不感帯処理部を備えた電動機の制御装置
【課題】被駆動体を電動機によって同一動作パターンの繰り返し制御を行う場合において、被駆動体を停止させるために電動機の位置指令をゼロにしたときに発生し得る被駆動体の振動を抑制することができる電動機の制御装置を実現する。
【解決手段】電動機Mの制御装置1は、被駆動体2の位置を検出する位置検出部11と、電動機Mに与えられる位置指令と位置検出部11で検出した被駆動体2の位置との位置偏差をサンプリング周期毎に取得する位置偏差取得部12と、位置偏差取得部12により取得した位置偏差が所定の不感帯範囲内に含まれる場合は当該位置偏差をゼロに置き換えて出力する不感帯処理部13と、不感帯処理部13から出力された位置偏差がゼロになるような補正量を算出する繰り返し制御部14とを備え、位置偏差取得部12により取得した位置偏差と繰り返し制御部14により算出された補正量とに基づいて、電動機Mを制御する。
【解決手段】電動機Mの制御装置1は、被駆動体2の位置を検出する位置検出部11と、電動機Mに与えられる位置指令と位置検出部11で検出した被駆動体2の位置との位置偏差をサンプリング周期毎に取得する位置偏差取得部12と、位置偏差取得部12により取得した位置偏差が所定の不感帯範囲内に含まれる場合は当該位置偏差をゼロに置き換えて出力する不感帯処理部13と、不感帯処理部13から出力された位置偏差がゼロになるような補正量を算出する繰り返し制御部14とを備え、位置偏差取得部12により取得した位置偏差と繰り返し制御部14により算出された補正量とに基づいて、電動機Mを制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置等の制御装置によって、駆動制御される工作機械や産業機械等における電動機の制御装置に関し、特に、所定の同一パターンの位置指令を繰り返すことで被駆動体を同一動作パターンで駆動制御する電動機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同一パターンの指令が繰り返し指令されて加工等を行う場合、制御偏差をゼロ(0)近くまで収束させて加工精度を向上させる方法として繰り返し制御(学習制御)が知られている。この繰り返し制御(学習制御)は、ワーク1回転等のパターン動作の時間を繰り返し(学習)の周期として、ワークを複数回回転させて所定制御周期毎に位置偏差を求め、該位置偏差に基づいて補正量をメモリに記憶しておき、当該パターン周期の各制御周期の位置偏差に、メモリに記憶する1つ前のパターン周期における対応する制御周期の補正量を加算することによって、位置偏差をゼロに収束させようとするものである(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。繰り返し制御には、特許文献1に記載された発明のような被駆動体の位置や角度を基準にして制御を行う方法と、特許文献2に記載された発明のような時間を基準にして制御を行う方法とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2840139号公報
【特許文献2】特許第4043996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クーロン摩擦のような非線形摩擦特性を持つ被駆動体を電動機によって同一動作パターンの繰り返し制御を高精度で行う場合、被駆動体を駆動制御する電動機に対する位置指令がゼロ以外の状態からゼロ近傍に遷移した後さらにゼロ近傍に留まるような状態が続くと、被駆動体2の非線形摩擦の影響で繰り返し制御部が出力する補正量が振動することがある。この結果、被駆動体が停止した状態においてもなお繰り返し制御を続行していると、被駆動体に振動が発生してしまう。
【0005】
図10は、ストライベック効果を持つ非線形摩擦特性を例示する図である。図示の例では、粘性摩擦はゼロとしている。このような摩擦特性を持つ被駆動体では、駆動時にスティックスリップ現象が見られる。図11および12は、図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体を電動機で駆動制御する場合に発生する被駆動体の振動のシミュレーション結果を例示する図であって、図11は被駆動体を駆動制御する電動機に対する位置指令を示し、図12は、図11に示す位置指令がされたときの被駆動体の位置偏差を示す図である。図11に示す位置指令では、一例として100Hzの正弦波状の同一パターンが繰り返し指令されている場合に、ある時点でその振幅を徐々に小さくしていき、最終的には振幅ゼロとなるように設定している。図11に示す位置指令を電動機に与えて図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体について繰り返し駆動制御すると、図12に示すように、位置指令の振幅がゼロになった後、ゼロの状態が継続することで、低い周波数(15Hz)の振動が発生していることがわかる。上述のように繰り返し制御には被駆動体の位置や角度を基準にして制御を行う方法と、時間を基準にして制御を行う方法とがあるが、いずれの制御方法で電動機を動作させて非線形摩擦特性を持つ被駆動体を駆動制御しても、上記のような振動は発生し得る。
【0006】
上述のような振動の発生原理を説明すると次の通りである。被駆動体を駆動制御する電動機に対する位置指令がゼロ以外の状態からゼロの状態に遷移する場合において、被駆動体の非線形摩擦が存在することにより、電動機に対する位置指令がゼロになっても繰り返し制御部の出力である補正量はゼロにならない。その理由は、本来であれば繰り返し制御部が出力する補正量がゼロになる時点で位置指令と被駆動体の実際の位置との差である位置偏差がゼロになるべきところ、補正後の位置指令に基づいて電動機が発生するトルクよりもクーロン摩擦の方が大きいと、繰り返し制御部が出力する補正量がゼロになる前に位置偏差がゼロになってしまうからである。この結果、繰り返し制御部は、位置偏差がゼロになった時点の補正量(すなわちゼロではない値)を保持することになる。位置偏差がゼロであっても、繰り返し制御部からはゼロではない補正量が出力されるので、この補正量を用いて作成された電動機に対する速度指令はゼロには収束しない。このため、電動機で駆動制御される被駆動体の速度の積分項は徐々に大きくなっていき、摩擦に打ち勝つトルクが発生するようになると、位置偏差が発生する。すると、繰り返し制御部は、この位置偏差を抑制するような補正量を出力することになる。しかしながら、位置偏差の発生周期は繰り返し制御部の処理の繰り返し周期(学習周期)と同期しないので、繰り返し制御を続行する繰り返し制御部は、この位置偏差を増幅することになり、その結果、被駆動体に振動が発生してしまう。
【0007】
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、被駆動体を電動機によって同一動作パターンの繰り返し制御を行う場合において、被駆動体を停止させるために電動機の位置指令をゼロにしたときに発生し得る被駆動体の振動を抑制することができる電動機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を実現するために、本発明においては、所定の同一パターンの位置指令を繰り返すことで被駆動体を同一動作パターンで駆動制御する電動機の制御装置は、被駆動体の位置を検出する位置検出部と、電動機に与えられる位置指令と位置検出部で検出した被駆動体の位置との位置偏差をサンプリング周期毎に取得する位置偏差取得部と、位置偏差取得部により取得した位置偏差が所定の不感帯範囲内に含まれる場合は当該位置偏差をゼロに置き換えて出力する不感帯処理部と、不感帯処理部から出力された位置偏差がゼロになるような補正量を算出する繰り返し制御部と、を備え、位置偏差取得部により取得した位置偏差と繰り返し制御部により算出された補正量とに基づいて、電動機を制御する。
【0009】
ここで、不感帯処理部は、電動機に対して所定の値以下の速度指令が所定の時間継続する場合または被駆動体について検出された速度が所定の値以下である状態が所定の時間継続した場合に、不感帯範囲内に含まれる位置偏差をゼロに置き換えて出力するようにしてもよい。
【0010】
また、不感帯処理部は、位置偏差取得部により取得した位置偏差が、不感帯範囲外からこの不感帯範囲を内方に含む緩衝範囲内までの間に含まれる場合は、このときの位置偏差よりも小さい値を新たなる位置偏差に設定して出力し、位置偏差取得部により取得した位置偏差が、緩衝範囲外にある場合は、このときの位置偏差をそのまま出力するようにしてもよい。この場合、不感帯範囲外から緩衝範囲内までの間に含まれる場合に設定される上記新たなる位置偏差は、位置偏差取得部により取得した位置偏差が不感帯範囲の境界にあるときはゼロであり、かつ位置偏差取得部により取得した位置偏差が緩衝範囲の境界にあるときは当該位置偏差と一致するような増加関数に従って設定されるのが好ましい。
【0011】
繰り返し制御部は、高周波領域を遮断するローパスフィルタ部と、ローパスフィルタ部の後段に設置され、サンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたって補正量を保持するメモリ部と、メモリ部による保持後の出力に1未満のゲインを乗算した値と、不感帯処理部から出力された位置偏差と、を加算する加算器と、を有し、上記ローパスフィルタ部には、加算器による加算結果が入力される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電動機に与えられる位置指令と位置検出部で検出した被駆動体の位置との位置偏差が所定の不感帯範囲内に含まれる場合に当該位置偏差をゼロに置き換えて出力するような不感帯処理部を繰り返し制御部の前段に設け、不感帯処理部から出力された位置偏差を繰り返し制御部に入力するので、繰り返し制御部は被駆動体の非線形摩擦の影響を受けることはない。繰り返し制御部はこの不感帯処理部から出力された位置偏差がゼロになるような補正量を算出し、これを位置偏差に加算して電動機により被駆動体を駆動制御するので、被駆動体を電動機によって同一動作パターンの繰り返し制御を行う場合において、被駆動体を停止させるために電動機の位置指令をゼロにしたときに発生し得る被駆動体の振動を抑制することができる。
【0013】
また、不感帯を設定すると、その不感帯幅の位置偏差に対して繰り返し制御部は機能せず、位置偏差がゼロに収束することなく不感帯幅に相当する位置偏差を持つことになるので、被駆動体の振動が発生する状態も生じ得るが、本発明においては、不感帯処理部を、電動機に対して所定の値以下の速度指令が所定の時間継続する場合または被駆動体について検出された速度が所定の値以下である状態が所定の時間継続した場合に、不感帯範囲内に含まれる位置偏差をゼロに置き換えて出力するように構成することにより、位置偏差をゼロに収束させ、被駆動体の振動の発生を抑制することができる。
【0014】
また、本発明によれば、不感帯処理部を、位置偏差取得部により取得した位置偏差が、不感帯範囲外からこの不感帯範囲を内方に含む緩衝範囲内までの間に含まれる場合は、このときの位置偏差よりも小さい値を新たなる位置偏差に設定して出力し、位置偏差取得部により取得した位置偏差が、緩衝範囲外にある場合は、このときの位置偏差をそのまま出力するように構成することにより、より迅速になおかつ安定して被駆動体の振動を抑制することができる。
【0015】
また、本発明によれば、繰り返し制御部を、高周波領域を遮断するローパスフィルタ部と、ローパスフィルタ部の後段に設置され、サンプリング周期の少なくとも1周期分に相当する補正量を保持するメモリ部と、メモリ部による保持後の出力に1未満のゲインを乗算した値と、不感帯処理部から出力された位置偏差と、を加算する加算器と、を有し、上記ローパスフィルタ部には、加算器による加算結果が入力されるように構成することにより、被駆動体の摩擦の状態が変化しても、被駆動体の振動の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例による電動機の制御装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部および繰り返し制御部を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例による電動機の制御装置の動作フローを示すフローチャートである。
【図4】図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体を本発明の実施例による電動機の制御装置で駆動制御する場合に発生する被駆動体の振動のシミュレーション結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例における繰り返し制御部のフィードバックゲインKcと繰り返し制御部の出力との関係を表わすシミュレーション結果を示す図であって、(a)は、繰り返し制御部のフィードバックゲインKcが1の場合を示し、(b)は繰り返し制御部のフィードバックゲインKcが1未満の場合を示す図である。
【図6】従来より用いられていた不感帯特性を例示する図(その1)である。
【図7】従来より用いられていた不感帯特性を例示する図(その2)である。
【図8】本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部で用いられる不感帯特性を説明する図(その1)である。
【図9】本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部で用いられる不感帯特性を説明する図(その2)である。
【図10】ストライベック効果を持つ非線形摩擦特性を例示する図である。
【図11】図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体を電動機で駆動制御する場合に発生する被駆動体の振動のシミュレーション結果を例示する図であって、被駆動体を駆動制御する電動機に対する位置指令を示す図である。
【図12】図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体を電動機で駆動制御する場合に発生する被駆動体の振動のシミュレーション結果を例示する図であって、図11に示す位置指令がされたときの被駆動体の位置偏差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施例による電動機の制御装置を示すブロック図である。以降、同じ参照符号が付された構成要素は同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。本実施例では、被駆動体2に電動機Mに連結し、電動機Mに対して所定の同一パターンの位置指令を繰り返すことで被駆動体2を同一動作パターンで駆動制御する場合について説明する。同一動作パターンで動作する被駆動体2の例としては、製品に対して繰り返し加工する工具などがある。
【0018】
図1に示すように、所定の同一パターンの位置指令を繰り返すことで被駆動体2を同一動作パターンで駆動制御する電動機Mの制御装置1は、被駆動体2の位置を検出する位置検出部11と、電動機Mに与えられる位置指令と位置検出部11で検出した被駆動体2の位置との位置偏差をサンプリング周期毎に取得する位置偏差取得部12と、位置偏差取得部12により取得した位置偏差が所定の不感帯範囲内に含まれる場合は当該位置偏差をゼロに置き換えて出力する不感帯処理部13と、不感帯処理部13から出力された位置偏差がゼロになるような補正量を算出する繰り返し制御部14と、を備え、位置偏差取得部12により取得した位置偏差と繰り返し制御部14により算出された補正量とに基づいて、電動機Mを制御する。
【0019】
位置偏差取得部12に入力される位置指令は、例えば上位の数値制御装置(図示せず)から入力される。位置偏差取得部12により取得した位置偏差と繰り返し制御部14により算出された補正量とは加算器15によって加算される。この加算結果は所定のゲインが掛け合わされた後、速度制御部16に入力され、速度制御部16は、この入力された情報と、位置検出器11によって検出された被駆動体2の位置情報とに基づいて電動機Mに対するトルク指令を作成する。位置偏差取得部12、不感帯処理部13、繰り返し制御部14、加算器15、ゲイン、および速度制御部16は、例えば例えばDSPやFPGAなどの演算処理プロセッサからなり、その動作はソフトウェアプログラムで規定することができる。なお、不感帯処理部13の処理に用いられる不感帯範囲の幅は、本発明の実施例による電動機の制御装置が適用される状況や環境などに応じて適宜設定すればよい。
【0020】
図2は、本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部および繰り返し制御部を示すブロック図である。図1の位置偏差取得部12から出力された位置偏差は、不感帯処理部13を経由して繰り返し制御部14へ入力される。
【0021】
繰り返し制御部14は、加算器23と、高周波領域を遮断するローパスフィルタ部21と、ローパスフィルタ部21の後段に設置されるメモリ部22と、位相進めフィルタ24とを備える。メモリ部22は、ローパスフィルタ部21から出力された値をサンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたって保持する遅延メモリである。メモリ部22によるサンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたる保持後に出力された補正量は、位相進めフィルタ部24へ入力される。補正量は、位相進めフィルタ部24で移送を進めた(低周波領域が遮断された)後、繰り返し制御部14から出力される。繰り返し制御部14から出力された補正量は、図1の加算器15へ入力される。また、メモリ部22による保持後の出力は、加算器23へ正帰還される。繰り返し制御部14における正帰還のフィードバックゲインをKcとする。加算器23は、メモリ部22による保持後の出力から正帰還された補正量と、不感帯処理部13から出力された位置偏差と、を加算する。ローパスフィルタ部21には、加算器23による加算結果が入力される。
【0022】
次に、図1および2を参照して説明した電動機の制御装置1の動作フローについて説明する。図3は、本発明の実施例による電動機の制御装置の動作フローを示すフローチャートである。
【0023】
ステップS101にとおいて、位置偏差取得部12は、被駆動体2の位置を検出する位置検出部11と、電動機Mに与えられる位置指令と位置検出部11で検出した被駆動体2の位置との位置偏差をサンプリング周期毎に取得する。取得された位置偏差は、不感帯処理部13および加算器15に入力される。
【0024】
次いでステップS102において、不感帯処理部13は、位置偏差取得部12により取得した位置偏差が、所定の不感帯範囲内に含まれるか否かを判定する。位置偏差か所定の不感帯範囲内に含まれる場合はステップS103へ進み、当該位置偏差をゼロに置き換えて出力し、ステップS104へ進む。位置偏差か所定の不感帯範囲内に含まれない場合は、後述する不感帯特性に従って位置偏差を新たに設定した後、ステップS104へ進む。不感帯処理部13から出力された位置偏差は、繰り返し制御部14へ入力される。
【0025】
メモリ部22は、ローパスフィルタ部21から出力された値をサンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたって保持するので、ステップS104においては、加算器23は、不感帯処理部13から出力された位置偏差と、当該位置偏差よりもサンプリング周期の少なくとも1周期前の値とを加算する。加算器23による加算結果は、ローパスフィルタ部21に入力される。
【0026】
次いで、ステップS105において、ローパスフィルタ部21は、加算器23による加算結果の高周波領域を遮断するローパスフィルタ処理を実行する。
【0027】
ステップS106において、ローパスフィルタ部21の出力は、補正量としてメモリ部22に保存される。メモリ部22は、ローパスフィルタ部21から出力された値をサンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたって保持する。
【0028】
メモリ部22によるサンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたる保持後に出力された補正量は、位相進めフィルタ部24へ入力される。ステップS107において、位相進めフィルタ部24は、入力された補正量について低周波領域を遮断して位相進めフィルタ処理を実行し、出力する。繰り返し制御部14から出力された補正量は、図1の加算器15へ入力される。
【0029】
また、メモリ部22によるサンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたる保持後の出力は、加算器23へ正帰還され、加算器23は、ステップS108において、メモリ部22による保持後の出力から正帰還された補正量と、不感帯処理部13から出力された位置偏差と、を加算する。以降、上記各処理が繰り返し実行される。
【0030】
図4は、図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体を本発明の実施例による電動機の制御装置で駆動制御する場合に発生する被駆動体の振動のシミュレーション結果を示す図である。本シミュレーションでは、図12に示した従来技術の場合同様、図11に示す位置指令を電動機Mに与えた。図11に示す位置指令では、100Hzの正弦波状の同一パターンが繰り返されているに、ある時点でその振幅を徐々に小さくしていき、最終的には振幅ゼロとしている。図11に示す位置指令を本発明の実施例による電動機Mの制御装置1に与えて図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体2を繰り返し駆動制御すると、図4に示すように、位置指令の振幅がゼロの状態が継続しても、被駆動体2には振動が発生していないことがわかる。このように、本発明の実施例の電動機Mの制御装置1によれば、被駆動体2を電動機によって同一動作パターンの繰り返し制御を行う場合において、被駆動体2を停止させるために電動機Mの位置指令をゼロにしたときに発生し得る被駆動体の振動を抑制することができる。
【0031】
なお、上述の不感帯を設定すると、その不感帯幅の位置偏差に対して繰り返し制御部14は機能せず、位置偏差がゼロに収束することなく不感帯幅に相当する位置偏差を持つことになるので、被駆動体2の振動が発生する状態も生じ得る。例えば図11に示す位置指令では速度指令が速度ゼロ近傍を必ず通過することになるため、不感帯を設定すると位置偏差が増加する場合がある。そこで、このような状態を回避するために、不感帯処理部13を、電動機Mに対して所定の値以下の速度指令が所定の時間継続する場合または被駆動体2について検出された速度が所定の値以下である状態が所定の時間継続した場合に、不感帯範囲内に含まれる位置偏差をゼロに置き換えて出力するように構成してもよい。これにより、位置偏差をゼロに収束させ、被駆動体2の振動の発生を抑制することができる。
【0032】
また、不感帯を設定すると、上述のように位置偏差がゼロに収束することなく不感帯幅に相当する位置偏差を持つことになり、また、被駆動体2の非線形摩擦の影響もあって、繰り返し制御部14から出力される補正量はゼロに収束しない。この場合、被駆動体2の摩擦の状態が変化すると被駆動体2の振動が再び発生することがある。そこで、このような状態を回避するために、繰り返し制御部14における正帰還のフィードバックゲインKcを1未満に設定してもよい。これにより、ある時定数をもって繰り返し制御部14から出力される補正量を徐々にゼロにすることができ、その結果、このような被駆動体2の振動を回避することができる。繰り返し制御部14が出力する補正量をゼロに収束させるまでの時定数は、フィードバックゲインKcの大きさにより規定される。図5は、本発明の実施例における繰り返し制御部のフィードバックゲインKcと繰り返し制御部の出力との関係を表わすシミュレーション結果を示す図であって、(a)は、繰り返し制御部のフィードバックゲインKcが1の場合を示し、(b)は繰り返し制御部のフィードバックゲインKcが1未満の場合を示す図である。シミュレーションでは、図11に示す位置指令を電動機Mに与えた。図11に示す位置指令では、100Hzの正弦波状の同一パターンが繰り返されているに、ある時点でその振幅を徐々に小さくしていき、最終的には振幅ゼロとしている。図11に示す位置指令を本発明の実施例による電動機Mの制御装置1に与えて図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体2を繰り返し駆動制御すると、繰り返し制御部14のフィードバックゲインKcが1の場合は図5(a)に示すように、位置指令がゼロになっても繰り返し制御部14から出力される補正量はゼロには収束せず、ある一定の値を維持する。これに対し、繰り返し制御部14のフィードバックゲインKcが1未満の場合は、図5(b)に示すように、位置指令がゼロになると、それに応じて繰り返し制御部14から出力される補正量はゼロに収束する。このように、繰り返し制御部14のフィードバックゲインKcを1未満に設定すれば、被駆動体2を電動機によって同一動作パターンの繰り返し制御を行う場合に、被駆動体2を停止させるために電動機Mの位置指令をゼロにしたときにおいて、繰り返し制御部14から出力される補正量はゼロに収束するので、被駆動体2の摩擦の状態が変化しても被駆動体2の振動を抑制することができる。
【0033】
次に、不感帯処理部13の処理について、より具体的に説明する。図6および7は、従来より用いられていた不感帯処理特性を例示する図である。また、図8および9は、本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部で用いられる不感帯特性を説明する図である。従来一般に用いられてきた不感帯処理によれば、図6に示すように、入力信号が不感帯範囲内のときは出力信号はゼロに設定され、入力信号が不感帯範囲外のときは式1で表わすような出力信号となるように設定される。
【0034】
出力信号=(|入力信号|−不感帯幅)*(入力信号の符号) ・・・(式1)
【0035】
図6に示す不感帯特性を用いれば、不感帯範囲の境界前後における出力信号の不連続性が小さいので、制御の安定性においても優位である。しかしながら、図6に示す不感帯特性を、本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部にそのまま適用すると、入力信号が不感帯範囲外のときは式1に示すように入力信号から不感帯幅分を差し引くので、繰り返し制御部14のゲインが実質的に低下することになり、位置偏差の変動に対する繰り返し制御部14の追従性が劣ることになる。
【0036】
一方、図7に示すような入力信号が不感帯範囲内のときは出力信号はゼロに設定され、入力信号が不感帯範囲外のときは出力信号は入力信号と等しくするような不感帯特性を、本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部に適用すると、図6に示す不感帯特性で問題となる繰り返し制御部14のゲインの低下を回避することができる。しかしながら、この場合、出力信号が不連続になるため繰り返し制御部14の制御の安定性に問題がある。
【0037】
そこで、本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部では、図8もしくは9に示すような不感帯特性を用いる。
【0038】
図8に示す例では、不感帯処理部13は、位置偏差取得部12により取得した位置偏差が、所定の不感帯範囲内に含まれる場合は当該位置偏差をゼロに置き換えて出力し、不感帯範囲外からこの不感帯範囲を内方に含む緩衝範囲内までの間に含まれる場合は、このときの位置偏差よりも小さい値を新たなる位置偏差に設定して出力し、緩衝範囲外にある場合はこのときの位置偏差をそのまま出力するようにする。ここで、不感帯範囲外から緩衝範囲内までの間に含まれる場合に設定される上記新たなる位置偏差は、位置偏差取得部により取得した位置偏差が不感帯範囲の境界にあるときはゼロであり、かつ位置偏差取得部により取得した位置偏差が緩衝範囲の境界にあるときは当該位置偏差と一致するような増加関数に従って、連続性を持ったものとして設定されるものである。このような不感帯特性を用いることにより、繰り返し制御部14の位置偏差の変動に対する追従性を向上させることができ、なおかつ繰り返し制御部14の制御の安定性も増す。したがって、より迅速になおかつ安定して被駆動体の振動を抑制することができる。
【0039】
また、図9に示す例は、図8に示す不感帯特性において、不感帯範囲の境界の前後および緩衝範囲の境界の前後における出力信号の連続性がより滑らかになるようにしたものである。このようにすることにより、より一層、繰り返し制御部14の制御の安定性が増す。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、数値制御装置等の制御装置によって、駆動制御される工作機械や産業機械等における電動機の制御装置に適用することができる。特に、所定の同一パターンの位置指令を繰り返すことで被駆動体を同一動作パターンで駆動制御する電動機の制御装置に適用することができる。同一動作パターンで動作する被駆動体の例としては、製品に対して繰り返し加工する工具などがある。
【符号の説明】
【0041】
1 制御装置
2 被駆動体
11 位置検出部
12 位置偏差取得部
13 不感帯処理部
14 繰り返し制御部
15 加算器
16 速度制御部
21 ローパスフィルタ部
22 メモリ部
23 加算器
24 位相進めフィルタ部
M 電動機
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御装置等の制御装置によって、駆動制御される工作機械や産業機械等における電動機の制御装置に関し、特に、所定の同一パターンの位置指令を繰り返すことで被駆動体を同一動作パターンで駆動制御する電動機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同一パターンの指令が繰り返し指令されて加工等を行う場合、制御偏差をゼロ(0)近くまで収束させて加工精度を向上させる方法として繰り返し制御(学習制御)が知られている。この繰り返し制御(学習制御)は、ワーク1回転等のパターン動作の時間を繰り返し(学習)の周期として、ワークを複数回回転させて所定制御周期毎に位置偏差を求め、該位置偏差に基づいて補正量をメモリに記憶しておき、当該パターン周期の各制御周期の位置偏差に、メモリに記憶する1つ前のパターン周期における対応する制御周期の補正量を加算することによって、位置偏差をゼロに収束させようとするものである(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。繰り返し制御には、特許文献1に記載された発明のような被駆動体の位置や角度を基準にして制御を行う方法と、特許文献2に記載された発明のような時間を基準にして制御を行う方法とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2840139号公報
【特許文献2】特許第4043996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クーロン摩擦のような非線形摩擦特性を持つ被駆動体を電動機によって同一動作パターンの繰り返し制御を高精度で行う場合、被駆動体を駆動制御する電動機に対する位置指令がゼロ以外の状態からゼロ近傍に遷移した後さらにゼロ近傍に留まるような状態が続くと、被駆動体2の非線形摩擦の影響で繰り返し制御部が出力する補正量が振動することがある。この結果、被駆動体が停止した状態においてもなお繰り返し制御を続行していると、被駆動体に振動が発生してしまう。
【0005】
図10は、ストライベック効果を持つ非線形摩擦特性を例示する図である。図示の例では、粘性摩擦はゼロとしている。このような摩擦特性を持つ被駆動体では、駆動時にスティックスリップ現象が見られる。図11および12は、図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体を電動機で駆動制御する場合に発生する被駆動体の振動のシミュレーション結果を例示する図であって、図11は被駆動体を駆動制御する電動機に対する位置指令を示し、図12は、図11に示す位置指令がされたときの被駆動体の位置偏差を示す図である。図11に示す位置指令では、一例として100Hzの正弦波状の同一パターンが繰り返し指令されている場合に、ある時点でその振幅を徐々に小さくしていき、最終的には振幅ゼロとなるように設定している。図11に示す位置指令を電動機に与えて図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体について繰り返し駆動制御すると、図12に示すように、位置指令の振幅がゼロになった後、ゼロの状態が継続することで、低い周波数(15Hz)の振動が発生していることがわかる。上述のように繰り返し制御には被駆動体の位置や角度を基準にして制御を行う方法と、時間を基準にして制御を行う方法とがあるが、いずれの制御方法で電動機を動作させて非線形摩擦特性を持つ被駆動体を駆動制御しても、上記のような振動は発生し得る。
【0006】
上述のような振動の発生原理を説明すると次の通りである。被駆動体を駆動制御する電動機に対する位置指令がゼロ以外の状態からゼロの状態に遷移する場合において、被駆動体の非線形摩擦が存在することにより、電動機に対する位置指令がゼロになっても繰り返し制御部の出力である補正量はゼロにならない。その理由は、本来であれば繰り返し制御部が出力する補正量がゼロになる時点で位置指令と被駆動体の実際の位置との差である位置偏差がゼロになるべきところ、補正後の位置指令に基づいて電動機が発生するトルクよりもクーロン摩擦の方が大きいと、繰り返し制御部が出力する補正量がゼロになる前に位置偏差がゼロになってしまうからである。この結果、繰り返し制御部は、位置偏差がゼロになった時点の補正量(すなわちゼロではない値)を保持することになる。位置偏差がゼロであっても、繰り返し制御部からはゼロではない補正量が出力されるので、この補正量を用いて作成された電動機に対する速度指令はゼロには収束しない。このため、電動機で駆動制御される被駆動体の速度の積分項は徐々に大きくなっていき、摩擦に打ち勝つトルクが発生するようになると、位置偏差が発生する。すると、繰り返し制御部は、この位置偏差を抑制するような補正量を出力することになる。しかしながら、位置偏差の発生周期は繰り返し制御部の処理の繰り返し周期(学習周期)と同期しないので、繰り返し制御を続行する繰り返し制御部は、この位置偏差を増幅することになり、その結果、被駆動体に振動が発生してしまう。
【0007】
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、被駆動体を電動機によって同一動作パターンの繰り返し制御を行う場合において、被駆動体を停止させるために電動機の位置指令をゼロにしたときに発生し得る被駆動体の振動を抑制することができる電動機の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を実現するために、本発明においては、所定の同一パターンの位置指令を繰り返すことで被駆動体を同一動作パターンで駆動制御する電動機の制御装置は、被駆動体の位置を検出する位置検出部と、電動機に与えられる位置指令と位置検出部で検出した被駆動体の位置との位置偏差をサンプリング周期毎に取得する位置偏差取得部と、位置偏差取得部により取得した位置偏差が所定の不感帯範囲内に含まれる場合は当該位置偏差をゼロに置き換えて出力する不感帯処理部と、不感帯処理部から出力された位置偏差がゼロになるような補正量を算出する繰り返し制御部と、を備え、位置偏差取得部により取得した位置偏差と繰り返し制御部により算出された補正量とに基づいて、電動機を制御する。
【0009】
ここで、不感帯処理部は、電動機に対して所定の値以下の速度指令が所定の時間継続する場合または被駆動体について検出された速度が所定の値以下である状態が所定の時間継続した場合に、不感帯範囲内に含まれる位置偏差をゼロに置き換えて出力するようにしてもよい。
【0010】
また、不感帯処理部は、位置偏差取得部により取得した位置偏差が、不感帯範囲外からこの不感帯範囲を内方に含む緩衝範囲内までの間に含まれる場合は、このときの位置偏差よりも小さい値を新たなる位置偏差に設定して出力し、位置偏差取得部により取得した位置偏差が、緩衝範囲外にある場合は、このときの位置偏差をそのまま出力するようにしてもよい。この場合、不感帯範囲外から緩衝範囲内までの間に含まれる場合に設定される上記新たなる位置偏差は、位置偏差取得部により取得した位置偏差が不感帯範囲の境界にあるときはゼロであり、かつ位置偏差取得部により取得した位置偏差が緩衝範囲の境界にあるときは当該位置偏差と一致するような増加関数に従って設定されるのが好ましい。
【0011】
繰り返し制御部は、高周波領域を遮断するローパスフィルタ部と、ローパスフィルタ部の後段に設置され、サンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたって補正量を保持するメモリ部と、メモリ部による保持後の出力に1未満のゲインを乗算した値と、不感帯処理部から出力された位置偏差と、を加算する加算器と、を有し、上記ローパスフィルタ部には、加算器による加算結果が入力される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電動機に与えられる位置指令と位置検出部で検出した被駆動体の位置との位置偏差が所定の不感帯範囲内に含まれる場合に当該位置偏差をゼロに置き換えて出力するような不感帯処理部を繰り返し制御部の前段に設け、不感帯処理部から出力された位置偏差を繰り返し制御部に入力するので、繰り返し制御部は被駆動体の非線形摩擦の影響を受けることはない。繰り返し制御部はこの不感帯処理部から出力された位置偏差がゼロになるような補正量を算出し、これを位置偏差に加算して電動機により被駆動体を駆動制御するので、被駆動体を電動機によって同一動作パターンの繰り返し制御を行う場合において、被駆動体を停止させるために電動機の位置指令をゼロにしたときに発生し得る被駆動体の振動を抑制することができる。
【0013】
また、不感帯を設定すると、その不感帯幅の位置偏差に対して繰り返し制御部は機能せず、位置偏差がゼロに収束することなく不感帯幅に相当する位置偏差を持つことになるので、被駆動体の振動が発生する状態も生じ得るが、本発明においては、不感帯処理部を、電動機に対して所定の値以下の速度指令が所定の時間継続する場合または被駆動体について検出された速度が所定の値以下である状態が所定の時間継続した場合に、不感帯範囲内に含まれる位置偏差をゼロに置き換えて出力するように構成することにより、位置偏差をゼロに収束させ、被駆動体の振動の発生を抑制することができる。
【0014】
また、本発明によれば、不感帯処理部を、位置偏差取得部により取得した位置偏差が、不感帯範囲外からこの不感帯範囲を内方に含む緩衝範囲内までの間に含まれる場合は、このときの位置偏差よりも小さい値を新たなる位置偏差に設定して出力し、位置偏差取得部により取得した位置偏差が、緩衝範囲外にある場合は、このときの位置偏差をそのまま出力するように構成することにより、より迅速になおかつ安定して被駆動体の振動を抑制することができる。
【0015】
また、本発明によれば、繰り返し制御部を、高周波領域を遮断するローパスフィルタ部と、ローパスフィルタ部の後段に設置され、サンプリング周期の少なくとも1周期分に相当する補正量を保持するメモリ部と、メモリ部による保持後の出力に1未満のゲインを乗算した値と、不感帯処理部から出力された位置偏差と、を加算する加算器と、を有し、上記ローパスフィルタ部には、加算器による加算結果が入力されるように構成することにより、被駆動体の摩擦の状態が変化しても、被駆動体の振動の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例による電動機の制御装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部および繰り返し制御部を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例による電動機の制御装置の動作フローを示すフローチャートである。
【図4】図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体を本発明の実施例による電動機の制御装置で駆動制御する場合に発生する被駆動体の振動のシミュレーション結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例における繰り返し制御部のフィードバックゲインKcと繰り返し制御部の出力との関係を表わすシミュレーション結果を示す図であって、(a)は、繰り返し制御部のフィードバックゲインKcが1の場合を示し、(b)は繰り返し制御部のフィードバックゲインKcが1未満の場合を示す図である。
【図6】従来より用いられていた不感帯特性を例示する図(その1)である。
【図7】従来より用いられていた不感帯特性を例示する図(その2)である。
【図8】本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部で用いられる不感帯特性を説明する図(その1)である。
【図9】本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部で用いられる不感帯特性を説明する図(その2)である。
【図10】ストライベック効果を持つ非線形摩擦特性を例示する図である。
【図11】図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体を電動機で駆動制御する場合に発生する被駆動体の振動のシミュレーション結果を例示する図であって、被駆動体を駆動制御する電動機に対する位置指令を示す図である。
【図12】図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体を電動機で駆動制御する場合に発生する被駆動体の振動のシミュレーション結果を例示する図であって、図11に示す位置指令がされたときの被駆動体の位置偏差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施例による電動機の制御装置を示すブロック図である。以降、同じ参照符号が付された構成要素は同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。本実施例では、被駆動体2に電動機Mに連結し、電動機Mに対して所定の同一パターンの位置指令を繰り返すことで被駆動体2を同一動作パターンで駆動制御する場合について説明する。同一動作パターンで動作する被駆動体2の例としては、製品に対して繰り返し加工する工具などがある。
【0018】
図1に示すように、所定の同一パターンの位置指令を繰り返すことで被駆動体2を同一動作パターンで駆動制御する電動機Mの制御装置1は、被駆動体2の位置を検出する位置検出部11と、電動機Mに与えられる位置指令と位置検出部11で検出した被駆動体2の位置との位置偏差をサンプリング周期毎に取得する位置偏差取得部12と、位置偏差取得部12により取得した位置偏差が所定の不感帯範囲内に含まれる場合は当該位置偏差をゼロに置き換えて出力する不感帯処理部13と、不感帯処理部13から出力された位置偏差がゼロになるような補正量を算出する繰り返し制御部14と、を備え、位置偏差取得部12により取得した位置偏差と繰り返し制御部14により算出された補正量とに基づいて、電動機Mを制御する。
【0019】
位置偏差取得部12に入力される位置指令は、例えば上位の数値制御装置(図示せず)から入力される。位置偏差取得部12により取得した位置偏差と繰り返し制御部14により算出された補正量とは加算器15によって加算される。この加算結果は所定のゲインが掛け合わされた後、速度制御部16に入力され、速度制御部16は、この入力された情報と、位置検出器11によって検出された被駆動体2の位置情報とに基づいて電動機Mに対するトルク指令を作成する。位置偏差取得部12、不感帯処理部13、繰り返し制御部14、加算器15、ゲイン、および速度制御部16は、例えば例えばDSPやFPGAなどの演算処理プロセッサからなり、その動作はソフトウェアプログラムで規定することができる。なお、不感帯処理部13の処理に用いられる不感帯範囲の幅は、本発明の実施例による電動機の制御装置が適用される状況や環境などに応じて適宜設定すればよい。
【0020】
図2は、本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部および繰り返し制御部を示すブロック図である。図1の位置偏差取得部12から出力された位置偏差は、不感帯処理部13を経由して繰り返し制御部14へ入力される。
【0021】
繰り返し制御部14は、加算器23と、高周波領域を遮断するローパスフィルタ部21と、ローパスフィルタ部21の後段に設置されるメモリ部22と、位相進めフィルタ24とを備える。メモリ部22は、ローパスフィルタ部21から出力された値をサンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたって保持する遅延メモリである。メモリ部22によるサンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたる保持後に出力された補正量は、位相進めフィルタ部24へ入力される。補正量は、位相進めフィルタ部24で移送を進めた(低周波領域が遮断された)後、繰り返し制御部14から出力される。繰り返し制御部14から出力された補正量は、図1の加算器15へ入力される。また、メモリ部22による保持後の出力は、加算器23へ正帰還される。繰り返し制御部14における正帰還のフィードバックゲインをKcとする。加算器23は、メモリ部22による保持後の出力から正帰還された補正量と、不感帯処理部13から出力された位置偏差と、を加算する。ローパスフィルタ部21には、加算器23による加算結果が入力される。
【0022】
次に、図1および2を参照して説明した電動機の制御装置1の動作フローについて説明する。図3は、本発明の実施例による電動機の制御装置の動作フローを示すフローチャートである。
【0023】
ステップS101にとおいて、位置偏差取得部12は、被駆動体2の位置を検出する位置検出部11と、電動機Mに与えられる位置指令と位置検出部11で検出した被駆動体2の位置との位置偏差をサンプリング周期毎に取得する。取得された位置偏差は、不感帯処理部13および加算器15に入力される。
【0024】
次いでステップS102において、不感帯処理部13は、位置偏差取得部12により取得した位置偏差が、所定の不感帯範囲内に含まれるか否かを判定する。位置偏差か所定の不感帯範囲内に含まれる場合はステップS103へ進み、当該位置偏差をゼロに置き換えて出力し、ステップS104へ進む。位置偏差か所定の不感帯範囲内に含まれない場合は、後述する不感帯特性に従って位置偏差を新たに設定した後、ステップS104へ進む。不感帯処理部13から出力された位置偏差は、繰り返し制御部14へ入力される。
【0025】
メモリ部22は、ローパスフィルタ部21から出力された値をサンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたって保持するので、ステップS104においては、加算器23は、不感帯処理部13から出力された位置偏差と、当該位置偏差よりもサンプリング周期の少なくとも1周期前の値とを加算する。加算器23による加算結果は、ローパスフィルタ部21に入力される。
【0026】
次いで、ステップS105において、ローパスフィルタ部21は、加算器23による加算結果の高周波領域を遮断するローパスフィルタ処理を実行する。
【0027】
ステップS106において、ローパスフィルタ部21の出力は、補正量としてメモリ部22に保存される。メモリ部22は、ローパスフィルタ部21から出力された値をサンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたって保持する。
【0028】
メモリ部22によるサンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたる保持後に出力された補正量は、位相進めフィルタ部24へ入力される。ステップS107において、位相進めフィルタ部24は、入力された補正量について低周波領域を遮断して位相進めフィルタ処理を実行し、出力する。繰り返し制御部14から出力された補正量は、図1の加算器15へ入力される。
【0029】
また、メモリ部22によるサンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたる保持後の出力は、加算器23へ正帰還され、加算器23は、ステップS108において、メモリ部22による保持後の出力から正帰還された補正量と、不感帯処理部13から出力された位置偏差と、を加算する。以降、上記各処理が繰り返し実行される。
【0030】
図4は、図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体を本発明の実施例による電動機の制御装置で駆動制御する場合に発生する被駆動体の振動のシミュレーション結果を示す図である。本シミュレーションでは、図12に示した従来技術の場合同様、図11に示す位置指令を電動機Mに与えた。図11に示す位置指令では、100Hzの正弦波状の同一パターンが繰り返されているに、ある時点でその振幅を徐々に小さくしていき、最終的には振幅ゼロとしている。図11に示す位置指令を本発明の実施例による電動機Mの制御装置1に与えて図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体2を繰り返し駆動制御すると、図4に示すように、位置指令の振幅がゼロの状態が継続しても、被駆動体2には振動が発生していないことがわかる。このように、本発明の実施例の電動機Mの制御装置1によれば、被駆動体2を電動機によって同一動作パターンの繰り返し制御を行う場合において、被駆動体2を停止させるために電動機Mの位置指令をゼロにしたときに発生し得る被駆動体の振動を抑制することができる。
【0031】
なお、上述の不感帯を設定すると、その不感帯幅の位置偏差に対して繰り返し制御部14は機能せず、位置偏差がゼロに収束することなく不感帯幅に相当する位置偏差を持つことになるので、被駆動体2の振動が発生する状態も生じ得る。例えば図11に示す位置指令では速度指令が速度ゼロ近傍を必ず通過することになるため、不感帯を設定すると位置偏差が増加する場合がある。そこで、このような状態を回避するために、不感帯処理部13を、電動機Mに対して所定の値以下の速度指令が所定の時間継続する場合または被駆動体2について検出された速度が所定の値以下である状態が所定の時間継続した場合に、不感帯範囲内に含まれる位置偏差をゼロに置き換えて出力するように構成してもよい。これにより、位置偏差をゼロに収束させ、被駆動体2の振動の発生を抑制することができる。
【0032】
また、不感帯を設定すると、上述のように位置偏差がゼロに収束することなく不感帯幅に相当する位置偏差を持つことになり、また、被駆動体2の非線形摩擦の影響もあって、繰り返し制御部14から出力される補正量はゼロに収束しない。この場合、被駆動体2の摩擦の状態が変化すると被駆動体2の振動が再び発生することがある。そこで、このような状態を回避するために、繰り返し制御部14における正帰還のフィードバックゲインKcを1未満に設定してもよい。これにより、ある時定数をもって繰り返し制御部14から出力される補正量を徐々にゼロにすることができ、その結果、このような被駆動体2の振動を回避することができる。繰り返し制御部14が出力する補正量をゼロに収束させるまでの時定数は、フィードバックゲインKcの大きさにより規定される。図5は、本発明の実施例における繰り返し制御部のフィードバックゲインKcと繰り返し制御部の出力との関係を表わすシミュレーション結果を示す図であって、(a)は、繰り返し制御部のフィードバックゲインKcが1の場合を示し、(b)は繰り返し制御部のフィードバックゲインKcが1未満の場合を示す図である。シミュレーションでは、図11に示す位置指令を電動機Mに与えた。図11に示す位置指令では、100Hzの正弦波状の同一パターンが繰り返されているに、ある時点でその振幅を徐々に小さくしていき、最終的には振幅ゼロとしている。図11に示す位置指令を本発明の実施例による電動機Mの制御装置1に与えて図10に示す非線形摩擦特性を持つ被駆動体2を繰り返し駆動制御すると、繰り返し制御部14のフィードバックゲインKcが1の場合は図5(a)に示すように、位置指令がゼロになっても繰り返し制御部14から出力される補正量はゼロには収束せず、ある一定の値を維持する。これに対し、繰り返し制御部14のフィードバックゲインKcが1未満の場合は、図5(b)に示すように、位置指令がゼロになると、それに応じて繰り返し制御部14から出力される補正量はゼロに収束する。このように、繰り返し制御部14のフィードバックゲインKcを1未満に設定すれば、被駆動体2を電動機によって同一動作パターンの繰り返し制御を行う場合に、被駆動体2を停止させるために電動機Mの位置指令をゼロにしたときにおいて、繰り返し制御部14から出力される補正量はゼロに収束するので、被駆動体2の摩擦の状態が変化しても被駆動体2の振動を抑制することができる。
【0033】
次に、不感帯処理部13の処理について、より具体的に説明する。図6および7は、従来より用いられていた不感帯処理特性を例示する図である。また、図8および9は、本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部で用いられる不感帯特性を説明する図である。従来一般に用いられてきた不感帯処理によれば、図6に示すように、入力信号が不感帯範囲内のときは出力信号はゼロに設定され、入力信号が不感帯範囲外のときは式1で表わすような出力信号となるように設定される。
【0034】
出力信号=(|入力信号|−不感帯幅)*(入力信号の符号) ・・・(式1)
【0035】
図6に示す不感帯特性を用いれば、不感帯範囲の境界前後における出力信号の不連続性が小さいので、制御の安定性においても優位である。しかしながら、図6に示す不感帯特性を、本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部にそのまま適用すると、入力信号が不感帯範囲外のときは式1に示すように入力信号から不感帯幅分を差し引くので、繰り返し制御部14のゲインが実質的に低下することになり、位置偏差の変動に対する繰り返し制御部14の追従性が劣ることになる。
【0036】
一方、図7に示すような入力信号が不感帯範囲内のときは出力信号はゼロに設定され、入力信号が不感帯範囲外のときは出力信号は入力信号と等しくするような不感帯特性を、本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部に適用すると、図6に示す不感帯特性で問題となる繰り返し制御部14のゲインの低下を回避することができる。しかしながら、この場合、出力信号が不連続になるため繰り返し制御部14の制御の安定性に問題がある。
【0037】
そこで、本発明の実施例による電動機の制御装置における不感帯処理部では、図8もしくは9に示すような不感帯特性を用いる。
【0038】
図8に示す例では、不感帯処理部13は、位置偏差取得部12により取得した位置偏差が、所定の不感帯範囲内に含まれる場合は当該位置偏差をゼロに置き換えて出力し、不感帯範囲外からこの不感帯範囲を内方に含む緩衝範囲内までの間に含まれる場合は、このときの位置偏差よりも小さい値を新たなる位置偏差に設定して出力し、緩衝範囲外にある場合はこのときの位置偏差をそのまま出力するようにする。ここで、不感帯範囲外から緩衝範囲内までの間に含まれる場合に設定される上記新たなる位置偏差は、位置偏差取得部により取得した位置偏差が不感帯範囲の境界にあるときはゼロであり、かつ位置偏差取得部により取得した位置偏差が緩衝範囲の境界にあるときは当該位置偏差と一致するような増加関数に従って、連続性を持ったものとして設定されるものである。このような不感帯特性を用いることにより、繰り返し制御部14の位置偏差の変動に対する追従性を向上させることができ、なおかつ繰り返し制御部14の制御の安定性も増す。したがって、より迅速になおかつ安定して被駆動体の振動を抑制することができる。
【0039】
また、図9に示す例は、図8に示す不感帯特性において、不感帯範囲の境界の前後および緩衝範囲の境界の前後における出力信号の連続性がより滑らかになるようにしたものである。このようにすることにより、より一層、繰り返し制御部14の制御の安定性が増す。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、数値制御装置等の制御装置によって、駆動制御される工作機械や産業機械等における電動機の制御装置に適用することができる。特に、所定の同一パターンの位置指令を繰り返すことで被駆動体を同一動作パターンで駆動制御する電動機の制御装置に適用することができる。同一動作パターンで動作する被駆動体の例としては、製品に対して繰り返し加工する工具などがある。
【符号の説明】
【0041】
1 制御装置
2 被駆動体
11 位置検出部
12 位置偏差取得部
13 不感帯処理部
14 繰り返し制御部
15 加算器
16 速度制御部
21 ローパスフィルタ部
22 メモリ部
23 加算器
24 位相進めフィルタ部
M 電動機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の同一パターンの位置指令を繰り返すことで被駆動体を同一動作パターンで駆動制御する電動機の制御装置であって、
前記被駆動体の位置を検出する位置検出部と、
前記電動機に対する位置指令と前記位置検出部で検出した前記被駆動体の位置との位置偏差をサンプリング周期毎に取得する位置偏差取得部と、
前記位置偏差取得部により取得した前記位置偏差が所定の不感帯範囲内に含まれる場合は当該位置偏差をゼロに置き換えて出力する不感帯処理部と、
前記不感帯処理部から出力された位置偏差がゼロになるような補正量を算出する繰り返し制御部と、
を備え、
前記位置偏差取得部により取得した前記位置偏差と前記繰り返し制御部により算出された補正量とに基づいて、前記電動機を制御することを特徴とする電動機の制御装置。
【請求項2】
前記不感帯処理部は、前記電動機に対して所定の値以下の速度指令が所定の時間継続する場合または前記被駆動体について検出された速度が所定の値以下である状態が所定の時間継続した場合に、前記不感帯範囲内に含まれる位置偏差をゼロに置き換えて出力する請求項1に記載の電動機の制御装置。
【請求項3】
前記繰り返し制御部は、
高周波領域を遮断するローパスフィルタ部と、
前記ローパスフィルタ部の後段に設置され、前記サンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたって前記補正量を保持するメモリ部と、
前記メモリ部による保持後の出力に1未満のゲインを乗算した値と、前記不感帯処理部から出力された位置偏差と、を加算する加算器と、
を有し、
前記ローパスフィルタ部には、前記加算器による加算結果が入力される請求項1または2に記載の電動機の制御装置。
【請求項4】
前記不感帯処理部は、
前記位置偏差取得部により取得した前記位置偏差が、前記不感帯範囲外から当該不感帯範囲を内方に含む緩衝範囲内までの間に含まれる場合は、当該位置偏差よりも小さい値を新たなる位置偏差に設定して出力し、
前記位置偏差取得部により取得した前記位置偏差が、前記緩衝範囲外にある場合は、当該位置偏差をそのまま出力する請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動機の制御装置。
【請求項5】
前記不感帯範囲外から前記緩衝範囲内までの間に含まれる場合に設定される前記新たなる位置偏差は、前記位置偏差取得部により取得した前記位置偏差が前記不感帯範囲の境界にあるときはゼロであり、かつ前記位置偏差取得部により取得した前記位置偏差が前記緩衝範囲の境界にあるときは当該位置偏差と一致するような増加関数に従って設定される請求項4に記載の電動機の制御装置。
【請求項1】
所定の同一パターンの位置指令を繰り返すことで被駆動体を同一動作パターンで駆動制御する電動機の制御装置であって、
前記被駆動体の位置を検出する位置検出部と、
前記電動機に対する位置指令と前記位置検出部で検出した前記被駆動体の位置との位置偏差をサンプリング周期毎に取得する位置偏差取得部と、
前記位置偏差取得部により取得した前記位置偏差が所定の不感帯範囲内に含まれる場合は当該位置偏差をゼロに置き換えて出力する不感帯処理部と、
前記不感帯処理部から出力された位置偏差がゼロになるような補正量を算出する繰り返し制御部と、
を備え、
前記位置偏差取得部により取得した前記位置偏差と前記繰り返し制御部により算出された補正量とに基づいて、前記電動機を制御することを特徴とする電動機の制御装置。
【請求項2】
前記不感帯処理部は、前記電動機に対して所定の値以下の速度指令が所定の時間継続する場合または前記被駆動体について検出された速度が所定の値以下である状態が所定の時間継続した場合に、前記不感帯範囲内に含まれる位置偏差をゼロに置き換えて出力する請求項1に記載の電動機の制御装置。
【請求項3】
前記繰り返し制御部は、
高周波領域を遮断するローパスフィルタ部と、
前記ローパスフィルタ部の後段に設置され、前記サンプリング周期の少なくとも1周期分の期間にわたって前記補正量を保持するメモリ部と、
前記メモリ部による保持後の出力に1未満のゲインを乗算した値と、前記不感帯処理部から出力された位置偏差と、を加算する加算器と、
を有し、
前記ローパスフィルタ部には、前記加算器による加算結果が入力される請求項1または2に記載の電動機の制御装置。
【請求項4】
前記不感帯処理部は、
前記位置偏差取得部により取得した前記位置偏差が、前記不感帯範囲外から当該不感帯範囲を内方に含む緩衝範囲内までの間に含まれる場合は、当該位置偏差よりも小さい値を新たなる位置偏差に設定して出力し、
前記位置偏差取得部により取得した前記位置偏差が、前記緩衝範囲外にある場合は、当該位置偏差をそのまま出力する請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動機の制御装置。
【請求項5】
前記不感帯範囲外から前記緩衝範囲内までの間に含まれる場合に設定される前記新たなる位置偏差は、前記位置偏差取得部により取得した前記位置偏差が前記不感帯範囲の境界にあるときはゼロであり、かつ前記位置偏差取得部により取得した前記位置偏差が前記緩衝範囲の境界にあるときは当該位置偏差と一致するような増加関数に従って設定される請求項4に記載の電動機の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−92986(P2013−92986A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236157(P2011−236157)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】
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