説明

両親媒性イタコン酸エステル及びその重合体

【課題】
医療分野や化粧品、食品、塗料などの分野に応用可能な高い重合反応性を示す両親媒性高分子材料を提供すること。
【解決手段】
一分子内に疎水性基と親水性基を有する新規な両親媒性イタコン酸エステル、及びその単独重合体によって、上記課題は解決される。又、本発明の両親媒性イタコン酸エステルの単独重合体は、室温ではゴム状態の非晶質ポリマーであり、比較的高い熱安定性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規のイタコン酸エステル及びその重合体に関する。さらに詳しくは、一分子内に親水基と疎水基を有する両親媒性イタコン酸エステルであって、それを用いた両親媒性高分子材料に関する。
【背景技術】
【0002】
同一の高分子鎖中に疎水性部位と親水性部位を持つ両親媒性高分子は、従来用いられてきた低分子の界面活性剤に替わる機能性材料として医療分野や化粧品、食品、塗料など極めて広い範囲への応用が検討されている。特に一分子内に疎水基と親水基を有するモノマーの重合により得られる両親媒性ホモポリマーは、疎水基と親水基が均一に分散するため、疎水性と親水性の両立が可能であるという特徴を有しており、例えば疎水基と親水基を有するフマル酸誘導体と親水性モノマーとの共重合体は、コンタクトレンズ材料として優れた特性を示すことが知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2008−056894
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1におけるフマル酸誘導体は、重合反応性が低いため、高分子量の重合体とするためには、他の親水性モノマーと共重合する必要があり、単独重合体を両親媒性高分子材料としてコンタクトレンズ材料以外の分野に応用することは困難であるという問題点があった。
【0005】
本発明は、両親媒性高分子材料として医療分野や化粧品、食品、塗料などの分野に応用可能な高い重合反応性を示すイタコン酸エステル及びその単独重合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
<1>一般式(A)で表される親水基(R)及び疎水基(X-R)を有する両親媒性イタコン酸エステル。
【化9】

(式中のRは水素、炭素数1以上10以下のヒドロキシアルキル基、炭素数1以上10以下のアミノアルキル基、-(CHCHO)m-A基(mは1以上25以下の整数、Aは水素、メチル、またはエチルを示す)、下記式
【化10】

(nは1以上5以下の整数)から選択される基であり、Xは炭素数が1以上10以下のアルキレン、炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキレン、フェニレン、シクロへキシレン、-(CHCHO)o-基(oは1以上25以下の整数)のいずれか1つで示される基であり、Rは水素、炭素数が1以上10以下のアルキル基、炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、下記式
【化11】

(Y、Y、Yはそれぞれ独立にメチル基、エチル基、フェニル基、Si原子が20以下のオルガノシロキシ基を示す)から選択される基である。)
【0007】
<2>次に、一般式(B)で表される親水基(R)及び疎水基(X-R)を有する両親媒性イタコン酸エステルの重合体。
【化12】

(式中のRは水素、炭素数1以上10以下のヒドロキシアルキル基、炭素数1以上10以下のアミノアルキル基、-(CHCHO)m-A基(mは1以上25以下の整数、Aは水素、メチル、またはエチルを示す)、下記式
【化13】

(nは1以上5以下の整数)から選択される基であり、Xは炭素数が1以上10以下のアルキレン、炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキレン、フェニレン、シクロへキシレン、-(CHCHO)o-基(oは1以上25以下の整数)のいずれか1つで示される基であり、Rは水素、炭素数が1以上10以下のアルキル基、炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、下記式
【化14】

(Y、Y、Yはそれぞれ独立にメチル、エチル、フェニル、Si原子が20以下のオルガノシロキシを示す)から選択される基である。)
【0008】
<3>次に、上記<1>に記載の両親媒性イタコン酸エステルを含む組成物が重合してなる上記<2>に記載の両親媒性イタコン酸エステルの重合体である。
【0009】
<4>次に、上記<1>に記載の両親媒性イタコン酸エステルを10重量%〜90重量%含むことを特徴とする上記<2>又は<3>に記載の両親媒性イタコン酸エステルの重合体である。
【0010】
<5>次に、上記<1>に記載の両親媒性イタコン酸エステル以外の重合成分が、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、ブタジエン、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドンから選択される少なくとも1つの成分であることを特徴とする上記<2>〜<4>のいずれかに記載の両親媒性イタコン酸エステルの重合体である。
【0011】
<6>次に、平均分子量が20000以上であることを特徴とする上記<2>〜<5>のいずれかに記載の両親媒性イタコン酸エステルの重合体である。
【0012】
<7>次に、−100℃〜150℃において、非晶質ポリマーであることを特徴とする上記<2>〜<6>のいずれかに記載の両親媒性イタコン酸エステルの重合体である。
【0013】
<8>更に、無水イタコン酸に導入したい親水性置換基を有するアルコールを加え、加熱することにより反応させ、一般式(C)で表されるβ-アルコキシイタコネート
【化15】

(式中のRは水素、炭素数1以上10以下のヒドロキシアルキル基、炭素数1以上10以下のアミノアルキル基、-(CHCHO)m-A基(mは1以上25以下の整数、Aは水素、メチル、またはエチルを示す)、下記式
【化16】

(nは1以上5以下の整数)から選択される基である。)
を得る工程と、該β-アルコキシイタコネートをジメチルアミノピリジンと1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩の存在下で導入したい疎水性置換基を有するアルコールと反応させ、エステル化する工程を備えることを特徴とする両親媒性イタコン酸エステルの製造方法。
【0014】
<9>更に、上記<1>に記載の両親媒性イタコン酸エステルをラジカル重合またはアニオン重合することを特徴とする両親媒性イタコン酸エステルの重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の両親媒性イタコン酸エステルの重合体は、その分子構造から高い酸素透過性と生体適合性を示すため、特に医療分野や化粧品分野で使用する両親媒性高分子材料として応用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<1.両親媒性イタコン酸エステル>
本発明の両親媒性イタコン酸エステルは一般式(A)
【化17】

(式中のRは水素、炭素数1以上10以下のヒドロキシアルキル基、炭素数1以上10以下のアミノアルキル基、-(CHCHO)m-A基(mは1以上25以下の整数、Aは水素、メチル、またはエチルを示す)、下記式
【化18】

(nは1以上5以下の整数)から選択される基であり、Xは炭素数が1以上10以下のアルキレン、炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキレン、フェニレン、シクロへキシレン、-(CHCHO)o-基(oは1以上25以下の整数)のいずれか1つで示される基であり、Rは水素、炭素数が1以上10以下のアルキル基、炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、下記式
【化19】

(Y、Y、Yはそれぞれ独立にメチル、エチル、フェニル、Si原子が20以下のオルガノシロキシを示す)から選択される基である。)で示される。
【0017】
前記一般式(A)のRは親水基であり、炭素数1以上10以下のヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル、ヒドロキシヘキシルなどの水酸基を1つ持つアルキル基や、ジヒドロキシプロピル、ジヒドロキシブチル、トリヒドロキシブチル、ジヒドロキシペンチル、トリヒドロキシペンチル、テトラヒドロキシペンチルなどの水酸基を2個以上有するアルキル基が挙げられ、炭素数1以上10以下のアミノアルキル基の例としては、アミノエチル、N-メチルアミノエチル、N,N-ジメチルアミノエチル、N-メチル-N-エチルアミノエチル、N,N-ジエチルアミノエチル、アミノプロピル、N,N-ジメチルアミノプロピルなどの1級、2級、または3級アミノ基を1つ含むアルキル基や、ジアミノプロピル、ビス(N,N-ジメチルアミノ)プロピル、ジアミノブチル、N,N-ジメチルエチル-N’-メチルアミノエチルなどの1級、2級、または3級アミノ基を2個以上有する直鎖または分岐のアルキル基が挙げられる。また、-(CHCHO)m-A基(mは1以上25以下の整数、Aは水素、メチル、またはエチルを示す)の例としては、メトキシエチル、エトキシエチル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、および分子量が1000以下のオリゴエチレングリコールやオリゴエチレングリコールメチルエーテルなどが挙げられる。これらのうち、合成反応の容易さ、市販品として入手の容易さ等の理由から、2-ヒドロキシエチル、2-アミノエチル、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル、2-メトキシエチル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールメチルエーテルが好ましい。
【0018】
前記一般式(A)のXはイタコン酸部位と疎水基Rを結合する基であり、炭素数が1以上10以下のアルキレンの例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、ネオペンチレン、へキシレンなどが挙げられ、分岐の炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキレンの例としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソプロピレン、オクタフルオロブチレン、ドデカフルオロへキシレンなどが挙げられる。また、-(CHCHO)o-基(oは1以上25以下の整数)の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、および分子量が1000以下のオリゴエチレングリコールなどが挙げられる。これらのうち、合成反応の容易さ、市販品として入手の容易さ等の理由から、エチレン、プロピレン、テトラフルオロエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましい。
【0019】
前記一般式(A)のRは疎水基であり、炭素数が1以上10以下のアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシルなどが挙げられ、炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキル基の例としては、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、オクタフルオロブチル、オクタフルオロターシャリーブチル、ウンデカフルオロへキシルなどが挙げられる。また、下記式
【化20】

のY、Y、Yの例としては、それぞれ独立にメチル、エチル、フェニル、トリメチルシロキシ、ペンタメチルジシロキシ、メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ、トリス(ペンタメチルシロキシ)シロキシ、トリメチルシロキシジメチルシロキシ、メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シロキシ、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シロキシ、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シロキシ、ノナメチルテトラシロキシ、ペンタデカメチルヘプタシロキシ、ヘプタコサメチルトリデカシロキシ、トリス(ペンタメチルジシロキシ)シロキシ、ノナメチルテトラシロキシウンデシルメチルペンタシロキシ、ノナキス(トリメチルシロキシ)テトラシロキシなどのSi原子が20個以下のオルガノシロキシ基が挙げられる。これらのうち、市販品として入手の容易さの理由から、メチル、フェニル、トリメチルシロキシが好ましい。
【0020】
<2.両親媒性イタコン酸エステルの重合体>
本発明の両親媒性イタコン酸エステルの重合体は一般式(B)
【化21】

(式中のRは水素、炭素数1以上10以下のヒドロキシアルキル基、炭素数1以上10以下のアミノアルキル基、-(CHCHO)m-A基(mは1以上25以下の整数、Aは水素、メチル、またはエチルを示す)、下記式
【化22】

(nは1以上5以下の整数)から選択される基であり、Xは炭素数が1以上10以下のアルキレン、炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキレン、フェニレン、シクロへキシレン、-(CHCHO)o-基(oは1以上25以下の整数)のいずれか1つで示される基であり、Rは水素、炭素数が1以上10以下のアルキル基、炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、下記式
【化23】

(Y、Y、Yはそれぞれ独立にメチル、エチル、フェニル、Si原子が20以下のオルガノシロキシを示す)から選択される基である。)で示される。
【0021】
前記一般式(B)のRは親水基であり、炭素数1以上10以下のヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル、ヒドロキシヘキシルなどの水酸基を1つ持つアルキル基や、ジヒドロキシプロピル、ジヒドロキシブチル、トリヒドロキシブチル、ジヒドロキシペンチル、トリヒドロキシペンチル、テトラヒドロキシペンチルなどの水酸基を2個以上有するアルキル基が挙げられ、炭素数1以上10以下のアミノアルキル基の例としては、アミノエチル、N-メチルアミノエチル、N,N-ジメチルアミノエチル、N-メチル-N-エチルアミノエチル、N,N-ジエチルアミノエチル、アミノプロピル、N,N-ジメチルアミノプロピルなどの1級、2級、または3級アミノ基を1つ含むアルキル基や、ジアミノプロピル、ビス(N,N-ジメチルアミノ)プロピル、ジアミノブチル、N,N-ジメチルエチル-N’-メチルアミノエチルなどの1級、2級、または3級アミノ基を2個以上有する直鎖または分岐のアルキル基が挙げられる。また、-(CHCHO)m-A基(mは1以上25以下の整数、Aは水素、メチル、またはエチルを示す)の例としては、メトキシエチル、エトキシエチル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、および分子量が1000以下のオリゴエチレングリコールやオリゴエチレングリコールメチルエーテルなどが挙げられる。これらのうち、合成反応の容易さ、市販品として入手の容易さ等の理由から、2-ヒドロキシエチル、2-アミノエチル、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル、2-メトキシエチル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールメチルエーテルが好ましい。
【0022】
前記一般式(B)のXはイタコン酸部位と疎水基Rを結合する基であり、炭素数が1以上10以下のアルキレンの例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、ネオペンチレン、へキシレンなどが挙げられ、分岐の炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキレンの例としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソプロピレン、オクタフルオロブチレン、ドデカフルオロへキシレンなどが挙げられる。また、-(CHCHO)o-基(oは1以上25以下の整数)の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、および分子量が1000以下のオリゴエチレングリコールなどが挙げられる。これらのうち、合成反応の容易さ、市販品として入手の容易さ等の理由から、エチレン、プロピレン、テトラフルオロエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましい。
【0023】
前記一般式(B)のRは疎水基であり、炭素数が1以上10以下のアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシルなどが挙げられ、炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキル基の例としては、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、オクタフルオロブチル、オクタフルオロターシャリーブチル、ウンデカフルオロへキシルなどが挙げられる。また、下記式
【化24】

のY、Y、Yの例としては、それぞれ独立にメチル、エチル、フェニル、トリメチルシロキシ、ペンタメチルジシロキシ、メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ、トリス(ペンタメチルシロキシ)シロキシ、トリメチルシロキシジメチルシロキシ、メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シロキシ、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シロキシ、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シロキシ、ノナメチルテトラシロキシ、ペンタデカメチルヘプタシロキシ、ヘプタコサメチルトリデカシロキシ、トリス(ペンタメチルジシロキシ)シロキシ、ノナメチルテトラシロキシウンデシルメチルペンタシロキシ、ノナキス(トリメチルシロキシ)テトラシロキシなどのSi原子が20個以下のオルガノシロキシ基が挙げられる。これらのうち、市販品として入手の容易さの理由から、メチル、フェニル、トリメチルシロキシが好ましい。
【0024】
<3.両親媒性イタコン酸エステル及びその重合体の合成>
本発明の両親媒性イタコン酸エステル及びその重合体は、一例として次式(化25)の反応により合成することができる。
【化25】

【0025】
まず、無水イタコン酸に導入したい親水性置換基を有するアルコールを加え、加熱することにより反応させ、一般式(C)で表されるβ-アルコキシイタコネート
【化26】

(式中のRは水素、炭素数1以上10以下のヒドロキシアルキル基、炭素数1以上10以下のアミノアルキル基、-(CHCHO)m-A基(mは1以上25以下の整数、Aは水素、メチル、またはエチルを示す)、または下記式
【化27】

(nは1以上5以下の整数)から選択される基である。)を得る。
【0026】
前記一般式(C)のRは親水基であり、炭素数1以上10以下のヒドロキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル、ヒドロキシヘキシルなどの水酸基を1つ持つアルキル基や、ジヒドロキシプロピル、ジヒドロキシブチル、トリヒドロキシブチル、ジヒドロキシペンチル、トリヒドロキシペンチル、テトラヒドロキシペンチルなどの水酸基を2個以上有するアルキル基が挙げられ、炭素数1以上10以下のアミノアルキル基の例としては、アミノエチル、N-メチルアミノエチル、N,N-ジメチルアミノエチル、N-メチル-N-エチルアミノエチル、N,N-ジエチルアミノエチル、アミノプロピル、N,N-ジメチルアミノプロピルなどの1級、2級、または3級アミノ基を1つ含むアルキル基や、ジアミノプロピル、ビス(N,N-ジメチルアミノ)プロピル、ジアミノブチル、N,N-ジメチルエチル-N’-メチルアミノエチルなどの1級、2級、または3級アミノ基を2個以上有する直鎖または分岐のアルキル基が挙げられる。また、-(CHCHO)m-A基(mは1以上25以下の整数、Aは水素、メチル、またはエチルを示す)の例としては、メトキシエチル、エトキシエチル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、および分子量が1000以下のオリゴエチレングリコールやオリゴエチレングリコールメチルエーテルなどが挙げられる。これらのうち、合成反応の容易さ、市販品として入手の容易さ等の理由から、2-ヒドロキシエチル、2-アミノエチル、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル、2-メトキシエチル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールメチルエーテルが好ましい。
【0027】
又、前記の無水イタコン酸からβ-アルコキシイタコネートを得る工程において、触媒としてトリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどの塩基を用いてもよい。
【0028】
次に、前記β-アルコキシイタコネート(化26)をジメチルアミノピリジンと1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩の存在下で導入したい疎水性置換基を有するアルコールと反応させ、エステル化することにより、一般式(A)で表される両親媒性イタコン酸エステル(化17)を得る。その際、ジメチルアミノピリジン代わりにトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等を用いてもよく、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩代わりにジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド等を用いてもよい。
【0029】
前記一般式(A)のXはイタコン酸部位と疎水基Rを結合する基であり、炭素数が1以上10以下のアルキレンの例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、ペンチレン、ネオペンチレン、へキシレンなどが挙げられ、分岐の炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキレンの例としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソプロピレン、オクタフルオロブチレン、ドデカフルオロへキシレンなどが挙げられる。また、-(CHCHO)o-基(oは1以上25以下の整数)の例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、および分子量が1000以下のオリゴエチレングリコールなどが挙げられる。これらのうち、合成反応の容易さ、市販品として入手の容易さ等の理由から、エチレン、プロピレン、テトラフルオロエチレン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましい。
【0030】
前記一般式(A)のRは疎水基であり、炭素数が1以上10以下のアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、ターシャリーブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシルなどが挙げられ、炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキル基の例としては、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヘプタフルオロイソプロピル、オクタフルオロブチル、オクタフルオロターシャリーブチル、ウンデカフルオロへキシルなどが挙げられる。また、下記式
【化28】

のY、Y、Yの例としては、それぞれ独立にメチル、エチル、フェニル、トリメチルシロキシ、ペンタメチルジシロキシ、メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ、トリス(ペンタメチルシロキシ)シロキシ、トリメチルシロキシジメチルシロキシ、メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シロキシ、トリス[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]シロキシ、モノ[メチルビス(トリメチルシロキシ)シロキシ]ビス(トリメチルシロキシ)シロキシ、ノナメチルテトラシロキシ、ペンタデカメチルヘプタシロキシ、ヘプタコサメチルトリデカシロキシ、トリス(ペンタメチルジシロキシ)シロキシ、ノナメチルテトラシロキシウンデシルメチルペンタシロキシ、ノナキス(トリメチルシロキシ)テトラシロキシなどのSi原子が20個以下のオルガノシロキシ基が挙げられる。これらのうち、市販品として入手の容易さの理由から、メチル、フェニル、トリメチルシロキシが好ましい。
【0031】
更に、前記両親媒性イタコン酸エステル(化17)をベンゼンに溶解し、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを加え、所定時間反応させることにより、両親媒性イタコン酸エステルの重合体(化21)を得る。その際、重合溶媒としてベンゼンの代わりに一般的な溶媒、例えば、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等を用いてもよく、溶媒を用いないバルク重合でもよい。ラジカル開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリルの代わりにアゾビスジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキシド等を用いてもよく、さらにはベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノンなどの光重合開始剤でもよい。又、活性水素を持たない両親媒性イタコン酸エステルに対しては、ラジカル重合の代わりに、有機リチウム試薬やグリニアール試薬を開始剤に用いたアニオン重合を行ってもよい。
【0032】
前記両親媒性イタコン酸エステルの重合体(化21)には、前記両親媒性イタコン酸エステル(化17)が、約10重量%〜100重量%、好ましくは約30重量%〜100重量%、より好ましくは約50重量%〜100重量%含まれる。又、両親媒性イタコン酸エステル(化17)以外の重合成分として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ペンタフルオロエチル、(メタ)アクリル酸トリメチルシリル、(メタ)アクリル酸トリス(メチルシロキシ)シリルプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、4-ヒドロキシスチレン、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドンなどが含まれていてもよい。これらのうち、取扱いの容易さ、両親媒性イタコン酸エステルとの共重合反応性等の理由から(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸トリス(メチルシロキシ)シリルプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、スチレンが好ましい。
【0033】
前記両親媒性イタコン酸エステルの重合体(化21)の分子量は、1000以上、好ましくは5000以上、より好ましくは20000以上である。又、前記両親媒性イタコン酸エステルの重合体(化21)は、約0℃〜50℃、好ましくは約−50℃〜100℃、より好ましくは約−100℃〜150℃において、非晶質ポリマーである。
【実施例】
【0034】
以下に本発明の好適な一実施の形態を実施例によって具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の実施形態によって限定されるものでなく、本発明の範囲で様々に改変して実施することができる。
【0035】
以下に示す合成経路に従って両親媒性イタコン酸エステル(2)を合成した。
【化29】

【0036】
<実施例1:β-2-メトキシエチルイタコネート(1)の合成>
無水イタコン酸4.0g(35.7mmol)、2-メトキシエタノール2.26g(29.7mmol) を30mLナスフラスコに量り取り、70℃で12時間撹拌した。蒸留水を加え、1N塩酸を加え酸性にし、ジエチルエーテルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。ジイソプロピルエーテルによる再結晶を繰り返すことで白色固体としてβ-2-メトキシエチルイタコネート(1)を25%の収率で得た。融点は38℃であった。スペクトルデータは以下のとおりである。
【化30】

1H NMR (CDCl3, δ, ppm) (a) 9.53 (s, 1H), (b) 6.47
(s, 1H), (c) 5.85 (s, 1H), (d) 4.27 (t, J = 4.8 Hz, 2H), (e) 3.60 (t, J
= 4.8 Hz, 2H), (f, g) 3.39 (s, 5H)
【化31】

13C NMR (CDCl3, δ, ppm) 171.1, 170.6, 133.2, 130.7,
70.2, 63.9, 58.8, 37.1
IR (KBr, cm-1) 3447 (νOH), 2890 (νC-H), 1733 (νC=O), 1702 (νC=O), 1636
C=C), 1200 (νC-O)
【0037】
<実施例2:両親媒性イタコン酸エステル(2)の合成>
β-2-メトキシエチルイタコネート(1)2.341g(12.4mmol)を100mLナスフラスコに量り取り、塩化メチレン22mL、ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.132g(1.06mmol)、3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルアルコール4.40g(12.4mmol)を加え、氷浴しながら1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)4.10g(21.3mmol)を添加した。10分経過後、氷浴を取り除き、室温で撹拌を一晩続けた。1N塩酸を加え酸性にした後、塩化メチレンで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた疎生成物を塩化メチレン/酢酸エチル混合溶液(95/5(vol/vol))を溶離液としたシリカゲルカラムクロマトフィー処理することにより、第一成分として無色粘性液体状の両親媒性イタコン酸エステル(2)を50%の収率で得た。スペクトルデータは以下のとおりである。
【化32】

1H NMR (CDCl3, δ, ppm) (a) 6.33 (s, 1H), (b) 5.71
(s, 1H), (c) 4.27 (t, J = 4.8 Hz, 2H), (d) 4.13 (t, J = 6.8 Hz,
2H), (e) 3.61 (t, J = 4.8 Hz, 2H), (f, g) 3.38 (s, 5H), (h) 1.72 -
1.58 (m, 2H), (i) 0.51 - 0.45 (m, 2H), (j) 0.10 (s, 27H)
【化33】

13C NMR (CDCl3, δ, ppm) (a) 170.7, (b) 166.1, (c)
133.9, (d) 128.2, (e) 70.3, (f) 67.3, (g) 63.9, (h) 58.9, (i) 37.5, (j) 22.7, (k)
10.4, (l) 1.69
IR (KBr, cm-1) 2958
C-H), 1744 (νC=O), 1641 (νCH2), 1254, 842 (νSi-C), 1131 (νSi-O-Si), 1054 (νC-O-C)
【0038】
<実施例3:両親媒性イタコン酸エステル(2)のラジカル重合>
両親媒性イタコン酸エステルモノマー(2)104mg(0.198mmol)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.67mg(0.01mmol)、ベンゼン80.0mg(0.091mL)をバキュームチューブに量り取り、freeze-thaw法により3回脱気した後にバルブを閉じ、密封した。60℃で20時間反応させた後、反応混合物をメタノールに沈殿させ、遠心分離により上澄みを分離した。さらに、塩化メチレン/メタノールにより数回、溶解/再沈殿を繰り返すことで、メタノールに不溶性の両親媒性イタコン酸エステル(2)の単独重合体(poly−2)を無色粘性液体として47%の収率で得た。得られたpoly−1の数平均分子量(Mn)は20300であった。スペクトルデータは以下のとおりである。
【化34】

1H NMR (CDCl3, δ, ppm) (a) 4.43 - 4.05 (br, 2H), (b)
4.05 - 3.76 (br, 2H), (c) 3.76 - 3.54 (br, 2H), (d) 3.55 - 3.35 (br, 3H), (e,
f, g) 3.08 - 1.53 (br, 6H), (h) 0.60 - 0.34 (br, 2H), (i) 0.30 - 0.02 (br, 27H)
IR (KBr, cm-1) 2958
C-H), 1744 (νC=O), 1254, 842 (νSi-C), 1131 (νSi-O-Si), 1054 (νC-O-C)
【0039】
<実施例4:両親媒性イタコン酸エステル(2)の重合反応性>
両親媒性イタコン酸エステル(2)の溶液中での重合反応性について調査するため、ベンゼンを溶媒に用いたラジカル重合を行った。結果を表1に示す。比較のために、(2)と同じ置換基を持つ特許文献1に記載のフマル酸誘導体(3)の重合結果も合わせて示す。
(3)ではメタノールに不溶な高分子量体は全く得られず、メタノールに可溶なオリゴマーがわずかに得られたのみであったのに対し、(2)ではメタノールに不溶な白色固体状のポリマーが得られ、
NMR及びGPC測定から、分子量が20000以上の単独重合体が得られていることが確認された。この結果から、(2)の溶液中での高いラジカル重合反応性が明らかとなった。
【0040】
【表1】

【化35】

【化36】

【0041】
<実施例5:単独重合体(poly−2)の熱的特性>
単独重合体(poly−2)の熱的特性について調査するため、示差走査熱量測定(DSC)及び熱重量測定(TG)を行った。
DSCにおいては、−100℃から150℃の温度範囲で測定した結果、全温度範囲内で融解や結晶化に由来するピークは観測されず、4.1℃にガラス転移点のみが観測され、poly−2が室温ではゴム状態の非晶質ポリマーであることがわかった。
TGにおいては、室温から400℃の温度範囲で測定した結果、200℃付近から重量減少が観測され、5%重量損失温度は297℃と求められた。この結果から、poly−2が比較的高い熱安定性を示すことがわかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A)で表される親水基(R)及び疎水基(X-R)を有する両親媒性イタコン酸エステル。
【化1】

(式中のRは水素、炭素数1以上10以下のヒドロキシアルキル基、炭素数1以上10以下のアミノアルキル基、-(CHCHO)m-A基(mは1以上25以下の整数、Aは水素、メチル、またはエチルを示す)、下記式
【化2】

(nは1以上5以下の整数)から選択される基であり、Xは炭素数が1以上10以下のアルキレン、炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキレン、フェニレン、シクロへキシレン、-(CHCHO)o-基(oは1以上25以下の整数)のいずれか1つで示される基であり、Rは水素、直鎖または分岐の炭素数が1以上10以下のアルキル基、直鎖または分岐の炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、下記式
【化3】

(Y、Y、Yはそれぞれ独立にメチル、エチル、フェニル、Si原子が20以下のオルガノシロキシを示す)から選択される基である。)
【請求項2】
一般式(B)で表される親水基(R)及び疎水基(X-R)を有する両親媒性イタコン酸エステルの重合体。
【化4】

(式中のRは水素、炭素数1以上10以下のヒドロキシアルキル基、炭素数1以上10以下のアミノアルキル基、-(CHCHO)m-A基(mは1以上25以下の整数、Aは水素、メチル、またはエチルを示す)、下記式
【化5】

(nは1以上5以下の整数)から選択される基であり、Xは炭素数が1以上10以下のアルキレン、炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキレン、フェニレン、シクロへキシレン、-(CHCHO)o-基(oは1以上25以下の整数)のいずれか1つで示される基であり、Rは水素、炭素数が1以上10以下のアルキル基、炭素数が1以上10以下のパーフルオロアルキル基、フェニル基、シクロヘキシル基、下記式
【化6】

(Y、Y、Yはそれぞれ独立にメチル、エチル、フェニル、Si原子が20以下のオルガノシロキシを示す)から選択される基である。)
【請求項3】
請求項1に記載の両親媒性イタコン酸エステルを含む組成物が重合してなる請求項2に記載の両親媒性イタコン酸エステルの重合体。
【請求項4】
請求項1に記載の両親媒性イタコン酸エステルを10重量%〜90重量%含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の両親媒性イタコン酸エステルの重合体。
【請求項5】
請求項1に記載の両親媒性イタコン酸エステル以外の重合成分が、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、ブタジエン、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドンから選択される少なくとも1つの成分であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の両親媒性イタコン酸エステルの重合体。
【請求項6】
平均分子量が20000以上であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の両親媒性イタコン酸エステルの重合体。
【請求項7】
−100℃〜150℃において、非晶質ポリマーであることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の両親媒性イタコン酸エステルの重合体。
【請求項8】
無水イタコン酸に導入したい親水性置換基を有するアルコールを加え、加熱することにより反応させ、一般式(C)で表されるβ-アルコキシイタコネート
【化7】

(式中のRは水素、炭素数1以上10以下のヒドロキシアルキル基、炭素数1以上10以下のアミノアルキル基、-(CHCHO)m-A基(mは1以上25以下の整数、Aは水素、メチル、またはエチルを示す)、下記式
【化8】

(nは1以上5以下の整数)から選択される基である。)
を得る工程と、該β-アルコキシイタコネートをジメチルアミノピリジンと1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩の存在下で導入したい疎水性置換基を有するアルコールと反応させ、エステル化する工程を備えることを特徴とする両親媒性イタコン酸エステルの製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の両親媒性イタコン酸エステルをラジカル重合またはアニオン重合することを特徴とする両親媒性イタコン酸エステルの重合体の製造方法。


【公開番号】特開2010−65202(P2010−65202A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235762(P2008−235762)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人高分子学会発行、高分子討論会予稿集57巻2号CD−ROM、平成20年9月9日発行
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【Fターム(参考)】