説明

不均一系パラジウム触媒の合成方法、得られる触媒およびこの使用

本発明は、化学、特に有機化学の分野、およびさらに特に炭素−炭素結合の形成を伴う化学反応を触媒するために用いる不均一系パラジウム触媒の分野に関する。本発明は、C−Cカップリング反応を触媒することができる不均一系パラジウム触媒の合成方法であって、前記方法が、式PR、式中Rは任意に置換されたアルキル基または任意に置換されたシクロアルキル基であり、Rは任意に置換されたアリール基または任意に置換されたヘテロアリール基を表す、で表される基を共有結合させた固体担体を提供すること、触媒的に有効な量のパラジウムを得られた前記担体中に導入することから本質的になる段階を含む、前記方法に関する。本発明はさらに、得られた触媒およびC−Cカップリング反応における前記触媒の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学、特に有機化学の分野、およびさらに特に炭素−炭素結合の形成を伴う化学反応、言い換えると炭素−炭素カップリング反応を触媒するために用いる不均一系パラジウム触媒の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
このような反応の例は、Suzuki、HeckまたはSonogashira反応の名称の下で知られている。
有機合成の1つの目的は、ますます厳密な基準に従って生成物を得るのに必要である精製段階を最小にする化学反応を行うことにある。さらに、廃棄物を減少させる尚一層強い環境上の願望は、多数の生成物を合成するための方法に新たな方向を付与する。最後に、長期間継続する発展の概念に関連する要件は、用いる試薬の量を最小にすることにある。
【0003】
遷移金属により触媒される反応の分野において、伝統的な触媒の中で、不均一系触媒と均一系(または可溶性の)触媒とを区別する必要がある。前者は簡単に回収され得るが、後者は、はるかにより広い合成の可能性を提供する。多くの作業が、ますます複雑な可溶性の触媒を開発するために捧げられた。これらはしばしば高価であるが、しばしば反応生成物中の少量の金属誘導体の存在をもたらし、これには、達成するのがしばしば困難である追加の精製段階が必要である。そのうえ、金属は一般的に回収しなければならず、廃棄物から完全に除去しなければならない。均一系触媒の特性を有する新規な不均一系触媒の開発は、これらの経済的基準(高価な触媒の再利用および反応生成物の単純化された精製による費用の低減)ならびにこれらの環境上の基準(廃棄物中に存在する金属の量の低減)の直接的な結果である。したがって、用いる金属は、反応の終了時に回収される触媒中にほぼ完全に見出される。
【0004】
パラジウムの特定の場合において、この金属が高価であることを強調する必要がある(2006年10月において1kgあたり8,200ユーロ)。そのうえ、ほぼコンスタントな生産と、宝石、自動車および化学といった多様な分野で増加し続ける用途の数との差異に伴うこの金属の不足が、ますます感じられ始めている。したがって、この価格が今後数年間高止まりするか、または尚一層上昇すると考えるのは、合理的である。
【0005】
したがって、現在の大いなる挑戦は、可溶性パラジウム触媒を、これらを固体担体(鉱物または有機)に固定することにより不均一化することであり、最終的な目的は、不均一系触媒の使用の容易さと最近の均一系触媒の合成能力の両方を維持することにある。
【0006】
パラジウムは、新たな炭素−炭素結合の生成のための合成能力において最も強力なものの1つであり、ひいては最強でさえある遷移金属である。Suzuki反応は、パラジウム触媒(pallado-catalyzed)カップリングであり、アリール−アリールまたはアリール−ビニル結合の生成のための特に有効な手段を構成する。このようにして作成された分子は、しばしば、多数の非常に多様な分野、例えば薬化学、農芸化学、半導体材における用途が見出される、より複雑な分子を作成するための基本的な構造を構成する。
【0007】
Suzuki反応は、ハロゲン化アリールをビニルまたはアリールボロン酸と反応させることにある。臭化アリールおよび特にヨウ化アリールは、この変換を行うための最適なカップリングパートナーである。近年、比較的安価であり、しかしまたこれらの臭素化されたかまたはヨウ素化された類似体よりも反応性がはるかに低い、Suzukiカップリングのための塩化アリールの使用に、多大な関心が高まっている。塩化アリールとアリールボロン酸とが有効にカップリングすることを可能にする数種の均一系触媒は、文献中に記載されている。これらの均一系触媒は現在、温和な条件下、高い収率で、所望のカップリング生成物を得ることを可能にする。しかし、用いられる触媒系は比較的高価であり、パラジウム触媒は反応の終了時に回復することができない。
【0008】
これらの欠点を直すために、パラジウムが無機または有機担体上で固定された再利用することができる数種の不均一系触媒が、開発された(Choudary, B. M.; Madhi, S.; Chowdari, N. S.; Kantam, M. L.; Sreedhar, B. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 14127. Mori, K.; Yamaguchi, T.; Hara, T.; Mizukagi, T.; Ebitani, K.; Kaneda, K. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 11572. Bulut, H.; Artok, L.; Yilmaz, S. Tetrahedron Lett. 2003, 44, 289. Shimizu, K.-I.; Kanno, T.; Kodama, T.; Hagiwara, H.; Kitayama, Y. Tetrahedron Lett. 2002, 43, 5653. Baleizao, C.; Corma, A.; Garcia, H.; Leyva, A. Chem. Commun. 2003, 606. Zhang, T. Y.; Allen, M. J. Tetrahedron Lett. 1999, 40, 5813. Fenger, I.; Le Drian, C. Tetrahedron Lett. 1998, 39, 4287 - this catalyst that has a palladium substrate is marketed by Fluka (catalyst No. 10987). Inada, K.; Miyaura, N. Tetrahedron Lett. 2000, 56, 8661. Parrish, C. A. Buchwald, S. L. J. Org. Chem. 2001, 66, 3820. Yamada, Y. M.; Takeda, K.; Takahashi, H.; Ikegami, S. J. Org. Chem. 2003, 68, 7733. Kang, T.; Feng, Q.; Luo, M. Synlett 2005, 15, 2305. Bedford, R. B.; Coles, S. J.; Hursthouse, M. B.; Scordia, V. J. M. J. Chem. Soc. Dalton Trans. 2005, 991. Lin, C.-A.; Luo, F.-T. Tetrahedron Lett. 2003, 44, 7565. Kim, J.-H.; Kim, J.-W.; Shokouhimehr, M.; Lee, Y.-S. J. Org. Chem. 2005, 70, 6714. Glegola, K.; Framery, E.; Pietrusiewicz, K. M.; Sinou, D. Adv. Synth. Catal. 2006, 348, 1728.)。
【0009】
ポリマーは、不均一系触媒を合成するための最適な有機担体を構成する。このように、2000年には、塩化アリールとアリールボロン酸とのSuzukiカップリングを行うために、ポリスチレンに担持されたジフェニルホスフィノリガンド上にグラフトされたPdClを用いることが記載された(Inada, K.; Miyaura, N. Tetrahedron Lett. 2000, 56, 8661)。しかし、このカップリングには、大量のパラジウム(30ミリ当量まで)を用いることが必要であり、また主に活性化された塩化アリール(電子欠乏)またはクロロピリジンの使用に限定される。
【0010】
2001年には、ポリスチレン樹脂に担持されたジアルキルホスフィノリガンドの5段階合成が、記載された。パラジウムの存在下、および無水反応条件下で、後者により、臭化アリールまたは塩化アリールを用いるSuzukiカップリングを行うことが可能になる(Parrish, C. A.; Buchwald, S. L. J. Org. Chem. 2001, 66, 3820)。塩化アリールを活性化させる反応の場合において、定量的収量を得るために10ミリ当量のパラジウムおよび3当量までのボロン酸を用いることが必要であるため、不均一系触媒の極めて弱い反応性を注記する必要がある。最後に、不均一系触媒をリサイクルする可能性が、臭化アリールを活性化させるSuzukiカップリングの場合においてのみ、調査されている。
【0011】
より最近では、塩化アリールをボロン酸とカップリングさせることを可能にする、ポリスチレンに担持された種々のパラダサイクル(palladacycle)が開発された(Bedford, R. B.; Coles, S. J.; Hursthouse, M. B.; Scordia, V. J. M. J. Chem. Soc. Dalton Trans. 2005, 991)。これらの不均一系触媒の主要な欠点は、反応後にこれらを再利用することが不可能であることである。
【0012】
2006年には、活性化された(電子欠乏)塩化アリールとフェニルボロン酸または4−メチルフェニルボロン酸とのSuzukiカップリングを行うことを可能にする、ポリマーに担持されたアリールジシクロヘキシルホスフィンリガンドを含む触媒の4段階合成が、開発された(Glegola, K.; Framery, E.; Pietrusiewicz, K. M.; Sinou, D. Adv. Synth. Catal. 2006, 348, 1728)。そこでは、単一の不活性化された塩化アリールの使用がより低い、さらにはゼロの収量をもたらしたことが報告されている。
【0013】
したがって、パラジウムと共に再利用することができ、アクセスが容易であり、特に塩化アリールとボロン酸との有効なSuzukiカップリングを行うことを可能にする不均一系触媒を開発する真の必要性がある。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、少なくともいくつかの前述の欠点を解消することを課題とする。
この目的のために、本発明は、新規な再利用可能な、ポリマーに担持されたパラジウム触媒を対象とする。これらの触媒は、市販の試薬から開始して大規模で迅速かつ容易に合成され、Suzukiカップリング、特に活性化された、および不活性化された塩化アリールおよび好ましくはハロアリールおよび/またはアリールボロン酸が、特に無水でない条件下で関与するものに有効である。
【0015】
したがって、本発明は、C−Cカップリング反応を触媒することができる不均一系パラジウム触媒の合成方法であって、
式−PR
式中Rは任意に置換されたアルキル基または任意に置換されたシクロアルキル基を表し、Rは任意に置換されたアリール基または任意に置換されたヘテロアリール基を表す、
で表される基が共有結合的に固定された固体担体を提供すること、および
触媒的に有効な量のパラジウムをこのようにして置換された前記担体中に導入すること
から本質的になる段階を含む、前記方法を対象とする。
【0016】
このようにして置換された前述の担体中に前記の触媒的に有効な量のパラジウムを導入することは、式−PRで表される前述の基において有利になされる。
本発明はまた、本発明の方法を実行することにより得られる不均一系触媒、即ち2個の炭素spの間のC−Cカップリング反応を触媒することができ、固体担体を好ましくは有機ポリマーまたはコポリマーの形態で含み、少なくとも1つの基−PRを有し、式中RおよびRは本記載において定義した通りであり、触媒的に十分な量のパラジウムを有し、有利には前記1または2以上の基−PRにおいて固定されている不均一系パラジウム触媒を対象とする。
【0017】
最後に、本発明はまた、特にハロゲン化アリールまたはハロゲン化ヘテロアリールと、アリールボロン酸またはヘテロアリールボロン酸とのSuzukiカップリング反応、これにより前記ハロゲン化アリールまたはハロゲン化ヘテロアリールおよび/またはアリールボロン酸またはヘテロアリールボロン酸は、1つまたは2つ以上の電子供与置換基または電子求引置換基を担持することができ、ここで前記ハロゲン化物が好ましくは塩化物である、前記反応を触媒するための本発明の触媒の使用を対象とする。
【0018】
本発明は、以下の記載を用いて一層良好に理解され、これは好ましい態様に関し、非限定的な例により提供される。
【0019】
したがって、本発明は、C−Cカップリング反応を触媒することができる不均一系パラジウム触媒の合成方法であって、
式PR
式中Rは任意に置換されたアルキル基または任意に置換されたシクロアルキル基を表し、Rは任意に置換されたアリール基または任意に置換されたヘテロアリール基を表す、
で表される基が共有結合的に固定された固体担体を提供すること、および
触媒的に有効な量のパラジウムをこのようにして置換された前記担体中に導入することから本質的になる段階を含む、前記方法を対象とする。
【0020】
このようにして置換された前述の担体中に前記の触媒的に有効な量のパラジウムを導入することを、式−PRで表される前述の基において、特に錯体−PRPdを生成することにより有利に行う。
【0021】
アルキルの用語は、直鎖状または分枝状であり、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子を含み、最も好ましくはtert−ブチル基である炭化水素鎖を指す。
シクロアルキルの用語は、3〜11個の炭素原子を含み、任意に1つまたは2つの不飽和により不飽和である、単環式、二環式または三環式の炭化水素化合物を指す。
【0022】
について、アリールの用語は、少なくとも1つの芳香族中心を含み、6〜20個の炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子を含み、より好ましくはフェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニルまたは4−メチルフェニルの群により形成される群から選択される基である基を指す。
について、ヘテロアリールの用語は、環の少なくとも1つが芳香族であり、これにより前記基が、5〜11個の結合および、窒素、酸素および硫黄から選択される1〜4個のヘテロ原子を含む、単環式または二環式基を指す。
【0023】
アルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールの用語に指定される「任意に置換されている」の表現は、これらの基が、同一であるか異なっており、以下の群:アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アリール、モノアルキルアミノまたはジアルキルアミノから選択される1つ〜4つの置換基により置換され得ることを意味し、ここで
【0024】
・アルキルは、直鎖状または分枝状であり、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜12個の炭素原子、より好ましくは1〜8個の炭素原子を含む炭化水素鎖を指し、
・アルコキシ、アルキルチオ、モノアルキルアミノまたはジアルキルアミノは、直鎖状または分枝状の1または2以上のアルキル鎖が各々、1〜8個の炭素原子を含む、アルキル−オキシ、アルキル−チオ、アルキル−アミノまたはジアルキル−アミノ基を指し、また、
・アリールは、少なくとも1つの芳香族中心を含み、6〜20個の炭素原子、好ましくは6〜10個の炭素原子を含む基を指す。
【0025】
有利には、固体担体は、有機ポリマーまたは有機コポリマーであり、好ましくは、有機担体は、スチレンおよびジビニルベンゼンのコポリマーであるかまたはこれを含む。
1つの変形態様において、有機担体は、ポリスチレンとポリ(エチレンオキシド)とのブロックコポリマーであるかまたはこれを含む。
【0026】
第1の観点において、本発明の方法は、Rが任意に置換されたアルキル基または任意に置換されたシクロアルキル基を表し、Rが任意に置換されたアリール基または任意に置換されたヘテロアリール基を表し、触媒的に有効な量のパラジウムをこのように置換された前記担体中に導入することを特徴とする。前記パラジウムの導入を、式−PRで表される前述の基において行うことができる。
【0027】
有利には、Rは、C〜C20アルキル基、好ましくはC〜C12アルキル基、より好ましくはC〜Cアルキル基および、最も好ましくはtert−ブチル基を表す。
さらに、本発明の方法は、Rが、C〜C20アリール基、好ましくはC〜C12アリール基、より好ましくはC〜C10アリール基および、最も好ましくは、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニルまたは4−メチルフェニル基により形成される群から選択される基であることを特徴とする。
【0028】
本発明の方法はまた、担持触媒中のパラジウム含有量が前記担持触媒の5質量%以下になるように、式−PRで表される前記基を有する固体担体を、少なくとも1種の塩または少なくとも1種のパラジウム錯体の溶液、好ましくはPd(PPh溶液で処理することによって、パラジウムを導入することを特徴とする。
【0029】
以下により詳細に記載する特定の態様において、本発明の方法は、パラジウム導入処理の前に、本質的に部分的にハロゲン化された合成樹脂からなる固体担体を利用可能にし、前記担体のハロゲン原子の少なくとも一部を、一般式RPLiで表される化合物により置換し、次にパラジウムをこのようにして得られる前記置換された担体中に、好ましくは前記パラジウムを含む溶液でこれを処理することにより導入することを特徴とする。
【0030】
有利には、合成樹脂は、塩素化および/または臭素化されている。
本発明はまた、本発明の方法を実行することにより得られる不均一系パラジウム触媒、即ち2個の炭素spの間のC−Cカップリング反応を触媒することができ、固体担体を好ましくは有機ポリマーまたはコポリマーの形態で含み、少なくとも1つの基−PRを有し、式中RおよびRは本記載において定義した通りであり、前記1または2以上の基−PRにおいて固定されている触媒的に十分な量のパラジウムを有する、不均一系パラジウム触媒を対象とする。
【0031】
好ましくは、本発明の方法を実行することにより得られる触媒は:
・Rがtert−ブチル基であり、Rがフェニル基であり、
・Rがtert−ブチル基であり、Rが2−メチルフェニル基であり、
・Rがtert−ブチル基であり、Rが3−メチルフェニル基であり、
・Rがtert−ブチル基であり、Rが4−メチルフェニル基であり、
・Rがtert−ブチル基であり、Rがナフチル基であり、または
・Rがtert−ブチル基であり、Rがtert−ブチル基である
ことを特徴とする。
【0032】
有利には、担体は、ポリスチレン樹脂、好ましくは名称「Merrifieldポリスチレン樹脂」の下で知られている樹脂またはポリスチレンおよびポリ(エチレンオキシド)樹脂、好ましくは名称「Tentagel樹脂」の下で知られている樹脂である。
本発明はまた、ハロゲン化アリールまたはハロゲン化ヘテロアリールと、アリールボロン酸またはヘテロアリールボロン酸とのSuzukiカップリング反応を触媒するための本発明の触媒の使用を対象とし、ここで、前記ハロゲン化アリールまたはハロゲン化ヘテロアリールおよび/またはアリールボロン酸またはヘテロアリールボロン酸は、1つまたは2つ以上の電子供与置換基または電子求引置換基を担持することができ、前記ハロゲン化物が好ましくは塩化物である。
【0033】
「アリールボロン」または「ヘテロアリールボロン」は、Rについて上記で定義したとおりのアリールまたはヘテロアリール基であると定義され、これにより各々は基−B(OH)を有する。
好ましくは、カップリング反応を、トルエンおよび水をベースとする溶媒中で、65℃〜110℃の温度の下で、少なくとも1種のフッ化アルカリの存在下、好ましくはフッ化セシウムの存在下で、行う。
他の観点において、カップリング反応を、少なくとも1種の炭酸含有塩基、好ましくは炭酸セシウムおよび/または炭酸ナトリウムを加えて行う。
【0034】
好ましくは、本発明の使用は、塩化アリールが、任意に1つもしくは2つ以上の電子供与基もしくは電子求引基により置換されている4−クロロアセトフェノンであること、塩化アリールが、任意に1つもしくは2つ以上の電子供与基もしくは電子求引基により置換されている2−クロロピリジンであるという事実、または塩化アリールが、任意に1つもしくは2つ以上の電子供与基もしくは電子求引基により置換されているクロロベンゼンであるという事実を特徴とする。
【0035】
同様に、当該使用は、アリールボロン酸が、任意に1つもしくは2つ以上の電子供与基もしくは電子求引基により置換されているフェニルボロン酸であること、またはヘテロアリールボロン酸が、任意に1つもしくは2つ以上の電子供与基もしくは電子求引基により置換されている3−チオフェンボロン酸であることを特徴とする。
有利には、カップリング反応において、0.01ミリ当量〜5ミリ当量の、触媒中に含まれる担持パラジウムの量を、用いる。
【0036】
本発明の範囲内で、特に、ゲルタイプの樹脂上に担持されたパラジウム触媒を、2種が共に商業的に入手できるMerrifieldポリスチレン樹脂(PS−CHCl樹脂)または臭素化されたTentagel 樹脂(PS−PEG−Br樹脂)を用いることにより、合成した。後者は、高温の芳香族溶媒中で起こるパラド触媒反応のための活性部位に対する良好なアクセス可能性を可能にする。本発明の範囲内で、アルキルアリールホスフィノリガンドのグラフティングを、研究した。
【0037】
実用的な方法では、担持触媒の合成を、例えば2段階で行うことができる:Merrifield樹脂またはTentagel 樹脂のハロゲン原子の、アルキルアリール−ホスフィノ−リチウムRPLi(式中、RおよびRは前に定義したとおりである)による置換による、リン酸塩リガンドのグラフト、続いて可溶性パラジウム錯体を用いたパラジウムの導入(スキーム1)。
ジアリールホスフィノポリスチレン上に担持されたパラジウム触媒に関して本出願人が提示したさらなる研究は、塩化アリールとアリールボロン酸との間のSuzukiカップリングにおいて乏しい結果をもたらした。
【0038】
上記で言及した、特に好ましいプロセスの範囲内で用いるRPLi化合物を、例えば、リチウムおよびクロロホスフィン類RPCl(式中、RおよびRは前に定義したとおりである)から得ることができる。後者を、アルキルまたはアリールリチンの、ジクロロアリールまたはジクロロアルキル−ホスフィンとの反応により、発生させることができる。例として、反応条件は、−モデル担体として−共に一般的であり、商業的に入手できる製品であるtert−ブチルリチウムおよびジクロロフェニルホスフィンを用いることにより、開発された。非限定的例として提供する1つの特に有効な合成プロセスは、−40℃にて、1当量のジクロロフェニルホスフィンを、tert−ブチルリチウムをシクロヘキサンに溶解した溶液に加えることにある。クロロホスフィン類がしばしば空気に対して敏感であるため、これらの精製はしばしば困難かつ面倒である。次に、次の段階を直接実行することを可能にする手順が開発された。このように、tert−ブチルリチウムとジクロロフェニルホスフィンとの反応の後、反応媒体を遠心分離して、リチウム塩類を除去し、上清を除去し、溶媒を蒸留により除去する。
【0039】
このようにして得られた粗製のクロロホスフィンは、90%より高い純度を有し(31PおよびH NMRにより決定した)、直接塩素−リチウム交換段階に関与させて、化合物RPLiを生成することができる。次に、後者を、25℃にて72時間Merrifield樹脂と反応させる。
パラジウムを最終的に、Pd(PPhを100℃にてトルエン中で反応させることによりポリマー中に導入して、C1担持触媒を得る(スキーム1)。
【0040】
触媒C1に対して行った元素分析により、導入するパラジウムの量の95%より大きい比率がポリマー担体に固定されることが示された。この反応シーケンスは、10gの触媒C1を合成するために、容易に適用された。また、このようにして得られた触媒C1が空気および湿気に対して完全に安定であり、使用および保存について特別な予防措置を何ら必要としない点を指摘しておくべきである。
【0041】
次に、上記の合成方法は、担持触媒C2〜C5の調製において、好首尾に移された(スキーム1および2を参照)。この触媒C5は、同一の基RおよびRを有するリン原子を含み、本発明の一部ではない。
さらに、触媒C6を、C1と同様に、いわゆる「Merrifield」ポリマーを臭素化された「Tentagel 」ポリマーで交換することにより調製した(スキーム2を参照)。
【0042】
【化1】

C1:樹脂PS、R=tert−ブチル;R=フェニル
C2:樹脂PS、R=tert−ブチル;R=2−メチル−フェニル
C3:樹脂PS、R=tert−ブチル;R=3−メチル−フェニル
C4:樹脂PS、R=tert−ブチル;R=1−ナフチル
C5:樹脂PS、R=R=tert−ブチル
● 架橋したポリスチレン(PS)、スチレンとジビニルベンゼンとのコポリマー
スキーム1 担持パラジウム触媒C1〜C5の合成
【0043】
【化2】

● 樹脂PS ○ PS−PEG樹脂
スキーム2 合成された担持触媒
【0044】
反応条件を、担体の例として、4−クロロアセトフェノン、フェニルボロン酸(固体状態において、フェニルボロン酸は三量体ボロキシンの形態にあり、これは水性媒体中で酸に変換される)および触媒C1を用いることにより、開発した。
Suzukiカップリングを、トルエン/EtOH/HO 5:1:1(容積比)の混合物中で、炭酸ナトリウムを塩基として用いることにより行った。反応粗製物の収率を、H NMRにより推定した(表1を参照)。
【0045】
表1 4−クロロアセトフェノンとフェニルボロン酸とのパラジウム触媒カップリング
【化3】

【表1】

(1):触媒のパラジウム含量を、元素分析により決定した。
(2):1.0当量の4−クロロアセトフェノン、1.1当量のフェニルボロン酸、1.2当量のNaCOおよび示した量のパラジウムを用いた。
(3):反応粗製物の収率を、H NMRにより計算した。
【0046】
樹脂PSに担持された、0.3質量%のパラジウムを含む触媒C1により、4−クロロアセトフェノンとフェニルボロン酸との全体的な反応を、2.0ミリ当量の担持パラジウムの存在下で得ることが、可能になる(エントリー1)。1.0ミリ当量のパラジウムを用いることにより、収率の73%への低下がもたらされる(エントリー2)。ポリマー担体に対してグラフトされるパラジウムの量が0.1%に過ぎない際に、触媒C1のより良好な反応性が観察される。この場合において、収率は、0.5ミリ当量の担持パラジウムの存在下においても定量的である(エントリー3)。しかし、パラジウムの量を0.1ミリ当量に減少させることにより、収率の低下がもたらされる(エントリー4)。
【0047】
C1よりも妨害された触媒C2〜C5は、2.0ミリ当量の担持パラジウムの存在下(エントリー1および5〜8)で比較的有効ではない。次に、ポリマー担体の性質を、担体PSを担体PS−PEGで交換することにより修正した。対応する触媒C6が、0.5ミリ当量のパラジウムの存在下でC1と同等に有効であることを、注記する(エントリー3および9)。しかし、触媒C6は、導入されるパラジウムの量が0.1ミリ当量に過ぎない場合に、C1よりも良好な反応性を提供する;このようにして、98%の収率が得られる(エントリー4および10)。0.05ミリ当量のパラジウムを用いることにより(C6)、収率は尚高く、87%に達する(エントリー11)。最後に、温度を65℃に低下させることにより、収率のわずかな低下がもたらされる(エントリー12)。
【0048】
ポリマーに担持されたパラジウム触媒のリサイクル:
触媒をリサイクルし、次に再利用する可能性をまた、本発明の構成内で研究した。したがって、Suzukiカップリング反応の後に、触媒を濾過し、次に洗浄し、最後に真空の下で乾燥した。これを次に、4−クロロアセトフェノンとフェニルボロン酸との新たなSuzukiカップリングにおいて再利用する。いくつかの反応条件(A〜E)を開発し、次に試験した(表3を参照)。
【0049】
表2 C1およびC6触媒のリサイクル試験
【化4】

条件A:PhB(OH)(1.1当量)、NaCO(1.2当量)、0.5ミリ当量のPd(Cl)、トルエン/EtOH/HO 5:1:1、100℃、20時間
条件B:PhB(OH)(1.4当量)、CsCO(1.55当量)、2.0ミリ当量のPd(Cl)、トルエン(+10μlのHO)、100℃、20時間
条件C:PhB(OH)(1.4当量)、CsCO(1.55当量)、3.0ミリ当量のPd(Cl)、トルエン(+10μlのHO)、65℃、20時間
条件D:PhB(OH)(1.4当量)、CsF(1.55当量)、4.0ミリ当量のPd(Cl)、トルエン(+10μlのHO)、100℃、20時間
条件E:PhB(OH)(1.1当量)、NaCO(1.2当量)、1.0ミリ当量のPd(C6)、トルエン/EtOH/HO 5:1:1、100℃、20時間
【表2】

(1)0.1質量%のパラジウムにおける触媒C1またはC6。
(2)反応粗製物の収率を、H NMRにより計算した。
【0050】
前に開発された反応条件(条件A)を用いることにより、収率の低下が、担持触媒C1の第2の使用の間に観察される。次に、観察された収率の低下を説明するためにC1の安定性試験を行った。この目的のために、C1を先ず、トルエン/EtOH/HOの混合物中で20時間100℃に加熱した。次に、4−クロロアセトフェノン、フェニルボロン酸およびNaCOを、連続的に加え、反応媒体を100℃にて20時間加熱した。その後観察される収率は30%である。この結果は、触媒C1が高温のプロトン性溶媒中で劣化することを示すと見られる。この場合において、C1を非プロトン性溶媒中で用いることを可能にする異なる反応条件を用いることが、好適である。
【0051】
この目的のために、4−クロロアセトフェノンとフェニルボロン酸とのSuzukiカップリング反応をまた、トルエン中で100℃にてまたは65℃にて、微量の水(10μl)の存在下で塩基としてCsCOを用いることにより(表2、条件BおよびC)行うことができることが、示された。したがって、C1の第2の使用の後のカップリングの収率は、顕著に改善される。
より良好なリサイクル結果を、塩基としてCsFを用いることにより(表2、条件D)得ることができる:したがって、触媒C1を、各々の使用について94%より高い収率で、7回よりも多く用いることができる。
【0052】
さらに、CsFの存在下での(条件D)パラジウムの損失は、導入されるパラジウムの量の0.1質量%の程度に過ぎないことが示された。これらの条件下で、より少量のパラジウムを用いることは、収率の減少を引き起こすと見られる。
プロトン性溶媒へのより良好な親和性を提供する触媒C6のリサイクルもまた、評価し(表2、条件E)、これにより、第4の使用の後のSuzukiカップリングの収率は、依然として87%である。
【0053】
他のアリールボロン酸および塩化アリールの使用への拡張:
非限定的な例により、0.1質量%のパラジウムを含む担持触媒C1の使用は、種々の塩化アリール類と種々のボロン酸類とのSuzukiカップリングに拡張された(表3を参照)。
【0054】
表3 種々の塩化アリール類とアリールボロン酸類とのパラジウム触媒カップリング
【化5】

【表3】

(1)1.0当量の塩化アリール、1.4当量のボロン酸、1.55当量のCsFおよび4ミリ当量のPdを用いた。
(2)反応粗製物をシリカゲルカラム上で精製した後に計算された単離された収率。
(3)EtOH0.5mlの反応媒体中への添加。
【0055】
担持触媒C1(0.1%のパラジウム)を、種々のアリールボロン酸と4−クロロアセトフェノンとのSuzukiカップリング(エントリー1〜6)のために、好首尾に用いることができる。さらに、このカップリングを、他の電子求引置換基(エントリー7〜9)または電子供与置換基(エントリー11〜15)を担持する種々の塩化アリール類の使用に拡張することができる。注目すべきことに、基が密集している基質が関与するカップリングもまた可能である(エントリー4、14および特に15)。
【0056】
ほとんどの場合において、シリカゲルの単なる濾過により、カップリング生成物を精製することが可能になる。先に開発された反応条件を用いることにより、Suzukiカップリングはまた、それぞれ88%および64%の収率で、2−クロロピリジンおよび3−チオフェンボロン酸を用いて好首尾に拡張された(スキーム3)。
【0057】
【化6】

スキーム3 2−クロロピリジンおよび3−チオフェンボロン酸の使用へのSuzukiカップリングの拡張
【0058】
Suzukiカップリングにおいて塩化アリールを臭化アリールまたはヨウ化アリールの代わりに用いることにより、有機合成において産業的規模で生産費用を低下させるように特定の利点が提供される。
【0059】
本発明の不均一系パラジウム触媒は、数種の現在の触媒とは対照的に、市販用の製品から大規模で容易に調製することができる。これにより、特に、塩化アリール類とボロン酸類との有効なSuzukiカップリングを発生させることが可能になる。含まれるパラジウムの量は、比較的少量であり、カップリング収率は、Buchwaldにより記載されているものと匹敵する(Walker, S. D. et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 1871)。
最後に、開発された不均一系触媒を、収率を低下させずに容易にリサイクルし、その後7回より多く再利用することができる。
【0060】
触媒C1の調製:
a)tert−ブチルクロロフェニルホスフィンの合成。
ジクロロフェニルホスフィン(26.0mmol、3.53ml、1.0当量)を、数回に分けて−40℃にて、無水シクロヘキサン(90ml)と混合した、1.5Mtert−ブチルリチウムのペンタン溶液(31.2mmol、20.8ml、1.2当量)に、アルゴン雰囲気下で加える。反応媒体を、−40℃にて1時間、次に室温で室温20時間撹拌する。次に、反応媒体を、アルゴン雰囲気下で遠心分離する(3000rpm、3分間)。上清を、アルゴン雰囲気下で加熱したフラスコ中に移送する。溶媒をアルゴンの下で蒸留し、クロロホスフィンを、真空(0.1mbar)の下で20時間乾燥する。粗製のクロロホスフィンに対して行った31PおよびH NMR分析により、後者が90%より高い純度で得られることが、示された。前記クロロホスフィンは、塩素−リチウム交換の以降の反応に直接関与している。
【0061】
b)(tert−ブチル)フェニルホスフィノポリスチレンの合成
前に得られた粗製のクロロホスフィン(26.0mmol、10.1当量)を、無水THF(60ml)で希釈し、次にこれを、リチウムチップ(78.0mmol、540mg、30.2当量)にアルゴン雰囲気下で加える。反応媒体を、室温で20時間撹拌する。次に、THFに溶解した赤色のアニオン溶液を、無水THF(60ml)に懸濁させたMerrifield樹脂懸濁液(原料:0.86mmol.g−1の塩素、3g、1当量)に、アルゴン雰囲気下で移送する。反応媒体を、室温で室温72時間撹拌する。これを次に、容積比で2:1であるアセトン/HO混合物(30ml)を加えることにより中和する。樹脂を真空下で濾過し、水、アセトン、クロロホルム、トルエンおよびジエチルエーテルで連続的に洗浄する。次に、このようにして得られた樹脂を、容積比で3:1であるEtOH/トルエン混合物(50ml)中で20時間還流加熱する。室温に室温冷却した後に、樹脂を真空下で濾過し、トルエンで、および次にエーテルで洗浄し、最後に真空(0.1mbar)の下で20時間乾燥する。
【0062】
c)担持触媒C1の合成(0.1質量%のパラジウムにて)
前に得られた樹脂(2.60g)を、無水トルエン(120ml)中にアルゴン雰囲気下で懸濁させる。Pd(PPh(28.1mg)を、1回で加える。反応媒体を脱気し、アルゴン雰囲気下に配置し、最後に20時間還流加熱する。室温室温に冷却した後に、触媒C1を、トルエン(3回)で、次にジエチルエーテル(3回)で洗浄する。これを最後に、真空(0.1mbar)下で20時間乾燥する。空気および湿気に対して完全に安定である担持触媒C1(淡黄色の樹脂)が、このようにして得られる。
【0063】
d)4−クロロアセトフェノンとフェニルボロン酸とのSuzukiカップリング
前に調製した担持触媒C1(277mg、4ミリ当量のパラジウム、0.1質量%のパラジウムにおける樹脂)を、4−クロロアセトフェノン(0.65mmol、84μl、1.0当量)、フェニルボロン酸(0.91mmol、111mg、1.4当量)およびCsF(1.01mmol、153mg、1.55当量)をトルエン混合物(3.5ml)/HO(10μl)に溶解した溶液に加える。反応媒体を、アルゴン下で脱気し、次に100℃に20時間加熱する。室温に冷却した後に、触媒C1を真空の下で濾過し、酢酸エチル(3×20ml)で3回洗浄する。有機相を水で洗浄し、MgSOで乾燥し、次に真空下で再濃縮した(reconcentrate)。粗製の反応混合物を、最後にシリカゲル上で濾過して、4−フェニルアセトフェノン(0.62mmol、122mg、白色固体)を得、単離された収率は96%である。
【0064】
e)パラジウムの損失
パラジウムの損失を、以下のようにして決定する:粗製の反応混合物を減圧下で蒸発させ、残留物を濃HSOおよび発煙HNOにより還流下で攻撃し、パラジウムを、最終的に得られる水溶液中に測定する。
【0065】
当然、本発明は、記載した態様に限定されない。特に、種々の要素の構成の観点から、または技術的に等価なものの置換により、これにより本発明の保護の範囲を超えずに、変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C−Cカップリング反応を触媒することができる不均一系パラジウム触媒の合成方法であって、
式−PR
式中Rは任意に置換されたアルキル基または任意に置換されたシクロアルキル基を表し、Rは任意に置換されたアリール基または任意に置換されたヘテロアリール基を表す、
で表される基が共有結合的に固定された固体担体を提供すること、および
触媒的に有効な量のパラジウムをこのようにして置換された前記担体中に導入すること
から本質的になる段階を含む、前記方法。
【請求項2】
固体担体が有機ポリマーまたは有機コポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機担体がスチレンおよびジビニルベンゼンのコポリマーであるかまたはこれを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
有機担体がポリスチレンとポリ(エチレンオキシド)とのブロックコポリマーであるかまたはこれを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
が、C〜C20アルキル基、好ましくはC〜C12アルキル基、より好ましくはC〜Cアルキル基、および最も好ましくはtert−ブチル基を表す、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
が、C〜C20アリール基、好ましくはC〜C12アリール基、より好ましくはC〜C10アリール基、および最も好ましくはフェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基または4−メチルフェニル基からなる群から選択される基である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
担持触媒中のパラジウム含有量が前記担持触媒の5質量%以下になるように、式PRで表される基を有する固体担体を、少なくとも1種の塩または少なくとも1種のパラジウム錯体の溶液、好ましくはPd(PPh溶液で処理することによって、パラジウムを導入する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
パラジウム導入処理の前に、部分的にハロゲン化された合成樹脂から本質的になる固体担体を提供し、前記担体のハロゲン原子の少なくとも一部を、一般式RPLiで表される化合物により置換し、その後、パラジウムをこのようにして得られた前記置換された担体中に、好ましくはパラジウムを含む溶液でこれを処理することにより導入する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
合成樹脂が塩素化および/または臭素化されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法を実行することにより得られる、不均一系パラジウム触媒。
【請求項11】
がtert−ブチル基であり、Rがフェニル基である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法を実行することにより得られる触媒。
【請求項12】
がtert−ブチル基であり、Rが2−メチルフェニル基である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法を実行することにより得られる触媒。
【請求項13】
がtert−ブチル基であり、Rが3−メチルフェニル基である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法を実行することにより得られる触媒。
【請求項14】
がtert−ブチル基であり、Rが4−メチルフェニル基である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法を実行することにより得られる触媒。
【請求項15】
がtert−ブチル基であり、Rがナフチル基である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法を実行することにより得られる触媒。
【請求項16】
がtert−ブチル基であり、Rがtert−ブチル基である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法を実行することにより得られる触媒。
【請求項17】
担体が、ポリスチレン樹脂、好ましくは名称「Merrifieldポリスチレン樹脂」の下で知られている樹脂である、請求項10〜16のいずれかに記載の触媒。
【請求項18】
担体が、ポリスチレンおよびポリ(エチレンオキシド)の樹脂、好ましくは名称「Tentagel 樹脂」の下で知られている樹脂である、請求項10〜16のいずれかに記載の触媒。
【請求項19】
Suzukiカップリング反応、例えばハロゲン化アリールまたはハロゲン化ヘテロアリールと、アリールボロン酸またはヘテロアリールボロン酸とのSuzukiカップリング反応を触媒するための本発明の触媒の使用であって、ここで、
前記ハロゲン化アリールまたはハロゲン化ヘテロアリールおよび/またはアリールボロン酸またはヘテロアリールボロン酸は、1つまたは2つ以上の電子供与置換基または電子求引置換基を担持することができ、前記ハロゲン化物が好ましくは塩化物である、
前記使用。
【請求項20】
反応を、トルエンおよび水をベースとする溶媒中、65℃〜110℃の温度にて、少なくとも1種のアルカリ性フッ化物の存在下で、好ましくはフッ化セシウムの存在下で行う、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
反応を、少なくとも1種の炭酸含有塩基、好ましくは炭酸セシウムおよび/または炭酸ナトリウムを加えて行う、請求項19または20に記載の使用。
【請求項22】
塩化アリールが、任意に1つまたは2つ以上の電子供与基または電子求引基により置換されている4−クロロアセトフェノンである、請求項19〜21のいずれかに記載の使用。
【請求項23】
塩化アリールが、任意に1つまたは2つ以上の電子供与基または電子求引基により置換されている2−クロロピリジンである、請求項19〜21のいずれかに記載の使用。
【請求項24】
塩化アリールが、任意に1つまたは2つ以上の電子供与基または電子求引基により置換されているクロロベンゼンである、請求項19〜21のいずれかに記載の使用。
【請求項25】
アリールボロン酸が、任意に1つまたは2つ以上の電子供与基または電子求引基により置換されているフェニルボロン酸である、請求項19〜24のいずれかに記載の使用。
【請求項26】
ヘテロアリールボロン酸が、任意に1つまたは2つ以上の電子供与基または電子求引基により置換されている3−チオフェンボロン酸である、請求項19〜24のいずれかに記載の使用。
【請求項27】
0.01ミリ当量〜5ミリ当量の、触媒中に含まれる担持パラジウムの量を用いる、請求項19〜26のいずれかに記載の使用。

【公表番号】特表2010−524661(P2010−524661A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503557(P2010−503557)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050639
【国際公開番号】WO2008/142333
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509286466)ユニヴェルシテ ドゥ オートゥ アルザス (1)
【出願人】(503466808)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィーク(セーエヌエールエス) (8)
【Fターム(参考)】