説明

不斉水素化のための触媒的プロセス

式(A)の化合物のS又はR鏡像異性体の製造方法であって、該方法は式(B)の化合物をキラル触媒及び水素源の存在下で不斉水素化させることを含み、式中XはCH2、酸素又はイオウであり;R1、R2及びR3は、同じであるか又は異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノ、又はジアルキルアミノ基を表し;かつR4は、アルキル又はアリールであり:ここで用語アルキルは、任意にアリール、アルコキシ、ハロゲン、アルコキシカルボニル、又はヒドロキシカルボニル基によって置換された炭素原子1〜6個を含む直鎖又は分枝の炭化水素鎖を意味し;用語アリールは、任意にアルキルオキシ、ハロゲン、又はニトロ基によって置換されたフェニル又はナフチル基を意味し;及び用語ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不斉水素化のための改善された触媒的プロセスに関する。具体的には、本発明は、触媒的不斉水素化を含む、ドーパミン-β-ヒドロキシラーゼ(DβH)の末梢選択的阻害剤の合成に有用な中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン塩酸塩(下記式Pの化合物)は、良く効き、無毒性で、かつ末梢選択的なDβHの阻害剤であり、特定の心血管障害の治療に使用することができる。化合物Pは、その製造方法とともにWO2004/033447に開示されている。
【化1】

【0003】
WO2004/033447に開示された方法は、(R)-6,8-ジフルオロクロマン-3-イルアミン塩酸塩((R)-6,8-ジフルオロクロマン-3-イルアミンの構造を、化合物Qとして下記に示す。)、[4-(tert-ブチルジメチルシラニルオキシ)-3-オキソブチル]カルバミン酸tert-ブチルエステル、及びチオシアン酸カリウムの反応を含む。
【化2】

【0004】
(R)-6,8-ジフルオロクロマン-3-イルアミン(化合物Q)は、化合物Pの合成において鍵となる中間体である。アミンが付加される炭素原子の立体化学は、化合物Pの立体的配置を生じさせるので、該化合物Qは、できるだけ純粋な形態で存在していることが有利である。言い換えれば、S鏡像異性体がほとんど又は全く存在せずに、化合物QのR鏡像異性体が優位となるべきである。したがって、化合物Qの製造方法は、できる限り高い鏡像体過剰率(e.e)で化合物Qを生成することが有利である。
【0005】
例えば、これまで、式Qの化合物の前駆体を製造するのに有利な方法が見出されている。該方法は、対応する新規エン-カルバマート(ene-carbamate)の触媒的不斉水素化を含む。該方法はまた、ドーパミン-β-ヒドロキシラーゼの他の末梢選択的阻害剤の製造に有用な類似の前駆体の製造にも用いることができる。
【0006】
Ru-BINAP及びRu-DuPhos触媒を使用するエン-カルバマートの水素化は、Dupau, P.; Bruneau, C.; Dixneuf, P. H.の文献、Tet. Asymm. 1999, 10, 3467-3471;及びDupau, P.; Hay, A.-E.; Bruneau, C.; Dixneuf, P. H.の文献、Tet. Asymm. 2001, 12, 863に記載されている。100/1の基質/触媒比及び100バールの水素圧を使用して、いずれかの系を用いて得られた最大e.eは、最大で76(特定の基質については92)である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様により、式Aの化合物のS又はR鏡像異性体の製造方法を提供する。
【化3】

該方法は、式Bの化合物をキラル触媒及び水素源の存在下で不斉水素化させることを含み、
【化4】

式中XはCH2、酸素又はイオウであり;R1、R2及びR3は、同じであるか又は異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノ、又はジアルキルアミノ基を表し;かつR4は、アルキル又はアリールであり:ここで用語アルキルは、任意にアリール、アルコキシ、ハロゲン、アルコキシカルボニル、又はヒドロキシカルボニル基によって置換された炭素原子1〜6個を含む直鎖又は分枝の炭化水素鎖を意味し;用語アリールは、任意にアルキルオキシ、ハロゲン、又はニトロ基によって置換されたフェニル又はナフチル基を意味し;及び用語ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。化合物Bはエン-カルバマートと呼ぶことができる。好ましくは、該キラル触媒は、TolBINAPのS又はR鏡像異性体である配位子を含み、かつ該反応は70℃より高い温度から100℃までの温度、0.05〜0.2%の濃度の酸の存在下で行われる。
特に示さない限り、本明細書を通して用語「アルコキシ」と「アルキルオキシ」とは等価である。
【0008】
一実施態様において、XはOである。別の実施態様において、R1、R2及びR3の少なくとも1つは、フッ素である。好適には、化合物Aは、下記式を有する。
【化5】

一実施態様において、R4はC1〜C4アルキルである。任意に、R4はメチル(すなわち、メチル置換されたエン-カルバマート)、エチル(すなわち、エチル置換されたエン-カルバマート)又はtBu(すなわち、tBu置換されたエン-カルバマート)である。好ましくは、R4はメチルである。別の実施態様において、R4はベンジル(すなわち、ベンジル置換されたエン-カルバマート)である。
【0009】
好ましくは、該キラル触媒は、TolBINAP配位子を含む遷移金属錯体を含む。好適には、該触媒は、式[(TolBINAP)Ru(アレーン)X']Y、[(TolBINAP)Ru(L)2]又は[(TolBINAP)Ru(L')2X'2]を有し、式中X'は一価負(singly-negative)の単座配位子であり、Yは釣合せアニオン(balancing anion)であり、Lは一価負の配位性配位子であり、及びL'は非イオン性単座配位子である。
【0010】
本発明の不斉水素化に使用するのに好ましいTolBINAP配位子は、本明細書中R-TolBINAPと指定し、下記構造に示す。
【化6】

【0011】
好ましい触媒は、式:[RuCl(R)-TolBINAP(アレーン)]Clを有する。
最も好ましい触媒は、[RuCl(R)-TolBINAP(p-シメン)]Cl又は[RuCl(R)-TolBINAP(C6H6)]Clである。
別の最も好ましい触媒は、Ru((R)-TolBINAP)Br2である。
[RuCl(R)-TolBINAP(p-シメン)]Clは、(R)-TolBINAP及びジクロロ-(p-シメン)-ルテニウム(II)二量体から製造することができる。
[RuCl(R)-TolBINAP(C6H6)]Clは、エタノール-ジクロロメタン1:1混合物中、[Ru(C6H6)Cl2]2及び(R)-TolBINAPから製造することができる。
Ru((R)-TolBINAP)Br2は、Ru(2-メチルアリル)2COD、(R)-TolBINAP及びHBrから製造することができる。
好ましくは、該触媒は原位置(in situ)で生成される。すなわち、該触媒は水素化反応の前に単離されないが、反応ポット中でその前駆体配位子から形成される。
【0012】
好ましくは、該水素化は、酸の存在下で行われる。任意に、該酸はHBF4、HCl、HBr、CF3SO3H、CH3COOH又はH3PO4である。本発明の特に有利な態様において、該酸は0.05%〜0.2%、好ましくは0.1%の濃度のH3PO4である。発明者らは、この低濃度の範囲内の酸によって優れた変換及びe.e.を得ることができることを見出した。0.1%の濃度とは、混合物中のリン酸の重量が、メタノールの重量の0.1%(すなわち0.1% w/w)に等しいことを意味する。
【0013】
一実施態様において、酸は溶媒中に存在している。例えば、該酸溶媒は水である。好ましくは、該酸はH3PO4であり、該溶媒は水などの不活性溶媒である。好適には、酸/溶媒溶液は、水中85%のH3PO4である。
一実施態様において、化合物B/酸のモル比は、20/1〜70/1の範囲である。好適には、該化合物B/酸のモル比は、31/1〜64/1の範囲である。好ましくは、該化合物B/酸のモル比は、50/1〜64/1の範囲である。より好ましくは、該化合物B/酸のモル比は、64/1である。
【0014】
本発明の方法における改善は、100/1〜最大2000/1の化合物B/触媒のモル比を使用して、許容し得る変換及びe.e.を得ることを可能にする。好ましくは該モル比は250/1以上、より好ましくは500/1以上、更により好ましくは750/1以上である。最も好ましくは、該モル比は1000/1の範囲以上、例えば、約2000/1である。
【0015】
該水素化は、溶媒の存在下で行うことができる。例えば、該水素化溶媒は、置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝鎖のC1〜C6アルコール、アレーン又はそれらの混合物から選択される。場合によっては、該溶媒はMeOH、EtOH、iPrOH、1-PrOH、1-BuOH、2-BuOH、CF3CH2OH、DCM(ジクロロメタン)、DCE(ジクロロエタン)、THF(テトラヒドロフラン)、トルエン、又はMeOHとDCMとの1:1混合物から選択される。予め蒸留したメタノール溶媒中で該水素化が行われることが、特に好ましい。言い換えると、該メタノールは、触媒が水素化反応塊に添加される前に蒸留される。該蒸留は、緩徐な不活性ガス流下で行われる。メタノールの脱気よりもメタノールの蒸留は、該反応容器から酸素を除去すると考えられる。
【0016】
該水素化は、70℃より高い温度から100℃までの範囲の温度で行うことができる。好ましくは、該水素化は、75℃〜90℃の範囲の温度、より好ましくは、75℃〜85℃の範囲の温度、及び最も好ましくは、約80℃の温度である。発明者らは、高い収率及びe.e.を得るために、これらの特定の温度範囲が重要であることを見出した。
【0017】
該水素化は、10バール〜30バールの範囲の圧力で行うことができる。好適には、該水素化は、20バール〜30バールの範囲の圧力で行われる。好ましくは、該水素化は、30バールの圧力で行われる。
【0018】
好ましい実施態様において、該触媒は原位置で形成される。これは、該触媒がその配位子から形成され、かつ精製工程の介在なしに化合物Bを化合物Aに変換する方法に使用されることを意味する。DCM/EtOH中での触媒の形成は、最良の変換及びe.e.を生成する触媒を提供することが見出されている。
【0019】
本発明の別の態様において、該方法は式Aの化合物を後に再結晶化することを更に含む。該再結晶化はDCM/ヘキサン混合物中で行うことができるが、本発明の特定の有利な態様において、該再結晶化は2-プロパノール/水混合物中で行われる。発明者らは、意外にも、2-プロパノール/水混合物中での再結晶化が、高収率及び高e.e.で生成物を生成することを可能にすることを見出した。
該再結晶化は95〜100%、好ましくは97〜100%、より好ましくは99〜100%の範囲のe.e.をもたらす。
【0020】
該2-プロパノール/水混合物は、好ましくは40〜50容量%の2-プロパノール及び50〜60容量%の水、最も好ましくは45容量%の2-プロパノール及び55容量%の水を含む。好ましくは、式Aの化合物を溶媒を用いて還流し、次いで25〜35℃、好ましくは30℃まで冷却し、次いでおよそ5〜10℃、好ましくは5℃まで冷却する。冷却に続いて、該懸濁液を濾過し、該濾過ケーキを適当な溶媒、例えば、2-プロパノール/水の混合物で洗浄する。この洗浄工程は、高い光学純度を達成するのに都合が良い。
【0021】
一実施態様において、化合物Aは、S鏡像異性体の形態である。別の実施態様において、化合物Aは、R鏡像異性体の形態である。
より更なる実施態様において、該方法は、化合物AのR又はS鏡像異性体を式Cの化合物の各R又はS鏡像異性体又はその塩に変換することを含み、
【化7】

式中XはCH2、酸素又はイオウであり;R1、R2及びR3は、同じであるか又は異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノ、又はジアルキルアミノ基を表し;かつR4は、アルキル又はアリールであり:ここで用語アルキルは、任意にアリール、アルコキシ、ハロゲン、アルコキシカルボニル、又はヒドロキシカルボニル基によって置換された炭素原子1〜6個を含む直鎖又は分枝の炭化水素鎖を意味し;用語アリールは、任意にアルキルオキシ、ハロゲン、又はニトロ基によって置換されたフェニル又はナフチル基を意味し;及び用語ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。
【0022】
好ましくは、XはOである。更なる実施態様において、R1、R2及びR3の少なくとも1つが、フッ素である。好ましくは、式Cの化合物は下記である。
【化8】

例えば、化合物AのR又はS鏡像異性体は、加水分解によって、式Cの化合物の各R又はS鏡像異性体に変換される。メタノール中40%の水酸化カリウムを用いて、加水分解を行うことができ、続いて粗製のアミンを単離し、該アミンをL-酒石酸との塩として再結晶化する。
【0023】
化合物AをCに変換する別の方法は、R4の性質に左右される可能性がある。例えば、下記の方法を使用することができる:穏和な酸分解(例えば、トリフルオロ酢酸、HCl/EtOAc又はHBr/AcOHの存在下)、酸加水分解(溶媒を伴う又は伴わない水性の強酸)、触媒的水素化分解(水素源を伴うPd/C)等である。それらの分解のためのカルバマート及び方法の包括的な記載は、例えば、Theodora W. Green及びPeter G. M. Wutsの文献「有機合成における保護基(Protective Groups in Organic Synthesis)」第2版、Wiley-Interscience、1991、p.315-348に見出すことができる。
【0024】
より更なる実施態様において、該方法は、式Cの化合物のR又はS鏡像異性体又はその塩を反応させて、式Eの化合物の各R又はS鏡像異性体又はその塩を生成することを更に含む。
【化9】

式中XはCH2、酸素又はイオウであり;R1、R2及びR3は、同じであるか又は異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノ、又はジアルキルアミノ基を表し;かつR12は、水素、アルキル又はアルキルアリール基を表し:ここで用語アルキルは、任意にアリール、アルコキシ、ハロゲン、アルコキシカルボニル、又はヒドロキシカルボニル基によって置換された炭素原子1〜6個を含む直鎖又は分枝の炭化水素鎖を意味し;用語アリールは、任意にアルキルオキシ、ハロゲン、又はニトロ基によって置換されたフェニル又はナフチル基を意味し;及び用語ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。
好ましくは、XはOである。更なる実施態様において、R1、R2及びR3の少なくとも1つは、フッ素である。
【0025】
広義の意味において、化合物Cを化合物Eの置換イミダゾール-2-チオン環のN(1)部位を構築するためのアミノ成分として用いることによって、化合物Cは化合物Eに変換され得る。より具体的には、化合物Cのアミノ基は、5-置換イミダゾール-2-チオン環に変換することができ、該5位で置換された基は、-(CH2)n-NHR12基に変換することができる。
【0026】
一実施態様において、式Cの化合物のR又はS鏡像異性体又はその塩は、式D1の化合物と反応して
【化10】

式D3の化合物を形成し、
【化11】

続いてD3とマロン酸ジアルキル及び塩基とを溶媒の存在下で反応させて、式D4の化合物を形成し、
【化12】

続いてD4と適当なアジドとを溶媒の存在下で反応させ、次いで塩酸と反応させて、式Eの化合物を形成する。
【0027】
更なる実施態様において、式Cの化合物のR又はS鏡像異性体は、式D2の化合物と実質的に不活性な溶媒中、有機酸の存在下で水溶性のチオシアン酸塩とともに反応して、
【化13】

式Eの化合物の各R又はS鏡像異性体又はその塩を生成し、
【化14】

式中R1、R2及びR3は、同じであるか又は異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノ、又はジアルキルアミノ基を表し;XはO、S又はCH2であり;nは1、2又は3を表し; R12は水素、アルキル、又はアルキルアリール基を表し、R11はヒドロキシル保護基を表し、かつR13はアミノ保護基を表し、又はR11は上記に規定されるが、R12及びR13は、互いに結合してフタルイミド基を表し;続いて後続の中間体生成物F〜Iを脱保護する。
【化15】

【0028】
好ましくは、該水溶性のチオシアン酸塩は、アルカリ金属チオシアン酸塩又はテトラアルキルアンモニウムチオシアン酸塩である。好ましくは、該溶媒は有機溶媒である。更に詳細には、例えば、適当な反応条件はWO2004/033447に見出すことができる。
【0029】
一実施態様において、XはOである。別の実施態様において、nは2又は3である。好ましくは、XはOであり、かつnは2又は3である。更なる実施態様において、R1、R2及びR3の少なくとも1つが、フッ素である。任意に、式Cの化合物のR又はS鏡像異性体と式Dの化合物との反応の生成物は、下記化合物である。(S)-5-(2-アミノエチル)-1-(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(S)-5-(2-アミノエチル)-1-(5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-クロマン-3-イル-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-フルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-フルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,7-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(S)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,7,8-トリフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-クロロ-8-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-メトキシ-8-クロロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ニトロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-ニトロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-[6-(アセチルアミノ)クロマン-3-イル]-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-アミノメチル-1-クロマン-3-イル-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-アミノメチル-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ヒドロキシ-7-ベンジルクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-アミノメチル-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(3-アミノプロピル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(S)-5-(3-アミノプロピル)-1-(5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R,S)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ヒドロキシチオクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R,S)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-メトキシチオクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-ベンジルアミノエチル)-1-(6-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-ベンジルアミノエチル)-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-5-(2-メチルアミノエチル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-5-(2-メチルアミノエチル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン又は(R)-1-クロマン-3-イル-5-(2-メチルアミノエチル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオンである。
【0030】
式Cの化合物のR又はS鏡像異性体と式Dの化合物との反応の生成物はまた、下記化合物の塩であってもよい。(S)-5-(2-アミノエチル)-1-(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(S)-5-(2-アミノエチル)-1-(5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-クロマン-3-イル-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-フルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-フルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,7-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(S)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,7,8-トリフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-クロロ-8-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-メトキシ-8-クロロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ニトロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-ニトロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-[6-(アセチルアミノ)クロマン-3-イル]-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-アミノメチル-1-クロマン-3-イル-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-アミノメチル-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ヒドロキシ-7-ベンジルクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-アミノメチル-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(3-アミノプロピル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(S)-5-(3-アミノプロピル)-1-(5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R,S)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ヒドロキシチオクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R,S)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-メトキシチオクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-ベンジルアミノエチル)-1-(6-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-ベンジルアミノエチル)-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-5-(2-メチルアミノエチル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-5-(2-メチルアミノエチル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン又は(R)-1-クロマン-3-イル-5-(2-メチルアミノエチル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオンである。好ましくは、該塩は塩酸塩である。
【0031】
あるいは、式Cの化合物のR又はS鏡像異性体と式Dの化合物との反応の生成物は、式Pの化合物の各R又はS鏡像異性体である。
【化16】

ここで下記実施例を参照して本発明を説明する。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
最良の水素化条件を見出すために、MeOH(Ar流下で蒸留)中0.6gの規模、80℃、30バールのH2、反応時間20時間で下記実験を行った。
【表1】

これらの結果は、0.1%の濃度の酸添加物の存在が、変換及びe.e.における著しい改善を提供したことを示している。
DCM-EtOH中、原位置で形成された(R)-TolBINAP+[Ru(p-シメン)Cl2]2を用いた実験が最も有望であり、再現性を示すために3回繰り返した。全ての実験で、100%の変換及び89〜89.4%のeeが得られた。
【0033】
該方法の拡張性を調べるために、6g及び24gの基質を用いた実験を行ったところ、両方ともそれぞれ90%及び91%のeeを伴う完全な変換を与えた。更なる方法の発展のために、発明者らはシェルフ(shelf)からメタノールを使用し、オートクレーブで溶媒量の10%を蒸留することで脱気した。該実験は12g規模で成功したので、次に該実験を、同時に基質濃度を0.25Mから0.5Mまで増加させて、24g及び50g規模で繰り返した。非蒸留メタノールを用いた全ての実験で、100%の変換及び91%のeeが得られた。S/C比を2000:1まで更に増加させる試みでは、完全な変換は得られなかったが、該変換はかなり高い(99%)ものであった。
【0034】
(実施例2)
反応の生成物を2-プロパノール-水混合物(45:55 v/v)中で再結晶化したところ、予想外に、ほぼ光学的に純粋な生成物(99.6〜99.8% ee)が88〜89%の収率で生成されることが見出された。いくつかの代表的な結果を下記に示す(全ての実験は、80℃、30バールの水素、非最適化の反応時間20時間、基質濃度0.5M、0.1% w/wのH3PO4で行った。)。
【表2】

【0035】
(実施例3)
ここで(R)-メチル6,8-ジフルオロクロマン-3-イルカルバマートの生成方法を説明する。
((1)触媒の製造)
(R)-TolBINAP(0.152g、0.224mmol)及びジクロロ(p-シメン)ルテニウム(II)二量体(0.063g、0.104mmol)をシュレンク型器具(25mL)において、エタノール(無水、Arバブリングによる脱気を0.5時間)(8ml)及びDCM(無水、Arバブリングによる脱気を0.5時間)(4ml)の混合物中、45℃(ゆっくりと還流)、Ar下で1.5時間撹拌し、室温まで冷却した。該溶液を水素化に直接使用した。
【0036】
((2)還元)
基質(50g、207mmol)(6,8-ジフルオロ-2H-クロメン-3-イルカルバミン酸メチルエステル)及びMeOH(400ml、非蒸留)を500mLのステンレス鋼製オートクレーブに加え、該オートクレーブを密封し、40mlのメタノールを撹拌して排出管を介して蒸留した。該排出口を過熱したまま閉じて、水素圧(7バール)を加圧し、該溶液を撹拌したまま25℃まで冷却した。MeOH 中1%(w/w)のH3PO4(40ml、85%aq H3PO4から調製)を緩徐な水素流でシリンジを介して添加した。該溶液を20〜25℃で撹拌しながら水素圧(20バール)の加圧及び解除によって5回脱気し、該触媒溶液を緩徐な水素流でシリンジを介して添加した。該オートクレーブを密封し、水素(30バール)を加え、撹拌しながら20時間80℃(内部、熱電対)で加熱した。20〜25℃まで冷却した後に、圧力を解除し、0.025mLの溶液を10mLまで希釈し、得られた溶液をキラルHPLCで直接分析した。
【0037】
該溶液を減圧下で蒸発乾固し、該残渣を還流下で撹拌しながら2-プロパノールと水との混合物(45:55 v/v、335ml)に溶解させた。該溶液を撹拌しながら水でおよそ30℃まで冷却し(45℃で再結晶化が起こる。)、次いで氷で5℃まで冷却し、5℃で1時間撹拌した。沈殿物を焼結ガラスフィルタNo.2で収集し(濾紙を使用した場合、ゆっくりとした濾過が起こる。)、2-プロパノールと水との混合物(45:55 v/v、20〜25℃、およそ75ml)で洗浄し、真空中50℃で一定重量まで乾燥させて(R)-メチル6,8-ジフルオロクロマン-3-イルカルバマート(44.2g、182mmol、88%収率)を得た。
本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内で変更され得ることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Aの化合物のS又はR鏡像異性体の製造方法であって、
【化1】

式Bの化合物をキラル触媒及び水素源の存在下で不斉水素化させることを含み、
【化2】

式中XはCH2、酸素又はイオウであり;R1、R2及びR3は、同じであるか又は異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノ、又はジアルキルアミノ基を表し;かつR4は、アルキル又はアリールであり:ここで用語アルキルは、任意にアリール、アルコキシ、ハロゲン、アルコキシカルボニル、又はヒドロキシカルボニル基によって置換された炭素原子1〜6個を含む直鎖又は分枝の炭化水素鎖を意味し;用語アリールは、任意にアルキルオキシ、ハロゲン、又はニトロ基によって置換されたフェニル又はナフチル基を意味し;及び用語ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味し、ここで該キラル触媒は、TolBINAPのS又はR鏡像異性体である配位子を含み、かつ該反応は70℃より高い温度から100℃までの温度、0.05〜0.2%の濃度の酸の存在下で行われる、前記製造方法。
【請求項2】
XがOである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
R1、R2及びR3の少なくとも1つが、フッ素である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
化合物Aが、下記式を有する、請求項1記載の方法:
【化3】


【請求項5】
R4が、C1〜C4アルキルである、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
R4が、メチル、エチル又はtBuである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
R4が、メチルである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
R4が、ベンジルである、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記キラル触媒が、TolBINAP配位子を含む遷移金属錯体を含む、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記触媒が、式[(TolBINAP)Ru(アレーン)X']Y、[(TolBINAP)Ru(L)2]又は[(TolBINAP)Ru(L')2X'2]を有し、式中X'は一価負の単座配位子であり、Yは釣合せアニオンであり、Lは二価負の二座配位子であり、及びL'は非イオン性単座配位子である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記TolBINAP配位子が、TolBINAPのR鏡像異性体である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記触媒が、[RuCl(R)-TolBINAP(アレーン)]Clである、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
前記触媒が、[RuCl(R)-TolBINAP(p-シメン)]Cl又は[RuCl(R)-TolBINAP(C6H6)]Cl又はRu((R)-TolBINAP)Br2である、請求項10又は11記載の方法。
【請求項14】
前記触媒が、原位置で形成される、請求項1〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記酸が、H3PO4である、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記酸が、溶媒中に存在している、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒が、水である、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
化合物B/触媒のモル比が、1000/1〜2000/1の範囲である、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
前記水素化が、予め蒸留したメタノールを含む溶媒の存在下で行われる、請求項1〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記水素化が、75℃〜90℃の範囲の温度で行われる、請求項1〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記水素化が、75℃〜85℃の範囲の温度で行われる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記水素化が、80℃の温度で行われる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記水素化が、20バール〜30バールの範囲の圧力で行われる、請求項1〜22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
前記触媒をその構成配位子から形成すること、次いで該触媒の中間の精製なしに、該触媒を水素化反応に添加することを含む、請求項1〜23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記構成配位子が:
(R)-TolBINAP及び[ジクロロ-(p-シメン)-ルテニウム(II)]2
(R)-TolBINAP及びビス(2-メチルアリル)(1,5-シクロオクタジエン)ルテニウム(II);又は
(R)-TolBINAP及び[Ru(C6H6)Cl2]2である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記化合物Aを後に2-プロパノールと水との混合物中で再結晶化することを更に含む、請求項1〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
前記2-プロパノール及び水が、前記混合物中に45:55 v/vの割合で存在している、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記化合物Aが、S鏡像異性体の形態である、請求項1〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
前記化合物Aが、R鏡像異性体の形態である、請求項1〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
式Aの化合物の精製方法であって、
【化4】

式中XはCH2、酸素又はイオウであり;R1、R2及びR3は、同じであるか又は異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノ、又はジアルキルアミノ基を表し;かつR4は、アルキル又はアリールであり:ここで用語アルキルは、任意にアリール、アルコキシ、ハロゲン、アルコキシカルボニル、又はヒドロキシカルボニル基によって置換された炭素原子1〜6個を含む直鎖又は分枝の炭化水素鎖を意味し;用語アリールは、任意にアルキルオキシ、ハロゲン、又はニトロ基によって置換されたフェニル又はナフチル基を意味し;及び用語ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味し、化合物Aを2-プロパノールと水との混合物中で再結晶化して鏡像異性的に純粋な形態の化合物Aを生成することを含む、前記精製方法。
【請求項31】
前記2-プロパノール及び水が、前記混合物中に45:55 v/vの割合で存在している、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記鏡像異性的に純粋な形態の化合物Aが、少なくとも99% e.eである、請求項30又は31記載の方法。
【請求項33】
前記再結晶化される化合物Aが、請求項1〜29のいずれか一項記載の方法によって製造される、請求項30〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
Xが、Oである、請求項30〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
R1、R2及びR3の少なくとも1つが、フッ素である、請求項30〜32又は34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
R4が、C1〜C4アルキルである、請求項30〜32又は34〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
R4が、メチル、エチル又はtBuである、請求項36記載の方法。
【請求項38】
R4が、メチルである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
R4が、ベンジルである、請求項30〜32又は34〜38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
式Cの化合物のR又はS鏡像異性体の製造方法であって、
【化5】

式中XはCH2、酸素又はイオウであり;R1、R2及びR3は、同じであるか又は異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノ、又はジアルキルアミノ基を表し;かつR4は、アルキル又はアリールであり:ここで用語アルキルは、任意にアリール、アルコキシ、ハロゲン、アルコキシカルボニル、又はヒドロキシカルボニル基によって置換された炭素原子1〜6個を含む直鎖又は分枝の炭化水素鎖を意味し;用語アリールは、任意にアルキルオキシ、ハロゲン、又はニトロ基によって置換されたフェニル又はナフチル基を意味し;及び用語ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味し、請求項1〜39のいずれか一項記載の方法によって式Aの化合物のR又はS鏡像異性体を形成すること、続いて該化合物AのR又はS鏡像異性体を式Cの化合物の各R又はS鏡像異性体に変換することを含む、前記製造方法。
【請求項41】
Xが、Oである、請求項40記載の方法。
【請求項42】
R1、R2及びR3の少なくとも1つが、フッ素である、請求項40又は41記載の方法。
【請求項43】
式Cの化合物が、下記式である、請求項40記載の方法:
【化6】


【請求項44】
前記化合物Aが、-C(=O)-O-R4をHと置換することを含む反応によって化合物Cに変換される、請求項40〜43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
前記化合物AのR又はS鏡像異性体が、加水分解によって式Cの化合物の各R又はS鏡像異性体に変換される、請求項40〜44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
式Eの化合物のR又はS鏡像異性体又はその塩の形成方法であって、
【化7】

R1、R2及びR3は、同じであるか又は異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルキルオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルカルボニルアミノ、アルキルアミノ、又はジアルキルアミノ基を表し;XはO、S又はCH2を表し;nは1、2又は3を表し;かつR12は水素、アルキル、又はアルキルアリール基を表し、請求項40〜45のいずれか一項の方法に従って式Cの化合物のR又はS鏡像異性体を形成すること、及び式Cの化合物のR又はS鏡像異性体を式Eの化合物のR又はS鏡像異性体に変換することを含む、前記形成方法。
【請求項47】
前記化合物Cを前記化合物Eの置換イミダゾール-2-チオン環のN(1)部位を構築するためのアミノ成分として用いることによって、該化合物Cが該化合物Eに変換される、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記化合物Cのアミノ基が、5-置換イミダゾール-2-チオン基に変換され、ここで5位の置換基が-(CH2)n-NHR12基であり、式中R12は、水素、アルキル、又はアルキルアリール基を表す、請求項46又は47記載の方法。
【請求項49】
式Cの化合物のR又はS鏡像異性体を式D2の化合物と、実質的に不活性な溶媒中、有機酸の存在下で水溶性のチオシアン酸塩とともに反応させること、
【化8】

式中nは1、2又は3を表し;nが1又は2である場合、R12は水素、アルキル又はアルキルアリール基を表し、R11はヒドロキシル保護基を表し、かつR13はアミノ保護基を表し;nが3を表す場合、R11はヒドロキシル保護基を表すが、R12及びR13は互いに結合してフタルイミド基を表し;続いて、後続の中間生成物F〜Iの脱保護を行うことを含む、請求項47又は48記載の方法:
【化9】


【請求項50】
Xが、Oである、請求項46〜49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
nが、2又は3である、請求項46〜50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
R1、R2及びR3の少なくとも1つが、フッ素である、請求項46〜51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
前記化合物Eが、下記の化合物又はその塩である、請求項46〜49のいずれか一項記載の方法:(S)-5-(2-アミノエチル)-1-(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(S)-5-(2-アミノエチル)-1-(5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-クロマン-3-イル-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-フルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-フルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,7-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(S)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6,7,8-トリフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-クロロ-8-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-メトキシ-8-クロロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ニトロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(8-ニトロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-[6-(アセチルアミノ)クロマン-3-イル]-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-アミノメチル-1-クロマン-3-イル-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-アミノメチル-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ヒドロキシ-7-ベンジルクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-アミノメチル-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(3-アミノプロピル)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(S)-5-(3-アミノプロピル)-1-(5,7-ジフルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R,S)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-ヒドロキシチオクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R,S)-5-(2-アミノエチル)-1-(6-メトキシチオクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-ベンジルアミノエチル)-1-(6-メトキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-5-(2-ベンジルアミノエチル)-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-1-(6-ヒドロキシクロマン-3-イル)-5-(2-メチルアミノエチル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン;(R)-1-(6,8-ジフルオロクロマン-3-イル)-5-(2-メチルアミノエチル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオン又は(R)-1-クロマン-3-イル-5-(2-メチルアミノエチル)-1,3-ジヒドロイミダゾール-2-チオンである。
【請求項54】
前記塩が、塩酸塩である、請求項53記載の方法。
【請求項55】
前記化合物Eが、式Pの化合物の各R又はS鏡像異性体である、請求項46〜49のいずれか一項記載の方法:
【化10】



【公表番号】特表2011−519919(P2011−519919A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508434(P2011−508434)
【出願日】平成21年5月6日(2009.5.6)
【国際出願番号】PCT/PT2009/000025
【国際公開番号】WO2009/136803
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(596095518)バイアル−ポルテラ アンド シーエー,エス.エー. (25)
【Fターム(参考)】