説明

中枢神経系傷害を治療及び管理するための、免疫調節性化合物を使用した方法及び組成物

中枢神経系傷害/損傷及びそれに関連する症候群の治療、予防及び/又は管理方法を開示する。具体的な方法は、免疫調節化合物を単独で又は第2の活性剤と併用で投与することを含む。本発明用に好適な医薬組成物、単位剤形及びキットも開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1. 発明の分野)
本発明は、免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグを投与することを含む、中枢神経系傷害/損傷及びそれに関連する症候群の治療、予防及び/又は管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2. 中枢神経系傷害
中枢神経系(CNS)傷害/損傷は3つのカテゴリーに分類することができる。すなわち、(a)脳への機械的損傷が原因のCNS傷害/損傷、(b)虚血性卒中若しくは出血性卒中において起こりうる、又は低酸素症の結果として起こりうる脳への血液供給の低下が原因のCNS傷害/損傷、及び(c)外傷、感染又は毒性が原因の脊髄傷害に関連するCNS傷害/損傷である。
【0003】
外傷性脳傷害(TBI)は機械的損傷の1つの例であり、今日の米国においては、死亡及び生涯にわたる障害の主たる原因の1つとなっている(Greenwaldらの論文(Arch Phys. Med, Rehabil. 2003; 84 (3 Supp. 1): S3))。TBIの病態生理学は、一次性傷害と二次性傷害とに分けられる(同上、p. S4)。一次性傷害は衝撃時に発生するものであり、一方、二次性傷害は衝撃後に一次性傷害に対する身体の反応に続発するものである(同上)。一次性傷害と二次性傷害はそれぞれさらに局所型とびまん型に細分される(同上)。局所型傷害は接触性の力によって引き起こされる傾向があり、他方、びまん型傷害は非接触性の力、加速減速力、又は回転力によって引き起こされやすい(同上)。
【0004】
一次性傷害の具体的な種類としては、頭皮傷害、頭蓋骨折、頭蓋底骨折、振とう症、挫傷、頭蓋内出血、くも膜下出血、硬膜外血腫、硬膜下血腫、心室内出血、くも膜下出血、穿通性傷害、及びびまん性軸策傷害等が挙げられる。一次性局所性傷害は、脳皮質挫傷及び頭蓋内血腫によって引き起こされる(Greenwaldらの論文(p. S4))。挫傷は、通常、頭蓋の骨突出部位が直接傷害した後に発生する。一般的に患部は、眼窩領域と前側頭領域である(同上)。頭蓋内血腫は、硬膜外血腫、硬膜下血腫、及びくも膜下出血に分けられる(同上)。硬膜外血腫は、中硬膜動脈の破裂によって発生する(同上)。硬膜外血腫は、脳皮質領域で圧力が増し、局所性傷害を引き起こす(同上)。硬膜下血腫及びくも膜下出血は、それぞれの空間における架橋血管が破綻した結果起こる(同上)。両者とも、頭蓋内圧(ICP)の上昇により局所性傷害を引き起こす。
【0005】
びまん性軸策傷害(DAI)は、加速減速傷害及び回転傷害に関連する力によって引き起こされる(Greenwaldらの論文(p. S5))。この種の傷害は、自動車事故の高衝撃衝突において最も多く発生する。この傷害は接触性のスポーツによることもある(同上)。DAIは、大脳皮質の傍矢状部白質、脳梁、及び上大脳脚に隣接する橋中脳接合部などを含めた中心線の構造体に最も高い頻度で見られる、せん断力によって軸策が切断される軸策の傷害である。
【0006】
脳外傷後症候群は外傷性傷害に引き続き発症し得る。この症候群には、水頭症、意識障害、頭痛、偏頭痛、悪心、嘔吐、記憶喪失、めまい、複視、視力のぼけ、感情の不安定、睡眠障害、易刺激性、集中力低下、神経症、行動障害、認知障害、及びてんかんが含まれる。発作は、一般に挫傷、頭蓋陥没骨折及び重篤な頭部傷害に見られる。頭蓋内感染症は、また別の潜在的にあり得るTBIの合併症である。頭蓋底骨折又は脳脊髄液瘻がある場合には、感染症のリスクが高まる。また、患者がICPモニタリング用に脳室瘻造設術を受けていれば、脳室炎又は髄膜炎のいずれかの感染症のリスクが高まる。感染症の発生率は、穿通性脳傷害及び頭蓋開放陥没骨折において高くなる。
【0007】
CNS傷害/損傷のその他の原因としては、神経化学的変化及び細胞の変化、低血圧、低酸素、虚血、電解質平衡異常、脳潅流圧(CPP)の低下を伴うICPの亢進、並びにヘルニア形成のリスクが挙げられる(Greenwaldらの論文(p. S6))。脳のある領域への循環が急激に低下すると虚血が生じそれに応じて神経系の機能が低下する。卒中は出血性又は虚血性のいずれかに分類されるが、通常、虚弱、感覚障害又は言語障害などの局所性神経脱落の突然の発症と共に発現する。虚血性卒中では、血栓症、塞栓症及び低循環を含めて、その原因は種々雑多であるが、出血性卒中は実質性出血又はくも膜下出血のいずれかとされる。血流が低下するにつれて神経細胞は機能を停止し、血流量が18mL/100mg/分未満で不可逆的神経細胞虚血及び傷害が始まる。
【0008】
卒中による傷害に関与する細胞レベルのプロセスは、虚血カスケードと呼ばれる。グルコース及び酸素が神経細胞へ送達できなくなると、数秒から数分以内に細胞の虚血カスケードが開始する。このプロセスは、細胞の電気生理学的機能の停止から始まる。結果として生じる神経細胞及びグリア細胞の傷害によって、卒中後の数時間から数日のうちに浮腫が生じ、周辺の神経組織にさらなる傷害をもたらす。
理論に束縛されるのではないが、CNS傷害又は脊髄傷害によって、グリア細胞(マイクログリア又はアストロサイト)が活性化され、引き続きグルタミン酸塩だけでなくサイトカイン、ケモカイン及びその他の炎症のメディエイタが放出されることがある。
【0009】
脊髄傷害(SCI)は、正常な脊髄の運動、感覚又は自律機能に一時的又は永久的な変化をもたらすような脊髄の障害である。種々の国におけるSCIの年間発生率は、人口100万人当たり15〜40例に及ぶ(C.H. Tatorの論文(Brain Pathology 5:407-413 (1995)))。臨床研究及び実験的研究の両研究によって、脊髄が急性SCI後に一次性及び二次性の損傷を受けることが立証されている(同上、407)。一次性SCIは、機械的破壊、横断面切断、硬膜外の病理又は神経素子の伸延に起因する(同上)。この傷害は、通常脊椎の骨折及び/又は脱臼を伴って発生する。しかし、一次性SCIは、脊椎の骨折又は脱臼がなくても発生することがある。銃弾又は兵器による穿通性傷害も一次性SCIを引き起こすことがある(Burneyらの論文(Arch Surg 128(5): 596-9 (1993)))。より一般的には、変位した骨折片によって、穿通性の脊髄傷害又は脊髄神経部分傷害が引き起こされる。硬膜外病理もまた一次性SCIを引き起こすことがある。脊髄硬膜外血腫又は膿瘍は急性脊髄圧迫及び傷害を引き起こす。転移性疾患による脊髄圧迫は、腫瘍性疾患に伴う一般的な緊急事態である。脊柱の屈曲及び/又は伸展を伴う又は伴わない縦方向の伸延によって、脊椎骨折又は脱臼を伴わない一次性SCIが生じることもある。
【0010】
二次性SCIの病態生理学は、傷害直後数日間にわたり進行する多くの細胞及び分子の事象に関わる(C.H. Tatorの論文(Brain Pathology 5:407-413 (1995)))。二次性SCIの最も重要な原因は、動脈破裂、動脈血栓症、及びショックによる低循環によって引き起こされる脊髄の血管傷害である。SCIは、脊髄動脈への損傷又は侵害による虚血によって持続することがある。虚血が原因のSCIは、大動脈の血流が一時的に止められるような外科手術の間に発生することがある。
【0011】
脊髄傷害は感染症によって引き起こされることもある。脊柱管に関係する感染症としては、硬膜外膿瘍(硬膜上腔内の感染)、髄膜炎(髄膜の感染)、硬膜下膿瘍(硬膜下腔の感染)、及び脊髄内膿瘍(脊髄内の感染)が含まれる。感染のメカニズムには、脊椎外の感染病巣からのリンパ血行性進展、隣接した感染病巣からの近接性進展、直接接種(すなわち、穿通性外傷又は神経手術後)、及び潜因性のメカニズム(すなわち、立証された脊椎外の感染病巣はない)が含まれる。ブドウ球菌及び連鎖球菌などの細菌は、これらの感染症の最も一般的な原因微生物である。しかし、感染症は、ウイルス性若しくは真菌性であることもあり、又は嚢虫症、マイコバクテリウム・ツベルクローシス、リステリア・モノサイトゲネス、トキソプラズマ・ゴンディ若しくはその他の寄生生物によって引き起こされることもある。最初に、細菌巣の領域が多形核性細胞で浸潤され、その結果化膿性脊髄炎に至る。これが、中心性壊死及び液化に発展し、長い脊髄路に沿って進展する。この感染プロセスの末梢においては、線維芽細胞が増殖し、中心性化膿領域が線維性肉芽組織によって被包される。最もよく見られる患部は、胸部脊髄背部である。
【0012】
脊髄傷害は毒性によって引き起こされることもある(Tatorの論文、p. 408-9)。脊髄傷害において最も有力な毒性の1つは、興奮性アミノ酸神経伝達物質の蓄積及びそれに続いて起こる傷害である。グルタミン酸誘発性興奮毒性は、細胞内カルシウム濃度を上昇させる(同上)。細胞内カルシウム濃度の上昇の結果として、カルシウム依存性プロテアーゼ又はリパーゼが活性化し、神経フィラメントを含めた細胞骨格成分の崩壊及び細胞膜の溶解によって、さらなる損傷が引き起こされる(同上)。アラキドン酸、及びプロスタグランジンなどのエイコサノイドの過剰産生は、脂質過酸化及び酸素フリーラジカルに関係している可能性がある(同上)。傷害した神経細胞膜からの血管作用性エイコサノイドの放出の結果、血管痙攣が誘導されることにより進行性外傷後虚血が引き起こされることがある(同上)。内因性オピオイドも、局所循環若しくは全身循環に影響を及ぼすことによって、又は傷害した脊髄に直接影響を及ぼすことによって二次性傷害のプロセスに関与している可能性がある(同上)。
【0013】
高濃度の細胞内カルシウムは、様々な仕方で神経毒性を誘発するらしい。脊髄傷害後には、細胞外区画と細胞内区画の間に電解質の主要な移動がある(Tatorの論文、p. 409)。過量の細胞内遊離カルシウムイオンは、あらゆる神経傷害の病因の媒介に重要な役割を果たしているが、虚血性及び外傷性傷害の場合にとりわけ重要な役割を果たしている(同上、p. 410)。外傷後、例えば、破壊された細胞膜を介して、又は脱分極及び電位感受性カルシウムチャネルを介した侵入によって、又はグルタミン酸に活性化された受容体媒介カルシウムチャネルを介してなど、カルシウムは様々な仕方で神経細胞内に移動することができる(同上)。二次性虚血もまた、グルタミン酸の放出を介して細胞内カルシウム濃度を上昇させることがある(同上)。
【0014】
脊髄傷害に伴って重大な進行性浮腫が起きることがある(Tatorの論文、p. 410)。浮腫それ自体が傷害性であるのかどうか、また、虚血若しくはグルタミン酸毒性などの別の傷害のメカニズムの副現象であるのかどうかは分かっていない(同上)。実験モデル及び臨床例のいずれにおいても、浮腫は、脊髄において傷害部位からかなり離れた所まで頭の方向及び尾の方向に伸展することがある(同上)。
【0015】
米国脊椎傷害学会機能障害スケール(American Spinal Injury Association (ASIA) Impairment Scale)によれば、SCIは傷害の程度によって、完全SCI又は不完全SCIに分けられる。完全SCIでは、最下部の仙骨分節に感覚及び運動機能が保存されていない(Watersらの論文(Paraplegia 29(9): 573-81 (1991)))。不完全SCIの場合、最下部の仙骨分節を含めて傷害部の下位では感覚及び運動機能が保存される(Watersらの論文(Archives of Physical Medicine and Rehabilitation 75(3): 306-11 (1994)))。不完全脊髄障害はより完全な障害に発展する可能性がある。一般的に、傷害レベルは、発生当初から数時間から数日の間に、脊髄レベルで1〜2レベル高くなる(同上)。
【0016】
SCIのその他の類型としては、脊椎中心部症候群、ブラウンセカール症候群、脊椎前部症候群、脊椎円錐部症候群及び馬尾症候群が挙げられる。脊椎中心部症候群はしばしば頚部傷害と関連しており、仙骨感覚は保持された状態で下肢に比べて上肢に激しい脱力を生じる。ブラウンセカール症候群は脊髄半側障害を伴い、対側性の痛覚及び温度覚麻痺と共に比較的激しい同側性固有受容感覚麻痺及び運動麻痺を引き起こす。脊椎前部症候群は、固有受容感覚は保持されるが、可変の運動機能消失並びに痛覚及び温度覚麻痺を引き起こすような障害に関連することが多い。脊椎円錐部症候群は、仙骨管及び腰部神経根の傷害に関連する。この症候群は、仙骨分節の反射(例えば、球海綿体反射及び排尿反射)がごくたまに保存されることがあるが、膀胱、腸及び下肢の反射消失を特徴とする。馬尾症候群は、脊柱管の腰仙神経根の傷害が原因であり、膀胱、腸及び下肢の反射消失を生じる。
【0017】
SCIが原因で神経原性ショックを発生することがある(C.H.Tatorの論文(Brain Pathology 5:407-413 (1995)))。神経原性ショックは、急性SCIにおける自律神経機能障害及び交感神経系調節の中断が原因の、低血圧、徐脈、末梢血管拡張という血行動態の三徴候のことを言い、脊髄性ショック及び血液量減少性ショックと区別される。血液量減少性ショックは、頻脈と関連する傾向がある。脊髄性ショックは、自律神経機能障害に関連する特定の部位以下での、反射及び直腸の正常な状態を含めた全神経系機能の完全な消失と定義される。カテコールアミンの放出により初期の血圧上昇が見られ、次いで血圧が低下する。腸及び膀胱を含めて弛緩麻痺が見られ、時に持続性勃起が発現することがある。これらの症候群は、傷害部の下位で反射弓が再び機能し始めるまで数時間から数日間続く傾向がある。
【0018】
現行のSCI治療は、このような障害を有する患者の運動機能及び感覚を改善することを目指している。現在、この障害の治療に一貫して有効であるような薬剤はない。コルチコステロイドが、この治療において頼みの綱である。メチルプレドニゾロンなどのグルココルチコイドが、急性SCIの二次性影響を低減すると考えられており、非穿通性の急性SCIに高用量のメチルプレドニゾロンを使用することが北米においては医療の標準となっている。しかし、その結果の有効性については疑問の余地がある(Nesathuraisらの論文(J Trauma 1998 Dec; 45(6): 1088-93))。このように、SCI及びそれに関連する症候群を治療することができるような新規方法及び化合物が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
(3. 発明の要旨)
本発明は、中枢神経系(CNS)傷害/損傷及びそれに関連する症候群の治療及び予防方法であって、治療上又は予防上有効量の免疫調節性化合物又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグを、そのような治療又は予防を必要としている患者に投与することを含む方法を包含する。CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群の例としては、一次性脳傷害、二次性脳傷害、外傷性脳傷害、局所性脳傷害、びまん性軸策傷害、頭部傷害、振とう症、振とう後症候群、脳挫傷及び脳裂傷、硬膜下血腫、硬膜外血腫、外傷後てんかん、慢性植物状態、完全SCI、不完全SCI、急性SCI、亜急性SCI、慢性SCI、脊椎中心部症候群、ブラウンセカール症候群、脊椎前部症候群、脊椎円錐部症候群、馬尾症候群、神経原性ショック、脊髄性ショック、意識障害、頭痛、悪心、嘔吐、記憶喪失、めまい、複視、視力のぼけ、感情の不安定、睡眠障害、易刺激性、集中力低下、神経症、行動障害、認知障害、及び発作などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明はまた、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群の管理(それらの症状の寛解期間を延ばす)方法であって、予防上有効量の免疫調節性化合物又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグを、そのような管理を必要としている患者に投与することを含む方法を包含する。この方法のいずれも特定の投薬又は投薬処方を含む。
【0021】
本発明はまた、1つ又は複数の免疫調節性化合物又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグを含む、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群の治療、予防及び/又は管理用に好適な医薬組成物、単位剤形及びキットも包含する。
後に詳しく説明する免疫調節性化合物すなわち本発明の化合物は、小さな有機分子、すなわち分子量が1,000g/モル未満の有機分子である。好ましくは、これら化合物はPDE4の活性及びTNF-αの産生を阻害する。
【0022】
本発明の個々の実施態様においては、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群を治療、予防、又は管理するために、1つの免疫調節性化合物を使用、又は投与、又は1つ若しくは複数の第2の活性剤と配合する。このような第2の活性剤の例としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)及びステロイドを含めた抗炎症剤、cAMPアナログ、利尿剤、バルビツール酸誘導体、免疫調節剤、免疫抑制剤、降圧剤、抗痙攣剤、線維素溶解剤、抗精神病剤、抗うつ剤、ベンゾジアゼピン、ブスピロン、刺激剤、アマンタジン、並びにその他CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群に使われる標準的治療薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
(4. 発明の詳細な説明)
本発明の第1の実施態様は、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群の治療又は予防方法であって、治療上又は予防上有効量の免疫調節性化合物又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグを、そのような治療又は予防を必要としている患者に投与することを含む治療又は予防方法を包含する。CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群の例としては、一次性脳傷害、二次性脳傷害、外傷性脳傷害、局所性脳傷害、びまん性軸策傷害、頭部傷害、振とう症、振とう後症候群、脳挫傷及び脳裂傷、硬膜下血腫、硬膜外血腫、外傷後てんかん、慢性植物状態、完全SCI、不完全SCI、急性SCI、亜急性SCI、慢性SCI、脊椎中心部症候群、ブラウンセカール症候群、脊椎前部症候群、脊椎円錐部症候群、馬尾症候群、神経原性ショック、脊髄性ショック、意識障害、頭痛、悪心、嘔吐、記憶喪失、めまい、複視、視力のぼけ、感情の不安定、睡眠障害、易刺激性、集中力低下、神経症、行動障害、認知障害、及び発作などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の別の実施態様は、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群の管理方法であって、予防上有効量の免疫調節性化合物又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグを、そのような管理を必要としている患者に投与することを含む、管理方法を包含する。
【0025】
本発明の別の実施態様は、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群の治療方法、予防方法及び/又は管理方法であって、治療上又は予防上有効量の免疫調節性化合物又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグと、治療上又は予防上有効量の第2の活性剤とを、そのような治療、予防及び/又は管理を必要としている患者に投与することを含む治療、予防及び/又は管理方法を包含する。理論に束縛されるのではないが、ある種の免疫調節性化合物とCNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群に従来使用されている作用剤とが、それら疾患の治療又は管理において、補助的又は相助的に作用し得ると考えられている。また、このような作用剤を併用すると、ある種の免疫調節性化合物に付随する有害作用を軽減又は取り除くことができ、それによって患者に免疫調節性化合物をより大量に投与することが可能になり及び/又は患者のコンプライアンスが向上するとも考えられている。さらに、ある種の免疫調節性化合物は一部の従来使用されている作用剤に伴う有害作用を軽減又は取り除くことができ、それによって患者にそのような作用剤をより大量に投与することが可能になり及び/又は患者のコンプライアンスが向上するとも考えられている。
【0026】
本発明の別の実施態様は、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群を患っている患者の、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群用の従来の治療薬を投与したことに伴う有害作用を、返転させる、軽減する又は回避する方法であって、治療上又は予防上有効量の免疫調節性化合物又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグを、そのような返転、軽減又は回避を必要としている患者に投与することを含む方法を包含する。
【0027】
本発明のまた別の実施態様は、免疫調節性化合物又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグと、医薬として許容し得る担体、希釈剤又は賦形剤とを含む医薬組成物であって、非経口又は経口投与され、その量がCNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群の治療若しくは予防に十分な量である、又はそれら症候群の症状若しくは進行の軽減に十分な量であるような医薬組成物を包含する。
本発明はまた、免疫調節性化合物又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグを含む単位剤形も包含する。
【0028】
本発明はまた、免疫調節性化合物又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグと、第2の活性剤とを含むキットも包含する。このような第2の活性剤の例としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)及びグルココルチコイドなどのステロイドを含めた抗炎症剤、cAMPアナログ、利尿剤、バルビツール酸誘導体、免疫調節剤、免疫抑制剤、降圧剤、抗痙攣剤、線維素溶解剤、抗精神病剤、抗うつ剤、ベンゾジアゼピン、ブスピロン、刺激剤、アマンタジン、並びにその他CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群の罹患者に使われる、既知の又は従来の治療薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
4.1 免疫調節性化合物
本発明の化合物は、購入することもできるし、或いはまた本明細書に開示されている特許又は特許広報に記載の方法に従って調製することもできる。また、光学的に純粋な組成物を不斉合成することもできるし、或いはまた知られている分割剤若しくはキラルカラムとその他の標準的有機合成化学の技術を使って分割することもできる。本発明で使用される化合物は、ラセミ体であるか、ステレオマー的に富んでいるか又はステレオマー的に純粋な免疫調節性化合物、並びに医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、立体異性体及びプロドラッグを含んでいてよい。
【0030】
本発明で使用される好ましい化合物は、分子量が約1,000g/mol未満の有機低分子であって、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖又はその他の高分子ではない。
本明細書で使われるように、特に記載のない限り、用語「免疫調節性化合物」及び「IMiDs(商標)」(Celgene Corporation社製)は、TNF-α、LPS誘発単球IL 1β及びIL 12、の産生を著しく阻害し、またIL 6の産生を一部阻害する有機低分子を包含する。具体的な免疫調節性化合物については後に記載する。
【0031】
TNF-αは、急性炎症時に、マクロファージ及び単球によって産生される炎症性サイトカインである。TNF-αは、細胞内の多様なシグナル伝達事象を担っている。理論に束縛されるのではないが、本発明の免疫調節性化合物が発揮する生物学的効果の1つは、TNF-α合成の低減である。本発明の免疫調節性化合物は、TNF-α mRNAの分解を亢進する。
【0032】
さらに、理論に束縛されるのではないが、本発明に使用される免疫調節性化合物は、T細胞の有力な共刺激分子であって、細胞増殖を用量依存的に劇的に高めることができる。本発明の免疫調節性化合物はまた、CD4+T細胞サブセットに対してよりもCD8+T細胞サブセットに対してより大きな共刺激効果を発揮することができる。さらに、同化合物は、好ましくは、抗炎症特性を有し、効率的にT細胞を共刺激する。また、特定の理論に束縛されるのではないが、本発明に使用される免疫調節性化合物は、サイトカインによる活性化を介して間接的に、また直接的にナチュラルキラー(「NK」)細胞に作用することができ、NK細胞の、IFN-γ(ただしこれに限定されない)などの有益なサイトカインの産生能を高める。
【0033】
免疫調節性化合物の具体例としては、例えば米国特許第5,929,117号に記載されている置換されているスチレンのシアノ誘導体及びカルボキシ誘導体;例えば米国特許第5,874,448号及び同第5,955,476号に記載されている1-オキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリン及び1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリン;米国特許第5,798,368号に記載されている四置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリン;例えば米国特許第5,635,517号、同第6,476,052号、同第6,555,554号及び同第6,403,613号に記載されているものを含む(ただしこれに限定されない)、1-オキソ及び1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリン(例えば、サリドマイドの4-メチル誘導体);例えば米国特許第6,380,239号に記載されているインドリン環の第4位又は第5位で置換されている1-オキソ及び1,3-ジオキソインドリン(例えば、4-(4-アミノ-1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)-4-カルバモイルブタン酸);例えば米国特許第6,458,810号に記載されている第2位が2,6-ジオキソ-3-ヒドロキシピペリジン-5-イルで置換されているイソインドリン-1-オン及びイソインドリン-1,3-ジオン(例えば、2-(2,6-ジオキソ-3-ヒドロキシ-5-フルオロピペリジン-5-イル)-4-アミノイソインドリン-1-オン);米国特許第5,698,579号及び同第5,877,200号に記載されている非ポリペプチド環状アミド類;アミノサリドマイド、並びにアミノサリドマイドのアナログ、加水分解物、代謝物、誘導体及び前駆体、並びに例えば米国特許第6,281,230号及び同第6,316,471号に記載されている置換されている2-(2,6-ジオキシピペリジン-3-イル)フタルイミド及び置換されている2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドール;並びに2001年10月5日出願の米国特許出願第09/972,487号、2001年12月21日出願の米国特許出願第10/032,286号及び国際特許出願第PCT/US01/50401号(国際公開WO02/059106)に記載されているイソインドール-イミド化合物が挙げられるが、これに限定されない。本明細書で確認した各特許及び特許出願の全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。免疫調節性化合物に、サリドマイドは含まれない。
【0034】
本発明のその他の具体的な免疫調節性化合物の例としては、参照によって本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許第5,635,517号に記載されているベンゾ環においてアミノで置換されている1-オキソ-及び1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドリンが挙げられるが、これに限定されない。これらの化合物は下記構造Iを有する:
【化1】

(式中、XとYのうちの一方はC=Oであり、XとYのうちの他方はC=O又はCH2であり、R2は水素又は低級アルキル、特にメチルである。)。具体的な免疫調節性化合物の例としては:
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン;
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリン;
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-6-アミノイソインドリン;
1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-7-アミノイソインドリン;
1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-アミノイソインドリン;及び
1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-5-アミノイソインドリンが挙げられるが、これに限定されない。
【0035】
本発明のその他の具体的な免疫調節性化合物は、それぞれ参照によって本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許第6,281,230号、同第6,316,471号、同第6,335,349号及び同第6,476,052号、並びに国際特許出願第PCT/US97/13375号(国際公開WO98/03502)に記載されている、置換されている2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)フタルイミド及び置換されている2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドールの類の化合物である。代表的な化合物は下式で表される:
【化2】

(式中、
XとYのうちの一方はC=Oであり、XとYのうちの他方はC=O又はCH2であり;
(i)R1、R2、R3及びR4はそれぞれ互いに独立してハロ、炭素原子数1から4のアルキル、若しくは炭素原子数1から4のアルコキシであるか、又は(ii)R1、R2、R3及びR4の1つは-NHR5であり、R1、R2、R3及びR4の残りは水素であり;
R5は水素又は炭素原子数1から8のアルキルであり;
R6は水素又は炭素原子数1から8のアルキル、ベンジル若しくはハロであり;
ただし、XとYの両方がC=Oであり、(i)R1、R2、R3及びR4のそれぞれがフルオロであるか、又は(ii)R1、R2、R3又はR4の1つがアミノである場合、R6は水素以外の基である。)。
【0036】
この類を代表する化合物は下式で表される:
【化3】

(式中、R1は水素又はメチルである。)。別の実施態様においては、本発明は、これら化合物のエナンチオマー的に純粋な形態(例えば、光学的に純粋な(R)又は(S)鏡像異性体)を使用することを包含する。
【0037】
本発明のその他の具体的な免疫調節性化合物は、それぞれ参照によって本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許出願第2003/0096841号、同第2003/0045552号、及び国際特許出願第PCT/US01/50401号(国際公開WO02/059106)に記載されている、イソインドール-イミドの類の化合物である。代表的な化合物は下式IIで表される化合物、並びに医薬として許容し得るその塩、水和物、溶媒和物、クラスレート、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、及びその立体異性体の混合物である:
【化4】

(式中、
XとYのうちの一方はC=Oであり、他方はCH2又はC=Oであり;
R1はH、(C1〜C8)アルキル、(C3〜C7)シクロアルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0〜C4)アルキル-(C1〜C6)ヘテロシクロアルキル、(C0〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロアリール、C(O)R3、C(S)R3、C(O)OR4、(C1〜C8)アルキル-N(R6)2、(C1〜C8)アルキル-OR5、(C1〜C8)アルキル-C(O)OR5、C(O)NHR3、C(S)NHR3、C(O)NR3R3'、C(S)NR3R3'又は(C1〜C8)アルキル-O(CO)R5であり;
R2はH、F、ベンジル、(C1〜C8)アルキル、(C2〜C8)アルケニル又は(C2〜C8)アルキニルであり;
R3及びR3'は独立して(C1〜C8)アルキル、(C3〜C7)シクロアルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0〜C4)アルキル-(C1〜C6)ヘテロシクロアルキル、(C0〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロアリール、(C0〜C8)アルキル-N(R6)2、(C1〜C8)アルキル-OR5、(C1〜C8)アルキル-C(O)OR5、(C1〜C8)アルキル-O(CO)R5又はC(O)OR5であり;
R4は(C1〜C8)アルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、(C1〜C4)アルキル-OR5、ベンジル、アリール、(C0〜C4)アルキル-(C1〜C6)ヘテロシクロアルキル又は(C0〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロアリールであり;
R5は(C1〜C8)アルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、ベンジル、アリール又は(C2〜C5)ヘテロアリールであり;
R6は出現するごとに、独立してH、(C1〜C8)アルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C2〜C5)ヘテロアリール若しくは(C0〜C8)アルキル-C(O)O-R5であるか、又はR6基は互いに結合してヘテロシクロアルキル基を形成することができ;
nは0又は1であり;及び
符号*は不斉炭素中心を表す。)。
【0038】
式IIで表される具体的な化合物において、nが0の場合、R1は(C3〜C7)シクロアルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0〜C4)アルキル-(C1〜C6)ヘテロシクロアルキル、(C0〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロアリール、C(O)R3、C(O)OR4、(C1〜C8)アルキル-N(R6)2、(C1〜C8)アルキル-OR5、(C1〜C8)アルキル-C(O)OR5、C(S)NHR3又は(C1〜C8)アルキル-O(CO)R5であり;
R2はH又は(C1〜C8)アルキルであり;
R3は(C1〜C8)アルキル、(C3〜C7)シクロアルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0〜C4)アルキル-(C1〜C6)ヘテロシクロアルキル、(C0〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロアリール、(C5〜C8)アルキル-N(R6)2、(C0〜C8)アルキル-NH-C(O)O-R5、(C1〜C8)アルキル-OR5、(C1〜C8)アルキル-C(O)OR5、(C1〜C8)アルキル-O(CO)R5又はC(O)OR5であり、その他の可変文字は先に定義した通りである。
【0039】
式IIで表される他の具体的な化合物において、R2はH又は(C1〜C4)アルキルである。
式IIで表される他の具体的な化合物において、R1は(C1〜C8)アルキル又はベンジルである。
式IIで表される他の具体的な化合物において、R1はH、(C1〜C8)アルキル、ベンジル、CH2OCH3、CH2CH2OCH3又は下記式である:
【化5】


【0040】
式IIで表される化合物の別の実施態様において、R1は下記式である:
【化6】

(式中、
QはO又はSであり、R7は出現するごとに、独立してH、(C1〜C8)アルキル、(C3〜C7)シクロアルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、ベンジル、アリール、ハロゲン、(C0〜C4)アルキル-(C1〜C6)ヘテロシクロアルキル、(C0〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロアリール、(C0〜C8)アルキル-N(R6)2、(C1〜C8)アルキル-OR5、(C1〜C8)アルキル-C(O)OR5、(C1〜C8)アルキル-O(CO)R5若しくはC(O)OR5であるか、又は隣接して出現するR7が一緒になって二環式アルキル若しくはアリール環を形成することができる。)。
【0041】
式IIで表される他の具体的な化合物において、R1はC(O)R3である。
式IIで表される他の具体的な化合物において、R3は(C0〜C4)アルキル-(C2〜C3)ヘテロアリール、(C1〜C8)アルキル、アリール又は(C0〜C4)アルキル-OR5である。
式IIで表される他の具体的な化合物において、ヘテロアリールは、ピリジル、フリル又はチエニルである。
式IIで表される他の具体的な化合物において、R1はC(O)OR4である。
式IIで表される他の具体的な化合物において、C(O)NHC(O)のHは、(C1〜C4)アルキル、アリール又はベンジルで置換することができる。
【0042】
この類の化合物の例としては、さらに[2-(2,6-ジオキソ-ピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-4-イルメチル]-アミド;(2-(2,6-ジオキソ-ピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-4-イルメチル)-カルバミン酸tert-ブチルエステル;4-(アミノメチル)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン;N-(2-(2,6-ジオキソ-ピペリジン-3-イル)-1,3-ジオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-4-イルメチル)-アセトアミド;N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)メチル}シクロプロピル-カルボキサミド;2-クロロ-N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)メチル}アセトアミド;N-(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)-3-ピリジルカルボキサミド;3-{1-オキソ-4-(ベンジルアミノ)イソインドリン-2-イル}ピペリジン-2,6-ジオン;2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-4-(ベンジルアミノ)イソインドリン-1,3-ジオン;N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)メチル}プロパンアミド;N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)メチル}-3-ピリジルカルボキサミド;N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)メチル}ヘプタンアミド;N-{(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)メチル}-2-フリルカルボキサミド;{N-(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)カルバモイル}メチルアセテート;N-(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)ペンタンアミド;N-(2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)-2-チエニルカルボキサミド;N-{{2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル]メチル}(ブチルアミノ)カルボキサミド;N-{[2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル]メチル}(オクチルアミノ)カルボキサミド;及びN-{[2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル]メチル}(ベンジルアミノ)カルボキサミドが挙げられるが、これに限定されない。
【0043】
本発明のその他の具体的免疫調節性化合物は、それぞれ参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2002/0045643号、国際公開WO98/54170及び米国特許第6,395,754号に記載されている、イソインドール-イミドの類の化合物である。代表的な化合物は下式IIIで表される化合物、並びに医薬として許容し得るその塩、水和物、溶媒和物、クラスレート、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、及びその立体異性体の混合物である:
【化7】

(式中、
XとYのうちの一方はC=Oであり、他方はCH2又はC=Oであり;
RはH又はCH2OCOR'であり;
(i)R1、R2、R3又はR4はそれぞれ互いに独立してハロ、炭素原子数1から4のアルキル、若しくは炭素原子数1から4のアルコキシであるか、又は(ii)R1、R2、R3又はR4の1つはニトロ若しくは-NHR5であり、R1、R2、R3又はR4の残りは水素であり;
R5は水素又は炭素原子数1から8のアルキルであり;
R6は水素又は炭素原子数1から8のアルキル、ベンゾ、クロロ若しくはフルオロであり;
R'はR7-CHR10-N(R8R9)であり;
R7はm-フェニレン又はp-フェニレン又は-(CnH2n)-であり、ここでnは0から4のいずれかの値であり;
R8及びR9はそれぞれ互いに独立して水素若しくは炭素原子数1から8のアルキルであるか、又はR8及びR9は一緒になってテトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン若しくは-CH2CH2X1CH2CH2-であり、ここでX1は-O-、-S-若しくは-NH-であり;
R10は水素、炭素原子数1から8のアルキル又はフェニルであり;
符号*は不斉炭素中心を表す。)。
【0044】
その他の代表的な化合物は下式で表される:
【化8】

(式中、
XとYのうちの一方はC=Oであり、XとYのうちの他方はC=O又はCH2であり;
(i)R1、R2、R3又はR4はそれぞれ互いに独立してハロ、炭素原子数1から4のアルキル、若しくは炭素原子数1から4のアルコキシであるか、又は(ii)R1、R2、R3及びR4の1つは-NHR5であり、R1、R2、R3及びR4の残りは水素であり;
R5は水素又は炭素原子数1から8のアルキルであり;
R6は水素、炭素原子数1から8のアルキル、ベンゾ、クロロ若しくはフルオロであり;
R7はm-フェニレン又はp-フェニレン又は-(CnH2n)-であり、ここでnは0から4のいずれかの値であり;
R8及びR9はそれぞれ互いに独立して水素若しくは炭素原子数1から8のアルキルであるか、又はR8及びR9は一緒になってテトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン若しくは-CH2CH2X1CH2CH2-であり、ここでX1は-O-、-S-若しくは-NH-であり;
R10は水素、炭素原子数1から8のアルキル又はフェニルである。)。
【0045】
その他の代表的な化合物は下式で表される:
【化9】

(式中、
XとYのうちの一方はC=Oであり、XとYのうちの他方はC=O又はCH2であり;
R1、R2、R3又はR4はそれぞれ互いに独立してハロ、炭素原子数1から4のアルキル、若しくは炭素原子数1から4のアルコキシであるか、又は(ii)R1、R2、R3及びR4の1つはニトロ若しくは保護されたアミノであり、R1、R2、R3及びR4の残りは水素であり;
R6は水素、炭素原子数1から8のアルキル、ベンゾ、クロロ又はフルオロである。)。
【0046】
その他の代表的な化合物は下式で表される:
【化10】

(式中、
XとYのうちの一方はC=Oであり、XとYのうちの他方はC=O又はCH2であり;
(i)R1、R2、R3及びR4はそれぞれ互いに独立してハロ、炭素原子数1から4のアルキル、若しくは炭素原子数1から4のアルコキシであるか、又は(ii)R1、R2、R3及びR4の1つは-NHR5であり、R1、R2、R3及びR4の残りは水素であり;
R5は水素、炭素原子数1から8のアルキル又はCO-R7-CH(R10)NR8R9であり、ここでR7、R8、R9及びR10はそれぞれ本明細書で定義した通りであり;
R6は炭素原子数1から8のアルキル、ベンゾ、クロロ又はフルオロである。)。
【0047】
前記化合物の具体例は下式で表される化合物である:
【化11】

(式中、
XとYのうちの一方はC=Oであり、XとYのうちの他方はC=O又はCH2であり;
R6は水素、炭素原子数1から8のアルキル、ベンジル、クロロ又はフルオロであり;
R7はm-フェニレン、p-フェニレン又は-(CH2n)-であり、ここでnは0から4のいずれかの値であり;
R8及びR9はそれぞれ互いに独立して水素若しくは炭素原子数1から8のアルキルであるか、又はR8及びR9は一緒になってテトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン若しくは-CH2CH2X1CH2CH2-であり、ここでX1は-O-、-S-若しくは-NH-であり;
R10は水素、炭素原子数1から8のアルキル又はフェニルである。)。
【0048】
本発明の好ましい免疫調節性化合物は、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン及び3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンである。これら化合物は標準的な合成方法によって得ることができる(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,635,517号参照)。これら化合物は、ニュージャージー州WarrenのCelgene Corporation社から入手できる。4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンは、下記の化学構造を有する:
【化12】


【0049】
化合物3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンは、下記の化学構造を有する:
【化13】


【0050】
別の実施態様においては、本発明の具体的な免疫調節性化合物は、いずれも参照によって本明細書に組み込まれる、2003年9月4日提出の米国特許仮出願第60/499,723号及びそれに対応する2004年9月3日提出の米国特許出願第10/934,863号に記載されている、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの多形相、例えばA、B、C、D、E、F、G及びH型などを包含する。例えば、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのA型は、非水性溶媒系から得ることができる非溶媒和結晶性物質である。A型は、2θが約8、14.5、16、17.5、20.5、24及び26度で有意なピークを含む粉末X線回折パターンを有し、示差走査熱量分析により測定される最高融点は約270℃である。A型は、わずかに吸湿性であるか又は吸湿性でなく、また、これまで発見されている3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの無水多形相の中で熱力学的に最も安定な型のようである。
【0051】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのB型は、ヘキサン、トルエン及び水などを含めた(これに限定されないが)種々の溶媒系から得ることができる半水和結晶性物質である。B型は、2θが約16、18、22及び27度で有意なピークを含む粉末X線回折パターンを有し、またDSC曲線によれば約146及び268℃に吸熱を有するが、この吸熱はホットステージ顕微鏡検査により脱水和及び融解と確認されている。相互変換研究によれば、B型は、水性溶媒系においてはE型に変換し、アセトン及びその他の無水系においては他の型に変換することが明らかになっている。
【0052】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのC型は、アセトンなど(これに限定されないが)の溶媒から得ることができる半溶媒和結晶性物質である。C型は、2θが約15.5及び25度で有意なピークを含む粉末X線回折パターンを有し、示差走査熱量分析により測定される最高融点は約269℃である。C型は、約85%RHを下回る湿度では吸湿性でないが、相対湿度が高いとB型に変換することがある。
【0053】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのD型は、アセトニトリルと水の混合物から生成される溶媒和結晶性多形相である。D型は、2θが約27及び28度で有意なピークを含む粉末X線回折パターンを有し、示差走査熱量分析により測定される最高融点は約270℃である。D型は、わずかに吸湿性であるか又は吸湿性でないが、通常、相対湿度が高い状態でストレスを受けるとB型に変換する。
【0054】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのE型は、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンを水中でスラリー化し、次いで、アセトン:水の比が約9:1の溶媒系で3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンをゆっくり蒸発させることによって得ることができる二水和、結晶性物質である。E型は、2θが約20、24.5及び29度で有意なピークを含む粉末X線回折パターンを有し、示差走査熱量分析により測定される最高融点は約269℃である。E型は、アセトン溶媒系においてはC型に変換し、THF溶媒系においてはG型に変換することがある。水性溶媒系において、E型は最も安定した型のようである。E型に対して実施した脱溶媒和実験によって、約125℃で約5分間加熱すると、E型がB型に変換することがあることが明らかになっている。175℃で約5分間加熱すると、B型がF型に変換することがある。
【0055】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのF型は、E型の脱水和によって得ることができる非溶媒和、結晶性物質である。F型は、2θが約19、19.5及び25度で有意なピークを含む粉末X線回折パターンを有し、示差走査熱量分析により測定される最高融点は約269℃である。
【0056】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのG型は、B型及びE型を、テトラヒドロフラン(THF)など(これに限定されないが)の溶媒中でスラリー化することによって得ることができる非溶媒和、結晶性物質である。G型は、2θが約21、23及び24.5度で有意なピークを含む粉末X線回折パターンを有し、示差走査熱量分析により測定される最高融点は約267℃である。
【0057】
3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのH型は、E型を0%相対湿度に曝露することによって得ることができる一部水和した(約0.25モル)、結晶性物質である。H型は、2θが約15、26及び31度で有意なピークを含む粉末X線回折パターンを有し、示差走査熱量分析により測定される最高融点は約269℃である。
【0058】
本発明のその他の具体的免疫調節性化合物としては、それぞれ参照によって本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許第5,874,448号及び同第5,955,476号に記載されている、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリン及び1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソ-3-フルオロピペリジン-3-イル)イソインドリンが挙げられるが、これに限定されない。代表的な化合物は下式で表される化合物である:
【化14】

(式中、
Yは酸素又はH2であり;
R1、R2、R3及びR4はそれぞれ互いに独立して水素、ハロ、炭素原子数1から4のアルキル、炭素原子数1から4のアルコキシ、又はアミノである。)。
【0059】
本発明のその他の具体的免疫調節性化合物としては、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第5,798,368号に記載されている四置換2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-1-オキソイソインドリンが挙げられるが、これに限定されない。代表的な化合物は下式で表される化合物である:
【化15】

(式中、
R1、R2、R3及びR4はそれぞれ互いに独立してハロ、炭素原子数1から4のアルキル、又は炭素原子数1から4のアルコキシである。)。
【0060】
本発明のその他の具体的免疫調節性化合物としては、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,403,613号に記載されている、1-オキソ及び1,3-ジオキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3イル)イソインドリンが挙げられるが、これに限定されない。代表的な化合物は下式で表される化合物である:
【化16】

(式中、
Yは酸素又はH2であり;
R1とR2のうち第1の基はハロ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノ又はカルバモイルであり、R1とR2のうち第2の基は前記第1の基から独立して水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、シアノ又はカルバモイルであり;
R3は水素、アルキル、又はベンジルである。)。
【0061】
前記化合物の具体例は下式で表される化合物である:
【化17】

(式中、
R1とR2のうち第1の基はハロ、炭素原子数1から4のアルキル、炭素原子数1から4のアルコキシ、各アルキルが炭素原子数1から4のアルキルであるジアルキルアミノ、シアノ又はカルバモイルであり;
R1とR2のうち第2の基は第1の基から独立して水素、ハロ、炭素原子数1から4のアルキル、炭素原子数1から4のアルコキシ、アルキルが炭素原子数1から4のアルキルであるアルキルアミノ、各アルキルが炭素原子数1から4のアルキルであるジアルキルアミノ、シアノ又はカルバモイルであり;
R3は水素、炭素原子数1から4のアルキル、又はベンジルである。)。具体例としては、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-メチルイソインドリンが挙げられるが、これに限定されない。
【0062】
その他の代表的な化合物は下式で表される化合物である:
【化18】

(式中、
R1とR2のうち第1の基はハロ、炭素原子数1から4のアルキル、炭素原子数1から4のアルコキシ、各アルキルが炭素原子数1から4のアルキルであるジアルキルアミノ、シアノ又はカルバモイルであり;
R1とR2のうち第2の基は第1の基から独立して水素、ハロ、炭素原子数1から4のアルキル、炭素原子数1から4のアルコキシ、アルキルが炭素原子数1から4のアルキルであるアルキルアミノ、各アルキルが炭素原子数1から4のアルキルであるジアルキルアミノ、シアノ又はカルバモイルであり;
R3は水素、炭素原子数1から4のアルキル、又はベンジルである。)。
具体例としては、1-オキソ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)-4-メチルイソインドリンが挙げられるが、これに限定されない。
【0063】
本発明のその他の具体的な免疫調節性化合物としては、参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第6,380,239号及び2004年7月28日提出の米国特許同時係属出願第10/900,270号に記載されている、インドリン環の4位又は5位が置換されている1-オキソ及び1,3-ジオキソイソインドリンが挙げられるが、これに限定されない。代表的な化合物は下式で表される化合物及びその塩である:
【化19】

(式中、
C*で示される炭素原子はキラル中心を構成し(nがゼロでなく、R1がR2と同じでない場合) ;X1とX2のうちの一方はアミノ、ニトロ、炭素原子数1から6のアルキル又はNH-Zであり;X1とX2のうちの他方は水素であり、R1とR2はそれぞれ独立してヒドロキシ又はNH-Zであり;R3は水素、炭素原子数1から6のアルキル、ハロ又はハロアルキルであり;Zは水素、アリール、炭素原子数1から6のアルキル、ホルミル又は炭素原子数1から6のアシルであり;nは0、1又は2であるが;X1がアミノでありかつnが1又は2である場合、R1とR2はが同時にヒドロキシであることはない。)。
【0064】
その他の代表的な化合物は、下式で表される化合物である:
【化20】

(式中、
C*で示される炭素原子はキラル中心を構成し(nがゼロでなく、R1がR2と同じでない場合) ;X1とX2のうちの一方はアミノ、ニトロ、炭素原子数1から6のアルキル又はNH-Zであり;X1とX2のうちの他方は水素であり;R1とR2はそれぞれ独立してヒドロキシ又はNH-Zであり;R3は炭素原子数1から6のアルキル、ハロ又は水素であり;Zは水素、アリール、又は炭素原子数1から6のアルキル若しくはアシルであり;nは0、1又は2である。)。
【0065】
その具体例としては、それぞれ下記の構造を有する2-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-4-カルバモイル-酪酸及び4-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-4-カルバモイル-酪酸、並びに医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、プロドラッグ及び立体異性体が挙げられるが、これに限定されない:
【化21】


【0066】
その他の代表的な化合物は、下式で表される化合物及びその塩である:
【化22】

(式中、
C*で示される炭素原子は、nがゼロでなくかつR1がR2と同じでない場合にキラル中心を構成し;X1とX2のうちの一方はアミノ、ニトロ、炭素原子数1から6のアルキル又はNH-Zであり;X1とX2のうちの他方は水素であり;R1とR2はそれぞれ独立してヒドロキシ又はNH-Zであり;R3は炭素原子数1から6のアルキル、ハロ又は水素であり;Zは水素、アリール、又は炭素原子数1から6のアルキル若しくはアシルであり;nは0、1又は2である。)。
【0067】
その具体例としては、それぞれ下記の構造を有する4-カルバモイル-4-{4-{(フラン-2-イル-メチル)-アミノ]-1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル}-酪酸、4-カルバモイル-2-{4-[(フラン-2-イル-メチル)-アミノ]-1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル}-酪酸、2-{4-[(フラン-2-イル-メチル)-アミノ]-1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル}-4-フェニルカルバモイル-酪酸、及び2-{4-[(フラン-2-イル-メチル)-アミノ]-1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル}-ペンタン二酸、並びに医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、プロドラッグ及び立体異性体が挙げられるが、これに限定されない:
【化23】


【0068】
前記化合物のその他の具体例は、下式で表される化合物である:
【化24】

(式中、
X1とX2のうちの一方はニトロ又はNH-Zであり、X1とX2のうちの他方は水素であり;
R1とR2はそれぞれ独立してヒドロキシ又はNH-Zであり;
R3は炭素原子数1から6のアルキル、ハロ又は水素であり;
Zは水素、フェニル、炭素原子数1から6のアシル、又は炭素原子数1から6のアルキルであり;
nは0、1又は2であり;
ただし、X1とX2のうちの一方がニトロであり、かつnが1又は2である場合、R1とR2はヒドロキシ以外の基であり;
-COR2と-(CH2)nCOR1が異なる場合、C*で示される炭素原子はキラル中心を構成する。)。
その他の代表的な化合物は、下式で表される化合物である:
【化25】

(式中、
X1とX2のうちの一方は炭素原子数1から6のアルキルであり;
R1とR2はそれぞれ独立してヒドロキシ又はNH-Zであり;
R3は炭素原子数1から6のアルキル、ハロ又は水素であり;
Zは水素、フェニル、炭素原子数1から6のアシル、又は炭素原子数1から6のアルキルであり;
nは0、1又は2であり;
-COR2と-(CH2)nCOR1が異なる場合、C*で示される炭素原子はキラル中心を構成する。)。
【0069】
本発明のその他の具体的免疫調節性化合物としては、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,458,810号に記載されている、第2位が2,6-ジオキソ-3-ヒドロキシピペリジン-5-イルで置換されているイソインドリン-1-オン及びイソインドリン-1,3-ジオンが挙げられるが、これに限定されない。代表的な化合物は下式で表される化合物である:
【化26】

(式中、
*で示される炭素原子はキラル中心を構成し;
Xは-C(O)-又は-CH2-であり;
R1は炭素原子数1から8のアルキル又は-NHR3であり;
R2は水素、炭素原子数1から8のアルキル、又はハロゲンであり;、
R3は水素;
非置換の、又は炭素原子数1から8のアルコキシ、ハロ、アミノ、若しくは炭素原子数1から4のアルキルアミノで置換されている炭素原子数1から8のアルキル;
炭素原子数3から18のシクロアルキル;
非置換の、又は炭素原子数1から8のアルキル、炭素原子数1から8のアルコキシ、ハロ、アミノ、若しくは炭素原子数1から4のアルキルアミノで置換されているフェニル;
又は非置換の、又は炭素原子数1から8のアルキル、炭素原子数1から8のアルコキシ、ハロ、アミノ、炭素原子数1から4のアルキルアミノ、若しくは-COR4で置換されているベンジルであり、ここで、R4は水素;
非置換の、又は炭素原子数1から8のアルコキシ、ハロ、アミノ、若しくは炭素原子数1から4のアルキルアミノで置換されている炭素原子数1から8のアルキル;
炭素原子数3から18のシクロアルキル;
非置換の、又は炭素原子数1から8のアルキル、炭素原子数1から8のアルコキシ、ハロ、アミノ、若しくは炭素原子数1から4のアルキルアミノで置換されているフェニル;
非置換の、又は炭素原子数1から8のアルキル、炭素原子数1から8のアルコキシ、ハロ、アミノ、若しくは炭素原子数1から4のアルキルアミノで置換されているベンジルである。)。
【0070】
本発明の化合物は、購入することもできるし、又は本明細書に開示の特許又は特許広報に記載されている方法に従って調製することもできる。また、光学的に純粋な化合物を不斉合成することもできるし、或いはまた知られている分割剤若しくはキラルカラムとその他の標準的有機合成化学の技術を使って分割することもできる。
【0071】
本明細書で使用されるように、特に記載のない限り、用語「医薬として許容し得る塩」は、その用語が適用される化合物の、非毒性の酸及び塩基付加塩を包含する。許容し得る非毒性の酸付加塩には、当技術分野で知られている有機及び無機酸又は塩基から誘導される酸付加塩が含まれ、その有機及び無機酸又は塩基の例としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニット酸、サリチル酸、フタル酸、塞栓性酸(embolic acid)、エナント酸などが挙げられる。
【0072】
本質的に酸性の化合物は、医薬として許容し得る種々の塩基と塩を形成することができる。このような酸性化合物の医薬として許容し得る塩基付加塩の調製に使用することができる塩基は、非毒性の塩基付加塩を形成するような塩基、すなわち、これに限定されるわけではないが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、特にカルシウム、マグネシウム、ナトリウム又はカリウム塩などの薬理学的に許容し得るカチオンを含有する塩を形成するような塩基である。好適な有機塩基の例としては、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルマイン(N-メチルグルカミン)、リシン及びプロカインが挙げられるが、これに限定されない。
【0073】
本明細書で使用されるように、特に指定がない限り、用語「溶媒和物」とは、非共有結合的分子間力によって結合している溶媒を化学量論的又は非化学量論的な量含む、本発明の化合物又はその塩を意味する。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物である。
【0074】
本明細書で使用されるように、特に記載のない限り、用語「プロドラッグ」とは、加水分解するか、酸化するか、さもなければ生物学的条件下で(インビトロ又はインビボで)反応して化合物を提供するようなその化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例としては、生加水分解性(biohydrolyzable)アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カルバメート、生加水分解性カーボネート、生加水分解性ウレイド及び生加水分解性ホスフェートアナログなどの生加水分解性部分を含む本発明の免疫調節性化合物の誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。プロドラッグのその他の例としては、-NO、-NO2、-ONO又は-ONO2部分を含む本発明の免疫調節性化合物の誘導体が挙げられる。プロドラッグは、一般に、1 Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery, 172-178, 949-982 (Manfred E. Wolff編, 第5版 1995)及びDesign of Prodrugs (H. Bundgaard編, Elsevier, New York 1985)に記載されている方法などの、良く知られている方法を使って調製することができる。
【0075】
本明細書で使用されるように、特に記載のない限り、用語「生加水分解性アミド」、「生加水分解性エステル」、「生加水分解性カルバメート」、「生加水分解性カーボネート」、「生加水分解性ウレイド」、「生加水分解性ホスフェート」とは、それぞれ、1)化合物の生理活性は損わず、その化合物に対して、取り込み、作用期間若しくは作用開始などのインビボにおける有利な特性を付与することができるか、又は2)生物学的に不活性であるが、インビボにおいて生理活性を有する化合物に変換されるような、化合物のアミド、エステル、カルバメート、カーボネート、ウレイド又はホスフェートを意味する。生加水分解性エステルの例としては、低級アルキルエステル、低級アシルオキシアルキルエステル(アセトキシルメチルエステル、アセトキシエチルエステル、アミノカルボニルオキシメチルエステル、ピバロイルオキシメチルエステル及びピバロイルオキシエチルエステルなど)、ラクトニルエステル(フタリジルエステル及びチオフタリジルエステルなど)、低級アルコキシアシルオキシアルキルエステル(メトキシカルボニルオキシメチルエステル、エトキシカルボニルオキシエチルエステル及びイソプロポキシカルボニルオキシエチルエステルなど)、アルコキシアルキルエステル、コリンエステル、並びにアシルアミノアルキルエステル(アセトアミドメチルエステルなど)が挙げられるが、これに限定されない。生加水分解性アミドの例としては、低級アルキルアミド、α-アミノ酸アミド、アルコキシアシルアミド、並びにアルキルアミノアルキルカルボニルアミドが挙げられるが、これに限定されない。生加水分解性カルバメートの例としては、低級アルキルアミン、置換されているエチレンジアミン、アミノ酸、ヒドロキシアルキルアミン、ヘテロサイクリック及びヘテロ芳香族アミン、並びにポリエーテルアミンが挙げられるが、これに限定されない。
【0076】
本明細書で使用されるように、特に指定がない限り、用語「立体異性体」とは、エナンチオマー的に/ステレオマー的に純粋でかつエナンチオマー的に/ステレオマー的に富んでいる本発明の化合物全てを包含する。
本明細書で使用されるように、特に記載がない限り、用語「ステレオマー的に純粋な」又は「エナンチオマー的に純粋な」とは、化合物が1方の立体異性体を含み、他方の立体異性体又は鏡像異性体を実質的に含んでいないことを意味する。例えば、ある化合物が1方の立体異性体を80%、90%又は95%以上含み、他方の立体異性体を20%、10%又は5%以下しか含まない場合、その化合物はステレオマー的に又はエナンチオマー的に純粋である。ある種の例では、本発明の化合物は、約80% ee(すなわち、エナンチオマー的に過剰)以上、好ましくはあるキラル中心に関して90% ee又はそれ以上、より好ましくはあるキラル中心に関して95% eeであるとき、その特定のキラル中心に関して光学的に活性又はステレオマー的に/エナンチオマー的に純粋(すなわち、実質的にR体又は実質的にS体)であると見なされる。
【0077】
本明細書で使用されるように、特に記載のない限り、「ステレオマー的に富んでいる」又は「エナンチオマー的に富んでいる」とは、本発明の化合物の、ラセミ混合物及びその他の立体異性体混合物(例えば、R/S=30/70、35/65、40/60、45/55、55/45、60/40、65/35及び70/30)を包含する。本発明の種々の免疫調節性化合物は、1つ又は複数のキラル中心を含み、鏡像異性体のラセミ混合物又はジアステレオマーの混合物として存在し得る。本発明は、このような化合物のステレオマー的に純粋な形を使用すること、及びこれらの形の混合物を使用することを包含する。例えば、本発明のある特定の免疫調節性化合物の鏡像異性体を等量ずつ又は不等量含む混合物を、本発明の方法及び組成物に使用することができる。これらの異性体は、不斉合成することができ、又はキラルカラム若しくはキラル分割剤などの標準的技術を使って分割することもできる(例えば、Jacques, Jらの論文(Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley-Interscience, New York, 1981))、Wilen, S.H.らの論文(Tetrahedron 33:2725 (1977))、Eliel, E.L.の論文(Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw-Hill, NY, 1962))、及びWilen, S.H.等の論文(Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268 (E.L. Eliel編, Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, IN, 1972)))。
【0078】
描かれている構造とその構造に付与された名前の間に不一致がある場合、その描かれている構造の方に重きが置かれることに注意されたい。また、ある構造の立体化学又はある構造の一部の立体化学が、例えば太線又は断続線などで示されてない場合、その構造又は構造の一部は、その全ての立体異性体を包含しているものと解釈されたい。
【0079】
4.2. 第2の活性剤
先に論じたように、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群を治療、予防又は管理するために、本発明の方法及び組成物において、免疫調節性化合物と一緒に第2の有効成分又は活性剤を使うことができる。特定の第2の活性剤によって、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群を有する患者の運動機能及び感覚を改善することができ、或いはまた患者の合併症を予防することができる。
1つの実施態様においては、第2の活性剤はグルココルチコイドなどのステロイドであり、例えば、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン及びベタメタゾンなどが挙げられるがこれに限定されない。
【0080】
別の実施態様においては、第2の活性剤は抗炎症剤であり、その例としてはナプロキセンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクカリウム、セレコキシブ、スリンダク、オキサプロジン、ジフルニサル、エトドラク、メロキシカム、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン、レフェコキシブ、メトトレキサート、レフルノミド、スルファサラジン、金塩、RH0-D免疫グロブリン、マイコフェニレートモフェチル、サイクロスポリン、アザチオプリン、タクロリムス、バシリキシマブ、ダクリズマブ、サリチル酸、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル、ジフルニサル、サルサレート、オルサラジン、スルファサラジン、アセトアミノフェン、インドメタシン、スリンダク、メフェナム酸、メクロフェナメートナトリウム、トルメチン、ケトロラック、ジクロフェナック、フルルビンプロフェン(flurbinprophen)、オキサプロジン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、ドロキシカム、ピボキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アンチピリン、アミノピリン、アパゾン、ジロートン、アウロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム、オラノフィン、メトトレキサート、コルヒチン、アロプリノール、プロベネシド、スルフィンピラゾン及びベンズブロマロンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
別の実施態様においては、第2の活性剤はcAMPアナログであり、その例としてはdb-cAMPが挙げられるが、これに限定されない。理論に束縛されるのではないが、ある種の免疫調節性化合物とcAMPアナログは障害の治療又は管理において補助的又は相助的に作用し得ると考えられている。また、このような作用剤を併用すると、cAMPレベルが亢進し、軸索保持、有髄化及びセロトニン作動性線維の成長が高まり、歩行が改善されるとも考えられている。
【0082】
別の実施態様においては、第2の活性剤はメチルフェニデート薬剤を含む。1つの実施態様では、メチルフェニデート薬剤は1-スレオ-メチルフェニデートを含み、実質的に他のいずれのピペリジンも含まない。1つの実施態様では、メチルフェニデート薬剤はd-スレオ-メチルフェニデートを含み、実質的に他のいずれのピペリジンも含まない。1つの実施態様では、メチルフェニデート薬剤は1-エリスロ-メチルフェニデートを含み、実質的に他のいずれのピペリジンも含まない。1つの実施態様では、メチルフェニデート薬剤はd-エリスロ-メチルフェニデートを含み、実質的に他のいずれのピペリジンも含まない。1つの実施態様では、メチルフェニデート薬剤はdl-スレオ-メチルフェニデートを含む。1つの実施態様では、メチルフェニデート薬剤はdl-エリスロ-メチルフェニデートを含む。1つの実施態様では、メチルフェニデート薬剤は、1-スレオ-メチルフェニデート、d-スレオ-メチルフェニデート、d-エリスロ-メチルフェニデート及び1-エリスロ-メチルフェニデートのうちの2つ又はそれ以上の混合物を含む。1つの実施態様では、メチルフェニデート薬剤を使ってCNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群を治療する場合、速効性用量及び第2薬剤の遅延投与量を含有する剤形を投与することによって、乱用の可能性が減り、投与の簡便性が増し、また患者のコンプライアンスが向上する。メチルフェニデート(例えば、d-スレオ-メチルフェニデート)のある種の剤形(例えば、パルス、ペレット及びボーラス)及びその投与方法は、いずれも参照によってその全体が本明細書に組み込まれている米国特許第5,837,284号及び同第6,602,887号に開示されている。
【0083】
別の実施態様においては、第2の活性剤は利尿剤である。利尿剤は、脳容積及び頭蓋内圧(ICP)を低減するのに有用である。マンニトール、フルセミド、グリセロール及び尿素が一般に使われる。代謝療法を設計して、脳代謝率を低下させることによりICPを低減することも行われる。バルビツール酸誘導体は、脳代謝を抑制するために使われる最も一般的な類の薬剤である。
【0084】
さらに別の実施態様においては、第2の活性剤は、免疫調節剤、免疫抑制剤、降圧剤、抗痙攣剤、線維素溶解剤、抗血小板剤、抗精神病剤、抗うつ剤、ベンゾジアゼピン、ブスピロン、アマンタジン、及びCNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群を有する患者に使用されているその他の知られている又は従来の薬剤である。
【0085】
減圧頭蓋切除術などの外科的介入は、難治性ICP上昇を有する患者に行うことができる。外科的処置においては、頭蓋の大きな一画を取り除いた後、硬膜を拡大する。これによって、頭蓋内容積が増し、したがって、ICPが低下することになる。
別の実施態様においては、神経移植と併せて免疫調節性化合物を使い、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群を治療することができる。
【0086】
4.3 治療及び予防方法
本発明の方法は、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群を予防、治療及び/又は管理する方法を包含する。CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群の例としては、一次性脳傷害、二次性脳傷害、外傷性脳傷害、局所性脳傷害、びまん性軸策傷害、頭部傷害、振とう症、振とう後症候群、脳挫傷及び脳裂傷、硬膜下血腫、硬膜外血腫、外傷後てんかん、慢性植物状態、完全SCI、不完全SCI、急性SCI、亜急性SCI、慢性SCI、脊椎中心部症候群、ブラウンセカール症候群、脊椎前部症候群、脊椎円錐部症候群、馬尾症候群、神経原性ショック、脊髄性ショック、意識障害、頭痛、悪心、嘔吐、記憶喪失、めまい、複視、視力のぼけ、感情の不安定、睡眠障害、易刺激性、集中力低下、神経症、行動障害、認知障害、及び発作などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
特に指定がない限り、本明細書で使用する用語「治療する」とは、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群の発症後に何らかの組成物を投与することを言い、一方「予防する」とは、発症の前に、特にCNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群の危険に曝されている患者に投与することを言う。特に指定がない限り、本明細書で使用する用語「予防する」には、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群に由来の症状を抑制又は回避することが含まれるが、これらに限定されない。特に指示がない限り、本明細書で使用する用語「管理する」とは、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群を患った患者のCNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群の症状の再発を予防すること、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群を患った患者の症状が寛解している時間を延ばすこと、及び/又はCNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群を患う危険のある患者がCNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群を発症するのを予防することを包含する。
【0088】
CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群に付随する症状の例としては、運動障害(特に、呼吸困難を伴う又は伴わない不全対麻痺又は四肢不全麻痺);感覚消失又は腸若しくは膀胱の制御喪失;性機能不全;ふらつき、発汗、徐脈、低体温、代償性頻拍を伴わない低血圧などの神経原性ショックの諸症状;痛み;呼吸不全;上肢及び下肢反射消失を伴う四肢不全動麻痺;疾患レベルに満たない感覚消失;直腸及び膀胱括約筋の不調;腹部膨満、イレウス及び胃内容排出遅延に至る残尿及び残便;同側性目瞼下垂、縮瞳、無水;痛覚及び温度覚の消失を伴う麻痺;触覚、振動及び固有受容感覚の相対的な節約;解離性感覚消失;上肢脱力、病変部位以下でのパッチ感覚消失; 病変部位以下での振動感覚及び位置感覚の消失、反射亢進及び伸筋母趾徴候;同側性分節性感覚麻痺;並びに痛み、根性の感覚変動、非対称性下位運動ニューロン性下肢脱力及び括約筋障害を伴う多発性根神経障害などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
本発明に包含される方法は、1つ若しくは複数の免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグを、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群に罹患している又は罹患しやすい患者(例えば、ヒト)に投与することを含む。
【0090】
また別の方法は、1)1つの免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグと、2)第2の活性剤又は有効成分とを投与することを含む。免疫調節性化合物の例は本明細書に開示されている(例えば、4.1項を参照)、また第2の活性剤の例も本明細書に開示されている(例えば、4.2項を参照)。
【0091】
免疫調節性化合物と第2の活性剤の患者への投与は、同じ又は異なる投与経路によって、同時に又は順次行うことができる。ある特定の作用剤に対して採用した特定の投与経路の好適性は、活性剤それ自体(例えば、血流に入る前に分解することなく経口投与できるかどうか)及び治療対象である疾患によって決まる。免疫調節性化合物に対する具体的な投与経路は経口である。本発明の第2の活性剤又は第2の有効成分に対する好ましい投与経路は、当業者ならば知っている。
【0092】
本発明の1つの実施態様においては、本明細書に記載の状況に対して推奨される免疫調節性化合物の1日用量は、1日に約0.10mgから約150mgの範囲内であり、1日1回投与されるか、又は好ましくは1日を通して分割投与される。より具体的には、1日用量は、1日2回、同量ずつ分割投与される。1つの特定の実施態様においては、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル)-イソインドリン-1,3-ジオンを、1日当たり約0.1から約1mgの量を投与するか、又は1日おきに約0.1から約5mgの量を投与する。1つの好ましい実施態様では、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル-ピペリジン-2,6-ジオンを、1日当たり約5から約25mgの量を投与するか、又は1日おきに約10から約50mgの量を投与する。
【0093】
4.3.1 第2の活性剤との併用療法
本発明の具体的な方法は、本発明の免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグを、1つ又は複数の第2の活性剤、手術、又は神経移植と組み合わせて投与することを含む。本発明の免疫調節性化合物の例は本明細書に開示されている(例えば、4.1項を参照)、また第2の活性剤の例も本明細書に開示されている(例えば、4.2項を参照)。
【0094】
免疫調節性化合物と第2の活性剤の患者への投与は、同じ又は異なる投与経路によって、同時に又は順次行うことができる。ある特定の作用剤に対して採用した特定の投与経路の好適性は、活性剤それ自体(例えば、血流に入る前に分解することなく経口投与できるかどうか)及び治療対象である疾患によって決まる。本発明の免疫調節性化合物に対する好ましい投与経路は経口である。本発明の第2の活性剤又は第2の有効成分に対する好ましい投与経路は、当業者ならば知っている。例えば、Physicians' Desk Reference, 1755-1760 (第56版, 2002)を参照。
【0095】
本発明の1つの実施態様においては、第2の活性剤は、1日1回又は2回、約1mgから約1,000mgの範囲、約5mgから約500mgの範囲、約10mgから約350mgの範囲、又は約50mgから約200mgの範囲の量を経口、静脈内又は皮下投与される。第2の活性剤の具体的な量は、使用する具体的な薬剤、治療又は管理の対象となる疾患の種類、その疾患の重篤度及び病期、並びに本発明の免疫調節性化合物及び併用して患者に投与される任意選択の追加の活性剤の量などによって決まる。ある特定の実施態様では、第2の活性剤はメチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、db-cAMP、又はそれらの組み合わせである。
【0096】
1つの実施態様においては、メチルプレドニゾロンを、30mg/kgを15分間掛けて1回ボーラス静注し、次いで5.4mg/kg/時間を23時間掛けて大量静注し、ボーラス静注後、45分間掛けて静脈内注入することができる。
1つの実施態様においては、メチルフェニデートを、約0.01mg/kgから約1mg/kgの量投与することができる。
【0097】
別の実施態様においては、デキサメタゾンを、約10〜100mgの量を静注し、次いで6〜10mgを6時間毎に24時間掛けて静注することができる。
本方法の1つの具体的な実施態様においては、本発明の免疫調節性化合物とdb-cAMPを、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群に罹患している患者に投与することができる。
【0098】
4.3.2. 移植療法との併用
本発明は、本発明の免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグを、神経移植及び幹細胞移植と組み合わせて投与することを含む、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群の治療、予防及び/又は管理方法を包含する。
【0099】
理論に束縛されるのではないが、本発明の免疫調節性化合物とシュワン(Schwann)細胞又は幹細胞移植とを併せて使うと、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群に罹患している患者に、付加的又は相助的な効果が得られると考えられている。詳細には、免疫調節性化合物をシュワン細胞又は幹細胞移植と併せて使った場合、本発明の免疫調節性化合物によって、棘上及び固有受容の軸索保持並びに有髄化が促進されると考えられている。
【0100】
本発明は、本発明の免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグを、手術又はシュワン細胞若しくは幹細胞移植の前、間又は後に患者に投与することを含む、CNS傷害/損傷及びそれに関連する症候群の治療、予防及び/又は管理方法を包含する。
【0101】
4.4. 医薬組成物
医薬組成物を個々の単位剤形の調製に使うことができる。本発明の医薬組成物及び剤形は、本発明の免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグを含む。本発明の医薬組成物及び剤形はさらに、1つ又は複数の賦形剤を含むことができる。
【0102】
本発明の医薬組成物及び剤形はまた、1つ又は複数の追加の活性剤を含むこともできる。したがって、本発明の医薬組成物及び剤形は本明細書に開示されている活性剤(例えば、免疫調節性化合物と第2の活性剤)を含む。任意選択の第2の活性剤又は追加の活性剤の例は、本明細書に開示されている(例えば、4.2項参照)。
【0103】
本発明の単位剤形は、患者に対して、経口、経粘膜(例えば、鼻腔剤、舌下剤、膣剤、口腔剤又は肛門剤)、非経口(例えば、皮下剤、静脈内剤、大量静注剤又は動脈内剤)、局所(例えば、点眼剤又はその他の眼科用製剤)、又は経皮投与するのに好適である。剤形の例としては、錠剤;カプレット剤;軟ゼラチンカプセル剤などのカプセル剤;カシェ剤;トローチ剤;ロゼンジ;拡散剤;坐薬;散剤;エアゾール(例えば、経鼻スプレー剤又は吸入剤);ゲル剤;懸濁剤(例えば、水溶液又は非水溶液懸濁剤、水中油乳剤又は油中水乳剤)、液剤、及びエリキシル剤を含めた患者に経口又は経粘膜投与するのに好適な液状剤形;患者に非経口投与するのに好適な液状剤形;局所投与に好適な点眼液又はその他の眼科用製剤;並びに再構成によって患者に非経口投与するのに好適な液状剤形にすることができる無菌固形剤(例えば、結晶又は非晶質固形剤)などが挙げられるが、これに限定されない。
【0104】
本発明の剤形の組成、形状及び種類は、概してその用途によって異なる。例えば、疾患の急性期治療に使われる剤形が含有する1つ又は複数の活性剤の量は、同じ疾患の慢性期治療に使われる剤形に比べて多くすることができる。同様に、非経口剤形が含有する1つ又は複数の活性剤の量は、同じ疾患の治療に使われる経口製剤に比べて少なくすることができる。本発明に包含される具体的な剤形が互いにどのように異なっているかは、上記例及びその他を含めて当業者には容易に理解できよう(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版 Mack Publishing, Easton PA (1990)を参照)。
【0105】
典型的な医薬組成物及び剤形は、1つ又は複数の賦形剤を含む。好適な賦形剤については薬学分野の技術者には良く知られており、好適な医薬品添加物の非限定的な例は、本明細書に記載されている。特定の賦形剤がある医薬組成物又は剤形に取り込むのに好適であるかどうかは、当技術分野で良く知られている種々の要因によって決まる。その要因の例としては製剤を患者に投与する仕方が挙げられるが、これに限定されるわけではない。例えば、錠剤などの経口製剤は、非経口剤形に使用するには適さない医薬品添加物を含有することができる。特定の医薬品添加物の適性はまた、製剤中の具体的な活性剤によっても決まる。例えば、ある種の活性剤の分解は、ラクトースなどの賦形剤によって、又は水に曝露した場合に加速される可能性がある。特に、第一級又は第二級アミンを含む活性剤は、上記のように加速して分解されやすい。したがって、本発明は、ラクトース及びその他の単糖類又は二糖類を、仮に含有していたとしても、極少量しか含有しない医薬組成物及び剤形を包含する。本明細書に使用するように、用語「ラクトースフリー」とは、仮にラクトースが存在していたとしても、その量は、有効成分の分解速度を実質的に高めるには不十分な量であることを意味する。
【0106】
本発明のラクトースフリー組成物は、当技術分野で良く知られている賦形剤を含むことができるが、そのような賦形剤は、例えば米国薬局方(USP)25-NF20 (2002)に記載されている。一般に、ラクトースフリー組成物は、有効成分、結合剤/充填剤及び滑沢剤を、薬剤として配合適性でかつ医薬として許容し得る量を含む。好ましいラクトースフリー製剤は、有効成分、微結晶セルロース、アルファ化デンプン及びステアリン酸マグネシウムを含む。
【0107】
本発明はさらに、有効成分を含む無水の医薬組成物及び剤形を包含する。水はある種の化合物の分解を促進することがあるためである。例えば、水の添加(例えば5%)は、有効期間又は時間の経過に対する製剤の安定性などの特性を決定するために、長期保存を刺激する手段として医薬品技術分野では広く容認されている(例えば、Jens T. Carstensenの論文(Drug Stability: Principles & Practice, 第2版, Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp. 379-80)参照)。事実、水及び熱は、一部の化合物の分解を促進する。水分及び/又は湿気は、一般に製剤の製造、取り扱い、包装、保管、出荷及び使用時に遭遇するものであるから、製剤に及ぼす水の影響は非常に重大となる可能性がある。
【0108】
本発明の無水の医薬組成物及び剤形は、無水又は低水分含量の成分を使い、低水分又は低湿度条件で調製することができる。ラクトースと、第一級又は第二級アミンを含む有効成分少なくとも1つとを含む医薬組成物及び剤形は、製造、包装、及び/又は保管時に水分及び/又は湿気との実質的な接触が予想される場合には、無水であることが好ましい。
【0109】
無水の医薬組成物は、その無水性が保持されるように調製及び保管すべきである。したがって、無水組成物は、好適な処方キットに含むことができるように、水への曝露を予防することが知られている材料を使って包装することが好ましい。好適な包装の例としては、気密封止フォイル、プラスチック、単位用量容器(例えば、バイアル)、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられるが、これに限定されない。
【0110】
本発明はさらに、有効成分の分解速度を下げるような化合物を1つ又は複数含む医薬組成物及び剤形を包含する。このような化合物を本明細書では「安定剤」と呼び、その例としては、アスコルビン酸などの酸化防止剤、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤が挙げられるが、これに限定されない。
【0111】
賦形剤の量及び種類と同様に、剤形中の活性剤の量及びその具体的な種類も各種要因によって異なる。その要因の例としては、製剤が患者に投与される経路などが挙げられるが、これに限定されない。しかし、本発明の典型的な製剤は、約0.10から約150mgの量の免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグを含む。典型的な製剤は、約0.1、1、2、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、25、50、100、150、又は200mgの量の免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、クラスレート若しくはプロドラッグを含む。1つの特定の実施態様では、好ましい製剤は、約1、2、5、10、25又は50mgの量の4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオンを含む。1つの具体的な実施態様では、好ましい製剤は、約5、10、25又は50mgの量の3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンを含む。典型的な製剤は、1から約1,000mg、約5から約500mg、約10から約350mg、又は約50から約200mgの量の第2の活性剤を含む。当然、第2の有効成分の具体的な量は、使用する具体的な作用剤、治療又は管理の対象である疾患、並びに免疫調節性化合物及び併用して患者に投与される任意選択の追加の活性剤の量によって決まる。
【0112】
4.4.1 経口剤形
経口投与に好適な本発明の医薬組成物は、例えば、これに限定されるわけではないが、錠剤(例えば、チュアブル錠)、カプレット剤、カプセル剤及び液剤(例えば、フレーバーシロップ剤)などの個別の剤形として提供することができる。このような剤形は、所定量の有効成分を含有しており、当業者には良く知られている薬学の方法で調製することができる(Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版, Mack Publishing, Easton PA (1990)参照)。
【0113】
本発明の典型的な経口製剤は、有効成分を少なくとも1つの賦形剤と、従来の医薬混合技術に従って緊密な混合物の状態に組み合わせることにより調製される。賦形剤は、投与するのに望ましい製剤の形態によって、多様な形態を取り得る。例えば、経口の液剤又はエアゾール剤用に好適な賦形剤の例としては、これに限定されないが、水、グリコール、油、アルコール、矯味矯臭剤、保存剤及び着色剤が挙げられる。固形経口製剤(例えば、散剤、錠剤、カプセル剤及びカプレット剤)用に好適な賦形剤の例としては、これに限定されないが、デンプン、砂糖、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤が挙げられる。
【0114】
その投与しやすさから、錠剤とカプセル剤が最も有利な経口製剤の代表であり、そのような製剤においては固形の薬品賦形剤が使われる。所望であれば、錠剤を、標準的な水溶液又は非水溶液技術によってコーティングすることができる。このような製剤は、薬学の方法のいずれを用いても調製することができる。一般に、医薬組成物及び剤形は、有効成分を液状担体、微細に分割した固形担体、又はその両方と均一また緊密に混合し、次いで必要であれば、その混合物に形を付与して所望の提示品とすることによって調製される。
【0115】
例えば、錠剤は、圧縮又は成形によって調製することができる。圧縮錠剤は、場合によって医薬品添加物と混合した、粉末又は顆粒などの自由流動形態をした有効成分を、好適な機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を、好適な機械で成形することによって調製することができる。
【0116】
本発明の経口製剤に使うことができる医薬品添加物の例としては、結合剤、充填剤、崩壊剤及び滑沢剤が挙げられるが、これに限定されない。医薬組成物及び剤形用に好適な結合剤の例としては、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、若しくはその他のデンプン、ゼラチン、アラビアゴムなどの天然若しくは合成ゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、その他のアルギン酸塩、粉末トラガント、グアーガム、セルロース及びその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、No. 2208、2906、2910)、微結晶セルロース、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0117】
微結晶セルロースの好適な形態の例としては、AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105(FMC Corporation、American Viscose Division、Avicel Sales、Marcus Hook、ペンシルバニア州から入手可能)として市販の物質及びそれらの混合物が挙げられるが、これに限定されない。1つの具体的な結合剤は、AVICEL RC-581として市販されている微結晶セルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムとの混合物である。好適な無水又は低水分賦形剤又は添加剤の例としては、AVICEL-PH-103(商標)及びStarch 1500 LMが挙げられる。
【0118】
本明細書に開示されている医薬組成物及び剤形用に好適な充填剤の例としては、タルク、炭酸カルシウム(顆粒又は粉末)、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストラート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、及びそれらの混合物が挙げられるが、これに限定されない。本発明の医薬組成物中の結合剤又は充填剤は、通常、医薬組成物又は製剤の約50から約99重量パーセント存在する。
【0119】
水溶液環境に曝露されると崩壊するような錠剤を提供するために、本発明の組成物には崩壊剤が使われる。過大量の崩壊剤を含有する錠剤は保管中に崩壊する恐れがあり、一方、過小量の崩壊剤を含有する錠剤は、所望の速度又は所望の条件下で崩壊しない恐れがある。したがって、過大量又は過小量であるために有効成分の放出を不利な形に変えてしまうことのない、十分な量の崩壊剤を使って、本発明の固形経口製剤を形成するべきである。使用される崩壊剤の量は製剤の種類によって異なるが、その量は、当業者ならば容易に見分けることができるであろう。典型的な医薬組成物は、崩壊剤を約0.5から約15重量パーセント含み、好ましくは約1から約5重量パーセント含む。
【0120】
本発明の医薬組成物及び剤形に使用できる崩壊剤の例としては、寒天、アルギニン酸、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、その他のデンプン、アルファ化デンプン、その他のデンプン、粘土、その他のアルギン、その他のセルロース、ガム、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0121】
本発明の医薬組成物及び剤形に使用できる滑沢剤の例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、軽鉱物油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、その他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素添加植物油(例えば、落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、及びそれらの混合物が挙げられるが、これに限定されない。追加の滑沢剤の例としては、サイロイドシリカゲル(メリーランド州ボルチモア、W.R. Grace Co.社製、AEROSIL 200)、合成シリカの凝集エアゾール(テキサス州プラノ、Degussa Co.社販売)、CAB-O-SIL(マサチューセッツ州ボストン、Cabot Co.社販売の発熱性二酸化ケイ素製品)、及びそれらの混合物が挙げられるが、これに限定されない。滑沢剤を使用する場合、通常、それが組み込まれる医薬組成物又は剤形の約1重量パーセント未満の量で使用される。
本発明の好ましい固形経口製剤は、本発明の免疫調節性化合物、無水ラクトース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸、コロイド状無水シリカ及びゼラチンを含む。
【0122】
4.4.2 放出遅延製剤
本発明の有効成分は、当業者には良く知られている放出制御手段又は送達デバイスによって投与することができる。その例としては、いずれも参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第3,536,809号、同第3,598,123号、同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号及び同第5,733,566号に記載されるものが挙げられるが、これに限定されない。このような剤形は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、その他ポリマーマトリクス、ゲル、透過性膜、浸透圧システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、微小球、又はそれらの組み合わせを使って1つ又は複数の有効成分を低速で又は制御して放出し、種々の比率で所望の放出プロファイル可能にするために使うことができる。本明細書に記載のものを含めて、当業者に知られている好適な放出制御製剤は、本発明の有効成分と一緒に使う目的で容易に選択することができる。したがって、本発明は、これに限定されないが、制御放出に適合された錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、及びカプレット剤などの経口投与に好適な単位製剤を包含する。
【0123】
全ての放出制御医薬品は、非放出制御医薬品によって達成される薬剤療法を上回るように薬剤療法を改善することを共通の目的としている。理想的には、最も望ましい形に設計された放出制御製剤を医療において使用することは、最小限の薬物を使用して状態を最短の時間で治癒させる又は制御することを特徴とする。放出制御製剤の利点としては、薬剤の活性時間を長くすること、薬剤投与回数を減らすこと、患者のコンプライアンスを高めることなどが挙げられる。また、放出制御製剤は、作用発現の時間又は薬剤の血中レベルなどその他の特性に影響を及ぼすために使うことができ、したがって、副作用(例えば、マイナスの作用)の発現に影響を及ぼすこともできる。
【0124】
たいていの放出制御製剤は、最初に、所望の治療効果を即座に発揮する量の薬剤を放出し、その後、長期にわたってそのレベルの治療効果又は予防効果を維持する量の薬剤を徐々にまた持続的に放出するように設計されている。体内でこの一定レベルの薬剤を維持するためには、それが代謝され、体外に排出される量に取って代わる速度で、薬剤が製剤から放出されなければならない。有効成分の放出制御は、これに限定されるわけではないが、pH、温度、酵素、水、又はその他の生理学的条件若しくは化合物を含む種々の条件によって刺激される。
【0125】
4.4.3 非経口剤形
非経口剤形は、これに限定されるわけではないが、皮下、静脈内(大量静注を含む)、筋肉内及び動脈内を含めた種々の経路で、患者に投与される。一般に、非経口剤形の投与は、患者が生まれながら有する汚染に対する防御手段を迂回するものであるため、そのような剤形は滅菌されていることが好ましく又は患者に投与する前に殺菌できるものであることが好ましい。非経口剤形の例としては、これに限定されるわけではないが、そのまま注射できる液剤、医薬として許容し得る注射用の媒体にそのまま溶解又は懸濁できる乾燥製剤、そのまま注射できる懸濁剤、及び乳濁剤が挙げられる。
【0126】
本発明の非経口剤形を提供するのに使うことができる好適な媒体は、当業者には知られている。その例としては、注射用水(米国薬局方);これに限定されないが、食塩注射剤、リンゲル注射剤、デキストロース注射剤、デキストロース及び食塩注射剤、並びに加乳酸リンゲル注射剤などの水性媒体;これに限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなどの水混和性媒体;並びに、これに限定されないが、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル及び安息香酸ベンジルなどの非水性媒体などが挙げられるが、これに限定されない。
【0127】
本明細書に開示の有効成分の1つ又は複数の溶解性を高めるような化合物もまた、本発明の非経口剤形に組み込むことができる。例えば、シクロデキストリン及びその誘導体は、本発明の免疫調節性化合物及びその誘導体の溶解性を高めるために使用することができる(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,134,127号を参照)。
【0128】
4.4.4. 局所適用型及び粘膜適用型剤形
本発明の局所適用型及び粘膜適用型剤形の例としては、スプレー剤、エアゾール剤、液剤、乳濁剤、懸濁剤、点眼剤若しくはその他の眼科用製剤、又は当業者に知られているその他の形態の製剤などが挙げられるが、これに限定されない(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版及び18版, Mack Publishing, Easton PA (1980 & 1990)、及びIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 第4版, Lea & Febiger, Philadelphia (1985)参照)。口腔内の粘膜組織を治療するのに好適な剤形は、口内洗剤又は経口ゲルとして製剤化することができる。
【0129】
本発明に包含される局所適用型及び粘膜適用型剤形を提供するのに使用することができる好適な賦形剤(例えば、担体及び希釈剤)及びその他の材料については、薬学技術分野の業者には良く知られており、それらは、所与の医薬組成物又は剤形が適用される個々の組織によって決まる。この事実を踏まえた上で、代表的な賦形剤の例としては、非毒性で医薬として許容し得る液剤、乳濁剤又はゲル剤を形成するための水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、及びそれらの混合物が挙げられるがこれに限定されない。所望であれば、湿潤剤又は保湿剤も医薬組成物又は剤形に添加することができる。このような追加の成分の例は、当技術分野では良く知られている(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版及び18版, Mack Publishing, Easton PA (1980 & 1990)参照)。
【0130】
1つ又は複数の有効成分の送達を改善するために、医薬組成物又は剤形のpHを調整してもよい。同様に、送達を改善するために、溶媒担体の極性、そのイオン強度、又は張度を調整してもよい。医薬組成物又は剤形にステアリン酸塩などの化合物を添加して、1つ又は複数の有効成分の親水性又は親油性を有利に変え、それによって送達を改善することもできる。この点では、ステアリン酸塩は、製剤の脂質媒体としての役目をし、また送達向上剤又は浸透向上剤としての役目を果たす。得られる組成物の特性をさらに調整するために、有効成分の各種塩、水和物又は溶媒和物も使用することができる。
【0131】
4.4.5 キット
概して、本発明の有効成分は、同時に又は同じ投与経路で患者に投与しないことが好ましい。したがって、本発明は、医療従事者が使用する場合に、適性量の有効成分を簡便に患者に投与することができるようなキットを包含する。
【0132】
本発明の代表的なキットは、本発明の免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、水和物、立体異性体、プロドラッグ若しくはクラスレートの剤形を含む。本発明が包含するキットは、追加の活性剤をさらに含むことができる。追加の活性剤の例としては、本明細書に記載のものが挙げられるが、これに限定されない(4.2項参照)。
本発明のキットは、有効成分を投与するのに使われるデバイスも含むことができる。そのようなデバイスの例としては、注射器、点滴用バッグ、パッチ及び吸入器が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
本発明のキットは、移植用の細胞又は血液、及び1つ又は複数の有効成分を投与するのに使用することができる医薬として許容し得る媒体をさらに含むことができる。例えば、ある有効成分が、非経口投与するためには戻さなければならない固形の状態で提供される場合、キットは、その中で有効成分が溶解して非経口投与に好適な、粒子を含まない滅菌溶液を形成するような、好適な媒体の密封容器を含む。医薬として許容し得る媒体の例としては、注射用水(米国薬局方);これに限定されないが、食塩注射剤、リンゲル注射剤、デキストロース注射剤、デキストロース及び食塩注射剤、並びに加乳酸リンゲル注射剤などの水性媒体;これに限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなどの水混和性媒体;並びに、これに限定されないが、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル及び安息香酸ベンジルなどの非水性媒体などが挙げられるが、これに限定されない。
【実施例】
【0134】
(5. 実施例)
本発明の幾つかの実施態様について、下記の非限定的な実施例によって説明する。
【0135】
5.1. サイトカイン産生の調節
ヒト被検者における免疫調節性化合物の臨床評価を確証するために、一連の非臨床的薬理及び毒性試験を実施した。特に断りのない限り、これらの試験は、国際的に認定されている研究設計指針に従い、また臨床の安全性に関する非臨床試験の実施基準(Good Laboratory Practice (GLP))の要件に応じて実施した。
【0136】
ヒトPBMC及びヒト全血をLPS刺激することによるTNF-αの産生が、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン及びサリドマイドによって阻害されることを、インビトロで調べた(Mullerらの論文(Bioorg. Med. Chem. Lett. 9: 1625-1630, 1999))。PBMC及びヒト全血をLPS刺激することによるTNF-α産生の阻害に関して、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル)-イソインドリン-1,3-ジオンのIC50は、それぞれ約24nM(6.55ng/mL)及び約25nM(6.83ng/mL)であった。インビトロにおける調査によって、サリドマイドに類似しているが、少なくとも200倍以上強力な3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの薬理活性プロファイルが示唆される。また、インビトロにおける調査によって、4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル)-イソインドリン-1,3-ジオンが2.73から27.3ng/mL(0.01から0.1μM)の濃度においてMM.IS及びHs Sultan細胞の増殖を50%阻害することも証明されている。
【0137】
PBMC及びヒト全血をLPS刺激することによるTNF-αの産生を阻害する3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのIC50は、それぞれ約100nM(25.9ng/mL)及び約480nM(103.6ng/mL)であった。それに比べて、サリドマイドでは、ヒトPBMCをLPS刺激することによるTNF-αの産生を阻害するIC50は、約194μM(50.2μg/mL)であった。インビトロにおける調査によって、サリドマイドに類似しているが、50から2000倍以上強力な3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンの薬理活性プロファイルが示唆される。この化合物は、T細胞受容体(TCR)活性化による一次誘導に続くT細胞増殖の刺激において、サリドマイドより約50〜100倍強力であることが明らかになっている。3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンはまた、PBMC(IL-2)又はT細胞(IFN-γ)をTCR活性化することによるIL-2及びIFN-γ産生の増大において、サリドマイドより約50〜100倍強力である。また、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンは、抗炎症性サイトカインIL-10の産生を増大させる一方で、PBMCのLPS刺激による炎症誘発性サイトカインTNF-α、IL-1β及びIL-6の産生を用量依存性に阻害した。
【0138】
5.2. 具体的実施態様
1つの具体的な実施態様では、本発明は、中枢神経系傷害の治療、予防及び/又は管理方法であって、治療上又は予防上有効量の3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンを、そのような治療、予防及び/又は管理を必要としている患者に投与することを含む、前記方法を包含する。
【0139】
1つの具体的な実施態様では、本発明は、中枢神経系傷害の治療、予防及び/又は管理方法であって、治療上又は予防上有効量の3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物若しくは立体異性体を、そのような治療、予防及び/又は管理を必要としている患者に投与することを含む、前記方法を包含する。
【0140】
1つの具体的な実施態様では、本発明は、中枢神経系傷害の治療、予防及び/又は管理方法であって、治療上又は予防上有効量の3-(4-アミノ-1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンを、そのような治療、予防及び/又は管理を必要としている患者に投与することを含む、前記方法を包含する。
【0141】
1つの具体的な実施態様では、本発明は、中枢神経系傷害の治療、予防及び/又は管理方法であって、治療上又は予防上有効量の3-(4-アミノ-1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物若しくは立体異性体を、そのような治療、予防及び/又は管理を必要としている患者に投与することを含む、前記方法を包含する。
【0142】
1つの具体的な実施態様では、本発明は、中枢神経系傷害の治療、予防及び/又は管理方法であって、治療上又は予防上有効量の3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン若しくは3-(4-アミノ-1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオンのエナンチオマーとして純粋なR異性体又はS異性体を、そのような治療、予防及び/又は管理を必要としている患者に投与することを含む、前記方法を包含する。
【0143】
1つの具体的な実施態様では、本発明は、中枢神経系傷害の治療、予防及び/又は管理方法であって、治療上又は予防上有効量の3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン若しくは3-(4-アミノ-1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物若しくは立体異性体と、治療上又は予防上有効量の第2の活性剤とを、そのような治療、予防及び/又は管理を必要としている患者に投与することを含む、前記方法を包含する。
【0144】
本発明の1つの具体的な実施態様では、前記第2の活性剤は、抗炎症剤、ステロイド、cAMPアナログ、降圧剤、抗痙攣剤、線維素溶解剤、抗血小板剤、抗精神病剤、抗うつ剤、ベンゾジアゼピン、ブスピロン、刺激剤、アマンタジン、利尿剤、バルビツール酸誘導体、免疫抑制剤又は免疫調節剤である。
【0145】
1つの具体的な実施態様では、本発明は、中枢神経系傷害の治療、予防及び/又は管理方法であって、治療上又は予防上有効量の3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン、3-(4-アミノ-1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-イソインドール-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物若しくは立体異性体を、神経移植又は幹細胞移植と併せて、そのような治療、予防及び/又は管理を必要としている患者に投与することを含む、前記方法を包含する。
【0146】
本発明の1つの具体的な実施態様では、前記中枢神経系傷害は、一次性脳傷害、二次性脳傷害、外傷性脳傷害、局所性脳傷害、びまん性軸策傷害、頭部傷害、振とう症、振とう後症候群、脳挫傷及び脳裂傷、硬膜下血腫、硬膜外血腫、外傷後てんかん、慢性植物状態、完全脊髄傷害、不完全脊髄傷害、急性脊髄傷害、亜急性脊髄傷害、慢性脊髄傷害、脊椎中心部症候群、ブラウンセカール(Brown-Sequard)症候群、脊椎前部症候群、脊椎円錐部症候群、馬尾症候群、神経原性ショック又は脊髄性ショックである。
【0147】
1つの具体的な実施態様では、本発明は、中枢神経系傷害の治療、予防及び/又は管理方法であって、治療上又は予防上有効量の式(I)で表される免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物若しくは立体異性体を、そのような治療、予防及び/又は管理を必要としている患者に投与することを含む、前記方法を包含する:
【化27】

(式中、XとYのうちの一方はC=Oであり、XとYのうちの他方はC=O又はCH2であり、R2は水素又は低級アルキルである。)。
【0148】
1つの具体的な実施態様では、本発明は、中枢神経系傷害の治療、予防及び/又は管理方法であって、治療上又は予防上有効量の式(II)で表される免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物若しくは立体異性体を、そのような治療、予防及び/又は管理を必要としている患者に投与することを含む、前記方法を包含する:
【化28】

(式中、
XとYのうちの一方はC=Oであり、他方はCH2又はC=Oであり;
R1はH、(C1〜C8)アルキル、(C3〜C7)シクロアルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0〜C4)アルキル-(C1〜C6)ヘテロシクロアルキル、(C0〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロアリール、C(O)R3、C(S)R3、C(O)OR4、(C1〜C8)アルキル-N(R6)2、(C1〜C8)アルキル-OR5、(C1〜C8)アルキル-C(O)OR5、C(O)NHR3、C(S)NHR3、C(O)NR3R3'、C(S)NR3R3'又は(C1〜C8)アルキル-O(CO)R5であり;
R2はH、F、ベンジル、(C1〜C8)アルキル、(C2〜C8)アルケニル又は(C2〜C8)アルキニルであり;
R3及びR3'は独立して(C1〜C8)アルキル、(C3〜C7)シクロアルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0〜C4)アルキル-(C1〜C6)ヘテロシクロアルキル、(C0〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロアリール、(C0〜C8)アルキル-N(R6)2、(C1〜C8)アルキル-OR5、(C1〜C8)アルキル-C(O)OR5、(C1〜C8)アルキル-O(CO)R5又はC(O)OR5であり、
R4は(C1〜C8)アルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、(C1〜C4)アルキル-OR5、ベンジル、アリール、(C0〜C4)アルキル-(C1〜C6)ヘテロシクロアルキル又は(C0〜C4)アルキル-(C2〜C5)ヘテロアリールであり;
R5は(C1〜C8)アルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、ベンジル、アリール又は(C2〜C5)ヘテロアリールであり;
R6は出現するごとに、独立してH、(C1〜C8)アルキル、(C2〜C8)アルケニル、(C2〜C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C2〜C5)ヘテロアリール若しくは(C0〜C8)アルキル-C(O)O-R5であるか、又はR6基は互いに結合してヘテロシクロアルキル基を形成し;
nは0又は1であり;及び
符号*は不斉炭素中心を表す。)。
【0149】
1つの実施態様では、本発明は、中枢神経系傷害の治療又は予防方法であって、治療上又は予防上有効量の免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物若しくは立体異性体を、そのような治療又は予防を必要としている患者に投与することを含む、前記方法を包含する。
【0150】
1つの実施態様では、本発明は、中枢神経系傷害の管理方法であって、予防上有効量の免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物若しくは立体異性体を、そのような管理を必要としている患者に投与することを含む、前記方法を包含する。
本発明の1つの実施態様では、免疫調節性化合物の立体異性体はエナンチオマー的に純粋である。
【0151】
1つの実施態様では、本発明は、中枢神経系傷害の治療、予防及び/又は管理方法であって、治療上又は予防上有効量の免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物若しくは立体異性体と、治療上又は予防上有効量の第2の活性剤とを、そのような治療、予防及び/又は管理を必要としている患者に投与することを含む、前記方法を包含する。
【0152】
1つの実施態様では、本発明は、中枢神経系傷害の治療、予防及び/又は管理方法であって、治療上又は予防上有効量の免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物若しくは立体異性体を、神経移植又は幹細胞移植と併せて、そのような治療、予防及び/又は管理を必要としている患者に投与することを含む、前記方法を包含する。
【0153】
1つの実施態様では、本発明は、中枢神経系傷害を患っている患者の、第2の活性剤を投与したことに伴う有害作用を、軽減する又は回避する方法であって、治療上又は予防上有効量の免疫調節性化合物又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物、若しくは立体異性体を、そのような軽減又は回避を必要としている患者に投与することを含む、前記方法を包含する。
【0154】
上記の本発明の実施態様は単に例示のためのものであって、当業者ならば、常用の実験法を使って、具体的な化合物、材料及び手順の数多くの等価物を認識し、又は突きとめることができるであろう。このような等価物の全ては、本発明の範囲内にあると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中枢神経系傷害及びそれに関連する症候群の治療、予防又は管理方法であって、治療上若しくは予防上有効量の免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物若しくは立体異性体を、そのような治療、予防又は管理を必要としている患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記免疫調節性化合物が
【化1】

である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記免疫調節性化合物が
【化2】

である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記免疫調節性化合物が
【化3】

である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記免疫調節性化合物の立体異性体が鏡像異性体R体又はS体である、請求項1、2、3又は4記載の方法。
【請求項6】
前記中枢神経系傷害及びそれに関連する症候群が、一次性脳傷害、二次性脳傷害、外傷性脳傷害、局所性脳傷害、びまん性軸策傷害、頭部傷害、振とう症、振とう後症候群、脳挫傷、脳裂傷、硬膜下血腫、硬膜外血腫、外傷後てんかん、慢性植物状態、完全脊髄傷害、不完全脊髄傷害、急性脊髄傷害、亜急性脊髄傷害、慢性脊髄傷害、脊椎中心部症候群、ブラウンセカール(Brown-Sequard)症候群、脊椎前部症候群、脊椎円錐部症候群、馬尾症候群、神経原性ショック、脊髄性ショック、意識障害、頭痛、悪心、嘔吐、記憶喪失、めまい、複視、視力のぼけ、感情の不安定、睡眠障害、易刺激性、集中力低下、神経症、行動障害、認知障害、又はてんかんである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
中枢神経系傷害及びそれに関連する症候群の治療、予防又は管理方法であって、治療上若しくは予防上有効量の免疫調節性化合物、又は医薬として許容し得るその塩、溶媒和物若しくは立体異性体と、治療上若しくは予防上有効量の第2の活性剤とを、そのような治療、予防又は管理を必要としている患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項8】
前記中枢神経系傷害及びそれに関連する症候群が、一次性脳傷害、二次性脳傷害、外傷性脳傷害、局所性脳傷害、びまん性軸策傷害、頭部傷害、振とう症、振とう後症候群、脳挫傷、脳裂傷、硬膜下血腫、硬膜外血腫、外傷後てんかん、慢性植物状態、完全脊髄傷害、不完全脊髄傷害、急性脊髄傷害、亜急性脊髄傷害、慢性脊髄傷害、脊椎中心部症候群、ブラウンセカール(Brown-Sequard)症候群、脊椎前部症候群、脊椎円錐部症候群、馬尾症候群、神経原性ショック、脊髄性ショック、意識障害、頭痛、悪心、嘔吐、記憶喪失、めまい、複視、視力のぼけ、感情の不安定、睡眠障害、易刺激性、集中力低下、神経症、行動障害、認知障害、又はてんかんである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第2の活性剤がステロイドである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記ステロイドがメチルプレドニゾロン、デキサメタゾン又はベタメタゾンである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記第2の活性剤が抗炎症剤である、請求項7記載の方法。
【請求項12】
前記抗炎症剤が、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクカリウム、セレコキシブ、スリンダク、オキサプロジン、ジフルニサル、エトドラク、メロキシカム、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン、レフェコキシブ、メトトレキサート、レフルノミド、スルファサラジン、金塩、RH0-D免疫グロブリン、マイコフェニレートモフェチル(mycophenylate mofetil)、シクロスポリン、アザチオプリン、タクロリムス、バシリキシマブ、ダクリズマブ、サリチル酸、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル、ジフルニサル、サルサレート、オルサラジン、スルファサラジン、アセトアミノフェン、インドメタシン、スリンダク、メフェナム酸、メクロフェナメートナトリウム、トルメチン、ケトロラク、ジクロフェナク(dichlofenac)、フルルビンプロフェン(flurbinprofen)、オキサプロジン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、ドロキシカム、ピボキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、アンチピリン、アミノピリン、アパゾン、ジレウトン、アウロチオグルコース、金チオリンゴ酸ナトリウム、オーラノフィン、メトトレキサート、コルヒチン、アロプリノール、プロベネシド、スルフィンピラゾン又はベンズブロマロンである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記第2の活性剤がcAMPアナログである、請求項7記載の方法。
【請求項14】
前記cAMPアナログがdb-cAMPである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記第2の活性剤がメチルフェニデート薬剤である、請求項7記載の方法。
【請求項16】
前記メチルフェニデート薬剤が1-スレオ-メチルフェニデート、d-スレオ-メチルフェニデート、1-エリスロ-メチルフェニデート、d-エリスロ-メチルフェニデート、dl-スレオ-メチルフェニデート、dl-エリスロ-メチルフェニデート、又はそれらの混合物である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記第2の活性剤が利尿剤である、請求項7記載の方法。
【請求項18】
前記利尿剤がマンニトール、フロセミド、グリセロール又は尿素である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記第2の活性剤がバルビツール酸誘導体である、請求項7記載の方法。
【請求項20】
前記第2の活性剤が、免疫調節剤、免疫抑制剤、降圧剤、抗痙攣剤、線維素溶解剤、抗血小板剤、抗精神病剤、抗うつ剤、ベンゾジアゼピン、ブスピロン又はアマンタジンである、請求項7記載の方法。

【公表番号】特表2008−520731(P2008−520731A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543402(P2007−543402)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/042331
【国際公開番号】WO2006/058008
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(591120033)セルジーン・コーポレーション (84)
【氏名又は名称原語表記】CELGENE CORPORATION
【Fターム(参考)】