説明

中空成形品の成形方法および中空成形品

【課題】接合部強度は大きくて、2次成形時には、インテークマニホルドのような接合部が長くても充分に充填できると共に、ガスを抜くことも、さらには成形品の接合状態を目視もできる中空成形品の成形方法を提供する。
【解決手段】一対の半中空成形品(A、A’)を1次成形するとき、接合空間部(i)の内周面に断面形状が鋸の歯状を呈する連続した複数個の凹凸(xy)を成形する。また、コーナ部(j、j)には丸みを付け、フランジ部(g、g’)間には隙間(2e)が生じるように成形する。2次成形時に、前記接合空間部(i)に溶融樹脂を射出・充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の1次半中空成形品を成形する1次成形と、前記1次成形で得られた一対の1次半中空成形品を互いに突き合わせ、突き合わせることにより、一対の1次半中空成形品の外周部に構成される接合空間部に溶融樹脂を射出充填して一対の1次半中空成形品を一体化する2次成形とから中空成形品を得る、中空成形品の成形方法および中空成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製の浮標、インテークマニホールドのような中空成形品の製造方法として射出成形機による製造法が知られている。射出成形機により中空成形品を製造する場合は、1次成形において中空成形品を二つ割の半中空成形品あるいは分割体として成形し、2次成形においてその分割面を突き合わせ、そして突き合わせた部分に溶融樹脂を射出して1個の中空成形品を製造している。
【0003】
この射出成形方法の実施に使用される金型は、図3の(ア)に模式的に示されているように、概略的には、固定金型100とスライド金型100’とから構成されている。固定金型100では一方の1次半中空成形品101が成形され、そしてスライド金型100’では他方の1次半中空成形品101’が成形されるようになっている。したがって、図3の(ア)には示されていないが、スライド金型100’を第1位置にして、1次半中空成形品101、101’を、それぞれの突合部に接合部102、102’を有するように1次成形し、そして1次半中空成形品101、101’が固化した後にスライド金型100’を開いて、第2位置へスライドさせ、そして型締めすると、一対の1次半中空成形品101、101’は、突合部において突き合わされる。突き合わせることにより、図3の(ア)に示されているように、接合部102、102’により円周方向が開いた接合空間部103が構成される。そこで、図には示されていないが、スプルからゲートを通して2次成形用の溶融樹脂を接合空間部103に射出・充填すると、一対の1次半中空成形品101、101’は接合空間部103において接合され、中空成形品が成形される。スライド金型100’を開くと、エジェクタピンが突き出て中空成形品が得られる。
【0004】
上記の接合空間部103の断面形状は単純な方形になっているので、金型100、100’の構造も単純になり、安価な金型により中空成形品を安価に成形することができる利点を有する。また、接合用の2次成形用の樹脂の円周部104の表面は、製品になると外部に露出するので、接合空間部103の充填状態、厳密には表面の充填状態を目視により検査することもできる。さらには、2次射出時のガス抜きができる利点もある。しかしながら、接合空間部103の形状が単純で接合強度は必ずしも大きくはない。また、接合空間部103のコーナ部105には溶融樹脂が回り難く、この点からも接合強度は落ちる。さらには、接合空間部103の断面形状が略方形になり、その半径外方の開放部分は、スライド金型100’と可動金型100とに直接接しているが、これらの金型の温度は2次成形用の溶融樹脂の温度よりも低く、しかも熱伝導が大きいので、充填される2次成形用の溶融樹脂が接合空間部103内を回り、そして接合空間部103に密に充填される前に、金型100、100’に接している部分から固化が始まることもあり得る。このような固化が多少生じても、2次成形用の射出圧力を高くすると、問題はある程度解決されると予想されるが、射出圧力を高くすると、2次成形用の溶融樹脂が中空成形品の内側へ漏れ、充填不足を招くことになり、根本的な解決にはならない。つまり、接合空間部103が浮標のように長いときは未接合部あるいは未充填部が生じる可能性もある。
【0005】
図3の(イ)に示されている従来例は、接合空間部103が閉じた閉鎖空間になっているので、2次成形用の溶融樹脂は金型と直接接することはない。したがって、溶融樹脂の熱が金型の方へ逃げることはなく、円周方向に長い接合空間部103も充填できる利点はある。しかしながら、接合空間部103は1次半中空成形品101’のフランジ部106により覆われているので、目視による検査はできない。また、接合空間部103の形状が方形で四隅105、105、…には2次成形用の樹脂が回り難いので、同様に接合強度の点で問題がある。そこで、特許文献1、2により接合部の構造が改良された中空成形品あるいは中空成形品の成形方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−225080号
【特許文献2】特開2003−19732号
【0007】
特許文献1により提案されている中空成形品の接合空間部103の内周面には、図3の(ウ)に示されているように2条の山形凸条107、107が成型されている。また、フランジ部108、108’の対向間には隙間110が存在し、接合空間部103は前記隙間110以外は、フランジ部108、108’により金型100、100’とは隔離されている。
【0008】
図3の(エ)には、金型は示されていないが、特許文献2に記載されている中空体の接合空間部103の近傍の断面が示されている。この接合空間部103は断面形状は略三角形を呈し、その内部は狭いスリット状の開口部111により外周部に開放されている。また、接合空間部103は、立上部112、112’により金型から隔離されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したような射出成形方法によると、スライド金型100’を固定金型100に対してスライドさせて、1次成形で成形された一対の1次半中空成形品101、101’を突き合わせ、そして2次成形により接合空間部103に溶融樹脂を射出・充填することにより、中空成形品を得ることができるので、各工程が自動化でき中空成形品を量産できるという利点がある。また、一対の1次半中空成形品101、101’が射出成形により成形されるので、複雑な形状の中空成形品も製造できるなどの特徴も有する。特に、特許文献1に記載されている樹脂成形品の接合部には2条の山形突起107、107が成形されているので、接合面積は広くはなっている。また、フランジ部108、108’の対向間には隙間110があるので、表面の接合状態を目視できる利点も認められる。しかしながら、単なる山形突起107、107では接合面積の増大には限界があり、強度の向上もさほど期待できない。また、接合空間部103のコーナ部は略直角になっているので、2次成形用の溶融樹脂が回り難いという問題もある。特許文献2に記載の構造によると、狭い隙間111はあるが実質的に閉鎖された接合空間部103に2次成形用の溶融樹脂を射出充填するので、すなわち接合空間部103が熱伝導の大きい金型に直接的には接していないので、2次成形用の溶融樹脂は、冷却固化されることなく、接合空間部103に充填され、充填効率が向上するという特徴を有する。また、冷却固化しないので2次成形時の射出圧力を低くできる。したがって、薄肉の中空成形品を成形することもできる。さらには、隙間111があるので、ガス抜きもできるし、接合状態を外部から目視することもできる。しかしながら、接合強度の点でさらなる改良の余地が認められ、また接合空間部103のコーナ部105、105には2次成形用の溶融樹脂の回りが悪るいという問題もある。
【0010】
本発明は、上記したような従来の問題を解決した中空成形品の成形方法および中空成形品を提供しようとするもので、具体的には一対の半中空成形品の接合部の強度は大きく、インテークマニオールドのような接合部が長くても接合用の溶融樹脂を充分に充填できる中空成形品の成形方法および接合強度の大きい中空成形品を提供することを目的としている。また、接合用の溶融樹脂を射出・充填するときにはガスを抜くことができ、金型から取り出すと、接合状態を目視できるあるいは推定できる中空成形品の成形方法および中空成形品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために、一対の1次半中空成形品を成形する1次成形と、前記1次成形で得られた一対の1次半中空成形品を互いに突き合わせ、突き合わせることにより構成される接合空間部に溶融樹脂を射出充填して一対の1次半中空成形品を一体化する2次成形とから構成される。1次成形時には、接合空間部の内周面には断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸を有すると共に、接合空間部の半径外方には該接合空間部の幅よりも狭い開かれた隙間を有するように成形する。さらには、接合空間部のコーナ部には丸みを有するように成形する。
【0012】
すなわち、請求項1に記載の発明は、前記目的を達成するために、一対の1次半中空成形品を成形する1次成形と、前記1次成形で成形された一対の1次半中空成形品を開口突合部において互いに突き合わせ、突き合わせることにより、前記一対の1次半中空成形品の外周部に構成される接合空間部に溶融樹脂を射出充填して前記一対の1次半中空成形品を一体化する2次成形とから中空成形品を得る成形方法であって、前記1次成形時には、前記接合空間部の内周面には断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸を有すると共に、前記接合空間部の半径外方には該接合空間部の幅よりも狭い開かれた隙間を有するように成形し、前記2次成形時には、前記接合空間部に2次成形用の溶融樹脂を射出充填するように構成される。請求項2に記載の発明は、一対の1次半中空成形品を成形する1次成形と、前記1次成形で成形された一対の1次半中空成形品を開口突合部において互いに突き合わせ、突き合わせることにより、前記一対の1次半中空成形品の外周部に構成される接合空間部に溶融樹脂を射出充填して前記一対の1次半中空成形品を一体化する2次成形とから中空成形品を得る成形方法であって、前記1次成形時には、前記接合空間部の内周面には断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸を、前記接合空間部の半径外方には該接合空間部の幅よりも狭い開かれた隙間を有すると共に、前記接合空間部のコーナ部には丸みを有するように成形し、前記2次成形時には、前記接合空間部に2次成形用の溶融樹脂を射出充填するように構成される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、一対の1次半中空成形品を成形する1次成形と、前記1次成形で成形された一対の1次半中空成形品を開口突合部において互いに突き合わせ、突き合わせることにより、前記一対の1次半中空成形品の外周部に構成される接合空間部に溶融樹脂を射出充填して前記一対の1次半中空成形品を一体化する2次成形とから中空成形品を得る成形方法であって、前記1次成形時には、前記接合空間部の半径外方の長さが円周方向の幅より長くなるように成形すると共に、前記接合空間部の半径外方には前記幅よりも狭い開かれた隙間を有するように成形し、前記2次成形時には、前記接合空間部に2次成形用の溶融樹脂を射出充填するように構成される。請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の方法において、前記1次成形時には、前記接合空間部の内周面に断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸も成形するように構成される。
【0014】
請求項5に記載の発明は、一対の1次半中空成形品が、その開口突合部において互いに突き合わされることにより、その外周部に構成される接合空間部に溶融樹脂が射出充填されて一体化されている中空成形品であって、前記接合空間部に充填されている溶融樹脂中には、該接合空間部の内周面に形成されている断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸の一部が溶け込んでいると共に、前記溶融樹脂は、前記接合空間部の半径外方の、該接合空間部の幅よりも狭い開かれた隙間にも充填されているように構成される。請求項6に記載の発明は、一対の1次半中空成形品が、その開口突合部において互いに突き合わされることにより、その外周部に構成される接合空間部に溶融樹脂が射出充填されて一体化されている中空成形品であって、前記接合空間部に充填されている溶融樹脂中には、該接合空間部の内周面に形成されている断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸の一部が溶け込んでいると共に、前記溶融樹脂は、前記接合空間部の半径外方の、該接合空間部の幅よりも狭い開かれた隙間および前記接合空間部の丸みを付けられたコーナ部にも充填されているように構成される。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によると、1次成形と2次成形とから中空成形品を得るとき、前記1次成形時には、前記接合空間部の内周面には断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸を有すると共に、前記接合空間部の半径外方には該接合空間部の幅よりも狭い開かれた隙間を有するように成形するので、接合空間部に溶融樹脂を射出するとき、ガス成分は前記隙間から外部へ逃げる。これにより、ガスを巻き込んで接合強度が落ちるようなことはない。また、接合空間部は、該空間部の幅よりも狭い開かれた隙間で金型に接しているので、溶融樹脂の熱が金型に奪われ、接合空間部に充填される前に固化するようなことはない。さらには、接合空間部の半径外方には該接合空間部の幅よりも狭い開かれた隙間を有するので、一体化された中空成形品の接合部の外観を目視し、隙間が充填されていると、内部の接合空間部は密に充填されていると推定することができる。すなわち、接合状態の検査が目視によりできる。
特に、本発明によると、断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸を有する接合空間部に射出・充填するので、容積の小さい凹凸の先端部は溶融樹脂中に溶け込む。あるいは溶けて一体化される。これにより、単なる接合に比べて接合強度が大幅に大きくなるという、本発明に特有の効果が得られる。また、他の発明によると、1次成形時には接合空間部のコーナ部に丸みを有するように成形するので、2次成形時にはコーナ部にも溶融樹脂が回り、接合強度がさらに向上する効果が得られる。
【0016】
他の発明によると、1次成形時には、接合空間部の半径外方の長さが円周方向の幅より長くなるように成形するので、2次成形用の溶融樹脂の量は同じでも接合面積は広くなる。これにより、接合強度の大きい中空成形品が得られる。また、1次成形時には接合空間部の半径外方には前記幅よりも狭い開かれた隙間を有するように成形するので、前述した発明と同様な効果が得られる。また、他の発明によると、1次成形時には接合空間部の内周面に、断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸も成形するので、上記したように接合強度がさらに大きい中空成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態を示す図で、その(ア)は第1の実施の形態に係る成形状態あるいは中空成形品を、その(イ)は第2の実施の形態に係る成形状態あるいは中空成形品をそれぞれ示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る成形方法に使用される金型を示す図で、その(ア)は金型を開いた状態を、その(イ)は閉じた状態をそれぞれ示す断面図である。
【図3】従来例の接合部近傍を示す図で、その(ア)、(イ)は一般的な従来例を、その(ウ)、(エ)は、特許文献1、2にそれぞれ記載の従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施の形態によると、中空成形品は、一対の第1、2の半中空成形品を成形する1次成形と、1次成形で成形された第1、2の半中空成形品を突き合わせ、突き合わせることにより構成される接合空間部に溶融樹脂を射出して一体化する2次成形とから構成されているが、初めに、2次成形状態あるいは中空成形品から説明する。図1の(ア)は、第1の実施の形態に係る2次成形状態を示す断面図である。第1、2の半中空成形品は、互いに異なる構造であっても良いが、図示の本実施の形態によると、第1、2の半中空成形品A、A’は実質的に同じ構造をしているので、以下主として一方の半中空成形品Aについてのみ説明し、他方の半中空成形品A’の構成要素には区別する必要があるときに同じ参照数字にダッシュ「’」を付けて重複説明はしない。
【0019】
本実施の形態によると、第1の半中空成形品Aは内部が窪んだ本体部aと、2次成形時に本体部aが突き合わされる開口突合部bの近傍に一体的に成形されている接合部cとからなっている。接合部cは、開口突合部bから距離Eだけ内側に寄った位置から半径外方へ立ち上がっている立上部f、この立上部fの頂部から開口突合部bの方向に延びているフランジ部gとからなっている。フランジ部gは、断熱作用を奏するに充分な所定厚さになっている。このフランジ部gの先端部と開口突合部bとの間隔eは、立上部fの内周面fnと開口突合部bとの距離Eよりも所定量だけ小さい。従って、第1、2の半中空成形品A、A’を突き合わせると、後述するように接合空間部iが構成されるが、この接合空間部iの外周部には隙間2eが生じる。この隙間2eに充填される溶融樹脂だけが、後述する金型1、20に接することになる。また、この隙間2eから2次成形時のガスが抜けることになる。
【0020】
第1、2の半中空成形品A、A’の開口突合部b、b’を突き合わせると、接合空間部iが構成されるが、その半分の接合空間部が第1の半中空成形品Aにより構成される。すなわち、半中空成形品Aの開口突合部bの内側の外周面hnと、立上部fの内周面fnと、フランジ部gの内周面gnとにより接合空間部iの半分が構成される。このように構成される接合空間部iのコーナ部j、j、…は丸みRが付けられている。これにより2次成形用の溶融樹脂はコーナ部j、j、…まで密に充填される。
【0021】
また、本実施の形態によると、立上部fの内周面fnには、断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸xyが成形されている。鋸の歯状の複数個の凹凸xyが付けられているので、2次成形用の溶融樹脂との接触面積は広くなり、また2次成形用の溶融樹脂の熱により複数個の凹凸xyの先端部が2次成形用の溶融樹脂中に溶け、一体化される。これにより、接合強度はさらに大きくなる。
【0022】
次に、本発明の方法の実施に使用される金型の実施の形態を説明する。図2の(ア)は、スライド金型を第1の位置で開いた状態で示す断面図であるが、同図に示されているように、本実施の形態に係わる金型は、概略的には図1の(ア)において右方に位置する固定金型1と、この固定金型1に対して型開閉および図2の(ア)において上下方向にスライド的に駆動されるスライド金型20から構成されている。図2の(ア)には、固定金型1が固定的に取り付けられている固定盤、スライド金型20を型開閉方向に駆動する可動盤、スライド金型20をスライド的に上下方向に駆動する駆動装置、スライド金型20に設けられるエジェクタ装置等は示されていない。
【0023】
図2の(ア)において右方に位置する固定盤の略中心には、この固定盤を横切るようにしてスプル30が設けられている。また、固定盤と固定金型1との間には、スプル30を中心にして図2の(ア)において上下方向にバランスして対称的に延びた1次成形用のランナ31と、さらに下方に延びた2次成形用のランナ32とが形成されている。これらのランナ31、32は、図2に示されていないスプル切換装置の箇所で連絡している。スプル切換装置は、例えば本出願人が取得している特許第3047213号明細書に記載されているように構成されている。
【0024】
固定金型1の上方位置には、パーティングラインPから外方に突き出た側面形状が方形の所定大きさの固定側コア2が形成されている。固定側コア2の周囲には、所定の間隔をおいて固定側コア2を取り囲むようにして環状の小凹部3が形成されている。この環状の小凹部3により第2の半中空成形品A’の開口突合部bに環状の係合凸部k’が成形される。環状の小凹部3の外側には、パーティングラインPから外方に突き出た接合空間部成形用の環状の小コア4が形成されている。この環状の小コア4の先端面には断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凸凹5が付けられている。この複数個の凸凹5により、半中空成形品A’の接合空間部の内周面に複数個の凹凸xyが成形されることになる。また、環状の小コア4の先端部の角6、6は丸く切り落とされている。これにより、接合空間部iのコーナ部j、jには丸みRが成形される。このように形成されている小コア4の外側にフランジgを成形する小コア7が設けられている。
【0025】
固定金型1の下方位置には、パーティングラインP側に開口した側面形状が方形の所定深さの固定側凹部12が形成されている。この固定側凹部12は、底壁13、底壁13から立ち上がっている周壁14、周壁14の上方端から半径外方へ広がっている拡大凹部15等から構成されている。なお、図2の(ア)は、ゲート16を通らない位置で断面された断面図であるので、ゲート16は点線で示されている。
【0026】
上記の固定側コア2は、詳しくは後述するスライド金型20のスライド側凹部と共働して第2の半中空成形品A’を成形するための第2のキャビテイを構成し、拡大凹部15は、スライド金型20の環状の小コアと共働して接合空間部の一部を成形するためのキャビテイを構成する。
【0027】
スライド金型20の上方位置には、パーティングラインP側に開口した側面形状が方形のスライド側凹部22が形成されている。このスライド側凹部22は、底壁23、底壁23から立ち上がっている周壁24、周壁24の上方端から外方へ広がっている拡大凹部25等とから構成されている。このスライド側凹部22により、前述した固定金型1の固定側コア2と共働して第2の半中空成形品A’を成形するための第2のキャビテイが構成される。また、拡大凹部25は、固定金型1の小コア4と1次成形時に共働して接合空間部の半分を成形するためのキャビテイを構成する。
【0028】
スライド金型20の下方位置には、パーティングラインPから外方に突き出た側面形状が同様に方形のスライド側コア21が形成されている。このスライド側コア21は、固定金型1の固定側凹部12と共働して第1のキャビテイを構成するもので、固定側凹部12よりも中空成形品の肉厚分だけ小さい。そして、その周囲には所定の間隔をおいて、スライド側コア21を取り囲むようにして環状の小コア26が形成されている。この小コア26により第1の半中空成形品Aの開口突合部bに係合用の環状の凹部mが成形される。環状の小コア26の外側には、パーティングラインPから外方に突き出た接合空間部成形用の環状の小コア34が形成されている。この環状の小コア34の先端面には断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凸凹35が付けられている。この複数個の凸凹35により、第1の半中空成形品Aの接合空間部iの内周面に複数個の凹凸xyが成形されることになる。また、環状の小コア34の先端部の角36、36は丸く切り落とされている。これにより、接合空間部iのコーナ部j、jには丸みRが成形される。このように形成されている小コア34の外側にフランジgを成形するコア37が設けられている。
【0029】
固定金型1には、1次成形用の第1、2のスプル8、9と、2次成形用のスプル10とが設けられている。1次成形用の第1、2のスプル8、9の一方は共に、前述した1次成形用のランナ31に連通している。そして、第1のスプル8の他方は、固定側コア2の頂部に開口し、第2のスプル9の他方は固定側凹部12の底部13にそれぞれ開口している。2次成形用のスプル10は、中空成形品の大きさにより複数個設けることもできるが、図2の(ア)には1個設けた例が示されている。
【0030】
次に、上記の固定金型1とスライド金型20を使用して、1次成形により第1、2の半中空成形品A、A’を成形し、そして開口突合部b、b’を突き合わせることにより構成される接合空間部iに溶融樹脂を射出・充填する2次成形により中空成形品を成形する成形法について説明する。
【0031】
スライド金型20を、図2(ア)に示されている位置で、すなわち第1位置において型締めする。そうすると、図2の(イ)に示されているように、固定金型1の固定側コア2と接合空間部成形用の小コア4とフランジ成形用のコア7と、スライド金型20のスライド側凹部22と拡大凹部25とにより、第2の半中空成形品A’を成形するための第2のキャビテイCa’が構成される。同時に、固定側金型1の固定側凹部12と拡大凹部15と、スライド金型20のスライド側コア21と接合空間部成形用の小コア34とフランジ成形用のコア37とにより、第1の半中空成形品Aを成形するための第1のキャビテイCaが構成される。
【0032】
固定盤のスプル30から従来周知のようにして、1次成形用の溶融樹脂を射出する。溶融樹脂は、固定盤のスプル30から1次成形用のランナ31、第1、2のスプル8、9を通って第1、2のキャビテイCa、Ca’に射出充填される。1次成形用の溶融樹脂が充填されている途中の状態が図2の(イ)に示されている。この1次成形により、第1、2の1次半中空成形品A、A’が実質的に同時に成形される。このとき、本体部a、a’の外周部に接合部c、c’が一体的に成形される。
【0033】
冷却固化を待って、スライド金型20を所定間隔だけ開く。そうして、スライド金型20を、第2の1次半中空成形品A’がスライド金型20に付いた状態で下方へスライドさせ、第2の半中空成形品A’の開口突合部b’が、第1の半中空成形品Aの開口突合部bに整合する第2の位置へスライドさせる。そして型締めする。そうすると、第1、2の1次半中空成形品A、A’の開口突合部b、b’が当接し、図1の(ア)に示されているように、環状の接合空間部iが構成される。このようにして構成される接合空間部iの内周面には、断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸xyが成形されている。また、コーナ部j、jには丸みが付き、接合空間部iは狭い隙間2eだけを通して金型1、20に接している。スプル切換装置を切り換え、スプル30を2次成形用のランナ10に連通させる。
【0034】
射出機から2次成形用の溶融樹脂を射出する。溶融樹脂は、固定盤のスプル30から2次成形用のランナ32およびスプル10を通って、ゲート16から接合空間部iに射出される。このとき、接合空間部iは、狭い隙間2e以外は断熱性の樹脂により取り囲まれているので、射出される2次成形用の溶融樹脂が金型1、20に接触して冷却されることなく、接合空間部iに充填される。充填するとき、接合空間部iのガスは、充填される溶融樹脂により半径外方へ押し出され、隙間2eから排出される。この2次成形により、第1、2の1次半中空成形品A、A’は一体化される。冷却固化を待ってスライド金型20を開く。エジェクタピンにより中空成形品が突き出される。上記操作を繰り返して成形する。
【0035】
図1の(イ)に本発明の第2の実施の形態が示されている。第2の実施の形態については、要部の構成要素に同じ参照文字を入れ、詳しい説明はしないが、本実施の形態によると、接合空間部iの半径外方の長さLは、円周方向の幅Wの、例えば2倍以上になっている。これにより、2次成形用の溶融樹脂の量は同じでも接合面積は広くなり、接合強度は大きくなっている。本実施の形態によっても、接合空間部iのコーナ部は角が取られているので、コーナ部も充填される。また、2次成形用の溶融樹脂は狭い隙間w以外は金型1、20から隔離されているので、2次成形用の溶融樹脂が充填途中で固化するようなことはない。2次成形時のガスは隙間wから逃げる。
【0036】
第2の実施の形態も変形が可能で、例えば接合空間部iの内周面に、第1の実施の形態と同様に断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸を付けることもできる。また、第1、2の実施の形態における隙間2e、wは、比較的広く図示されているが、2次成形時にガスが抜け、また接合空間部iの充填状態が目視できると、あるいは充填状態を推定できると、隙間2e、wは狭くても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 固定金型 2 固定側コア
5 凸凹 12 固定側凹部
20 スライド金型 21 スライド側コア
22 スライド側凹部 35 凸凹
Ca 第1のキャビティ Ca’ 第2のキャビティ
A、A’ 第1、2の半中空成形品
b、b’ 開口突合部
c、c’ 接合部
e、w 間隔(隙間)
g、g’ フランジ部
i 接合空間部
j、j’ コーナ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の1次半中空成形品(A、A’)を成形する1次成形と、前記1次成形で成形された一対の1次半中空成形品を開口突合部(b、b’)において互いに突き合わせ、突き合わせることにより、前記一対の1次半中空成形品の外周部に構成される接合空間部(i)に溶融樹脂を射出充填して前記一対の1次半中空成形品を一体化する2次成形とから中空成形品を得る成形方法であって、
前記1次成形時には、前記接合空間部(i)の内周面には断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸(xy)を有すると共に、前記接合空間部の半径外方には該接合空間部の幅よりも狭い開かれた隙間(2e)を有するように成形し、
前記2次成形時には、前記接合空間部に2次成形用の溶融樹脂を射出充填することを特徴とする中空成形品の成形方法。
【請求項2】
一対の1次半中空成形品(A、A’)を成形する1次成形と、前記1次成形で成形された一対の1次半中空成形品を開口突合部(b、b’)において互いに突き合わせ、突き合わせることにより、前記一対の1次半中空成形品の外周部に構成される接合空間部(i)に溶融樹脂を射出充填して前記一対の1次半中空成形品を一体化する2次成形とから中空成形品を得る成形方法であって、
前記1次成形時には、前記接合空間部の内周面には断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸(xy)を、前記接合空間部の半径外方には該接合空間部の幅よりも狭い開かれた隙間(2e)を有すると共に、前記接合空間部のコーナ部(j、j)には丸みを有するように成形し、
前記2次成形時には、前記接合空間部に2次成形用の溶融樹脂を射出充填することを特徴とする中空成形品の成形方法。
【請求項3】
一対の1次半中空成形品を成形する1次成形と、前記1次成形で成形された一対の1次半中空成形品を開口突合部(b、b’)において互いに突き合わせ、突き合わせることにより、前記一対の1次半中空成形品の外周部に構成される接合空間部(i)に溶融樹脂を射出充填して前記一対の1次半中空成形品を一体化する2次成形とから中空成形品を得る成形方法であって、
前記1次成形時には、前記接合空間部の半径外方の長さ(L)が円周方向の幅(W)より長くなるように成形すると共に、前記接合空間部の半径外方には前記幅よりも狭い開かれた隙間(w)を有するように成形し、
前記2次成形時には、前記接合空間部に2次成形用の溶融樹脂を射出充填することを特徴とする中空成形品の成形方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記1次成形時には、前記接合空間部の内周面に断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸(xw)も成形することを特徴とする中空成形品の成形方法。
【請求項5】
一対の1次半中空成形品が、その開口突合部において互いに突き合わされることにより、その外周部に構成される接合空間部に溶融樹脂が射出充填されて一体化されている中空成形品であって、
前記接合空間部に充填されている溶融樹脂中には、該接合空間部の内周面に形成されている断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸の一部が溶け込んでいると共に、前記溶融樹脂は、前記接合空間部の半径外方の、該接合空間部の幅よりも狭い開かれた隙間(2e)にも充填されていることを特徴とする中空成形品。
【請求項6】
一対の1次半中空成形品が、その開口突合部において互いに突き合わされることにより、その外周部に構成される接合空間部に溶融樹脂が射出充填されて一体化されている中空成形品であって、
前記接合空間部に充填されている溶融樹脂中には、該接合空間部の内周面に形成されている断面形状が略三角形を呈する連続した鋸の歯状の複数個の凹凸の一部が溶け込んでいると共に、前記溶融樹脂は、前記接合空間部の半径外方の、該接合空間部の幅よりも狭い開かれた隙間(2e)および前記接合空間部の丸みを付けられたコーナ部(j、J)にも充填されていることを特徴とする中空成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−218700(P2011−218700A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91618(P2010−91618)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】