方向が変化するため、前方上方の物標の距離や角度の測定値に基づいて、物標の下端から路面までの距離を求めることができなかった。車両の姿勢変化の他に、路面勾配が変化している場合にも、前方上方の物標における下端までの距離や角度が分かっても、物標の下端から路面までの距離を求めることができなかった。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、道路の状態や車両の姿勢の変化にかかわらず、路面の上方に存在する物標から路面までの距離を求めることができる上方障害物検知装置、衝突防止装置および上方障害物検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するためになされた本発明の第1の態様である上方障害物検知装置では、頭上物標検知手段が、車両の前方上方に向かってレーザ光を出射して車両幅方向にスキャンし、頭上物標に照射されたレーザ光は反射して頭上物標検知手段に戻る。頭上物標検知手段では、当該レーザ光が出射されてから戻るまでの第1の時間と、当該レーザ光が頭上物標検知手段から出射された際の出射角である仰角を検知(計測)する。
【0012】
頭上物標検知手段により検知された第1の時間および仰角は、頭上物標算出手段において、頭上物標距離および頭上物標高さの算出に用いられる。
その一方で、路面検知手段では、路面に向かってレーザ光を出射して車両幅方向にスキャンを行い、当該レーザ光が路面で反射して路面検知手段に戻るまでの第2の時間を検知するとともに、当該レーザ光が出射された際の出射角である俯角を検知する。路面検知手段により検知された第2の時間および俯角は、路面高さ算出部において、路面高さの算出に用いられる。
【0013】
頭上物標高さ、および、路面高さが算出されると、道路高さ幅算出手段において頭上物標高さと、路面高さとが足し合わされて道路高さ幅が算出される。ここで、路面に対する頭上物標検知手段の配置高さと、路面検知手段の配置高さが同じ場合には、頭上物標高さおよび路面高さが直接足し合わされた値が道路高さ幅として用いられる。その一方で、頭上物標検知手段の配置高さと、路面検知手段の配置高さが異なる場合には、頭上物標高さおよび路面高さを足し合わせた値に対して、両者の配置高さの差の値を補正したものが道路高さ幅として用いられる。
【0014】
このようにして路面から頭上物標までの距離である道路高さ幅を算出することにより、路面高さが変化する場合や、路面の勾配が変化する場合や、車両の姿勢が変化する(特にピッチングする)場合であっても、道路高さ幅を正確に知ることができる。
【0015】
上述の構成において、レーザ光に係る俯角を連続的に変更することにより、路面高さを連続して取得し、その中から、頭上物標下方の路面に係る路面高さを用いて道路高さ幅を算出してもよい。
【0016】
この場合、頭上物標の下方の路面における路面高さを直接算出できるため、正確な路面高さ幅を得ることができる。例えば、車両が存在する路面高さと、頭上物標下方の路面高さが異なる場合であっても、頭上物標下方の路面高さを直接算出でき、正確な道路高さ幅を求めることができる。
【0017】
上述の構成において、レーザ光に係る俯角を離散的に変更することにより、路面における離散した領域に係る複数の路面高さを取得し、その中から、頭上物標下方の路面に最も近い領域に係る路面高さを用いて路面高さ幅を算出してもよい。
【0018】
この場合、連続的に変化する路面高さを取得する場合と比較して、レーザ光の出射に係る構成を簡易できるとともに、レーザ光の出射方向の制御が容易になる。
上述の構成において、レーザ光のスキャン対象を、路面検知手段を備えた車両よりも前方の路面、および、下方の路面から選択可能とし、車両の前方上方に頭上物標が存在する場合にのみ、道路高さ幅を算出してもよい。
【0019】
この場合、車両の前方上方に頭上物標が存在しない場合には、路面検知手段の下方、つまり車両下方の路面に対してレーザ光を照射できる。当該路面から反射したレーザ光を受光して得られる情報を、道路高さ幅の算出以外の目的、例えば路面状態の把握などにも利用できる。
【0020】
さらに、本発明の第1の態様に係る上方障害物検知装置は、道路高さ幅と車両の高さとを比較して、頭上物標と車両とが接触あるいは衝突するか否か、言い換えると、車両が頭上物標の下を通り抜けできるか否かを判断してもよい。
【0021】
この場合、車両の乗員は、車両が前方にある頭上物標の下を通り抜けできるか否かを予め知ることができる。
さらに、本発明の第1の態様に係る上方障害物検知装置を、路面における車両軸線方向に並ぶ複数の領域に係る路面距離および路面高さそれぞれ求め、これらの値から算出した路面の勾配を用いて頭上物標下方の路面における路面高さを算出する構成としてもよい。路面の勾配は、複数の路面距離の間の距離に係る路面の勾配であってもよいし、複数の路面距離の範囲外の距離に係る路面の勾配であってもよい。
【0022】
この場合、頭上物標下方の路面における路面高さを直接求めていなくても、路面の勾配に基づいて当該路面高さを算出することができる。つまり、車両が存在する路面高さと頭上物標下方の路面高さが異なる等の理由で、頭上物標距離と路面距離とが異なる場合であっても、レーザ光に係る俯角を変更することなく、頭上物標下方の路面における路面高さを算出でき、正確な道路高さ幅を求めることができる。
【0023】
さらに上述の構成において、路面の勾配、道路高さ幅、および、車両の高さに基づいて、頭上物標と車両とが接触あるいは衝突するか否か、言い換えると、車両が頭上物標の下を通り抜けできるか否かを判断してもよい。
【0024】
この場合、頭上物標下方の路面における路面高さを直接求めていなくても、路面の勾配に基づくことにより、頭上物標と車両とが衝突等するか否か正確に判断することができる。
【0025】
さらに判断手段を備える構成において、頭上物標と車両とが接触すると判断された場合に、頭上物標および車速に基づいて、車両が頭上物標と接触するまでの時間を算出してもよい。
【0026】
この場合、車両の乗員は、車両が頭上物標と接触するまでの時間を知ることができる。
さらに、本発明の第1の態様に係る上方障害物検知装置において、路面検知手段を車両前方上部に設け、路面に対するレーザ光の入射角を大きくしてもよい。車両前方上部とは例えば、車室内フロントガラス近傍であり、さらにルームミラーに併設または一体型であり、もしくはダッシュボード上あるいはダッシュボード内であり、もしくはルーフ部である。
【0027】
この場合、従来の車両のバンパー部などに路面検知手段を設けた場合と比較して、レーザ光を大きな入射角で路面に照射できる。そのため、路面で反射され路面検知手段に戻るレーザ光の強度が強くなり、路面高さを求めやすくなる。
【0028】
上記目的を達成するためになされた本発明の第2の態様である衝突防止装置では、頭上物標と車両とが接触する、または、衝突すると判断された場合に、車両の乗員に対して警報を発する。
【0029】
この場合、車両の乗員に対して注意を喚起することができる。
上記目的を達成するためになされた本発明の第3の態様である上方障害物検出方法では、まず、車両水平中心軸線に沿った頭上物標までの距離(頭上物標距離)、および、検知手段から頭上物標までの高さ(頭上物標高さ)が取得され、次いで、路面から検知手段までの高さ(路面高さ)が取得される。
【0030】
そして、頭上物標高さおよび路面高さを合計する等により路面高さが取得され、最後に、路面高さと検知手段が設けられた車両の高さとが比較され、頭上物標と車両とが接触するか否かが判断される。
【0031】
このようにして路面から頭上物標までの高さである道路高さ幅を算出することにより、路面高さが変化する場合や、路面の勾配が変化する場合や、車両の姿勢が変化する(特にピッチングする)場合であっても、道路高さ幅を正確に知ることができる。
【0032】
本発明の第3の態様に係る上方障害物検知方法において、頭上物標が発見された場合にのみ、当該頭上物標の下を車両が通り抜けられるか否かを判断してもよい。
この場合、頭上物標が発見されない場合には、検知手段を他の目的に使用でき、レーザ光のスキャンによって得られた情報を他の目的に使用することができる。
【0033】
本発明の第3の態様に係る上方障害物検知方法において、検知手段によって路面高さが取得できる複数の距離範囲のうちの一つの範囲内に頭上物標が存在する場合には、当該一つの範囲に対応する路面の路面高さ、言い換えると、頭上物標の下方の路面における路面高さを求めてもよい。
【0034】
この場合、頭上物標の下方の路面における路面高さを直接算出することができるため、正確な路面高さ幅を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る衝突防止装置の構成を説明するブロック図である。
【図2】図1の衝突防止装置における衝突可能性の判断方法を説明するフローチャートである。
【図3】図1のセンサ部によるレーザ光のスキャンを説明する模式図である。
【図4】路面から頭上物標までの高さの算出を説明する模式図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の変形例に係る衝突防止装置における衝突可能性の判断方法を説明するフローチャートである。
【図6】路面の勾配の算出について説明する模式図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る衝突防止装置の構成を説明するブロック図である。
【図8】図1の衝突防止装置1における衝突可能性の判断方法を説明する模式図である。
【図9】レーザ光LLにおける俯角θLの切り替えを説明する模式図である。
【図10】レーザ光LLにおける俯角θLの変更を説明する模式図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る衝突防止装置における制御を説明するフローチャートである。
【図12】衝突防止装置における他の制御を説明するフローチャートである。
【図13】従来のレーザ光のスキャンを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
〔第1の実施形態〕
この発明の第1の実施形態に係る上方障害物検知装置を備えた衝突防止装置について、図1から図4を参照して説明する。
【0037】
図1は、本実施形態に係る衝突防止装置1の構成を説明するブロック図であり、図2は、図1の衝突防止装置1における衝突可能性の判断方法を説明するフローチャートである。図3は、図1のセンサ部10によるレーザ光のスキャンを説明する模式図であり、図4は、路面53から頭上物標51までの高さの算出を説明する模式図である。
<全体構成>
本実施形態に係る衝突防止装置1は、車両前方の上方に存在する物体である頭上物標51を認識し、車両52が頭上物標51の下を通り抜けられるか否かを判断する装置である。
【0038】
衝突防止装置1は、図1に示すように、頭上物標51の存在を認識するとともに、道路の路面53から頭上物標51までの高さである道路高さ幅HTを求める装置(上方障害物検出装置)であるセンサ部10と、頭上物標51と車両52とが衝突するか否かを判定する衝突判定処理部(判断手段)20と、車両の速度を制御する車速制御装置30と、警報を発する等して衝突する可能性を軽減させる衝突軽減制御装置(警報手段)40と、を主に備えている。
<センサ>
センサ部10は、図1に示すように、レーザ光を出射する発光部(頭上物標検知手段、路面検知手段、検知手段)11と、反射したレーザ光を検出する受光部(頭上物標検知手段、路面検知手段、検知手段)12と、頭上物標検出部(頭上物標検知手段、検知手段)13と、路面検出部(路面検知手段、検知手段)14と、道路高さ幅算出部(頭上物標算出手段、路面高さ算出手段、道路高さ幅算出手段)15と、を主に備えている。
<発光部>
発光部11は、受光部12および頭上物標検出部13とともに頭上物標検知手段を構成するものであるとともに、受光部12および路面検出部14とともに路面検知手段を構成するものでもある。
【0039】
発光部11は、ビーム幅を絞ったレーザ光を発生させると共に、そのレーザ光の出射方向を制御するものである。具体的には、レーザ光の仰角または俯角を一定にした水平方向(車両52の幅方向:図3の紙面に対する直交方向)のスキャンを、仰角、俯角を変化させて繰り返すことによって、二次元的なスキャン(走査)を実現する。本実施形態では、図3に示すように、頭上物標51の検出用に、レーザ光LUの仰角θUを4段階に変化させ、路面の検出用に、レーザ光LLの俯角θLを4段階に変化させることが可能なように構成されている。
【0040】
ここで仰角θUとは、車両水平中心軸線CLから頭上物標51をスキャンするレーザ光LUの出射方向までの上下方向(図4の上下方向)の角度のことであり、俯角θLとは、車両水平中心軸線CLから路面53をスキャンするレーザ光LLの出射方向までの上下方向の角度のことである。
【0041】
そして、発光部11は、頭上物標51検出用の一の仰角θUでレーザ光LUのスキャンを行い、次いで、路面53検出用の一の俯角θLでレーザ光LLのスキャンを行う。その後、一の仰角θUとは異なる角度の他の仰角θUで、レーザ光LUのスキャンを行い、次いで、他の俯角θLでレーザ光LLのスキャンを行う。この作業を異なる4つの仰角θUおよび俯角θLについて順次行う。
【0042】
また、この時、発光部11は、頭上物標検出部13および路面検出部14に対して、レーザ光LU,LLを出射したタイミングを出力するとともに、出射したレーザ光LU,LLの仰角θUや俯角θLの値を出力する。
【0043】
このような二次元的なスキャンを実現する発光部11の構成としては、公知の構成を用いることができ、特に限定するものではない。
なお、図3において、頭上物標51における点線で囲まれた領域は、レーザ光LUが照射された領域を示し、路面53における点線で囲まれた領域は、レーザ光LLが照射された領域を示している。
<受光部>
受光部12は、発光部11から出射され、物標(頭上物標51や道路の路面53等)から反射されたレーザ光を検出するものである。さらに受光部12は、頭上物標検出部13および路面検出部14にレーザ光を検出したタイミングを出力するものである。
<頭上物標検出部>
頭上物標検出部13は、発光部11から取得するレーザ光LUの出射タイミングと受光部12から取得するレーザ光LUの検出タイミングとに基づき、レーザ光LUが発光部11から出射され、頭上物標51に反射されて受光部12に検出されるまでの時間である第1の時間T1を測定する。
【0044】
また、頭上物標検出部13は、受光部12からレーザ光LUの検出タイミングを取得できた場合(即ち、第1の時間T1を測定できた場合)、その受光部12により検出されたレーザ光LUに係る仰角θUの値を、第1の時間T1と対応づけて検出する。
<路面検出部>
路面検出部14は、発光部11から取得するレーザ光LLの出射タイミングと受光部12から取得するレーザ光LLの検出タイミングとに基づき、レーザ光LLが発光部11から出射され、道路の路面53に反射されて受光部12に検出されるまでの時間である第2の時間T2を測定する。
【0045】
また、路面検出部14は、受光部12からレーザ光LLの検出タイミングを取得できた場合(即ち、第2の時間T2を測定できた場合)、その受光部12により検出されたレーザ光LLに係る俯角θLの値を、第2の時間T2と対応づけて検出する。
<道路高さ幅算出部>
道路高さ幅算出部15は、頭上物標高さHUを算出する頭上物標算出手段であり、路面高さHLを算出する路面高さ算出手段であり、さらに、道路高さ幅HTを算出する道路高さ幅算出手段でもある。
【0046】
つまり、道路高さ幅算出部15は、第1の時間T1および仰角θUに基づいて頭上物標距離DUおよび頭上物標高さHUを算出するとともに、第2の時間T2および俯角θLに基づいて路面距離DLおよび路面高さHLを算出し、かつ、頭上物標高さHUおよび路面高さHLに基づいて道路高さ幅HTを算出するものである。
【0047】
ここで、頭上物標距離DUとは、センサ部10から、車両水平中心軸線CLに沿って頭上物標51までの距離のことであり、路面距離DLとは、センサ部10から、車両水平中心軸線CLに沿って路面53までの距離のことである。図4においては、頭上物標距離DUと路面距離DLとが等しい場合が示されている。
【0048】
道路高さ幅算出部15は、第1の時間T1およびレーザ光の速度(光速)からセンサ部10から頭上物標51までの第1の距離RUを算出し、第2の時間T2およびレーザ光の速度からセンサ部10から路面53までの第2の距離RLを算出する。
【0049】
そして、道路高さ幅算出部15は、以下の式(1)に基づいて頭上物標距離DUを算出するとともに、式(2)に基づいて頭上物標高さHUを算出する。同様に、式(3)に基づいて路面距離DLを算出するとともに、式(4)に基づいて路面高さHLを算出する。
【0050】
U=RU・sinθU ・・・(1)
U=RU・cosθU ・・・(2)
L=RL・sinθL ・・・(3)
L=RL・cosθL ・・・(4)
ここで、第1の距離RUとは、センサ部10から頭上物標51におけるレーザ光LUが照射された部分までの距離であり、第2の距離RLとはセンサ部10から路面53におけるレーザ光LLが照射された部分までの距離である。
【0051】
その後、頭上物標距離DUと路面距離DLとが等しい場合(図4に示す場合)では、道路高さ幅算出部15は、頭上物標高さHUの値および路面高さHLの値を合算して道路高さ幅HTの値を算出する。
<衝突判定処理部>
衝突判定処理部20は、図4に示すように、道路高さ幅HTおよび車両高さhに基づいて、車両52が頭上物標51と衝突または接触するか否かを判定する判断手段である。
【0052】
衝突判定処理部20には、衝突判定処理部20を備える車両52の車両高さhが予め記憶されており、さらに、車両52が頭上物標51の下を衝突または接触することなく通り抜けるために必要な隙間幅Wが記憶されている。衝突判定処理部20は、車両高さhおよび隙間幅Wの合算値が、道路高さ幅HTの値以下または未満の場合には、車両52が頭上物標51と衝突または接触せず、通り抜けが可能であると判定する。それ以外の場合には、車両52が頭上物標51と衝突または接触するため、通り抜けができないと判定する。
<車速制御装置>
車速制御装置30は、図1に示すように、衝突判定処理部20による判定に基づいて、車両の速度である車速を制御するものである。例えば、衝突判定処理部20において車両52が頭上物標51と衝突等すると判定された場合に、車速制御装置30は、車両52のブレーキを自動的に操作する等して車両52を減速させるものである。
【0053】
なお、本実施形態のように衝突防止装置1は車速制御装置30を備えていてもよいし、備えていなくてもよく、特に限定するものではない。
<衝突軽減制御装置>
衝突軽減制御装置40は、車両52が頭上物標51と衝突等すると判定された場合に、車両の乗員に警報を発する警報手段であるとともに、車両52が頭上物標51と衝突したとしても、衝突による被害を軽減させるものである。具体的には、車両52のエアバックの動作準備を行ったり、上述の車速制御装置30が設けられていない場合に車速制御装置30の代わりにブレーキを自動的に操作する等して車両52を減速させたりするものである。
<<衝突防止判定>>
つぎに、本実施形態の衝突防止装置1における制御方法、および、上方障害物検出装置であるセンサ部10における制御方法を図2のフローチャートを参照しながら説明する。図2におけるS1からS4までは、センサ部10および衝突防止装置1に共通の制御であり、S5以降は衝突防止装置1のみの制御である。
【0054】
衝突防止装置1のセンサ部10は、予め定められた仰角θUでレーザ光LUを出射し、車両52の車幅方向にスキャンを行って、車両52の前方上方に存在する頭上物標51の検出を行う(頭上物標検出ステップS1)。頭上物標51が検出されない場合(NOの場合)には、衝突防止装置1およびセンサ部10における制御は終了される。
【0055】
その一方で、頭上物標51が検出された場合(YESの場合)には、センサ部10は頭上物標51までの距離および高さの判定を行う(頭上物標高さ取得ステップS2)。具体的には、センサ部10の頭上物標検出部13が、発光部11および受光部12から出力される各タイミングの信号、および、仰角θUの信号に基づいて、第1の時間T1、および受光部12により検出されたレーザ光LUに係る仰角θUを検出する。
【0056】
道路高さ幅算出部15は、第1の時間T1から第1の距離RUを算出し、その後、第1の距離RU、受光部12により検出されたレーザ光LUに係る仰角θU、上述の式(1)および式(2)に基づいて、頭上物標高さHUおよび頭上物標距離DUを算出する。
【0057】
その後、センサ部10は路面53までの距離および高さの算出を行う(路面高さ取得ステップS3)。具体的には、センサ部10の路面検出部14が、発光部11および受光部12から出力される各タイミングの信号、および、俯角θLの信号に基づいて、第2の時間T2、および受光部12により検出されたレーザ光LLに係る俯角θLを検出する。
【0058】
道路高さ幅算出部15は、第2の時間T2から第2の距離RLを算出し、その後、第2の距離RL、受光部12により検出されたレーザ光LLに係る俯角θL、上述の式(3)および式(4)に基づいて、路面高さHLおよび路面距離DLを算出する。
【0059】
頭上物標高さHUおよび路面高さHLが算出されると、道路高さ幅算出部15は頭上物標51の位置における上下方向の幅(高さ)の算出を行う(算出ステップS4)。具体的に、道路高さ幅算出部15は、図4に示すように、頭上物標距離DUと路面距離DLとが等しい頭上物標高さHUと路面高さHLとを合算して道路高さ幅HTを算出する。
【0060】
その一方で、頭上物標高さHUに係る車両水平中心軸線CLと、路面高さHLに係る車両水平中心軸線CLとが異なり、かつ、両者の高さが異なる場合には、頭上物標高さHUおよび路面高さHLを足し合わせた値に対して、頭上物標高さHUに係る車両水平中心軸線CL、および、路面高さHLに係る車両水平中心軸線CLの高さの差の値を補正したものが道路高さ幅HTとして用いられる。
【0061】
ここまでがセンサ部10および衝突防止装置1に共通の制御である。
センサ部10において算出された道路高さ幅HTの値は、衝突判定処理部20に入力され、車両52が頭上物標51の下を通り抜け不可能か否かの判定が行われる(判断ステップS5)。ここで通り抜けが不可能ではないと判定された場合(NOの場合)には、衝突防止装置1の制御は終了される。
【0062】
その一方で、通り抜けが不可能であると判定された場合(YESの場合)には、車両52が頭上物標51と衝突または接触する可能性があるか否かの判定が行われる(判断ステップS6)。車両52と頭上物標51とが衝突する可能性があると判定されると、例えば、車速制御装置30がブレーキ等を自動操作して車両52を減速させたり、衝突軽減制御装置40が警報を発して乗員に注意を喚起したりする。その他にも、衝突軽減制御装置40がエアバッグの動作準備に入る。このようなことにより、実際に車両52が頭上物標に衝突した場合であっても、被害の軽減が図られる。
<効果>
以上説明したように、本実施形態の衝突防止装置1では、頭上物標高さHUおよび路面高さHLに基づいて路面53から頭上物標51までの距離である道路高さ幅HTを算出するため、路面高さHLが変化する場合や、路面の勾配が変化する場合や、車両52の姿勢が変化する(特にピッチングする)場合であっても、道路高さ幅HTを正確に知ることができる。
【0063】
さらに、路面高さHLと車両高さhとを比較して、頭上物標51と車両52とが衝突等するか否かを判断されるため、車両52が頭上物標51の下を通り抜けられるか否かを正確に判断することができる。
【0064】
その一方で、頭上物標51が発見された場合にのみ、頭上物標51の下を車両52が通り抜けられるか否かを判断しているため、頭上物標51が発見されない場合には、発光部11や受光部12などを他の目的に使用できる。例えば、レーザ光を車幅方向にスキャンすることによって得られた路面53の情報を車両52の走行に関する他の目的に使用することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、図4に示すように、センサ部10を車両52の先端、例えばバンパー部に設けられた例に適用して説明しているが、センサ部10を車両52の車両前方上部52R(図3参照。)に配置することが望ましい。
【0066】
センサ部10を車両52の車両前方上部52Rに配置することで、路面53に照射されるレーザ光の入射角が大きくなる。従って、車両52のバンパー部などの車両前方上部52Rよりも低い位置にセンサ部10を設けた場合と比較して、路面53で反射され受光部12に戻るレーザ光の強度が強くなり、路面高さHLが求めやすくなる。
〔第1の実施形態の変形例〕
次に、本発明の第1の実施形態の変形例について図5および図6を参照して説明する。
【0067】
本変形例に係る上方障害物を備えた衝突防止装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、路面の勾配を算出している点が異なっている。よって、本変形例においては、図5および図6を用いて路面の勾配の算出周辺についてのみを説明し、その他の構成要素等の説明は省略する。
【0068】
図5は、本変形例に係る衝突防止装置1における衝突可能性の判断方法を説明するフローチャートである。図6は、路面の勾配の算出について説明する模式図である。
<全体構成>
本変形例に係る衝突防止装置1のセンサ部10は、第1の実施形態と同様に、発光部11と、受光部12と、頭上物標検出部13と、路面検出部14とを備えている。また、センサ部10は、路面53の勾配をさらに算出する道路高さ幅算出部15を備えている(図1参照。)。
<道路高さ幅算出部>
道路高さ幅算出部15は、第1の実施形態と同様に、頭上物標高さHUおよび路面高さHLを算出するものであるとともに、路面53の勾配(以下、「路面勾配」と表記する。)を算出するものである。道路高さ幅算出部15は、さらに、頭上物標高さHU、路面高さHLおよび路面勾配に基づいて道路高さ幅HTを算出する勾配算出手段でもある。
<<衝突防止判定>>
つぎに、本変形例の衝突防止装置1における制御方法、および、上方障害物検出装置であるセンサ部10における制御方法を図5のフローチャートを参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同一の制御内容については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
本変形例の衝突防止装置1は、図5に示すように、車両52の前方上方に存在する頭上物標51の検出を行い(S1)、頭上物標51が検出されると、頭上物標51までの距離および高さの判定を行う(S2)。
【0070】
その後、衝突防止装置1のセンサ部10では、路面53までの距離および高さの算出を行う前に、路面53の勾配の変化の算出を行うとともに(S11)、路面53の高さ等の算出を行う(S3)。
【0071】
具体的には、センサ部10の路面検出部14が、発光部11および受光部12から出力される各タイミングの信号、および、俯角θLの信号に基づいて、複数の第2の時間T2、および受光部12により検出されたレーザ光LLに係る複数の俯角θLを検出する。
【0072】
道路高さ幅算出部15は、複数の第2の時間T2からそれぞれの第2の距離RLを算出し、それぞれの第2の距離RL、受光部12により検出されたレーザ光LLに係る俯角θL、上述の式(3)および式(4)に基づいて、複数の路面高さHLおよび路面距離DLを算出する。複数の路面高さHLおよび路面距離DLを算出すると、道路高さ算出部15は、図6に示すように、これらの値に基づいて路面53の勾配、または、勾配の変化(以下、「路面勾配等」と表記する。)を算出する。
【0073】
なお、路面勾配等は、一部の俯角θLに係るレーザ光LLについて、第2の時間T2、および受光部12により検出されたレーザ光LLに係る複数の俯角θLが検知されなくても、残りの第2の時間T2等に基づいて算出される。
【0074】
頭上物標高さHU、路面高さHL、および、路面勾配等が算出されると、道路高さ幅算出部15は頭上物標51の位置における上下方向の幅の算出を行う(算出ステップS12)。具体的には、道路高さ幅算出部15は、頭上物標距離DUと路面距離DLとが等しい頭上物標高さHUおよび路面高さHLが存在する場合には、両者を合算して道路高さ幅HTを算出する。その一方で、頭上物標距離DUと路面距離DLとが等しい頭上物標高さHUおよび路面高さHLが存在しない場合には、路面高さHLおよび路面勾配等に基づいて、頭上物標距離DUと等しい路面距離DLにおける路面高さHLを算出する。そして、当該算出した路面高さHLと頭上物標高さHUとを合算して道路高さ幅HTを算出する。
【0075】
以降の制御は第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
<効果>
以上説明したように、本変形例の衝突防止装置1では、頭上物標51下方の路面53における路面高さHLを直接求めていなくても、路面勾配等に基づいて当該路面高さHLを算出することができる。つまり、車両52が存在する路面高さHLと頭上物標51下方の路面高さHLが異なる等の理由で、頭上物標距離DUと路面距離DLとが異なる場合であっても、レーザ光LLに係る俯角θLを変更することなく、頭上物標51下方の路面における路面高さHLを算出でき、正確な道路高さ幅HTを求めることができる。
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図7から図9を参照して説明する。
【0076】
本実施形態に係る上方障害物を備えた衝突防止装置の基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、レーザ光LLに係る俯角θLを切り替える構成を有する点が異なっている。よって、本変形例においては、図7から図9を用いて俯角θLを切り替える構成および制御の周辺についてのみ説明をし、その他の構成要素の説明は省略する。
【0077】
図7は、本実施形態に係る衝突防止装置101の構成を説明するブロック図である。図8は、図1の衝突防止装置1における衝突可能性の判断方法を説明する模式図である。図9は、レーザ光LLにおける俯角θLの切り替えを説明する模式図である。
<全体構成>
衝突防止装置101は、図7に示すように、上方障害物検出装置であるセンサ部110と、頭上物標51と車両52とが衝突するか否かを判定する衝突判定処理部20と、車両の速度を制御する車速制御装置30と、警報を発する等して衝突する可能性を軽減させる衝突軽減制御装置40と、を主に備えている。
<センサ>
センサ部110は、図7に示すように、レーザ光を出射する発光部11と、反射したレーザ光を検出する受光部12と、頭上物標検出部13と、路面検出部14と、道路高さ幅算出部15と、検知範囲切替部(切替手段)116と、を主に備えている。
<検知範囲切替部>
検知範囲切替部116は、図9に示すように、俯角θLを切替えることにより、レーザ光LLを照射する領域を路面53における車両52に近い近距離領域ANと、車両52から遠い遠距離領域AFとに切替える切替手段である。なお、本実施形態における発光部11は、近距離領域ANおよび遠距離領域AFのいずれか一方を選択してレーザ光LLを照射可能なものである。
【0078】
検知範囲切替部116には、道路高さ幅算出部15から算出された頭上物標距離DUが入力されるとともに、検知範囲切替部116から発光部11にレーザ光LLの照射領域を切替える制御信号が出力される。
<<衝突防止判定>>
つぎに、本実施形態に係る衝突防止装置101における制御方法、および、上方障害物検出装置であるセンサ部110における制御方法を図8のフローチャートを参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同一の制御内容については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
本実施形態の衝突防止装置101は、図8に示すように、車両52の前方上方に存在する頭上物標51の検出を行い(S1)、頭上物標51が検出されると、頭上物標51までの距離および高さの判定を行う(S2)。
【0080】
その後、路面53までの距離および高さの算出を行う前に、検知範囲切替部116は、頭上物標距離DUが、センサ部110における路面検知範囲内か否かを判断する(比較ステップS21)。例えば、レーザ光LLが近距離領域ANに照射されている場合には、近距離領域ANにおける車両水平中心軸線CLに沿った距離範囲と、頭上物標距離DUとを比較して、頭上物標距離DUが上記距離範囲よりも遠いか否かを判断する。
【0081】
頭上物標距離DUが上記距離範囲内の場合には、近距離領域ANにレーザ光LLを照射する状態で、路面53の高さ等の算出を行う(S3)。以降の制御は第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0082】
その一方で、頭上物標距離DUが上記距離範囲よりも遠い場合、例えば、遠距離領域AFにおける車両水平中心軸線CLに沿った距離範囲に含まれる場合には、検知範囲切替部116は、レーザ光LLの俯角θLを変更する制御信号を出力して、路面53の遠距離領域AFにレーザ光LLを照射させる(変更ステップS22)。そして遠距離領域AFにレーザ光を照射する状態で路面53の高さ等の算出を行う(S3)。以降の制御は第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
<効果>
以上説明したように、本実施形態の衝突防止装置101では、近距離領域ANあるいは遠距離領域AFの一方に頭上物標51が存在する場合には、当該一方の領域に対応する路面53の路面高さHL、言い換えると、頭上物標51の下方の路面53における路面高さHLを求めてもよい。この場合、頭上物標51の下方の路面における路面高さHLを直接算出できるため、正確な路面高さ幅HTを得ることができる。
【0083】
さらに、俯角θLを連続的に変更して、レーザ光LLを照射する場合と比較して、発光部11の構成が簡易になり、レーザ光LLの出射方向の制御が容易になる。
図10は、レーザ光LLにおける俯角θLの変更を説明する模式図である。
【0084】
なお、上述の実施形態では、レーザ光LLに係る俯角θLを離散的に変更して、近距離領域ANおよび遠距離領域AFの一方を選択する構成に適用して説明したが、図10に示すように、俯角θLを連続的に変更して、レーザ光LLが照射される領域を連続的に変更してもよく、特に限定するものではない。
【0085】
このようにすることで、上述の近距離領域ANおよび遠距離領域AFの一方を選択する構成と比較して、路面高さHLを算出するためにレーザ光LLを照射する領域を連続的に変更調節できる。そのため、頭上物標51の下方の路面53における路面高さHLを直接算出できる範囲が広くなる。例えば、車両52が存在する路面高さと、頭上物標51下方の路面高さHLが異なる場合であっても、頭上物標51下方の路面高さHLを直接算出でき、正確な道路高さ幅が求めやすい。
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図11および図12を参照して説明する。
【0086】
本変形例に係る上方障害物を備えた衝突防止装置の基本構成は、第1の実施形態の変形例と同様であるが、第1の実施形態の変形例とは、衝突等を防止する制御を行う際に車速も考慮する点が異なっている。よって、本実施形態においては、図11および図12を用いて衝突等を防止する制御の周辺についてのみ説明をし、その他の構成要素の説明は省略する。
【0087】
図11は、本実施形態に係る衝突防止装置1における制御を説明するフローチャートである。
<<衝突防止判定>>
本実施形態の衝突防止装置1における制御方法について図11のフローチャートを参照しながら説明する。なお、本実施形態の上方障害物検出装置であるセンサ部10における制御方法は、第1の実施形態の変形例と同様であるため、その説明を省略する。
【0088】
S12において算出された道路高さ幅HTの値は、衝突判定処理部20に入力され、車両52が頭上物標51の下を通り抜け不可能か否かの判定が行われる(S5)。ここで、衝突判定処理部20は、車両52の走行速度である車速の取得を行う(S31)。車速を取得する車速取得手段としては、車速センサなどの種々の手段を用いることができ特に限定するものではない。車速取得手段から出力された車速信号は、頭上物標51と車両52とが衝突等するまでの時間を算出する時間算出手段でもある衝突判定処理部20に入力される。
【0089】
衝突判定処理部20は、上述の車速信号および頭上物標距離DUに基づいて頭上物標51と車両52とが衝突等するまでの時間を算出するとともに、車両52が頭上物標51と衝突または接触する可能性があるか否かの判定が行われる(判断ステップS32)。
【0090】
車両52と頭上物標51とが衝突する可能性があると判定されると、衝突軽減制御装置40が衝突等するまでの時間を車両52の乗員に知らせるなどの警報を発して乗員に注意を喚起したり、車速制御装置30が車速や衝突等までの時間に応じてブレーキ等を自動操作し、車両52を減速させたりする。
<効果>
以上説明したように、本実施形態の衝突防止装置1では、車両が頭上物標と衝突等するまでの時間を算出し、算出した時間に基づいて警報を発するため、車両の乗員は、車両が頭上物標と衝突等までの時間を知ることができる。さらに、車速や衝突等までの時間に応じて車両52を減速させて、衝突等の回避または衝突等の被害の軽減を図ることができる。
【0091】
図12は、衝突防止装置における他の制御を説明するフローチャートである。
なお、上述の実施形態のように、第1の実施形態の変形例において車速を考慮して衝突等を防止する制御を行ってもよいし、図12に示すように、第2の実施形態において車速を考慮した衝突等を防止する制御を行ってもよく、特に限定するものではない。
【0092】
図12における制御内容は、第2の実施形態および第3の実施形態における制御と同様であるため、図12を示してその説明を省略する。
【符号の説明】
【0093】
1,101…衝突防止装置 51…頭上物標 52…車両 10,110…センサ部 20…衝突判定処理部(判断手段) 40…衝突軽減制御装置(警報手段) HT…道路高さ幅 11…発光部(頭上物標検知手段、路面検知手段、検知手段) 12…受光部(頭上物標検知手段、路面検知手段、検知手段) 13…頭上物標検出部(頭上物標検知手段、検知手段) 14…路面検出部(路面検知手段、検知手段) 15…道路高さ幅算出部(頭上物標算出手段、路面高さ算出手段、道路高さ幅算出手段) θU…仰角 θL…俯角 T1…第1の時間 T2…第2の時間 DU…頭上物標距離 HU…頭上物標高さ DL…路面距離 HL…路面高さ HT…道路高さ幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭上物標に対してレーザ光を車両幅方向にスキャンし、前記レーザ光が出射されて前記頭上物標により反射されて戻るまでの第1の時間、および、車両水平中心軸線から前記レーザ光の出射方向までの角度である仰角を検知する頭上物標検知手段と、
前記第1の時間および前記仰角に基づき、前記頭上物標検知手段から前記車両水平中心軸線に沿った前記頭上物標までの距離である頭上物標距離、および、前記頭上物標測定手段から前記頭上物標までの高さである頭上物標高さを算出する頭上物標算出手段と、
路面に対して前記レーザ光を前記車両幅方向にスキャンし、前記レーザ光が出射されて前記路面により反射されて戻るまでの第2の時間、および、前記車両水平中心軸線から前記レーザ光の出射方向までの角度である俯角を検知する路面検知手段と、
前記第2の時間および前記俯角に基づき、前記路面検知手段から前記車両水平中心軸線に沿った前記路面までの距離である路面距離、および、前記路面から前記路面検知手段までの高さである路面高さを算出する路面高さ算出手段と、
前記頭上物標高さ、および、前記路面高さに基づいて、前記路面から前記頭上物標までの高さである道路高さ幅を算出する道路高さ幅算出手段と、
を備えることを特徴とする上方障害物検知装置。
【請求項2】
前記路面検知手段は、前記俯角を連続的に変更して前記レーザ光を前記車両幅方向にスキャンし、
前記路面高さ算出手段は、連続して変化する前記俯角ごとに前記路面距離および前記路面高さを算出し、
前記道路高さ幅算出手段は、複数の前記路面距離のうち、前記頭上物標距離と等しい前記路面距離に対応する前記路面高さを用いて前記道路高さ幅を算出することを特徴とする請求項1記載の上方障害物検知装置。
【請求項3】
前記路面検知手段は、前記俯角を離散的に変更して前記レーザ光を前記車両幅方向にスキャンし、
前記路面高さ算出手段は、異なる前記俯角ごとに前記路面距離および前記路面高さを算出し、
前記道路高さ幅算出手段は、複数の前記路面距離のうち、前記頭上物標距離に最も近い前記路面距離に対応する前記路面高さを用いて前記道路高さ幅を算出することを特徴とする請求項1記載の上方障害物検知装置。
【請求項4】
前記路面検知手段は、前記路面検知手段より前方の前記路面、および、前記路面検知手段の下方の前記路面に対して前記レーザ光の前記車両幅方向へのスキャンが可能であり、
前記頭上物標から反射された前記レーザ光が前記頭上物標検知手段により検知された場合に、前記路面検知手段より前方の前記路面に対して前記レーザ光を前記車両幅方向にスキャンさせる切替手段を、さらに備え、
前記道路高さ幅算出手段は、前記路面検知手段より前方の前記路面に係る路面高さを用いて前記道路高さ幅を算出することを特徴とする請求項1記載の上方障害物検知装置。
【請求項5】
前記道路高さ幅、および、予め記憶された車両の高さを比較し、前記頭上物標と前記車両とが接触するか否かを判断する判断手段を、さらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の上方障害物検知装置。
【請求項6】
前記路面検知手段は、前記俯角を変更して前記レーザ光を前記車両幅方向にスキャンし、
前記路面高さ算出手段は、異なる前記俯角に対応する複数の前記路面距離、および複数の前記路面高さを算出し、
複数の前記路面距離、および複数の前記路面高さに基づいて、前記路面の勾配を算出する勾配算出手段を、さらに備え、
前記道路高さ幅算出手段は、前記路面の勾配を用いて前記頭上物標距離における前記路面高さを算出し、算出された前記路面高さを用いて前記道路高さ幅を算出することを特徴とする請求項1記載の上方障害物検知装置。
【請求項7】
前記路面の勾配、前記道路高さ幅、および、予め記憶された車両の高さを比較し、前記頭上物標と前記車両とが接触するか否かを判断する判断手段を、さらに備えることを特徴とする請求項6記載の上方障害物検知装置。
【請求項8】
前記車両の走行速度である車速を取得する車速取得手段と、
前記車速および前記頭上物標距離に基づき、前記頭上物標と前記車両とが接触するまでの時間を算出する時間算出手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項5または7に記載の上方障害物検知装置。
【請求項9】
前記路面検知手段は、0度から90度の範囲で俯角を取ることのできる位置に備えられることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の上方障害物検知装置。
【請求項10】
請求項5,7,8のいずれかに記載の上方障害物検知装置と、
前記判断手段によって前記頭上物標と前記車両とが接触すると判断された場合に、警報を発する警報手段と、
を備えることを特徴とする衝突防止装置。
【請求項11】
レーザ光をスキャンすることにより頭上物標および路面を検知する検知手段から、車両水平中心軸線に沿った前記頭上物標までの距離である頭上物標距離、および、前記検知手段から前記頭上物標までの高さである頭上物標高さを取得する頭上物標高さ取得ステップと、
前記路面から前記検知手段までの高さである路面高さを取得する路面高さ取得ステップと、
前記頭上物標高さ、および、前記路面高さに基づいて、前記路面から前記頭上物標までの高さである道路高さ幅を算出する算出ステップと、
前記路面高さ、および、予め記憶された車両の高さを比較し、前記頭上物標と前記車両とが接触するか否かを判断する判断ステップと、
を有することを特徴とする上方障害物検出方法。
【請求項12】
前記頭上物標距離、および、前記頭上物標高さを取得する前に、
前記検知手段の前方上方に向けてレーザ光をスキャンし、前記頭上物標の有無を検出する頭上物標検出ステップをさらに有し、
該頭上物標検出ステップにおいて前記頭上物標が検出された場合には、前記物標高さ取得ステップ以降のステップを行うことを特徴とする請求項11記載の上方障害物検出方法。
【請求項13】
前記頭上物標距離の取得後、かつ、前記路面高さの取得前に、
前記頭上物標距離、および、前記検知手段における前記路面高さを取得できる複数の距離範囲を比較する比較ステップと、
前記頭上物標距離が複数の前記距離範囲のうちの一つの範囲内の場合には、前記レーザ光のスキャン領域を前記一つの範囲に対応する前記路面に変更する変更ステップと、
をさらに有することを特徴とする請求項11または請求項12に記載の上方障害物検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−232230(P2011−232230A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103823(P2010−103823)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】