説明

中空封止構造の製造方法および中空封止構造

【課題】基板に設けられた素子部の中空封止の信頼性が高く、かつ、低コストで中空封止することができる中空封止構造の製造方法および中空封止構造を提供する。
【解決手段】一面に素子部120が配置された基板110の前記一面と反対側となる他面に、第一の金型151を配置する第一の工程と、前記素子部120を覆うように前記基板110の一面にキャップ130を配置するとともに、前記キャップ130を覆うように第二の金型152を前記基板110の一面に配置し型締めする第二の工程と、前記第二の金型に設けられたゲート153より該第二の金型152の内部に、樹脂を注入する第三の工程と、を備えることを特徴とする中空封止構造150の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に設けられた素子部を中空封止する中空封止構造の製造方法および中空封止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、BS・CS放送、マイクロ波通信機、レーダー装置など、高周波帯域で使用される通信機器の利用が増加している。一般的に、周波数が高くなると、誘電率の高い物質中を伝播するときに、電磁波のエネルギーの減衰が大きくなり、通信性能が劣化する問題が生じる。そのため、通信機器の電子部品において、高周波特性を十分に引き出すために、電子部品の素子部の周囲に、誘電率の低い空気層を形成して中空封止した気密封止構造が採用されている。
【0003】
電子部品には、高性能化、良好な信頼性、小型化、低コスト化など、多様な特性が求められ、素子部自体の改良に加えて、素子を中空封止するパッケージ(中空封止構造)の改良も必要となってきている。中空封止構造への要求としては、良好な気密性、低コスト化、十分な実装面積の確保などが挙げられる。
【0004】
素子部が中空封止された中空封止構造の製造方法として、例えば、特許文献1では、基板上に配置された素子部を樹脂キャップで覆い、樹脂キャップに備えられた固定用フィルムと接着剤で固定する方法を提案している。
【0005】
また、特許文献2では、凹部が形成された第一の金型と、第一の金型の凹部と対抗する位置に第二の金型、第三の金型、および第四の金型と、を備える中空樹脂パッケージの形成装置を提案している。この中空樹脂パッケージの形成装置では、第三の金型の上に、素子部が設けられた基板が配置され、金型を用いた樹脂の射出成形により、素子部を覆うようにキャップが形成される。そして、第一の金型でキャップの上面を抑えながら、キャップの周囲にさらに樹脂を充填し、キャップと基板とを密着させて中空封止構造を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−283553号公報
【特許文献2】特開2011−100825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように、はんだや接着剤などでキャップを固定する場合、中空封止したキャップ内部の基板上に、はんだや接着剤が侵入するため、中空封止される基板上の素子部や配線などの実装面積が低下するという問題があった。また、高価なフィルム樹脂によってキャップを固定する構成となっているため、コストが高くなる問題があった。
【0008】
低コストで中空封止構造を形成する方法として、射出成型を用いることも考えられるが、キャップは射出時の圧力によって位置がずれることがある。この場合、外気が中空封止されるキャップ内部へ侵入することがあり、中空封止構造の気密性を保つことができず、高周波特性が劣化する問題がある。さらに、キャップが位置ずれした場合、基板上の配線に損傷が生じたり、位置がずれたことによる素子部周囲の誘電率の変動が生じたりするなどの、高周波特性への悪影響が生じることがある。
【0009】
また、樹脂フィルムによって、キャップを固定する場合、樹脂フィルムが硬化する際の樹脂の流動や収縮によって、外形の精度を高くすることが困難である。そのため、外形精度を保つために治具を用いて平坦化させるなどの工程が必要となり、作業効率が悪く、コストが高くなる問題があった。
【0010】
特許文献2の方法では、キャップの上面を金型で抑えながら、樹脂をキャップの周囲に形成する構成としているので、キャップが位置ずれを起こすことがなく中空封止がされる。しかし、金型に抑えられるキャップの上面には、樹脂層が形成されないので、強度が弱く、外部からの圧力が加わった場合に、クラックなどが発生し、外気が中空封止内部へと侵入する問題があった。また、複数の金型を用いる構成となっているので、コストが高くなる問題あった。
【0011】
この発明は前述した事情に鑑みてなされたものであって、基板に設けられた素子部の中空封止の信頼性が高く、かつ、低コストで中空封止することができる中空封止構造の製造方法および中空封止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の課題を解決するために、一面に素子部が配置された基板の前記一面と反対側となる他面に、第一の金型を配置する第一の工程と、前記素子部を覆うように前記基板の一面にキャップを配置するとともに、前記キャップを覆うように第二の金型を前記基板の一面に配置し型締めする第二の工程と、前記第二の金型に設けられたゲートより該第二の金型の内部に、樹脂を注入する第三の工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の中空封止構造の製造方法によれば、金型を用いて、キャップの外面に樹脂層を形成する構成としているので、外部からの圧力に強い中空封止構造を形成することができる。また、金型の部品の数を抑えて樹脂層を形成するので、コストを減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第一の実施形態に係る中空封止構造の断面図である。
【図2】第一の実施形態で用いられる金型の断面図である。
【図3】第一の実施形態に係る金型の配置を示す概略説明図である。
【図4】第二の実施形態に係る中空封止構造の断面図である。
【図5】第二の実施形態に係る金型の配置を示す概略説明図である。
【図6】第三の実施形態に係る中空封止構造の断面図である。
【図7】第三の実施形態に係る金型の配置を示す概略説明図である。
【図8】第三の実施形態の変形例1のキャップと第二の金型の配置方法を説明する図である。
【図9】第四の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。
本発明の実施形態は、基板上に設けられた素子部をキャップと樹脂層により封止する中空封止構造の製造方法に関するものである。
【0016】
まず本発明の実施形態で作製される中空封止構造100について説明する。
本発明の実施形態の中空封止構造100は、図1で示すように、基板110と、基板110の上面(一面)に設けられた素子部120と、素子部120を覆うように配置されたキャップ130と、キャップ130を覆う樹脂層140と、を備えている。
【0017】
基板110は、基板110表面に素子部120や電子部品が固定され、それらの間が基板110上の配線で接続されて電子回路を形成する板形状の部品である。基板110としては、例えば、ガラスエポキシのような樹脂材料や柔軟性に優れるフレキシブル基板などを使用すればよい。
【0018】
素子部120は、半導体の素子であり、基板110の上に設けられている。素子部120は、例えば、銀フィラーや絶縁フィラーなどを含む接着剤などで固定される。本実施形態では、ワイヤボンディングで基板110の配線と電気的に接続されている。
【0019】
キャップ130は、図1で示すように、下方に向けて開口した箱型の形状をしており、素子部120を覆うように基板110の上面に配置されている。
キャップ130は、素子部120を覆う際に、素子部120やワイヤボンディングと物理的に接触しないように十分に大きな箱型の形状をしている。キャップ130は、例えば、樹脂材料、金属材料、セラミック材料などで構成されている。特に、耐熱性や密着性に優れるエポキシ系の材料を用いることが望ましい。また、キャップ130を樹脂層140と同一の材料で構成した場合には、キャップ130と樹脂層140の熱膨張係数の差がなくなるため、キャップ130と樹脂層140の熱膨張係数の差により生じる界面の剥離が抑制される。
【0020】
樹脂層140は、キャップ130を覆うように配置されている。樹脂層140は、例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などで構成されている。樹脂層140は、基板110と密着し、素子部120を中空封止するためのものであり、キャップ130と樹脂層140により素子部120を中空封止した空間に外気が流入しないようになっている。外気が中空封止した空間に流入した場合、外気の湿気などにより素子部120や配線の劣化が生じ、電子部品の性能の低下を引き起こし、本来の性能が得られなくなる。
【0021】
次に、樹脂層140を形成するために用いる射出成型用のモールド金型150について説明する。
モールド金型150は、図2で示すように、第一の金型151と、第一の金型151と対向配置され第一の金型151に向けて開口した第二の金型152を備えている。
第一の金型151は、図示しない台座などの上に設けられ、支持されている。第二の金型152には、第二の金型152の内部に充填される樹脂の注入口のゲート153が設けられている。本実施形態では、第二の金型152の中央部にゲートが設けられている。
第一の金型151と第二の金型152の間に基板110が配置され、型締めできるようになっている。
【0022】
このように構成された本実施形態の中空封止構造100の製造方法について、以下に説明する。
まず、銀フィラーや絶縁フィラーなどを含む接着剤を用いて素子部120を基板110の上面(一面)に固定し、ワイヤボンディングにより電気的に接続する。
【0023】
次に、図3で示すように、素子部120が設けられた基板110の下面(他面)に、第一の金型151を配置する。そして、素子部120およびワイヤボンディングを覆うようにキャップ130を所定の箇所に位置決めして配置する。さらにキャップ130を覆うように第二の金型152を基板110の上に配置して、第一の金型151と第二の金型152で型締めをする(図3参照)。
【0024】
次に、キャップ130および基板110と第二の金型152で囲まれる領域に、ゲート153から樹脂が射出される。軟化温度に加熱された樹脂は、注入口であるゲート153から所定の圧力が加えられて注入される。樹脂は流動性が高い状態で、キャップ130の上方中央部から充填されるので、キャップ130が位置ずれを生じることがなく、樹脂を充填することができるようになっている。その後、常温まで冷却されて、キャップ130の上部に樹脂層140が形成され、基板110の上の素子部を中空封止した中空封止構造100が得られる。
【0025】
本発明の実施形態に係る中空封止構造100の製造方法によれば、第二の金型152の中央部から樹脂が充填される構成となっているので、樹脂をキャップ130の上に充填する際に、キャップ130が位置ずれを生じることがなく樹脂層140を形成でき、信頼性の高い中空封止構造100とすることができる。
【0026】
また、モールド金型150を用いてキャップ130の外面の全体にわたって樹脂層140を形成するので、樹脂層140の外部から圧力が加えられた場合でも、キャップ130にクラックが生じることを抑制でき、中空封止を維持することが可能である。
【0027】
また、第一の金型151と第二の金型152を用いて樹脂層140を形成する簡素な構成としているので、必要なモールド金型150を少なくすることができ、製造にかかるコストを低減することができる。
【0028】
また、はんだや接着剤を使用しない構成としているので、中空封止された空間の基板151上にはんだや接着剤が侵入することがなく、配線や素子部の実装面積を十分に確保することが可能である。
【0029】
次に、本発明の第二の実施形態の中空封止構造の製造方法および中空封止構造について説明する。
なお、第一の金型151、基板110、素子部120、キャップ130については、第一の実施形態と同様の構成であるので、同一の符号で記載して、詳細な記載を省略する。
【0030】
第二の実施形態の中空封止構造200は、図4で示すように、基板110と、基板110の上面(一面)に設けられた素子部120と、素子部120を覆うように配置されたキャップ130と、キャップ130を覆う樹脂層240と、を備えている。
【0031】
樹脂層240は、キャップ130を覆うように配置されている。樹脂層240は、例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などで構成されている。樹脂層240は、基板110と密着し、素子部120を中空封止するためのものであり、キャップ130と樹脂層240により素子部120を中空封止された空間に外気が流入しないようになっている。外気が中空封止された空間に流入した場合、外気の湿気などにより素子部120や配線の劣化が生じ、電子部品の性能の低下を引き起こし、本来の性能が得られなくなる。第二の実施形態では、樹脂層240は、上面(表面)の中央部に穴部241が形成されている。
【0032】
モールド金型250は、第一の金型151と第一の金型151に向けて開口した第二の金型252を備えている。
第二の実施形態では、図5で示すように、第二の金型252の内部の中央部に凸部253が設けられている。凸部253は、基板110に配置されたキャップ130を係止し、キャップ130を支持するようになっている。
また、モールド金型252には、下方にゲート254が設けられている。ゲート254は、樹脂層240を形成する際の、樹脂の注入口となる。第二の実施形態は、ゲート254がモールド金型253のサイドに設けられたサイドゲート構造であるが、この場合、キャップ130が基板110と平行方向(図5の左右方向)にずれやすい。
【0033】
このように構成された第二の実施形態の中空封止構造200の製造方法について、以下に説明する。
まず、基板110の上面(図5の基板110の一面)に素子部120が設けられる。次に、基板110の他面(図5の基板110の下面)に第一の金型151を配置する。そして、素子部120およびワイヤボンディングを覆うようにキャップ130を所定の箇所に位置決めして配置する。さらに、キャップ130を覆い、キャップ130の上部に凸部253が当たるようにモールド金型252を配置する。第一の金型151とモールド金型252で型締めするとともに、凸部253がキャップ130を下方向に押圧し、キャップ130を固定するようになっている(図5参照)。
【0034】
次に、キャップ130および基板110と第二の金型252で囲まれる領域に樹脂を射出する。軟化温度に加熱された樹脂は、所定の圧力が加えられて、注入口であるゲート254から注入される。キャップ130は凸部253に固定されているので、側面(図5の左右方向)から樹脂が注入されても、位置ずれを起こすことがなく、樹脂が充填されるようになっている。その後、常温まで冷却されて上面(表面)に穴部241を有する樹脂層240が形成され、基板110の上の素子部120を中空封止した中空封止構造200が得られる。
【0035】
第二の実施形態に係る中空封止構造200の製造方法によれば、キャップ130が第二の金型252の凸部253に押圧され、支持された状態で樹脂が注入される構成となっている。そのため、キャップ130が位置ずれを生じることがなく、樹脂層240を形成できるので、より信頼性の高い中空封止構造200を形成することができる。
【0036】
また、上面に穴部241を有した中空封止構造200を製造できる。この穴部241は、パッケージの向きやパッケージの位置決めマーカーとして使用することができ、次工程の作業性を改善することが可能である。
【0037】
なお、さらに信頼性を高めるために、樹脂層240の穴部241に、樹脂層240と同種の樹脂を充填してもよい。また、位置決めマーカーなどにも利用する場合には、穴部241を異なる種類の樹脂などで充填してもよい。
【0038】
また、第二の実施形態では、穴部241が樹脂層240の上面の中央部に設けられるものとしたが、上面であればいずれの場所でも良く、中央からずれた位置に穴部を形成することで、パッケージの向きを容易に識別できるようになる。
また、穴部の形状を非対称な形状とすることで、パッケージの向きを識別することも可能となる。
【0039】
次に、第三の実施形態の中空封止構造300の製造方法について説明する。
なお、第三の実施形態では、第一の金型151、基板110、素子部120については、第一の実施形態と同様の構成であるので、同一の符号で記載して、詳細な記載を省略する。
【0040】
第三の実施形態は、図6で示すように、基板110と、基板110の上面(一面)に設けられた素子部120と、素子部120を覆うように配置されたキャップ330と、キャップ330を覆う樹脂層340と、を備えている。
【0041】
キャップ330は、図6に示すように、下方に向けて開口した箱型の形状をしており、素子部120を覆うように配置されている。第三の実施形態では、キャップ330には、上面の中央部に凹部331が設けられている。
キャップ330は、例えば、樹脂材料、金属材料、セラミック材料などで構成されている。特に、耐熱性や密着性に優れるエポキシ系の材料を用いることが望ましい。また、キャップを後述する樹脂層340と同一の材料で構成した場合には、キャップ330と樹脂層340の熱膨張係数の差がなくなるため、キャップ330と樹脂層340の熱膨張係数の差により生じる界面の剥離が抑制される。
【0042】
樹脂層340は、キャップ330を覆うように配置されている。樹脂層340は、例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などで構成されている。樹脂層340は、基板110と密着し、素子部120を中空封止するためのものであり、キャップ330と樹脂層340により素子部120を中空封止した空間の内部に外気が流入しないようになっている。外気が中空封止した空間に流入した場合、外気の湿気などにより素子部120や配線の劣化が生じ、電子部品の性能の低下を引き起こし、本来の性能が得られなくなる。第三の実施形態では、樹脂層340は、上面(表面)の中央部に穴部341が形成されている。
【0043】
モールド金型350は、第一の金型151と第一の金型151に向けて開口した第二の金型352を備えている。
第三の実施形態では、図7で示すように、第二の金型352の内部の中央部に凸部353が設けられている。凸部353は、基板110に配置されたキャップ330の凹部331と係合し、キャップ330を支持するようになっている。
また、第二の金型352には、下方にゲート354が設けられている。ゲート354は、樹脂層340を形成する際の、樹脂の注入口となる。
【0044】
このように構成された第三の実施形態の中空封止構造300の製造方法について説明する。
まず、基板110の上面(図7の基板基板110の一面)に素子部120が設けられる。次に、基板110の下面(図7の基板110の他面)に第一の金型151を配置する。そして、素子部120およびワイヤボンディングを覆うようにキャップ330を所定の箇所に位置決めして配置する。さらに、キャップ330を覆い、キャップ330の凹部331に凸部353が係合するように第二の金型352を配置する。第一の金型151と第二の金型352で型締めするとともに、凸部353がキャップ330を基板110の一面に向けて押圧し、キャップ330を基板110上に固定するようになっている(図7参照)。
【0045】
次に、キャップ330および基板110と第二の金型352で囲まれる領域に樹脂を注入する。軟化温度に加熱された樹脂は、注入口であるゲートから所定の圧力が加えられて注入される。キャップ330の凹部331は第二の金型352の凸部353と係合し、固定されているので、位置ずれを起こすことがなく、樹脂が充填されるようになっている。その後、常温まで冷却されて、上面(表面)に穴部341を有する樹脂層340が形成され、基板110上の素子部120を中空封止した中空封止構造300が得られる。
【0046】
第三の実施形態に係る中空封止構造300の製造方法によれば、キャップ330の凹部331が第二の金型352の凸部353と係合し、キャップ330が基板110上に支持されるようになっている。そのため、キャップ330を正確な位置に配置し、キャップ330を所定の位置から位置ずれを起こすことがなく樹脂層340を形成できるので、より信頼性の高い中空封止構造300を形成することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る中空封止構造300によれば、樹脂層340の上面(表面)に穴部341を有している。この穴部341は、パッケージの向きやパッケージの位置決めマーカーとして使用することができ、次工程の作業性を改善することが可能である。
【0048】
なお、さらに信頼性を高めるために、樹脂層340の穴部341に、樹脂層340と同種の樹脂を充填してもよい。また、位置決めマーカーなどにも利用する場合には、異なる種類の樹脂などで充填してもよい。
【0049】
また、第三の実施形態では、穴部341が樹脂層340の上面の中央部に設けられるものとしたが、上面(表面)であればいずれの場所でも良く、中央部からずらした位置に穴部を形成することで、パッケージの向きを識別できるようになる。また、穴部の形状を非対称な形状とすることで、パッケージの向きを識別することも可能である。
【0050】
(変形例1)
次に、第三の実施形態の変形例1について説明する。なお、変形例1は、第三の実施形態と同様の構成であるので、同一の符号で記載して、詳細な記載を省略する。
変形例1では、図8で示すように、第二の金型352の凸部353とキャップ330の凹部331をあらかじめ係合させて、基板110の上に配置する。上述した第三の実施形態では、キャップ330と第二の金型352を別々に配置していたが、変形例1では、キャップ330と第二の金型352が一体とされた構成で基板110上に配置することができる。そして、キャップ330を基板110上に位置決めする工程を省略し、製造の自動化を図ることができるので、コストを低減可能となる。
【0051】
なお、第二の実施形態および第三の実施形態において、凸部および第二の金型に孔を設けておき、樹脂充填完了後に第二の金型を所定量上昇させたところで、孔から樹脂を所定量充填することとしてもよい。この場合、充填する樹脂は、樹脂層と同様の樹脂でも、異なる樹脂でもよい。
【0052】
次に、第四の実施形態の中空封止構造400の製造方法について説明する。なお、第一の金型151、基板110、素子部120については、第一の実施形態と同様の構成であるので、同一の符号で記載して、詳細な記載を省略する。また、キャップ330については第三の実施形態と同様の構成であるので同一の符号で記載して、詳細な記載を省略する。
【0053】
第四の実施形態は、図9(a)で示すように、基板110と、基板上に設けられた素子部120と、素子部120を覆うように配置されたキャップ330と、キャップ330を覆う樹脂層440と、を備えている。中空封止構造400の構成は、樹脂層440を除き、第一の実施形態と同様である。
【0054】
樹脂層440は、キャップ330を覆うように配置されている。樹脂層440は、例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などで構成されている。樹脂層440は、基板110と密着し、素子部120を中空封止するためのものであり、キャップ330と樹脂層440により素子部120を中空封止した空間の内部に外気が流入しないようになっている。外気が中空封止した空間に流入した場合、外気の湿気などにより素子部120や配線の劣化が生じ、電子部品の性能の低下を引き起こし、本来の性能が得られなくなる。
【0055】
モールド金型450は、第一の金型151と、第一の金型151と対向配置され第一の金型151に向けて開口した第二の金型452を備えている。
第四の実施形態では、第二の金型452の内部の中央部に凸部453が設けられている。凸部453は、キャップの凹部331と係合し、キャップ330を支持するようになっている。また、凸部453は進退可能に設けられ、突出量が可変できるようになっている。
また、第二の金型452には、下方にゲート454が設けられている。ゲート454は、樹脂層440を形成するときの注入口である。
【0056】
このように構成された第四の実施形態の中空封止構造400の製造方法について説明する。
まず、第一の金型151の上に素子部120が設けられた基板110を配置する。そして、キャップ330の凹部331に凸部453が係合された第二の金型452を基板110の上に配置する(図9(b)参照)。第一の金型151と第二の金型452で型締めするとともに、凸部453がキャップを下方向に押圧し、キャップ330を基板110の上に固定するようになっている。
【0057】
次に、キャップ330および基板110と第二の金型452で囲まれる領域に樹脂を射出する(図9(c)参照)。軟化温度に加熱された樹脂は、注入口であるゲート454から所定の圧力が加えられて注入される。キャップ330の凹部331は第二の金型452の凸部453と係合し、固定されているので、位置ずれを起こすことがなく、樹脂が充填されるようになっている。
【0058】
樹脂の充填が開始された当初は、凸部453でキャップ330を基板に向かう方向(図9(c)の下方)に押さえつけているが、樹脂の充填が進み、樹脂の流動性が残る充填完了の直前に、凸部453は上方に(突出量が小さくなる方向に)移動される。そして、凸部453があった箇所にも樹脂が充填されるように、射出の圧力を加える。
【0059】
このようにして、キャップ330の凹部331や樹脂層440の凹部にも樹脂が充填された中空封止構造400を形成することができる。その後、常温まで冷却されて、基板110の上の素子部120を中空封止した中空封止構造400が得られる。
【0060】
第四の実施形態に係る中空封止構造400の製造方法によれば、キャップ330の凹部331が第二の金型452の凸部453と係合し、キャップ330が基板110の上に支持されるようになっているので、キャップ330を所定の位置から位置ずれを起こすことがなく第二の金型452を配置し、樹脂層440が形成できるので、より信頼性の高い中空封止構造400とすることができる。
【0061】
また、モールド金型450を用いてキャップ330の外面の全体にわたって樹脂層440を形成するので、樹脂層440の外部から圧力が加えられた場合でも、キャップ330にクラックが生じることを抑制でき、中空封止を維持することが可能である。
【0062】
なお、凸部453の移動量を適宜変更することによって、上面(表面)に穴部が設けられた樹脂層を形成することが可能である。この穴部は、パッケージの位置決めマーカーやパッケージの向きを識別するマーカーとして利用することができる。
【0063】
また、第四の実施形態では、キャップ330には、凹部331が設けられている場合について説明したが、キャップに凹部が設けられていなくてもよい。この場合には、キャップを基板上の所定の位置に配置するようにすればよい。
【0064】
また、凸部および第二の金型に孔を設けておき、凸部を所定量後退させた後に、凸部から樹脂を所定量充填することとしてもよい。この場合、充填する樹脂は、樹脂層と同じ樹脂でも異なる樹脂でもよい。
【0065】
以上、本発明の実施形態である中空封止構造の製造方法について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0066】
なお、第二の実施形態、第三の実施形態および第四の実施形態において、凸部および第二の金型の内部に孔を設け、孔は吸着手段と接続されている構成としてもよい。この場合には、キャップを第二の金型の凸部に吸着して固定し、キャップと第二の金型を一体のものとして、基板上に配置することが可能である。樹脂を充填する際には、吸着をオフにする。また、樹脂のカス詰まりを排除可能な摺動ピンを備えていることが望ましい。
【0067】
上記実施の形態では、基板の上面に第二の金型が配置され、基板の下面に第一の金型が配置される構成について説明したが、基板の上面に第一の金型が配置され、基板の下面に第二の金型が配置される構成としてもよい。また基板は、水平方向と平行に配置される場合について説明したが、鉛直方向と平行に基板が配置されてもよい。
【0068】
上記実施の形態では、樹脂の射出条件は、キャップの強度や素子部の耐熱温度などに応じて、適宜最適な条件を選択すればよい。
【0069】
上記実施の形態では、素子部が半導体素子の場合について説明したが、MEMSデバイス、表面弾性波デバイス、赤外線センサなどの各種センサや圧電素子などの機能素子であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
100、200、300、400 中空封止構造
110 基板
120 素子部
130、330 キャップ
140、240、340、440 樹脂層
151 第一の金型
152 第二の金型
153、254、354、454 ゲート
241、341 穴部
253、353、453 凸部
331 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に素子部が配置された基板の前記一面と反対側となる他面に、第一の金型を配置する第一の工程と、
前記素子部を覆うように前記基板の一面にキャップを配置するとともに、前記キャップを覆うように第二の金型を前記基板の一面に配置し型締めする第二の工程と、
前記第二の金型に設けられたゲートより該第二の金型の内部に、樹脂を注入する第三の工程と、を備えることを特徴とする中空封止構造の製造方法。
【請求項2】
前記第二の工程は、前記素子部を覆うように前記基板の一面に前記キャップを配置する工程と、
前記基板の一面に配置された前記キャップを覆うように前記第二の金型を前記基板の一面に配置し型締めする工程と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の中空封止構造の製造方法。
【請求項3】
前記第二の工程は、前記キャップと前記第二の金型を一体とする工程と、前記素子部を覆うように前記キャップと前記第二の金型を同時に配置し型締めする工程と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の中空封止構造の製造方法。
【請求項4】
前記第二の工程において、前記第二の金型に設けられた凸部により、前記キャップが前記基板の一面に向けて押圧されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の中空封止構造の製造方法。
【請求項5】
前記第二の工程において、前記第二の金型に設けられた凸部と前記キャップに形成された凹部が係合されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の中空封止構造の製造方法。
【請求項6】
前記第二の工程において、前記第二の金型に設けられた凸部に前記キャップが吸着されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の中空封止構造の製造方法。
【請求項7】
前記第二の金型の凸部は進退可能に設けられ、
前記第三の工程において、樹脂を注入しながら、突出してキャップを押圧した状態の前記凸部を後退させ、キャップから離間させることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の中空封止構造の製造方法。
【請求項8】
前記第二の金型の凸部は進退可能に設けられるとともに樹脂注入孔が設けられ、
前記第三の工程において、突出してキャップを押圧した状態で、樹脂層を形成した後に前記凸部を後退させてキャップから離間させ、前記樹脂注入孔から樹脂が注入されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の中空封止構造の製造方法。
【請求項9】
基板と、前記基板上に設けられた素子部と、前記素子部を覆うキャップと、前記キャップを覆う樹脂層と、を備えた中空封止構造であって、
前記樹脂層は、表面に開口し、キャップをへて基板の一面に向かうように延出された穴部を有することを特徴とする中空封止構造。
【請求項10】
基板と、前記基板上に設けられた素子部と、前記素子部を覆うキャップと、前記キャップを覆う樹脂層と、を備えた中空封止構造であって、
前記キャップは、凹部を有することを特徴とする中空封止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−69961(P2013−69961A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208640(P2011−208640)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】