説明

不均一な密度の複合構造体とそれに関連する方法

複合構造体は、繊維挿入密度が不均一となるように互いに間隔をおいて配置された複数の繊維挿入物を備える。関連する製造方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高い強度対重量比の複合材に関し、より具体的にはこれら複合材から成る高い強度対重量比のパネル及び他の構造体、及びこれら構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複合構造体は、通常、マトリクス中に補強剤を含む。マトリクスが補強材同士を結びつけるように働くのに対して、補強剤は当該構造体の主要な機械的強度を提供する。
【0003】
《関連する出願への相互参照》
本出願は、2004年12月3日付で出願した米国仮特許出願第60/633,018号及び“Composite Structure with Non-Uniform Density and Associated Method”と題され2005年11月29日付で出願した米国特許出願第11/289,677に基づく優先権を主張するものであり、これらの出願の全体を本明細書に援用する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの態様によれば、高い強度対重量比の複合構造体は、複数の繊維挿入物を含む。それらの繊維挿入物は、複合構造体内において密度が不均一となるように互いに間隔をおいて配置される。より高い繊維挿入密度の領域は、その領域の硬さ及び負荷に耐える能力を向上させる。この複合構造体の製造方法が開示される。
【0005】
図示のように、複合構造体は、例えばサンドイッチパネル、又は一つ以上の硬い積層シートとして実現されてもよい。パネルの場合、該パネルは、複合第1皮膜及び複合第2皮膜と、該第1及び第2皮膜の間に挟まれたコアと、該第1皮膜と該コアと該第2皮膜とを少なくとも部分的に通って延びる複数の繊維挿入物とを備える。該複数の繊維挿入物は、パネル内においてそれらの密度が不均一となるように互いに間隔をおいて配置されている。各皮膜または(一つ以上の硬い積層シートの場合)各シートは、互いに垂直なx軸とy軸にほぼ沿って延びる複数の繊維層を含んでよい。それらの繊維層を通って、該繊維挿入物群はx軸及びy軸に垂直なz軸に沿って延びる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の思想は、様々な改良と別の形態が可能であるが、特定の幾つかの実施形態を図面に例として示し、以下に詳細に説明する。しかし、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図したものでなく、本発明は、本発明の思想と範囲内に入る全ての改良物、等価物、及び別の形態を含むよう意図されていることは理解されるべきである。
【0007】
本発明は、複合材及びこの複合材を構造上の支持体として含む合成パネルに関する。一つの実施形態では、該合成パネルは、例えば、コアと、該コアの両側に固定された二つの皮膜(例えば二つの積層された皮膜)とを有するサンドイッチパネルとして構成される。このような合成パネルは、連続的に製造することができる。一つの実施形態では、該複合材は不均一な又は一様でない密度を有するように形成されてよい。即ち、該複合材は一つ以上の低密度領域と、より大きな負荷に対して使用するための一つ以上の高密度領域とを有してよい。
【0008】
好例となる一つのタイプの合成パネルは、繊維補強パネル(FRPパネル)である。FRPパネルは、補強材とポリマー樹脂とを含むポリマーマトリクス複合材から形成される。FRPパネルは、任意のタイプのFRP構造体として実現されてよい。このような構造体の例は、硬い積層体と、引き抜き成形又は真空成形されたサンドイッチパネル(例えば、間にコアが挟まれた上部皮膜と下部皮膜とを有するパネル)とを含むが、これらに限定されない。前記FRPパネルがサンドイッチパネルとして実現される場合、そのコアの種類には木材、発泡体、及び様々なタイプのハニカム等が含まれるが、これらに限定されない。
【0009】
該マトリクスは、熱硬化性樹脂を含んでもよい。熱硬化性樹脂の例は、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ポリウレタン、エポキシ類、フェノール類、及びこれらの混合物等を含む。該マトリクスが熱可塑性樹脂を含むことは本開示の範囲内である。
【0010】
前記補強材は、Eガラス繊維を含んでもよい。或いは他の補強材、例えばSガラス、炭素、KEVLAR(登録商標)、金属(例えば金属ナノ繊維)、高弾性率有機繊維(例えば芳香族ポリアミド、ポリベンズアミダゾール、及び芳香族ポリイミド)、及び他の有機繊維(例えばポリエチレン及びナイロン)を使用してもよい。このような材料の混合物又は混成物を補強材として使用してもよい。ホウ素、珪酸アルミニウム、玄武岩等の繊維とウィスカーとを含む他の適当な複合材群を補強材として使用してもよい。
【0011】
前記FRPパネルは米国特許第5,794,402号、第6,023,806号、第6,044,607号、第6,070,378号、第6,081,955号、第6,108,998号、第6,467,118号、第6,645,333号、及び第6,676,785号に開示された構造体のうちのどれであってもよい。これらの出願を本明細書に援用する。
【0012】
図1を参照すると、複合構造体10が複数の繊維挿入物12、皮膜14、16、及びコア18を含むサンドイッチ体として構成されている。各皮膜14、16は少なくとも一つの2次元織布繊維層を備える。コア18は該一対の皮膜14、16の間に挟まれている。パネル製造プロセスにおいて、繊維挿入物12が、皮膜14、16及びその間のコア18内に挿入され「ドライ・サンドイッチ」(dry sandwich;乾式のサンドウィッチ状複合材)を構成する。次に、樹脂がそのドライ・サンドイッチの表面に塗布され、真空圧により該ドライ・サンドイッチ中に浸透する。後述するように、各繊維挿入物12は周知のように繊維エレメントの束であってもよい。
【0013】
一つ以上のカバー20が、複合構造体10の皮膜14、16に固定されてもよい。カバー20は、金属シート、及び/又は様々なゲル又は他の被覆材のうち任意の一つ以上を含み、例えば風化防止または摩擦面を提供する様々な材料から作られてよい。また、皮膜14、16を覆うために様々な種類のカバーを使用してもよい。例えば、外装カバー20は、マークの表示を容易にするために外側が所定の望ましい色に仕上げられてよい。同様に、内装カバー20は所望の外装カバーの色と異なる所定の色に仕上げられてよい。カバー20、皮膜14、16、及びコア18は互いに結合するよう一緒に硬化されてよい。
【0014】
複合構造体10は、低い繊維密度となるように繊維挿入物12が互いに対して配置された一つ以上の低繊維密度の領域22を含む。各領域22の繊維挿入物12は、スペース24だけ互いに離間されている。一つの実施形態では、スペース24は均一である。例えば、スペース24は各領域22が1平方インチ当り16個の繊維挿入物を有する大きさである。
【0015】
また、複合構造体10は、前記低繊維密度より高い繊維密度となるように繊維挿入物12が互いに対して配置された一つ以上の高繊維密度の領域26を含む。各領域26の繊維挿入物12は、スペース28だけ互いに離間されている。高繊維密度の領域26は、低繊維密度の領域22内の繊維挿入物12の数より大きな数の繊維挿入物12を含みうる。
【0016】
別の実施形態では、各領域26のスペース28は不均一であってもよい。即ち、各領域26内の繊維挿入物12は不均一に又は非一様に互いに離間されてもよい。
【0017】
更に別の実施形態では、各領域26のスペース28は均一であってもよい。即ち、領域26内の繊維挿入物12は均一に互いに離間されてもよい。
【0018】
更に別の実施形態では、一つ以上の領域26内の繊維挿入物12間のスペースは、他の一つ以上の領域26内の繊維挿入物12間のスペースと異なってもよい。即ち、一つ以上の領域26内の繊維挿入物12は、不均一に又は非一様に他の一つ以上の領域26内の繊維挿入物12に対して離間されてもよい。
【0019】
図2を参照すると、複合構造体10は合成パネル30として構成されてもよい。このような構成において、合成パネル30は繊維挿入物12、皮膜14、16及びその間に挟まれたコア18を含むサンドイッチパネルである。合成パネル30は、スペース24(この図では均一)を有し低繊維密度の前記一つ以上の領域22を更に含む。また、合成パネル30はスペース28を有し前記低繊維密度より高い繊維密度の前記一つ以上の領域26を含む。また、高繊維密度の領域26群は、パネル30内で互いに対して均一に又は不均一に配置されてよい。
【0020】
高繊維密度の領域26は増加した応力を受ける領域に設けられてよい。このような増加した応力は様々な位置で、また様々な理由で発生する。例えば、領域26は留具34又は他の接続具の近傍に使用されてよい。別の例では、一つ以上の高繊維密度の領域26がパネル30の一つ以上の縁に沿って設けられてよい。結果としてのその縁の硬さは、その硬い縁を他の構造体に取付けるのを助ける。
【0021】
合成パネル30は、例えば、パネル30を貫通する空洞32の形をした複数の孔を備えてもよい。これらの空洞32は複数の高繊維密度の領域26と関連して配置されてよい。後述するように、空洞32はパネル30の増加した応力又は負荷領域と関係する。一つの実施形態では、個々の空洞32はそれぞれの領域26の中央に配置されてよい。
【0022】
空洞32は、様々な方法で形成されてよい。パネル30に空洞32を形成する一つの方法は、ドリルを用いて空洞32を開けることである。空洞32は連続したパネル製造プロセスの一部として形成されてもよい。空洞32は型をコア18内に挿入することで形成されてもよい。その型は、管、正方形、又は他の幾何学形状、又は不整形であってよい。
【0023】
図3、図4を参照すると、ボルト等の留具34が各空洞32内に挿嵌される。従って、空洞32は留具34をパネル30に通すよう構成されている。留具34はパネル30を構造体(不図示)に取付けるために使用される。
【0024】
図5を参照すると、パネル30は均一な負荷又は不均一な負荷等の負荷を支えるために使用されてもよい。パネル30は構造体36、40と接触するよう配置されてもよい。留具34はパネル30を構造体36、40に接続する。高繊維密度の領域26は留具34を受容し、留具34を通してパネル30に加えられた負荷(例えば引き裂き負荷とせん断負荷)に応答する硬さを提供する。即ち、領域26は留具34の力に抗してパネル30を硬くする。従って、領域26は留具34が引き起こしうる損傷、摩耗、及び/又は侵食を低減する。
【0025】
構造体36、40に接する領域26を、留具34に代えて又は追加して接着材(不図示)を用いて構造体36、40に取付けてもよい。この場合、領域26の増加した硬さは、領域26と構造体40の間の接着接続を助ける。
【0026】
図6を参照すると、複合構造体10から成るパネル30を製造する方法が示されている。パネル30を設計する際に、増加した負荷領域の位置が決定される。増加した負荷領域は、ボルト等の留具34が挿嵌されたパネル30上の位置である場合がある。増加した負荷領域の位置が決定された後、例えば図6に示すようにパネル30に加えられた負荷点と対応して要求される繊維密度をまとめて決定するために繊維密度分析42が行われる。負荷と対応する繊維密度データを計算するとともに、例えば、密度データ信号の形でコマンドを関連する繊維埋込装置に発行するコンピュータ・モデリングプログラムを繊維密度分析42を行うために使用してもよい。図6の繊維密度分析42に示すように、繊維挿入物12の密度は、加えられた負荷を表す中央領域44まで増加する。繊維密度分析42に基づいて、低繊維密度の領域22と高繊維密度の領域との位置、寸法、及び/又は構成が、パネル30内での適切な位置決めのために決定される。
【0027】
図7を参照すると、密度分析42の完了後、密度データが、例えば、一つ以上の密度データ信号により繊維埋込装置に送信される。好例の繊維埋込装置が米国特許第6,645,333号に開示されている。この繊維埋込装置の一つのモジュールが繊維挿入物12の柱46を複合構造体10の皮膜14、16、及びコア18に挿入し低繊維密度の領域22の形成を開始する。領域22において、この柱46は一定の数(例えば、10本)の繊維挿入物12を含んでよい。該モジュールが繊維挿入物12の1本の柱46を埋め込んだ後、複合構造体10は、該モジュールに対して所定の距離48だけ直線移動する。次に、該モジュールは繊維挿入物12の別の柱46を埋込み、低繊維密度の領域22の形成を続ける。該モジュールが複合構造体10内の高繊維密度の領域26への埋込みを開始するまで、繊維埋込プロセスを繰り返し均一密度の領域22の形成を続ける。
【0028】
一つの実施形態では、高繊維密度の領域26を形成するために、複合構造体10は、距離48より短くてもよい所定の距離50だけ直線移動する。複合構造体10の移動後、該モジュールは繊維挿入物12の1本の柱52を埋め込む。領域26において、柱52は一定の数の繊維挿入物12を含んでよい。又は柱52の繊維挿入物12の数は、直前の柱52の繊維挿入物12の数より多くても少なくてもよい。繊維埋込プロセスは複合構造体10を移動させ、繊維挿入物12を所望のように埋込み、領域26を形成する。
【0029】
繊維埋込装置は繊維挿入物12の追加の柱54群を所定の間隔56で埋め込んでよい。一つの実施形態では、柱54の繊維挿入物12の数は、別の柱54の繊維挿入物12の数より多くても少なくてもよい。繊維埋込シーケンスは、繊維埋込装置により繊維挿入物12の所望のパターンが完成するまで繊維挿入物12の埋込みを続ける。
【0030】
密度分析42に基づいて、繊維埋込装置は、柱52、54内の繊維挿入物12の埋込みを変えることにより高繊維密度の領域26群を均一又は不均一に配置することができる。本開示は柱46、52、54に限定されることなく、密度分析42からの要求に従って、追加の繊維挿入物12の柱を含んでよい。計算された低繊維密度の領域22及び高繊維密度の領域26の埋込み後、繊維埋込装置は複合構造体10を所望の形に加工しパネル30を形成する。
【0031】
一つの実施形態では、該繊維埋込装置は、複合構造体10に繊維挿入物12を埋込むためのモジュールの複数の列を備えている。この実施形態では、異なるモジュールが繊維挿入物12の異なる柱を埋込むために使用される。更にこの実施形態では、複数のモジュールの動作を調和させるタイミング機能を有するシーケンスプログラムが、複合構造体10の進行と各モジュールにより埋込まれる繊維柱間の距離とを制御するために使用されてもよい。
【0032】
図8を参照すると、符号60で示された繊維埋込装置は例示した引き抜き成形プロセス62に含まれてよい。このような場合、例えば織られたロービングの形態の繊維層が繊維ロール64から供給され、パネルの場合の皮膜14、16の層、又は硬い積層体の場合の積層シートを形成する。これらの繊維層は、樹脂タンク66を通過し樹脂で湿潤される。パネルの場合、コア18は皮膜14、16間にタンク66の前又は後のどちらで導入されてもよい。いずれの場合も、湿潤されたユニットはデバルキングブッシュ68を通り、余分な樹脂が除去されてもよい。次に、繊維埋込装置60は繊維挿入物12を挿入し、該ユニットは加熱された金型70において硬化される。構造体10は、例えば一対のグリッパー又はローラーからなる引き抜き具72によって通過線に沿って引っ張られる。別の例では、繊維挿入物12は樹脂タンク66の上流において挿入されてもよい。
【0033】
繊維埋込装置60は、モジュールの四つの列1、2、3、4を備えていてもよい。モジュール列1、2、3、4は関連するロール74から繊維挿入材を受取る。四つのモジュール列1、2、3、4は、四つの柱に繊維挿入物12を挿入する。複合構造体10は移動され、モジュール列群は別の四つの柱の繊維挿入物12を挿入する。このシーケンスは所望の繊維パターンが完成するまで続く。モジュール列群は、次の柱の組に進む前に、それぞれ対応する柱の繊維挿入物12を同時に挿入するようにしてもよい。一つの例では、モジュール列1、2、3、4は、それぞれ柱1、2、3、4の繊維挿入物12を挿入する。複合構造体10は4ステップ(各ステップは一つの柱に関連する)進み、次にモジュール列1、2、3、4はそれぞれ柱5、6、7、8を挿入する。このシーケンスは繊維パターンの完成まで繰返される。別の例では、モジュール列1、2、3、4は近接していない柱群、例えば1、14、27及び30の繊維挿入物12を挿入する。
【0034】
一つの実施形態では、一つのモジュール列(例えば、列1)がマスター列とされる。その他の列はスレーブと呼ばれる。マスター列とは異なり、スレーブ列は複数の柱を横切ることができるガントリー上に配置される。例えば、これら列群は互いに四つの柱分だけ間隔をおいて配置されてよく、スレーブ列は±3柱分だけ横に移動できることとしてもよい。このような場合、マスター列1は柱1を、スレーブ列2、3、4は柱5、9、13を挿入してもよい。複合構造体10は、3ステップ移動するまで一度に1ステップずつ移動してもよい。その次に、複合構造体10は12ステップ移動してもよい。
【0035】
マスター列としては、これら列群が同時に動作する際、例えばもっとも長い挿入時間の列が選ばれる。挿入時間は、例えば、(各挿入の時間+移動時間)×(一つの柱あたりの挿入数)で与えられる。繊維埋込装置はマスター列によって一つの柱が完成した時に、そのマスター列に対して複合構造体10を移動させるようプログラムされてよい。このような手順を使用することで繊維埋込装置のソフトウェアのプログラミングが簡単化されうる。
【0036】
各スレーブ列の位置は、「絶対距離」又は「相対距離」等の様々な方法で測定されてもよい。「絶対距離」の場合、各スレーブ列はマスター列からの距離が測定される。「相対距離」の場合、マスター列から固定の距離離れた基準点が選択され、各スレーブ列からその基準点までの距離が測定される。
【0037】
全ての列(マスター列とスレーブ列)の位置が、別の技法で測定されてもよい。特に、各列の位置は、挿入された繊維物上のマークに基づいて各列を動作させることで測定されてもよい。各マークからの距離を測定することで、各列が所望のパターンを描くようにできる。
【0038】
非一様な密度パターンを作製する別の方法によれば、各列は選択された色の繊維を挿入するか又は挿入を休止する。例えば、列1、2、3はそれぞれ赤色繊維挿入物、青色繊維挿入物、黒色繊維挿入物を挿入し、その間、列4は休止する。
【0039】
二つ以上の繊維挿入物12を同じ場所に挿入する方法が少なくとも三つ存在する。第1の方法は、二つ以上の繊維挿入物12が同じ場所に挿入されてもよい。第2の方法は、前の繊維挿入物との干渉を避けるために二つ以上の繊維挿入物12を互いから少し離して挿入してもよい。第3の方法は、ただ一つの列(例えば、マスター列)が繊維挿入を行うために使用されてもよい。
【0040】
別の実施形態では、マスター列が挿入を行っている間、各スレーブ列が先行し、それが横移動できる範囲内の多数の位置に繊維挿入物12を挿入する。パネル30の進行を許すためにマスター列が停止したときに、スレーブ列は停止する。
【0041】
図9a〜図9dを参照すると、複合構造体10の製造において、皮膜14、16をコア18に被着する前に、織物挿入物58がコア18と接触するよう挿入されてもよい。織物挿入物58はパネル30に強度補強を提供する。
【0042】
複数のコア18が図9aの斜視図に示されている。一つの実施形態においては、織物挿入物58がコア18の長さ全体に沿って延在してもい。別の実施形態では、織物挿入物58は部分的にコア18の長さに沿って延びる。更に別の実施形態では、織物挿入物58は一つ以上のコア18と接触してよい。また、別の実施形態では、織物挿入物58はコア18全体を包んでもよい。
【0043】
図8aの部分断面図を示す図9bに、二つの織物挿入物58が互いに隣接する二つのコア18にI字形を成すように取付けられているのが示されている。この構成において、各織物挿入物58は特定のコア18に接触する。繊維挿入物12は織物挿入物58を通りコア18に挿入されてもよい。
【0044】
図8aの部分断面図を示す図9cに、織物挿入物58が互いに隣接する二つのコア18にZ字形を成すように取付けられているのが示されている。この構成において、織物挿入物58は両方のコア18に接触する。図示のように、織物挿入物58は一方のコア18の上面に沿って延び、他方のコア18の底面に沿って延びてもよい。
【0045】
図9dに示すように、繊維挿入物12はコア18及び織物挿入物58に斜めに挿入されてもよい。
【0046】
そのコア18が上述のように一様でない繊維密度を有するように、繊維挿入物12群を各コア18に挿入してもよい。
【0047】
複合構造体10の製造中に、織物挿入物58が取付けられたコア18が、複合構造体10内に直線的に又は交差する方向に配置され、複合構造体10全体に増加した硬さを提供するようにしてもよい。コア18と織物挿入物58が複合構造体10内に配置された後、繊維埋込装置は繊維挿入物12を織物挿入物58とコア18内に埋込んでもよい。
【0048】
図10Aを参照すると、複合積層皮膜14、16と、皮膜14、16に挟まれたコア18と、複数の繊維挿入物12とを有するパネル30が示されている。皮膜14、16はほぼx軸とy軸に沿って延び2次元の補強を提供する繊維層74を有する。x軸は図10Aの紙面上で水平であり、y軸は図10Aの紙面の奥に向かって延び、z軸は図10Aの紙面上で垂直である。各繊維挿入物12はほぼz軸に沿い少なくとも部分的に皮膜14、16とコア18とを通って延びている。より具体的には、各繊維挿入物12は繊維層74内を横切って延びており、パネル30に1次元の補強を提供する。即ち、パネル30は3次元に補強されている。繊維挿入物12群は、それらの密度が不均一となるように互いに間隔をおいて配置されている。例えば、領域22内の繊維挿入物12の密度は領域26内の繊維挿入物12の密度より低い。
【0049】
単一のシート75に関する図10Bと二つのシート75に関する図10Cとに示すように、繊維挿入物12群は、ポリマーマトリクス中に存在する繊維層74群を有する少なくとも一つの硬い積層複合シート75内に挿入されてよい。各繊維層74はほぼx軸とy軸に沿って延び、2次元の補強を提供する。繊維挿入物12はほぼz軸に沿い繊維層74を横切ってシート75内に延在し、1次元の補強を提供する。即ち、シート75は3次元に補強される。繊維挿入物12群は、シート75内においてそれらの密度が不均一となるように互いに間隔をおいて配置される。
【0050】
本発明は、様々な改良と別の形態が可能であるが、特定の幾つかの実施形態を図面に例として示し、詳細に説明した。しかし、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図したものでなく、本発明は、本発明の思想と範囲内に入る全ての改良物、均等物、及び別の形態を含むよう意図されていることは理解されるべきである。
【0051】
本発明には、本明細書に記載された装置、システム、及び方法の様々な特徴から生じる複数の利点が存在する。本開示の装置、システム、及び方法の他の実施形態は、記載された特徴の全てを含んでいない場合があるが、それでもこれらの特徴の利点のうち少なくとも幾つかの利点を有する。当業者は、本発明の特徴の一つ以上を備え、本発明の思想及び範囲内に入る装置、システム、及び方法の別の実施形態を容易に想到しうる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】高い強度対重量比の複合構造体の一部の部分断面斜視図であり、この複合構造体は上部皮膜と下部皮膜の間に、低繊維密度領域と高繊維密度領域とを形成するよう互いに対して配置された複数の繊維挿入物を含む。
【図2】複数の高繊維密度領域を有するパネルとして構成された図1の構造体の斜視図である。
【図3】各高繊維密度領域を通って延びる留具を示す合成パネルの斜視図である。
【図4】高繊維密度領域の一つを通って延びる留具を示す図3の線4−4に沿った断面図である。
【図5】台として使用するために配置された合成パネルを示す側立面図である。
【図6】合成パネルの高繊維密度領域の一例の密度分析のグラフである。
【図7】合成パネルの製造中における高繊維密度領域と低繊維密度領域とのグラフ表示である。
【図8】合成パネルを製造する装置の概略図である。
【図9a】複合材を補強する挿入物を示す図である。
【図9b】複合材を補強する挿入物を示す図である。
【図9c】複合材を補強する挿入物を示す図である。
【図9d】複合材を補強する挿入物を示す図である。
【図10a】サンドイッチパネル内の繊維挿入物の密度の変化を示す立面図である。
【図10b】単一積層シート内の繊維挿入物の密度の変化を示す立面図である。
【図10c】互いに固定された複数の積層シート内の繊維挿入物の密度の変化を示す立面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合第1皮膜及び複合第2皮膜と、
該第1及び第2皮膜の間に挟まれたコアと、
該第1皮膜と該コアと該第2皮膜とを少なくとも部分的に通って延びる複数の繊維挿入物とを備え、
該複数の繊維挿入物は、それらの密度が不均一となるように互いに間隔をおいて配置されている合成パネル。
【請求項2】
該合成パネルは、(i)複数の前記繊維挿入物が第1のスペースだけ互いに間隔をおいて配置され、それら繊維挿入物の密度が均一な第1密度を有する第1領域と、(ii)複数の前記繊維挿入物が第2のスペースだけ互いに間隔をおいて配置され、それら繊維挿入物の密度が均一な第2密度を有する第2領域とを備え、
該第1のスペースは該第2のスペースより小さく、該第1密度は該第2密度より高い請求項1に記載の合成パネル。
【請求項3】
前記第1領域を通って延びる留具を更に備える請求項2に記載の合成パネル。
【請求項4】
前記第1領域を通って延びる孔を更に備える請求項2に記載の合成パネル。
【請求項5】
前記第1領域の前記繊維挿入物群は環状パターンを成す請求項2に記載の合成パネル。
【請求項6】
前記繊維挿入物群の密度は、該合成パネルの低応力領域よりも高応力領域において高い請求項1に記載の合成パネル。
【請求項7】
前記繊維挿入物群の密度は、該合成パネルの留具のない領域よりも、該合成パネルを通って延びる留具の周りの領域において高い請求項1に記載の合成パネル。
【請求項8】
前記各皮膜は、ポリマーマトリクスと該ポリマーマトリクス中に存在する少なくとも一つの繊維層とを備え、
複数の前記繊維挿入物は、互いに不均一なスペースを隔てて該少なくとも一つの繊維層を通って延びる請求項1に記載の合成パネル。
【請求項9】
複数の前記繊維挿入物は、互いに不均一なスペースを隔てて前記コアを通って延びる請求項1に記載の合成パネル。
【請求項10】
互いに垂直なx軸とy軸にほぼ沿って延びる少なくとも一つの繊維層を含む複合シートと、
該x軸及びy軸に垂直なz軸にほぼ沿って該複合シートを通って延び、該少なくとも一つの繊維層を横切る複数の繊維挿入物とを備え、
該複数の繊維挿入物が、該複合シート内においてそれらの密度が不均一となるように互いに間隔をおいて配置されている複合構造体。
【請求項11】
前記複数の繊維挿入物が互いに間隔をおいて配置されることで、それら繊維挿入物の密度が均一な第1密度を有する第1領域と、それら繊維挿入物の密度が該第1密度と異なる均一な第2密度を有する第2領域とが設けられる請求項10に記載の複合構造体。
【請求項12】
前記構造体は留具を備え、前記第1密度は前記第2密度より高く、該留具は前記第1領域を通って延びる請求項11に記載の複合構造体。
【請求項13】
第1の数の前記繊維挿入物が第1の柱内に配列され、該第1の数と異なる第2の数の前記繊維挿入物が第2の柱内に配列される請求項10に記載の複合構造体。
【請求項14】
前記x軸とy軸にほぼ沿って延びる少なくとも一つの繊維層を含む複合第2シートを更に備え、
前記複数の繊維挿入物は、該複合第2シートを通り前記z軸にほぼ沿って延び、該第2シートの該少なくとも一つの繊維層を横切り、
該複数の繊維挿入物が、該複合第2シート内においてそれらの密度が不均一となるように互いに間隔をおいて配置されている請求項10に記載の複合構造体。
【請求項15】
互いに垂直でz軸に垂直なx軸とy軸とにほぼ沿って延びる少なくとも一つの繊維層を含む複合構造体の製造方法であって、
複数の繊維挿入物を、該z軸にほぼ沿うように、且つ、該少なくとも一つの繊維層の第1領域を横切るように挿入し、それによりそれら繊維挿入物が該第1領域において密度が第1密度となるように互いに間隔をおいて配置されるステップと、
複数の繊維挿入物を、該z軸にほぼ沿うように、且つ、該少なくとも一つの繊維層の第2領域を横切るように挿入し、それによりそれら繊維挿入物が該第2領域において密度が該第1密度と異なる第2密度となるように互いに間隔をおいて配置されるステップと
を備える製造方法。
【請求項16】
前記二つの挿入ステップを引き抜き成形プロセスにおいて実行することを含む請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第1の挿入ステップは、第1の柱として第1の数の繊維挿入物を挿入することを含み、
前記第2の挿入ステップは、第2の柱として該第1の数と異なる第2の数の繊維挿入物を挿入することを含む請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
前記第1の数の繊維挿入物を挿入する前記ステップは、第1繊維挿入モジュールを操作することを含み、
前記第2の数の繊維挿入物を挿入する前記ステップは、第2繊維挿入モジュールを操作することを含む請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
(i)前記複合構造体に対して繊維挿入密度分析を実行することと、
(ii)該分析の結果を表す密度データ信号を生成することと、
(iii)該密度データ信号に応答して繊維埋込装置を操作することと
を含む請求項15に記載の製造方法。
【請求項20】
前記少なくとも一つの繊維層は、複合積層第1及び第2皮膜と該第1及び第2皮膜の間に挟まれたコアとを含む繊維補強ポリマーパネルの該第1皮膜の一部であり、
前記第1の挿入ステップは、該パネルの第1領域において複数の繊維挿入物を該第1及び第2皮膜及び該コア内に挿入し、それによりそれら繊維挿入物が該第1領域において密度が前記第1密度となるように互いに間隔をおいて配置されることを含み、
前記第2の挿入ステップは、該パネルの第2領域において複数の繊維挿入物を該第1及び第2皮膜及び該コア内に挿入し、それによりそれら繊維挿入物が該第2領域において密度が前記第2密度となるように互いに間隔をおいて配置されることを含む
請求項15に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【公表番号】特表2008−521657(P2008−521657A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544436(P2007−544436)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/043153
【国際公開番号】WO2006/060404
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(507181752)マーティン マリエッタ マテリアルズ,インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】MARTIN MARIETTA MATERIALS,INC.
【住所又は居所原語表記】2710 Wycliff Road,Raleigh,NC 27607,U.S.A.
【Fターム(参考)】