説明

両末端にシラノール基を有する低分子量直鎖状オルガノポリシロキサンの製造方法

【課題】中和工程を必要としないで、両末端シラノール基封鎖の低分子量直鎖状オルガノポリシロキサンを高割合で簡便に製造できる製造方法を提供する。
【解決手段】環状オルガノポリシロキサンを、水と水混和性有機溶媒との混合溶媒中で、該環状オルガノポリシロキサンの開環反応を促進する固相触媒との接触下において加水分解することを含む、下記一般式(2):


(式中、R1およびR2は独立に置換または非置換の一価炭化水素基、、pは1≦p≦20の整数である。)
で示される分子鎖両末端がシラノール基で封鎖された直鎖状のオルガノポリシロキサンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両末端にシラノール基を有する低分子量直鎖状オルガノポリシロキサンの製造方法の簡便な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子内にシラノール基を有する低分子量のオルガノポリシロキサン、特に両末端にシラノール基を有する低分子量直鎖状オルガノポリシロキサンは、シリコーンゴムコンパウンドを製造する際にシリコーンポリマー中にシリカを分散するシリカ分散剤として有用である。この場合、分散剤としての効能は該オルガノポリシロキサンの単位質量当りのシラノール基の含有量に比例し、シラノール基の含有量が大きいオルガノポリシロキサンほど、即ち両末端にシラノール基を有する直鎖状オルガノシロキサンでは低分子量(即ち、低重合度)であるほど、使用量が少なくて済み、またシリコーンゴムコンパウンドの加工性を考えるとより有効である。
【0003】
しかしながら現在工業的に用いられている両末端シラノール基封鎖の直鎖状オルガノポリシロキサンは殆どが重合度10以上のものである。より低重合度の、即ち低分子量の両末端シラノール基封鎖、低分子量直鎖状オルガノポリシロキサンが求められるが、そのような低分子量直鎖状オルガノシロキサンを工業的に得る方法は殆んど知られていない。
【0004】
両末端にシラノール基を有する低分子量の直鎖状オルガノポリシロキサンを合成する方法はいろいろ研究がなされている。実験室的には緩衝溶液等を用いて、アルコキシシラン溶液を中性の状態に保ちつつ加水分解する方法が知られている。しかし、この方法は工業的方法としては適さない。
【0005】
また、ジメトキシシランを過剰の中性の蒸留水と混合し、還流させる方法もあるが、収率は余りよくない。
【0006】
両末端にシラノール基を有する低分子量直鎖状オルガノポリシロキサンは、工業的には、両末端に塩素原子を有する直鎖状オルガノジクロロポリシロキサン、もしくはジオルガノジクロロシランを環状体にならないよう弱アルカリ性水溶液で加水分解することにより製造されている。しかしこの方法では、生成したシラノール基が酸或いはアルカリに対して不安定で、加水分解によって生成した塩化水素により縮合反応を起こし、目的の両末端シラノール基封鎖、低分子量直鎖状オルガノポリシロキサン以外に、より高分子量のオルガノポリシロキサンや環状ポリシロキサンが生成するという問題があった。従って、この方法により所望の低分子量体を主に合成するには、加水分解反応系内を厳密に中性に保つ必要があるが、今のところそのような方法は知られていない。
【0007】
両末端に塩素原子を有する直鎖状のオルガノクロロポリシロキサンを、揮発性メチルシクロシロキサンとの混合溶液にして加水分解を行う方法(特許文献1:特開2002-308889号)が知られている。
【0008】
ヘキサメチルシクロトリシロキサン、メタノール、蟻酸、および水を反応させ、両末端にシラノール基を有する低分子量の直鎖状オルガノポリシロキサンを合成する方法(特許文献2:米国特許第3925285号)が報告されている。しかし、この方法により得られる生成物には、末端にメトキシ基が残留するものも無視できない程度含まれ、重合度が3より小さい両末端シラノール基封鎖の低分子量の直鎖状オルガノポリシロキサンは生成されない。
【0009】
所望の両末端シラノール基封鎖の低分子量直鎖状オルガノポリシロキサンに相当するオルガノクロロポリシロキサンを、水を含んだプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドといったエポキシ系溶媒に滴下する方法(特許文献3:米国特許第5057620号)が報告されている。しかし、この方法は溶媒が低沸点のものでは静電気着火を起こしやすいといった安全上の問題がある。
【0010】
またジオルガノジアルコキシシランを活性化白土のような固体酸触媒により加水分解する両末端にシラノール基を有する低分子量の直鎖状オルガノポリシロキサンの合成法(特許文献4:特公昭64-5604号)が報告されているが、この方法では、固体酸を中和する必要があるため操作が煩雑である。
【0011】
カチオン交換樹脂を用いてアルコキシシランを加水分解し、高重合度のシリコーンレジンを製造する方法(特許文献5:米国特許第3304318号)が開示されているが、両末端にシラノール基を有する低分子量の直鎖状オルガノポリシロキサンの合成、収率には何も触れられていない。
【0012】
ジオルガノジアルコキシシランの加水分解により両末端にシラノール基を有する低分子量の直鎖状オルガノポリシロキサンの製造方法に関する文献が多数(特許文献6:特開平7-233179号、特許文献7:特開平8-113649号、特許文献8:特開平8-151445号、特許文献9:特開平8-239476)知られている。しかし、これらの方法では末端シラノール基を有する低分子量の直鎖状オルガノポリシロキサンが主成分として得られるものの、若干量ではあるが加水分解が完結しなかった末端アルコキシ基を有するオルガノシロキサンが残ってしまう。
【0013】
環状オルガノポリシロキサンを開環するには通常強酸を用いる為、末端に加水分解基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンが生成したとしても、該直鎖状オルガノポリシロキサン分子の運動性が高すぎる為、分子内および分子間における縮合反応が優先し、環状オルガノポリシロキサンおよび長鎖オルガノポリシロキサンが副生してしまう。従って、環状オルガノポリシロキサンを加水分解し、両末端にシラノール基を有する低分子量の直鎖状オルガノポリシロキサンを製造することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002-308889号公報
【特許文献2】米国特許第3925285号明細書
【特許文献3】米国特許第5057620号明細書
【特許文献4】特公昭64-5604号公報
【特許文献5】米国特許第3304318号明細書
【特許文献6】特開平7-233179号公報
【特許文献7】特開平8-113649号公報
【特許文献8】特開平8-151445号公報
【特許文献9】特開平8-239476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、中和工程を必要としないで、両末端シラノール基封鎖の低分子量直鎖状オルガノポリシロキサンを高割合で簡便に製造できる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、環状オルガノポリシロキサンの開環反応を、固相触媒を用いる下記の方法により上記の目的を達成することができることを見出した。
【0017】
即ち、本発明は、一般式(1):
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、R1およびR2は独立に置換または非置換の一価炭化水素基、nは3≦n≦6の整数である。)
で示される環状オルガノポリシロキサンを、水と水混和性有機溶媒との混合溶媒中で、該環状オルガノポリシロキサンの開環反応を促進する固相触媒との接触下において加水分解することを含む、下記一般式(2):
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、R1およびR2は前記の通りであり、pは1≦p≦20の整数である。)
で示される分子鎖両末端がシラノール基で封鎖された直鎖状のオルガノポリシロキサンの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の方法によれば、単位質量当りのシラノール量が多い、両末端にシラノール基を有する低分子量ないしは低重合度の直鎖状オルガノポリシロキサンを、中和工程を必要とせず、加水分解性残基が無い状態で得ることができる。
【0023】
本発明の方法は、重合度1〜20の、特に1〜15の、さらには、2〜10のもの両末端シラノール基封鎖の低分子量直鎖状オルガノポリシロキサンを高割合で製造することができる。
【0024】
本発明の製造方法においては、次のメカニズムで合成が進行するものと推察される。生成した両末端にシラノール基を有する低分子量の直鎖状オルガノポリシロキサンは、固相上に開環触媒が担持された固相触媒を用いて、環状オルガノポリシロキサンを固相開環触媒上で開環させ、生じた直鎖状オルガノポリシロキサンの末端にある加水分解基と固相担体を化学結合させる。これにより直鎖状オルガノポリシロキサンの末端官能基の方向が制御されるとともに、該オルガノポリシロキサン分子の運動性が抑制される。次いで、該オルガノポリシロキサン分子よりも分子運動性が高く構造が小さい水によって加水分解反応が生じ、直鎖状オルガノポリシロキサン分子が固相上から切り出される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の製造方法を実施の形態を説明しつつ具体的に詳説するが、本願明細書では、「分子鎖両末端がシラノール基で封鎖された直鎖状のオルガノポリシロキサン」の用語は、前記一般式(2)においてp=1の場合(即ち、ジヒドロキシジオルガノシラン)を含む意味で使用する。
【0026】
<原料>
本発明の方法では原料として一般式(1):
【0027】
【化3】

【0028】
(式中、R1およびR2は独立に置換または非置換の一価炭化水素基、nは3≦n≦6の整数である。)
で示される環状オルガノポリシロキサンが用いられる。該環状オルガノポリシロキサンはnが3〜6の範囲内の1種であってもよいし、nが異なる2種以上の混合体であってもよい。
【0029】
上記式(1)中、R1およびR2は、独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などの炭素原子数1〜8の一価炭化水素基、または、これらの炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部若しくは全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換したクロロメチル基、クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2-シアノエチル基等の、置換の一価炭化水素基である。好ましくはR1およびR2がメチル基、またはR1およびR2のいずれか一方がメチル基で他方が3,3,3-トリフルオロプロピル基である。
【0030】
<加水分解>
本発明の方法では、上記の環状オルガノポリシロキサンを、水と水混和性有機溶媒との混合溶媒中で、環状オルガノポリシロキサンの開環反応を促進する官能基が担持された固相触媒を用いて、加水分解をおこなう。
【0031】
環状オルガノポリシロキサンの開環反応を促進する固相触媒としては、高分子樹脂上にイオン交換基が担持されたイオン交換樹脂や、スルホン酸基を持つパーフルオロ骨格から構成されるナフィオン樹脂や、無機担体である酸性白土を硫酸や塩酸で処理した活性白土などであり、好ましくはイオン交換樹脂である。
【0032】
イオン交換樹脂は加水分解反応触媒として作用するものではあるが、耐摩耗性、耐溶剤性および耐熱性の高い、スルホン酸やカルボキシ基などの酸性のイオン交換基を持つ陽イオン交換樹脂を使用することが好ましい。塩基性のイオン交換樹脂でも加水分解することは可能ではあるが、塩基性基が脱落し易く、生成したシラノールの安定性が低下することから好ましくない。またイオン交換樹脂の大きさおよび形状は、反応終了後、ろ過等によって迅速かつ容易に反応系から除去することができるものであることが好ましい。特に、連続製造を考えた場合、イオン交換樹脂を容器中に保持しながら加水分解をおこなう必要があることから、反応効率を極端に低下させない程度の大きさで、球状(真球状及び鋭いエッヂ部分を有さないほぼ球形状の粒子を含む)であることが好ましい。具体的な大きさとしては、粒子径が0.1〜5.0mmが好ましく、0.3〜3.0mmがより好ましい。
【0033】
本発明の製造方法は、バッチ方式で行うことができるし、連続方式でも行うことができる。
【0034】
バッチ方式の場合、環状オルガノポリシロキサンの仕込み量は、好ましくは環状オルガノポリシロキサン/水/水混和性有機溶媒の合計量の0.00001〜30質量%、より好ましくは0.001〜10質量%である。
【0035】
連続方式では、陽イオン交換樹脂等の固相触媒を充填した出入り口を有する、例えば円筒状の容器の中に、環状オルガノポリシロキサン/水/水混和性有機溶媒の混合物を均一にして供給して、流通させることで、連続的に加水分解することができる。連続方式の場合は、使用する環状オルガノポリシロキサン/水/水混和性有機溶媒と触媒であるイオン交換樹脂の反応性を考慮して、滞留時間や反応温度等の反応条件は適宜決めれば良い。
【0036】
<水>
水はイオン交換水、蒸留水、水道水などが挙げられる。特に限定されるわけではないが、イオン性化合物が加水分解反応および縮合反応に影響を及ぼすことから、イオン交換水が好ましい。
【0037】
<水混和性有機溶媒>
水混和性有機溶媒としては、反応系均一化の為に、水の他に原料の環状オルガノポリシロキサンが可溶な極性有機溶媒が用いられる。例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の使用が可能である。この場合、極性有機溶媒の添加量が多すぎると除去に時間がかかるため、環状オルガノポリシロキサンと水が該有機溶媒と均一に混和する限りなるべく少量、好ましくは最低量の添加が好ましい。
【0038】
<その他の条件>
本発明の製造方法において、反応時間、反応温度等については、使用材料の量、製造工程によって適宜選択され、これらは特に制限されるものではない。しかし、反応終了後は速やかに固相触媒を除去して反応を停止することが望まれる。
【0039】
バッチ方式の場合、反応時間は好ましくは1〜48時間、より好ましくは4〜24時間である。また、反応温度は好ましくは-10〜80℃、より好ましくは0〜50℃以下がよい。反応温度が高すぎると、生成したシラノールの縮合が起りやすくなる。
【0040】
連続方式の場合、イオン交換樹脂等の固相触媒を充填した反応容器に環状オルガノポリシロキサン/水/水混和性有機溶媒の均一混合物を連続に供給するが、イオン交換樹脂の種類、有機溶媒の種類により適切な滞留時間、温度が決められるが、具体的には、バッチ方式と同等の反応時間(滞留時間)、反応温度とすればよい。
【0041】
上記反応により得られた反応混合物は任意の温度、圧力下でストリッピング化され、有機溶媒、副生成物および残留する水を除去することが好ましい。この場合、ストリッピング時の温度は、120℃以下が望ましく、特に100℃以下が望ましい。ストリッピングの温度が高すぎると、シラノールの縮合が起るおそれがある。ストリッピングの方法としてはバッチ方式の他に、連続でもおこなうことが可能であり、その際のストリッピングの条件(更新方法、接触時間、温度等)は適宜決められる。
【0042】
<生成物>
本発明で得られるオルガノポリシロキサンは、下記一般式(2)で示される分子鎖両末端がシラノール基で封鎖された直鎖状のオルガノポリシロキサンである。
【0043】
【化4】

【0044】
(式中、R1およびR2はそれぞれ前記の通りであり、pは1≦p≦20の整数である。)
pは好ましくは、1≦p≦15の整数、より好ましくは2≦p≦10の整数である。
【実施例】
【0045】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、陽イオン交換樹脂としては、(株)ランクセス社製の商品名レバチットK2629を使用した。該陽イオン交換樹脂は、粒径がほぼ均一で約0.6mmの球状粒子からなるものである。
【0046】
[実施例1]
−末端シラノール基を有する低分子量の直鎖状オルガノポリシロキサン(I)の合成−
1L三口セパラブルフラスコにヘキサメチルシクロトリシロキサン93.90g(0.42mol,1.0当量)、イオン交換水11.44g(0.64mol,1.5当量)、テトラヒドロフラン378.93gを入れ、室温、窒素ガス雰囲気下で均一に攪拌を行った。その後、フラスコにレバチットK2629を18.55g加え、さらに6時間攪拌を行った。得られた反応混合物からろ過によりレバチットK2629を除去した。得られた溶液を加熱減圧ストリップ(100℃、1200Pa)に供してテトラヒドロフランおよび低分子環状オルガノポリシロキサンの留去を行い、末端にシラノール基を有する低分子量の直鎖状オルガノポリシロキサン(I)を得た。該直鎖状オルガノポリシロキサン(I)の、ヘキサメチルシクロトリシロキサンからの変換率は66%(67.10g)であった。
【0047】
該直鎖状オルガノポリシロキサン(I)をガスクロマトグラフィー(GC)分析に供したところ、下記の式(3)〜式(10)の低重合度体がそれぞれ次の割合で含まれていた。
【0048】
式(3)で表される2量体:6.00モル%
式(4)で表される3量体:65.02モル%
式(5)で表される4量体:8.42モル%
式(6)で表される5量体:5.39モル%
式(7)で表される6量体:1.21モル%
式(8)で表される7量体:1.60モル%
式(9)で表される8量体:0.69モル%
式(10)で表される9量体:0.74モル%
【0049】
【化5】

【0050】
【化6】

【0051】
【化7】

【0052】
【化8】

【0053】
【化9】

【0054】
【化10】

【0055】
【化11】

【0056】
【化12】

【0057】
[実施例2]
−両末端シラノール基を有する低分子量の直鎖状オルガノポリシロキサン(II)の合成−
1L三口セパラブルフラスコにトリス(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサン93.42g(0.20mol,1.0当量)、イオン交換水14.59g(0.81mol,4.1当量)、テトラヒドロフラン375.61gを入れ、室温、窒素ガス雰囲気下で均一に攪拌を行った。その後、該フラスコにレバチットK2629を18.75g加え、さらに24時間攪拌を行った。得られた反応混合物からろ過によりレバチットK2629を除去した。得られた溶液を加熱減圧ストリップ(100℃、1200Pa)に供してテトラヒドロフランおよび低分子環状オルガノポリシロキサンの留去を行い、両末端にシラノール基を有する低分子量の直鎖状オルガノポリシロキサン(II)を得た。該直鎖状オルガノポリシロキサン(II)の、(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンからの変換率は93%(90.46g)であった。
【0058】
該直鎖状オルガノポリシロキサン(II)をガスクロマトグラフィー(GC)分析に供したところ、下記の式(11)で表される3量体を95.41モル%含むものであった。
【0059】
【化13】

【0060】
[比較例1]
−両末端にシラノール基を有する低分子量の直鎖状オルガノポリシロキサン(III)の合成−
1L三口セパラブルフラスコにヘキサメチルシクロトリシロキサン95.76g(0.43mol,1.0当量)、テトラヒドロフラン382.07g、イオン交換水11.77g(0.65mol,1.5当量)、トリフルオロメタンスルホン酸0.68g(0.0045mol,0.01当量)を入れ、室温で6時間攪拌を行った。得られた反応混合物に酸性物質吸着用無機合成吸着剤(商品名:キョーワード500、協和化学社製)4.26gを加えた後、さらに2時間攪拌して中和を行った。
【0061】
こうして得られた反応液をGC分析に供したところ、オルガノシロキサンとして下記の割合で含むことが分かった。
【0062】
式(12)で表される3量体:9.09モル%
式(13)で表される6量体:9.91モル%
オクタメチルシクロテトラシロキサン:46.48モル%
デカメチルシクロペンタシロキサン:19.32モル%
ドデカメチルシクロシロキサン:9.91モル%
【0063】
【化14】

【0064】
【化15】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の製造方法は、シリコーンゴムコンパウンドを製造する際の分散剤として優れた両末端シラノール基封鎖の低分子量直鎖状オルガノポリシロキサンを簡便に安定的に製造するのに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】


(式中、R1およびR2は独立に置換または非置換の一価炭化水素基、nは3≦n≦6の整数である。)
で示される環状オルガノポリシロキサンを、水と水混和性有機溶媒との混合溶媒中で、該環状オルガノポリシロキサンの開環反応を促進する固相触媒との接触下において加水分解することを含む、下記一般式(2):
【化2】


(式中、R1およびR2は前記の通りであり、pは1≦p≦20の整数である。)
で示される分子鎖両末端がシラノール基で封鎖された直鎖状のオルガノポリシロキサンの製造方法。
【請求項2】
上記一般式(1)で示される環状オルガノポリシロキサンが、ヘキサメチルシクロトリシロキサンまたは、トリス(3,3,3-トリフルオロプロピル)トリメチルシクロトリシロキサンである、請求項1に係る製造方法。
【請求項3】
環状オルガノポリシロキサンの開環反応を促進する固相触媒が、陽イオン交換樹脂である請求項1または2に係る製造方法。
【請求項4】
加水分解に使用する水がイオン交換水である請求項1、2または3に係る製造方法。
【請求項5】
前記の水混和性有機溶媒が極性有機溶媒である請求項1〜4のいずれか1項に係る製造方法。

【公開番号】特開2011−246363(P2011−246363A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118932(P2010−118932)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】