説明

不快味及び/又は不快臭の低減方法

組成物の不快味及び/又は不快臭の低減方法、及び、不快味及び/又は不快臭の低減剤を提供することを課題とし、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有せしめる不快味及び/又は不快臭の低減方法、この方法により得られる不快味及び/又は不快臭が低減された組成物、及び、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する不快味及び/又は不快臭の低減剤を提供することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有せしめる不快味及び/又は不快臭の低減方法、この方法により得られる不快味及び/又は不快臭の低減された組成物、及び、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する不快味及び/又は不快臭の低減剤に関するものである。
【背景技術】
一般に、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、化学工業品などの組成物は、その原料に由来したり、製造工程や保存時に発生する、それ特有の味、香りを有している。これらの味や香りの中には、ヒトに不快感をもたらす、いわゆる不快味や不快臭が存在するものがある。これら不快味及び/又は不快臭は、その組成物の嗜好性を左右する大きな要因の一つであることから、不快味及び/又は不快臭を低減することは、当業者にとって、極めて重要な問題とされてきた。
これらの問題点を解決するために、日木国特許第3304498号公報には、α,α−トレハロースを使用した、茶飲料の不快フレーバーの改良方法が開示されており、特開2001−316246号公報には、α,α−トレハロースとデキストリンを配合した、2価の鉄イオンの不快な錆味を抑えた、服用性良好な内服液が開示されている。また、本出願人は、特願2002−85546号明細書において、α,α−トレハロースによるアミノ酸の苦味の低減方法を開示した。さらに、本出願人は、特開平7−143876号公報、特開平8−73504号公報、特許第3182679号公報、特開2000−228980号公報で、α,α−トレハロース或いはその糖質誘導体が、飲食品などの品質改良剤、呈味改良剤、矯味剤などとして利用できることを開示した。しかしながら、これらの特許公報には、α,α−トレハロースの糖質誘導体が、組成物の持つ不快味及び/又は不快臭を低減する効果を有することについての具体的な記載やその有効量については何等記載されていない。
【発明の開示】
本発明は、組成物中の原料に由来する不快味及び/又は不快臭や、組成物の加工工程、殺菌工程や保存時などに発生する不快味及び/又は不快臭を低減させることにより、該組成物の経口摂取、その他方法で利用する際の嗜好性を向上させるための、不快味及び/又は不快臭の低減方法を提供することを第一の課題とし、不快味及び/又は不快臭の低減方法により得られる不快味及び/又は不快臭の低減された組成物を提供することを第二の課題とし、不快味及び/又は不快臭を有する組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤を提供することを第三の課題とするものである。
本発明者等は、前記課題を解決するために、各種糖質の利用に着目して鋭意研究した。その結果、組成物にα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有せしめることにより、その組成物の製造工程や保存時などに発生する不快味及び/又は不快臭を抑制すること、及び/又は、組成物のもつ不快味及び/又は不快臭をマスクすることにより、組成物の不快味及び/又は不快臭を低減できることを新たに見いだし、この発見に基づきさらに検討を加えて、本発明を完成した。すなわち、本発明は、組成物にα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有せしめることにより、その組成物のもつ不快味及び/又は不快臭を低減し、嗜好性を向上させ、該組成物を、経口摂取などで利用する際の不快感や苦痛を改善する方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明でいう不快味及び/又は不快臭を有する組成物とは、不快味及び/又は不快臭を有するものであれば何れでもよく、例えば、口中使用物、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨、化学工業品であり、また、糞尿や、汚水や汚泥、ゴミなどの生活廃棄物や産業廃棄物などであってもよく、臭いを発する、例えば、ヒト、動物、家具、調度、機械、器具などもこれに含まれる。
本発明でいう口中使用物とは、ヒト及び/又は動物が経口的に摂取するものであれば、何れでもよく、例えば、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料であり、また、チューインガム、口中清涼剤、マウスウオッシュ、練歯磨などのように、口腔内で使用された後、嚥下されることなく、口腔外に排出されるものであってもよい。
本明細書でいう組成物の製造に使用した原料に由来する不快味及び/又は不快臭としては、例えば、根菜、ピーマン、ニンジン、韮、ネギ、タマネギ、ニンニクなどの特有の臭いや味を有する野菜、青汁などの野菜ジュース、豆乳、マツの葉やタケのエキスなどの青臭み、魚卵、ウニなどを含む魚介類、レバーをはじめとする畜肉類やそれに含まれる血液成分などの生臭みや、それらから発生する揮発性及び/又は不揮発性のアルデヒド類やアミン類、硫化水素などによる生臭み、ゆで卵などの含硫アミノ酸やそれを含む蛋白質の分解に由来する硫化水素臭、カカオ豆やカカオ豆加工品を加熱した際に発生する低級アルデヒド類やブタンジオンに由来する異臭、2価及び/又は3価の鉄イオン、マグネシウム、カルシウム、ミョウバン、苦汁などのミネラルの金属味、苦味、渋味、チロシンやトリプトファンなどのアミノ酸の苦味やそれらを含有するペプチド、クロレラエキス、スッポンエキス、プロポリスエキス、ハーブエキスなどのエキス類、ビタミンBやビタミンBなどのビタミン類、ローヤルゼリー、蜂蜜などの不快味及び/又は不快臭や、薬草、生薬、抗生物質、合成医薬品、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸、グリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤などの化合物の不快味及び/又は不快臭をいい、スクラロース、ステビオシド、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル、アセスルファムカリウム、砂糖、果糖などの甘味料を経口摂取した際、その甘味が長時間後を引くような後味や特有の刺激味もこれに含まれる。また、組成物の製造工程、流通、貯蔵過程で発生するものとしては、米飯、牛丼の素、麺類などのレトルト系食品の製造工程、発泡酒、ビール、チーズ、ヨーグルト、フローズンヨーグルト、納豆、醤油、酢、パン、みりんなどの発酵系飲食品の製造工程、生野菜加工品などで発生する不快味及び/又は不快臭をいう。また、ペットボトルなどの透明或いは半透明の容器入りの飲料を長期間日向に放置した際や、缶詰の缶、ペットボトル、紙コップ、コーヒー用のペーパーフィルターなどに由来する不快味及び/又は不快臭もこれに含まれる。また、赤ちゃん、ペット、家畜などの尿や糞便、そられの分解物や腐敗物、体臭や加齢臭、農薬や他の薬剤に起因する不快臭、家具、家財、機械、器具などから発生する異臭なども含まれる。これらのもつ不快味及び/又は不快臭とは、えぐみ、渋味、苦味、カビ臭、けもの臭、ムレ臭、レトルト臭、加熱臭、アンモニア臭、青臭み、生臭み、ひね臭、金属味、錆味、カルキ臭、古米臭、発酵臭、発泡酒臭、日向臭、薬品臭、刺激臭、刺激味、異味、異臭、嫌味、嫌臭などと形容されるものをいう。
本発明の不快味及び/又は不快臭の低減方法において、不快味及び/又は不快臭の低減剤として組成物に含有せしめるα,α−トレハロースの糖質誘導体とは、分子内にα,α−トレハロース構造を有する3個以上のグルコースからなる非還元性オリゴ糖から選ばれる1種又は2種以上の糖質であれば、何れでもよく、より具体的には、α,α−トレハロース分子の少なくとも一方のグルコースに、モノ−グルコース、ジ−グルコース、トリ−グルコース及びテトラ−グルコースから選ばれる何れかが結合したものをいう。例えば、先に、本出願人が特開平7−143876号公報、特開平8−73504号公報、特許第3182679号公報、及び特開2000−228980号公報などにおいて開示した、α−マルトシルα−グルコシド、α−イソマルトシルα−グルコシドなどのモノ−グルコシルα,α−トレハロースや、α−マルトトリオシルα−グルコシド(別名α−マルトシルα,α−トレハロース)、α−マルトシルα−マルトシド、α−イソマルトシルα−マルトシド、α−イソマルトシルα−イソマルトシドなどのジ−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトテトラオシルα−グルコシド(別名α−マルトトリオシルα,α−トレハロース)、α−マルトシルα−マルトトリオシド、α−パノシルα−マルトシドなどのトリ−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトペンタオシルα−グルコシド(別名α−マルトテトラオシルα,α−トレハロース)、α−マルトトリオシルα−マルトトリオシド、α−パノシルα−マルトトリオシドなどのテトラ−グルコシルα,α−トレハロースなど、グルコース重合度が3乃至6からなるα,α−トレハロースの糖質誘導体が好ましい。
これらのα,α−トレハロースの糖質誘導体は、その由来や製法は問わず、発酵法、酵素法、有機合成法などにより製造されたものでもよい。これらの糖質は、本出願人が、特開平7−143876号公報、特開平8−73504号公報、特許第3182679号公報、及び特開2000−228980号公報で開示した酵素法により澱粉や澱粉の部分加水分解物から直接製造してもよく、或いは、特開平7−143876号公報で開示したマルトテトラオース生成アミラーゼ、特公平7−14962号公報で開示したマルトペンタオースを高率に生成するα−アミラーゼ或いは特開平7−236478号公報で開示したマルトヘキサオース・マルトヘプタオース生成アミラーゼなどを併用することにより、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースなどの特定のオリゴ糖の含量を高めた澱粉部分加水分解物とし、これに特開平7−143876号公報で開示した非還元性糖質生成酵素を作用させて製造することも随意である。また、殿粉、或いは、澱粉の部分加水分解物とα,α−トレハロースとを含有する溶液にシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼなどのグリコシル基の転移能を有する酵素を作用させて調製することも随意である。これらの方法により得られる反応液は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する糖質を含む溶液として、そのまま、又は、部分精製して、或いは、高純度に精製して使用することも随意である。また、これらの製造方法は、豊富で安価な澱粉質を原料とし、高効率かつ安価にα,α−トレハロースの糖質誘導体を製造できることから、工業的に有利に利用できる。
前述のα,α−トレハロースの糖質誘導体のなかでも、不快味及び/又は不快臭の低減作用の特に強い、モノ−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトシルα,α−トレハロース、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース及びα−マルトテトラオシルα,α−トレハロースなど、分子の末端にトレハロース構造を持つ糖質が好ましく、とりわけ、α−マルトトリオシルα−グルコシド(別名α−マルトシルα,α−トレハロース)を主成分として含有し、他に、α−マルトシルα−グルコシド(別名α−グルコシルα,α−トレハロース)、α−テトラオシルα−グルコシド(別名α−マルトトリオシルα,α−トレハロース)、α−グリコシルα−グルコシド(別名α−グリコシルα,α−トレハロース)から選ばれる1種又は2種以上を含有する糖質が望ましい。また、α−マルトシルα,α−トレハロースの糖質固形物当たり含量は、無水物換算で5質量%(以下、本明細書では特に断らない限り、「質量%」を単に「%」と表記する。)以上、好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上が望ましい。
また、前記糖質のうちα−マルトシルα−グルコシドやα−マルトテトラオシルα−グルコシドについては、特許第3182679号公報及び特開2000−228980号公報に開示されているように結晶状態のものも知られている。しかしながら、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減効果を発揮させるためには、例えば、シラップ状態やガラス状態などの非晶質状態で利用するのが望ましい。
本発明の不快味及び/又は不快臭の低減方法に使用する、不快味及び/又は不快臭の低減剤は、組成物中の不快味及び/又は不快臭の低減効果を発揮できればよく、有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体のみで構成されていてもよいし、例えば、α,α−トレハロースの糖質誘導体の製造工程において共存するグルコース、イソマルトース、マルトース、オリゴ糖、デキストリンなどの澱粉由来のα,α−トレハロースの糖質誘導体以外の糖質を含有していてもよい。更には、α,α−トレハロースの糖質誘導体とそれ以外の還元性糖質とを含む糖質を水素添加し、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存する還元性の糖質を、その糖アルコールに変換したものであってもよい。
また、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤は、有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体が、還元性澱粉部分分解物と比較して、還元性が低く安定であり、他の素材、特にアミノ酸やオリゴペプチド、ポリペプチド、蛋白質などのアミノ酸を有する物質と混合、加工しても、褐変することも、異味や異臭を発生することもなく、混合した他の素材を損なうことも少ない。また、還元性澱粉部分加水分解物の場合とは違って、還元力が低いにもかかわらず低粘度であり、デキストリンにみられる糊臭もなく、良質で上品な甘味を有しており、そのままで、各種組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として有利に使用することができる。必要ならば、分散性を高めたり、増量するなど、その使用目的に応じて、前記以外の還元性糖質、非還元性糖質、糖アルコール、高甘味度甘味料、水溶性多糖、無機塩、乳化剤、酸化防止剤、キレート作用を有する物質から選ばれる1種又は2種以上と併用することも随意である。更に必要であれば、公知の着色料、着香料、保存料、酸味料、旨味料、甘味料、安定剤、増量剤、アルコールなどの1種又は2種以上を適量併用することも随意である。
本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤に使用できる成分としては、例えば、ブドウ糖、マルトース、パラチノース、異性化糖などの還元性糖質、砂糖(ショ糖)、α,α−トレハロース、ネオトレハロース、イソトレハロース、同じ出願人が国際公開WO 02/24832号明細書、国際公開WO 02/10361号明細書、国際公開WO 02/072594号明細書などにおいて開示した環状四糖及び/又は環状四糖の糖質誘導体などの非還元性の糖質、粉飴、蜂蜜、メープルシュガー、砂糖結合水飴、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクトスクロースなどの糖質、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、パニトールなどの糖アルコール類、ジヒドロカルコン、ステビオシド、α−グリコシルステビオシド、レバウディオシド、グリチルリチン、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリンなどの高甘味度甘味料やグリシン、アラニンなどのような他の甘味料類、リン酸、ポリリン酸、或いは、それらの塩類など無機塩類の1種又は2種以上の適量と混合して使用してもよく、又、必要ならば、デキストリン、澱粉、乳糖などのような増量剤と混合して使用することもできる。更に、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどのような有機酸やそれらの塩類、及び/又は、エタノールなどのアルコール類、プルラン、レバン、アルギン酸ナトリウム、寒天、ゼラチン、カゼイン、アラビアガムやグアガムなどのガム類、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニールアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリデキストロースなどの水溶性高分子類の1種又は2種以上と組み合わせて使用することも随意である。なかでも、α,α−トレハロースは、不快味及び/又は不快臭の低減作用が強いので有利に利用できる。
本発明のα,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分とする不快味及び/又は不快臭の低減剤は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、総質量の約10%以上、望ましくは、約20%以上、更に望ましくは約30%以上含有するものが好適である。
本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤を組成物に含有せしめる量は、組成物の不快味及び/又は不快臭を低減できる量であればよく、特に制限はないが、通常、組成物の総質量に対して、α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、約0.6%以上、望ましくは約0.9%以上、更に望ましくは約1.2%以上を含有させるのが好適である。通常0.6%未満では、組成物の不快味及び/又は不快臭を低減するには不充分である。α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有させる量の上限については、対象とする製品の品質、機能或いは使用目的などの妨げとならない限り特に制限はない。
また、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤は、その形状を問わず、例えば、シラップ、マスキット、ペースト、粉末、固状、顆粒、錠剤などの何れの形状であってもよく、そのままで、又は、必要に応じて、増量剤、賦形剤、結合剤などと混合して、顆粒、球状、短棒状、板状、立方体、錠剤など各種形状に成型して使用することも随意である。
本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤は、対象とする組成物に含有せしめることにより、所期の効果を発揮することができるので、対象とする組成物の組成や使用目的を勘案して、原料の段階から製品の段階に至るまでの適宜の工程、或いは、完成した製品で利用することができる。本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤を、組成物に含有せしめる具体的な方法としては、例えば、混和、混捏、溶解、融解、分散、懸濁、乳化、逆ミセル化、浸透、晶出、散布、塗布、付着、噴霧、被覆(コーティング)、注入、浸漬、固化、担持などの公知の方法が適宜に選ばれる。また、例えば、飲食品のように、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤を含有するダシ、煮汁、たれ、調味料などの組成物で調理、或いは、処理する方法も、当然これに含まれる。さらに、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤は、紙タオルや濡れティシュなどに含浸させて、不快味及び/又は不快臭を有する組成物を包んだり、その表面を拭くことによっても、所期の効果を発揮させることもできる。
本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤は、例えば、米飯、牛丼の素、麺類などのレトルト系食品、根菜、野菜、青汁などの野菜ジュースや2価及び/又は3価の鉄イオン、マグネシウム、カルシウム、ミョウバン、ニガリなどのミネラル含有飲食品、チロシンやトリプトファンなどのアミノ酸やそれらを含有するペプチド、ビタミンBやビタミンBなどのビタミン類、薬草、生薬、医薬品、ニンニク、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸、肉類や、魚卵や魚介類、発泡酒、日本酒、ビール、リキュール、焼酎、ワイン、チーズ、ヨーグルト、納豆、醤油、パン、みりん、調味用アルコールなどの発酵系飲食品、もやし、スプラウトブロッコリー、アルファルファなどの発芽野菜、野菜加工品、焼き肉やウナギの蒲焼きなどのたれ、漬け物のもと、アミノ酸及び/又はビタミン含有飲食品やそれらを使用した加工品などに特有の、えぐみ、渋味、苦味、カビ臭、薬品臭、けもの臭、ムレ臭、レトルト臭、加熱臭、アンモニア臭、青臭み、生臭み、ひね臭、カルキ臭、アミン臭、アルデヒド臭、硫化水素臭、古米臭、発酵臭、発泡酒臭、薬品臭などで表現される、さらには、ペットボトルなどの透明或いは半透明の容器入りの飲料を長期間日向に放置した際に生じる異臭、缶詰の缶、ペットボトル、紙コップ、コーヒーのペーパーフィルター、ぬれタオル、ぬれティシュなどに由来する異臭やアルコール臭、体臭や加齢臭などの、いわゆる、異味・異臭、不快味・不快臭、或いは、嫌味・嫌臭などと表現される味や臭いを低減する効果や、スクラロース、ステビオシド、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル、アセスルファムカリウム、ジヒドロカルコン、グリシン、アラニン、砂糖、果糖、異性化糖など、経口摂取した際、その甘味や特有の刺激味が長時間後を引くような、甘味料に対してはその甘味の後味改善効果、飲食品、化粧品等に配合された乳化剤に由来する不快味及び/又は不快臭の抑制効果を有することから、これらを含有する飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品などの不快味及び/又は不快臭の低減剤として有利に使用できる。更に、生理用品、紙おむつ、ペットのトイレなどに使用される吸水ポリマーや砂などと併用することにより、該吸水ポリマーや砂の保水性をサポートするだけでなく、尿や糞便、それらの分解物や腐敗物に起因するアミン類、アルデヒド類、アンモニア、硫化水素などの硫黄化合物などに由来する異臭を低減する目的や、飼料、餌料、農薬やその他の薬剤、日用品、雑貨、化学工業品に起因する異臭の低減の目的で、不快臭の低減剤として使用することも随意である。
更には、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤は、家畜、家禽、ペット、その他蜜蜂、蚕、魚介類、エビ、カニなどの甲殻類、ウニ、なまこなどの棘皮動物、昆虫などの幼体や成体を飼育するための飼料、餌料などの不快味及び/又は不快臭の低減剤として使用することもできる。また、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤は、タバコ、練歯磨、口紅、リップクリーム、錠剤、トローチ、肝油ドロップ、口中清涼剤、口中香剤、うがい剤など各種固形物、ペースト状、液状などの嗜好物、化粧品、医薬部外品、医薬品などの組成物に含有せしめることにより、当該組成物の不快味及び/又は不快臭の低減、その品質保持や品質改良の目的で使用できるだけでなく、強い保湿性を有することから、グリセロールの代替として、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨、化学工業品などに利用することも随意である。
また、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤は、活性などを失い易い各種生理活性物質、又は、これを含む健康食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などに有利に適用できる。例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、ツモア・ネクロシス・ファクター−α、ツモア・ネクロシス・ファクター−β、マクロファージ遊走阻止因子、コロニー刺激因子、トランスファーファクター、インターロイキンIIなどのリンホカイン、インシュリン、成長ホルモン、プロラクチン、エリトロポエチン、卵細胞刺激ホルモンなどのホルモン、BCGワクチン、日本脳炎ワクチン、はしかワクチン、ポリオ生ワクチン、痘苗、破傷風トキソイド、ハブ抗毒素、ヒト免疫グロブリンなどの生物学的製剤、ペニシリン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、硫酸カナマイシンなどの抗生物質、チアミン、リボフラビン、L−アスコルビン酸、肝油、カロチノイド、エルゴステロール、トコフェロールなどのビタミン、リパーゼ、エラスターゼ、ウロキナーゼ、プロテアーゼ、β−アミラーゼ、イソアミラーゼ、グルカナーゼ、ラクターゼなどの酵素、薬用人参エキスをはじめとする各種生薬エキス、スッポンエキス、クロレラエキス、アロエエキスをはじめとする各種植物、プロポリスエキス、アガリクス、レイシ、メシマコブなどのキノコエキスなどのエキス類、ウイルス、乳酸菌、酵母などの生菌、ローヤルゼリーなどの各種生理活性物質、又は、それらを含有する組成物に含有せしめることにより、それらの持つ不快味及び/又は不快臭を低減するだけでなく、その分解や変性を抑制するので、活性の低下を抑制することができ、長期にわたり安定な、液状、ペースト状、シラップ状又は、固状の健康食品や化粧品、医薬部外品、医薬品などを容易に製造する目的に使用することも随意である。
また、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤を、粉末化基剤として使用し、青汁、野菜ジュース、果汁、茶抽出液、エキス類、各種のたれ類、調味料、油脂、アミノ酸、ミネラル、ビタミン類などの食品、医薬品、化粧品、その原材料、又は、加工中間物の溶液と混合して、噴霧乾燥、凍結乾燥、加熱乾燥などにより乾燥して、高品質の粉末組成物を調製することが可能であり、それを用いて、顆粒、錠剤など固状物はもちろんのこと、溶液、ペースト、マスキット状の組成物を製造することも有利に実施できる。また、これらの組成物は、有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体の持つ不快味及び/又は不快臭の低減作用により、これら乾燥品自体のもつ不快味及び/又は不快臭だけでなく、これらを乾燥する際や保存時に発生することのある不快味及び/又は不快臭が低減されるので、長期間保存した後も、乾燥直後の風味を保持することができる。
しかも、これらの粉末品を原料、或いは、中間加工品に使用して製造される最終製品の総質量に対して、α,α−トレハロースの糖質誘導体が、無水物換算で、0.6%以上、望ましくは0.9%以上、更に望ましくは1.2%以上含有されるように、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤を、その粉末組成物の調製時に加えるか、或いは、最終製品が完成する迄に、更に、追加することにより、これら粉末組成物を原料として調製される、例えば、青汁、野菜ジュース、茶飲料、スポーツ飲料などの清涼飲料、天つゆ、麺つゆ、本だしなどの調味料、ドリンク剤、健康補助飲食品などの最終製品のもつ不快味及び/又は不快臭、或いは、それら製品の保存時に生じる不快味及び/又は不快臭を低減することも有利に実施できる。
また、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体は、不快味及び/又は不快臭の低減作用に加えて、蛋白質の変性、澱粉の老化、脂質の酸化や分解などにより組成物の品質が劣化するのを抑制することができるだけでなく、通常、低甘味であり、しかも、酸味、塩から味、渋味、旨味、苦味などの他の呈味を有する各種物質とよく調和し、耐酸性、耐熱性も大きいので、一般の飲食物に使用しても、品質保持剤などとして有利に利用できる。これらの飲食品におけるα,α−トレハロースの糖質誘導体の含有量に、特に制限はない。通常、その飲食物の製造に砂糖、水飴、糖アルコールなどの糖質を使用する組成物にあっては、その糖質の2.5%以上を、望ましくは、5〜50%程度を、α,α−トレハロースの糖質誘導体で置き換えることにより、また、糖質を使用しない飲食物については、その嗜好性を低下させない範囲で、含有せしめ、該組成物の呈味を改善することも有利に実施できる。
以下、実験例に基づいて本発明の不快味及び/又は不快臭の低減方法についてより詳細に説明する。
実験1:2価の鉄イオンの鉄味及び/又は鉄臭抑制に及ぼす各種糖質の影響
実験1−1:試験液の調製
2価の鉄イオンの鉄味及び/又は鉄臭抑制に及ぼす各種糖質の影響を確認する実験は、以下のように行った。クエン酸鉄アンモニウム0.05556質量部(鉄分として約18%含有)、アスコルビン酸0.1質量部を、脱イオン水100質量部に溶解した鉄イオンを含む水溶液を調製した。これに、砂糖、含水結晶マルトース(株式会社林原生物化学研究所販売、純度99.0%以上)、含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原生物化学研究所販売、純度99.0%以上)、特開平7−291986号公報の実験B−1に記載の方法に準じて調製した含水結晶α−グルコシルα,α−トレハロース(純度99.0%以上)、及び、後述する実施例5の方法により調製した粉末状のα−マルトシルα,α−トレハロース(純度98.1%)から選ばれる何れかの糖質を、無水物換算で、濃度1.0%、2.0%、3.0%、4.0%或いは10.0%含有糖質溶液を等容量混合して、Fe++として5mg/100mlと、試験液の総質量に対して、無水物換算で、濃度0.5%、1.0%、1.5%、2.0%及び5.0%の何れかの濃度の糖質を含有する試験液を調製した。対照として、前記鉄イオンを含む水溶液に、糖質溶液の代わりに等容量の水を混合した水溶液を調製した。
実験1−2:鉄イオンの不快味及び/又は不快臭の低減作用の評価方法
試験液中の鉄イオン(Fe++として5mg/100ml)に由来する鉄味及び/又は鉄臭とよばれる不快味及び/又は不快臭の低減の程度を12人のパネラーによるパネル試験により評価した。評価基準は、対照と比較して、鉄味及び/又は鉄臭に差がないと評価したものを低減作用なし(−)、鉄味及び/又は鉄臭が弱くなっているものの、その差はわずかであると評価したものをやや低減作用有り(+)、鉄味及び/又は鉄臭が感じられるものの明らかに弱いと評価したものを低減作用有り(++)、及び、鉄味及び/又は鉄臭がほとんど感じられないと評価したものを強い低減作用有り(+++)とした。その結果を表1に示す。なお、各試験液に対するパネラーの評価は、何れも12人中10人以上が同じ評価であった。

表1から明らかなように、砂糖では、鉄イオン水溶液の不快味及び/又は不快臭の低減効果は認められず、マルトースでは鉄イオン水溶液の総質量に対して、無水物換算で、濃度2%以上で不快味及び/又は不快臭の低減作用が認められ、又、α,α−トレハロースでは、鉄イオン水溶液の総質量に対して、無水物換算で、濃度1.5%以上で不快味及び/又は不快臭の低減作用が認められた。これに対して、α−グルコシルα,α−トレハロース又はα−マルトシルα,α−トレハロースは、鉄イオン水溶液の総質量に対して、無水物換算で、濃度1%以上で不快味及び/又は不快臭の低減作用が認められ、これらの結果から、α,α−トレハロースの糖質誘導体のα−グルコシルα,α−トレハロース及びα−マルトシルα,α−トレハロースは、従来、鉄味及び/又は鉄臭の低減作用があることが知れられているα,α−トレハロースよりも不快味及び/又は不快臭の低減作用が強いことが判明した。
実験2:安息香酸ナトリウムのエグ味抑制作用に及ぼすα,α−トレハロースの誘導体の濃度の影響
実験2−1:試験液の調製
安息香酸ナトリウムのエグ味抑制作用に及ぼすα,α−トレハロースの誘導体の濃度の影響を確認する試験は、以下のように行った。紅茶抽出液22質量部、アスコルビン酸0.02質量部、レモン果汁(100%)0.2質量、安息香酸ナトリウム0.05質量部に対して、後述する実施例2の方法で調製した粉末状のα,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する不快味及び/又は不快臭の低減剤(α,α−トレハロースの糖質誘導体として、無水物換算で、α−グルコシルα,α−トレハロース4.1%、α−マルトシルα,α−トレハロース52.5%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース1.1%、α−グリコシルα,α−トレハロース0.4%を含有、α,α−トレハロースの糖質誘導体として合計58.1%含有)を、0.5質量部、1.0質量部、1.5質量部、2.0質量或いは5.0質量部を配合したものを調製し、各々水を加えて100質量部の紅茶飲料を調製した。対照として、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤を配合しないものを同様に調製した。
実験2−2:安息香酸のエグ味の低減作用の評価方法
試験液中の安息香酸のエグ味とよばれる不快味及び/又は不快臭の低減の程度を12人のパネラーによるパネル試験により評価した。評価基準は、対照と比較して、エグ味に差がないと評価したものを低減作用なし(−)、エグ味が弱くなっているものの、その差はわずかであると評価したものをやや低減作用有り(+)、エグ味は感じられるもののはっきりと弱いと評価したものを低減作用有り(++)、エグ味がほとんど感じられないと評価したものを強い低減作用有り(+++)とした。その結果を表2に示す。なお、表2の上段には、試験液の総質量に対する、無水物換算での不快味及び/又は不快臭の低減剤の濃度を示し、中段には、試験液の総質量に対する、無水物換算でのα,α−トレハロースの糖質誘導体の濃度を示した。また、各試験液に対するパネラーの評価は、何れも12人中10人以上が同じ評価であった。

表2から明らかなように、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する不快味及び/又は不快臭の低減剤は、紅茶飲料の総質量に対して、無水物換算で、濃度1.5%(α,α−トレハロースの糖質誘導体として0.9%)以上で、安息香酸のエグ味を抑制し、紅茶飲料の総質量に対して、無水物換算で、濃度2%(α,α−トレハロースの糖質誘導体として1.2%)ではその作用が強くなり、紅茶飲料の総質量に対して、無水物換算で、濃度5%(α,α−トレハロースの糖質誘導体として3.0%)では、エグ味をほぼ消失させることが判明した。
実験3:アミノ酸類,青汁或いは豆乳の不快味及び/又は不快臭の低減作用に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響
アミノ酸類,青汁或いは豆乳の不快味及び/又は不快臭の低減作用に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響を調べる実験は、以下のようにして行った。
実験3−1:試験液の調製
後述する実施例2の方法に準じて調製した粉末状のα,α−トレハロースの糖質誘導体(無水物換算で、α−グルコシルα,α−トレハロース4.1%、α−マルトシルα,α−トレハロース52.5%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース1.1%、α−グリコシルα,α−トレハロース0.4%を含有し、同じく無水物換算で、α,α−トレハロースの糖質誘導体として合計58.1%含有)を有効成分として含有する不快味及び/又は不快臭の低減剤を用いて、濃度2.0%、3.0%、4.0%或いは10.0%の水溶液を調製した。また、不快味及び/又は不快臭を有する成分として、3.8%のロイシン水溶液、3.0%のイソロイシン水溶液、4.0%のバリン水溶液、4.0%の青汁水溶液或いは20%の豆乳水溶液の5種類を使用した。この5種類の水溶液の何れか1種に、表3に示す組み合わせで、前記α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する不快味及び/又は不快臭の低減剤の、濃度2.0%、3.0%、4.0%或いは10.0%水溶液をそれぞれ等容量混合して試験液を調製した。この試験液は、試験液の総質量に対して濃度が1.9%のロイシン、1.5%のイソロイシン、2.0%のバリン、2.0%の青汁及び10.0%の豆乳の何れか1種と、試験液の総質量に対して、無水物換算で、濃度が1.0%、1.5%、2.0%及び5%の何れか1種の不快味及び/又は不快臭の低減剤を含有している。対照として、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する不快味及び/又は不快臭の低減剤含有水溶液の代わりに、それぞれ等容量の水を加えて、対照液の総質量に対して、濃度が1.9%のロイシン、1.5%のイソロイシン、2.0%のバリン、2.0%の青汁及び10.0%の豆乳の何れかを含有する水溶液を調製した。
実験3−2:不快味及び/又は不快臭の低減作用の評価方法
試験液を用いて、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する不快味及び/又は不快臭の低減剤による、不快味及び/又は不快臭の低減の程度を、11人のパネラーによるパネル試験により評価した。3種類のアミノ酸については、その苦味を、青汁及び豆乳については、特有の味と臭いに対する改善作用を指標に評価した。この評価基準は、対照と比較して、不快味及び/又は不快臭に差がないと評価したものを低減作用なし(−)、不快味及び/又は不快臭が弱いものの、その差はわずかであると評価したものを弱い低減作用有り(+)、不快味及び/又は不快臭はあるものの、明らかに弱いと評価したものを低減作用有り(++)、及び、不快味及び/又は不快臭がほとんど感じられないと評価したものを強い低減作用有り(+++)とした。その結果を表3に示す。なお、各試験液に対するパネラーの評価は、何れも12人中10人以上が同じ評価であった。

表3から明らかなように、L−イソロイシンの苦味の場合には、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する不快味及び/又は不快臭の低減剤は、試験液の総質量に対して、無水物換算で、濃度1.5%(α,α−トレハロースの糖質誘導体として0.9%)で、その苦味を抑制し、イソロイシン、ロイシン、バリン、青汁及び豆乳の何れの場合にも、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する不快味及び/又は不快臭の低減剤は、これら試験液の総質量に対して、無水物換算で、濃度2.0%又は5.0%(それぞれ、α,α−トレハロース糖質誘導体として濃度1.2%又は3.0%)で、これらが持つ不快味及び/又は不快臭の低減作用を示した。また、この低減作用の程度は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分とする不快味及び/又は不快臭の低減剤の濃度の高い方が強く、α,α−トレハロースの糖質誘導体の持つ不快味及び/又は不快臭に対する低減作用が、その濃度に依存していることが示された。
実験4:硫化水素の発生抑制に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響
組成物に含まれる含硫アミノ酸の分解などにより発生する硫化水素は、飲食品の異臭の原因の一つとされている。そこで、硫化水素の発生抑制に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響を調べる実験を以下のようにして行った。
実験4−1:L−システインの熱分解による硫化水素の発生抑制に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響
50ml容のメスフラスコに、L−システイン塩酸塩(試薬特級)2.5gを精秤し、これに、試薬級含水結晶α,α−トレハロース(純度99.0%以上、株式会社林原生物化学研究所販売)、後述の実施例5の方法に準じて調製したα−マルトシルα,α−トレハロース(純度98.1%)、試薬級マルトテトラオース(純度97.0%以上、株式会社林原生物化学研究所販売)の何れか1種を無水物換算で5g精秤して加え、さらに脱イオン水を加えて、50mlの試験試料を調製した。対照試料として、L−システイン塩酸塩(試薬特級)2.5gを精秤し、脱イオン水を加えて、50mlの水溶液を調製した。これらの試料5mlを20ml容のバイアル瓶に採取し、ブチルゴム栓により蜜栓後、80℃の恒温槽に入れて15分間加熱した後、そのヘッドスペースガス10ml中の硫化水素量を、硫化水素検知管(ガステックNo.4LT、GLサイエンス社製)により、吸引時間1分の条件で測定し、対照試料の硫化水素の発生量を100とし、これに対して、各試験試料の硫化水素の発生量の相対値を求め、100からこれを減じて硫化水素発生抑制率とした。その結果を表4に示す。

実験4−2:鶏卵の熱分解により発生する硫化水素の発生抑制に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響
市販の鶏卵と脱イオン水を1:1の質量比で混合し、均一になるまで撹拌して卵液を得た。50ml容メスフラスコに、この卵液10gと、食品級含水結晶α,α−トレハロース(純度97.0%以上、株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)、砂糖(ショ糖:市販のグラニュー糖)、後述の実施例1の方法に準じて調製したシラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体、後述の実施例6の方法で調製したシラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体(以下、「水素添加したα,α−トレハロースの糖質誘導体含有シラップ」という)の何れか1種を無水物換算5gを精秤して加え、さらに、これに、500mMリン酸緩衝液(pH7.0)5mlと、脱イオン水を加えて、50mlの試験試料を調製した。また、前記卵液10gに、脱イオン水を加えて、50mlの水溶液を調製し、対照試料とした。これらの試料5mlを、各々20ml容のバイアル瓶に採取し、ブチルゴム栓により蜜栓後、80℃の恒温槽に入れて60分間加熱した後、そのヘッドスペースガス10ml中の硫化水素を、硫化水素検知管(ガステック4LT、GLサイエンス社製)により、吸引時間1分の条件で測定し、対照試料の硫化水素の発生量を100とし、これに対して、各試験試料の硫化水素の発生量の相対値を求め、100からこれを減じて硫化水素発生抑制率とした。その結果を表5に示す。

表4から明らかなように、実験に使用した3種類の糖質は、何れも、対照試料に比して、含硫アミノ酸であるL−システインの熱分解による硫化水素発生を抑制した。α−マルトシルα,α−トレハロースの硫化水素発生抑制能は、α,α−トレハロースよりは低かったものの、マルトテトラオースよりは高いものであった。また、表5から明らかなように実験に使用した4種類の糖質は、何れも、対照試料に比して、鶏卵の全卵の熱分解による硫化水素発生を抑制した。中でも、α,α−トレハロースの糖質誘導体の硫化水素発生抑制能は、試験に使用した糖質中で最も高く、α,α−トレハロース、水素添加したα,α−トレハロースの糖質誘導体含有シラップ、ショ糖の順に、硫化水素発生抑制率は低くなった。以上のことから、α,α−トレハロースの糖質誘導体或いはそれを含有する糖質は、組成物に含まれる含硫アミノ酸などの分解による硫化水素発生を効果的に抑制することが明らかとなり、組成物から発生する硫化水素に起因する異臭の低減に利用できることが判明した。
実験5:魚臭の発生抑制に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響
魚臭は、魚肉の酸敗や変性に伴って発生するアミン類、硫化水素、アルデヒド類などの物質が原因の一つとされている。そこで、これらの物質の発生抑制に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響を調べる実験を以下のようにして行った。
実験5−1:試験試料の調製
市販のサバの頭部、内臓及び骨の部分を除いたものをミンチ機にかけて、サバ肉のミンチを作成した。これをさらに、均一に練り直した後、その5gを20ml容バイアル瓶に入れ、これに、食品級含水結晶α,α−トレハロース(純度99.0以上%、株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)、砂糖(ショ糖:市販のグラニュー糖)、或いは、後述の実施例1の方法に準じて調製したシラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で5%含有する水溶液5mlを加え、ブチルゴム栓で蜜栓して試験試料を調製した。また、前記サバ肉のミンチを均一に練り直したもの5gに、脱イオン水5mlを加え、ブチルゴム栓で蜜栓して対照試料を調製した。これらの試料を沸騰水中で15分間加熱した後、流水中で冷却した。その後、これらの試料を80℃で5分間再加熱し、各々の試料のヘッドスペースガスに含まれているアミン量、硫化水素量及びアルデヒド量を測定した。
実験5−2:アミン量の測定方法
アミン量の測定は、試料のヘッドスペースガス2mlを使用して、DB−5キャピラリーカラム(0.25mmID×30m、df=0.25μm、スプリット比1/30、J&W社製)を使用し、島津GC−14Bガスクロマトグラフィー装置(水素炎イオン化検出器、株式会社島津製作所販売)を用いて、キャリアーガスとしてヘリウムガス(1ml/分)を使用して、カラム温度40〜250℃(昇温5℃/分)の条件で行った。なお、アミン類として、トリメチルアミンとジメチルアミンとを測定し、その両方を合わせてを総アミンとした。
実験5−3:硫化水素量の測定方法
実験4と同様に、硫化水素検知管(ガステック4LT、GLサイエンス社製)を使用し、ヘッドスペースガス10mlを使用し、吸引時間1分の条件で測定した。
実験5−4:アルデヒド量の測定方法
アルデヒド量の測定は、試料はヘッドスペースガス2mlを使用して、TC−FFAPキャピラリーカラム(0.52mmID×30m、df=1μm、スプリット比1/30、GLサイエンス社製)を使用し、島津GC−14Bガスクロマトグラフィー装置(水素炎イオン化検出器、株式会社島津製作所販売)を用い、キャリアーガスとしてヘリウムガス(1ml/分)を使用して、カラム温度40〜250℃(昇温5℃/分)の条件で行った。なお、アルデヒド類として、表7に示す9種類のアルデヒドを測定し、それらを総じて総アルデヒドとした。
対照試料のアミン類、硫化水素或いはアルデヒド類の発生量を、各々100とし、これに対して、各試験試料の、アミン類、硫化水素及びアルデヒド類の発生量の相対値を求めて、100からこれを減じて、各々の成分物質の発生抑制率とした。その結果を、アミン類及び硫化水素については表6に、アルデヒド類については表7に示す。



表6から明らかなように、α,α−トレハロースの糖質誘導体或いはα,α−トレハロースを添加したサバのミンチ肉は、対照試料に比して、加熱よるアミン及び硫化水素発生が効果的に抑制された。特に、α,α−トレハロースの糖質誘導体を添加した場合には、総アミン及びトリメチルアミン発生が、α,α−トレハロース添加した場合よりもさらに抑制された。これに対して、砂糖を添加した場合には、トリメチルアミン発生は、対照に比して多少抑制されたものの、ジメチルアミン発生は、逆に、対照よりも増強され、その結果、総アミン発生量は、対照よりも高くなった。また、砂糖を添加した場合、硫化水素発生は、対照よりも抑制されたものの、その抑制の程度は、α,α−トレハロースの糖質誘導体或いはα,α−トレハロースを添加した場合に比して低かった。また、表7から明らかなように、α,α−トレハロースの糖質誘導体或いはα,α−トレハロースを添加した場合には、対照試料に比して、サバのミンチ肉の加熱よるアルデヒド類発生が効果的に抑制された。これに対して砂糖を添加した場合には、総アルデヒド発生は、対照に比して多少低下したものの、アルデヒド類の種類により増強されるものも認められた。以上のことから、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、魚肉などの組成物からのアミン類、硫化水素及びアルデヒド類の発生を効果的に抑制することが明らかとなり、魚臭のように魚肉などの組成物から発生するアミン類、硫化水素及びアルデヒド類に起因する異味や異臭の低減に利用できることが判明した。
実験6:ココアのムレ臭の発生抑制に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響
ココアやチョコレート、或いは、これを含有する組成物は、その製造工程において、ムレ臭と呼ばれる異臭が発生し、風味が低下することが知られている。この異臭の原因物質としては、2,3−ブタンジオンや低級アルデヒドが知られている。一方、低級アルデヒドのなかにはイソブタノールのように、チョコレートアロマの成分の一つとして知られているものもある。そこで、これらの物質の発生抑制に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響を調べる実験を以下のようにして行った。すなわち、砂糖、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)、市販の酵素水飴、後述の実施例1の方法に準じて調製したシラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体(無水物換算でα,α−トレハロースの糖質誘導体を約53%含有)の何れか1種を蒸留水に溶解し、無水物換算で2.5%濃度の糖質溶液を調製し、各々、4mlを、20ml容のバイアル瓶に入れ、これらに、カカオプードル1gを各々加えて、ラップして、電子レンジ(500W)で5秒間加熱した。対照として、蒸留水4mlにカカオプードル1gを加えて、糖質溶液の場合と同様の処理をしたものを調製した。その後、これらのバイアル瓶に、ラップの上からブチルゴム栓で密栓し、100℃のヒートブロックで、5分間再加熱し、そのヘッドスペースガス2ml中の低級アルデヒド類及び2,3−ブタンジオン量をガスクロマトグラフィーにより定量した。なお、低級アルデヒド量及び2,3−ブタンジオン量の測定は、上記(5−4)のアルデヒド量の測定方法に準じて行った。また、アルデヒド類として、表8に示す3種類のアルデヒドとこれら以外のアルデヒド量を測定し、それらを総じて総アルデヒドとした。
対照試料のアルデヒド類或いは2,3−ブタンジオンの発生量を、各々100とし、これに対して、各試験試料の、アルデヒド類或いはの2,3−ブタンジオン発生量の相対値を求めて、100からこれを減じて、各々の成分物質の発生抑制率とした。その結果を表8に示す。


表8から明らかなように、低級アルデヒド類の発生は、砂糖或いはα,α−トレハロースにより強く抑制された。これに対して、2,3−ブタンジオンの発生は、α,α−トレハロース或いはα,α−トレハロースの糖質誘導体によりほぼ完全に抑制された。酵素水飴では、低級アルデヒド類の発生はほとんど抑制されず、2,3−ブタンジオンの発生抑制率も、試験にした4種類の糖質の中では最も低かった。さらに、加熱後の各試料を9人のパネラーによるパネル試験を行ったところ、全員が、α,α−トレハロース或いはα,α−トレハロースの糖質誘導体を添加した試料の香りが好ましいと評価した。また、この2種類の糖質を使用した試料についての比較では、α,α−トレハロースの糖質誘導体を添加した試料の香りの方が好ましいと評価した。この2種類の糖質における官能評価の差は、α,α−トレハロースは、試料試験に使用した濃度では、ココアの香りの成分であるイソブタナールの発生を強く抑制したため、官能評価では、α,α−トレハロースの糖質誘導体を添加した試料の方が、好ましい香りと評価されたと考えられる。以上のことから、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、ココアやチョコレートなどの組成物からムレ臭の原因となるアルデヒド類及び2,3−ブタンジオンの発生の発生を効果的に抑制することが明らかとなり、アルデヒド類及び2,3−ブタンジオンの発生に起因する異味や異臭の低減に利用できることが判明した。
実験7:甘味料の後味改善に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響
実験7−1:試験液の調製
甘味料の後味改善に及ぼすα,α−トレハロースの糖質誘導体の影響を調べる実験を以下のようにして行った。
<砂糖含有水溶液の調製>
後述の実施例1の方法に準じて調製したシラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体(無水物換算でα,α−トレハロースの糖質誘導体を約53%含有)と砂糖(グラニュー糖)とを、無水物換算で、1:9、2:8、或いは、3:7の質量比で含有する糖質濃度10%の水溶液を調製した。対照液として砂糖の10%の水溶液を調製した。
<高甘味度甘味料含有試験液の調製>
砂糖含有水溶液の調製に使用したものと同じシラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体を、各々、固形物換算で、1%、2%、或いは5%(α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、各々、0.6%、1.2%、或いは3%含有)含有する、アセスルファムカリウムの0.083%水溶液、スクラロースの0.01%水溶液、糖転移ステビア(東洋精糖株式会社販売、商品名「αGスイート」)の0.083%水溶液及びL−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル(味の素株式会社販売、商品名「アスパルテーム」)の0.05%水溶液を調製し、試験試料とした。対照液として、砂糖の10%水溶液、アセスルファムカリウムの0.083%水溶液、スクラロースの0.01%水溶液、糖転移ステビアの0.083%水溶液及びL−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステルの0.05%水溶液を調製した。なお、高甘味度甘味料の濃度は、砂糖の10%水溶液と同等の甘味度となる濃度とした。
実験7−2:甘味料の後味の評価方法
試験液を用いて、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有する不快味及び/又は不快臭の低減剤による、甘味料の後味改善を、パネル試験により評価した。砂糖の後味改善については、17人のパネラーにより評価し、高甘味度甘味料の後味改善は、15人のパネラーにより評価した。また、この評価基準は、対照液と比較して、後味が悪くなったと評価したものを「悪い」、差のないものを「差なし」、後味は改善されたものの、その差はわずかであると評価したものを「弱い改善効果有り」、後味はあるものの、甘味の切れがよく、明らかに改善されたと評価したものを「改善効果有り」とし、「弱い改善効果あり」或いは「改善効果有り」と評価したパネラーの全パネラーに占める割合を、「改善効果有りと判定したパネラーの割合」として求め、この割合が60%を越える場合を、不快味の低減効果があると判断した。砂糖の後味改善に対する評価結果を表9に、糖転移ステビアの後味改善に対する評価結果を表10に、スクラロースの後味改善に対する評価結果を表11に示す。なお、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル及びアセスルファムカリウムの後味改善に対する評価結果は、糖転移ステビアとほぼ同じ結果となったので、具体的な数値は省略した。






表9から明らかなように、無水物換算で、砂糖の20%を、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤で置き換えることにより、砂糖の後味改善をすることが明らかとなった。表10の結果から、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤は、無水物換算で、1%(α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、約0.6%含有)或いはそれ以上の濃度において、濃度に依存して、糖転移ステビアの後味改善をすることが明らかになった。また、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤は、スクラロースに対しても、無水物換算で、2%或いは5%の濃度(α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、各々、約1.2%或いは約3%含有)で、後味改善が認められたものの、5%の濃度でも、依然として「悪い」或いは「差なし」と評価したパネラーが、合計で6人存在した。試験に供した4種類の高甘味甘味料の中で、スクラロースについてのみ、パネラーの評価が分かれた理由は不明であるものの、スクラロースの味質に対するパネラーの嗜好の差が反映されたのではないかと考えられる。以上のことから、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤は、砂糖や高甘味度甘味料の後味改善することが明らかとなり、これらの甘味料を使用した飲食物の後味改善に利用できることが判明した。また、具体的な数値は示さないが、試験に使用した何れの高甘味度甘味料においても、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤を、無水物換算で、2%或いは5%(α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、各々、約1.2%或いは約3%含有)含有した試験液は、含有しないものに比して、甘味度が増加したとパネラー全員が評価した。高甘味度甘味料の種類により多少の差は認められたものの、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤を2%含有した試験液では、含有しないものに比して約20〜30%甘味度が増加し、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤を5%含有した試験液では、含有しないものに比して、約50〜60%甘味度が増加した。
以上の実験結果から、本発明を適用し、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分とする不快味及び/又は不快臭の低減剤を、組成物に含有せしめることにより、組成物の不快味及び/又は不快臭を低減させることができ、高品質の組成物を製造できることが判明した。
以下に、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤及び、この不快味及び/又は不快臭の低減剤を含有せしめた組成物の例を実施例で具体的に挙げて説明する。しかし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
<不快味及び/又は不快臭の低減剤>
以下の実施例に示す、不快味及び/又は不快臭の低減剤は、いずれも、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨、化学工業品を始めとする組成物に含有させることにより、その不快味及び/又は不快臭を低減することができる。
【実施例1】
濃度20%のとうもろこし澱粉乳に最終濃度0.1%となるように炭酸カルシウムを加えた後、pH6.5に調整し、これにα−アミラーゼ(ノボ社製造、商品名「ターマミール60L」)を澱粉グラム当たり0.2%になるよう加え、95℃で15分間反応させた。その反応液を、120℃で10分間オートクレーブした後、50℃に冷却し、pHを5.8に調整後、澱粉グラム当たり特開昭63−240784号公報に開示されたマルトテトラオース生成アミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)を5単位と、イソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)を500単位となるように加え、48時間反応させ、これにα−アミラーゼ(上田化学株式会社製造、商品名「α−アミラーゼ2A」)を澱粉グラム当たり30単位加え、更に、65℃で4時間反応させた。その反応液を、120℃で10分間オートクレーブし、次いで45℃に冷却し、特開平7−143876号公報に開示されたアルスロバクター・スピーシーズQ36(FERM BP−4316)由来の非還元性糖質生成酵素を澱粉グラム当たり2単位の割合になるよう加え、48時間反応させた。その反応液を95℃で10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を、常法に従って活性炭で脱色し、H型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製した糖化液を、更に濃縮して濃度70%のシラップを、無水物換算で、収率約90%で得た。本品は、DE13.7で、α,α−トレハロースの糖質誘導体として、無水物換算で、α−マルトシルα,α−トレハロース(別名α−マルトトリオシルα−グルコース)52.5%を含有しており、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース(別名α−マルトシルα−グルコース)4.1%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース(別名α−テトラオシルα−グルコース)1.1%、それ以外のα−グリコシルα,α−トレハロース0.4%を含有していた。本品は、組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として有利に利用できるだけでなく、アルデヒド類の発生抑制剤及び/又はアミン類の発生抑制剤として利用することも随意である。
【実施例2】
実施例1の方法で調製したシラップを常法により噴霧乾燥して非晶質粉末品を調製した。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として有利に利用できるだけでなく、加熱や乾燥時の蛋白質の変性や脂質の酸化や分解を抑制することに加えて、発生するアルデヒドなどの不快味及び/又は不快臭を低減する効果を有することから、ジュースや油脂などの粉末化基剤としても好適である。
【実施例3】
実施例1の方法で調製したH型及びOH型イオン交換樹脂により脱塩して精製した糖化液を、糖化液を、塩型強酸性カチオン交換樹脂(ダウケミカル社販売、商品名「ダウエックス50W−X4」、Mg++型)を用いたカラム分画を行った。樹脂を内径5.4cmのジャケット付ステンレス製カラム4本に充填し、直列につなぎ樹脂層全長20mとした。カラム内温度を55℃に維持しつつ、糖液を樹脂に対して5v/v%加え、これに55℃の温水をSV0.13で流して分画し、グルコース及びマルトース高含有画分を除去し、α,α−トレハロースの糖質誘導体高含有画分を集め、更に精製、濃縮後、噴霧乾燥して非晶質状態のα,α−トレハロースの糖質誘導体高含有粉末を調製した。本品は、無水物換算で、α,α−トレハロースの糖質誘導体としてα−マルトシルα,α−トレハロース70.2%を含有しており、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース6.1%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース2.1%、それ以外のα−グリコシルα,α−トレハロース4.1%を含有していた。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、不快味及び/又は不快臭の低減剤として有利に利用できるだけでなく、アルデヒド類の発生抑制剤及び/又はアミン類の発生抑制剤として利用することも随意である。また、本品は、吸湿が抑制され、ケーキングなどの発生しない、流動性に優れた粉末甘味料としても有利に利用できるだけでなく、粉末化基剤としても好適である。
【実施例4】
馬鈴薯澱粉1質量部に水6質量部を加え、更に、澱粉当たり0.01%の割合になるようにα−アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社製造、商品名「ネオスピターゼ」)を加えて撹拌混合し、pH6.0に調整後、この懸濁液を85乃至90℃に保ち、糊化と液化を同時に起こさせ、直ちに120℃に5分間加熱して、DE1.0未満にとどめ、これを55℃に急冷し、pH7.0に調整し、これに株式会社林原生物化学研究所製造、商品名「プルラナーゼ」(EC3.2.1.41)及び特開昭63−240784号公報に開示されたマルトテトラオース生成アミラーゼを、それぞれ澱粉グラム当たり150単位及び8単位の割合で加え、pH7.0、50℃で36時間反応させた。この反応液を、120℃で10分間オートクレーブし、次いで、53℃まで冷却し、特開2000−228980号公報に開示されたアルスロバクター・スピーシーズS34(FERM BP−6450)由来の非還元性糖質生成酵素を澱粉グラム当たり2単位の割合になるよう加え、64時間反応させた。この反応液を95℃で10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を、常法に従って、活性炭で脱色し、H型、OH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して、噴霧乾燥して非晶質状態のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有粉末を、無水物換算で、収率約90%で得た。本品は、DE11.4で、無水物換算で、α−マルトシルα,α−トレハロース62.5%を含有しており、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース2.1%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース0.8%、それ以外のα−グリコシルα,α−トレハロース0.5%を含有していた。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として有利に利用できるだけでなく、アルデヒド類の発生抑制剤及び/又はアミン類の発生抑制剤、粉末化基剤としても好適である。
【実施例5】
試薬級のマルトテトラオース(株式会社林原生物化学研究所販売、純度97.0%以上)の20%溶液をpH7.0に調整後、特開平7−143876号公報3に開示された非還元性糖質生成酵素を、無水物換算で、糖質グラム当たり2単位となるように加えて、46℃で、48時間、糖化して、無水物換算で、79.8%のα−マルトシルα,α−トレハロースを含有する溶液を得た。この溶液を、pH6.0に調整後、無水物換算で、糖質グラム当たり10単位となるようにβ−アミラーゼ(ナガセ生化学工業株式会社製)を加えて、50℃で48時間反応させて、マルトテトラオースを分解した。この反応液を、120℃で10分間オートクレーブし、冷却した後、ろ過して得られる溶液を、アルカリ金属型強酸性カチオン交換樹脂(東京有機化学工業株式会社製造、「XT−1016」、Na型、架橋度4%)を用いて分画し、α−マルトシルα−トレハロース高含有画分を集め、精製、濃縮後、噴霧乾燥して非晶質状態のα−マルトシルα,α−トレハロース高含有粉末を調製した。本品は、α−マルトシルα,α−トレハロースを、無水物換算で、98.1%含有しており、ソモジ ネルソン法による測定での還元力測定では、還元力は検出限界以下であった。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として有利に利用できるだけでなく、アルデヒド類の発生抑制剤及び/又はアミン類の発生抑制剤として利用することも随意である。また、本品は還元性がないため、アミノ酸やアミノ機を有する化合物のようなメーラード反応により失活することが問題となる有効成分を含有する健康食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、化学工業品などの不快味及び/又は不快臭の低減剤、アルデヒド類の発生抑制剤及び/又はアミン類の発生抑制剤として好適である。
この標品を、再度水に溶解し、活性炭処理して、パイロジェンを除去し、噴霧乾燥して、非晶質状のα−マルトシルα,α−トレハロース高含有粉末を調製した。本品は、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として有利に利用できる。また、パイロジェンを除去しているので、特に医薬品用の不快味及び/又は不快臭の低減剤として好適である。
【実施例6】
実施例1の方法で調製したα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有するシラップに水を加えて、濃度約60%に調製して、オートクレーブに入れ、触媒としてラネーニッケルを約8.5%添加し、攪拌しながら温度を128℃に上げ、水素圧を80kg/cmに上げて水素添加して、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存するグルコース、マルトースなどの還元性糖質を、それらの糖アルコールに変換した後、ラネーニッケルを除去し、次いで、脱色、脱塩して精製し、濃縮してシラップを調製した。本品は、α−マルトシルα,α−トレハロースを、無水物換算で、約53%含有し、これを含むα,α−トレハロースの糖質誘導体を、同じく無水物換算で、約58%含有しており、水溶性も良好で、組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として有利に利用できるだけでなく、アルデヒド類の発生抑制剤及び/又はアミン類の発生抑制剤、粉末化基剤としても好適である。
【実施例7】
実施例3の方法で調製した非晶質状態のα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有する粉末を水に溶解し、濃度約60%水溶液にし、オートクレーブに入れ、触媒としてラネーニッケルを約9%添加し、攪拌しながら温度を130℃に上げ、水素圧を75kg/cmに上げて水素添加して、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存するグルコース、マルトースなどの還元性糖質を、それらの糖アルコールに変換した後、ラネーニッケルを除去し、次いで、脱色、脱塩して精製し、濃縮してシラップを調製した。更にこのシラップを、常法により噴霧乾燥して、非晶質状態の粉末を調製した。本品は、α−マルトシルα,α−トレハロースを、無水物換算で、約70%含有し、これを含むα,α−トレハロースの糖質誘導体を、同じく無水物で、約82%含有し、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として有利に利用できるだけでなく、アルデヒド類の発生抑制剤及び/又はアミン類の発生抑制剤、粉末化基剤としても好適である。
【実施例8】
濃度6%の馬鈴薯澱粉乳を加熱糊化後、pH4.5、温度50℃に調整し、これにイソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製)を澱粉グラム当たり2500単位加えて20時間反応させた。その反応液をpH6.0に調整後、120℃で10分間オートクレーブした後、45℃に冷却し、これにα−アミラーゼ(ノボ社製、商品名「ターマミール60L」)を澱粉グラム当たり150単位になるよう加え、24時間反応させた。その反応液を、120℃で20分間オートクレーブし、45℃に冷却後、特開平7−143876号公報に開示されたアルスロバクター・スピーシーズQ36(FERM BP−4316)由来の非還元性糖質生成酵素を、澱粉グラム当たり2単位の割合で加え、64時間反応させた。この反応液を95℃で10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を、常法に従って、活性炭で脱色し、H型、OH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に、濃縮して、濃度65%のα,α−トレハロースの糖質誘導体シラップを、無水物換算で、収率約89%で得た。本品は、無水物換算で、α−グルコシルα,α−トレハロース3.2%、α−マルトシルα,α−トレハロース6.5%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース28.5%及びグルコース重合度6以上のα−グリコシルα,α−トレハロース11.9%含有していた。本品は、組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として有利に利用できるだけでなく、アルデヒド類の発生抑制剤及び/又はアミン類の発生抑制剤、粉末化基剤としても好適である。
本品を、実施例7の方法に準じて、水素添加し、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存するグルコース、マルトースなどの還元性糖質を、その糖アルコールに変換した後、常法により精製して、シラップを調製した。本品は、α−マルトシルα,α−トレハロースを、無水物換算で、約6%含有し、これを含むα,α−トレハロースの糖質誘導体を、同じく無水物換算で、約50%含有しており、組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として、有利に利用できる。また、本品は還元性がないため、メーラード反応により失活することが問題となる有効成分を含有する化粧品、医薬部外品、医薬品、健康食品などの組成物中の組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として好適であるだけでなく、アルデヒド類の発生抑制剤及び/又はアミン類の発生抑制剤、粉末化基剤としても好適である。
【実施例9】
濃度33%のとうもろこし澱粉乳に最終濃度0.1%となるように炭酸カルシウムを加えた後、pH6.0に調整し、これにα−アミラーゼ(ノボ社製、商品名「ターマミール60L」)を澱粉グラム当たり0.2%になるよう加え、95℃で15分間反応させた。その反応液を、120℃で30分間オートクレーブした後、50℃に冷却し、これにイソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製)を澱粉グラム当たり500単位及び特開平7−236478号に記載のマルトヘキサオース・マルトヘプタオース生成アミラーゼを澱粉グラム当たり1.8単位の割合になるように加え、40時間反応させた。本反応液を、120℃で10分間オートクレーブし、53℃まで冷却後、pH5.7に調整して、特開2000−228980号公報に開示されたアルスロバクター・スピーシーズS34(FERM BP−6450)由来の非還元性糖質生成酵素を澱粉グラム当たり2単位の割合になるよう加え、64時間反応させた。この反応液を95℃で10分間保った後、冷却し、濾過して得られる濾液を、常法に従って、活性炭で脱色し、H型、OH型イオン交換樹脂により脱塩して精製し、更に濃縮して、噴霧乾燥して非晶質状態のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有粉末を、無水物換算で、収率約87%で得た。本品は、無水物換算で、α−グルコシルα,α−トレハロース8.2%、α−マルトシルα,α−トレハロース6.5%、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース5.6%、α−マルトテトラオシルα,α−トレハロース21.9%、α−マルトペンタオシルα,α−トレハロース9.3%、及びグルコース重合度8以上のα−グリコシルα,α−トレハロース14.1%を含有していた。本品は、そのままで使用しても、或いは、常法により精製してα,α−トレハロースの糖質誘導体含量を増やした場合でも、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として有利に利用できるだけでなく、アルデヒド類の発生抑制剤及び/又はアミン類の発生抑制剤、粉末化基剤としても好適である。
本品を、実施例7の方法に準じて、水素添加し、α,α−トレハロースの糖質誘導体と共存するグルコース、マルトースなどの還元性糖質を、その糖アルコールに変換した後、常法により精製後、噴霧乾燥して、非晶質状態の粉末を調製した。本品は、α−マルトシルα,α−トレハロースを、無水物換算で、約6%含有し、これを含むα,α−トレハロースの糖質誘導体を、同じく無水物換算で、約65%含有しており、そのままで使用しても、或いは、常法により精製してα,α−トレハロースの糖質誘導体含量を増やした場合でも、吸湿性が低く、且つ、水溶性も良好で、組成物中の不快味及び/又は不快臭の低減剤として、有利に利用できる。また、本品は還元性がないため、メーラード反応により失活することが問題となる有効成分を含有する化粧品、医薬部外品、医薬品、健康食品など組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として好適であるだけでなく、アルデヒド類の発生抑制剤及び/又はアミン類、粉末化基剤としても好適である。
【実施例10】
実施例2の方法で調製したα,α−トレハロースの糖質誘導体含有粉末60質量部に対して、市販の無水結晶マルチトール(株式会社林原商事販売、登録商標『マビット』)を40質量部を混合し、粉末混合物を調製した。本品は、組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として有利に利用できるだけでなく、アルデヒド類の発生抑制剤及び/又はアミン類の発生抑制剤として利用することも随意である。
【実施例11】
実施例2の方法で調製したα,α−トレハロースの糖質誘導体含有粉末70質量部に対して、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売)2質量部、酵素処理ルチン2質量部(東洋精糖株式会社販売、商品名「αGルチン」)を混合して、粉末混合品を調製した。本品は、組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として有利に利用できるだけでなく、アルデヒド類の発生抑制剤及び/又はアミン類の発生抑制剤として利用することも随意である。
【実施例12】
実施例2の方法で調製したα,α−トレハロースの糖質誘導体含有粉末50質量部と、市販の含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)50質量部を混合し、粉末混合物を調製した。本品は、組成物の不快味及び/又は不快臭の低減剤として有利に利用できるだけでなく、アルデヒド類の発生抑制剤及び/又はアミン類の発生抑制剤として利用することも随意である。
【実施例13】
<テーブルシュガー>
実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤50質量部に対して、無水結晶マルチトール46質量部、糖転移ヘスペリジン(東洋精糖株式会社販売、商品名「αGヘスペリジン」)3質量部、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社販売)1質量部を水200質量部に溶解し、常法により、噴霧乾燥して粉末甘味料を調製した。本品は、不快味及び/又は不快臭の低減剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体及び糖転移ヘスペリジンがスクラロースの不快な後味を改善することから、コーヒー、紅茶用のテーブルシュガーをはじめ、各種飲食品、医薬部外品、医薬品などの甘味料として好適である。
【実施例14】
<チューインガム>
ガムベース20質量部をニーダーに入れ、約120℃で溶解撹拌し、50℃に温度を下げて、混合機に移し、撹拌しながら、砂糖40質量部、実施例2の方法で調製した不快味及び/又は不快臭の低減剤40質量部、軟化剤1質量部、色素少量、香料1質量部の順で投入し、同温度で45分間撹拌した。これを射出成型器に入れてブロツク状に押し出し、更に、ロールにかけて、徐々に圧延し、裁断してチューインガムを調製した。本品は、不快味及び/又は不快臭の低減剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体により、ガムベースや軟化剤に由来する、不快味及び/又は不快臭が低減されていることから、美味しいチューインガムである。
【実施例15】
<鰹節調味エキス>
新鮮な本鰹を使用し、その魚肉を煮熟する際に、実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤を、水溶液の総質量に対して、無水物換算で、濃度18%となるように溶解した水溶液を使用する以外は、常法により鰹節を製造した。本品は、長期間保存しても、過度に乾燥することがなく、しかも、脂質の酸化や分解の抑制された鰹節である。しかも、本品は、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤を含有していることから、アミン類、アルデヒド類、硫化水素などの発生が抑制され、特有の魚臭さや、その他の不快味及び/又は不快臭が低減されており、鰹節の好ましい、味、香り、色、食感などの風味が良好で、しかも、それが長期間安定に保持されるという特徴を有している。
この鰹節を、製造後6ヶ月間室温で保存後、鰹節削り器で削り、その100質量部に対して水500質量部を加えて加熱し、5分間沸騰させた後、冷却して鰹節エキスを調製した。このエキスは、魚臭さやその他の不快味及び/又は不快臭の低減された、鰹節の好ましい、味、香りを有していた。
この鰹節エキスを10倍に濃縮後、その9質量部に対して、実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤1質量部を添加して溶解したものを、常法により噴霧乾燥して粉末だしを調製した。本品は、アミン類、アルデヒド類、硫化水素などの発生が抑制され、魚臭さやその他の不快味及び/又は不快臭の低減された、鰹節の好ましい、味、香りを有する粉末だしであり、ケーキングすることもなく、製造直後の流動性を保つなど、保存安定性に優れていることから、単独で、或いは、他のエキス類と併用して、粉末、液状、固状或いはペースト状のだしや調味料を製造するための原料として好適である。
【実施例16】
<生ホタテの貝柱加工品>
生ホタテの貝柱を、実施例2で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤9.5質量部と炭酸ナトリウム0.5質量部を水90質量部に溶解し、5℃に冷却した溶液に、30分間浸漬した。液切りをした後、本品で刺身を調製して試食したところ、不快味及び/又は不快臭の低減剤未処理のものに比して、アミン類、アルデヒド類、硫化水素などの発生が抑制され、生のホタテに特有の生臭さなどの不快味及び/又は不快臭が低減されていた。本品は、刺身、サラダ、その他加工食品の原料として好適である。
【実施例17】
<スズキのフィレー>
実施例7の方法で調製した不快味及び/又は不快臭の低減剤4質量部、食塩0.8質量部、グレープ種子抽出物(インディナ社製、商品名「ロイコシアニジン」)0.01質量部に水を加えて100質量部とし、撹拌して溶解し、5℃に冷却した。これに、3枚におろした新鮮なスズキのフィレーを浸漬し、そのまま16時間、5℃の状態に維持した後、これを取り出し、−30℃で急速冷凍した。本品は、生臭さなどの不快味及び/又は不快臭が低減されてされており、又、脂質の酸化や分解が抑制され、冷凍の保存で変性や解凍時のドリップも少なく、鮮度がよく保持されており、各種食品の製造原料として好適である。また、本品を、−20℃で2ヶ月間保存後、解凍し、常法によりソテーして試食したところ、脂質の酸化や分解、蛋白質の変性が抑制され、また、アミン類、アルデヒド類、硫化水素などの発生も抑制されており、不快味及び/又は不快臭も低く、味、香り、色、食感ともに、新鮮なスズキのフィレーで調製したソテーと比較しても、遜色のないものであった。
【実施例18】
<ウニ加工品>
ミョウバンを5.0%となるように溶解した水溶液に、新鮮なウニの卵巣をざるに入れて10秒間浸漬後、ざるを上げて液切りしたもの95質量部に対して、実施例2で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤4.5質量部と炭酸ナトリウム0.5質量部を混合したものをまぶし、室温で15分間放置後、−30℃で凍結した。冷凍保存後の本品を、常法に従って解凍し、調理加工しても、脂質の酸化や分解、蛋白質の変性が抑制されており、不快味及び/又は不快臭も低く、また、ウニの変性に伴い発生する苦味やミョウバンに由来する不快味及び/又は不快臭も低減されており、解凍時のドリップの発生も少なく、味、香り、色、食感とも良かった。
【実施例19】
<フグ干物>
生フグのフィレー100質量部をロール掛けして厚さ約8mmに延ばし、濃度10%となるように水に溶解した実施例2の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤に30分間浸漬し、液切りし、一夜乾燥して製品を得た。本品は、アミン類、アルデヒド類、硫化水素などの発生が抑制され、不快味及び/又は不快臭が低減されており、又、脂質の酸化や分解が抑制され、その鮮度をよく保った干物であった。また、本品を、常法に従って、あぶっても、不快味及び/又は不快臭が低減されており味、香り、色、食感とも良好な千物であった。
【実施例20】
<煮干し>
大釜に水100質量部を沸かし、これに実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤2.5質量部を溶解し沸騰させ、次いで、これに生カタクチイワシ10質量部をざるに入れて浸漬して茹で上げ、ざるから取り出し、常法に従って乾燥させて製品を得た。本品は、アミン類、アルデヒド類、硫化水素などの発生が抑制され、青魚の不快味及び/又は不快臭が低減され、だしもよく取れた、風味の良い煮干しである。
本品を、室温で6ヶ月間保存後も、不快味及び/又は不快臭が低減されており、だしもよく取れ、風味の良い煮干しの状態が維持されていた。
【実施例21】
<アサリのむき身加工品>
大釜に水100質量部を沸かし、これに、実施例2の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤3質量部を混合して沸騰させ、次いで、これに生アサリ10質量部をざるに入れて浸漬して茹で上げ、ざるから取り出し、常法に従って、アサリの水煮むき身を得た。本品は、アミン類、アルデヒド類、硫化水素などの発生が抑制され、不快味及び/又は不快臭がよく低減されており、製品の歩留まりもよく、又、脂質の酸化や分解が抑制され、色、艶も良く、風味良好であった。本品を、更に佃煮にすることも、シーフードカレー、五目御飯などの具材としてに利用することも有利に実施できる。
【実施例22】
<茹でダコ>
生タコ10質量部に食塩ふりかけて、常法に従って塩もみし、これを、実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤4質量部を水100質量部に溶解し沸かした大釜に入れ茹で上げ、茹でダコを得た。本品は、不快味及び/又は不快臭が低減されており、製品の歩留まりもよく、又、脂質の酸化や分解が抑制され、また、アミン類、アルデヒド類、硫化水素などの発生も抑制され、色、艷も良く、風味良好であった。本品を、適当な大きさの切り身にし、寿司ネタに使うことも、酢の物、おでんなどの惣菜に用いることも有利に実施できる。
【実施例23】
<ニシンの酢漬>
生ニシンのフィレーを、食塩水に浸漬し、常法に従って薄塩し、室温で1時間経過後、これを食酢100質量部に実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤5質量部及びコンブ出し1質量部を溶解した調味液につけ、室温で5時間保ってニシンの酢漬を得た。本品は、不快味及び/又は不快臭が低減されており、2ヶ月間保存後も肉質の劣化が低減され、又、アミン類、アルデヒド類、硫化水素などの発生や脂質の酸化や分解が抑制され、色、艶も良く、風味良好であった。本品を、適当な大きさの切り身にし、寿司のネタに使うことも、酢の物などの惣菜に用いることも有利に実施できる。
【実施例24】
<ブリの煮付け>
生ブリの切り身100質量部を鍋に取り、これに実施例2の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤10質量部、醤油10質量部及びみりん5質量部及び水10質量部を加え、常法に従って煮付けてブリの煮付けを得た。本品は、皿に盛りつけた後も、アミン類、アルデヒド類、硫化水素などの発生が抑制され、青魚特有の不快味及び/又は不快臭が少なく、色、艷も良い、風味の良いものであった。
【実施例25】
<漬け物のもと>
水2500質量部、塩70質量部、グルタミン酸ナトリウム30質量部、ソルビトール450質量部、実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤150質量部、クエン酸10質量部、アミノ酸粉末うまみ調味料5質量部を混合して、白菜の浅漬けなどに使用する漬け物のもとを調製した。本品は、うまみ調味料などに由来する不快味及び/又は不快臭が低減された美味しい浅漬けのもとである。本品は、下漬した白菜等の本漬用の調味料として使用することができる。
【実施例26】
<焼き肉のたれ>
みそ20質量部、醤油もろみ10質量部、濃い口醤油9質量部、砂糖(上白糖)10質量、実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤15質量部、精製塩5質量部、酢酸0.8質量部、うまみ調昧料7質量部、トマトピューレ10質量部、オニオンペースト1質量部、ガーリックペースト1質量部、ショウガ(すりおろし)3質量部、ポークベース3質量部、スパイスミックス0.5質量部、水4.7質量部を混合、攪拌して焼き肉用のたれを製造した。本品は、たれの原料に由来する不快味及び/又は不快臭が低減され、美味しいたれである。また、焼き肉に使用すると、肉やそれに含まれる血液に由来する特有の不快味及び/又は不快臭が抑制されるので、肉本来のおいしさを引き出すことのできる、美味しいたれである。
【実施例27】
<魚卵加工用調味液>
醤油とアミノ酸を主成分とする一般の魚卵用加工調味料85質量部に、実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤15質量部を添加、混合した。本品は、アミノ酸を添加した調味液特有の不快味及び/又は不快臭が低減された調味液である。また、本品を、魚卵の加工に使用ると、魚卵のもつ特有の不快味及び/又は不快臭が低減され、色、艶も良い、風味の良く、また、冷蔵後解凍してもドリップの少ない魚卵加工品を製造することができる。
【実施例28】
<みりん>
市販の本みりん95質量に、実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤5質量部を添加、混合した。本品は、みりん特有の不快味及び/又は不快臭が低減されたみりんである。また、本品を、魚など魚介類や魚卵などの調理や加工に使用する調味液に使用すると、これらのもつ特有の不快味及び/又は不快臭が低減され、色、艷も良い、風味の良い、調理品或いは加工品を製造することができる。
【実施例29】
<ビール>
市販のビール調製キット(東急ハンズ通販クラブ販売、商品名「NBビール基本セット」)を購入し、その発酵用の溶液に、100質量部に対して、実施例2の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤2質量部を添加、混合して、添付のマニュアルに従い、ビールを調製した。対照として、不快味及び/又は不快臭の低減剤を使用しないでビールを調製し、その両方を試飲したところ、本品は、対照と比較して、ビール特有の不快味及び/又は不快臭が低減されており、切れの良い、美味しいビールであった。
【実施例30】
<調味アルコール溶液>
実施例2の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤87質量部を30%エチルアルコール500質量部に添加、混合して調味アルコール溶液を調製した。本品は、アルコールの刺激的な味及び/又は臭いが低減された調味アルコール溶液である。本品と、増醸法で使用する酒造用のもろみを等容混合し、水を加えることにより、アルコール濃度を5〜112%程度に調製し、濾過、加熱殺菌して、低アルコール酒を製造することができる。この低アルコール酒は、アルコール濃度が通常の日本酒よりも低いにも関わらず、発酵臭が抑制され、しかも、風味やコクがある。
【実施例31】
<粉末醤油>
実施例2の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤1質量部を醤油3質量部に溶解し、常法により噴霧乾燥して、粉末醤油を調製した。本品は、長期保存後も、発酵臭など不快味及び/又は不快臭が低減され、吸湿もなく、醤油の味や香りをよく保持しており、即席ラーメンや即席吸物などの調味料として有利に利用できる。
【実施例32】
<粉末牛乳>
生鮮牛乳100質量部に対して実施例2の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤1質量部を溶解後、約50℃に加温し、牛乳の固形分が約30%となるまで減圧濃縮し、常法により噴霧乾燥して、粉末ミルクを調製した。本品は、噴霧乾燥による異味・異臭などの不快味及び/又は不快臭も低減され、長期保存後も、吸湿もなく、変色もなく、ミルクの好ましい味や香りをよく保持しており、各種飲食品の原料やコーヒー用の粉末ミルクとして有利に利用できる。
【実施例33】
<粉末ローヤルゼリー>
ローヤルゼリー(水分含量65%)1質量部に対して実施例2で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤3質量部、含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)2質量部、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売)0.5質量部を添加し撹拌溶解後、常法により、減圧乾燥してローヤルゼリー粉末を得た。本品は、ローヤルゼリー特有の刺激臭などの不快味及び/又は不快臭が低減されており、又、水溶解性も高いことから、そのままで、或いは、造粒、打錠するなどして健康食品やその他の飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品などの原料として使用することも随意である。
【実施例34】
<粉末高麗ニンジンエキス>
高麗ニンジンエキス1質量部を5倍濃縮したもの10質量部に対して、含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、登録商標『トレハ』)2質量部と実施例2で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤3質量部を添加して撹拌溶解したものを、常法により減圧乾燥して高麗ニンジンエキス粉末を調製した。本品は、高麗人参特有の苦味や褐変臭などの不快味及び/又は不快臭が低減されており、又、水溶解性も高いことから、そのままで、或いは、造粒、打錠するなどして健康食品やその他の飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品などの原料として使用することも随意である。
【実施例35】
<プロポリス液>
市販の液状プロポリス(株式会社エイチプラスビィライフサイエンス販売、商品名「ニュープロフィーラリキッド」)97質量部に、実施例1で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤3質量部を添加して撹拌溶解した。本品は、アルコール及びプロポリス特有の不快味及び/又は不快臭の低減された、飲みやすいプロポリス液である。
【実施例36】
<なすびの漬け物>
なすび100質量部に対して、塩15質量部、焼きみょうばん0.2質量部、硫酸第一鉄0.01質量部を加えて、下漬けをし、洗浄後、適当な大きさに切り、塩抜きをして、圧搾・脱水を行った。これに、わさび10質量部、酒粕10質量部、実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤2質量部、グルタミン酸ナトリウム0.03質量部、アミノ酸粉末旨味料0.01質量部、コハク酸ナトリウム0.01質量部を混合したものに再度漬け込み、なすびのわさび漬けを調製した。本品は、ミョウバンや鉄イオンなどの不快味及び/又は不快臭が低減された、色鮮やかな、美味しい漬け物である。
【実施例37】
<もやし加工品>
大豆もやしを、実施例1で調製した不快味及び/又は不快臭の低減剤10質量部とエタノール5質量部を水85質量部に溶解し、10℃に冷却した溶液に、60分間浸漬した。液切りをした後、本品にドレッシングをかけて試食したところ、不快味及び/又は不快臭の低減剤未処理のものに比して、もやし特有の青臭さなどの不快味及び/又は不快臭が低減されていた。本品は、サラダ、その他加工食品の原料として好適である。
【実施例38】
<野菜ジュース>
ケール、ブロッコリー、パセリ、セロリ、ニンジンのスライスを混合したものを95℃で20分間ブランチングし、これに実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤を3%、アスコルビン酸を0.2%となるように添加した後、破砕して野菜汁を得た、さらに、クエン酸を加えてpHを4.2に調製した。本品は、野菜の持つ特有のエグ味や渋味、青臭味などの不快味及び/又は不快臭が低減されて、殆ど消失しているので、飲みやすい野菜ジュースであった。
この野菜ジュースを、100mlの密封容器に無菌的に充填して、室温で6ヶ月間保存後、試飲したところ、退色や褐変もなく、野菜特有の青臭みや保存時に発生するするムレ臭や日向臭などの不快味及び/又は不快臭も感じられない、飲みやすい野菜ジュースであった。
【実施例39】
<緑茶飲料>
常法により、緑茶葉から緑茶を抽出し、実施例2で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤を0.5%、アスコルビン酸を0.2%となるように添加して茶飲料を調製した。これを20倍に濃縮後、常法により噴霧乾燥して粉末緑茶を調製した。この茶飲料を、200mlの密封容器に無菌的に充填して、室温で6ヶ月間保存後、試飲したところ、ムレ臭などの不快味及び/又は不快臭が低減されており、褐変や退色もなく飲みやすい茶飲料であった。
【実施例40】
<コーヒー飲料>
焙煎したコーヒー豆約100質量部を粉砕し、これを熱水約1000質量部で抽出し、抽出液約850質量部を得た。この抽出液450質量部に、砂糖40質量部、α,α−トレハロース20質量部、実施例2で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤20質量部、安息香酸ナトリウム0.5質量部及び水550質量部を加えて混合し、重曹を加えてpHを約7に調製した。これを、常法に従って、200ml容のスチール缶に充填し、120℃で30分間滅菌して、缶入りのコーヒーを製造した。本品は、安息香酸ナトリウムや重曹に由来するエグ味が低減された、飲みやすいコーヒー飲料である。また、本品を6ヶ月間室温で保存後、80℃に加熱して、試飲したところ、缶入りの飲料特有の不快味及び/又は不快臭もなく、香り、味共に良好な高品質のコーヒーであった。
【実施例41】
<紅茶飲料>
常法により、紅茶葉に熱水を加えて抽出し、紅茶抽出液を得た。この抽出液200質量部に、実施例1で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤6質量部、α,α−トレハロース2質量部、レモン果汁0.3質量部、安息香酸ナトリウム0.1質量部及びアスコルビン酸0.04質量部を加えて混合して紅茶飲料を調製した。これを、常法に従って、200ml容のスチール缶に充填し、120℃で30分間滅菌して、缶入りの紅茶を製造した。本品は、安息香酸ナトリウムに由来するエグ味が低減された、飲みやすい紅茶飲料である。また、本品を6ヶ月間室温で保存後、5℃に冷却して、試飲したところ、缶入りの飲料特有の不快味及び/又は不快臭もなく、香り、味共に良好な高品質の紅茶であった。
【実施例42】
<アミノ酸含有飲料>
アミノ酸混合物として、イソロイシン4質量部、ロイシン6質量部、リジン8質量部、フェニルアラニン8質量部、チロシン1質量部、トリプトファン12質量部、バリン8質量部、アスパラギン酸1質量部、セリン1質量部、アミノ酢酸8質量部、アラニン8質量部、ヒスチジン2質量部、アルギニン8質量部、スレオニン2質量部、メチオニン1質量部の混合物を調製し、水に溶解して1%溶液を調製し、これにオレンジ果汁を4%となるように添加後、実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤を、無水物換算で8%となるように添加した。本品は、アミノ酸自体が示す苦味が低減され、嗜好性が改善された、風味のよい飲料である。
【実施例43】
<ミネラル含有飲料>
砂糖30質量部、キサンタンガム4.64質量部、ローカストビーンガム4.0質量部、タラガム3.4質量部、サイリュウムシードガム1.7質量部、アスコルビン酸1.2質量部、塩化ナトリウム1.2質量部、クエン酸(結晶)1.2質量部、クエン酸ナトリウム0.12質量部、塩化カリウム0.12質量部、乳酸カルシウム0.19質量部、硫酸マグネシウム0.01質量部、スクラロース0.05質量部香料、及び、実施例2の方法で調製した不快味及び/又は不快臭の抑制剤50質量部を均一に混合した。この混合物8質量部を水92質量部に溶解し、ゲル状のミネラル飲料を調製した。本品は、ミネラル自体が示す苦味が低減され、砂糖やスクラロースの後味も改善されているので、嗜好性が改善された、風味のよい飲料である。本品は、アルミラミネートのチュアブル容器などに入れて、スポーツ時のミネラルや水分補給剤として有利に利用できる。また、本品は、ゲル状であることから、水のように誤って気管に入ることも少なく、嚥下が困難な病者、老人、子供向けの水分補給、ミネラル補給剤としても好適である。
【実施例44】
<ドリンク剤>
マツの樹皮から抽出したプロアントシアニジンなどのポリフェノールを含有するエンゾジノール0.1質量部に対して、実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の抑制剤20質量部を混合し、ポリフェノールの水への溶解性を向上させておき、これに、水100質量部を加えて、ポリフェノールを完全に溶解さた後、アスコルビン酸0.5質量部、ニコチン酸アミド0.01質量部、ビタミンB0.01質量部を加えてドリンク剤を調製した。本品は、マツの樹皮から抽出物に由来する不快味及び/又は不快臭の低減された、飲みやすいドリンク剤である。
【実施例45】
<苦汁加工品>
実施例2の方法により調製した不快味及び/又は不快臭の低減剤144質量部と市販の苦汁(讃岐塩業株式会社製)202質量部とを加え、70℃に加熱しながら完全に溶解させ、これを減圧濃縮して、固形物の濃度が63%の溶液を得た。本品は、苦汁の持つ、刺激味、苦味などの不快味が低減されていることから、マグネシウム及び/又はカルシウムなどのミネラルを強化した、スポーツ飲料、健康食品、高齢者や病者向け食品の原料として好適であるばかりでなく、豆腐の用の凝固剤やその他飲食品はもとより、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料用の原料として利用することも随意である。
【実施例46】
<白米>
玄米(古米)100質量部を撹拌しつつ、これに実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤を水で希釈して25%水溶液を調製し、その4質量部をできるだけ均一に噴霧混合した後、一夜放置し、常法に従って、精米機にかけ白米を得た。本品は、α−マルトシルα,α−トレハロースを約0.2%含有していることから、脂質の酸化や分解による不快味及び/又は不快臭が低減されているので、保存安定性に優れた高品質の白米である。本品は、風味良好なごはん、おにぎり、おかゆなどの原料として有利に利用できる。
【実施例47】
<無洗米>
もみすり直後の玄米100質量部に、実施例7の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤1質量部を混合して貯蔵庫に6ケ月間保存し、次いで、これを精米機にかけ白米とした。この白米を金網製無端ベルト上に移し、混合しつつ移動させながら、まず、高圧噴霧水で極短時間洗浄し、次いで、実施例7の方法で得た粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤20%及び乳酸カルシウム1%を含有する水溶液1質量部を噴霧し、更に乾燥、秤量、充填して無洗米を得た。本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を約0.3%含有していた。本品は、ご飯、おにぎり、おかゆ、寿司、α化米などに利用すると、ムレ臭、糠臭、カルシウムのエグ味などの不快味及び/又は不快臭が低減されるので、風味が良好であるばかりでなく、カルシウムを強化しており、健康の維持・増進にも好適である。
【実施例48】
<米飯>
水370質量部に対して、実施例2の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤13.5質量部を混合し、これに、白米を水洗いして水切りした米300質量部を加えて、家庭用炊飯器にて炊飯して米飯を得た。本品は、飯の不快な米糠臭が低減されており、比較的長期間炊飯直後の好ましい風味が保持されるという特徴がある。また、本品は、冷凍、チルド、冷蔵、或いは冷凍保存の状態で発生する不快味及び/又は不快臭が低減されることから、これらの保存方法で流通される米飯やその加工品の原料或いは中間原料として有利に利用できる。
【実施例49】
<即席麺>
小麦粉(強力粉)98.5質量部、実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤1.5質量部と0.5%のかん水30質量部を添加し、常法により、練り、厚さ0.9mmの麺線を調製し、1分間蒸し器で蒸した後、145℃のサラダオイルで1分20秒間フライして即席麺を調製した。
この即席麺を密封容器に入れて1年間室温で保存後、容器から取り出し、熱湯を加えて3分間放置した後、試食したところ、脂質の酸化により発生する不快味及び/又は不快臭が低減されており、美味しい麺であった。
【実施例50】
<冷凍パン生地>
フランスパン用小麦粉100質量部、冷凍用イースト5質量部、食塩2質量部、モルトエキス0.3質量部、イーストフード0.1質量部、少量の乳化剤、水65質量部を混捏し、小分けしてロール状に成形した。この成形した生地49質量部に対して、実施例2で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤を無水物換算で、40%の濃度となるように調製した水溶液1質量部を、塗布し、トレイに乗せて、−60℃で冷凍し、フランスパンの成形冷凍生地を調製した。これを−20℃で1ヶ月保存後、20℃、湿度75%で90分間解凍し、28℃、湿度75%で70分間発酵させた後、20分間焼成してフランスパンを製造した。本品は、発酵臭や乳化剤などに由来する不快味及び/又は不快臭が低減されているので、焼成したパンは、好ましい香りを有していた。
【実施例51】
<米粉パン>
予めグルテンを配合したパン用の米粉(株式会社斉藤製粉販売、商品名「こめの粉(パン用)」)400質量部、食塩8質量部、実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤25質量部、マルトース20質量部、上白糖12質量部、脱脂粉乳12質量部、生イースト10質量部、プルラン8質量部、水315質量部を加えて、縦型ミキサーで撹拌混合後、バター20質量部を添加して更に捏ね、パン生地を調製した。生地を25℃で50分間醗酵した後、適当な大きさに分割し、湿度75%、室温35℃で50間保持し、オーブンに入れて、上火温度180℃、下火温度180℃で40分間焼成して米粉パンを調製した。本品は、米粉の独特の風味があり、もちもち感のある美味しい米粉パンである。しかも、本品は、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体が、酵母や発酵に伴う独特の不快味及び/又は不快臭を低減する一方で、パンの焼成時に発生する香ばしいフレーバーを保持する作用を有しているので、製造直後の好ましい風味が長時間維持されるという特徴がある。また、本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、乳化剤を使用していないにも関わらず、好ましい食感を有する米粉パンである。
【実施例52】
<キャンディ>
α,α−トレハロース180質量部と実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤150質量部を混合し、水85質量部を加えて、鍋に入れ、125℃までに詰め、アミノ酸混合物(味の素株式会社販売、商品名「アミノバイタル」)3.8質量部を添加して、150℃まで煮つめて、キャンディを製造した。本品は、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体及びα,α−トレハロースにより、アミノ酸特有の苦味や薬品臭などの不快味及び/又は不快臭が低減された、美味しいキャンディであり、アミノ酸の摂取目的で、健康補助食品としても有利に利用できる。
【実施例53】
<焙煎アーモンド>
アーモンド100質量部を160℃で15分焙煎した後、予め実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤に水を加えて140℃に加熱し、ブリックスを30に調整したもの20質量部を入れた容器に入れて静かに撹拌し、液を切って、冷却し焙煎アーモンドを調製した。本品は、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤により被覆されているので、酸化などに伴う不快味及び/又は不快臭が低減され、長期間、製造直後の焙煎したアーモンドの好ましい風味を保持していた。
【実施例54】
<麦茶>
大麦100質量部を常法に従って焙煎し、この高温の焙煎大麦に実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤に水を加えて撹拌溶解し、無水物換算で、濃度10%となるように調製した水溶液2質量部を均一に噴霧混合し、通風乾燥し、小袋に充填、包装して麦茶を得た。本品は、不快味及び/又は不快臭が低減されており、吸湿することもなく、風味の優れた麦茶である。
【実施例55】
<イチゴジャム>
ペクチン5質量部に対して実施例8の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤(水素添加していないもの)140質量部をよく混合後、更に、砂糖260質量部、含水結晶マルトース(株式会社林原商事販売、登録商標『サンマルト』)130質量部、水180質量部を加えてよく混合し、加熱して完全に溶解した。これに解凍した冷凍イチゴ350質量部を加えて、濃度が60%になるまで煮詰めた。冷却後、クエン酸を加えてpHを3.2に調製後、密閉容器に充填して、85℃で30分間殺菌して、瓶詰めのイチゴジャムを調製した。本品は、色鮮やかな仕上がりのイチゴジャムであり、製造後、室温で6ヶ月保存後も、不快味及び/又は不快臭も低減されており、調製直後の風味がよく保持されていた。
【実施例56】
<ドライフルーツ・ミックス野菜>
パセリ40質量部、ホウレンソウ40質量部、レタス40質量部、キャベツ40質量部、セロリ40質量部、ニンジンピューレ100質量部の混合物に対して、10%となるようにマルトースを添加し、80℃で1分間ブランチング後、リンゴ200質量部とレモン1個分の果汁と実施例2の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤36質量部と、パラチノース50質量部を混合し、ミキサーで破砕後、ブリックスが約60度になるまで加熱した。これを、冷やしてラップの上に拡げて60℃で一晩乾燥した。本品は、野菜のエグ味、青臭さなどの不快味及び/又は不快臭が低減されており、風味の良好なドライフルーツ・ミックス野菜である。
【実施例57】
<チョコクッキー>
小麦粉(薄力粉)140質量部、バター90質量部、チョコレート115質量部、グラニュー糖360質量部、全卵200質量部、アーモンド200質量部、実施例8の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤(水素添加したもの)50質量部を使用して、常法によりチョコクッキーを製造した。本品を、室温で3ヶ月間保存後、試食したところ、不快味及び/又は不快臭もなく、製造直後の風味がよく保持されていた。
【実施例58】
<パイ>
小麦粉100質量部、砂糖2質量部、実施例9で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤(水素添加したもの)2質量部、油脂3質量部、全卵3質量部、脱脂粉乳2質量部、重曹0.3質量部、生鮮牛乳50質量部、水100質量部を使用して、常法によりパイを調製した。製造後、1週間冷蔵保存後、試食したところ、脂質の酸化や重曹に由来する不快味及び/又は不快臭もなく、製造直後の風味がよく保持されていた。
【実施例59】
<豆乳>
日本産大豆を1.5倍量の水に5℃で20時間浸漬後、加水しつつグラインダーを用いて破砕し、呉を調製し、pHを5.5に調整後、この3質量部に対して蛋白質分解酵素剤(ノボザイム・ジャパン株式会社販売、商品名「フレーバーザイム1000L」)0.018質量部を加え、40℃で6時間反応させた。反応後の呉を、pH9.0に調整し、直火にかけて90℃以上で3分間保持し、その後、スクリューデカンターを用いて、呉を搾り、pHを6.3に調整した。この呉を搾った液95質量部に対して、実施例2の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤5質量部を加えて、豆乳を調製した。本品は、豆乳本来の及び/又は豆乳を蛋白分解酵素処理する際に発生する生臭みや苦味が低減された、風味のよい豆乳である。本品は、そのままで、或いは、豆腐をはじめとする、加工品の原料として有利に利用できる。また、本品は、γ−アミノ酪酸(GABA)が豊富に含有されていることから、血圧降下などを目的とする、健康食品の原料としても好適である。
【実施例60】
<豆腐>
豆乳250質量部に対して、グルコノデルタラクトン1質量部、ペクチン1質量部、実施例2の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤25質量部を混ぜて溶解した。この溶液を密封容器に入れて90℃で40分間加熱し、充填豆腐を調製した。
本品は、生地のきめも細かく、型ぐずれもせず、又、冷凍保存、或いは、チルドや冷蔵保存した後も大豆特有の臭いなどの不快味及び/又は不快臭が低減されており、離水もなく、製造直後の風味がよく保持された豆腐であった。
この充填豆腐を充填容器から取り出し、約1cm角の大きさに切り、−80℃で凍結後、常法により、凍結乾燥機で一昼夜凍結乾燥を行った。本品は、室温で3ヶ月保存後も、85℃のお湯に1分浸漬するだけで、ほぼ、乾燥前の状態に戻り、不快味及び/又は不快臭もなく、製造直後と変わらない風味の乾燥豆腐であり、即席製品の具材などに好適である。
【実施例61】
<ベーコン>
食塩22質量部、実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤2.5質量部、砂糖2質量部、乳酸ナトリウム2質量部、ポリリン酸ナトリウ2.0質量部、アスコルビン酸0.5質量部、亜硝酸ナトリウム0.2質量部、水68.8質量部を混合して溶解し、ピックル液を調製した。豚の肋肉9質量部に対してピックル液1質量部を、肉全体にまんべんなく浸透するように時間をかけて注入後、常法によりスモークして、ベーコンを調製した。スモーク後、一夜室温に放置し、スライスしたベーコンを真空包装して、10℃で保存した。本品は、保存1週間後においても、アミン類、アルデヒド類、硫化水素などの発生が抑制され、不快味及び/又は不快臭は低減されており、製造直後の風味をよく保持していた。
【実施例62】
<ウインナーソーセージ>
豚肉肩65質量部、牛もも肉20質量部、豚の背油15質量部、氷水20を混合して適当な大きさにひき、実施例2の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤1.5質量部、食塩0.2質量部、グルタミン酸ソーダ0.2質量部、オニオン0.3質量部、ホワイトペッパー0.4質量部、ナツメグ、0.04質量部、シナモン0.02質量部、グローブス0.02質量部をサイレントカッターを使用してすり混ぜ、羊の直腸に詰めて、常法によりウインナーソーセージを調製した。本品を、6ケ月間冷凍保存後解凍したところ離水などの変性は認められなかった。これを水煮して、試食したところ、調製直後の弾性がよく保持されており、肉、血液油などに由来する不快味や不快臭は低減されており、その風味は良好であった。
【実施例63】
<レトルトカレー>
小麦粉5質量部とラード4.5質量部とを混合して直火で加熱し、更に、カレー粉1.5質量部を加えて加熱したものに、水82質量部、食塩1質量部、本だし2.5質量部、実施例2の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤3.5質量部を加えて10分間煮込んで、カレーのルーを調製した。このルー150gに、予め、実施例2の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤5%と塩化カルシウム0.5%とを含有する水溶液中で煮込んだ、エビ20g、ホタテ15g、適当な大きさに切ったイカの切り身5g、馬鈴薯15g、ニンジン20gを入れて、静かに撹拌して混ぜ合わせて、レトルトパウチに充填し、121℃で25分間加圧加熱を行った。
このレトルトパウチを室温で8ヶ月間保存後、開封して試食したところ、ルー、具材は共に味、香り、色、食感などの風味は製造直後のものと同様であった。さらに、レトルト食品の調製時に問題となる、レトルト臭などの不快味及び/又は不快臭も低減されており、又、具材の崩れ、縮みや食感の劣化も抑制されていた。なお、不快味及び/又は不快臭の低減剤の水溶液を入れて煮込んだ、エビ、ホタテ、イカの切り身、馬鈴薯及びニンジンはいずれも不快味及び/又は不快臭が低減されており、カレーのみでなく、その他のレトルト食品、冷凍食品などの具材として好適である。
【実施例64】
<石けん>
重量比4対1の牛脂及びヤシ油を通常のけん化・塩析法に供して得られるニートソープ96.5質量部に、実施例3の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤1.5質量部、アスコルビン酸2−グルコシド0.5質量部、白糖0.5質量部、糖転移ルチン(東洋精糖株式会社販売、商品名「αGルチン」)0.5質量部、マルチトール1質量部、感光素201号0.0001質量部と、適量の香料を加え、均一に混合した後、枠に流し込み、冷却・固化させて石鹸を製造した。本品は、牛脂などに由来する不快臭が低減され、又、使用時に泡が口に入ってもその不快味が低減され、しかも、保形性が良好である。また、本品は、汗、アカ、皮脂などからの、アミン類、アルデヒド類及び/又は脂質の酸化や分解をよく抑制し、しかも、抗炎症作用を有するので、体臭を低減し、また、かゆみを予防する石けんとして有利に利用できる。
【実施例65】
<化粧用クリーム>
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール2質量部、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン5質量部、DL−乳酸カリウム5質量部、ベヘニルアルコール1質量部、エイコサテトラエン酸2質量部、流動パラフィン1質量部、トリオクタン酸グリセリル10質量部および防腐剤の適量を、常法に従って加熱溶解し、これに実施例6の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤2質量部、1,3−ブチレングリコール5質量部および精製水66質量部を加え、ホモゲナイザーにかけ乳化し、更に香料の適量を加えて撹拌混合しクリームを製造した。本品は、乳化剤などの配合基剤に由来する不快臭が低減された、褐変のない高品質を安定に保つ色白剤である。また、不快味及び/又は不快臭の低減剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体は、汗、アカ、フケ、皮脂などからのアミン類やアルデヒド類の発生及び/又は脂質の酸化や分解をよく抑制し、しかも、腫瘍壊死因子などの炎症性サイトカインの産生を抑制するなどの抗炎症作用を有することから、本品は、体臭の低減、皮膚刺激やかゆみの予防、更には、シミ、ソバカス、日焼けなどの色素沈着症の治療用、予防用などに有利に利用できる。また、皮膚に塗布してもベタ付き感のない、使用感に優れたクリームである。
【実施例66】
<化粧用クリーム>
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール2質量部、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン5質量部、DL−乳酸カリウム5質量部、ベヘニルアルコール1質量部、エイコサテトラエン酸2質量部、流動パラフィン1質量部、トリオクタン酸グリセリル10質量部、アスコルビン酸2−グルコシド2質量部および防腐剤の適量を常法に従って加熱溶解し、これに実施例7の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤1.6質量部、ヒアルロン酸ナトリウム0.1質量部、グリチルリチン酸ジカリウム0.1質量部、アロエベラ0.1質量部、メリッサエキス0.05質量部、カミツレエキス0.05質量部、糖転移ヘスペリジン0.5質量部、アイの水抽出エキス1質量部、1,3−ブチレングリコール5質量部および精製水66質量部を加え、ホモゲナイザーにかけて乳化し、更に香料の適量を加えて撹拌混合しクリームを製造した。本品は、乳化剤などの配合基剤に由来する不快臭が低減され、又、使用時にその一部が口に入ってもその不快味が低減されており、脂質の酸化や分解をよく抑制し、高品質を安定に保つ色白剤である。また、不快味及び/又は不快臭の低減剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体は、汗、アカ、フケ、皮脂などからのアミン類やアルデヒド類の発生及び/又は脂質の酸化や分解をよく抑制し、しかも、炎症性サイトカインの産生を抑制するなどの抗炎症作用を有することから、本品は、体臭の低減、皮膚刺激やかゆみの予防や、シミ、ソバカス、日焼けなどの色素沈着症或いは皮膚の老化の治療用、予防用などに有利に利用できる。また、本品は、保湿性に優れている上、皮膚に対する刺激性が低いので、過敏症を懸念することなく利用することができる。また、皮膚に塗布してもベタ付き感のない、使用感に優れた、塗り心地の良いクリームである。
【実施例67】
<化粧用乳液>
ステアリン酸2.5質量部、セタノール1.5質量部、ワセリン5質量部、流動パラフィン10質量部、ポリオキシエチレンオレート2質量部、酢酸トコフェロール0.5質量部、グリチルリチン酸ジカリウム0.2質量部、ポリエチレングリコール(1500)3質量部、アスコルビン酸2−グルコシド3質量部、アイの水抽出エキス3質量部、糖転移ルチン1質量部、トリエタノールアミン1質量部、実施例6の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤2質量部、精製水66質量部、プロピルパラベン0.1質量部を混合し、水酸化カリウムでpHを6.7に調節した後、更に適量の香料を加えて、常法により、乳液を製造した。本品は、乳剤剤などの成分に由来する不快臭がよく低減され、又、使用時にその一部が口に入ってもその不快味が低減されており、塗り心地もよく、塗布後のもベタ付き感のない、使用感に優れた美白用の乳液である。また、不快味及び/又は不快臭の低減剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体は、汗、アカ、フケ、皮脂などからのアミン類、アルデヒド類の発生及び/又は脂質の酸化や分解をよく抑制し、しかも、炎症性サイトカインの産生を抑制するなどの抗炎症作用を有することから、本品は体臭の低減、皮膚刺激やかゆみの予防や、シミ、ソバカス、日焼けなどの色素沈着症、或いは、老化の治療用、予防用などに有利に使用できる。
【実施例68】
<リンス>
流動パラフィン2.5質量部、ミリスチン酸0.5質量部、セタノール1.5質量部、モノステアリン酸グリセリン3質量部、ラウロイルグルタミン酸ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルジエステル1質量部、ピログルタミン酸イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル0.5質量部、感光色素301号0.1質量部を加熱、混合したものに、実施例6の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤3質量部、ラウロイル−L−リジン2.5質量部、脂肪酸L−アルギニンエチルピロリドンカルボン酸塩0.5質量部、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム0.5質量部、糖転移ルチン0.1質量部、ピロリドンカルボン酸ナトリウム1質量部に精製水75質量部を加えて加熱混合したものを混合し、常法により、乳化してリンスを調製した。本品は、配合基剤として使用されている乳化剤などの成分に由来する不快味及び/又は不快臭がよく低減され、又、使用時にその一部が口に入ってもその不快味が低減されており、使用感に優れたリンスである。また、不快味及び/又は不快臭の低減剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体は、汗、アカ、フケ、皮脂などからのアミン類、アルデヒド類の発生及び/又は脂質の酸化や分解をよく抑制し、しかも、抗炎症作用を有することから、本品は、頭皮や皮脂に由来する異臭の発生の予防、かゆみの予防やフケの発生の抑制、育毛、養毛、或いは、頭皮の老化の治療用、予防用などに有利に利用できる。また、本品は、グリセリンを使用していないにも関わらず、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、保湿性に優れている上、皮膚に対する刺激性が低いので、過敏症を懸念することなく利用することができる。
【実施例69】
<シャンプー>
2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシメチルイミダゾリウムベタイン(30%水溶液)35質量部、ヤシ油脂肪酸グルタミン酸トリエタノールアミン液(30%水溶液)35質量部、実施例6の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤10質量部、ココイルグリシンカリウム(30%水溶液)10質量部、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド2.3質量部、糖転移ヘスペリジン3質量部、感光色素201号0.1質量部、感光色素301号0.1質量部に精製水10質量部を加えて混合後、撹拌しながら70℃に加温して溶解し、更に適量の香料を加えて、常法により、シャンプーを製造した。本品は、配合基剤として使用されている乳化剤などの成分に由来する不快臭がよく低減され、又、使用時にその一部が口に入ってもその不快味が低減されており、泡立ちもよく、使用感に優れたシャンプーである。また、本品は、アミン類、アルデヒド類の発生及び/又は脂質の酸化や分解をよく抑制し、しかも、抗炎症作用を有しているので、頭皮や皮脂に由来する異臭の発生の予防、かゆみの予防やフケの発生の抑制、育毛、養毛或いは、頭皮の老化の治療用、予防用などに有利に利用できる。また、本品は、グリセリンを使用していないにも関わらず、不快味及び/又は不快臭の低減剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、保湿性に優れている上、皮膚に対する刺激性が低いので、過敏症を懸念することなく利用することができる。
【実施例70】
<ヘアトリートメント>
ステアリルアルコール5質量部、モノステアリン酸グリセリン5質量部、流動パラフィン3.5質量部、ラウロイルグルタミン酸ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテルジエステル2質量部、ピログルタミン酸イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル1質量部を加熱、混合したものに、実施例6の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤剤5質量部、1,3−ブチレングリコール3質量部、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム1質量部、ピロリドンカルボン酸ナトリウム1質量部、糖転移ルチン0.1質量部に脱イオン水65質量部を加えて加熱混合したものを混合し、常法により、乳化してヘアトリートメントを調製した。本品は、配合基剤として使用されている乳化剤など成分に由来する不快臭がよく低減され、又、使用時にその一部が口に入ってもその不快味が低減されており、使用感に優れたヘアトリートメントである。また、本品は、アミン類、アルデヒド類の発生及び/又は脂質の酸化や分解をよく抑制し、しかも、抗炎症作用を有しているので、頭皮や皮脂に由来する異臭の発生の予防、かゆみの予防や、フケの発生の抑制、育毛、養毛、或いは、頭皮の老化の治療用、予防用などに有利に利用できる。また、本品は、グリセリンを使用していないにも関わらず、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤の有効成分であるα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、保湿性に優れている上、皮膚に対する刺激性が低いので、過敏症を懸念することなく利用することができる。
【実施例71】
<ボディーソープ>
ラウリン酸カリウム15質量部、ミリスチン酸カリウム5.0質量部、実施例6の方法により調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤4.0質量部、プロピレングリコール2.0質量部、ポリエチレン粉末0.5質量部、ヒドロキシプロピルキトサン溶液0.5質量部、グリシン0.25質量部、グルタミン0.25質量部、感光色素201号0.1質量部、適量のフェノール、pH調整剤、ラベンダー水を適量加後、精製水を加えて総量を100質量部とし、常法により乳化してホディーソープを調製した。本品は、配合基剤として使用されている乳化剤などの成分に由来する不快臭がよく低減され、又、使用時に口に入ってもその不快味が低減され、又、使用時にその一部が口に入ってもその不快味が低減されており、泡立ちの良い、使用感に優れたホディーソープである。また、本品は、アミン類、アルデヒド類の発生及び/又は脂質の酸化や分解をよく抑制し、しかも、炎症性サイトカインを抑制するなどの抗炎症作用を有しているので、体臭の発生の予防、かゆみの予防や、或いは、皮膚の老化の治療用、予防用などに有利に利用できる。また、本品は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を含有しているので、保湿性に優れている上、皮膚に対する刺激性が低いので、過敏症を懸念することなく利用することができる。
【実施例72】
<練歯磨>
第二リン酸カルシウム30質量部、ハイドロキシアパタイト10質量部、炭酸カルシウム5質量部、実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤30質量部、ラウリル硫酸ナトリウム1.5質量部、糖転移ヘスペリジン(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「αGヘスペリジン」)1質量部、モノフルオロリン酸ナトリウム0.7質量部、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート0.5質量部、防腐剤0.05質量部及びサッカリンナトリウム0.02質量部を水22質量部と混合して練歯磨を調製した。本品は、ラウリル硫酸ナトリウムの苦味やサッカリンの後味などの不快味が低減されているので、口当たりがよく、使用感、光沢、洗浄力も良好で、また、使用後は、歯茎の血行を改善し、炎症を抑制すると共に、口臭を低減することに加えて、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤の有効成分であるα−マルトシルα,α−トレハロースをはじめとするα,α−トレハロースの糖質誘導体は、不溶性グルカンの生成を抑制し、歯のう蝕を抑制する作用を有しているので、練歯磨として好適である。
【実施例73】
<マウスウオッシュ>
エタノール15質量部、実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤10質量部、ポリオキシエチレン硬化ひまし油2質量部、サッカリンナトリウム0.02質量部、安息香酸ナトリウム0.05質量部、リン酸二水素ナトリウム0.1質量部、着色料及び香料適量と水72.2質量部とを混合してマウスウオッシュを調製した。本品は、サッカリンの後味などの不快味が低減されているので、口当たりがよく、使用感も良好で、また、使用後は、口腔内の炎症を抑制し、血行を改善することに加えて、口臭を低減することことに加えて、本発明の不快味及び/又は不快臭の低減剤の有効成分であるα−マルトシルα,α−トレハロースをはじめとするα,α−トレハロースの糖質誘導体は、不溶性グルカンの生成を抑制し、歯のう蝕を抑制する作用を有しているので、マウスウオッシュとして好適である。
【実施例74】
<外傷治療用軟膏>
マクロゴール(400)450質量部、カルボキシビニルポリマー3質量部、プルラン1質量部、イソプロパノール400質量部に対してグルコン酸クロルヘキシジン液1質量部を加えて、真空混合撹拌し、これに、実施例3の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤70質量部、水酸化ナトリウム3質量部、精製水77質量部を加えて混合し、適度の伸び、付着性を有する外傷治療用軟膏を得た。本品は、配合成分に由来する不快臭が低減され、又、使用時にその一部が口に入ってもその不快味が低減されているので、使用時の不快感が軽減されるだけでなく、抗炎症作用を有しているので、塗り心地もよく、創面に直接塗布するか、ガーゼなどに塗るなどして患部に使用することにより、切傷、擦り傷、火傷、水虫、しもやけなどの外傷を治療することができる。
【実施例75】
<マルチビタミン剤>
パルミチン酸レチノール5質量部、エルゴカルシフェロール5質量部、塩酸フルスルチアミン10質量部、リボフラビン5質量部、塩酸ピリドキシン10質量部、アスコルビン酸60質量部、酢酸トコフェロール10質量部、ニコチン酸アミド30質量部、シアノコバラミン0.01質量部、パントテン酸カルシウム40質量を撹拌混合し、これの1質量部に対して、実施例9の方法により調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤(水素添加したもの)24質量部を混合して撹拌し、打錠機にて打錠して、マルチビタミンの錠剤を調製した。本品は、長期保存後も、ビタミン類に特有の薬臭などの不快味及び/又は不快臭が低減され、吸湿もなく、ビタミン類の酸化や分解も抑制された、服用しやすいビタミン剤である。
【実施例76】
<点眼剤>
実施例5の方法で調製した粉末状の不快味及び/又は不快臭の低減剤剤(パイロジェンを除去したもの)5質量部、塩化ナトリウム0.4質量部、塩化カリウム0.15質量部、リン酸2水素ナトリウム0.2質量部、硼砂0.15質量部、グリチルリチン酸ジカリウム0.1質量部を混合し、全量で100質量部となるように滅菌精製水を適量添加し、撹拌混合してパイロジェンを含まない、無菌の点眼剤を調製した。本品は、点眼後に、鼻涙管を通って、口腔内に入っても、グリチルリチン酸に由来する不快味が低減されており、眼粘膜や眼球表層の細胞を乾燥障害から保護する作用も有しているので、一般のドライアイやシェーグレン症候群の患者の眼の乾燥の予防剤、治療剤として有利に利用できる。
【実施例77】
<フィルム>
市販のプルラン(株式会社林原商事販売、商品名「プルランPI−20」)22質量部、ハイドロキシメチレンセルロース22質量部、界面活性剤(ショ糖モノラウレート)1.0質量部、実施例6の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤5質量部、グリセロール1質量部、スクラロース1質量部を、脱イオン水200量部に添加混合して、フィルム用原液の水溶液を調製した。この溶液を、減圧して脱泡後、合成プラスチックフィルムの上に連続して流延し、70℃の熱風中を通過させて乾燥し、厚さ30μmのフィルムを調製した。本品は、界面活性剤に由来する不快味/及び又は不快臭が抑制されており、透明で光沢があり、優れた水溶解性を有している。また、本品は、湿度変化に対する安定性に優れており、本品から調製される可食性、水溶性の包材やフィルムは、それらの間、或いは、それらを袋状にしたものの中に、飲食品、化粧品、医薬品、化学品などの各種物質を、挟み込んだり、積層成形物としたり、或いは、充填するなどの目的で、二次加工用の原材料として有利に利用できる。
【実施例78】
<鮮度保持剤>
モウソウチク抽出物(株式会社フードテックス販売、商品名「タケリグナン505」)97質量部に実施例1の方法で調製したシラップ状の不快味及び/又は不快臭の低減剤3質量部を加えて攪拌・混合して、魚介類等の鮮度保持剤を調製した。本品は、モウソウチク抽出物などに由来する不快味及び/又は不快臭が低減され、また、抗菌性にすぐれた鮮度保持剤である。本品を、使用時に冷水や2〜3%程度濃度の冷食塩水等で約100倍程度に希釈し、これに魚介類を、そのまま、或いは切り身などに加工したものを1〜5程度浸漬することにより、魚介類やその加工品の生臭さを除去することができ、さらに、それらの酸化を抑制し、細菌などの微生物の増殖も抑制して、鮮度を保持することができる。また、本品は、霧吹き器などを使用して、魚介類やその加工品はもとより、他の食品などの組成物の表面に噴霧、或いは、塗布することにより、それらの不快味及び/又は不快臭の抑制や鮮度保持に使用できる。また、本品を、使用目的に応じて約50倍或いはそれ以上に適宜希釈して、ヒトや動物の手足や体に噴霧したり、調理器具、室内や家具類、産業廃棄物、動物の糞尿などに噴霧することにより、体臭、獣臭、アンモニア臭、たばこ臭、細菌などの微生物の増殖により発生する臭いなどの異臭を低減すると同時に、細菌などの微生物の消毒・殺菌に使用することも随意である。
【産業上の利用可能性】
以上説明したとおり、本発明は、α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分とする不快味及び/又は不快臭の低減剤を、組成物に含有せしめることにより、組成物の有する不快味及び/又は不快臭を低減するものである。しかも、α,α−トレハロースの糖質誘導体は、安全で、且つ、非常に安定であることから、本発明によるα,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分とするの不快味及び/又は不快臭の低減剤の利用分野は、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨、化学工業品など多岐に渡る。本発明は、この様に顕著な作用効果を奏する発明であり、産業上の貢献は誠に大きく、意義のある発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物にα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有せしめることを特徴とする不快味及び/又は不快臭の低減方法。
【請求項2】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、α,α−トレハロース分子の少なくとも一方のグルコースに、モノ−グルコース、ジ−グルコース、トリ−グルコース及びテトラ−グルコースから選ばれるいずれかが結合しているものであることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の不快味及び/又は不快臭の低減方法。
【請求項3】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、分子の末端にトレハロース構造を有する糖質であることを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項に記載の不快味及び/又は不快臭の低減方法。
【請求項4】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、非晶質状態であることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第3項のいずれかに記載の不快味及び/又は不快臭の低減方法。
【請求項5】
α,α−トレハロースの糖質誘導体とともに、他の糖質を含有せしめることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第4項のいずれかに記載の不快味及び/又は不快臭の低減方法。
【請求項6】
他の糖質が、還元性糖質類、非還元性糖質類、糖アルコール類及び水溶性多糖類から選ばれる1種又は2種以上である請求の範囲第5項に記載の不快味及び/又は不快臭の低減方法。
【請求項7】
非還元性糖質類がα,α−トレハロースである請求の範囲第6項に記載の不快味及び/又は不快臭の低減方法。
【請求項8】
組成物の総質量に対して、α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、0.6質量%以上含有せしめることを特徴とする請求の範囲第1項乃至第7項のいずれかに記載の不快味及び/又は不快臭の低減方法。
【請求項9】
請求の範囲第1項乃至第8項のいずれかに記載の不快味及び/又は不快臭の低減方法により得られる、不快味及び/又は不快臭が抑制された組成物。
【請求項10】
口中使用物、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、日用品、飼料、餌料、雑貨又は化学工業品であることを特徴とする請求の範囲第9項に記載の組成物。
【請求項11】
調味料、エキス類、クリーム類、ジャム類、ペースト類、和菓子類、洋菓子類、パン類、魚肉・畜肉加工品類、水産加工品、農産加工品類、麺類、惣菜食品類、米飯類、発酵食品類、冷凍食品類、レトルト食品類、冷蔵食品類、乾燥食品類、凍結乾燥食品類、アルコール飲料、清涼飲料、ドリンク剤、アミノ酸剤、ミネラル剤又はビタミン剤であることを特徴とする請求の範囲第10項に記載の組成物。
【請求項12】
テーブルシュガー、チューインガム、鰹節調味エキス、生ホタテの貝柱加工品、スズキのフィレー、ウニ加工品、フグ干物、煮干し、アサリのむき身加工品、茹でダコ、ニシンの酢漬、ブリの煮付け、ビール、粉末醤油、粉末牛乳、粉末ローヤルゼリー、粉末高麗ニンジンエキス、なすびの漬け物、もやし加工品、野菜ジュース、緑茶飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、アミノ酸含有飲料、ミネラル含有飲料、苦汁加工品、白米、無洗米、米飯、即席麺、冷凍パン生地、米粉パン、キャンディ、焙煎アーモンド、麦茶、イチゴジャム、ドライフルーツ・ミックス野菜、チョコクッキー、パイ、豆乳、豆腐、ベーコン、ウインナーソーセージ、レトルトカレー、石けん、化粧用クリーム、化粧用乳液、リンス、シャンプー、ヘアトリートメント、ボディーソープ、練歯磨、マウスウオッシュ、外傷治療用軟膏、マルチビタミン剤、点眼剤又はフィルムであることを特徴とする請求の範囲第9項乃至第11項のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
α,α−トレハロースの糖質誘導体を有効成分として含有することを特徴とする不快味及び/又は不快臭の低減剤。
【請求項14】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、α,α−トレハロース分子の少なくとも一方のグルコースに、モノ−グルコース、ジ−グルコース、トリ−グルコース又はテトラ−グルコースが結合していることを特徴とする請求項13に記載の不快味及び/又は不快臭の低減剤。
【請求項15】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、分子の末端にトレハロース構造を有する糖質であることを特徴とする請求の範囲第13項又は第14項に記載の水分の不快味及び/又は不快臭の低減剤。
【請求項16】
α,α−トレハロースの糖質誘導体が、非晶質状態であることを特徴とする請求の範囲第13項乃至第15項のいずれかに記載の不快味及び/又は不快臭の低減剤。
【請求項17】
α,α−トレハロースの糖質誘導体とともに、他の糖質を含有せしめることを特徴とする請求の範囲第13項乃至第16項のいずれかに記載の不快味及び/又は不快臭の低減剤。
【請求項18】
他の糖質が、還元性糖質、非還元性糖質、糖アルコール及び水溶性多糖類から選ばれるいずれか1種又は2種以上である請求の範囲第17項に記載の不快味及び/又は不快臭の低減剤。
【請求項19】
非還元性糖質が、α,α−トレハロースである請求の範囲第18項に記載の不快味及び/又は不快臭の低減剤。
【請求項20】
α,α−トレハロースの糖質誘導体を、無水物換算で、総質量の10質量%以上含有することを特徴とする請求の範囲第13項乃至第19項のいずれかに記載の不快味及び/又は不快臭の低減剤。
【請求項21】
不快味及び/又は不快臭がアミン類及び/又はアルデヒド類に由来することを特徴とする請求の範囲第13項乃至第20項のいずれかに記載の不快味及び/又は不快臭の低減剤。

【国際公開番号】WO2004/060077
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【発行日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506713(P2005−506713)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016613
【国際出願日】平成15年12月24日(2003.12.24)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】