説明

下部車体構造

【課題】ハーネスを燃料タンクから保護する。
【解決手段】下部車体構造は、フロアパネル1の下方に設けられた燃料タンク3と、燃料タンク3と隣り合う位置でフロアパネル1を貫通するハーネス6と、燃料タンク3の水平移動を規制するリアサイドフレーム14及び第1クロスメンバ16とを備えている。リアサイドフレーム14及び第1クロスメンバ16は、燃料タンク3がハーネス6に近づく方向へ水平移動するときに燃料タンク3がハーネス6に当接するよりも先に当接する位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアパネルの下方に設けられた燃料タンクと、該燃料タンクと隣り合う位置で該フロアパネルを貫通するハーネスとを備えた下部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両には様々な電装部品が搭載されており、これらの電装部品への電源供給及び/又は信号通信はハーネスを用いて行われる。
【0003】
例えば、特許文献1に係る車両においては、バッテリとインバータとがハーネスを介して接続されている。詳しくは、バッテリは、車両後部においてフロアパネル上に配設される一方、インバータは、車両前部に配設されている。そして、一端がバッテリに接続されたハーネスは、フロアパネルに形成された貫通孔を介してフロアパネルの上方から下方へ配策され、フロアパネルの下面に沿って車両前方へ引き延ばされ、最終的にインバータに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−25863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フロアパネルの下方には様々な車両部品が配設されており、その1つに燃料タンクがある。この燃料タンクは、比較的大きな車両部品である。ハーネスをフロアパネル下で引き回す構成においては、この燃料タンクの存在が問題となる。すなわち、ハーネスを燃料タンクを迂回させるように配策すると、ハーネスの全長が長くなってしまう。また、ハーネスを燃料タンクの下方を通すと、ハーネスが路面の凸部等と接触し易くなってしまう。
【0006】
そこで、燃料タンクの近傍において、特許文献1に係る構成のようにフロアパネルに貫通孔を形成し、ハーネスに該貫通孔を通過させ、ハーネスをフロアパネル上へ引き渡すことが考えられる。
【0007】
しかしながら、かかる構成においては、ハーネスは、フロアパネルを貫通する際に、燃料タンクの近傍においてその側方を横切ることになる。この状態で、例えば車両衝突等によって燃料タンクが揺動すると、燃料タンクの側部がハーネスに当接し、ハーネスを損傷させる虞がある。
【0008】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ハーネスを燃料タンクから保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに開示された下部車体構造は、フロアパネルの下方に設けられた燃料タンクと、該燃料タンクと隣り合う位置で該フロアパネルを貫通するハーネスとを備えている。この下部車体構造は、前記燃料タンクの水平移動を規制する規制部をさらに備え、前記規制部は、前記燃料タンクが前記ハーネスに近づく方向へ水平移動するときに、該燃料タンクが該ハーネスに当接するよりも先に当接する位置に設けられているものとする。ここで、「水平」とは、厳密な水平に限らず、実質的な水平も含む。例えば、水平移動には、フロアパネルに沿った移動等も含む。
【0010】
前記の構成の場合、燃料タンクがハーネスに近づく方向へ水平移動しても、燃料タンクがハーネスに当接するよりも先に規制部に当接して、燃料タンクの水平移動が規制されるため、燃料タンクのハーネスへの当接が防止される。
【0011】
また、前記規制部は、前記フロアパネルよりも高剛性の車体強度部材の壁面であり、前記燃料タンクは、水平方向に見たときに前記壁面と少なくとも部分的に重なっていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、高剛性の車体強度部材を規制部として用いることによって、燃料タンクの衝撃をしっかりと受け止めることができ、燃料タンクの水平移動をより一層、規制することができる。
【0013】
また、前記燃料タンクのうち前記ハーネスと隣り合う部分は、それ以外の部分に比べて上下方向に薄い薄型部であってもよい。
【0014】
この構成によれば、例えばタンク容量が同じであれば、タンクを上下方向へ薄くすることで、タンクを水平方向外側へ広げることができる。その結果、燃料タンクを規制部に近接させる構成を容易に実現することができる。
【0015】
この構成に加え、前記下部車体構造は、前記燃料タンクの薄型部の上方又は下方に並んで配設されたキャニスタと、前記フロアパネルよりも下方に突出する車体フレーム部とをさらに備え、前記キャニスタ及び前記ハーネスは、前記車体フレーム部の下端よりも上方に位置するようにしてもよい。
【0016】
この構成によれば、燃料タンクの薄型部を利用してキャニスタを比較的安全な高さにコンパクトに配置することができる。
【0017】
また、前記規制部は、車両前後方向への水平移動を規制する前後方向規制部と、車幅方向への水平移動を規制する車幅方向規制部とを含むようにしてもよい。
【0018】
この構成によれば、燃料タンクの車両前後方向及び車幅方向への水平移動を規制することができる。それに加えて、前後方向規制部と車幅方向規制部とが協働して、燃料タンクの、車両前後方向及び車幅方向に対して傾斜した方向への水平移動も規制することができる。
【0019】
ここで、前記燃料タンクは、少なくとも一部がバンドを介して車体に支持されていてもよい。
【0020】
この構成の場合、燃料タンクの揺動をバンドにより減衰させることができる。ただし、燃料タンクが揺動し易くなるが、前記の構成により、燃料タンクのハーネスへの当接を防止することができる。つまり、燃料タンクの揺動の減衰とハーネスの保護とを両立することができる。
【0021】
また、前記燃料タンクは、フランジを有する上部構造体と、フランジを有する下部構造体とを該フランジ同士を接合することで一体化した構造をしており、前記フランジのうち、前記規制部と対向する部分は水平に延びている一方、前記ハーネスと対向する部分は上方又は下方に曲がっており、前記フランジの前記規制部と対向する部分が該規制部に当接することによって前記燃料タンクの水平方向移動が規制されるようにしてもよい。
【0022】
この構成によれば、燃料タンクから水平方向に延びるフランジを利用して、燃料タンクの水平移動を規制することができる。このとき、フランジのうちハーネスと対向する部分を上方又は下方に曲げることによって、フランジがハーネスに当接することを防止することができる。また、燃料タンクが規制部に衝突する衝撃が強い場合には、フランジが変形して衝撃を吸収することができる。このとき、フランジの変形によって、万が一フランジがハーネスに当接することがあったとしても、フランジのうちハーネスと対向する部分は上方又は下方に曲がっているため、ハーネスが損傷し難い。
【発明の効果】
【0023】
前記の構成によれば、燃料タンクの水平移動を規制部によって規制することによって、燃料タンクがハーネスに当接することを防止できるので、ハーネスを燃料タンクから保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係る下部車体構造を示す下面図である。
【図2】キャニスタ及びその取付ブラケットを省略した、下部車体構造を示す下面図である。
【図3】図1のIII−III線における断面図である。
【図4】図1のIV−IV線における断面図である。
【図5】図1のV−V線における断面図である。
【図6】フロアパネルにおけるハーネスが貫通する部分の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、例示的な本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1は、実施形態に係る、ハイブリッド自動車(以下、単に車両という)の下部車体構造を示す下面図であり、図2は、キャニスタ及びその取付ブラケットを省略した、下部車体構造を示す下面図であり、図3は、図1のIII−III線における断面図であり、図4は、図1のIV−IV線における断面図であり、図5は、図1のV−V線における断面図であり、図6は、フロアパネルにおけるハーネスが貫通する部分の拡大斜視図である。この車両についての前、後、右、左、上及び下を、それぞれ単に前、後、右、左、上及び下という。
【0027】
フロアパネル1は、ダッシュパネル下端から後部座席足下までのフロントフロアパネル(図示省略)と、フロントフロアパネルの後端から上方へ立ち上がるフロントキックアップ部11と、フロントキックアップ部11の上端から後方へ延び、後部座席下のフロアを構成するシートパン部12と、シートパン部12の後端から後方へ延び、荷室フロアを構成する荷室フロア部13とを有している。
【0028】
フロントキックアップ部11は、図3,4に示すように、厳密には上方ほど後方へ位置するように傾斜しているものの、概ね、鉛直方向上方へ立ち上がっている。フロントキックアップ部11の下端部は、前方へ屈曲しており、フロントフロアパネルに接合されている。フロントキックアップ部11の上端部は、後方へ屈曲しており、シートパン部12に接合されている。フロントキックアップ部11の車幅方向中央では、下端縁が上方に凹んでおり、この部分にセンタトンネル(図示省略)が嵌るようになっている。
【0029】
また、シートパン部12の後部にも、後方ほど上方へ位置するように傾斜するリアキックアップ部12aが設けられている。リアキックアップ部12aの立ち上がり角度は、フロントキックアップ部11に比べて緩やかになっている。
【0030】
荷室フロア部13の車幅方向中央には、図1,2に示すように、スペアタイヤパン13aが下側に膨出するように形成されている。
【0031】
また、フロントキックアップ部11、シートパン部12及び荷室フロア部13の車幅方向両端部には、前後方向に延びる左右一対のリアサイドフレーム14,14が設けられている。各リアサイドフレーム14は、概略的に、下壁と、下壁の車幅方向内側端縁から立ち上がる内側縦壁と、下壁の車幅方向外側端縁から外側縦壁と、内側縦壁の上端縁に設けられたフランジと、外側縦壁の上端縁に設けられたフランジとを有し、断面が略ハット形状をしている。リアサイドフレーム14は、複数のパネルで構成されて、上記の形状をなしている。ただし、リアサイドフレーム14は、単一のパネルで構成されていてもよい。このリアサイドフレーム14が、車体強度部材を構成する。
【0032】
リアサイドフレーム14のうち、図3,4に示すように、フロントキックアップ部11及びシートパン部12に対応する部分は、フロントキックアップ部11の下端とリアキックアップ部12aの前端とを略直線状に繋ぐように延びている。すなわち、この部分におけるリアサイドフレーム14の内側及び外側縦壁は、上下方向に拡張され、側面視で概略三角形状をしている。リアサイドフレーム14のうち、フロントキックアップ部11の下端に接合された部分の高さが最も低くなっている。
【0033】
リアサイドフレーム14の先端部の外側には、図1〜4に示すように、サイドシル(サイドシルを構成するインナパネルだけ図示)15が接合されている。サイドシル15は、前後方向に延びている。サイドシル15の最も低い部分の高さは、リアサイドフレーム14における、フロントキックアップ部11の下端に接合された部分と略同じ高さになっている。これらリアサイドフレーム14及びサイドシル15が、車体フレーム部を構成する。
【0034】
フロアパネル1の下面には、車幅方向に延びて左右のリアサイドフレーム14,14に連結されるクロスメンバが複数設けられている。詳しくは、フロントキックアップ部11に、第1クロスメンバ16が設けられている。シートパン部12の後端部と荷室フロア部13の前端部との接合部に第2クロスメンバ17が設けられている。スペアタイヤパン13aの前部に跨って第3クロスメンバ18が設けられている。第1〜第3クロスメンバ16〜18は、フロアパネル1及び左右のリアサイドフレーム14,14に接合されている。第1〜第3クロスメンバ16〜18はそれぞれ、フロアパネル1と共に、車幅方向に延びる閉断面空間を形成している。これらクロスメンバは、車体強度部材を構成する。
【0035】
このように構成されたフロアパネル1の下方には、燃料タンク3、第1キャニスタ4及び第2キャニスタ5が配設される。
【0036】
燃料タンク3は、上方に膨出して下方に開口する上側構造体31と、下方に膨出して上方に開口する下側構造体32とを有する。上側及び下側構造体31,32は、板金で構成されている。上側構造体31には、開口縁の全周に亘ってフランジ31aが設けられている。同様に、下側構造体32には、開口縁の全周に亘ってフランジ32aが設けられている。上側構造体31と下側構造体32とは、互いのフランジ31a,32aを重ね合わせて、両フランジ31a,32aが溶接により接合されている。こうして、上側構造体31と下側構造体32とによって、内部に閉空間が形成された燃料タンク3が構成される。完成体としての燃料タンク3においては、両フランジ31a,32aを単にフランジ33と称し、閉空間を形成する部分をタンク本体30と称する。すなわち、燃料タンク3は、上側構造体31と下側構造体32とを接合させて構成されており、その接合面からは水平方向且つ外側にフランジ33が延びている。上側及び下側構造体31,32を樹脂製ではなく、金属製とすることによって、燃料タンク3内で発生する蒸発燃料の外部への漏出をより一層抑制することができる。
【0037】
燃料タンク3の平面形状は、図1,2に示すように、概ね五角形状をしている。詳しくは、燃料タンク3は、前端縁において車幅方向に延びる前端部34と、前端部34の右端部から後方且つ車幅方向外側へ傾斜して延びる右前傾斜部35と、右前傾斜部35の後端から後方且つ車幅方向内側へ傾斜して延びる右後傾斜部36と、右後傾斜部36の後端から前方且つ車幅方向外側へ傾斜して延びる左後傾斜部37と、左後傾斜部37の前端から前方且つ車幅方向外側へ傾斜し且つ湾曲しながら延びて前端部34の左端部に接続される左端部38とを有している。
【0038】
燃料タンク3の右端部における、右前傾斜部35と右後傾斜部36とで囲まれた平面視略三角形の部分(以下、薄型部という)39は、それ以外の部分に比べて上下方向の寸法が小さく、即ち、薄くなっている。
【0039】
このように構成された燃料タンク3は、シートパン部12の下方であって、第1クロスメンバ16と左右のリアサイドフレーム14,14と第2クロスメンバ17とで囲まれた空間に配設されている。燃料タンク3は、2本のタンクバンド21,21によって第1クロスメンバ16及び第2クロスメンバ17に支持されている。詳しくは、2本のタンクバンド21,21は、車幅方向に離間した状態で、互いに平行に前後方向に延びている。各タンクバンド21の前端部は、第1クロスメンバ16に接合され、後端部は、第2クロスメンバ17に接合されている。右側のタンクバンド21は、燃料タンク3のうち、薄型部39よりも車幅方向内側の部分を支持している。これらタンクバンド21,21がバンドを構成する。
【0040】
第1キャニスタ4は、燃料タンク3の蒸発燃料を吸着するための部材であって、燃料タンク3の薄型部39の下方に並んで配設されている。第1キャニスタ4は、キャニスタカバー41、第1取付ブラケット42及び第2取付ブラケット43を介して、リアサイドフレーム14及び第1クロスメンバ16に支持されている。詳しくは、図1,5に示すように、キャニスタカバー41は、第1キャニスタ4の下方を覆うように設けられている。第1取付ブラケット42は、前端部が第1クロスメンバ16の下端部に接合されており、後端部がキャニスタカバー41に接合されている。第2取付ブラケット43は、上端部がリアサイドフレーム14の下壁に接合されており、下部の側面がキャニスタカバー41に接合されている。こうして、第1キャニスタ4は、リアサイドフレーム14及び第1クロスメンバ16に支持されている。第1キャニスタ4には、燃料タンク3に連結された第1連結管44と、エンジンの吸気系(図示省略)に連結された第2連結管45と、第2キャニスタ5に連結された第3連結管46とが接続されている。
【0041】
第2キャニスタ5は、第1キャニスタ4と同様に、燃料タンク3の蒸発燃料を吸着するための部材である。第2キャニスタ5は、第1キャニスタ4で貯留しきれない蒸発燃料を貯留するためのものであり、予備的なキャニスタである。第2キャニスタ5は、図1に示すように、荷室フロア部13の下方であって、スペアタイヤパン13aの前方に配設されている。第2キャニスタ5は、取付ブラケット51を介して、荷室フロア部13及び第3クロスメンバ18に支持されている。詳しくは、取付ブラケット51は、第2キャニスタ5を抱え込んだ状態で、前端部が荷室フロア部3に接合され、後端部が第3クロスメンバ18に接合されている。第2キャニスタ5は、前記第3連結管46を介して、第1キャニスタ4と連結されている。また、第2キャニスタ5には、一端部が大気開放された開放管52が接続されている。
【0042】
また、車両には、様々なハーネスが配設されており、その1つに、バッテリ(図示省略)と電動モータ(図示両略)とを接続するハーネス6がある。ハーネス6は、複数のケーブルを有し、部分的に、樹脂製のチューブやケースで覆われている。バッテリは、荷室フロア部13上に配設され、電動モータは、車両前部のエンジンルーム内に配設されている。ハーネス6は、一端が電動モータに接続され、他端がバッテリに接続されている。ハーネス6は、電動モータから後方に延び、フロアパネル1の下方を通って、燃料タンク3の前方まで延びている。そして、ハーネス6は、燃料タンク3の前方において、フロアパネル1のシートパン部12に貫通形成された貫通孔19を貫通して、フロアパネル1の上方へ引き渡される。ハーネス6は、フロアパネル1の上方において燃料タンク3を後方へ横切り、バッテリに接続されている。
【0043】
詳しくは、貫通孔19は、図2に示すように、平面視で、シートパン部12における、第1クロスメンバ16と、右側のリアサイドフレーム14と、燃料タンク3の右前傾斜部35とに囲まれた概略三角形状の部分に形成されている。貫通孔19は、燃料タンク3と隣り合う位置、即ち、近接する位置に設けられている。貫通孔19には、筒状のカバー20が挿嵌されており、ハーネス6は、カバー20内を貫通して、シートパン部12の下方から上方へ引き渡される。燃料タンク3の上部構造体31は、貫通孔19に近接する部分が内方に凹んでおり、ハーネス6と上部構造体31とが当接しないように構成されている。
【0044】
かかる構成では、貫通孔19の位置及び燃料タンク3の形状は、ハーネス6が燃料タンク3に当接しないように設計されている。しかしながら、ハーネス6がフロアパネル1を貫通する構成においては、ハーネス6が燃料タンク3のフランジ33の側方を横切ることになる。この状態で、車両衝突等により燃料タンク3に衝撃が加わって、燃料タンク3が水平移動すると、燃料タンク3のフランジ33でハーネス6を損傷させてしまう虞がある。特に、本実施形態の燃料タンク3は、タンクバンド21,21で吊り下げた状態で支持しているため、揺動し易くなっている。
【0045】
そこで、本実施形態では、燃料タンク3のフランジ33に第1クロスメンバ16及びリアサイドフレーム14を近接させることによって、燃料タンク3の水平移動を第1クロスメンバ16及びリアサイドフレーム14で規制するように構成している。
【0046】
詳しくは、燃料タンク3がハーネス6に近づく方向へ水平移動するときに燃料タンク3がハーネス6に当接するよりも先に第1クロスメンバ16及び/又はリアサイドフレーム14に当接する位置に、第1クロスメンバ16及びリアサイドフレーム14を配置している。
【0047】
より詳しくは、燃料タンク3のフランジ33は、水平方向に見たときに、第1クロスメンバ16の壁面と重なっている。そして、第1クロスメンバ16と燃料タンク3のフランジ33との前後方向の距離(最短距離を意味する。以下、同様。)は、ハーネス6、即ち、貫通孔19と燃料タンク3のフランジ33との前後方向への距離よりも小さく設定されている。そのため、燃料タンク3が前方へ移動しても、フランジ33が第1クロスメンバ16に当接することによって燃料タンク3のそれ以上前方への移動が規制されるため、燃料タンク3が前方へ移動することによるフランジ33とハーネス6との当接を防止できる。ここで、「水平方向に見たときに重なっている」とは、上下方向位置が重複している、又は水平方向に並んでいることを意味する。この第1クロスメンバ16が、規制部、さらに詳しくは、前後方向規制部を構成する。
【0048】
また、燃料タンク3のフランジ33は、水平方向に見たときに、右側のリアサイドフレーム14の内側縦壁14aと重なっている。そして、右側のリアサイドフレーム14の内側縦壁14aと燃料タンク3のフランジ33との車幅方向の距離は、ハーネス6、即ち、貫通孔19と燃料タンク3のフランジ33との車幅方向の距離よりも短く設定されている。そのため、燃料タンク3が右側へ移動しても、フランジ33がリアサイドフレーム14に当接することによって燃料タンク3のそれ以上右側への移動が規制されるため、燃料タンク3が右側へ移動することによるフランジ33とハーネス6との当接を防止できる。この右側のリアサイドフレーム14が、規制部、さらに詳しくは、車幅方向規制部を構成する。
【0049】
このように第1クロスメンバ16とリアサイドフレーム14とで燃料タンク3の前方及び右側への水平移動を規制しているので、燃料タンク3の前方且つ右側への斜め方向への水平移動も規制することができる。燃料タンク3の前方且つ右側にはハーネス6が位置するため、燃料タンク3の前方且つ右側への斜め方向への水平移動は、燃料タンク3がハーネス6へ近づく方向への水平移動となる。本実施形態では、燃料タンク3が前方且つ右側の如何なる斜め方向へ水平移動しても、フランジ33がハーネス6に当接するよりも先に、フランジ33が第1クロスメンバ16又はリアサイドフレーム14に当接するように構成されている。その結果、燃料タンク3がハーネス6へ近づく方向へ移動することによるフランジ33とハーネス6との当接を防止できる。
【0050】
それに加えて、燃料タンク3のフランジ33のうち、第1クロスメンバ16に対向する部分33aと、リアサイドフレーム14に対向する部分33bは、水平方向に延びている一方、燃料タンク3のフランジ33のうち、ハーネス6と対向する部分33c、即ち、近接する部分は、下方に折り曲げられている。これにより、フランジ33がハーネス6により当接し難くすることができる。尚、燃料タンク3のフランジ33のうち、ハーネス6と対向する部分33cは、下方ではなく、上方に折り曲げられていてもよい。
【0051】
したがって、本実施形態によれば、燃料タンク3がハーネス6に近づく方向へ水平移動するときに燃料タンク3がハーネス6に当接するよりも先に当接する位置に、燃料タンク3の水平移動を規制する規制部を設けることによって、燃料タンク3の水平移動によりフランジ33がハーネス3に当接することを防止することができる。その結果、燃料タンク3のフランジ33によるハーネス3の損傷を防止することができる。
【0052】
具体的には、燃料タンク3の前方への水平移動を第1クロスメンバ16で規制し、燃料タンク3の右側への水平移動をリアサイドフレーム14で規制することによって、燃料タンク3の前方且つ右側への斜め方向への水平移動も規制することができる。このとき、燃料タンク3が前方へ水平移動するときであっても、右側へ水平移動するときであっても、フランジ33がハーネス6に当接する前に第1クロスメンバ16又はリアサイドフレーム14に当接するように構成することによって、燃料タンク3が前方且つ右側への斜め方向へ水平移動するときであっても、フランジ33がハーネス6に当接することを防止することができる。
【0053】
こうして、ハーネス6を燃料タンク3から保護することができるので、ハーネス6を燃料タンク3の近傍において、フロアパネル1を貫通させることができる。その結果、ハーネス6を燃料タンク3を迂回させることなく、燃料タンク3を前後に横切らせることができるため、ハーネス6の全長を短くすることができる。
【0054】
また、第1クロスメンバ16やリアサイドフレーム14のように、本来的に車両に設けられている構造体を規制部として利用することによって、部品点数を削減することができる。さらに、第1クロスメンバ16やリアサイドフレーム14は、フロアパネル1よりも高剛性の車体強度部材であるため、燃料タンク3の移動をしっかりと受け止めることができる。詳しくは、第1クロスメンバ16は、フロントキックアップ部11と共に閉断面空間を形成するため、フロアパネル1と比べて強度が高い。また、リアサイドフレーム14は、フロアパネル1と共に閉断面空間を形成するため、フロアパネル1と比べて強度が高い。
【0055】
また、燃料タンク3をタンクバンド21,21を介してフロアパネル1に支持しているので、燃料タンク3の揺動を減衰させることができる。その一方で、燃料タンク3が揺動し易くなるが、前記の構成により、燃料タンク3がハーネス6に当接することを防止することができる。つまり、燃料タンク3の揺動の減衰とハーネス6の保護とを両立することができる。
【0056】
また、フランジ33のうち、少なくとも、規制部となる第1クロスメンバ16と対向する部分33a及び右側のリアサイドフレーム14と対向する部分33bは、水平方向に延びるように形成する一方、フランジ33のうち、少なくとも、ハーネス6と対向する部分3cは、上方へ屈曲又は湾曲させている。こうすることで、フランジ33を第1クロスメンバ16及び右側のリアサイドフレーム14により近接させることができる一方、フランジ33をハーネス6からより離間させることができる。その結果、燃料タンク3がハーネス6に近づく方向へ水平移動するときに燃料タンク3がハーネス6に当接するよりも先に規制部に当接する構成を実現しやすくすることができる。さらに、万が一、フランジ33がハーネス6に当接したとしても、ハーネス6に当接する、ハーネス6に対向する部分33cが下方へ屈曲しているため、ハーネス6にはフランジ33の端縁(エッジ)ではなく面が当接することになる。これにより、ハーネス6の損傷を抑制することができる。ここで、フランジ33における、各部材に対向する部分とは、燃料タンク3の水平移動によって、対応する各部材に当接する可能性がある部分を意味する。
【0057】
さらに、燃料タンク3のうち、規制部に当接する部分をフランジ33とすることによって、燃料タンク3が規制部に当接するときの衝撃が強い場合には、フランジ33が変形して該衝撃を吸収することができる。このとき、フランジ33がハーネス6に当接する可能性があるが、前述の如く、フランジ33のうちハーネス6に対向する部分33cを折り曲げているので、ハーネス6の損傷を抑制することができる。
【0058】
さらに、燃料タンク3に他の部分よりも薄い薄型部39を設けることによって、燃料タンク3の容量が同じで且つ全体的な重量バランスが同じであっても、燃料タンク3(即ち、薄型部39)を、その回りに配置された第1クロスメンバ16やリアサイドフレーム14に近接させることができる。その結果、燃料タンク3が水平移動したときに第1クロスメンバ16やリアサイドフレーム14に当接する構成を実現し易くすることができる。
【0059】
また、薄型部39の下面は、燃料タンク3のその他の部分よりも高くなっているため、薄型部39の下方に第1キャニスタ4を並べて配設することによって、第1キャニスタ4をコンパクトに配設することができる。このとき、第1キャニスタ4は、リアサイドフレーム14の下端(フロントキックアップ部11の下端に連結された部分)やサイドシル15の下端よりも上方に位置している。これにより、第1キャニスタ4の地上高をリアサイドフレーム14やサイドシル15等の車体フレーム部よりも高くすることができ、第1キャニスタ4が路面の凸部等に衝突することを防止することができる。同様に、ハーネス6も、リアサイドフレーム14の下端やサイドシル15の下端よりも上方に位置している。これにより、ハーネス6の地上高を車体フレーム部よりも高くすることができ、ハーネス6が路面の凸部等に衝突することを防止することができる。
【0060】
さらに、ハイブリッド自動車では、エンジンが作動していないときがよくあるため、蒸発燃料を燃やす機会が少なく、より多くの蒸発燃料を貯留しておく必要がある。それに対して、燃料タンク3に薄型部39を設けて、キャニスタの配設スペースを確保することによって、比較的大きなキャニスタを配設することができる。こうすることで、ハイブリッド自動車にとっても十分な、大きなキャニスタ容量を確保することができる。
【0061】
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0062】
すなわち、燃料タンク3の形状は、前記実施形態の形状に限られるものではない。燃料タンク3の形状は、必要な容量や配設スペースの形状に応じて、適宜に設定することができる。例えば、燃料タンク3には、薄型部39が設けられているが、薄型部39を設けなくてもよい。
【0063】
また、前記実施形態では、燃料タンク3の水平移動を規制する規制部として、第1クロスメンバ16及びリアサイドフレーム14を用いているが、これに限られるものではない。車両のこれ以外の構造体を規制部として用いてもよいし、規制部としての部材を別途設けてもよい。ただし、車両の構造体を規制部として用いる方が、部品点数の削減の観点から好ましい。また、車両の構造体の中でもフロアパネル1よりも高剛性の車体強度部材を用いる方が、燃料タンク3の当接をしっかりと受け止める観点から好ましい。例えば、第1クロスメンバ16が設けられていない場合は、フロントキックアップ部11を規制部として用いてもよい。フロントキックアップ部11は、上端部及び下端部が屈曲されているので、フロアパネル1の他の略フラットな部分と比べて、強度が向上している。また、フロントキックアップ部11は、車幅方向中央においてセンタトンネルに接合されているので、この点においても強度が向上している。
【0064】
前記実施形態では、燃料タンク3の前方において、ハーネス6がフロアパネル1を貫通しているが、これに限られるものではない。ハーネス6は、燃料タンク3の側方においてフロアパネル1を貫通してもよいし、燃料タンク3の後方においてフロアパネル1を貫通してもよい。
【0065】
また、前記実施形態では、燃料タンク3のフランジ33が規制部に当接するように構成されているが、これに限られるものではない。例えば、燃料タンク3のタンク本体30が規制部に当接することによって、燃料タンク3の水平移動を規制するように構成してもよい。
【0066】
さらに、燃料タンク3は、フランジ33がなくてもよい。フランジが無い燃料タンクであっても、燃料タンクがハーネスに当接することによってハーネスを損傷させる虞はある。つまり、フランジが無くても、燃料タンクが水平移動しても、ハーネスよりも先に規制部に燃料タンクが当接するように構成することによって、ハーネスの損傷を防止することができる。
【0067】
また、前記実施形態では、フランジ33のうち規制部と対向する部分は、水平方向に延びるように形成する一方、フランジ33のうちハーネス6と対向する部分は、上方へ屈曲又は湾曲させているが、これに限られるものではない。フランジ33のうちハーネス6と対向する部分は、下方へ屈曲又は湾曲させてもよい。また、フランジ33のうちハーネス6と対向する部分は、水平方向へ延びているものの、フランジ33のうち規制部と対向する部分に比べて、フランジ幅(即ち、タンク本体30から外方への突出量)が小さくなるように形成されていてもよい。さらには、燃料タンク3がハーネス6に近づく方向へ水平移動するときに燃料タンク3がハーネス6に当接するよりも先に規制部に当接する限りにおいては、フランジ33のうち規制部と対向する部分のフランジ幅とハーネス6と対向する部分のフランジ幅は同じであっても、さらには、とハーネス6と対向する部分のフランジ幅の方が規制部と対向する部分のフランジ幅よりも大きくてもよい。
【0068】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明は、ロアパネルの下方に設けられた燃料タンクと、該燃料タンクと隣り合う位置で該フロアパネルを貫通するハーネスとを備えた下部車体構造について有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 フロアパネル
14 リアサイドフレーム(規制部、車幅方向規制部、車体強度部材)
15 サイドシル(車体フレーム部)
16 第1クロスメンバ(規制部、前後方向規制部、車体強度部材)
21 タンクバンド(バンド)
3 燃料タンク
31 上部構造体
31a フランジ
32 下部構造体
32a フランジ
33 フランジ
39 薄型部
6 ハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルの下方に設けられた燃料タンクと、該燃料タンクと隣り合う位置で該フロアパネルを貫通するハーネスとを備えた下部車体構造であって、
前記燃料タンクの水平移動を規制する規制部をさらに備え、
前記規制部は、前記燃料タンクが前記ハーネスに近づく方向へ水平移動するときに、該燃料タンクが該ハーネスに当接するよりも先に当接する位置に設けられていることを特徴とする下部車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の下部車体構造において、
前記規制部は、前記フロアパネルよりも高剛性の車体強度部材の壁面であり、
前記燃料タンクは、水平方向に見たときに前記壁面と少なくとも部分的に重なっていることを特徴とする下部車体構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の下部車体構造において、
前記燃料タンクのうち前記ハーネスと隣り合う部分は、それ以外の部分に比べて上下方向に薄い薄型部であることを特徴とする下部車体構造。
【請求項4】
請求項3に記載の下部車体構造において、
前記燃料タンクの薄型部の上方又は下方に並んで配設されたキャニスタと、
前記フロアパネルよりも下方に突出する車体フレーム部とをさらに備え、
前記キャニスタ及び前記ハーネスは、前記車体フレーム部の下端よりも上方に位置することを特徴とする下部車体構造。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の下部車体構造において、
前記規制部は、車両前後方向への水平移動を規制する前後方向規制部と、車幅方向への水平移動を規制する車幅方向規制部とを含むことを特徴とする下部車体構造。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つに記載の下部車体構造において、
前記燃料タンクは、少なくとも一部がバンドを介して車体に支持されていることを特徴とする下部車体構造。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の下部車体構造において、
前記燃料タンクは、フランジを有する上部構造体と、フランジを有する下部構造体とを該フランジ同士を接合することで一体化した構造をしており、
前記フランジのうち、前記規制部と対向する部分は水平に延びている一方、前記ハーネスと対向する部分は上方又は下方に曲がっており、
前記フランジの前記規制部と対向する部分が該規制部に当接することによって前記燃料タンクの水平方向移動が規制されることを特徴とする下部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−32117(P2013−32117A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169532(P2011−169532)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】