説明

中枢神経系への減少した血流又は外傷の治療のためのフェニル酢酸シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤及びコリン作動性剤の組成物

本発明は患者における中枢神経系損傷の治療のための組成物及び方法を提供する。より特には、本発明は患者へのフェニル酢酸シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤を伴うコリン作動性剤の投与を含む、中枢神経系虚血状態又は中枢神経系外傷性傷害の治療のための組み合わせ治療を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は中枢神経系への減少した血流又は外傷の治療のための組成物及び方法を提供する。より特には、本発明は、患者へのフェニル酢酸シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤を伴うコリン作動性剤の投与を含む、虚血性卒中を含む、虚血仲介中枢神経系損傷又は外傷により誘導された損傷の治療又は予防のための組み合わせ治療に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
虚血性卒中を含む、虚血仲介中枢神経系損傷の発生における連続した増大は、よりよい治療策についての持続する要求があるというやむにやまれぬ証拠を提供する。例えば、卒中は米国及び西欧の国々において一貫して毎年死の第二の又は第三の原因及び成人における疾病の主な生産者である。さらに卒中を有する患者のおよそ10%は重い障害をもつことになり、しばしば付添いの介護を必要とする。
【0003】
1990年代中、虚血仲介中枢神経系損傷の基礎にある病理が解明された。一般的に述べると、脳の灰白質への通常の灌流の量は60〜70mL/100gの脳組織/分である。中枢神経系細胞の死は典型的に、血流がある値(およそ8〜10mL/100gの脳組織/分)未満まで落ちたときにのみ起こり、一方、わずかにそれより高い値では上記組織は生きたままであるが機能することはできない。例えば、ほとんどの卒中は、血流が徹底的に減少されたため細胞が通常回復することができない、細胞死の核領域(梗塞)で最高点に達する。この閾値は大脳血流が通常の20%以下であるとき起こるように見える。神経保護剤なしに、80〜100%虚血に直面する神経細胞は数分以内に不可逆的に損傷を受けるであろう。虚血核の周りは、大脳血流が通常の20〜50パーセントである「虚血周縁部」又は「変移帯」と呼ばれる組織の他の領域である。この領域内の細胞は危険にさらされているが、まだ不可逆的に損傷を受けていない。したがって、急性卒中において、影響を受けた中心核脳組織は死にうるが、より周辺の組織は、上記脳組織が受ける血液の量に因り、はじめの発作後何年間も生きたままである。
【0004】
細胞レベルでは、処置されないままの場合、上記核梗塞内で速く、及び上記虚血周縁部内で時間にわたり、脳又は脊髄細胞損傷及び死が段階を追う様式で進行する。十分な血液供給なしでは、脳又は脊髄細胞はエネルギー、特にアデノシン三リン酸(ATP)を生成するそれらの能力を失う。このエネルギー不足が起こるとき、脳又は脊髄細胞は損傷を受けるようになり、及び決定的な閾値が達成された場合死ぬであろう。上記虚血核内の即時の細胞死は典型的に壊死性であり、一方、上記周縁部における細胞死は壊死性又はアポトーシス性でありうる。エネルギー不足後に脳又は脊髄細胞損傷及び死を引き起こす作用には莫大な数の機構があると考えられる。これらの機構のそれぞれは介入のための可能性のある経路を示す。脳細胞がエネルギー不足に応答する方法の1は細胞内カルシウムの濃度を高めることによる。これを悪化させること及び上記濃度を危険な値にすることは、脳細胞が過剰量のグルタミン酸、神経伝達物質を放出する、興奮毒性のプロセスである。これは他の脳細胞上の受容体において化学的及び電気的活性を刺激し、それは生命維持に必要な細胞構造の分解及び破壊を引き起こす。脳細胞はカルシウム活性化プロテアーゼ(細胞タンパク質を消化する酵素)、リパーゼ(細胞膜を消化する酵素)及び虚血カスケードの結果として形成されたフリーラヂカルの活動の結果として最終的に死ぬ。
【0005】
介入は虚血周縁部を救うこと及びその大きさを減少させることに方向付けられている。血流の回復は上記周縁部内の組織を救うための第一段階である。それゆえ、上記周縁部内及び上記虚血核内の両方で灌流を回復させるための閉塞した血管の時宜を得た再疎通は使用される1の治療選択である。部分的な再疎通はまた上記周縁部の大きさを顕著に減少させる。さらに、静脈内組織プラスミノーゲンアクチヴェーター及び他の血栓崩壊剤は、それらが症状開始の数時間以内に投与された場合、臨床的利益を有することが示されている。しかしながら、この狭い時間帯を過ぎると、有益な効果の見込みは減少され、及び血栓崩壊剤に関連する出血合併症は過剰になり、それらの治療的価値をひどく危うくする。低体温は不確かな臨床及び研究報告の両方において虚血発作の大きさを減少させる。さらに、広くさまざまな剤は動物モデルにおいて梗塞体積を減少させることが示されている。これらの剤は血栓崩壊、カルシウムチャネル妨害、及び細胞膜受容体拮抗を含む薬理学的介入を含み、それらは研究され、及び動物皮質卒中モデルにおいて有益であることが発見されている。しかし、虚血仲介中枢神経系損傷後の改善された治療計画についての持続する要求がある。
【0006】
精神薬理学は虚血仲介中枢神経系損傷後の伝統的な治療への補助的な治療選択としてしばしば使用される。ノルエピネフリン、ドパミン、アセチルコリン、及びセロトニンは脳損傷又は卒中からの回復において重要な役割を果たす。いくつかの動物モデルにおいて、これらの神経伝達物質の妨害は回復を阻害し、一方で、回復はノルエピネフリン、ドパミン、アセチルコリン、及びセロトニン活性を促進する薬物により促進される(Flanagan SR., (2000) CNS Spectrums 5(3):59−69)。いくつかの研究は、虚血仲介中枢神経系損傷後のコリン作動性剤での治療はまた有益でありうることを示す。コリン性剤の1の例はコリンエステラーゼ阻害剤である。コリンエステラーゼ阻害剤は酵素アセチルコリンエステラーゼによるアセチルコリンの崩壊を妨げ、増大した値のアセチルコリンをもたらす。その結果、コリンエステラーゼ阻害剤は梗塞領域からの失われたアセチルコリン生成を補うためにアセチルコリン値を増大させ、それによりコリン作動性機能を維持することにより中枢神経系虚血損傷の悪い効果を回復させる又は少なくすると考えられる。1の研究において、例えば、卒中後の患者へのコリンエステラーゼ阻害剤投与は虚血領域における高められた大脳血流をもたらしたことが示された(Scremin, O. et al, (1996) Life Sciences 58(22):2013−2017)。さらなる研究において、卒中後の患者に投与されたコリン作動性剤、シチコリンは行動パラメータにおける改善に加えて梗塞体積における減少をもたらしたことが発見された(Adibhatla, R. et al, (2002) J. Neurochem. 80:12−23)。動物モデルにおける同様の研究はまた、コリンエステラーゼ阻害剤が卒中後に投与されたときの海馬における遅延した神経死の予防を示した(Tanaka, K. et al., (1995) Neurochemical Research 20(6):663−667)。さらに、コリン作動性剤はまた、それらは副交感神経を妨げることが知られ、したがって、交感神経系が優先すること(例えば、心拍及び血圧における減少)を許容するので、卒中の予防においても有益でありうる。
【0007】
シクロオキシゲナーゼ−2発現は虚血損傷後に中枢神経系において誘導されることが知られる。1の研究において、シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤での処置は虚血脳損傷にかけられるマウスにおいて梗塞体積を減少させたことが示された(Nagayama et al., (1999) J. Cereb. Blood Flow Metab. 19(11):1213−19)。同様の研究は、シクロオキシゲナーゼ−2欠損マウスは、シクロオキシゲナーゼ−2を発現するマウスと比較したとき、中部大脳動脈の閉塞により作出された脳損傷において顕著な減少を有することを示した(Iadecola et al., (2001) PNAS 98:1294−1299)。他の研究は、シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤での処置はウサギにおいて可逆の脊髄虚血により誘導された行動欠陥の改善をもたらすことを示した(Lapchak et al., (2001) Stroke 32(5):1220−1230)。
【発明の開示】
【0008】
発明の要約
本発明のいくつかの局面で、患者における中枢神経系への減少した血流又は外傷の治療のための方法及び組成物が提供される。上記組成物はフェニル酢酸シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグ及びコリン作動性剤又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグを含み、及び上記方法は上記患者にコリン作動性剤又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグと共に、フェニル酢酸シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグを投与することを含む。
【0009】
1の態様において、上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は式:
【化1】

{式中、
16はメチル又はエチルである;
17はクロロ又はフルオロである;
18は水素又はフルオロである;
19は水素、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ又はヒドロキシである;
20は水素又はフルオロである;及び
21はクロロ、フルオロ、トリフルオロメチル又はメチルであり、
ここで、しかしながら、R16がエチルであり及びR19がHであるとき、R17、R18、R19及びR20のそれぞれはフルオロでない}
の化合物である。
【0010】
さらに他の態様において、上記コリン性剤はコリンエステラーゼ阻害剤である。さらなる態様において、上記コリンエステラーゼ阻害剤はドネペジル、タクリン、リヴァスチグミン、ガランタミン、メトリフォネート、臭化ピリドスチグミン、メチル硫酸ネオスチグミン、塩化エドロフォニウム、塩化アムベノニウム、ヂスチグミン、エプタスチグミン、及びイピダクリン又はそれらの医薬として許容される塩又はプロドラッグから成る群から選ばれる。さらに他の態様において、上記コリン作動性剤はシチコリン又はその医薬として許容される塩又はプロドラッグである。
【0011】
本発明の他の局面は以下に、より詳細に示される。
略語及び定義
上記用語「アシル」は有機酸からのヒドロキシルの除去後の残基により提供されるラヂカルをいう。上記アシルラヂカルの例はアルカノイル及びアロイルラヂカルを含む。上記低級アルカノイルラヂカルの例はフォルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、ヴァレリル、イソヴァレリル、ピヴァロイル、ヘキサノイル、トリフルオロアセチルを含む。
【0012】
上記用語「アルケニル」は2〜約20の炭素原子又は好ましくは2〜約12の炭素原子の少なくとも1の炭素−炭素二重結合を有する直鎖の又は有枝鎖のラヂカルを含む。より好ましいアルキルラヂカルは2〜約6の炭素原子を有する「低級アルケニル」ラヂカルである。アルケニルラヂカルの例はエテニル、プロペニル、アリル、プロペニル、ブテニル及び4−メチルブテニルを含む。
【0013】
上記用語「アルケニル」及び「低級アルケニル」はまた「シス」及び「トランス」配向又はあるいは「E」及び「Z」配向を有するラヂカルをも含む。上記用語「シクロアルキル」は3〜12の炭素原子を有する飽和炭素環状ラヂカルを含む。より好ましいシクロアルキルラヂカルは3〜約8の炭素原子を有する「低級シクロアルキル」ラヂカルである。上記ラヂカルの例はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルを含む。
【0014】
上記用語「アルコキシ」及び「アルキルオキシ」はそれぞれ1〜約10の炭素原子のアルキル部分を有する直鎖の又は有枝鎖のオキシを含むラヂカルを含む。より好ましいアルコキシラヂカルは1〜6の炭素原子を有する「低級アルコキシ」ラヂカルである。上記ラヂカルの例はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ及び第三−ブトキシを含む。
【0015】
上記用語「アルコキシアルキル」はアルキルラヂカルに結合される1以上のアルコキシラヂカルを有する、すなわち、モノアルコキシアルキル及びヂアルコキシアルキルラヂカルを形成する、アルキルラヂカルを含む。上記「アルコキシ」ラヂカルは、フルオロ、クロロ又はブロモの如き1以上のハロ原子でさらに置換され、ハロアルコキシラヂカルを提供しうる。より好ましいハロアルコキシラヂカルは1〜6の炭素原子及び1以上のハロラヂカルを有する「低級ハロアルコキシ」ラヂカルである。上記ラヂカルの例はフルオロメトキシ、クロロメトキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ、フルオロエトキシ及びフルオロプロポキシを含む。
【0016】
上記用語「アルコキシカルボニル」は、カルボニルラヂカルに酸素原子を介して結合される、上記に定義されるアルコキシラヂカルを含むラヂカルを意味する。より好ましいものは1〜6の炭素を有するアルキル部分を有する「低級アルコキシカルボニル」ラヂカルである。上記低級アルコキシカルボニル(エステル)ラヂカルの例は置換される又は置換されないメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル及びヘキシルオキシカルボニルを含む。
【0017】
単独で又は「ハロアルキル」、「アルキルスルフォニル」、「アルコキシアルキル」及び「ヒドロキシアルキル」の如き他の用語内で使用される場合、上記用語「アルキル」は1〜約20の炭素原子又は好ましくは、1〜約12の炭素原子を有する直鎖の、環状の又は有枝鎖のラヂカルを含む。より好ましいアルキルラヂカルは1〜約10の炭素原子を有する「低級アルキル」ラヂカルである。最も好ましいものは1〜約6の炭素原子を有する低級アルキルラヂカルである。上記ラヂカルの例はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、第二−ブチル、第三−ブチル、ペンチル、イソ−アミル、ヘキシル等を含む。
【0018】
上記用語「アルキルアミノ」は1又は2のアルキルラヂカルで置換されたアミノ基をいう。好ましいものは1〜6の炭素原子を有するアルキル部分を有する「低級N−アルキルアミノ」ラヂカルである。好適な低級アルキルアミノはN−メチルアミノ、N−エチルアミノ、N,N−ヂメチルアミノ、N,N−ヂエチルアミノ等の如き、モノ又はヂアルキルアミノでありうる。
【0019】
上記用語「アルキルアミノアルキル」はアミノアルキルラヂカルに結合される1以上のアルキルラヂカルを有するラヂカルを含む。
【0020】
上記用語「アルキルアミノカルボニル」はアミノ窒素原子上で1又は2のアルキルラヂカルで置換されたアミノカルボニル基をいう。好ましいものは「N−アルキルアミノカルボニル」、「N,N−ヂアルキルアミノカルボニル」ラヂカルである。より好ましいものは上記に定義される低級アルキル部分を有する「低級N−アルキルアミノカルボニル」、「低級N,N−ヂアルキルアミノカルボニル」ラヂカルである。
【0021】
上記用語「アルキルカルボニル」、「アリールカルボニル」及び「アラルキルカルボニル」は、カルボニルラヂカルに結合される、上記に定義されるアルキル、アリール及びアラルキルラヂカルを有するラヂカルを含む。上記ラヂカルの例は置換される又は置換されないメチルカルボニル、エチルカルボニル、フェニルカルボニル及びベンジルカルボニルを含む。
【0022】
上記用語「アルキルチオ」は、二価の硫黄原子に結合される1〜約10の炭素原子の、直鎖の又は有枝鎖のアルキルラヂカルを含むラヂカルを含む。より好ましいアルキルチオラヂカルは1〜6の炭素原子のアルキルラヂカルを有する「低級アルキルチオ」ラヂカルである。上記低級アルキルチオラヂカルの例はメチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ及びヘキシルチオである。
【0023】
上記用語「アルキルチオアルキル」は1〜約10の炭素原子のアルキルラヂカルに二価の硫黄原子をとおして結合されるアルキルチオラヂカルを含むラヂカルを含む。より好ましいアルキルチオアルキルラヂカルは1〜6の炭素原子のアルキルラヂカルを有する「低級アルキルチオアルキル」ラヂカルである。上記低級アルキルチオアルキルラヂカルの例はメチルチオメチルを含む。
【0024】
上記用語「アルキルスルフィニル」は、二価の−S(=O)−ラヂカルに結合される、1〜10の炭素原子の、直鎖の又は有枝鎖のアルキルラヂカルを含むラヂカルを含む。より好ましいアルキルスルフィニルラヂカルは1〜6の炭素原子のアルキルラヂカルを有する「低級アルキルスルフィニル」ラヂカルである。上記低級アルキルスルフィニルラヂカルの例はメチルスルフィニル、エチルスルフィニル、ブチルスルフィニル及びヘキシルスルフィニルを含む。
【0025】
上記用語「アルキニル」は2〜約20の炭素原子又は好ましくは、2〜約12の炭素原子を有する直鎖の又は有枝鎖のラヂカルをいう。より好ましいアルキニルラヂカルは2〜約10の炭素原子を有する「低級アルキニル」ラヂカルである。最も好ましいものは2〜約6の炭素原子を有する低級アルキニルラヂカルである。上記ラヂカルの例はプロパルギル、ブチニル等を含む。
【0026】
上記用語「アミノアルキル」は1以上のアミノラヂカルで置換されるアルキルラヂカルを含む。より好ましいものは「低級アミノアルキル」ラヂカルである。上記ラヂカルの例はアミノメチル、アミノエチル等を含む。
【0027】
上記用語「アミノカルボニル」は式−C(=O)NH2のアミド基をいう。
上記用語「アラルコキシ」は他のラヂカルに酸素原子をとおして結合されるアラルキルラヂカルを含む。
【0028】
上記用語「アラルコキシアルキル」はアルキルラヂカルに酸素原子をとおして結合されるアラルコキシラヂカルを含む。
【0029】
上記用語「アラルキル」はベンジル、ヂフェニルメチル、トリフェニルメチル、フェニルエチル、及びヂフェニルエチルの如き、アリール置換アルキルラヂカルを含む。前記アラルキル中のアリールはハロ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル及びハロアルコキシでさらに置換されうる。上記用語ベンジル及びフェニルメチルは相互変換可能である。
【0030】
上記用語「アラルキルアミノ」は他のラヂカルにアミノ窒素原子をとおして結合されるアラルキルラヂカルを含む。上記用語「N−アリールアミノアルキル」及び「N−アリール−N−アルキル−アミノアルキル」は、それぞれ、1のアリールラヂカル又は1のアリール及び1のアルキルラヂカルで置換された、及びアルキルラヂカルに結合されるアミノ基を有する、アミノ基をいう。上記ラヂカルの例はN−フェニルアミノメチル及びN−フェニル−N−メチルアミノメチルを含む。
【0031】
上記用語「アラルキルチオ」は硫黄原子に結合されるアラルキルラヂカルを含む。
上記用語「アラルキルチオアルキル」はアルキルラヂカルに硫黄原子を介して結合されるアラルキルチオラヂカルを含む。
【0032】
上記用語「アロイル」は上記に定義されるカルボニルラヂカルを有するアリールラヂカルを含む。アロイルの例はベンゾイル、ナフトイル等を含み、及び前記アロイル中のアリールはさらに置換されうる。
【0033】
上記用語「アリール」は単独で又は組み合わせで、1、2又は3の環を含む炭素環状芳香系を意味し、ここで、上記環はペンダント様式で共に結合されうる又は融合されうる。上記用語「アリール」はフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダン及びビフェニルの如き、芳香族ラヂカルを含む。アリール基はまたアルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノアルキル、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノカルボニルアルキル、アルコキシ、アラルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、ハロ、ニトロ、アルキルアミノ、アシル、シアノ、カルボキシ、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル及びアラルコキシカルボニルから独立に選ばれる1以上の置換基で置換可能な位置で置換されうる。
【0034】
上記用語「アリールアミノ」はN−フェニルアミノの如き、1又は2のアリールラヂカルで置換されたアミノ基をいう。上記「アリールアミノ」ラヂカルは上記ラヂカルのアリール環部分上でさらに置換されうる。
【0035】
上記用語「アリールオキシアルキル」は二価の酸素原子を介してアルキルラヂカルに結合されるアリールラヂカルを有するラヂカルを含む。
上記用語「アリールチオアルキル」は二価の硫黄原子を介してアルキルラヂカルに結合されるアリールラヂカルを有するラヂカルを含む。
【0036】
上記用語「カルボニル」は、単独で又は「アルコキシカルボニル」の如き他の用語と共に使用されるかどうかに因らず、−(C=O)−をいう。
上記用語「カルボキシ」又は「カルボキシル」は、単独で又は「カルボキシアルキル」の如き他の用語と共に使用されるかどうかに因らず、−CO2Hをいう。
【0037】
上記用語「カルボキシアルキル」はカルボキシラヂカルで置換されるアルキルラヂカルを含む。より好ましいものは上記に定義される低級アルキルラヂカルを含む「低級カルボキシアルキル」であり、及びハロでアルキルラヂカル上でさらに置換されうる。上記低級カルボキシアルキルラヂカルの例はカルボキシメチル、カルボキシエチル及びカルボキシプロピルを含む。
【0038】
上記用語「コリン作動性剤」は副交感神経系の活動を真似る化合物をいう。より特には、コリン作動性システムに対するその活動のために使用される化合物。本明細書中に含まれるものはアゴニスト及びアンタゴニスト、アセチルコリンの寿命周期に影響する薬物、及びコリン作動性ニューロンの生存に影響する薬物である。
【0039】
上記用語「コリン作動性アゴニスト」はコリン作動性受容体に結合する及びそれを活性化する化合物をいう。
【0040】
上記用語「コリン作動性アンタゴニスト」はコリン作動性受容体に結合するが、それを活性化せず、それによりアセチルコリン又はコリン作動性アゴニストの活性をブロックする化合物をいう。
【0041】
上記用語「シクロアルケニル」は3〜12の炭素原子を有する部分的に不飽和の炭素環状ラヂカルを含む。より好ましいシクロアルケニルラヂカルは4〜約8の炭素原子を有する「低級シクロアルケニル」ラヂカルである。上記ラヂカルの例はシクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタヂエニル、及びシクロヘキセニルを含む。
【0042】
上記用語「シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤」はシクロオキシゲナーゼ−1の顕著な阻害なしにシクロオキシゲナーゼ−2を阻害することができる化合物をいう。好ましくは、それは約0.2マイクロモーラー未満のシクロオキシゲナーゼ−2 IC50を有する、及びまた少なくとも50の、及びより好ましくは少なくとも100のシクロオキシゲナーゼ−1阻害に対するシクロオキシゲナーゼ−2阻害の選択率を有する化合物を含む。さらにより好ましくは、上記化合物は約1マイクロモーラー超の、及びより好ましくは10マイクロモーラー超のシクロオキシゲナーゼ−1 IC50を有する。本方法において使用されるアラキドン酸の代謝におけるシクロオキシゲナーゼ経路の阻害剤はさまざまな機構をとおして酵素活性を阻害しうる。例示のために、及び限定ではなく、本明細書中に示される方法において使用される阻害剤は酵素のための基質としてはたらくことにより直接的に上記酵素活性をブロックしうる。
【0043】
上記用語「ハロ」はフッ素、塩素、臭素又はヨー素の如きハロゲンを意味する。
上記用語「ハロアルキル」は1以上のアルキル炭素原子が上記に定義されるハロで置換されるラヂカルを含む。特に含まれるものはモノハロアルキル、ヂハロアルキル及びポリハロアルキルラヂカルである。1の例として、モノハロアルキルラヂカルは上記ラヂカル内にヨード、ブロモ、クロロ又はフルオロ原子を有しうる。ヂハロ及びポリハロアルキルラヂカルは2以上の同じハロ原子又は異なるハロラヂカルの組み合わせを有しうる。「低級ハロアルキル」は1〜6の炭素原子を有するラヂカルを含む。ハロアルキルラヂカルの例はフルオロメチル、ヂフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ヂクロロメチル、トリクロロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ヂフルオロクロロメチル、ヂクロロフルオロメチル、ヂフルオロエチル、ヂフルオロプロピル、ヂクロロエチル及びヂクロロプロピルを含む。
【0044】
上記用語「ヘテロアリール」は不飽和ヘテロシクリルラヂカルを含む。「ヘテロアリール」ラヂカルとも呼ばれる、不飽和ヘテロシクリルラヂカルの例は1〜4の窒素原子を含む不飽和3〜6員ヘテロ単環状基、例えば、ピローリル、ピローリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリヂル、ピリミヂル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル(例えば、4H−1,2,4−トリアゾリル、1H−1,2,3−トリアゾリル、2H−1,2,3−トリアゾリル等)、テトラゾリル(例えば、1H−テトラゾリル、2H−テトラゾリル等)等;1〜5の窒素原子を含む不飽和縮合ヘテロシクリル基、例えば、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリダジニル(例えば、テトラゾロ[1,5−b]ピリダジニル等)等;酸素原子を含む不飽和3〜6員ヘテロ単環状基、例えば、ピラニル、フリール等;硫黄原子を含む不飽和3〜6員ヘテロ単環状基、例えば、チエニル等;1〜2の酸素原子及び1〜3の窒素原子を含む不飽和3〜6員ヘテロ単環状基、例えば、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサヂアゾリル(例えば、1,2,4−オキサヂアゾリル、1,3,4−オキサヂアゾリル、1,2,5−オキサヂアゾリル等)等;1〜2の酸素原子及び1〜3の窒素原子を含む不飽和縮合ヘテロシクリル基(例えば、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサヂアゾリル等);1〜2の硫黄原子及び1〜3の窒素原子を含む不飽和3〜6員ヘテロ単環状基、例えば、チアゾリル、チアヂアゾリル(例えば、1,2,4−チアヂアゾリル、1,3,4−チアヂアゾリル、1,2,5−チアヂアゾリル等)等;1〜2の硫黄原子及び1〜3の窒素原子を含む不飽和縮合ヘテロシクリル基(例えば、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアヂアゾリル等)等を含む。上記用語はまたヘテロシクリルラヂカルがアリールラヂカルと融合されるラヂカルを含む。上記融合二環状ラヂカルの例はベンゾフラン、ベンゾチオフェン等を含む。前記「ヘテロシクリル基」はアルキル、ヒドロキシル、ハロ、アルコキシ、オキソ、アミノ及びアルキルアミノの如き1〜3の置換基を有しうる。
【0045】
上記用語「ヘテロシクリル」は飽和の、部分的に不飽和の及び不飽和のヘテロ原子を含む環状ラヂカルを含み、ここで、上記へテロ原子は窒素、硫黄及び酸素から選ばれうる。飽和ヘテロシクリルラヂカルの例は1〜4の窒素原子を含む飽和3〜6員ヘテロ単環状基(例えば、ピローリヂニル、イミダゾリヂニル、ピペリヂノ、ピペラジニル等);1〜2の酸素原子及び1〜3の窒素原子を含む飽和3〜6員ヘテロ単環状基(例えば、モルフォリニル等);1〜2の硫黄原子及び1〜3の窒素原子を含む飽和3〜6員ヘテロ単環状基(例えば、チアゾリヂニル等)を含む。部分的に不飽和のヘテロシクリルラヂカルの例はヂヒドロチオフェン、ヂヒドロピラン、ヂヒドロフラン及びヂヒドロチアゾールを含む。
【0046】
上記用語「ヘテロシクリルアルキル」は、ピローリヂニルメチルの如き飽和の及び部分的に不飽和のヘテロシクリル置換アルキルラヂカル、及びピリヂルメチル、キノリルメチル、チエニルメチル、フリールエチル、及びキノリルエチルの如きヘテロアリール置換アルキルラヂカルを含む。前記ヘテロアラルキル中のヘテロアリールはハロ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル及びハロアルコキシでさらに置換されうる。
【0047】
上記用語「ヒドリド」は単一の水素原子(H)をいう。このヒドリドラヂカルは、例えば、酸素原子に結合され、ヒドロキシラヂカルを形成しうる又は2のヒドリドラヂカルは炭素原子に結合され、メチレン(−CH2−)ラヂカルを形成しうる。
【0048】
上記用語「ヒドロキシアルキル」は、そのうちの1が1以上のヒドロキシルラヂカルで置換されうる1〜約10の炭素原子を有する直鎖の又は有枝鎖のアルキルラヂカルを含む。より好ましいヒドロキシアルキルラヂカルは1〜6の炭素原子及び1以上のヒドロキシルラヂカルを有する「低級ヒドロキシアルキル」ラヂカルである。上記ラヂカルの例はヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル及びヒドロキシヘキシルを含む。
【0049】
上記用語「医薬として許容される」は、改変された名詞が医薬製品における使用のために適切である;すなわち、上記「医薬として許容される」物質は、必ずしもそれ単独で別々の治療的利益を提供しないが、比較的安全で及び/又は非毒性であることを意味するよう本明細書中で形容詞として使用される。医薬として許容される陽イオンは金属イオン及び有機イオンを含む。より好ましい金属イオンは、非限定的に、適切なアルカリ金属塩、アルカリ土壌金属塩及び他の生理学的に許容される金属イオンを含む。例示的なイオンはそれらの通常の結合価のアルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛を含む。好ましい有機イオンは、部分的に、トリメチルアミン、ヂエチルアミン、N,N’−ヂベンジルエチレンヂアミン、クロロプロカイン、コリン、ヂエタノールアミン、エチレンヂアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)及びプロカインを含む、プロトン化第三アミン及び第四アンモニウム陽イオンを含む。例示的な医薬として許容される酸は、非限定的に、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、メタンスルフォン酸、酢酸、蟻酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、琥珀酸、乳酸、グルコン酸、グルクロン酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、フマル酸、プロピオン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸等を含む。
【0050】
上記用語「プロドラッグ」は患者の体内で代謝の又は単純な化学的プロセスにより治療用化合物に変換されうる化学化合物をいう。例えば、COX−2阻害剤のプロドラッグのクラスは、本明細書中に援用する米国特許第5,932,598号中に示される。
【0051】
治療目的のための上記用語「患者」は中枢神経系への血流における減少から生ずる悪い影響を受けやすい又は中枢神経系への外傷性損傷を患ったヒト又は動物被検体を含む。上記患者は飼いならされた家畜種、研究室動物種、動物園動物又はペット動物でありうる。1の態様において、上記患者は哺乳類である。他の態様において、上記哺乳類はヒトである。
【0052】
上記用語「スルフォニル」は、単独で又はアルキルスルフォニルの如き他の用語に結合して使用されるかどうかに因らず、それぞれ二価ラヂカル−SO2−をいう。「アルキルスルフォニル」はスルフォニルラヂカルに結合されるアルキルラヂカルを含み、ここで、アルキルは上記のように定義される。より好ましいアルキルスルフォニルラヂカルは1〜6の炭素原子を有する「低級アルキルスルフォニル」ラヂカルである。上記低級アルキルスルフォニルラヂカルの例はメチルスルフォニル、エチルスルフォニル及びプロピルスルフォニルを含む。上記「アルキルスルフォニル」ラヂカルはフルオロ、クロロ又はブロモの如き1以上のハロ原子でさらに置換され、ハロアルキルスルフォニルラヂカルを提供しうる。上記用語「スルファミル」、「アミノスルフォニル」及び「スルフォンアミヂル」はNH22S−をいう。
【0053】
上記句「治療的に有効な」は、治療なし又はそれぞれの剤単独の治療にまさって、障害の重篤さ及び発病の頻度において改善の目的を達成するであろう、それぞれの剤の量(すなわち、シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤の量及びコリン作動性剤の量)を限定すると意図される。
【0054】
上記用語「血栓事件」又は「血栓塞栓事件」は、非限定的に、ステント及び移植血栓症を含む動脈血栓症、心臓血栓症、冠状動脈血栓症、心臓弁血栓症、肺の血栓症及び静脈血栓症を含む。心臓血栓症は心臓における血栓症である。肺の血栓症は肺における血栓症である。動脈血栓症は動脈における血栓症である。冠状動脈血栓症は冠状動脈における閉塞性の血栓の発展であり、しばしば突然死又は心筋梗塞を引き起こす。静脈血栓症は静脈における血栓症である。心臓弁血栓症は心臓弁上の血栓症である。ステント血栓症は血管ステントの付近から生ずる及び/又はそこに位置する血栓症である。移植血栓症は移植された移植片、特に血管移植片の付近から生ずる及び/又はそこに位置する血栓症である。本明細書中で使用されるとき血栓事件は局所血栓事件及び体内のどこかで起こる遠位の血栓事件(例えば、塞栓卒中の如き血栓塞栓事件)の両方を含むと意味される。
【0055】
上記用語「血管閉塞事件」は血管、ステント又は血管移植片の(狭くなることを含む)部分的な閉塞又は完全な閉塞を含む。血管閉塞事件は血栓又は血栓塞栓事件、及びそれらが発生を増大させる血管閉塞性障害又は状態を含むと意図する。したがって、血管閉塞事件は血栓又は血栓塞栓事件から部分的な又は全体の血管閉塞をもたらす、全ての血管閉塞性障害を含むと意図される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
好ましい態様の説明
本発明は治療的に有効な量のコリン作動性剤を伴う治療的に有効な量のフェニル酢酸COX−2選択的阻害剤の患者への投与を含む組み合わせ治療を提供する。上記組み合わせ治療は細胞への血流における減少から生ずる中枢神経系細胞への傷害又は上記細胞への外傷性損傷から生ずる傷害を治療する又は予防するために使用される。さらに、上記組み合わせ治療はまた卒中又は他の血管閉塞事件の予防のために有用でありうる。組み合わせ治療の一部として投与されるとき、上記フェニル酢酸COX−2選択的阻害剤は上記コリン作動性剤と共に、上記コリン作動性剤又は上記フェニル酢酸COX−2選択的阻害剤単独の投与に比較して、高められた治療選択を提供する。
【0057】
シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤
いくつかの好適なシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤又はその医薬として許容される塩又はプロドラッグは本発明に係る組成物中で使用されうる。1の態様において、本発明に関連して使用されるシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグは式(III)の一般構造:
【化2】

{式中:
16はメチル又はエチルである;
17はクロロ又はフルオロである;
18は水素又はフルオロである;
19は水素、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ又はヒドロキシである;
20は水素又はフルオロである;及び
21はクロロ、フルオロ、トリフルオロメチル又はメチルであり、
ここで、しかしながら、R16がエチルであり及びR19がHであるとき、R17、R18、R19及びR20のそれぞれはフルオロでない}
により示される、フェニル酢酸誘導体シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤のクラスから選択されうる。
【0058】
本発明に係る方法(単数又は複数)に関連して使用される他のフェニル酢酸誘導体シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤はCOX 189(B−211)の名称を有する及び式(III)中に示される構造を有する化合物又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグであり;
ここで:
16はエチルである;
17及びR19はクロロである;
18及びR20は水素である;及び
21はメチルである。
【0059】
さらなる態様において、本発明に係る方法(単数又は複数)に関連してシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグのために有用な化合物は、それについての構造が以下の表3中に示され、非限定的に:
2−[4−(4−フルオロフェニル)−5−[4−(メチルスルフォニル)フェニル]オキサゾール−2−イル]酢酸(B−191);
[2−(2−クロロ−6−フルオロ−フェニルアミノ)−5−メチル−フェニル]−酢酸又はCOX 189(B−211);及び
[2−(2,4−ヂクロロ−6−エチル−3,5−ヂメチル−フェニルアミノ)−5−プロピル−フェニル]−酢酸(B−233)
を含む。
【0060】
【表1】

【0061】
本発明において使用されるシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は互変異性、幾何異性又は立体異性形で存在しうる。一般的に述べると、互変異性、幾何異性又は立体異性形で存在する好適なシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は100μM以下の濃度で存在するときシクロオキシゲナーゼ−2活性を約25%、より典型的には約50%、及びさらにより典型的には約75%以上阻害する化合物である。本発明はシス−及びトランス−幾何異性体、E−及びZ−幾何異性体、R−及びS−エナンチオマー、ヂアステレオマー、d−異性体、l−異性体、それらのラセミ混合物及びそれらの他の混合物を含む、全ての上記化合物を企図する。上記互変異性、幾何異性又は立体異性形の医薬として許容される塩もまた本発明に含まれる。上記用語「シス」及び「トランス」は、本明細書中で使用されるとき、二重結合によりつなげられた2の炭素原子がそれぞれ二重結合の同じ側上に(「シス」)又は二重結合の反対側上に(「トランス」)水素原子を有するであろう、幾何異性の形をいう。示される化合物のいくつかはアルケニル基を含み、及びシス及びトランス又は「E」及び「Z」幾何異性形の両方を含むことが意味される。さらに、示される化合物のいくつかは1以上の立体中心を含み、及びR、S、及び混合物又は存在するそれぞれの立体中心についてのR及びS形を含むことが意味される。
【0062】
本発明において利用されるシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は遊離塩基又はその医薬として許容される酸添加塩の形態で存在しうる。上記用語「医薬として許容される塩」はアルカリ金属塩を形成するために及び遊離酸又は遊離塩基の添加塩を形成するために通常使用される塩である。上記塩の性質は変化しうる、ここで、それは医薬として許容されるものである。本方法における使用のために好適な化合物の医薬として許容される酸添加塩は無機酸から又は有機酸から調製されうる。上記無機酸の例は塩酸、臭化水素酸、ヨー化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、及びリン酸である。適切な有機酸は有機酸の脂肪族、環状脂肪族、芳香族、アラリファト酸、ヘテロ環状、カルボン酸及びスルフォン酸クラスから選ばれうる、その例は蟻酸、酢酸、プロピオン酸、琥珀酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルフォン酸、エタンスルフォン酸、ベンゼンスルフォン酸、パントテン酸、2−ヒドロキシエタンスルフォン酸、トルエンスルフォン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルフォン酸、ステアリン酸、アルゲン酸、ヒドロキシブチル酸、サリチル酸、ガラクタル酸及びガラクツロン酸である。本方法における使用の化合物の好適な医薬として許容される塩基添加塩はアルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛から作出される金属塩又はN,N’−ヂベンジルエチレンヂアミン、クロロプロカイン、コリン、ヂエタノールアミン、エチレンヂアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)及びプロカインから作出される有機塩を含む。これらの塩の全ては、例えば、適切な酸又は塩基を本明細書中に示されるいずれかの式の化合物と反応させることにより対応する化合物から慣用の方法により調製されうる。
【0063】
本発明の実施において有用なシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は医薬組成物に調合され、及び治療的に有効な用量をデリバリーするであろう方法により投与されうる。上記組成物は、所望のように慣用の非毒性の医薬として許容される担体、補助剤、及び媒体を含む投与量単位調剤中で、経口で、非経口で、吸入スプレイにより、直腸で、皮内で、経皮で又は局所で投与されうる。局所投与はまた経皮パッチ又はイオン導入装置の如き経皮投与の使用を含みうる。上記用語非経口は、本明細書中で使用されるとき、皮下、静脈内、筋内又は胸骨内注入又は融合技術を含む。薬物の調合は、例えば、Hoover, John E., Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania(1975)、及びLiberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N. Y. (1980)中で議論される。
【0064】
注入可能な調製物、例えば、滅菌注入可能水性又は油性懸濁物は好適な分散又は浸潤剤及び懸濁剤を用いて既知の分野にしたがって調合されうる。上記滅菌注入可能調製物はまた非毒性の非経口で許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌注入可能溶液又は懸濁物でありうる。使用されうる許容可能な媒体及び溶媒は水、Ringer’s溶液、及び等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌不揮発性油は溶媒又は懸濁媒体として慣例的に使用される。この目的のために、合成モノ−又はヂグリセリドを含む、いかなるマイルドな不揮発性油も使用されうる。さらに、オレイン酸の如き脂肪酸は注入可能物質の調製において有用である。ヂメチルアセトアミド、イオン性及び非イオン性洗剤を含む界面活性剤、及びポリエチレングリコールが使用されうる。溶媒及び上記に議論されるものの如き浸潤剤の混合物もまた有用である。
【0065】
本明細書中で議論される化合物の直腸投与のための坐剤は上記活性剤を、通常の温度では固体であるが直腸温度では液体であり、及びそれゆえ直腸内で融解し及び上記薬物を放出するであろう、ココアバター、合成モノ−、ヂ−又はトリグリセリド、脂肪酸又はポリエチレングリコールの如き好適な非刺激性賦形剤と混合することにより調製されうる。
【0066】
経口投与のための固体投与形態はカプセル、錠剤、ピル、粉末、及び顆粒を含みうる。上記固体投与形態において、上記化合物は示される投与経路に適切な1以上の補助剤と通常混合される。経口的に投与される場合、上記化合物はラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸及び硫酸のナトリウム及びカルシウム塩、ゼラチン、アカシアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリヴィニルピローリドン、及び/又はポリヴィニルアルコールと混合され、及びその後便利な投与のために錠剤化又はカプセル化されうる。上記カプセル又は錠剤はヒドロキシプロピルメチルセルロース中の活性化合物の分散物で提供されうる制御された放出調剤を含みうる。カプセル、錠剤、及びピルの場合、上記投与形態はまたクエン酸ナトリウム又は炭酸若しくは重炭酸マグネシウム若しくはカルシウムの如き緩衝剤をも含みうる。錠剤及びピルは腸溶性コーティングを伴ってさらに調製されうる。
【0067】
治療目的のために、非経口投与のための調剤は水性又は非水性等張滅菌注入溶液又は懸濁物の形態で存在しうる。これらの溶液及び懸濁物は経口投与のための調剤における使用のために挙げられた1以上の担体又は希釈剤を有する滅菌粉末又は顆粒から調製されうる。上記化合物は水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、及び/又はさまざまな緩衝液中に溶解されうる。他の補助剤及び投与様式は医薬分野においてよく及び広く知られる。
【0068】
経口投与のための液体投与形態は水の如き本分野において通常使用される不活性希釈剤を含む医薬として許容されるエマルジョン、溶液、懸濁物、シロップ、及びエリキシル剤を含みうる。上記組成物はまた浸潤剤、乳化及び懸濁剤、並びに甘味、香味、及び香剤の如き補助剤を含みうる。
【0069】
上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤の単一の投与量を作出するために担体材料と混合されうる活性成分の量は患者及び特定の投与様式に因り変化するであろう。一般的に、上記医薬組成物は約0.1〜2000mgの範囲内の、より典型的には約0.5〜500mgの範囲内の、及びさらにより典型的には約1〜200mgのシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤を含みうる。約0.01〜100mg/体重kgの又はより典型的には約0.1〜約50mg/体重kgの、及びさらにより典型的には約1〜20mg/体重kgの毎日の用量は適切でありうる。上記毎日の用量は1日当たり1〜約4用量で投与されうる。
【0070】
当業者は、投与量はまたGoodman & Goldman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, Ninth Edition(1996), Appendix II, pp. 1707−1711からの及びGoodman & Goldman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, Tenth Edition (2001), Appendix II, pp. 475−493からのガイダンスで決定されうることを理解するであろう。
【0071】
コリン作動性剤
シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤に加えて、本発明に係る組成物はまた治療的に有効な量のコリン作動性剤又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグをも含む。いくつかの異なるコリン作動性剤が本発明において使用されうる。一般的に述べると、選択される剤は中枢神経系への血流における減少又は中枢神経系への外傷性損傷後にコリン作動性神経伝達を高める又は実質的に維持するであろう。
【0072】
本発明の1の局面は、それゆえ、いくつかの異なる生化学経路を介してコリンに及びより典型的にはコリンエステルに容易に代謝されうるコリン作動性剤を含む。この態様の1の代替において、上記コリン作動性剤はフォスファチヂルコリン前駆体である。好適なフォスファチヂルコリン前駆体の1の例は式:
【化3】

を有するシチコリン又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグである。
【0073】
本発明のさらなる局面は1以上のコリン作動性受容体のコリン作動性受容体アゴニストであるコリン作動性剤を含む。この態様の1の代替において、上記コリン作動性剤はムスカリン性アセチルコリン受容体のアゴニストである。上記コリン作動性剤はM1、M2、M3、M4又はM5ムスカリン性受容体遺伝子の発現から生ずるサブタイプの如き、1以上のムスカリン性受容体サブタイプのアゴニストでありうる。1の態様において、上記ムスカリン性受容体アゴニストはコリンのエステルである。上記コリンのエステルは式:
【化4】

を有するアセチルコリン又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグでありうる。
【0074】
この態様の他の代替において、上記コリンエステルは式:
【化5】

を有するブトリルコリン又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグである。
【0075】
この態様のさらに他の代替において、上記コリンエステルは式:
【化6】

を有するピロカルピン又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグである。
【0076】
この態様のさらに他の代替において、上記コリンエステルは式:
【化7】

を有するカルバコール又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグである。
【0077】
この態様のまたさらなる代替において、上記コリンエステルは式:
【化8】

を有する塩化ベタネコール又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグである。
【0078】
他の態様において、上記ムスカリン性受容体アゴニストはアルカロイドのエステルである。好適なアルカロイドの1の例は式:
【化9】

を有するムスカリン又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグである。
【0079】
本発明のさらなる局面はニコチン性アセチルコリン受容体のアゴニストであるコリン作動性剤を提供する。上記コリン性剤はα7又はα4β2受容体の如きニコチン性アセチルコリン受容体の1以上のイソ型のアゴニストでありうる。好適なニコチン性アセチルコリン受容体アゴニストの例は表4中に示される。
【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
また本発明のさらなる局面は患者に投与されたときアセチルコリンの崩壊を実質的に阻害する又は妨げるコリン作動性剤を含む。この態様の1の代替において、上記コリン作動性剤はコリンエステラーゼ阻害剤である。好適なコリンエステラーゼ阻害剤の例はリヴァスチグミン、塩化アムベノニウム、ヂスチグミン、エプタスチグミン、及びイピダクリンを含む。他の好適なコリンエステラーゼ阻害剤は表5中に示される。
【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
一般的に述べると、投与されるべき特定の剤の薬物速度論は最も好ましい投与方法及び投与計画を規定するであろう。上記コリン作動性剤は担体を伴う又は伴わない医薬組成物として投与されうる。上記用語「医薬として許容される担体」又は「担体」は比較的不活性及び非毒性である一般的に許容される賦形剤又は薬物デリバリー組成物をいう。例示的な担体は滅菌水、(Ringer’s溶液の如き)塩溶液、アルコール、ゼラチン、タルク、粘性パラフィン、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリヴィニルピローリドン、炭酸カルシウム、(ラクトース、スクロース、デキストロース、マンノースの如き)炭水化物、アルブミン、デンプン、セルロース、シリカゲル、ポリエチレングリコール(PEG)、乾燥スキムミルク、米粉、ステアリン酸マグネシウム等を含む。好適な調剤及び追加の担体はRemington’s Pharmaceutical Sciences, (17thEd., Mack Pub. Co., Easton, Pa.)中に示される。上記調製物は滅菌され、及び所望の場合、上記活性化合物と有害に反応しない補助剤、例えば、潤滑剤、保存剤、安定化剤、浸潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩、緩衝剤、着色、保存及び/又は芳香物質等と混合されうる。典型的な保存剤は、ソルビン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、チメロサール等を含みうる。上記組成物はまた所望の場合、代謝分解を減少させるための他の活性物質、例えば、酵素阻害剤と混合されうる。
【0086】
さらに、上記コリン作動性剤は液体溶液、懸濁物、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、維持された放出調剤又は粉末でありうる。投与方法はどのように上記組成物が調合されるかを規定しうる。例えば、上記組成物はトリグリセリドの如き伝統的な結合剤及び担体を伴って、坐剤として調合されうる。経口調剤は医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース又は炭酸マグネシウムの如き標準の担体を含みうる。
【0087】
他の態様において、上記コリン作動性剤は静脈内で、非経口で、筋内で、皮下で、経口で、鼻で、局所で、吸入により、インプラントにより、注入により又は坐剤により投与されうる。腸の又は(口の及び鼻の粘膜を介するものを含む)粘膜の適用のために、特に好ましいものは錠剤、液体、ドロップ、坐剤又はカプセルである。甘味媒体が使用されるシロップ、エリキシル剤等が使用されうる。リポソーム、微小球、及びマイクロカプセルは使用可能であり、及び使用されうる。肺の投与は、例えば、吸入器の如き本分野において知られるさまざまなデリバリー装置のいずれかを用いて達成されうる。例えば、Aerosols and the Lung, Clarke and Davis(eds.),Butterworths, London, England, pp.197−224中のS. P. Newman (1984);PCT公開公報第WO 92/16192号;PCT公開公報第WO 91/08760号を参照のこと。非経口適用のために、特に好ましいものは注入可能な滅菌溶液、好ましくは油性又は水性溶液、及び懸濁物、エマルジョン又は坐剤を含むインプラントである。特に、非経口投与のための担体はデキストロースの水溶液、塩水、純粋な水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ピーナッツ油、ゴマ油、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック重合体等を含む。化合物又は薬物の実際に有効な量は利用される特定の組成物、投与様式及び患者の年齢、体重及び状態にしたがって変化しうる及び変化するであろう。特定の個々の患者のための投与量は慣用の考慮を用いて当業者により決定されうる。しかし一般的には、コリン作動性剤の量は1日当たり約0.5〜約1000ミリグラム、より典型的には1日当たり約2.5〜約750ミリグラム、及び最も典型的には1日当たり約5.0〜約500ミリグラムであろう。上記毎日の用量は1日当たり1〜4の用量で投与されうる。
【0088】
例のために、1の態様において、上記コリン作動性剤が制御された放出投与形態で投与されるドネペジルであるとき、毎日投与される量は典型的に1日当たり1〜2用量で投与される1日当たり約5〜約10ミリグラムである。
【0089】
さらなる例のために、他の態様において、コリン作動性剤が制御された放出投与形態で投与されるタクリンであるとき、毎日投与される量は典型的に1日当たり1〜4用量で投与される約40〜約160ミリグラムである。
【0090】
またさらなる例のために、他の態様において、コリン作動性剤が制御された放出投与形態で投与される臭化ピリドスチグミンであるとき、毎日投与される量は典型的に1日当たり1〜4用量で投与される約60〜約360ミリグラムである。
【0091】
一般的に述べると、上記コリン作動性剤及びシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は虚血損傷の程度を減少させるために中枢神経系への血流における減少後、可能な限りすぐに患者に投与される。典型的に、上記コリン作動性剤及びシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は中枢神経系への血流の減少後10日以内に、及びより典型的には24時間以内に投与される。また他の態様において、上記コリン作動性剤及びシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は中枢神経系への血流における減少後約1〜約12時間投与される。他の態様において、上記コリン性剤及びシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は中枢神経系への血流における減少後約6時間より前に投与される。また他の態様において、上記コリン作動性剤及びシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は中枢神経系への血流における減少後約4時間より前に投与される。またさらなる態様において、上記コリン作動性剤及びシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は中枢神経系への血流における減少後約2時間より前に投与される。
【0092】
さらに、上記コリン作動性剤の投与に関連した上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤の投与のタイミングはまた患者毎に変化しうる。1の態様において、上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤及びコリン作動性剤は実質的に同時に投与されうる、このことは両方の剤がおよそ同じ時間に患者に投与されうることを意味する。例えば、上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は上記コリン作動性剤の開始と同じ日に始まり及び上記コリン性剤の終わり後の期間まで延びる連続した期間中に投与される。あるいは、上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤及びコリン作動性剤は連続して投与されうる、このことはそれらが別々の処置中の別々のときに投与されることを意味する。1の態様において、例えば、上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は上記コリン作動性剤の投与の前に始まり、及び上記コリン作動性剤の投与後に終わる連続した期間中に投与される。もちろん、上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤が上記コリン作動性剤より頻繁に又は少ない頻度で投与されうることもまた可能である。さらに、本発明の実施においてさまざまな投与時間及び方法を混合することが可能であり、及びおそらく所望されうることが当業者に明らかであろう。
【0093】
組み合わせ治療
一般的に述べると、本発明の実施において使用される組成物は1以上の上記に詳述されるコリン作動性剤のいずれかと共に、1以上の上記に詳述されるシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤のいずれかを含みうることが企図される。非限定的な例のために、表6aは本発明に係る方法及び組成物中で有用ないくつかの好適な組み合わせを詳述する。上記組み合わせはまた表6a中に列挙されるシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤又はコリン作動性剤のいずれかの異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグをも含みうる。
【0094】
【表6】

【0095】
さらなる例のために、表6bは本発明に係る方法及び組成物中で使用されうるいくつかの好適な組み合わせを詳述する。上記組み合わせはまた表6b中に列挙されるシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤又はコリン作動性剤のいずれかの異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグをも含みうる。
【0096】
【表7】

【0097】
またさらなる例のために、表6cは本発明に係る方法及び組成物中で使用されうる追加の好適な組み合わせを詳述する。上記組み合わせはまた表6c中に列挙されるシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤又はコリン作動性剤のいずれかの異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグをも含みうる。
【0098】
【表8】

【0099】
【表9】

【0100】
血管閉塞の診断
本発明の1の局面は血管閉塞事件のための治療又は予防の必要のある患者を診断することを含む。血管閉塞を診断するためのいくつかの好適な方法は本発明の実施において使用されうる。1の上記方法において、超音波が使用されうる。この方法は超音波(高頻度音波)の使用で腕及び脚における主要な動脈及び静脈中の血流を調べる。1の態様において、上記試験は「聞く」ための音の計測を使用する及び血流を計測するDoppler(商標)超音波検査、及び視覚心像を提供する二重の超音波検査を混合しうる。代替の態様において、上記試験は多頻度超音波又は多頻度頭蓋トランスDoppler(商標)(MTCD)超音波を利用しうる。
【0101】
使用されうる他の方法は映像化されうる化合物の患者への注入を含む。この態様の1の代替において、少量の放射活性物質が患者に注入され、及びその後磁気共鳴直接血栓映像化(MRDTI)の如き、妨害を検出するために血流をモニターすることに頼る標準の技術が血管閉塞を映像化するために利用されうる。代替の態様において、ThromboView(商標)(Agenix Limitedから商業的に入手可能)は放射性標識に結合した血餅結合モノクローナル抗体を使用する。本明細書中で同定される方法に加えて、血管閉塞事件の診断について本分野において知られるいくつかの他の好適な方法が利用されうる。
【0102】
処置されるべき徴候
典型的に、治療的に有効な量のフェニル酢酸シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤及び治療的に有効な量のコリン作動性剤を含む組成物はいくつかの中枢神経系障害を治療するために使用されうる。
【0103】
いくつかの局面で、本発明は細胞への血流における減少に応答する損傷を予防するために中枢神経系細胞を処置する方法を提供する。典型的に、予防されうる損傷の重篤さは大部分、上記細胞への血流における減少の程度及び上記減少の期間に因るであろう。例のために、ヒトにおける脳灰白質への通常の灌流量は約60〜70mL/脳組織100g/分である。中枢神経系細胞の死は典型的に、血流が約8〜10mL/脳組織100g/分未満に落ちたとき起こり、一方で、わずかにそれより高い値(すなわち、20〜35mL/脳組織100g/分)では上記組織は生きたままであるが機能することはできない。1の態様において、アポトーシスの又は壊死の細胞死が予防されうる。またさらなる態様において、細胞毒性浮腫又は中枢神経系組織無酸素血症の如き虚血仲介損傷が予防されうる。それぞれの態様において、上記中枢神経系細胞は脊髄細胞又は脳細胞でありうる。
【0104】
他の局面は中枢神経系虚血状態を治療するために患者に上記組成物を投与することを含む。いくつかの中枢神経系虚血状態は本発明に係る組成物により治療されうる。1の態様において、上記虚血状態はアポトーシスの又は壊死の細胞死、細胞毒性浮腫又は中枢神経系組織無酸素血症の如きいずれかの型の虚血中枢神経系損傷をもたらす卒中である。上記卒中は脳のいずれかの領域に影響しうる又は卒中の発生をもたらすことが通常知られるいずれかの病因により引き起こされうる。この態様の1の代替において、上記卒中は脳幹卒中である。一般的に述べると、脳幹卒中は呼吸、血圧、及び心拍の如き、不随意の生命維持機能を制御する脳幹を襲う。この態様の他の代替において、上記卒中は小脳卒中である。典型的に、小脳卒中は平衡及び協調を制御する脳の小脳領域を襲う。また他の態様において、上記卒中は塞栓性卒中である。一般的な用語では、塞栓性卒中は脳のいずれかの領域を襲い、及び典型的に血管閉塞による動脈の妨害から生じうる。また他の態様において、上記卒中は出血性卒中でありうる。塞栓性卒中のように、出血性卒中は脳のいずれかの領域を襲い、及び典型的に脳内又は脳の周辺の出血(血を流すこと)により特徴付けられる破裂した血管から生じうる。さらなる態様において、上記卒中は血栓性卒中である。典型的に、血栓性卒中は蓄積された堆積物による血管の妨害から生ずる。
【0105】
他の態様において、虚血状態は中枢神経系外の患者の体の部分で起こるが、それでもなお中枢神経系への血流における減少を引き起こす障害から生じうる。これらの障害は、非限定的に、末梢血管障害、静脈血栓症、肺の塞栓、心筋梗塞、一過性虚血性発作、不安定なアンギナ又は鎌状赤血球貧血を含みうる。さらに、上記中枢神経系虚血状態は外科的手順を受ける患者の結果として起こりうる。例のために、上記患者は心臓手術、肺手術、脊髄手術、脳手術、血管手術、腹の手術又は器官移植手術を受けうる。上記器官移植手術は心臓、肺、膵臓又は肝臓移植手術を含みうる。さらに、上記中枢神経系虚血状態は中枢神経系外の患者の体の部分への外傷又は傷害の結果として起こりうる。例のために、上記外傷又は傷害は患者の体内の血液の総体積を顕著に減少させる程度の出血を引き起こしうる。この減少した総体積のために、中枢神経系への血流量は付随して減少される。さらなる例のために、上記外傷又は傷害はまた中枢神経系への血流を制限する血管閉塞の形成をもたらしうる。
【0106】
もちろん、上記組成物は上記状態の原因に関係なく中枢神経系虚血状態を治療するために使用されうることが企図される。1の態様において、上記虚血状態は血管閉塞から生ずる。上記血管閉塞はどの型の閉塞でもありうるが、典型的に大脳血栓症又は大脳塞栓症である。さらなる態様において、上記虚血状態は出血から生じうる。上記出血はどの型の出血でもありうるが、一般的に大脳出血又はクモ膜下出血である。さらに他の態様において、上記虚血状態は血管が狭くなることから生じうる。一般的に述べると、上記血管は血管痙攣中に又は動脈硬化症のために起こるものの如き、血管収縮の結果として狭くなりうる。さらに他の態様において、上記虚血状態は脳又は脊髄への傷害から生ずる。
【0107】
さらに他の局面において、上記組成物は中枢神経系虚血状態後に虚血核の梗塞の大きさを減少させるために投与される。さらに、上記組成物はまた中枢神経系虚血状態後に虚血周縁部又は変移帯の大きさを減少させるために有益に投与されうる。
【0108】
さらなる局面において、本発明は血管閉塞事件の危険性のある患者のための処置を提供する。これらの患者は以前の血管閉塞事件を有しうる又は有しない。本発明は血管閉塞事件前の、血管閉塞事件のときの、及び血管閉塞事件後の患者の処置を含む。したがって、本明細書中で使用されるとき、患者の「処置(治療)」は予防の及び治療の処置を含むと意図され、及び血管閉塞事件の症状又は発生を全て制限する又は消去するために使用されうる。
【0109】
シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤及びコリン作動性剤に加えて、本発明に係る組成物はまた中枢神経系への血流における減少の効果を改善する剤をも含みうる。1の態様において、上記剤はヘパリンの如き血栓阻害剤及びワラフィンの如きFactor Xa阻害剤を含む抗凝固薬である。さらなる態様において、上記剤はGP IIb/IIIa阻害剤の如き抗血小板阻害剤である。さらなる剤は、非限定的に、HMG−CoA合成酵素阻害剤;スクワレンエポキシダーゼ阻害剤;スクワレン合成酵素阻害剤(スクワレン合成酵素阻害剤としても知られる)、アシル−コエンザイムA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤;プロブコール;ニコチン酸;クロフィブレート、フェノフィブレート、及びジェムフィブリゾールの如きフィブレート;コレステロール吸収阻害剤;胆汁酸封鎖剤;LDL(低比重リポタンパク質)受容体インデューサー;ビタミンB6(ピリドキシンとしても知られる)及びHCl塩の如きその医薬として許容される塩;ビタミンB12(シアノコバラミンとしても知られる);β−アドレナリン性受容体ブロッカー;葉酸又はナトリウム塩及びメチルグルカミン塩の如きその医薬として許容される塩又はエステル;及びビタミンC及びEの如き抗酸化ビタミン及びベータカロテンを含む。
【0110】
さらなる局面において、上記組成物は外傷性脳又は脊髄傷害後に中枢神経系損傷をくつがえす又は少なくするために使用されうる。外傷性脳又は脊髄傷害は、例えば、物体からの頭部又は背中への強打;ミサイル、銃弾、及び榴散弾からの貫通する傷害;落下;結果として起こる骨の破片による貫通を伴う頭蓋骨骨折;及び突然の加速又は減速傷害を含む、広くさまざまな原因から生じうる。本発明に係る組成物はその原因に関係なく、外傷性傷害を治療するために有益に利用されうる。
【0111】
上記組成物はまた脳又は脊髄傷害後に神経細胞機能の回復を増大させるためにも有益に使用されうる。一般的に述べると、ニューロンが疾患又は外傷のために失われたとき、それらは置換されない。むしろ、残ったニューロンはそれらの機能又は他のニューロンに関連する機能関係を変えることにより損失が起こったことに適合しなければならない。傷害後、神経組織は神経成長因子及びニューロン細胞接着分子の如き栄養修復因子を生成し始め、それらはさらなる変性を遅らせ、及びシナプスの維持及び新規シナプス結合の発達を促進する。しかし、失われた細胞は置換されないので、存在する細胞はなくなった細胞の機能のいくつかを引き受けなければならない、すなわち、それらは何か新しいことをすることを「学ば」なければならない。部分的には、脳外傷性損傷からの機能の回復は損傷を受けたところ以外の脳構造内で起こる可塑性変化を含む。ほんとうに、多くの場合、脳損傷からの回復は損傷を受けた領域の機能の健康な脳領域による引き受けを示す。したがって、本発明に係る組成物は他の領域による機能の損失を補うための傷害を受けていない脳領域による新規機能の学習を促進するために投与されうる。
【実施例】
【0112】
実施例
患者における血管閉塞事件又は関連する障害の治療又は予防のためのCOX−2選択的阻害剤及びコリン作動性剤の組み合わせ治療は以下に詳述される以下の試験中に示されるように評価されうる。
コリン作動性剤及びCOX−2阻害剤を含む特定の組み合わせ治療はプラシーボ処置、COX−2阻害剤のみの投与又はコリン作動性剤のみの投与の如きコントロール処置に比較して評価されうる。例のために、組み合わせ治療は、組み合わせ治療として試験されうる表6a、6b又は6c中に示される組み合わせを含む、本発明中に詳述されるコリン作動性剤及びCOX−2阻害剤のいずれかを含みうる。特定の治療組み合わせ中のコリン作動性剤及びCOX−2阻害剤の投与量は上記研究を行う当業者により容易に決定されうる。上記研究処置の長さは特定の研究により変化するであろう、及びまた当業者により決定されうる。例のために、上記組み合わせ治療は4週間投与されうる。上記コリン作動性剤及びCOX−2阻害剤は本明細書中に示されるいずれの経路によっても投与されうるが、好ましくはヒト患者に経口で投与される。
【0113】
実施例1:in vitroのCOX−1及びCOX−2活性の評価
本発明における使用のために好適なCOX−2阻害剤は以下の活性分析にしたがってin vitroで試験されたときCOX−1に対するCOX−2の選択的阻害を示す。
【0114】
組換えCOXバキュロウイルスの調製
組換えCOX−1及びCOX−2はGierse et al, [J. Biochem., 305, 479−84(1995)]により示されるように調製される。ヒト若しくはマウスCOX−1又はヒト若しくはマウスCOX−2のコード領域を含む2.0kb断片を、D. R. O’Reilly et al(Baculovirus Expression Vectors: A Laboratory Manual(1992))の方法と同様の様式で、バキュロウイルストランスファーベクターpVL1393(Invitrogen)のBamH1サイトにクローニングし、COX−1及びCOX−2についてのバキュロウイルストランスファーベクターを作出する。組換えバキュロウイルスをリン酸カルシウム法により200ngの直線にしたバキュロウイルスプラスミドDNAと共に4μgのバキュロウイルストランスファーベクターDNAをSF9昆虫細胞(2×108)にトランスフェクトすることにより単離する。M. D. Summers and G. E. Smith, A Manual of Methods for Baculovirus Vectors and Insect Cell Culture Procedures, Texas Agric. Exp. Station Bull. 1555(1987)を参照のこと。組換えウイルスを3ラウンドのプラーク精製により精製し、及びウイルスの高いタイター(107〜108pfu/mL)ストックを調製する。ラージスケール生成のために、SF9昆虫細胞を、感染の多重度が0.1であるように、組換えバキュロウイルスストックと共に10リットルの発酵槽(0.5×106/mL)中に感染させる。72時間後、上記細胞を遠心分離し、及び上記細胞ペレットを1% 3−[(3−コールアミドプロピル)−ヂメチルアンモニオ]−1−プロパンスルフォネート(CHAPS)を含むTris/Sucrose(50mM:25%、pH8.0)中でホモジェナイズする。上記ホモジェネートを10,000×Gで30分間遠心分離し、及び生ずる上清をCOX活性について分析されるまで−80℃で貯蔵する。
【0115】
COX−1及びCOX−2活性についての分析
COX活性を放出されたプロスタグランヂンを検出するためにELISAを用いて形成されたPGE2/タンパク質μg/時間として分析する。適切なCOX酵素を含むCHAPS−可溶化昆虫細胞膜をエピネフリン、フェノール、及びヘムを含むリン酸カリウム緩衝液(50mM、pH8.0)中でインキュベートし、アラキドン酸(10μM)を添加する。化合物をアラキドン酸の添加前に上記酵素と共に10〜20分間事前にインキュベートする。上記アラキドン酸及び上記酵素の間の反応を37℃で10分間の後、40μlの反応混合物を160μlのELISA緩衝液及び25μMのインドメタシンに移すことにより停止させる。形成されたPGE2を標準のELISA技術(Cayman Chemical)により計測する。
【0116】
COX−1及びCOX−2活性についての速い分析
COX活性を放出されたプロスタグランヂンを検出するためにELISAを用いて形成されたPGE2/タンパク質μg/時間として分析する。適切なCOX酵素を含むCHAPS−可溶化昆虫細胞膜をリン酸カリウム緩衝液(0.05Mリン酸カリウム、pH7.5、2μMフェノール、1μMヘム、300μMエピネフリン)中でインキュベートし、20μlの100μMアラキドン酸を添加する(10μM)。化合物をアラキドン酸の添加前に25℃で10分間上記酵素と共に事前にインキュベートする。上記アラキドン酸及び上記酵素の間の反応を37℃で2分間の後、40μlの反応混合物を160μlのELISA緩衝液及び25μMのインドメタシンに移すことにより停止させる。非選択的COX−2/COX−1阻害剤である、インドメタシンはポジティブコントロールとして利用されうる。形成されたPGE2は典型的に、いくつかの市販の源から入手可能なPGE2特異的抗体を利用して標準のELISA技術により計測される。
【0117】
試験されるべきそれぞれの化合物はそれぞれの特定の化合物のCOX−1及びCOX−2阻害効果を決定するためのバイオアッセイ試験のために2mlのヂメチルスルフォキシド(DMSO)中に個々に溶解されうる。有効性は典型的にPGE2生成の50%阻害をもたらす化合物g/溶媒mlとして表されるIC50値により表される。COX−2の選択的阻害はCOX−1/COX−2のIC50の割合により決定されうる。
【0118】
例のために、第一のスクリーニングは10μg/mlの濃度でCOX−2を阻害する特定の化合物を決定するために行われうる。上記化合物はその後3の異なる濃度(例えば、10μg/ml、3.3μg/ml及び1.1μg/ml)でのCOX−2阻害の程度を決定するための確認分析にかけられうる。このスクリーニング後、化合物はその後10μg/mlの濃度でCOX−1を阻害するそれらの能力について試験されうる。この分析で、コントロールに比較したCOX阻害の割合が決定されうる、及びより高い割合はより大きな程度のCOX阻害を示す。さらに、COX−1及びCOX−2についてのIC50値がまた試験された化合物について決定されうる。それぞれの化合物についての選択性はその後上記に示されるように、COX−1/COX−2のIC50の割合により決定されうる。
【0119】
実施例2:血小板凝集及び血小板活性化マーカーの計測方法
以下の研究はヒト患者又はマウスの如き研究室動物モデルにおいて行われうる。ヒト患者を含む臨床研究の開始前に、上記研究は適切なHuman Subjects Committeeにより承認されるべきであり、及び患者は研究について説明を受け及び参加前に成文の同意を与えるべきである。
【0120】
血小板活性化は本分野において使用可能ないくつかの試験により決定されうる。いくつかの上記試験は以下に示される。処置の有効性を決定するために、血小板活性化の状態を、上記組み合わせ治療を投与する前及び治療中週1回のように、研究中のいくつかの時点で評価する。血液サンプリングについての例示的な手順及び血小板凝集をモニターするために使用されうる分析は以下に列挙される。
【0121】
血小板凝集研究
血液サンプルを19ゲージの針を介して肘前の静脈から2のプラスティック管へ回収する。自由に流動する血液のそれぞれのサンプルを針及びVacutainerフードを用いて静脈内カテーテルに遠位の新鮮な静脈穿刺部位をとおして7ccの真空採血管(1はCTAD(ヂピリダモール)を有する、及び他方は3.8%クエン酸三ナトリウムを有する)へ回収する。血液が他の研究について同時に回収される場合、上記血小板サンプルは一番目ではなく、二番目又は三番目に得られることが好ましい。上記血小板サンプルのみが回収される場合、はじめの2〜3ccの血液は排出され、及びその後真空採血管が満たされる。上記管が15秒以内に満ちる場合、上記静脈穿刺は十分である。全ての回収は熟練した者により行われる。
【0122】
それぞれの患者についての血液サンプルを2のVacutainer管に回収した後、それらを抗凝集薬の完全な混合を確実にするために即時に、しかしおだやかに3〜5回反転する。管は振騰されない。過剰の抗凝集薬は血小板機能を変えうるので、上記Vacutainer管は容量まで満たされる。可能な限り、乱れを最小限にするために注意を払う。底まで噴射する代わりに、血液を管の側面をつたわせるために上記Vacutainer中で針を斜めにすることの如き、小さな段階は顕著な改善をもたらしうる。これらの管は室温で保たれ、及びサンプルを調製する責任のある研究室の者に直接渡される。上記Vacutainer管はいかなるときも冷蔵されない。
【0123】
クエン酸三ナトリウム(3.8%)及び全血を1:9の割合で即時に混合し、及びその後1200gで2.5分間遠心分離し、血小板リッチ血漿(PRP)を得、それを血小板凝集研究のための1時間以内の使用のために室温で保つ。血小板カウントをCoulter Counter ZM(Coulter Co., Hialeah, Fla.)でそれぞれのPRPサンプルにおいて決定する。血小板の数を同一源の血小板プア血漿での凝集のために3.50×108/mlに合わせる。PRP及び全血凝集試験を同時に行う。全血を0.5ml PBSで1:1に希釈し、及びその後混合するためにおだやかに攪拌する。攪拌棒を伴うキュベットをインキュベーションウェル内に置き、及び37℃まで5分間温める。その後上記サンプルを分析ウェルに移す。電極を上記サンプルキュベット内に置く。血小板凝集を5μM ADP、1μg/mlコラーゲン、及び0.75mMアラキドン酸で刺激する。全てのアゴニストは、例えば、Chronolog Corporation(Hawertown,Pa.)から得られる。血小板凝集研究をChrono−Log Whole Blood Lumi−Aggregometer(model 560−Ca)を用いて行う。血小板凝集力は血漿サンプルについて記録時間の終わりにリファレンスとして血小板プア血漿を用いてベースラインからの光透過率変化の割合として又は全血サンプルについて電気インピーダンスにおける変化として表される。凝集曲線を4分間記録し、及びAggrolink(商標)ソフトウェアを用いて国際的に確立された標準にしたがって分析する。
【0124】
コリン作動性剤及びCOX−2阻害剤を含む組み合わせ治療を受ける患者の凝集曲線はその後、前記組み合わせ治療の有効性を決定するために、コントロール処置を受ける患者の凝集曲線と比較されうる。
【0125】
洗浄血小板フロウサイトメトリー
静脈血(8ml)を2mlの酸−クエン酸−デキストロース(ACD)(1000ml蒸留水中の7.3gクエン酸、22.0gクエン酸ナトリウム×2H2O及び24.5グルコース)を含むプラスティック管中に回収し、及びよく混合する。上記血液−ACD混合物を1000r.p.m.で室温で10分間遠心分離する。上記血小板リッチ血漿(PRP)の上部2/3をその後回収し、及びACDを添加することによりpH=6.5に合わせる。上記PRPをその後3000r.p.m.で10分間遠心分離する。上記上清を除去し、及び上記血小板ペレットを4ccの洗浄緩衝液(10mM Tris/HCl、0.15M NaCl、20mM EDTA、pH=7.4)中におだやかに再懸濁する。血小板を洗浄緩衝液中で、及びTBS(10mM Tris、0.15M NaCl、pH=7.4)中で洗浄する。全ての細胞をその後適切な数の管に分ける。例のために、本明細書中に示されるように、9の異なる表面マーカーが評価される場合、洗浄された血小板を含む9の管が5μlのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合抗体と+4℃の暗室内で30分間インキュベートされ、及び1の管は染色されないままであり、及びネガティブコントロールとしてはたらくように、上記細胞は10の管に分けられるべきである。表面抗原発現は、上記細胞上のこれらの抗原の発現は血小板活性化と関連するので、CD9(p24);CD41a(IIb/IIIa、allbb3);CD42b(Ib);CD61(IIIa)(DAKO Corporation, Carpinteria, Calif.);CD49b(VLA−2又はa2b1);CD62p(P−セレクチン);CD31(PECAM−1);CD41b(IIb);及びCD51/CD61(ヴィトロネクチン受容体、avb3)(PharMingen,San Diego Calif.)の如き、モノクローナルマウス抗ヒト抗体で計測される。インキュベーション後、上記細胞をTBSで洗浄し、及び0.25mlの1%パラフォルムアルデヒド中に再懸濁する。サンプルを+4℃の冷蔵庫中で貯蔵し、及びBecton Dickinson FACScanフロウサイトメーター上で15mwのレーザーアウトプット、488nmでの励起、及び530+−30nmでの発光検出で分析する。上記データを回収し、及びリストモードで貯蔵し、及びその後CELLQuest(商標)ソフトウェアを用いて分析しうる。FACS手順は、例えば、Gurbel, P. A. et al., J Amer Coll Cardiol 31:1466−1473(1998);Serebruany, V. L. et al., Am Heart J 136:398−405(1998);Gurbel, P.A. et al., Coron Artery Dis 9:451−456(1998)及びSerebruany, V. L. et al., Arterioscl Thromb Vasc Biol 19:153−158(1999)中に詳細に示される。
【0126】
組み合わせ治療を受ける患者から単離された血小板の抗体染色はその後血小板に対する上記組み合わせ治療の効果を決定するために、コントロール処置を受ける患者から単離された血小板の染色に比較されうる。
【0127】
全血フロウサイトメトリー
4ccの血液を2ccの酸−クエン酸−デキストロース(ACD、前の実施例を参照のこと)を含む管中に回収し、及びよく混合する。緩衝液TBS(10mM Tris、0.15M NaCl、pH7.4)及び以下のフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合モノクローナル抗体(PharMingen, San Diego, Calif., USA, and DAKO, Calif., USA)を冷蔵庫から取り出し、及びそれらの使用前に室温(RT)で温めた。使用されうる抗体の非限定的な例はCD41(IIb/IIIa)、CD31(PECAM−1)、CD62p(P−セレクチン)、及びCD51/61(ヴィトロネクチン受容体)を含む。それぞれの患者について、6の琥珀色の管(1.25ml)及び1のEppendorf管(1.5ml)を得、及び適切に印をつける。450μlのTBS緩衝液を、標識を付けたEppendorf管にピペットで移す。患者の全血管を混合するためにおだやかに2回反転し、及び50μlの全血を適切に標識を付けたEppendorf管にピペットで移す。上記Eppendorf管に蓋をし、及び上記希釈した全血を上記Eppendorf管をおだやかに2回反転することにより混合し、続いて50μlの希釈した全血をそれぞれの琥珀色の管にピペットで移す。5μlの適切な抗体を対応する琥珀色の管の底にピペットで移す。上記管をアルミニウムフォイルで覆い、及び4℃で30分間インキュベートする。インキュベーション後、400μlの2%緩衝パラフォルムアルデヒドを添加する。上記琥珀色の管を蓋でしっかりと閉め、及び4℃の冷蔵庫内でフロウサイトメトリーの分析まで貯蔵する。上記サンプルをBecton Dickinson FACScanフロウサイトメーター上で分析する。これらのデータをリストモードファイル中で回収し、及びその後分析する。(B.)中に挙げられるように、組み合わせ治療を受ける患者から単離された血小板の抗体染色はその後コントロール処置を受ける患者から単離された血小板の染色と比較されうる。
【0128】
ELISA
酵素結合免疫吸着分析(ELISA)を標準の技術にしたがって、及び本明細書中に示されるように使用する。エイコサノイド代謝物は血小板凝集を決定するために使用されうる。上記代謝物は、エイコサノイドが生理学的条件下で短い半減期を有するという事実のために分析される。トロンボキサンA2の安定な崩壊生成物であるトロンボキサンB2(TXB2)及びプロスタサイクリンの安定な分解生成物である6ケト−PGF1アルファが試験されうる。トロンボキサンB2はTXA2の安定な加水分解生成物であり、及びトロンビン及びコラーゲンの如きさまざまな剤により誘導される血小板凝集に続いて生成される。6ケト−プロスタグランヂンF1アルファは不安定なPGI2(プロスタサイクリン)の安定な加水分解された生成物である。プロスタサイクリンは血小板凝集を阻害し、及び血管拡張を誘導する。したがって、プロスタサイクリン生成の見積もりは6ケト−PGF1の値の決定によりなされうる。上記代謝物は−4℃に保たれる血小板プア血漿(PPP)中で計測されうる。また、血漿サンプルをまたエタノールで抽出し、及びその後、例えば、標準の技術にしたがうTiterZymes(商標)酵素免疫分析(PerSeptive Diagnostics, Inc., Cambridge, Mass., USA)を用いる最終プロスタグランヂン決定まで−80℃で貯蔵しうる。TXB2及び6ケト−PGF1を計測するためのELISAキットはまた商業的に入手可能である。
【0129】
組み合わせ治療を受ける患者及びコントロール処置を受ける患者の血漿中のTXB2及び6ケト−PGF1の量は上記組み合わせ治療の有効性を決定するために比較されうる。
【0130】
DADE BEHRING血小板機能分析器、PFA−100(商標)で計測された閉鎖時間
PFA−100(商標)は血小板機能不全の検出のためのin vitro系として使用されうる。それは抗凝集化全血中での血小板機能の量的な計測を提供する。上記系はマイクロプロセッサー制御器械及び生物学的に活性な膜を含む使い捨て試験カートリッヂを含む。上記器械はキャピラリー及び膜に切られた微細な開口部をとおしてサンプルリザーヴァーから一定の真空下で血液サンプルを吸引する。上記膜はコラーゲン及びエピネフリン又はアデノシン5’−ヂフォスフェートでコーティングされる。これらの生化学刺激の存在、及び標準化された流動条件下で作出される高いシア速度は血小板結合、活性化、及び凝集をもたらし、上記開口部にゆっくりと安定な血小板プラグを築く。上記開口部の完全な閉塞を得るために必要とされる時間は「閉鎖時間」として報告され、それは通常1〜3分間に及ぶ。
【0131】
PFA−100(商標)試験カートリッヂ中の膜は生物学的成分のための支持マトリックスとしてはたらき、及び上記開口部の配置を許容する。上記膜は0.45μmの平均孔サイズを有する標準のニトロセルロースろ過膜である。上記膜の血液の入り口側は2μgの原線維のI型ウマ腱コラーゲン及び10μgの重酒石酸エピネフリン又は50μgのアデノシン5’−ヂフォスフェート(ADP)でコーティングされた。これらの剤は、上記血液サンプルが上記開口部を通るとき、血小板に制御された刺激を提供する。上記コラーゲン表面はまた血小板排出及び結合のためのよく定義されたマトリックスとしてはたらいた。
【0132】
PFA−100(商標)試験の原理はKratzer and Born(Kratzer et al., Haemostasis 15:357−362(1985))により示されるものとほとんど同じである。上記試験は3.8%の3.2%クエン酸ナトリウム抗凝集薬中に回収された全血サンプルを利用する。上記血液サンプルをキャピラリーをとおしてカップへ吸引し、そこでそれはコーティングされた膜と接触し、及びその後開口部を通る。上記コーティング中に存在するコラーゲン及びエピネフリン又はADPによる刺激、及び上記開口部でのシアストレスに応答して、血小板は上記開口部の周りの領域で始まってコラーゲン表面に接着し、及び凝集する。上記計測の過程中、最終的に上記開口部を閉塞する安定な血小板プラグが形成する。上記開口部の完全な閉塞を得るために必要とされる時間は「閉鎖時間」として定義され、及び上記サンプル中の血小板機能を表示する。したがって、「閉鎖時間」は上記組み合わせ治療の有効性を評価するために組み合わせ治療を受ける患者及びコントロール治療を受ける患者の間で比較されうる。
【0133】
実施例3:動物試験
以下の実施例において、組み合わせ治療はコリンエステラーゼ阻害剤の如きコリン性剤及びCox−2選択的阻害剤を含む。上記組み合わせ治療の有効性はプラシーボ処置、Cox−2阻害剤のみの投与又はコリン作動性剤のみの投与の如きコントロール処置に比較して評価されうる。例のために、組み合わせ治療はドネペジル及びCox−189、タクリン及びCox−189、リヴァスチグミン及びCox−189又はシチコリン及びCox−189を含みうる。これらは単にいくつかの例であること、及び本発明に係るコリン作動性剤及びCox−2阻害剤のいずれも組み合わせ治療として試験されうることが留意されるべきである。特定の治療組み合わせにおけるコリン作動性剤及びCox−2阻害剤の投与量は上記研究を行う当業者により容易に決定されうる。上記研究処置の長さは特定の研究により変化するであろう、及びまた当業者により決定されうる。例のために、上記組み合わせ治療は12週間投与されうる。上記コリン作動性剤及びCox−2阻害剤は本明細書中に示されるいかなる経路によっても投与されうるが、好ましくはヒト患者に経口で投与される。
【0134】
研究室動物研究は一般的にTanaka et al., Neurochemical Research, Vol.20.No.6,1995,pp.663−667中に示されるように行われうる。
【0135】
簡単に述べると、上記研究は65〜80グラムの体重を有する約30のアレチネズミで行われうる。上記動物をケタミン(100mg/体重kg、i.p.)で麻酔をかけ、及び絹糸を頸動脈血流を妨げないで両方の共通の頸動脈の周りに置く。次の日、両側の共通の頸動脈を暴露し、及びその後軽いエーテル麻酔後に外科クリップで閉塞する(例えば、Ogawa et al.Adv. Exp. Med. Biol., 287:343−347、及びOgawa et al.Brain Res., 591:171−175を参照のこと)。頸動脈血流を5分間の閉塞後上記クリップを解放することにより回復させる。体温はヒーティングパッド及び白熱灯を用いて約37℃に維持される。コントロール動物は同様の様式で操作されるが、頸動脈は閉塞されない。上記組み合わせ治療は虚血群において即時に及び再循環6及び12時間後に投与され、一方、シャム操作動物は、例えば、上記組み合わせ治療を投与するために使用される媒体でありうるプラシーボを受ける。アレチネズミは再循環14日後に断頭により殺される。上記脳を直ちに除去し、及び上記組織を冷凍するために粉砕したドライアイス上に置く。
【0136】
上記脳組織はその後上記プラシーボに比較した組み合わせ治療の効果について組織学的に調べられうる。例えば、それぞれの脳を−15℃で14μmの厚みの切片に切り分ける。大脳皮質及び海馬の構造体を含む冠状の切片を解凍し、ゼラチンコーティングスライド上にのせ、完全に乾燥させ、及び10%のフォルマリンで2時間固定する。上記切片を、例えば、Nichirei, Tokyo, Japanから商業的に得られうるヘマトキシリン−エオシン及びグリア線維酸性タンパク質(GFAP)に対する抗体で染色する。免疫複合体はアヴィヂン−ビオチン相互作用により検出され、及び3,3’−ヂアミノベンジヂンテトラヒドロクロリドで視覚化される。コントロールとして使用される切片は抗−GFAP抗体の添加なしに同様の様式で染色される。海馬の典型的なCA1サブフィールド中の生きている錐体細胞及びGFAP陽性星状細胞の密度を250×顕微鏡写真からそれぞれの切片における上記細胞をカウントし、及びCA1細胞層の全体の長さを計測することにより計算する。それぞれのアレチネズミについてのCA1サブフィールドにおける錐体細胞及びGFAP陽性星状細胞の平均密度は左及び右の半球のこれらの切片のそれぞれにおける1の単位領域内の細胞をカウントすることから得られる。
【0137】
上記プラシーボに比較した上記組み合わせ治療の効果は定性的に及び定量的に決定されうる。例えば、CA1サブフィールドにおけるCA1錐体ニューロン及び錐体細胞密度の外見は上記治療の有効性を評価するために使用されうる。さらに、シャム操作動物はほとんどGFAP陽性星状細胞を有しないはずであるから、免疫組織学的分析は処置したアレチネズミのCA1領域における肥大性GFAP陽性星状細胞の存在又は不在を評価することにより組み合わせの有効性を明らかにしうる。
【0138】
実施例4:ヒト患者試験
この試験は急性虚血性卒中を示す患者における本明細書中に示される組み合わせ治療のランダム化二重盲検プラシーボ制御有効性研究として設計されうる。患者はそれぞれの研究について決定されうる1セットの適格性基準に基づいて試験について選択される。例えば、上記基準は:年齢(例えば、18〜85歳)、少なくとも60分間続く病巣の神経学的欠陥、急性虚血性卒中の臨床診断と一致するCT(又はMRI)、及びNIH Stroke Scale≧8を含みうる。除外基準は、例えば、重篤な共存する体系的疾患、参加を妨害しうる以前に存在する医学的状態、及び24時間以内に必要とされる手術を含みうる。上記研究のためのプロトコルは上記試験が行われる機関の機関検討会議により承認されるべきであり、及び全ての患者又は彼らの法定代理人はインフォームドコンセントにサインするべきである。
【0139】
この試験の主な目的は急性虚血性卒中を有する患者において6週間の処置期間及び6週間のフォローアップ期間にわたり経口で投与される組み合わせ治療の回復に対する効果を決定することである。以下のパラメータは回復を評価するために計測されうる。卒中病変体積は上記試験中の全ての患者について慣用のT2計量MRIを用いて評価されうる。さらに、拡散計量イメージング(DWI)はベースラインでの病変体積における変化を12週での体積と比較するために行われうる。
【0140】
この試験に適格であるために、上記患者は中部大脳動脈領域に属せられる急性虚血性卒中に一致する臨床調査について症状を24時間以内に示さなければならない。さらに、患者はNIHSSについて少なくとも8点を有し、これらの点の少なくとも2は運動区画からでなければならない。
【0141】
ベースラインCT又は慣用のMRIスキャンは、それが虚血性卒中の診断と一致することを確認するために行われる。
【0142】
包含及び排除基準にしたがって適格となる、及びインフォームドコンセントが得られる全ての患者はプラシーボ又は組み合わせ治療のいずれかの6週間の処置に1対1基礎でランダムに割り当てられる。組み合わせ治療及びプラシーボは1日1回又は2回、経口で投与されうる。他の投与経路及び他の用量計画が使用されうることが留意されるべきである。患者が飲み込むことができない場合、鼻腔胃管が上記薬物のデリバリーのために置かれる。
【0143】
患者はベースライン、1週、退院、3週、6週、及び12週で研究者により観察され、そのとき、副作用プロファイル及び薬物有効性が計測される。
【0144】
上記組み合わせ治療の有効性はいくつかの方法で計測されうる。主な結果計測は、例えば、12週で彼らのNIHSS合計スコアについてベースラインから7ポイント以上改善したプラシーボ及び組み合わせ治療群における患者の割合の比較でありうる。追加の計測は、例えば、12週でClinician’s Global Impressions(CGI)スケール(Guy W., Early clinical drug evaluation unit(ECDEU) assessment manual for psychopharmacology,1976,217−222を参照のこと)について1又は2点改善する患者の割合、CGI重篤さスケール(Guy W., Early clinical drug evaluation unit(ECDEU) assessment manual for psychopharmacology, 1976, 217−222)について2ポイント以上の改善を有する患者の割合、及び死亡率の評価を含みうる。以前に挙げられるように、DWIはベースラインでの及び12週での病変体積における変化を評価するために使用されうる。
【0145】
全ての上記に挙げられる手順は、使用される薬物組み合わせ、研究の長さ、選択される患者等の如き因子に因り、特定の研究について改変されうることが留意されるべきである。上記改変は過度の実験なしに当業者により設計されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
卒中の治療方法であって、以下のステップ:
(a)卒中のための治療の必要のある患者を診断すること;及び
(b)上記患者にコリン作動性剤又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグ及びシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグを含む組み合わせを投与すること
を含み、ここで、上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤はフェニル酢酸である前記方法。
【請求項2】
上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は約50以上のCOX−1 IC50対COX−2 IC50の選択比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は約100以上のCOX−1 IC50対COX−2 IC50の選択比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は2−[4−(4−フルオロフェニル)−5−[4−(メチルスルフォニル)フェニル]オキサゾール−2−イル]酢酸、[2−(2−クロロ−6−フルオロ−フェニルアミノ)−5−メチル−フェニル]−酢酸、及び[2−(2,4−ヂクロロ−6−エチル−3,5−ヂメチル−フェニルアミノ)−5−プロピル−フェニル]−酢酸又はそれらの異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグから成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記コリン作動性剤はシチコリン、アセチルコリン、ブトリルコリン、ピロカルピン、カルバコール、塩化ベタネコール、ムスカリン、N−(ヒドロキシメチル)−ニコチンアミド、グアニヂン、ラケシン、エピバチヂン、(S)−(−)ニコチン、シチシン、ABT−594、DBO 83、SIB 1508Y、GTS 21、RJR 2403、A−85380、ロベリン、ABT−418、リヴァスチグミン、塩化アムベノニウム、ヂスチグミン、エプタスチグミン、イピダクリン、塩酸ドネペジル、タクリン、ガランタミン、メトリフォネート、フィソスチグミン、ピリドスチグミン、ネオスチグミン、及びエドロフォニウムから成る群から選ばれる又はそれらの異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
(a)以下の式:
【化1】

{式中:
16はメチル又はエチルである;
17はクロロ又はフルオロである;
18は水素又はフルオロである;
19は水素、フルオロ、クロロ、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ又はヒドロキシである;
20は水素又はフルオロである;及び
21はクロロ、フルオロ、トリフルオロメチル又はメチルである;
ここで、しかしながら、R16がエチルであり及びR19がHであるとき、R17、R18、R19及びR20のそれぞれはフルオロでない}
を有するシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグ;及び
(b)シチコリン、アセチルコリン、ブトリルコリン、ピロカルピン、カルバコール、塩化ベタネコール、ムスカリン、N−(ヒドロキシメチル)−ニコチンアミド、グアニヂン、ラケシン、エピバチヂン、(S)−(−)ニコチン、シチシン、ABT−594、DBO 83、SIB 1508Y、GTS 21、RJR 2403、A−85380、ロベリン、ABT−418、リヴァスチグミン、塩化アムベノニウム、ヂスチグミン、エプタスチグミン、イピダクリン、塩酸ドネペジル、タクリン、ガランタミン、メトリフォネート、フィソスチグミン、ピリドスチグミン、ネオスチグミン、及びエドロフォニウムから成る群から選ばれるコリン作動性剤又はそれらの異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグ
を含む組成物。
【請求項7】
シチコリン、アセチルコリン、ブトリルコリン、ピロカルピン、カルバコール、塩化ベタネコール、ムスカリン、N−(ヒドロキシメチル)−ニコチンアミド、グアニヂン、ラケシン、エピバチヂン、(S)−(−)ニコチン、シチシン、ABT−594、DBO 83、SIB 1508Y、GTS 21、RJR 2403、A−85380、ロベリン、ABT−418、リヴァスチグミン、塩化アムベノニウム、ヂスチグミン、エプタスチグミン、イピダクリン、塩酸ドネペジル、タクリン、ガランタミン、メトリフォネート、フィソスチグミン、ピリドスチグミン、ネオスチグミン、及びエドロフォニウムから成る群から選ばれるコリン作動性剤又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグ、及び2−[4−(4−フルオロフェニル)−5−[4−(メチルスルフォニル)フェニル]オキサゾール−2−イル]酢酸、[2−(2−クロロ−6−フルオロ−フェニルアミノ)−5−メチル−フェニル]−酢酸、及び[2−(2,4−ヂクロロ−6−エチル−3,5−ヂメチル−フェニルアミノ)−5−プロピル−フェニル]−酢酸から成る群から選ばれるシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤又はその異性体、医薬として許容される塩、エステル又はプロドラッグを含む組成物。
【請求項8】
上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は2−[4−(4−フルオロフェニル)−5−[4−(メチルスルフォニル)フェニル]オキサゾール−2−イル]酢酸である、及び上記コリン作動性剤は塩酸ドネペジルである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は2−[4−(4−フルオロフェニル)−5−[4−(メチルスルフォニル)フェニル]オキサゾール−2−イル]酢酸である、及び上記コリン作動性剤はタクリンである、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は[2−(2−クロロ−6−フルオロ−フェニルアミノ)−5−メチル−フェニル]−酢酸である、及び上記コリン作動性剤は塩酸ドネペジルである、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は[2−(2−クロロ−6−フルオロ−フェニルアミノ)−5−メチル−フェニル]−酢酸である、及び上記コリン作動性剤はタクリンである、請求項7に記載の組成物。
【請求項12】
上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は[2−(2,4−ヂクロロ−6−エチル−3,5−ヂメチル−フェニルアミノ)−5−プロピル−フェニル]−酢酸である、及び上記コリン作動性剤は塩酸ドネペジルである、請求項7に記載の組成物。
【請求項13】
上記シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は[2−(2,4−ヂクロロ−6−エチル−3,5−ヂメチル−フェニルアミノ)−5−プロピル−フェニル]−酢酸である、及び上記コリン作動性剤はタクリンである、請求項7に記載の組成物。
【請求項14】
上記卒中は出血性卒中である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
上記卒中は虚血性卒中である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2006−528245(P2006−528245A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533028(P2006−533028)
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2004/014988
【国際公開番号】WO2004/103357
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(303050964)ファルマシア コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】