説明

両面画像形成装置

【課題】用紙の先端と後端とを変えずに用紙を搬送でき、かつ、小さなスペースで紙折れやしわ等の発生の無い、高速搬送が可能な両面画像形成装置を提供すること。
【解決手段】像担持体と、レジスト手段と、定着装置と、循環再給紙部と、用紙表裏反転手段と、用紙前後反転手段と、を有し、前記用紙前後反転手段は、用紙幅方向における用紙の中心位置に対して左右等間隔の位置に配設される、正回転が可能な正回転搬送手段及び正逆両方向の回転が可能な正逆回転搬送手段の2つの搬送手段と、前記2つの搬送手段の中間の位置に配設される回転中心挟持手段と、を備え、用紙が所定の位置に搬送されるとき、前記正回転搬送手段は正回転され、前記正逆回転搬送手段は逆回転されて、用紙を、前記回転中心挟持手段を中心に180°回転させ、前記レジスト手段に突き当てる用紙の先端を、両面画像形成時において同一端とすることを特徴とする両面画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の両面に画像形成する両面画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両面画像形成においては、像担持体に形成された画像を用紙の一方の面に転写し、定着した後、反転搬送部で用紙の表裏を反転して搬送し、再び像担持体に形成された画像とタイミングを合わせて用紙のもう一方の面に画像形成する方法がとられている。
【0003】
用紙表裏を反転させる構成として、スイッチバック方式と言われる、片面に画像形成された用紙を一旦スイッチバック路に搬入し、用紙後端を先端として再び画像形成部に搬送し、裏面に画像形成する方式の両面画像形成装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
然るに、用紙の側端に対して先端と後端とは必ずしも直角ではなく、用紙によっては先端と後端とが平行でない場合がある。このような用紙を用いてスイッチバック方式の両面画像形成装置で画像形成する場合、タイミングを合わせるレジストローラ位置での用紙表裏に傾きの違いを生じ、画像形成した用紙の表裏で画像の傾きの違いによるずれが生じるおそれがある。用紙表裏での画像のずれは、後工程で製本などを行う場合には大きな問題となる。
【0005】
この問題に対する対策として、両面画像形成において、用紙の先端と後端とを変えずに用紙を搬送する方式として、一対のローラ間に一対の無端状のベルトを180°ひねった形で懸架させて用紙を搬送させる技術が開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献2の構成では、用紙搬送方向を中心として用紙搬送方向と直角な方向に用紙を回転させるため周囲に大きなスペースを要するという問題や、高速搬送が困難であるという問題、及び薄紙使用時の紙折れやしわ等が発生するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−35265号公報
【特許文献2】特開2002−20000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記のような問題を解決し、両面画像形成において、用紙の先端と後端とを変えずに用紙を搬送することができ、かつ、小さなスペースで紙折れやしわ等の発生の無い、高速搬送が可能な両面画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的は下記の発明により達成される。
【0010】
1.トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体に担持されたトナー像を用紙に転写する際の用紙搬送のタイミングを合わせるため、用紙搬送方向における用紙の先端を突き当てるレジスト手段と、
トナー像が転写された用紙にトナー像を定着させる定着装置と、
用紙搬送方向における前記定着装置の下流側で、かつ前記レジスト手段の上流側に設けられ、両面画像形成時に片面に画像形成された用紙を導入する循環再給紙部と、
前記循環再給紙部の径路上に配設され、スイッチバック方式により用紙の表裏を反転させる用紙表裏反転手段と、
前記循環再給紙部の径路上に配設され、搬送される用紙を所定の位置で停止させて用紙面方向に180°回転させ、用紙の用紙搬送方向の前後を反転させる用紙前後反転手段と、を有し、
前記用紙前後反転手段は、前記所定の位置で回転する用紙の回転中心から用紙搬送方向と直角な方向に等間隔に離間する位置に配設される、用紙を用紙搬送方向に搬送させる方向に回転する正回転搬送手段、及び用紙を用紙搬送方向又はその逆方向に搬送させる、両方向への回転が可能な正逆回転搬送手段、の2つの搬送手段と、用紙の前記回転中心の位置に配設され、用紙を挟持する回転中心挟持手段と、を備えるとともに、
用紙が前記所定の位置に搬送されるとき、前記正回転搬送手段を正回転させ、前記正逆回転搬送手段を逆回転させて、前記回転中心挟持手段に挟持される用紙の前記回転中心の位置を中心に、用紙を180°回転させ、前記レジスト手段に突き当てる用紙の用紙搬送方向の先端を、表裏両面の画像形成時において同一端とすることを特徴とする両面画像形成装置。
【0011】
2.前記回転中心挟持手段は、前記所定の位置に搬送され、回転される用紙を常に挟持する用紙挟持部材対を備えていることを特徴とする前記1に記載の両面画像形成装置。
【0012】
3.前記用紙挟持部材対の一方の部材は、先端が突起した円弧状の断面形状を有する部材であることを特徴とする前記2に記載の両面画像形成装置。
【0013】
4.前記用紙挟持部材対の一方の部材は、全ての方向に回転自在に保持される球状部材であることを特徴とする前記2に記載の両面画像形成装置。
【0014】
5.前記用紙挟持部材対のもう一方の部材は、回転自在なローラであることを特徴とする前記2に記載の両面画像形成装置。
【0015】
6.前記用紙挟持部材対のもう一方の部材は、全ての方向に回転自在に保持される球状部材であることを特徴とする前記2に記載の両面画像形成装置。
【0016】
7.前記回転中心挟持手段は、前記所定の位置に搬送され、回転される用紙を挟持する用紙挟持部材対と、用紙の挟持を解除する挟持部材圧着解除手段と、を有し、
前記回転中心挟持手段は、搬送される用紙が前記所定の位置に搬送され、停止するときに用紙を挟持し、用紙が180°回転された後、前記挟持部材圧着解除手段の動作により、用紙の挟持を解除することを特徴とする前記1に記載の両面画像形成装置。
【0017】
8.前記用紙挟持部材対の一方の部材は、用紙に当接する先端が突起した円弧状の断面形状を有する部材であることを特徴とする前記7に記載の両面画像形成装置。
【0018】
9.前記用紙挟持部材対の一方の部材は、用紙に当接する先端が鋭角な断面形状を有する部材であることを特徴とする前記6に記載の両面画像形成装置。
【0019】
10.前記用紙挟持部材対の一方の部材は、回転する用紙の用紙面方向に回転自在に保持される可回転部材であることを特徴とする前記7に記載の両面画像形成装置。
【0020】
11.前記用紙挟持部材対の一方の部材は、全ての方向に回転自在に保持される球状部材であることを特徴とする前記7に記載の両面画像形成装置。
【0021】
12.前記用紙挟持部材対のもう一方の部材は、固定された部材であることを特徴とする前記7に記載の両面画像形成装置。
【0022】
13.前記1から12のいずれか1項に記載の両面画像形成装置が有する前記用紙前後反転手段が、前記用紙表裏反転手段の用紙搬送方向の上流側又は下流側に配設され、
用紙が前記用紙前後反転手段の所定の位置に搬送されるとき、前記2つの搬送手段及び前記回転中心挟持手段は、前記所定の位置に搬送される用紙の、用紙搬送方向における用紙中心の位置、又は用紙中心の位置より下流側寄りの位置、に配設されることを特徴とする記載の両面画像形成装置。
【0023】
14.前記1から12のいずれか1項に記載の両面画像形成装置が有する前記用紙前後反転手段が、前記用紙表裏反転手段の内部に配設され、
用紙が前記用紙前後反転手段の所定の位置に搬送されるとき、前記2つの搬送手段及び前記回転中心挟持手段は、前記所定の位置に搬送される用紙に対し、用紙搬送方向における用紙中心の位置に配設されることを特徴とする両面画像形成装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、用紙の画像形成時にレジスト手段に突き当てる用紙先端が表裏両面で同一となるため、表裏の画像にずれを生じさせることがない。また、用紙の高速回転が可能であり、回転させる用紙の周囲に大きなスペースを設ける必要がない。更に、薄紙を使用しても折れやしわが発生することがない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る両面画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係る用紙前後反転装置30の第1の実施形態についての構成及び動作を説明するための概略構成図である。
【図3】本発明に係る用紙前後反転装置30の第2の実施形態についての構成及び動作を説明するための概略構成図である。
【図4】本発明に係る用紙前後反転装置30の第3の実施形態についての構成及び動作を説明するための概略構成図である。
【図5】本発明に係る用紙前後反転装置30の第4の実施形態についての構成及び動作を説明するための概略構成図である。
【図6】本発明に係る用紙挟持部材対の一方の部材として、用いることが可能な部材のいくつかの実施形態を示す概略断面図である。
【図7】本発明に係る用紙挟持部材対のもう一方の部材として、用いることが可能な部材の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図8】本発明に係る用紙前後反転装置30が用紙表裏反転部40の上流側又は下流側に配設される実施形態における、用紙Pの回転動作を説明するための概略図である。
【図9】本発明に係る用紙前後反転装置30が用紙表裏反転部40の内部に配設される実施形態における、用紙Pの回転動作を説明するための概略図である。
【図10】本発明に係る用紙前後反転装置30の動作を制御する制御系のブロック図である。
【図11】本発明に係る用紙前後反転装置30の第1及び第3の実施形態における動作の手順を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明に係る用紙前後反転装置30の第2及び第4の実施形態における動作の手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を図面により説明するが、本発明は以下に説明する実施の形態に限られるものではない。
【0027】
図1は、画像形成装置本体A、原稿読み取り部Bからなる両面画像形成装置の構成図である。
【0028】
図示の画像形成装置本体Aは、像担持体(感光体ドラム)1、帯電手段2、像露光手段(画像書込手段)3、現像手段4、転写手段5、除電手段6、分離爪7、クリーニング手段8等からなる画像形成部と、定着手段9と、用紙搬送系と、から構成されている。
【0029】
用紙搬送系は、給紙カセット10、第1給紙手段11、第2給紙手段12、搬送手段13、排紙手段14、及び手差し給紙手段15からなる第1搬送部と、用紙表裏反転部40と、用紙前後反転装置30と、用紙Pを再給紙する循環再給紙部とから構成されている。
【0030】
給紙カセット10及び第1給紙手段11は、複数の給紙手段(図示の3段)により形成され、複数種のサイズの用紙Pを収容して給紙する。用紙サイズは、操作部21による手動設定、又は用紙サイズ検知手段による自動用紙サイズ設定によって入力される。
【0031】
原稿読み取り部Bで読み取られた原稿の画像データはイメージセンサCCDにより読み込まれる。イメージセンサCCDにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、像露光手段3に画像信号を送る。
【0032】
像露光手段3においては、半導体レーザからの出力光が画像形成部の像担持体1に照射され、潜像を形成する。画像形成部においては、帯電、露光、現像、転写、分離、クリーニング等の処理が行われる。像担持体1に形成された潜像は、現像装置4によってトナー像にされる。給紙カセット10、手差し給紙手段15から給送された用紙Pは、レジスト手段としてのレジストローラ19において像担持体1に担持されたトナー像にタイミングを合わせて搬送され、転写手段5により画像が転写される。画像を担持した用紙Pは、定着手段9により定着され、排紙手段14から排出される。
【0033】
或いは搬送路切換手段16により循環再給紙部に送られた片面画像処理済みの用紙Pは、所謂スイッチバック方式と言われる用紙表裏反転手段としての用紙表裏反転部40において、反転搬送ローラ41により表裏反転され、再び画像形成部で両面画像処理される。ここで言う循環再給紙部とは、定着手段9の用紙搬送方向下流側の搬送ローラ17aから始まり、搬送路切換手段16を経て、領域30A、30B、30Cを経由し、レジストローラ19の上流側の搬送ローラ17bで終わる、閉ループの用紙搬送径路である。両面画像処理された用紙は、定着手段9によって定着処理され、排紙手段14により排出される。
【0034】
画像形成装置本体Aの各部及び原稿読み取り部Bの動作は、画像形成装置本体A内に配設される制御部80により制御される。
【0035】
本発明に係る用紙前後反転手段としての用紙前後反転装置30は、図1に示すように、用紙搬送方向において、定着手段9より下流側で、レジストローラ19より上流側の循環再給紙部内の領域30A、30B、30Cのいずれかの領域に配設される。用紙前後反転装置30は、搬送される用紙を用紙の同一平面上で180°回転させて用紙搬送方向の前後を反転させる。用紙表裏反転部40は、用紙前後反転装置30と同様に、循環再給紙部内に配設される。
【0036】
図2は、本発明に係る用紙前後反転手段としての用紙前後反転装置30の第1の実施形態についての構成及び動作を説明するための概略構成図である。
【0037】
図2において、用紙前後反転装置30は、用紙搬送方向Fと直角な用紙幅方向における用紙の中心位置に配設される。用紙前後反転装置30の第1の実施形態は、回転中心挟持ユニット31と、正回転搬送ローラユニット32と、正逆回転搬送ローラユニット33と、駆動軸34と、からなる。
【0038】
本発明に係る回転中心挟持手段としての回転中心挟持ユニット31は、搬送される用紙Pを常に挟持する用紙挟持部材対としての正回転搬送ローラ31b及び球状部材31aと、保持部材31eと、レバー31cと、ばね部材31dと、からなる。正回転搬送ローラ31bはクラッチCL1に連結され、クラッチCL1を介して正回転方向に駆動される駆動軸34に連結されている。ここで言う正回転とは、用紙を用紙搬送方向Fに搬送させる回転方向のことであり、逆回転とは、用紙Pを用紙搬送方向Fと逆方向に搬送させる回転方向のことである。球状部材31aは保持部材31eに保持され、全ての方向に回転自在に配設されている。
【0039】
本発明に係る正回転搬送手段としての正回転搬送ローラユニット32、及び正逆回転搬送手段としての正逆回転搬送ローラユニット33は、搬送される用紙の用紙搬送方向と直角な用紙幅方向における中心位置に対して左右等間隔に離間する位置に配設される。言い換えると、正回転搬送ローラユニット32と正逆回転搬送ローラユニット33の中間の位置に、回転中心挟持ユニット31が配設されることになる。
【0040】
正回転搬送ローラユニット32は、正回転駆動ローラ32a、正回転従動ローラ32b、クラッチCL2、レバー32b、及びばね部材32cからなり、正回転駆動ローラ32aは駆動軸34にクラッチCL2を介して連結される。正逆回転搬送ローラユニット33は、正逆回転駆動ローラ33a、正逆回転従動ローラ33b、正逆回転切り替え可能なクラッチCL3、レバー33b、及びばね部材33cからなり、正逆回転駆動ローラ33aは駆動軸34にクラッチCL3を介して連結される。クラッチCL1、CL2は、正回転する駆動軸34に連結されており、制御部80からの指令によりオンオフされて正回転搬送ローラ31b、32aを正回転又は停止させる。クラッチCL3は、正回転する駆動軸34に連結され、制御部80からの指令によりオンオフされて正逆回転搬送ローラ33aを正回転、逆回転、又は停止させる。
【0041】
用紙挟持部材対の一方の部材としての球状部材31aは保持部材31eにあらゆる方向に対して回転自在に保持され、保持部材31eは揺動自在に保持されるレバー31cに固設されている。用紙挟持部材対のもう一方の部材としての正回転駆動ローラ31bは、ばね部材31cの付勢により圧着される球状部材31aとともに、搬送される用紙Pを挟持する。本実施の形態における用紙挟持部材対としての球状部材31aと正回転駆動ローラ31bは、用紙Pが用紙挟持部材対の位置にある間は、常に用紙Pを挟持している。
【0042】
正回転従動ローラ32bはレバー32cに固設される回転軸(参照符号なし)に回転自在に保持される。レバー32cは揺動自在に保持され、ばね部材32dに付勢されて正回転従動ローラ32bを正回転搬送ローラ32aに圧着する。同様に、正逆回転従動ローラ33bはレバー33cに固設される回転軸(参照符号なし)に回転自在に保持されている。レバー33cは揺動自在に保持され、ばね部材33dに付勢されて正逆回転従動ローラ33bを正逆回転搬送ローラ33aに圧着する。
【0043】
次に、本実施の形態に係る用紙前後反転装置30の動作について図2を用いて説明する。
【0044】
片面に画像形成された用紙Pは、定着手段9で定着され、搬送ローラ17aを経て搬送路切換手段16で分岐されて循環再給紙部に導入され、用紙前後反転装置30の用紙を回転する所定の位置に搬送される(図2参照)。このとき、制御部80は、クラッチCL1、CL2、CL3を動作させて駆動軸34に連結させ、正回転搬送ローラ31b、32a及び正逆回転搬送ローラ33aを正回転させる。用紙Pが所定の位置に搬送されると、図示しない用紙検知センサSAが用紙Pを検知し、制御部80は、クラッチCL1、CL2、CL3を動作させて駆動軸34との連結を遮断し、用紙Pの搬送を停止させる。用紙検知センサSAは、用紙Pが用紙前後反転装置30の所定の位置に搬送されたかどうかを検知するセンサである。用紙Pが所定の位置に停止されるとき、用紙Pの回転中心の位置は、図2に示す予め設定された用紙搬送方向Fと直角な直線rの中心位置にあり、この位置が回転中心挟持ユニット31に当接する球状部材31aの先端の位置に一致する。次いで、クラッチCL2、CL3が動作され、クラッチCL2は正回転搬送ローラ32aを正回転させ、クラッチCL3は正逆回転搬送ローラ33aを逆回転させる。用紙Pは回転中心の位置を正回転搬送ローラ31b及び球状部材31aによって押さえられているため、正回転搬送ローラ32aの回転により図4のRf方向に回転し、正逆回転搬送ローラ33aの矢印方向への回転によりRb方向に回転する力が加えられる。用紙Pは、回転の中心位置で用紙Pを挟持する正回転搬送ローラ31b及び球状部材31aを中心に回転を継続し、180°回転後、図示しない用紙検知センサSBの検知により、制御部80は、クラッチCL2、CL3を制御して回転を停止させる。用紙Pが回転により前後を反転された後、制御部80からの指令により再びクラッチCL1、CL2、CL3が動作され、用紙Pは、搬送ローラ17bを経て搬送され、レジストローラ19でタイミングを合わされて両面に画像を形成される。
【0045】
本発明に係る用紙前後反転装置30の第1の実施形態によれば、簡単な構成で高速かつ確実に用紙の前後を反転させることができ、用紙の前後反転によりレジストローラ19に突き当てる用紙先端を両面の画像形成時において同一にすることができる。また、ガイド板等を用いることにより、薄紙等、腰の弱い用紙を用いても安定した姿勢で回転させることができるため、折れやしわを発生させることがない。更に、あらゆる方向に回転自在な球状部材31aを用いることにより、球状部材31aが用紙搬送時には用紙搬送方向Fに、用紙回転時には用紙を回転させる方向Rf、Rbに用紙に追随して回転するため、用紙の搬送及び回転の動作が円滑になる。
【0046】
図3は、本発明に係る用紙前後反転装置30の第2の実施形態についての構成及び動作を説明するための概略構成図である。
【0047】
第2の実施形態は、第1の実施形態と類似しており、同一の機能を有する部材には同一の符番を付しているため説明は省略し、構成又は動作の異なる点についてのみ説明する。
【0048】
第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、正回転搬送ローラ31b及び球状部材31aの用紙Pへの圧着が解除できる構成を有する点である。即ち、第2の実施形態では、レバー31cに挟持部材圧着解除手段としてのソレノイドSDが連結されており、ソレノイドSDは、用紙Pの回転終了後、ばね部材31dに抗し、レバー31cを介して球状部材31aを正回転搬送ローラ31bから離間させる。後続の用紙Pが続いて搬送される場合は、後続の用紙Pが用紙前後反転装置30の所定の位置に達するまで、ソレノイドSDはレバー31cを引き続ける。用紙Pが所定の位置で回転されるときにはソレノイドSDはオフされ、球状部材31aと正回転搬送ローラ31bはばね部材31dにより圧着される。
【0049】
本実施の形態では、球状部材31aと正回転搬送ローラ31bとの圧着はばね部材31dにより行われ、ソレノイドSDにより圧着を解除する構成としたが、ばね部材31dとソレノイドSDとを入れ替えても良い。即ち、用紙Pを回転する間は圧着をソレノイドSDのオンにより行い、回転終了後にソレノイドSDをオフしてばね部材31dの付勢により圧着を解除するという構成である。
【0050】
また、本実施の形態では、球状部材31aに当接する、用紙挟持部材対のもう一方の部材を正回転搬送ローラ31bとしたが、用紙搬送時には解除されるため、回転駆動するローラである必要はなく、回転しない固定された部材としても良い。即ち、用紙搬送時には、球状部材31aは用紙Pの面から離間するため、用紙Pは固定された部材の表面を擦るように搬送され、用紙回転時には、用紙Pの回転中心を挟んで圧着する球状部材31aを固定された部材により受けるという部材であれば良い。
【0051】
本発明に係る用紙前後反転装置30の第2の実施形態によれば、用紙搬送時に回転中心挟持ユニット31及び球状部材31aの用紙Pへの圧着を解除するため、回転中心挟持ユニット31及び球状部材31aが用紙搬送に影響を与えることがない。
【0052】
図4は、本発明に係る用紙前後反転装置30の第3の実施形態についての構成及び動作を説明するための概略構成図である。
【0053】
第3の実施形態は、第1の実施形態と類似しており、同一の機能を有する部材には同一の符番を付しているため説明は省略し、構成又は動作の異なる点についてのみ説明する。
【0054】
第3の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、第1の実施形態では、正回転搬送ローラ31b、32a、正逆回転従動ローラ33bの駆動をクラッチで行っているのに対し、第3の実施形態ではそれぞれのローラの駆動を単独のモータで行っている点である。即ち、本実施の形態では、回転中心挟持部材対は、搬送される用紙Pを常に挟持する、球状部材31aと正回転駆動ローラ31bと、からなり、正回転駆動ローラ31bは連結するギヤG1を介して図示しない駆動モータに駆動回転される。ギヤG1は駆動モータに連結されており、駆動モータは制御部80からの指令によりオンオフ制御され、正回転搬送ローラ31bを正回転又は停止させる。
【0055】
また、第1の実施形態では、回転中心挟持ユニット31、正回転搬送ローラユニット32、及び正逆回転搬送ローラユニット33は、共に駆動軸34により保持されていたが、第3の実施形態ではそれぞれが保持部材35a、35b、35cにより保持される。
【0056】
本発明に係る正回転搬送手段としての正回転搬送ローラユニット32は、正回転駆動ローラ32a、正回転従動ローラ32b、及び駆動ギヤG2からなり、正回転駆動ローラ32aは連結する駆動ギヤG2を介して図示しない駆動モータに連結される。駆動ギヤG2は、駆動モータに連結されており、制御部80からの指令により駆動モータがオンオフ制御され、正回転搬送ローラ32aを正回転又は停止させる。本発明に係る正逆回転搬送手段としての正逆回転搬送ローラユニット33は、正逆回転駆動ローラ33a、正逆回転従動ローラ33b、及び駆動ギヤG3からなり、正逆回転駆動ローラ33aは駆動ギヤG3を介して駆動モータに連結される。駆動ギヤG3は、正逆回転可能な駆動モータに連結されており、制御部80からの指令により駆動モータがオンオフ制御され、正逆回転搬送ローラ33aを正回転、逆回転、又は停止させる。図示しない3つの駆動モータは、制御手段80によりそれぞれ単独に動作を制御される。
【0057】
次いで、本実施の形態に係る用紙前後反転装置30の動作について図4を用いて説明する。
【0058】
用紙Pが用紙前後反転装置30の所定の位置に搬送されると、図示しない用紙検知センサSAにより検知され、制御部80は、図示しない3つの駆動モータを停止させてギヤG1、G2、G3を停止させ、用紙Pの搬送を停止させる。このとき、用紙Pの回転中心の位置は、第1の実施形態と同様に、球状部材31aの先端の位置に一致する。次いで、ギヤG2、G3に連結する2つのモータが動作され、正回転搬送ローラ32aが正回転され、正逆回転搬送ローラ33aが逆回転される。用紙Pは、回転中心の位置を回転中心挟持ユニット31及び球状部材31aに押さえられ、正回転搬送ローラ32aの回転により図4のRf方向に、正逆回転搬送ローラ32aの回転によりRb方向に、回転する力が加えられる。これにより、用紙Pは、第1の実施形態と同様に、球状部材31aを中心に180°回転し、図示しない用紙検知センサSBの検知情報により制御部80が指令を発し、駆動モータを停止させて用紙Pの回転を停止させる。本実施の形態における用紙挟持部材対としての球状部材31aと正回転駆動ローラ31bは、用紙Pが用紙挟持部材対の位置にある間は、常に用紙Pを挟持している。
【0059】
本発明に係る用紙前後反転装置30の第3の実施形態によれば、回転中心挟持ユニット31、正回転搬送ローラユニット32、及び正逆回転搬送ローラユニット33のそれぞれに単独に駆動する駆動モータが配設されるため、動作の信頼性が高い。また、用紙幅方向に長く延びる駆動軸が不要のため、広いスペースが得られる。
【0060】
図5は、本発明に係る用紙前後反転装置30の第4の実施形態についての構成及び動作を説明するための概略構成図である。
【0061】
第4の実施形態は、第3の実施形態と類似しており、同一の機能を有する部材には同一の符番を付しているため説明は省略し、構成又は動作の異なる点についてのみ説明する。
【0062】
第4の実施形態が第3の実施形態と異なる点は、球状部材31aの用紙Pへの圧着が解除できる構成を有する点である。即ち、第4の実施形態では、第2の実施形態と同様に、レバー31cにソレノイドSDが連結されており、ソレノイドSDは、用紙Pの回転終了後、ばね部材31dに抗し、レバー31cを介して球状部材31aを正回転搬送ローラ31bから離間させる。後続の用紙Pが続いて搬送される場合は、後続の用紙Pが所定の位置に達するまで、ソレノイドSDはレバー31cを引き続ける。用紙Pが回転されるときにはソレノイドSDはオフされ、球状部材31aと正回転搬送ローラ31bはばね部材31dにより圧着される。また、回転中心挟持ユニット31は、用紙搬送時にはソレノイドSDにより用紙Pへの圧着を解除されるため、第3の実施形態と異なって、正回転搬送ローラ31bの駆動は不要であり、正回転搬送ローラ31bに連結するギヤG1及び単独駆動モータが不要となる。即ち、本実施の形態における正回転搬送ローラ31bは駆動されない回転自在なローラであれば良い。
【0063】
本実施の形態においては、第2の実施形態と同様に、球状部材31aと正回転搬送ローラ31bとの圧着及び解除を行うばね部材31dとソレノイドSDとの関係を入れ替えても良いことは言うまでもない。また、第2の実施形態と同様に、用紙挟持部材対の一方の部材としての球状部材31aに当接する、用紙挟持部材対のもう一方の部材を回転しない固定された部材としても良い。
【0064】
本発明に係る用紙前後反転装置30の第4の実施形態によれば、第2の実施形態と同様に、用紙搬送時に球状部材31aの用紙Pへの圧着を解除するため、球状部材31aが用紙搬送に影響を与えることがない。また、第3の実施形態と同様の構成により信頼性の高い動作と広いスペースとを得ることができる。
【0065】
なお、本発明に係る第1〜第4の実施形態において、正回転搬送手段及び正逆回転搬送手段が搬送ローラである例について述べたが、搬送ベルトを用いて用紙を搬送する構成でも本発明は適用できる。然るに、搬送ベルトを用いて用紙を搬送するという構成は公知であり、中心に回転中心挟持手段を配設し、2つの搬送ベルトを用紙搬送方向と直角な方向に並べて逆方向に回転させるという構成は、本実施の形態と類似しているため、説明は省略する。
【0066】
これまで説明した本発明に係る用紙前後反転装置30の第1から第4の実施形態においては、本発明に係る用紙挟持部材対の一方の部材として球状部材31aを用いる構成としたが、球状部材31aに代わる部材を用いることも可能である。
【0067】
図6は、本発明に係る用紙挟持部材対の一方の部材として、用いることが可能な部材のいくつかの実施形態を示す概略断面図である。
【0068】
本発明に係る用紙挟持部材対の一方の部材は、図6(a)〜図6(d)において、用紙Pの下方に配設される部材であり、用紙挟持部材対のもう一方の部材は、用紙Pの上方に配設される正回転搬送ローラ31bである。図6(a)は、用紙挟持部材対の一方の部材として、第1から第4の実施形態において既に説明した球状部材31aを用いたものである。図6(b)は、突起した先端に円弧状の断面形状を有する部材を示し、図6(c)は、用紙に当接する先端が鋭角をなす円錐状又は角錐状に形成された部材を示す。図6(d)は、回転する用紙の用紙面と同一の方向に回転自在に保持される可回転部材を示す。
【0069】
図6(a)において、球状部材31aは、保持部材31eに保持され、全ての方向に回転自在に構成されている。従って、球状部材31aは、用紙搬送時には正回転搬送ローラ31bに搬送される用紙Pに追随して回転し、用紙回転時には正回転搬送ローラ32aと正逆回転搬送ローラ32aにより回転される用紙Pに追随して回転する。
【0070】
図6(a)の実施形態では、球状部材31aと保持部材31eの部品加工精度及び回転の円滑性を考慮して、保持部材31eの内部に、球状部材31aを用紙Pに圧接するばね部材(参照符号なし)を設けているが、ばね部材を省略することも可能である。また、用紙挟持部材対の一方の部材として球状部材31aを用いる場合、用紙Pの画像形成面が球状部材31a側に面するように設定することで、用紙回転時の用紙Pと正回転搬送ローラ31bとの擦過が用紙P上のトナー像を損傷する懸念を無くすことができる。
【0071】
図6(b)において、符号の311は、突起した先端に円弧状の断面形状を有する先端球面状部材であり、金属や硬質プラスチック等の摩擦係数の小さい材料が好ましく用いられる。図6(c)において、符号の312は、先端が鋭角な断面形状を有する先端鋭角部材である。図6(d)において、符号の313は、所定の位置に搬送される用紙の用紙面方向に回転自在に保持される可回転部材である。可回転部材313は、保持部材31eに回転自在に保持される。
【0072】
本発明に係る用紙前後反転装置30の第1の実施形態及び第3の実施形態においては、用紙挟持部材対が用紙搬送時にも用紙Pに当接しているため、図6(a)に示す球状部材31a、又は図6(b)に示す先端球面状部材311が好ましく用いられる。また、第2の実施形態及び第4の実施形態においては、用紙挟持部材対が用紙Pから離間するため、図6のいずれの部材を用いても良いが、用紙回転の円滑性を考慮すれば、図6(a)の球状部材31a、又は図6(d)の可回転部材313がより好ましく用いられる。
【0073】
図6(b)に示す先端球面状部材311及び図6(c)に示す先端鋭角部材312は、簡単な構成であることを特徴とするものであり、部品加工コストを小さくできるという長所がある。また、図6(c)に示す先端鋭角部材312は、図6(b)に示す先端球面状部材311と比較して用紙Pの回転中心の位置をより確実に挟持するが、用紙Pに傷を付けやすいという短所もある。図6(d)に示す可回転部材313は、図6(a)に示す球状部材31aより加工し易い形状であり、部品加工コストを小さくできるという長所がある。
【0074】
図7は、本発明に係る用紙挟持部材対のもう一方の部材として、用いることが可能な部材の他の実施形態を示す概略断面図である。
【0075】
本発明に係る用紙挟持部材対の一方の部材は、図7(a)〜図7(d)において、用紙Pの下方に配設される部材であり、図6(a)〜図6(d)に示す部材と同一の部材である。用紙挟持部材対のもう一方の部材は、図7(a)〜図7(d)において用紙Pの上方に示す部材であり、図6の正回転搬送ローラ31bと異なり、画像形成装置本体Aに固定された状態で配設される固定された部材31fが用いられている。図7(e)は、図6(a)及び図7(a)に示す用紙挟持部材対の一方の部材である球状部材31aを、用紙挟持部材対のもう一方の部材としても用いるという構成である。
【0076】
図7(a)〜図7(d)における用紙挟持部材対の一方の部材については、構成が図6(a)〜図6(d)に示すものと同一であり、同一の部材には同一の符番を付しているため説明は省略する。
【0077】
図7(a)に示すように、用紙挟持部材対の一方の部材が球状部材31aである場合は、用紙搬送時でも球状部材31aが用紙に追随して用紙搬送方向に回転するため、第1の実施形態から第4の実施形態に対しての固定された部材31fの適用が可能である。
【0078】
図7(b)〜図7(d)においては、用紙挟持部材対が用紙を挟持しているときには、用紙回転動作には適用可能であるが、用紙搬送時には用紙挟持部材対が用紙搬送の抵抗となるため、適用は困難であり、用紙挟持部材対による用紙挟持の解除が必要である。従って、図7(b)〜図7(d)に示す構成は、用紙挟持部材対による用紙挟持の解除が行われる、用紙前後反転装置30の第2の実施形態及び第4の実施形態には適用可能であるが、解除が行われない第1の実施形態及び第3の実施形態には適用が難しい。
【0079】
図7(e)に示す構成は、図6(a)及び図7(a)に示す用紙挟持部材対の一方の部材としての球状部材31aを、用紙挟持部材対のもう一方の部材としても同じ球状部材31aを用いる構成である。この構成は、用紙搬送時でも球状部材31aが搬送される用紙に追随して用紙搬送方向に回転するため、用紙前後反転装置30の第1の実施形態〜第4の実施形態のいずれにも適用可能である。また、用紙回転時には用紙挟持部材対のどちらも回転する用紙Pに追随して回転するため、用紙Pに負荷が掛からず、画像が両面に形成される場合にも画像に損傷を与えることがない。
【0080】
図7(a)〜図7(d)に示す構成は、図6(a)〜図6(d)に示す構成と比較して、用紙挟持部材対のもう一方の部材が、正回転搬送ローラ31bでなく固定された部材31fであるため、構成が簡単で部品加工コストが小さいという長所がある。また、図7(e)に示す構成は、用紙挟持部材対として同一構成の部材を用いることができるという長所がある。
【0081】
図8は、本発明に係る用紙前後反転装置30が用紙表裏反転部40の上流側又は下流側に配設される実施形態における、用紙Pの回転動作を説明するための概略図である。
【0082】
図8において、用紙前後反転装置30は、用紙搬送方向Fにおける用紙表裏反転部40の上流側の領域30A又は下流側の領域30B(図1参照)に配設されている。符号のLは、用紙搬送方向Fにおける用紙Pの長さを示し、符号のcは、長さLの用紙Pの中心線を示す。また、符号のrは用紙搬送方向Fに直角な直線であり、用紙Pが用紙前後反転装置30の所定の位置(用紙Pが回転される位置)に達するとき、用紙Pの回転中心(即ち、球状部材31aの位置)を通る直線である。
【0083】
図8(a)は、用紙Pが用紙前後反転装置30の所定の位置に達した直後の回転前の状態を示す図であり、図8(b)は、用紙Pが所定の位置での180°回転を完了した状態を示す図である。用紙Pの回転時には、領域30A又は領域30B(図1参照)に配設されている搬送ローラ18は用紙Pへの圧着を解除される。
【0084】
図8(a)において、直線rの位置(球状部材31aの配設位置)は所定の位置に停止する用紙Pの中心線cより用紙搬送方向の下流側に位置するように設定されている。その理由について以下に述べる。
【0085】
所定の位置に搬送された用紙Pの回転中心の位置である直線rと用紙Pの中心線cとの距離をdとすると、直線rから用紙Pの用紙搬送方向Fにおける用紙先端までの距離は(L/2−d)となる。一方、図8(b)において、回転完了後における回転中心の位置から用紙Pの先端までの距離は(L/2+d)となる。即ち、用紙Pは、回転開始の所定の位置から回転完了の位置までの間に〔(L/2+d)−(L/2−d)=2d〕の距離だけ用紙搬送方向Fの方向に進んだことになる。
【0086】
つまり、用紙表裏反転部40の上流側又は下流側に配設される用紙前後反転装置30では、用紙前後反転装置30の所定の位置は、用紙Pの回転中心の位置(直線rの位置)が用紙Pの中心線cより用紙搬送方向Fの下流側になるように設定することが望ましい。そうすれば、用紙Pは、回転の前後で、直線rと用紙Pの中心線cとの距離dの2倍の距離2dだけ前進し、用紙Pの搬送時間の短縮ができることになるからである。逆に、直線rの位置を所定の位置に停止した用紙Pの中心線cより用紙搬送方向Fの上流側になるように構成すると、回転後の用紙Pの用紙搬送方向Fにおける先端の位置が距離2dだけ上流側に戻されてしまうという問題がある。
【0087】
図8に示す用紙表裏反転部40の上流側又は下流側に配設される用紙前後反転装置30に対し、用紙回転時の回転中心の位置を用紙中心位置より下流側に設定することにより、用紙回転の前後における用紙の位置を、より下流側に位置させることができる。即ち、用紙搬送に要する時間を短縮することができる。
【0088】
なお、図8に示す用紙前後反転装置30の実施形態では、領域30A又は領域30B内に搬送ローラ18が配設されている構成について説明したが、領域30A又は領域30B内に搬送ローラ18が含まれていない構成でも良い。この場合は、用紙前後反転装置30による用紙回転時において、搬送ローラ18の用紙Pへの圧着の解除は不要となる。
【0089】
図9は、本発明に係る用紙前後反転装置30が用紙表裏反転部40の内部に配設される実施形態における、用紙Pの回転動作を説明するための概略図である。
【0090】
図9において、用紙前後反転装置30は、用紙表裏反転部40の内部の領域30C(図1参照)に配設されている。本実施の形態においては、用紙Pが用紙前後反転装置30の所定の位置に達するとき、用紙Pの回転中心のある直線rは用紙Pの中心線cと一致するように設定されており、直線rの位置は球状部材31aの位置に一致する位置でもある。
【0091】
また、図9に示す用紙Pの停止位置は、用紙前後反転装置30を内蔵していない通常の用紙表裏反転部40においての用紙Pの停止位置と同一の位置である。通常の用紙表裏反転部40においては、用紙表裏反転部40に搬入される用紙Pは、用紙搬送方向Fに搬送され、用紙Pの後端である図9の左端部を反転搬送ローラ41に挟持された位置で停止される。その後、用紙Pは表裏反転前の後端を先端として用紙搬送方向Fと逆方向Rに搬送され、表裏が反転される(図1参照)。図9に示す用紙Pの停止位置は、反転搬送ローラ41の逆方向R側に配設される図示しない搬送路切り換え手段等の配設位置を考慮して設定された、最適でかつ最短の位置である(この位置より用紙搬送方向Fの上流側の位置に停止させることはできない)。
【0092】
従って、本発明の用紙前後反転装置30を用紙表裏反転部40の内部の領域30Cに内蔵させる構成においても、用紙Pが停止する所定の位置を、図9に示す位置より用紙搬送方向Fの上流側の位置に設定して用紙Pの回転を行わせることはできない。また、所定の位置を図9に示す位置より用紙搬送方向Fの下流側の位置とすると、図9において、用紙Pの回転中心の位置である直線rと用紙前後反転装置30の位置とが用紙Pの中心線cより用紙搬送方向Fの下流側にずれることになる。その位置で180°回転すると用紙Pの中心線cは直線rの更に下流側になってしまい、回転後の用紙Pの位置は、直線rと用紙Pの中心線cとの距離dの2倍の距離2dだけ用紙搬送方向Fの下流側にずれることになる。即ち、表裏反転して反転搬送ローラ41で再び搬送される際に、より多くの距離を移動しなければならなくなるため、用紙搬送により多くの時間を要してしまうことになる。
【0093】
つまり、用紙前後反転装置30が用紙表裏反転部40の内部の領域30Cにある場合には、上記のような問題を発生させないため、用紙Pを回転させる所定の位置は、図9に示す直線rと用紙Pの中心線cとが一致する位置が最適であるということになる。
【0094】
図9において、用紙Pは、回転中心挟持ユニット31及び球状部材31aに挟持され、正回転搬送ローラ32a及び正逆回転搬送ローラ33aの回転により180°回転されて回転前と同一の位置に用紙搬送Fの前後が入れ替わった状態で停止される。用紙Pが回転している間は、反転搬送ローラ41の圧着は解除される。その後、反転搬送ローラ41の圧着、及び回転により用紙Pは表裏が反転された状態で用紙表裏反転部40から搬出される(図1参照)。
【0095】
図9に示す用紙表裏反転部40の内部に配設される用紙前後反転装置30に対し、用紙回転時の回転中心の位置を用紙中心位置の位置に設定することにより、用紙回転の前後における用紙の位置を不変とし、効率よく用紙を回転させることができる。
【0096】
なお、図9に示す用紙前後反転装置30の実施形態では、領域30C内に反転搬送ローラ41が配設されている構成について説明したが、領域30C内に反転搬送ローラ41が含まれていない構成でも良い。この場合は、用紙前後反転装置30による用紙回転時において、反転搬送ローラ41の用紙Pへの圧着の解除は不要となる。
【0097】
図10は、本発明に係る用紙前後反転装置30の動作を制御する制御系のブロック図である。
【0098】
図10において制御部80は、用紙Pが用紙前後反転装置30の所定の位置に搬送されたかを検知する用紙検知センサSAと、180°回転された用紙Pが正規の位置に達したかを検知する用紙検知センサSBからの入力信号により各部の動作を制御する。
【0099】
用紙検知センサSAが用紙Pの所定の位置への搬送を検知したとき、用紙前後反転装置30の第1又は第3の実施形態においては、制御部80はそのまま、正回転搬送ローラユニット32及び正逆回転搬送ローラユニット33を動作させて用紙Pを回転させる。第2又は第4の実施形態においては、制御部80は、まずソレノイドSDを動作させて回転中心挟持ユニット31に用紙Pを挟持させてから、正回転搬送ローラユニット32及び正逆回転搬送ローラユニット33を動作させて用紙Pを回転させる。次に、制御部80は、用紙Pが180°回転したとき、用紙検知センサSBに用紙Pが正規の位置に達したかどうかを検知させて、正回転搬送ローラユニット32及び正逆回転搬送ローラユニット33の回転を停止させる。第2、第4の実施形態においては、制御部80は、用紙Pの回転完了の検知後、ソレノイドSDの動作により回転中心挟持ユニット31による用紙Pの挟持解除を行わせる。
【0100】
図11は、本発明に係る用紙前後反転装置30の第1及び第3の実施形態における動作の手順を説明するためのフローチャートである。
【0101】
図11において、始めに、用紙検知センサSAは用紙Pが用紙前後反転装置30の所定の位置に搬送されたかどうかを検知する(ステップS11)。用紙Pが所定の位置に到達していないとき(ステップS11否定)にはステップS11に戻って用紙検知センサSAによる検知を繰り返す。用紙Pが所定の位置に到達したとき(ステップS11肯定)にはステップS12に進む。
【0102】
ステップS12において、制御部80は、正回転搬送ローラ31b、正回転搬送ローラユニット32、正逆回転搬送ローラユニット33の回転を停止させるように、クラッチCL1、CL2、CL3、又は図示しない駆動モータに指令を発する。同時に、用紙前後反転装置30以外の搬送ローラ18又は反転搬送ローラ41の回転を停止させる(ステップS12)。次に、制御部80は、搬送ローラ18又は反転搬送ローラ41の用紙Pへの圧着を解除させる(ステップS13)。
【0103】
次いで、制御部80は、正回転搬送ローラユニット32を正回転させ、正逆回転搬送ローラユニット33を逆回転させて用紙Pを180°回転させる。用紙Pが180°回転すると、用紙検知センサSBが用紙Pの正規の位置への到達を検知し、制御部80は正回転搬送ローラユニット32及び正逆回転搬送ローラユニット33の回転を停止させる(ステップS14)。その後、制御部80は、搬送ローラ18又は反転搬送ローラ41を用紙Pに圧着させる(ステップS15)。
【0104】
最後に、制御部80は、正回転搬送ローラ31b、正回転搬送ローラユニット32、及び正逆回転搬送ローラユニット33を正回転させ、用紙Pを用紙前後反転装置30から排出させる(ステップS16)。
【0105】
図12は、本発明に係る用紙前後反転装置30の第2及び第4の実施形態における動作の手順を説明するためのフローチャートである。
【0106】
図12において、始めに、用紙検知センサSAは用紙Pが用紙前後反転装置30の所定の位置に搬送されたかどうかを検知する(ステップS21)。用紙Pが所定の位置に搬送されたとき(ステップS21肯定)にはステップS22に進む。用紙Pが所定の位置に到達していないとき(ステップS21否定)にはステップS21に戻って用紙検知センサSAによる検知を繰り返す。
【0107】
ステップS22において、制御部80は、正回転搬送ローラ31b又は正回転搬送ローラユニット32と、正逆回転搬送ローラユニット33の回転を停止させるように、クラッチCL1、CL2、CL3、又は駆動モータに指令を発する。同時に、搬送ローラ18又は反転搬送ローラ41の回転を停止させる(ステップS22)。次に、制御部80は、ソレノイドSDをオフし、レバー31cを介して球状部材31aを用紙Pを挟んで正回転搬送ローラ31bに圧着させる(ステップS23)。更に、制御部80は、搬送ローラ18又は反転搬送ローラ41の用紙Pへの圧着を解除させる(ステップS24)。
【0108】
次いで、制御部80は、正回転搬送ローラユニット32を正回転させ、正逆回転搬送ローラユニット33を逆回転させて用紙Pを180°回転させる。用紙Pが180°回転すると、用紙検知センサSBが用紙Pの正規の位置への到達を検知し、制御部80は正回転搬送ローラユニット32及び正逆回転搬送ローラユニット33の回転を停止させる(ステップS25)。その後、制御部80は、搬送ローラ18又は反転搬送ローラ41を用紙Pに圧着させる(ステップS26)。
【0109】
次に、制御部80は、ソレノイドSDをオンし、レバー31cを介して球状部材31aを正回転搬送ローラ31bから離間させる(ステップS27)。最後に、制御部80は、正回転搬送ローラ31b又は正回転搬送ローラユニット32と、正逆回転搬送ローラユニット33とを正回転させ、用紙Pを用紙前後反転装置30から排出させる(ステップS28)。
【0110】
なお、本フローチャートでは、用紙の前後を反転させる領域内に搬送ローラ18又は反転搬送ローラ41が配設されている構成についての手順を説明したが、これらのローラを配設しない構成でも良く、その場合にはステップS24の工程は不要となる。
【符号の説明】
【0111】
9 定着手段
17a、17b、18 搬送ローラ
19 レジストローラ(レジスト手段)
30 用紙前後反転装置(用紙前後反転手段)
30A、30B、30C 領域
31 回転中心挟持部材(用紙挟持部材対)
31a 球状部材(用紙挟持部材対の一方の部材)
31b 正回転駆動ローラ(用紙挟持部材対のもう一方の部材)
32a、33a 正回転駆動ローラ
31c、32c、33c レバー
31d、32d、33d ばね部材
31e 保持部材
31f 固定された部材(用紙挟持部材対のもう一方の部材)
311 先端球面状部材(用紙挟持部材対の一方の部材)
312 先端鋭角部材(用紙挟持部材対の一方の部材)
313 可回転部材(用紙挟持部材対の一方の部材)
32b、33b 正回転従動ローラ
34 駆動軸
40 用紙表裏反転部(用紙表裏反転手段)
41 反転搬送ローラ
80 制御部(制御手段)
A 画像形成装置本体
c 用紙Pの中心線
d 直線rと用紙Pの中心cとの距離
F 用紙搬送方向
P 用紙
R 用紙搬送方向Fの逆方向
r 直線(用紙Pの回転中心の位置)
G1、G2、G3 ギヤ
SA、SB 用紙検知センサ
SD ソレノイド
CL1、CL2、CL3 クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体に担持されたトナー像を用紙に転写する際の用紙搬送のタイミングを合わせるため、用紙搬送方向における用紙の先端を突き当てるレジスト手段と、
トナー像が転写された用紙にトナー像を定着させる定着装置と、
用紙搬送方向における前記定着装置の下流側で、かつ前記レジスト手段の上流側に設けられ、両面画像形成時に片面に画像形成された用紙を導入する循環再給紙部と、
前記循環再給紙部の径路上に配設され、スイッチバック方式により用紙の表裏を反転させる用紙表裏反転手段と、
前記循環再給紙部の径路上に配設され、搬送される用紙を所定の位置で停止させて用紙面方向に180°回転させ、用紙の用紙搬送方向の前後を反転させる用紙前後反転手段と、を有し、
前記用紙前後反転手段は、前記所定の位置で回転する用紙の回転中心から用紙搬送方向と直角な方向に等間隔に離間する位置に配設される、用紙を用紙搬送方向に搬送させる方向に回転する正回転搬送手段、及び用紙を用紙搬送方向又はその逆方向に搬送させる、両方向への回転が可能な正逆回転搬送手段、の2つの搬送手段と、用紙の前記回転中心の位置に配設され、用紙を挟持する回転中心挟持手段と、を備えるとともに、
用紙が前記所定の位置に搬送されるとき、前記正回転搬送手段を正回転させ、前記正逆回転搬送手段を逆回転させて、前記回転中心挟持手段に挟持される用紙の前記回転中心の位置を中心に、用紙を180°回転させ、前記レジスト手段に突き当てる用紙の用紙搬送方向の先端を、表裏両面の画像形成時において同一端とすることを特徴とする両面画像形成装置。
【請求項2】
前記回転中心挟持手段は、前記所定の位置に搬送され、回転される用紙を常に挟持する用紙挟持部材対を備えていることを特徴とする請求項1に記載の両面画像形成装置。
【請求項3】
前記用紙挟持部材対の一方の部材は、先端が突起した円弧状の断面形状を有する部材であることを特徴とする請求項2に記載の両面画像形成装置。
【請求項4】
前記用紙挟持部材対の一方の部材は、全ての方向に回転自在に保持される球状部材であることを特徴とする請求項2に記載の両面画像形成装置。
【請求項5】
前記用紙挟持部材対のもう一方の部材は、回転自在なローラであることを特徴とする請求項2に記載の両面画像形成装置。
【請求項6】
前記用紙挟持部材対のもう一方の部材は、全ての方向に回転自在に保持される球状部材であることを特徴とする請求項2に記載の両面画像形成装置。
【請求項7】
前記回転中心挟持手段は、前記所定の位置に搬送され、回転される用紙を挟持する用紙挟持部材対と、用紙の挟持を解除する挟持部材圧着解除手段と、を有し、
前記回転中心挟持手段は、搬送される用紙が前記所定の位置に搬送され、停止するときに用紙を挟持し、用紙が180°回転された後、前記挟持部材圧着解除手段の動作により、用紙の挟持を解除することを特徴とする請求項1に記載の両面画像形成装置。
【請求項8】
前記用紙挟持部材対の一方の部材は、用紙に当接する先端が突起した円弧状の断面形状を有する部材であることを特徴とする請求項7に記載の両面画像形成装置。
【請求項9】
前記用紙挟持部材対の一方の部材は、用紙に当接する先端が鋭角な断面形状を有する部材であることを特徴とする請求項6に記載の両面画像形成装置。
【請求項10】
前記用紙挟持部材対の一方の部材は、回転する用紙の用紙面方向に回転自在に保持される可回転部材であることを特徴とする請求項7に記載の両面画像形成装置。
【請求項11】
前記用紙挟持部材対の一方の部材は、全ての方向に回転自在に保持される球状部材であることを特徴とする請求項7に記載の両面画像形成装置。
【請求項12】
前記用紙挟持部材対のもう一方の部材は、固定された部材であることを特徴とする請求項7に記載の両面画像形成装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の両面画像形成装置が有する前記用紙前後反転手段が、前記用紙表裏反転手段の用紙搬送方向の上流側又は下流側に配設され、
用紙が前記用紙前後反転手段の所定の位置に搬送されるとき、前記2つの搬送手段及び前記回転中心挟持手段は、前記所定の位置に搬送される用紙の、用紙搬送方向における用紙中心の位置、又は用紙中心の位置より下流側寄りの位置、に配設されることを特徴とする記載の両面画像形成装置。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか1項に記載の両面画像形成装置が有する前記用紙前後反転手段が、前記用紙表裏反転手段の内部に配設され、
用紙が前記用紙前後反転手段の所定の位置に搬送されるとき、前記2つの搬送手段及び前記回転中心挟持手段は、前記所定の位置に搬送される用紙に対し、用紙搬送方向における用紙中心の位置に配設されることを特徴とする両面画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−208834(P2010−208834A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59329(P2009−59329)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】