説明

両面印刷装置

【課題】両面印刷装置において、用紙の厚みの変化に関係なく、吸引搬送による再給紙の安定化を図る。
【解決手段】両面印刷装置1は、用紙の一面に印刷する第1の印刷部3と、一面が印刷された用紙を複数枚貯留する貯留部5と、貯留部5から搬出された用紙の他面に印刷する第2の印刷部7とを備え、貯留部5が、一面が印刷された用紙が搬入される搬入位置と貯留されている用紙が搬出される搬出位置とを所定間隔を空けて有し、搬入位置に搬入された各用紙を順次保持して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で搬入位置から搬出位置に向けて移動させる保持手段53と、搬出位置に到来した用紙を順次吸引保持して第2の印刷手段に向けて搬送する吸引搬送手段56と、吸引搬送手段56による搬送の際に、搬出位置に到来した用紙にその用紙を搬送方向に移動させる力を作用させて吸引搬送手段56による搬送を補助する搬送補助手段54とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の一面及び他面に印刷を行う両面印刷装置に関し、特に一面が印刷された用紙を所定時間貯留し、その後搬送して他面を印刷する両面印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の観点等から印刷に使用する用紙の使用量を低減することが望まれており、用紙の一面及び他面に印刷を行う両面印刷が盛んである。この両面印刷装置の一例として、穿孔製版された孔版原紙を外周面に巻装した円筒状の第1ドラムと第2ドラムを隣接して配設し、第1ドラムで用紙の一面を印刷し、一面が印刷された用紙を搬送して第2ドラムで他面を印刷する両面孔版印刷装置が知られている。
【0003】
このような両面印刷装置の場合、一面に印刷されたインクが十分に乾く前に、他面への印刷を行なうと用紙が汚れてしまう虞がある。これに対して、特許文献1には、一面が印刷された用紙を積載台に順次積載し、所定時間貯留させた後、その積載された順に用紙を搬送して他面を印刷することにより、積載台にてインクを乾燥させる両面印刷装置が提案されている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の両面印刷装置では、一面のインクがまだ乾燥していない複数枚の用紙を積載台に積み重ねているため、印刷面の擦れや裏移り等により用紙が汚れてしまう虞がある。
【0005】
これに対して、一面が印刷された用紙を貯留する貯留部に、一面が印刷された複数枚の用紙を互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持する保持機構を備えることにより、印刷された面つまりインクが転写された面を他の用紙に接触させることなく複数枚の用紙を貯留可能とし、印刷面の擦れや裏移りを防止することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−29375
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1の両面印刷装置などでは、一面が印刷された用紙を印刷部の下方に配置された貯留台に搬送して所定時間貯留させた後、再給紙の際に、貯留された用紙を吸引保持して上方の印刷部に傾斜搬送するようにしている。
【0008】
しかしながら、用紙が厚く(重く)なるほど、用紙と吸引搬送面との間で滑りが生じ、用紙の搬送遅れが発生する虞がある。このような問題は、特に吸引搬送の開始時に顕著に発生する。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、用紙の厚みの変化に関係なく、吸引搬送による再給紙の安定化を図ることができる両面印刷装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の両面印刷装置は、用紙の一面に印刷する第1の印刷手段と、一面が印刷された用紙を複数枚貯留する貯留部と、貯留部から搬出された用紙の他面に印刷する第2の印刷手段とを備え、貯留部が、一面が印刷された用紙が搬入される搬入位置と貯留されている用紙が搬出される搬出位置とを所定間隔を空けて有し、搬入位置に搬入された各用紙を順次保持して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で搬入位置から搬出位置に向けて移動させる保持手段と、搬出位置に到来した用紙を順次吸引保持して第2の印刷手段に向けて搬送する吸引搬送手段と、吸引搬送手段による搬送の際に、搬出位置に到来した用紙にその用紙を搬送方向に移動させる力を作用させて吸引搬送手段による搬送を補助する搬送補助手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
上記装置において、搬送補助手段は、搬出位置に到来した用紙の搬送方向後端にあたって、用紙を搬送方向に向けて押し出すことにより前記力を作用させるものであってもよい。
【0012】
また、搬送補助手段は、用紙の厚みが所定厚以上であるか否かの情報を受け付ける受付部と、搬出位置に到来した用紙にその用紙を搬送方向に移動させる力を作用させる作用部と、受付部により受け付けた情報に基づいて、搬出位置に到来した用紙の厚さが所定厚以上である場合にのみ作用部に搬送の補助を行わせる制御部とを備えたものであってもよい。
【0013】
用紙の厚みが所定厚以上であるか否かを検出する検出手段を備え、受付部が、検出手段による検出の結果を前記情報として受け付けるものであってもよい。
【0014】
用紙の厚みが所定厚以上であるか否かを入力するための入力手段を備え、受付部が、入力手段による入力の結果を前記情報として受け付けるものであってもよい。
【0015】
貯留部が、搬出位置に到来した用紙に対して搬送方向と直交する方向の断面が湾曲するカールを付与するカール付与手段をさらに備えたものであってもよい。
【0016】
保持手段は、開閉可能な把持爪対を有し、一面が印刷された複数枚の用紙を、各用紙の下端を把持爪対で把持して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持するものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の両面印刷装置によれば、貯留部が、一面が印刷された用紙が搬入される搬入位置と貯留されている用紙が搬出される搬出位置とを所定間隔を空けて有し、搬入位置に搬入された各用紙を順次保持して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で搬入位置から搬出位置に向けて移動させる保持手段と、搬出位置に到来した用紙を順次吸引保持して第2の印刷手段に向けて搬送する吸引搬送手段と、吸引搬送手段による搬送の際に、搬出位置に到来した用紙にその用紙を搬送方向に移動させる力を作用させて吸引搬送手段による搬送を補助する搬送補助手段とを備えているので、用紙が厚く(重く)なっても、搬送補助手段により吸引搬送手段による搬送を補助することで用紙と吸引搬送面との間の滑りを防止でき、用紙の厚みの変化に関係なく、吸引搬送による再給紙の安定化を図ることができる。
【0018】
上記装置において、搬送補助手段が、用紙の厚みが所定厚以上であるか否かの情報を受け付ける受付部と、搬出位置に到来した用紙にその用紙を搬送方向に移動させる力を作用させる作用部と、受付部により受け付けた情報に基づいて、搬出位置に到来した用紙の厚さが所定厚以上である場合にのみ作用部に搬送の補助を行わせる制御部とを備えたものである場合には、搬送補助手段による補助処理の効率化を図ることができる。
【0019】
特に、搬送補助手段が、搬出位置に到来した用紙の前記搬送方向後端にあたって、用紙を搬送方向に向けて押し出すことにより吸引搬送手段を補助するものである場合には、用紙の厚みが薄すぎてはその押し出す力で用紙が折れ曲ってしまい、それが用紙の搬送不良につながる可能性もあるので、用紙の厚さが所定厚以上である場合にのみ搬送の補助を行わせることで、そのような問題を引き起さないようにすることができる。
【0020】
また、貯留部が、搬出位置に到来した用紙に対して搬送方向と直交する方向の断面が湾曲するカールを付与するカール付与手段をさらに備えたものである場合には、搬出位置に到来し、保持手段から開放された用紙を、搬送方向の断面が湾曲する腰折れが生じ難い状態にでき、搬送補助手段による用紙を搬送方向に移動させる力が伝わりやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】両面印刷装置の概略構成図
【図2】貯留部の概略構成図
【図3】貯留部の一部斜視図
【図4】貯留部の一部斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態である両面印刷装置1について図を参照しながら説明する。図1は、両面印刷装置1の概略構成を示す図であり、図2は、両面印刷装置1の貯留部5の構成を示す図である。
【0023】
両面印刷装置1は、両面孔版印刷装置であり、未印刷の用紙P1を給紙して一面に印刷し、その一面印刷後の用紙P2を所定時間貯留し、用紙P2を再給紙して他面に印刷し、その他面印刷後の用紙P3を排紙するものである。
【0024】
両面印刷装置1は、未印刷の用紙P1を給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙P1の一面に印刷する第1印刷部3と、この第1印刷部3で一面に印刷された用紙P2を反転させる反転搬送部4と、この反転された用紙P2を所定時間貯留する貯留部5と、この貯留部5に貯留された用紙P2を再給紙する再給紙部6と、この再給紙部6から再給紙された用紙P2の他面に印刷する第2印刷部7と、この第2印刷部7で他面に印刷された用紙P3を排紙する排紙部8とから構成される。
【0025】
給紙部2は、未印刷の用紙P1を第1印刷部3に給紙するものであり、用紙P1を積載する給紙台21と、この給紙台21から用紙P1を一枚ずつ取り出す給紙ローラ22と、紙捌きローラ23と、用紙P1を第1印刷部3に送り込むタイミングローラ対24と、用紙P1の厚みが所定厚以上であるか否かを検出する検出手段25から構成されている。
【0026】
給紙部2は、給紙台21に積載された用紙P1を給紙ローラ22および紙捌きローラ23によって取り出し、タイミングローラ対24によって所定のタイミングで第1印刷部3へ送り込む。
【0027】
検出手段25は、搬送される用紙P1を挟んで対向するように配設された発光部541と受光部542から構成されている。発光部541に予め定められた発光量の光を発光させるとともに受光部542にその光を受光させ、受光部542の受光量から用紙P1の光透過率を測定し、測定した光透過率をあらかじめ設定した閾値と比較することにより、用紙P1の厚みが所定厚以上であるか否かを検出する(測定した光透過率が閾値以下であれば所定厚以上、閾値より大であれば所定厚未満と判断する)。なお、この検出手段25により検出された検出の結果SIは後述する搬送補助手段54の受付部541に出力される。
【0028】
第1印刷部3は、用紙P1の一面に印刷するものであり、第1版胴31を備えている。この第1版胴31は、インク透過性の周壁31aを有し、図示しない駆動手段により回転駆動される。第1版胴31の内部には、周壁31aの内周面に接するインク供給ローラ32と、このインク供給ローラ32へインクを所定量供給するドクターローラ33と、インクが充填されたインクボトル34が設けられている。
【0029】
また、第1版胴31の外周面には原紙Mが巻装されている。第1版胴31の下方には、プレスローラ35が設けられ、このプレスローラ35が第1版胴31と近接離間するように移動することで、用紙P1を所定の押圧力で挟持して印刷する。第1版胴31の右下方には、第1印刷部3で一面が印刷された用紙P2を原紙Mから分離させる分離爪36が設けられている。
【0030】
第1印刷部3は、給紙部2から所定のタイミングで用紙P1が送り込まれると、第1版胴31とプレスローラ35とで用紙P1を挟持搬送し、原紙Mに用紙P1を押圧して印刷する。一面が印刷された用紙P2は、分離爪36によって原紙Mから分離される。
【0031】
反転搬送部4は、一面が印刷された用紙P2を貯留部5へ搬送するとともに、その印刷された面が下方となるように反転させるものであり、下方へ回り込むような円弧状の反転搬送経路に沿って配設された4個のプーリー41と、表面に複数の孔が形成されており、4個のプーリー41の外周に架け渡されてプーリー41の回転に伴って動く搬送ベルト42と、吸引ファン43とを備えている。
【0032】
この反転搬送部4は、プーリー41を回転させて搬送ベルト42を動かせるとともに、吸引ファン43で搬送ベルト42に形成されている複数の孔に吸引力を発生させることにより、用紙P2を吸引保持して搬送する。
【0033】
貯留部5は、反転搬送部4により搬送されてきた用紙P2をその内部に搬入し、用紙P2を乾燥させるために所定時間貯留し、再給紙のために搬出するものであり、図2に示すように、第1搬送手段51、第1カール付与手段52、保持手段53、搬送補助手段54、第2カール付与手段55、第2搬送手段56等から構成される。図3、図4は、貯留部5の一部斜視図である。
【0034】
また、貯留部5は、用紙P2を斜め下方から支持する支持板5aと、この支持板5aの両側で支持板5aに対して略垂直に立設する側板5bと、この支持板5aに対して斜め上方に傾いて位置する覆板5cとを有している。また、この覆板5cの内面で搬入時に用紙P2がその上を移動する搬入面5dと、支持板5aの内面で搬出時に用紙P2がその上を移動する搬出面5eを有している。
【0035】
第1搬送手段51は、反転搬送部4からの用紙P2を貯留部5内の最下方位置まで搬入面5d上を移動させて搬入するものであり、図2に示す通り、覆板5cに固定されて略密閉状態のハウジング511と、ハウジング511内で所定間隔を空けて配置された一対のプーリー512と、一対のプーリー512に掛け渡され、不図示の駆動手段によるプーリー512の回転に伴って移動する環状ベルト513とを備えている。
【0036】
覆板5cには、環状ベルト513が露出するようにスロットが形成され、一対のプーリー512は、露出する環状ベルト513の面が搬入面5dと略平坦となるように、ハウジング511内で配置されている。ここで、環状ベルト513には、複数の孔が形成されている。
【0037】
また、第1搬送手段51は、回転軸514a回りに回転することによって搬入面5dから突出可能な強制剥離爪514と、ハウジング511外に配置され、ハウジング511内を吸気してハウジング511内を負圧状態にさせる吸気ファン515と、ハウジング511と吸気ファン515との間に設けられ、吸気ファン515による吸気を制御する吸気シャッター516と、負圧状態となったハウジング511内に外気を給気して大気圧に戻す給気シャッター517を備えている。
【0038】
第1搬送手段51の動作について説明する。吸気シャッター516を開き、ハウジング511内を吸気して負圧状態にする。負圧状態であるハウジング511内には、搬入面5dに露出する環状ベルト513の孔を介して貯留部5内の空気が流入する。
【0039】
反転搬送部4から貯留部5内に搬入された用紙P2は、孔から環状ベルト513に向けて吸引される。不図示の駆動手段がプーリー512を駆動させることにより、一面が印刷された用紙P2が、露出された環状ベルト513と略平坦な搬入面5d上を移動する。
【0040】
用紙P2が貯留部5内の最下方位置まで搬入されると、吸気シャッター516を閉じて給気シャッター517を開き、ハウジング511内を大気圧に戻し、その後、強制剥離爪514を回転軸514a回りに回転させて搬入面5d上に突出させることにより、搬入面5d上の用紙P2が剥離される。なお、本実施形態では、吸気ファン515は常時駆動しているものとして説明する。
【0041】
第1カール付与手段52は、貯留部5に搬入された用紙P2にその印刷された一面を内側にして湾曲するカールを付与するものであり、図2に示すように、覆板5cの左右の下端側に設けられた、その覆板5cから斜め下方に羽根状に延びるガイド板523から構成される。
【0042】
用紙P2は第1搬送手段51によって搬入位置に吸引搬送されるときに、この用紙P2の左右の下端部がガイド板523の面に沿って搬入され、用紙P2の中央部よりも斜め下方に押し出されつつ搬送される。これにより、用紙P2には印刷された一面を内側にして湾曲するカールが付与される。
【0043】
このようにカールが付与することにより、後述する保持手段53において用紙P2の下端を支持して立たせた状態にして保持・移動させる際に、上下方向の断面が湾曲する腰折れが生じ難くなり、その立った状態を維持させることができる。
【0044】
保持手段53は、搬入位置に1枚ずつ搬入された各用紙P2を順次保持して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で搬入位置から搬出位置に向けて移動させるものであり、一方が搬入位置近傍に配置され、他方が搬出位置近傍に配置された一対のプーリー531と、この一対のプーリー531の外周に掛け渡されて、不図示の駆動手段によるプーリー531の回転に伴って動く搬送ベルト532とを備えている。
【0045】
また、この環状ベルト532の全外周面には、複数のプレート状の受爪533が互いに所定間隔を空けて略垂直に立設している。この各受爪533は、隣接する受爪533に向けて延びる弾性変形可能な弾性爪534(本実施形態では板ばね)を備えている。弾性爪534は、環状ベルト532が直線走行状態にある部分、すなわち隣接する受爪533同士が互いに平行になっている部分では、隣接する受爪533に弾性変形した状態で押し付けられ、環状ベルト532が曲線走行状態にある部分、即ち受爪533同士の間が広がっている部分では、隣接する受爪533から離れた状態となるように構成されている。
【0046】
用紙P2が搬入位置まで搬入されると、用紙P2の下端部が受爪533間の凹部535に一枚ずつ挿入される。搬入位置の近傍では、環状ベルト532は曲線走行状態にあるので受爪533同士の間は開いており、受爪533と弾性爪534との間が用紙P2の厚みよりも広がり、用紙P2の下端部を受爪533間の凹部535に受け入れることができる。なお、本実施形態においては、搬入位置側を上流、搬出位置側を下流として説明する。
【0047】
用紙P2が受爪533間の凹部535に搬入された後、不図示の駆動手段によりプーリー531を回転されると、用紙P2を受け入れた受爪533が位置する環状ベルト532部分は直線走行状態となり、受爪533同士は平行となるため、用紙P2の下端部が、下流側の弾性爪534が弾性変形した状態で該弾性爪534により上流側の受爪533に向けて押し付けられ、上流側の受爪533と下流側の弾性爪534とにより保持される。
【0048】
プーリー531が更に回転し、下流側の受爪533が搬出位置の近傍まで移動すると、搬出位置近傍では環状ベルト532は曲線走行状態にあるので受爪533同士が開き、上流側の受爪533と下流側の弾性爪534との間が開き、用紙P2の下端部の保持が解除される。
【0049】
この用紙P2の搬入面5dから搬出面5eへの移動時間によって、用紙P2の印刷された一面が乾燥する。
【0050】
第2カール付与手段55は、搬出位置に到来した用紙P2に対して第2搬送手段56による搬送方向と直交する方向の断面が湾曲するカールを付与するものであり、図2に示すように、搬出面5e上にその一部を突出させて配置された、円盤にギザギザがある拍車556から構成される。拍車556は、図3に示すように、回転軸が取付け部557によって固定され、用紙P2の搬送方向に自由に回転できるようになっている。
【0051】
搬出位置に到来した用紙P2は、保持手段53による保持が解除されて搬出面5e上に載せられたときに、その中央部が搬出面5e上に突出している拍車556により左右端部よりも上方に押し出され、その用紙P2には第2搬送手段56による搬送方向と直交する方向の断面が湾曲するカールが付与される。
【0052】
このようにカールを付与することにより、保持手段から開放された用紙を、搬送方向の断面が湾曲する腰折れが生じ難い状態にでき、搬送補助手段54による用紙を搬送方向に移動させる力が伝わりやすくなる。また、用紙の搬送方向と直交する方向への動きも制限でき、用紙を所望の搬送位置にまで斜行することなく安定して搬送することが可能となる。
【0053】
また、拍車556は用紙P2の搬送方向に自由に回転でき、用紙P2の印刷面を傷めることはない。また、拍車556は用紙P2にあたる端部をギザギザ状にしているので、用紙P2の印刷面に触れる面積を最小限に抑えられる。
【0054】
搬送補助手段54は、保持手段53により搬出位置に移動された用紙P2を貯留部5内から再給紙部6へ搬送する際に、用紙P2の搬送方向後端にあたってその用紙を搬送方向に向けて押し出すことにより、その用紙を搬送方向に移動させる力を作用させて第2搬送手段56による搬送を補助するものである。
【0055】
搬送補助手段54は、検出手段25から用紙の厚みが所定厚以上であるか否かの情報SIを受け付ける受付部541と、搬出位置に到来した用紙P2に該用紙を搬送方向に移動させる力を作用させる作用部543と、受付部により受け付けた情報に基づいて、搬出位置に到来した用紙の厚さが所定厚以上である場合にのみ作用部543に搬送の補助を行わせる制御部542とから構成されている。
【0056】
作用部543は、図示しないモーター等の駆動手段によって正回転、逆回転駆動されるピニオンギア554と、ピニオンギア554にかみ合うように歯がつけられたラックギア552に連続し、ピニオンギア554の回転に応じて用紙P2の搬送方向に延びたガイド軸555に沿って滑るように移動する押出部551などから構成されている。
【0057】
以下、搬出位置に到来した用紙の厚さが所定厚以上である場合について説明する。押出部551は、用紙P2が保持手段53により搬出位置に到来したときに、その左右上端の折曲部551aが用紙P2の搬送方向後端の真後ろ(図3に示す待機位置)に位置するよう後退した状態で待機する。押出部551は、用紙P2が搬出位置に到来してその用紙P2に対する保持手段53による保持が解除されると、第2搬送手段56による吸引搬送と同期してその搬送方向に所定距離を前進し、折曲部551aで用紙P2を搬送方向に向けて押し出す力を作用する。
【0058】
このとき、押出部551は、第2搬送手段56による吸引搬送開始と同時にその移動を開始して、吸引搬送の速度と同じ速度で、たとえば用紙P2の先端がピックアップローラ対61に達するまでの距離を前進する(図4に示す前進位置まで前進する)。押出部551は、引き続き次の用紙P2が保持手段53により搬出位置に到来する前に、再び待機位置に後退し、用紙P2が搬出位置に到来する度に上記処理を繰り返し行う。
【0059】
第2搬送手段56(吸引搬送手段)は、保持手段53により搬出位置に移動された用紙P2を順次吸引保持して貯留部5内から再給紙部6へ搬出するものであり、ハウジング561が支持板5aに固定されている点および搬出面5eから用紙P2を強制剥離させる必要がないため剥離爪を有さない点において第1搬送手段51と相違するが、他の構成は第1搬送手段51と略同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0060】
第2搬送手段56は、後述する第2印刷部7の第2版胴71が所定の回転位置にあるタイミングで搬出面5e上の用紙P2を搬出面5e上で移動させて貯留部5内から搬出させる。すなわち、第1搬送手段51における環状ベルト513と同様の環状ベルト563により、該ベルト563の表面である吸引搬送面に用紙P2を吸引保持して該ベルト563とともに用紙P2を上方に移動させ貯留部5内から搬出させる。用紙P2を搬出させる動作は、第1搬送手段51と略同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0061】
再給紙部6は、貯留された用紙P2を第2印刷部7へ再給紙するものであり、貯留部5から搬出された用紙P2をピックアップするピックアップローラ対61と、ピックアップした用紙P2を所定のタイミングで第2印刷部7へ送り込むタイミングローラ対62とから構成される。
【0062】
再給紙部6では、ピックアップローラ対61が第2搬送手段56から搬出された用紙P2を順次ピックアップし、タイミングローラ対62がピックアップされた用紙P2を所定のタイミングで第2印刷部7へ送り込む。
【0063】
第2印刷部7は、貯留された用紙P2の他面に印刷するものである。この第2印刷部7の構成および動作は、第1印刷部3と同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0064】
排紙部8は、他面が印刷された用紙P3を排紙するものであり、第2印刷部7によって他面が印刷された用紙P3を搬送する排紙搬送手段81と、装置本体11の側方に設けられ、用紙P3を積載する排紙台82とから構成される。排紙搬送手段81は、駆動ローラ81aと、従動ローラ81bと、搬送ベルト81cと、吸引ファン81dとから構成される。
【0065】
排紙部8は、第2印刷部7によって他面が印刷された用紙P3が搬送ベルト81c上に供給されると、吸引ファン81dにより用紙P3を吸着搬送して排紙台82に積載する。
【0066】
以上の述べた通り、本発明の実施形態である両面印刷装置1によれば、貯留部5が、一面が印刷された用紙が搬入される搬入位置と貯留されている用紙が搬出される搬出位置とを所定間隔を空けて有し、搬入位置に搬入された各用紙を順次保持して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で搬入位置から搬出位置に向けて移動させる保持手段53と、搬出位置に到来した用紙を順次吸引保持して第2の印刷手段に向けて搬送する第2搬送手段(吸引搬送手段)56と、第2搬送手段による搬送の際に、搬出位置に到来した用紙にその用紙を搬送方向に移動させる力を作用させて第2搬送手段による搬送を補助する搬送補助手段54等を備えているので、用紙が厚く(重く)なっても、搬送補助手段54により第2搬送手段による搬送を補助することで用紙と吸引搬送面との間の滑りを防止でき、用紙の厚みの変化に関係なく、吸引搬送による再給紙の安定化を図ることができる。
【0067】
上記実施の形態では、搬送補助手段が、搬出位置に到来した用紙の搬送方向後端にあたって、用紙を搬送方向に向けて押し出すことにより吸引搬送手段による搬送を補助するものである場合について説明したが、本願発明において搬送補助手段というのは、吸引搬送手段とは別に、用紙をその搬送方向に移動する力を作用させるような手段を広く意味するものであり、吸引搬送手段による搬送の際に用紙の搬送遅れが生じないようその搬送を補助するものであれば、その補助の具体的な方法としては何でもかまわない。たとえば用紙を両側縁部で保持して搬送方向に移動させるものや、用紙の上端部を保持して搬送方向に引っ張るものであってもよい。
【0068】
また、上記実施の形態では、用紙の厚みが所定厚以上であるか否かを検出する検出手段25を備え、受付部541がその検出手段による検出の結果を受け付けるようにした場合について説明したが、これに限らず、たとえば用紙の厚みが所定厚以上であるか否かを入力するためのタッチパネルなどの入力手段を備え、受付部541がその入力手段による入力の結果を受け付けるようにしてもよい。たとえば、タッチパネル上に厚紙、薄紙の選択画面を表示させ、それに対するユーザの選択の結果を情報として受け付けるようにすればよい。
【0069】
また、上記実施の形態では、搬送補助手段54において押出部551を第2搬送手段56による吸引搬送開始と同時にその移動を開始させるようにした場合について説明したが、必ずしも同時である必要はなくて、ほぼ同時であればよい。ここで、ほぼ同時には、わずかに早いものとわずかに遅いものを含まれるが、どちらかといえば、わずかに遅らせる方がよい。
【0070】
なお、本実施形態では、両面印刷装置1を両面孔版印刷装置として説明したが、特にこれに限定されるものではなく、未印刷の用紙P1の一面および他面に印刷が可能なインクジェットプリンタ等であっても構わない。また、本発明における保持手段は、各用紙を互いに所定間隔を空けて重ねた状態で搬入位置から搬出位置に向けて移動させるものであればよく、その際の「互いに所定間隔を空けて重ねた状態で」とは、必ずしも各用紙の全面が所定間隔を空けている必要はなく、一部は間隔を空けることなく重なっている態様、例えば上記実施の形態のように印刷領域は間隔を空けているが非印刷領域である上縁部は間隔を開けることなく重なっている態様も含むものである。
【符号の説明】
【0071】
P1、P2、P3 用紙
1 両面印刷装置
3 第1印刷部
5 貯留部
5d 搬入面
5e 搬出面
7 第2印刷部
25 検出手段
51 第1搬送手段
52 第1カール付与手段
53 保持手段
54 搬送補助手段
55 第2カール付与手段
56 第2搬送手段
533 受爪
534 弾性爪
541 受付部
543 作用部
542 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の一面に印刷する第1の印刷手段と、
前記一面が印刷された用紙を複数枚貯留する貯留部と、
該貯留部から搬出された用紙の他面に印刷する第2の印刷手段とを備え、
前記貯留部が、
前記一面が印刷された用紙が搬入される搬入位置と貯留されている前記用紙が搬出される搬出位置とを所定間隔を空けて有し、
前記搬入位置に搬入された各用紙を順次保持して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で前記搬入位置から前記搬出位置に向けて移動させる保持手段と、
前記搬出位置に到来した用紙を順次吸引保持して前記第2の印刷手段に向けて搬送する吸引搬送手段と、
前記吸引搬送手段による搬送の際に、前記搬出位置に到来した用紙に該用紙を前記搬送方向に移動させる力を作用させて前記吸引搬送手段による搬送を補助する搬送補助手段と
を備えていることを特徴とする両面印刷装置。
【請求項2】
前記搬送補助手段が、前記搬出位置に到来した用紙の前記搬送方向後端にあたって、前記用紙を前記搬送方向に向けて押し出すことにより前記力を作用させるものであることを特徴とする請求項1記載の両面印刷装置。
【請求項3】
前記搬送補助手段が、
前記用紙の厚みが所定厚以上であるか否かの情報を受け付ける受付部と、
前記搬出位置に到来した用紙に該用紙を前記搬送方向に移動させる力を作用させる作用部と、
前記受付部により受け付けた情報に基づいて、前記搬出位置に到来した用紙の厚さが所定厚以上である場合にのみ前記作用部に前記搬送の補助を行わせる制御部と
を備えたものであることを特徴とする請求項1または2記載の両面印刷装置。
【請求項4】
前記用紙の厚みが所定厚以上であるか否かを検出する検出手段を備え、
前記受付部が、前記検出手段による検出の結果を前記情報として受け付けるものであることを特徴とする請求項3記載の両面印刷装置。
【請求項5】
前記用紙の厚みが所定厚以上であるか否かを入力するための入力手段を備え、
前記受付部が、前記入力手段による入力の結果を前記情報として受け付けるものであることを特徴とする請求項3記載の両面印刷装置。
【請求項6】
前記貯留部が、前記搬出位置に到来した用紙に対して前記搬送方向と直交する方向の断面が湾曲するカールを付与するカール付与手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の両面印刷装置。
【請求項7】
前記保持手段は、開閉可能な把持爪対を有し、前記一面が印刷された複数枚の用紙を、各用紙の下端を前記把持爪対で把持して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の両面印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−79210(P2011−79210A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232935(P2009−232935)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】