説明

中空樹脂成形品の製造装置及び製造方法

【課題】外部に開口する筒部を有し、且つかかる筒部の内径切削が不要とされた中空樹脂成形品を低コストで製造可能な技術を提供する。
【解決手段】押出機22の先端に取り付けられた押出ダイと当接せしめられた状態下で、パリソンが筒部形成キャビティ62内に充填されることにより、目的とする中空樹脂成形品の筒部を形成する充填型42と、該充填型42と該押出ダイとの当接状態を解除可能にロックするロック機構54と、該充填型42を該押出ダイとの当接状態から下側基準位置にまで下降させる移動機構52と、ブロー成形用型26の成形キャビティ内に収容されたパリソンの内部に圧力気体を吹き込んで、前記中空樹脂成形品の筒部を除く部分をブロー成形する気体吹込手段60とを含んで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空樹脂成形品の製造装置及び製造方法に係り、特に、外方に開口する筒部が端部部位に設けられた中空樹脂成形品を有利に製造する装置と方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂製のホース(チューブやダクトを含む。以下、同一の意味において使用する)や容器等の中空樹脂成形品は、多くの場合、ブロー成形によって製造されている。このブロー成形による中空樹脂成形品の製造に際しては、一般に、押出機と、押出機の先端に取り付けられて、パリソンを押し出す押出ダイと、互いに接近離隔可能に配置された複数の分割型を有するブロー成形用型と、圧縮空気等の圧力気体をパリソン内に吹き込む気体吹込装置とを備えたブロー成形装置が用いられ、ブロー成形用型の複数の分割型同士の間に形成される成形キャビティ内に、押出ダイから押し出されたパリソンが収容された状態において、かかるパリソンの内部に、気体吹込装置から圧力気体が吹き込まれて、パリソンが膨張せしめられることにより、目的とする中空樹脂成形品が製造されている。
【0003】
このような従来のブロー成形装置を用いたブロー成形によれば、目的とする中空樹脂成形品を容易に得ることが出来る。しかしながら、よく知られているように、かかるブロー成形では、得られる中空樹脂成形品の肉厚や内周寸法が、所望の寸法となるように厳密に管理することが困難であった。このため、例えば、端部部位に設けられた外方に開口する筒部内に、所定の連結部材が挿入乃至は嵌入され、連結されて使用される中空樹脂成形品を得る際には、通常、上記の如きブロー成形を行った後、このブロー成形された中空樹脂成形品の筒部に対して、その内径が所望の寸法となるように、エンドミル等の回転刃物を用いた内径切削が実施されており、それが、目的とする中空樹脂成形品の効率的な生産の妨げとなっていた。しかも、かかる中空樹脂成形品が、例えば、自動車の吸気ホースのように、成形品内の異物の存在によって、品質が著しく低下したり、或いは使用不能となったりするものである場合には、内径切削によって不可避的に生ずる切屑を、成形品内から完全に除去する必要があり、そのために、大変な労力が要されるだけでなく、多大なコスト負担も強いられていたのである。
【0004】
かかる状況下、下記特許文献1には、外方に開口する筒部が端部部位に設けられた中空樹脂成形品の製造に際して、筒部の内径切削を不要とした中空樹脂成形品の製造装置が、明らかにされている。即ち、そこに開示の装置にあっては、筒部(特許文献1ではプラスチックネック部と称される)に対応した形状をもって下方に開口する筒部形成キャビティを有する充填型(特許文献1ではネック金型と称される)を有し、この充填型が、ブロー成形用型の下方に配置された押出ダイに対して、筒部形成キャビティを押出ダイのダイ間隙に連通させつつ、当接せしめられた状態下で、押出ダイから押し出されたパリソンの一部が、筒部形成キャビティ内に充填されることによって、筒部が形成されるようになっている。また、かくして筒部形成キャビティ内で筒部が形成された状態から、充填型が上昇せしめられる一方、その充填型の上昇量に応じた分だけ、押出ダイからパリソンが押し出され、そして、かかるパリソンが、ブロー成形用型の成形キャビティ内に収容された状態で、パリソン内に圧縮空気が吹き込まれて、パリソンが膨張せしめられることにより、目的とする中空樹脂成形品が得られるようになっている。このような製造装置を用いれば、筒部が、筒部形成キャビティに対応した所望の形状と寸法とをもって形成されるため、ブロー成形後の筒部に対する内径切削が、有利に省略され得るのである。
【0005】
ここで、従来から一般に使用されるブロー成形装置においては、ブロー成形用型の上方に位置せしめられた押出ダイから、パリソンが、上から下に向かって押し出されるようになっている。これに対して、内径切削レスを実現した上記の中空樹脂成形品の製造装置にあっては、押出ダイがブロー成形用型の下方に位置せしめられて、そのような押出ダイから、パリソンが、下から上に向かって押し出される独特な構造を有している。
【0006】
このため、そのような従来の内径切削レスタイプの中空樹脂成形品の製造装置を用いる場合には、既存のブロー成形装置を構成する押出機や押出ダイ等を利用することが困難乃至は不可能で、新たな設備が必要となり、そのために、設備コストが高騰し、その結果として、目的とする中空樹脂成形品の製造コストも高騰してしまうことが避けられなかったのである。
【0007】
【特許文献1】特許第2556647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、外方に開口する筒部が端部部位に設けられた中空樹脂成形品をブロー成形によって製造する装置であって、既存のブロー成形装置の設備を利用可能な構成を採用することにより実現される比較的に安価な構造を有して、ブロー成形後の筒部の内径切削が不要とされた中空樹脂成形品の可及的に低いコストでの製造を可能とした中空樹脂成形品の製造装置を提供することにある。また、本発明にあっては、外方に開口する筒部が端部部位に設けられ、且つブロー成形後での筒部の内径切削が不要とされた中空樹脂成形品を可及的に低いコストで有利に製造可能な方法を提供することをも、その解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明にあっては、上記した課題、又は本明細書全体の記載や図面から把握される課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいても、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載並びに図面に開示の発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0010】
<1> 外方に開口する筒部が端部部位に設けられた中空樹脂成形品を製造する装置にして、(a)押出機と、(b)筒状のダイ間隙を有して、前記押出機の先端に取り付けられ、該ダイ間隙を通じて、筒状のパリソンを上下方向に延びるように押し出す押出ダイと、(c)該押出ダイの下方に、水平方向において互いに接近離隔可能に配置された複数の分割型を有し、それら複数の分割型同士の間で形成される成形キャビティ内に、該押出ダイから押し出される前記パリソンを収容可能とされたブロー成形用型と、(d)目的とする前記中空樹脂成形品の前記筒部に対応した形状を呈する、上方に開口する筒部形成キャビティを有して、前記ブロー成形用型の前記複数の分割型同士の間で上下動し得るように配置され、前記押出ダイに当接して、該筒部形成キャビティを該押出ダイの前記ダイ間隙に連通せしめた状態下で、該押出ダイから押し出された前記パリソンの一部が、該筒部形成キャビティ内に充填されることにより、前記筒部を形成する充填型と、(e)該充填型が、前記押出ダイに当接せしめられた状態下で、該押出ダイから該充填型の前記筒部形成キャビティ内への前記パリソンの充填圧に抗して、それら充填型と押出ダイとの離間を阻止するように、該充填型と該押出ダイとの当接状態をロックし、且つ該筒部形成キャビティ内へのパリソンの充填完了によって、それら充填型と押出ダイとの当接状態のロックを解除するロック機構と、(f)該ロック機構による前記充填型と押出ダイとの当接状態のロックの解除状態において、該充填型を、該押出ダイへの当接位置から前記ブロー成形用型の下端側の予め設定された下側基準位置にまで、該押出ダイからの該パリソンの押出速度と同期して、下降せしめる移動機構と、(g)前記ブロー成形用型の前記成形キャビティ内に収容された前記パリソンの内部に圧力気体を吹き込んで、膨張させることにより、前記中空樹脂成形品の前記筒部を除く部分をブロー成形する気体吹込出手段とを含んで構成したことを特徴とする中空樹脂成形品の製造装置。
【0011】
<2> 前記充填型の前記筒部形成キャビティ内への前記パリソンの充填完了を検出する第一の検出手段と、該第一の検出手段による該筒部形成キャビティ内への該パリソンの充填完了の検出に基づいて、前記ロック機構による前記充填型と押出ダイとの当接状態のロックを解除するように、該ロック機構の作動を制御すると共に、前記移動機構による前記充填型の下降を開始するように、該移動機構の作動を制御する第一の制御手段とが、更に設けられている上記態様<1>に記載の中空樹脂成形品の製造装置。
【0012】
<3> 前記充填型が、前記移動機構による下降により、前記ブロー成形用型の下端側の前記下側位置に到達したときに、それを検出する第二の検出手段と、該第二の検出手段による該充填型の該下側位置への到達の検出に基づいて、該移動機構による該充填型の下降を停止するように、該移動機構の作動を制御すると共に、前記押出機の内部に設けられるスクリュの回転を停止して、前記押出ダイからの前記パリソンの押出しを停止させるように、該押出機の作動を制御する第二の制御手段とが、更に設けられている上記態様<1>又は<2>に記載の中空樹脂成形品の製造装置。
【0013】
<4> 外方に開口する筒部が端部部位に設けられた中空樹脂成形品を製造する方法であって、(a)目的とする前記中空樹脂成形品の前記筒部に対応した形状を呈する、上方に開口する筒部形成キャビティを備えた充填型を、押出ダイに当接して、該充填型の該筒部形成キャビティを該押出ダイのダイ間隙に連通せしめた状態下で、該押出ダイから押し出されるパリソンの一部を、該筒部形成キャビティ内に充填して、該筒部を形成する工程と、(b)前記押出ダイの下方に配置されたブロー成形用型が有する、水平方向に互いに接近離隔可能とされた複数の分割型同士の間に位置するように、前記パリソンを前記押出ダイから押し出す一方、かかる複数の分割型同士の間において、該パリソンの一部が前記筒部形成キャビティ内に充填された前記充填型を、該押出ダイへの当接位置から該ブロー成形用型の下端側の予め設定された下側基準位置にまで、該押出ダイからのパリソンの押出速度と同期して、下降せしめる工程と、(c)前記パリソンの一部が前記筒部形成キャビティ内に充填された前記充填型が、前記ブロー成形用型の前記下側位置に位置せしめられた状態下において、該ブロー成形用型の前記複数の分割型同士を互いに接近せしめて、それら複数の分割型同士の間に成形キャビティを形成すると共に、該成形キャビティ内に、前記押出ダイと該充填型との間に延びる前記パリソンを収容せしめる工程と、(d)前記成形キャビティ内に収容された前記パリソンの内部に圧力気体を吹き込んで、該パリソンを膨張させることにより、前記中空樹脂成形品の前記筒部を除く部分をブロー成形する工程とを含むことを特徴とする中空樹脂成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
すなわち、本発明に従う中空樹脂成形品の製造装置にあっては、筒部が、充填方式により、充填型の筒部形成キャビティに対応した形状と寸法とをもって形成されるため、かかる筒部形成キャビティを、形成される筒部が備えるべき所望の形状と寸法を有するようにしておけば、ブロー成形後の筒部に対する内径切削を行う必要が、有利に解消され得るのである。
【0015】
そして、かかる本発明装置においては、一般に使用される既存のブロー成形装置と同様に、押出ダイが、ブロー成形用型の上方に位置せしめられて、そのような押出ダイから、パリソンが、上から下に向かって押し出されるようになっている。そのため、このような本発明装置では、既存のブロー成形装置を構成する押出機や押出ダイが、そのままの構造で利用することが出来、それ故、ブロー成形用型の下方に位置せしめられた押出ダイから、パリソンが、下から上に向かって押し出される構造を有するために、既存のブロー成形装置の設備の利用が困難乃至は不可能な前述せる従来の内径切削レスタイプの中空樹脂成形品の製造装置に比して、設備コストが効果的に低く抑えられ得る。
【0016】
従って、かくの如き本発明に従う中空樹脂成形品の製造装置にあっては、既存のブロー成形装置の設備を利用可能な安価な構造を有し、以て、外方に開口する筒部が端部部位に設けられ、且つかかる筒部のブロー成形後での内径切削が不要とされた中空樹脂成形品を、可及的に低いコストで有利に製造することが出来るのである。そして、それ故、本発明に従う中空樹脂成形品の製造装置を用いれば、前述せる従来より公知の内径切削レスタイプの中空樹脂成形品の製造装置を用いる場合に比して、製造装置の設備コストの大幅な削減が図られ得るだけに止まらず、内径切削が不要とされた筒部を有する中空樹脂成形品の製造コストの大幅な低減も、極めて効果的に実現され得ることとなるのである。
【0017】
そして、本発明に従う中空樹脂成形品の製造方法にあっても、外方に開口する筒部が端部部位に設けられ、且つブロー成形後の筒部の内径切削が不要とされた中空樹脂成形品を、可及的に低いコストで、極めて有利に製造することが出来るのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0019】
先ず、図1には、本発明手法に従って製造された中空樹脂成形品の一例としての自動車の吸気ホースが、その縦断面形態において概略的に示されている。かかる図1から明らかなように、この吸気ホース10は、樹脂製で、長さ方向中間部が蛇腹部12とされて、かかる蛇腹部12において容易に曲げ変形せしめられ得るようになっている。また、長さ方向の一端部が、その他端部よりも小径円筒状の小径筒部14とされている一方、その他端部が、小径筒部14よりも大径円筒状の大径筒部16とされている。
【0020】
そして、かかる吸気ホース10にあっては、小径筒部14内に、二つの吸気系部材のうちの一方の吸気系部材が有する、図1に二点鎖線で示される小径連結筒部18が内挿される一方、大径筒部16に対して、他方の吸気系部材が有する、図1に二点鎖線示される大径連結筒部20が外挿されて、二つの吸気系部材を連通状態で連結し得るようになっている。このため、吸気ホース10では、小径連結筒部18が内挿される小径筒部14の内径寸法において、高い寸法精度が要求される構造とされている。
【0021】
而して、このような吸気ホース10は、ブロー成形によって製造されることとなるが、その際には、本発明に従う構造を有する、例えば、図2に示される如き中空樹脂成形品の製造装置が、有利に用いられる。
【0022】
すなわち、図2から明らかなように、本実施形態の製造装置は、従来のブロー成形装置と同様に、押出機22と押出ダイを含む成形機ヘッド24とブロー成形用型26とを有している。押出機22は、図2に明示されてはいないものの、水平方向に延びる加熱筒28内にスクリュ(図示せず)が回転可能に設けられた公知の基本構造を有し、加熱筒28内に投入された熱可塑性樹脂材料が、加熱筒28による加熱とスクリュの回転とによって、溶融混練された状態で、先端側から側方に向かって押し出されるようになっている。
【0023】
成形機ヘッド24は、全体として、矩形のブロック形状を有し、上下方向に延びるように位置せしめられた状態で、押出機22の先端に取り付けられている。また、この成形機ヘッド24の内部には、押出機22の先端から押し出される溶融樹脂材料を受け入れる樹脂流路が、上下方向に延びるように設けられ、この樹脂流路が、円環形状をもって下方に開口する隙間からなるダイ間隙30に連通せしめられている。これによって、押出機22から成形機ヘッド24内に導入された溶融樹脂材料が、ダイ間隙30を通じて、下方に向かって押し出され、以て、かかる溶融樹脂材料からなる円筒状のパリソン(31)が、上下方向に延びるように、連続的に押出成形されるようになっている(図4参照)。即ち、ここでは、成形機ヘッド24のダイ間隙30を形成する下端部にて、押出ダイが構成されている。
【0024】
また、そのような成形機ヘッド24においては、その下端面が、水平方向に拡がる平坦面からなり、更に、図2の左右両側に位置する二つの側面の下端部には、係合突起32が、それぞれ一つずつ、一体的に突設されている。この係合突起32,32は、何れも、図2の左右方向において所定の幅を有し、且つ図2の紙面に垂直な方向に所定長さで延びる同一の板形状を呈している。そして、そのような係合突起32,32のそれぞれの下面が、平坦面とされた成形機ヘッド24の下端面に連続して水平に拡がる平坦面からなる接触面33とされている一方、それぞれの上面が、成形機ヘッド24の側面から側方に向かって下傾する傾斜面からなる傾斜係合面34とされている。なお、以下に言う左方向と右方向とは、図2の左方向と右方向とに対応する方向を言うものとする。
【0025】
一方、ブロー成形用型26は、左右方向において互いに所定距離を隔てて対向配置された左分割型35と右分割型36とを有している。それら左及び右分割型35,36は、図示しない油圧機構等の駆動機構によって、互いに接近乃至離隔移動せしめられて、型閉じ乃至型開きされるようになっている。また、左及び右分割型35,36の互いに対向面のそれぞれの上側部位には、目的とする吸気ホース10の小径筒部14の一部(外部への開口側端部)を除く部分を軸方向に延びる切断線にて切断したときの左右半分ずつの外面形状に対応した形状を呈するキャビティ形成凹所38,40が、それぞれ設けられる一方、下側部位には、後述する充填型42を軸方向に延びる切断線にて切断したときの左右半分ずつの外面形状に対応した形状を呈する充填型収容凹所44,46が、それぞれ設けられている。
【0026】
そして、このブロー成形用型26にあっては、左及び右分割型35,36が、互いに接近せしめられて、型閉じされることにより、内部の上側部分に、各キャビティ形成凹所38,40同士が合わされてなる、吸気ホース10の小径筒部14の一部を除く部分の外面形状に対応した形状の成形キャビティ(48)が形成される一方、その下側部分に、各充填型収容凹所44,46同士が合わされてなる、充填型42の外面形状に対応した形状の充填型42収容空間(50)が、成形キャビティ(48)に連通状態で形成されるようになっている(図5参照)。
【0027】
そして、本実施形態の製造装置にあっては、従来のブロー成形装置にも用いられる上記の押出機22と押出ダイを含む成形機ヘッド24とブロー成形用型26とに加えて、成形機ヘッド24の下方に位置せしめられた充填型42と、この充填型42を支持して、上下方向に移動せしめる移動機構52と、かかる移動機構52による充填型42の上方への移動により、充填型42が成形機ヘッド24に当接せしめられたときに、それら充填型42と成形機ヘッド24との当接状態を解除可能にロックするロック機構54とを、更に有している。
【0028】
より詳細には、充填型42は、全体として、矩形の厚肉平板形状乃至はブロック形状を呈し、その中心部には、それを厚さ方向に貫通して、充填型42の上端面と下端面とにおいてそれぞれ開口する空気噴出孔56が、形成されている。また、充填型42の下端面には、空気噴出孔56の開口部の周囲に、その周方向に連続して延びる円筒状の接続筒部58が、下方に向かって一体的に突設されており、この接続筒部58に対して、図示しないコンプレッサ等の圧縮空気の供給源から延びる圧縮空気流通パイプ60が接続されている。これにより、圧縮空気供給源から供給されて、圧縮空気流通パイプ60内を流通せしめられる圧縮空気が、充填型42の上端面における空気噴出孔56の開口部から上方に向かって噴出せしめられるようになっている。そして、後述する如く、そのような空気噴出孔56から噴出される圧縮空気が、成形キャビティ(48)内に収容されたパリソン(31)のブロー成形時に、かかるパリソン(31)内に吹き込まれるようになっている(図6参照)。つまり、ここでは、それら圧縮空気流通パイプ60と図示しない圧縮空気供給源とによって、気体吹込手段が、構成されている。
【0029】
また、充填型42の上端面は、水平方向に拡がる平坦面からなり、そして、そのような上端面における空気噴出孔56の開口部の周辺部には、それを取り囲むようにして、周方向に連続して延びる円環状の凹所からなる筒部形成キャビティ62が、上方に向かって開口するように設けられている。この筒部形成キャビティ62は、その内外周面形状が、吸気ホース10の小径筒部14の外部への開口側端部、特に、かかる小径筒部14の開口側端部のうちの前記小径連結筒部18が内挿される部分の内外周面形状に対応した形状とされている。
【0030】
そして、かかる筒部形成キャビティ62内には、後述する如く、成形機ヘッド24から連続的に押し出されるパリソン(31)の一部が充填されることとなるが、その際、筒部形成キャビティ62内の圧力が、パリソン(31)にて満たされた状態の圧力となったとき、つまり、筒部形成キャビティ62内へのパリソン(31)の充填が完了したときに、それを検出して、充填完了信号を出力する、第一の検出手段としての圧力センサ63が、筒部形成キャビティ62の底部に埋設されている。なお、この圧力センサ63から出力される充填完了信号は、かかる充填完了信号に基づいて、後述するように、押出機22と移動機構52とロック機構54のそれぞれの作動を制御するコントローラ65に入力されるようになっている。また、筒部形成キャビティが満充填となったとして、圧力センサ63にて検出されるべき圧力値は、予め実施される試験や実験等によって適宜に決定される。
【0031】
さらに、充填型42にあっては、左右両側の側面の上端部に、係合突起64が、それぞれ一つずつ、一体的に突設されている。この係合突起64,64は、何れも、左右方向において所定の幅を有し、且つ図2の紙面に垂直な方向に所定長さで延びる同一の板形状を呈している。そして、そのような係合突起64,64のそれぞれの上面が、平坦面とされた充填型42の上端面に連続して水平に拡がる平坦面からなる接触面66とされている一方、それぞれの下面が、充填型42の側面から側方に向かって上傾する傾斜面からなる傾斜係合面68とされている。
【0032】
一方、移動機構52は、充填型42を支持する支持体70を有している。この支持体70は、全体として、矩形のブロック形状を呈し、その上面が、充填型42の下端面よりも一周り小さな矩形状をもって、水平方向に拡がる平坦面からなる支持面72とされている。また、かかる支持面72には、充填型42の下面に一体形成された接続筒部58と、圧縮空気流通パイプ60の接続筒部58への接続側部分とを収容する収容溝74が、支持体70の側面に開口するように設けられている。そして、このような支持体70の支持面72に、充填型42が、その接続筒部58やそれに接続される圧縮空気流通パイプ60を収容溝74内に収容せしめた状態で、載置されている。
【0033】
かくして、充填型42が、支持体70に対して、接続筒部58や圧縮空気流通パイプ60に邪魔されることなく、安定的に支持されるようになっている。また、この充填型42を支持する支持体70が、成形機ヘッド24の下方において、型開きされたブロー成形用型26の左及び右分割型35,36の間又はその下方に位置せしめられており、それによって、充填型42も、かかる支持体70と同様に、型開きされたブロー成形用型26の左及び右分割型35,36の間又はその下方に位置せしめられている。
【0034】
また、支持体70の下面の中心部には、長尺なボールねじ軸76が、その上端面において連結されている。つまり、長尺なボールねじ軸76が、支持体70の下面の中心部から、真っ直ぐ下方に延び出している。そして、このボールねじ軸76が、基台78上に設置されたモーターユニット80と基台78の貫通孔82とをそれぞれ貫通して、位置せしめられている。
【0035】
モーターユニット80は、公知のねじ送り機構によって、ボールねじ軸76を、その軸心に沿って、上下方向に移動させ得る構造を有している。即ち、図に明示されてはいないものの、モーターユニット80にあっては、その内部に、移動不能で且つ回転可能な状態で、ボールねじ軸76に螺合されて、それを支持する雌ねじ部材と、この雌ねじ部材を回転させるサーボモータとを有している。そして、かかるサーボモータによる雌ねじ部材の回転により、ボールねじ軸76を、雌ねじ部材の回転方向と回転量に応じて、上方又は下方に所定の量だけ移動させ得る構造とされているのである。
【0036】
かくして、移動機構52にあっては、図2及び図3から明らかなように、モーターユニット80によるボールねじ軸76の上下動に伴って、ボールねじ軸76が連結された支持体70とそれに支持される充填型42とを、型開きされた左分割型35と右分割型36との間において、上昇乃至は下降させ得るようになっている。
【0037】
なお、ここでは、かかる支持体70の上昇乃至は下降が、充填型42の上端面を成形機ヘッド24の下端面に当接させる上死点から、支持体70の下面をモーターユニット80の上面に当接させる下死点の間の範囲内で行われるようになっている。また、かかる支持体70が上死点に位置せしめられたときには、充填型42の上端面において開口する筒部形成キャビティ62が、成形機ヘッド24のダイ間隙30に連通せしめられると共に、充填型42の左右両側の側面の上端部にそれぞれ突設された係合突起34,34と、成形機ヘッド24の左右両側の側面の下端部にそれぞれ突設された係合突起64,64とが、それぞれの接触面33,66同士において互いに接触せしめられて、相互に重ね合わされるようになっている。
【0038】
一方、ロック機構54は、二つの油圧シリンダ84,84を有している。それら二つの油圧シリンダ84,84は、ブロー成形用型26の上方において、成形機ヘッド24の下端部を間に挟んだ左右両側に、成形機ヘッド24の左右の各側面に設けられた係合突起32と所定距離を隔てて、それぞれ一つずつ、水平に延びるように位置せしめられている。また、各油圧シリンダ84は、成形機ヘッド24に向かって水平に突出乃至引込作動せしめられるピストンロッド86を有している。そして、このピストンロッド86の先端には、クランプ部材88が、それぞれ一つずつ取り付けられている。
【0039】
それら各クランプ部材88は、何れも、図2の紙面に垂直な水平方向に延びる長手の矩形のブロック形状を呈し、左右方向たる幅方向の一方側の側面において、ピストンロッド86の先端に取り付けられた状態で、それとは反対の幅方向他方側の側面が、その上端部側において、係合突起32が形成される成形機ヘッド24の左側側面と右側側面のそれぞれの下端部に対向位置せしめられている。また、それらクランプ部材88,88にあっては、成形機ヘッド24の左右両側面の下端部との対向する幅方向他方側の側面に、クランプ溝90が設けられている。
【0040】
このクランプ溝90は、所定深さをもって、クランプ部材88の長さ方向に沿った水平方向に連続して延びる凹溝形態を有している。そして、かかるクランプ溝90においては、二つの側面のうちで上側に位置する上側側面が、成形機ヘッド24の各係合突起32の傾斜係合面34に対応して、クランプ溝90の開口側に向かって上傾する上側クランプ面92とされている一方、下側側面が、充填型42の各係合突起64の傾斜係合面64に対応して、クランプ溝90の開口側に向かって下傾する下側クランプ面94とされている。
【0041】
かくして、ここでは、図3に示されるように、移動機構52の支持体70が上昇せしめられて、それに支持された充填型42が、その上面において、成形機ヘッド24の下端面に当接せしめられると共に、充填型42の二つの係合突起64,64と成形機ヘッド24の二つの係合突起32,32とが、それぞれの接触面66,33同士において互いに接触せしめられて、重ね合わされた状態下で、二つの油圧シリンダ84,84がそれぞれ突出作動せしめられることにより、充填型42の係合突起64,64と成形機ヘッド24の係合突起32,32の互いに重ね合わされたもの同士が、各油圧シリンダ84のピストンロッド86の先端に取り付けられたクランプ部材88のクランプ溝90内に突入乃至は嵌入せしめられて、充填型42の各係合突起64の傾斜係合面68が、クランプ溝90の上側クランプ面92に接触して、係合せしめられると共に、成形機ヘッド24の各係合突起32の傾斜係合面34が、クランプ溝90の下側クランプ面94に接触して、係合せしめられるようになっている。そして、それによって、充填型42と成形機ヘッド24の互いに重ね合わされた係合突起64,32同士が、クランプ部材88にて、相互に離間不能にクランプされ、以て、充填型42と成形機ヘッド24との当接状態がロックされるように構成されているのである。なお、そのような充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロックは、二つの油圧シリンダ84,84が、それぞれ引込作動せしめられることによって、容易に解除されることとなる。
【0042】
そして、本実施形態においては、後述するように、押出機22と移動機構52とロック機構54のそれぞれ作動が、移動機構52の基台78に設置されたコントローラ65によって、相互に連動する状態で制御されるようになっている。
【0043】
ところで、かくの如き構造とされた製造装置を用いて、目的とする吸気ホース10を製造する際には、例えば、以下に示す如き手順に従って、その作業が進められる。
【0044】
すなわち、先ず、図3に示されるように、ブロー成形用型26の左分割型35と右分割型36とを型開きした状態において、移動機構52の支持体70を上昇させて、かかる支持体70に支持された充填型42を、成形機ヘッド24の下端面に当接させると共に、それら充填型42と成形機ヘッド24との当接状態を、ロック機構54にてロックする。
【0045】
そして、その後、成形機ヘッド24のダイ間隙30からパリソン31を押し出して、かかるパリソン31を、ダイ間隙30に連通する充填型42の筒部形成キャビティ62内に充填し、以て、筒部形成キャビティ62内で、吸気ホース10の小径筒部14の外方への開口側端部、つまり、吸気ホース10に連結されるべき部材の小径連結筒部18が内挿される小径筒部14部分を、充填方式にて成形する。
【0046】
なお、これら支持体70の上昇操作と充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロック操作とパリソン31の押出し操作の一連の操作は、コントローラ65の作動制御の下で、移動機構52とロック機構54と押出機22とが連動して、作動せしめられることにより、自動的に行われる。即ち、移動機構52のモーターユニット80内のサーボモータが、コントローラ65の制御の下で、予め設定された回転方向に予め設定された量だけ回転せしめられることにより、かかる移動機構52の支持体70に載置された充填型42が成形機ヘッド24の下端面に当接する位置まで、支持体70が上昇作動せしめられる。そして、そのときに、コントローラ65によって、サーボモータの回転が停止せしめられることで、支持体70の上昇が停止せしめられる。また、それと共に、ロック機構54の二つの油圧シリンダ84,84が、コントローラ84の制御の下で突出作動せしめられて、充填型42と成形機ヘッド24との当接状態がロックされる。そして、それと同時に、或いはその後に、押出機22の加熱筒28内のスクリュが、コントローラ65にて自動的に回転せしめられて、成形機ヘッド24からのパリソン(31)の押出しが開始される。
【0047】
そして、成形機ヘッド24から押し出されたパリソン31の筒部形成キャビティ62内へのパリソン31の充填が完了したときには、充填型42内に埋設された圧力センサ63から出力される充填完了信号が、コントローラ65に入力されることにより、押出機22のスクリュの回転が停止せしめられて、成形機ヘッド24からのパリソン31の押出しが、一旦、停止せしめられる。
【0048】
その後、図4に示されるように、ロック機構54の二つの油圧シリンダ84,84を引込作動させて、充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロックを解除した後、成形機ヘッド24からパリソン31を連続的に押し出しつつ、移動機構52の支持体70を下降させる。そして、支持体70が、充填型42を、左分割型35の充填型収容凹所44と右分割型36の充填型収容凹所46との間の位置となる、予め設定された下側基準位置に配置させる位置にまで達したときに、支持体70の下降を停止させ、それと同時に、成形機ヘッド24からパリソン31の押出も停止させる。これによって、パリソン31を、ブロー成形用型26の型開きされた左分割35と右分割型36との互いに対向面間に、成形機ヘッド24から垂下し、上下方向に延出させた状態で、位置させる。
【0049】
なお、本工程で実施される充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロック解除操作と、充填型42を成形機ヘッド24に当接させる位置から下側基準位置に到達させるまで継続される支持体70の下降操作と、そのような支持体70の下降操作と並行して行われるパリソン31の連続的な押出し操作も、充填型42の圧力センサ63からの充填完了信号のコントローラ65への入力に基づいて、コントローラ65による作動制御の下で、ロック機構54と移動機構52と押出機22とが互いに連動して作動せしめられることにより、自動的に行われる。つまり、充填完了信号のコントローラ65への入力により、ロック機構54の二つの油圧シリンダ84,84が自動的に引込作動せしめられた後、移動機構52のモーターユニット80内のサーボモータが、支持体70を下降させるように自動的に回転駆動せしめられて、支持体70に支持される充填型42が下側基準位置に到達したときに、モーターユニット80内のサーボモータが停止せしめられる。そして、このモーターユニット80内のサーボモータが駆動している間に限って、押出機22内のスクリュも自動的に回転せしめられて、パリソン31が連続的に押出成形されるようになっているのである。これらのことから明らかなように、ここでは、第一の制御手段と第二の検出手段と第二の制御手段とが、コントローラ65にて構成されている。
【0050】
また、本工程では、押出機22のスクリュの回転速度と移動機構52のモーターユニット80内のサーボモータの回転駆動速度とが、予め調整されて、コントローラ65の作動制御の基で、成形機ヘッド24からのパリソン31の押出速度と支持体70の下降速度とが、互いに同一の速度となるように設定されている。これによって、成形機ヘッド24からのパリソン31の押出速度が支持体70の下降速度よりも遅かったり或いは早かったりしたときにパリソン31に加えられる、軸方向での余分な引張力や圧縮力が、パリソン31に作用せしめられたり、或いはそのために、パリソン31の肉厚が軸方向に不均一となったりすることが、有利に回避され得るようになっている。
【0051】
次に、図5に示されるように、充填型42が下側基準位置に位置せしめられて、パリソン31が、上下方向延びるように位置せしめられた状態下で、型開きされたフロー成形用型26の左分割型35と右分割型36とを互いに接近させて、型閉じする。そして、かかる型閉じによって左分割型35と右分割型36との間の上部側と下部側とに、成形キャビティ48と充填型収容空間50とを互いに連通する状態で形成して、成形キャビティ48内にパリソン31を収容せしめると共に、充填型収容空間50内に充填型42を収容せしめる。このとき、成形キャビティ48内に収容されたパリソン31の上端部が、左分割型35と右分割型36のそれぞれ上端部同士の間で潰されるように挟まれる。これによって、成形キャビティ48内のパリソン31の上部側が密閉される。また、パリソン31の下側開口部は、充填型42にて閉塞せしめられると共に、充填型42の中心部に設けられた空気噴出孔56に連通せしめられる。
【0052】
引き続いて、図6に示されるように、圧縮空気供給源(図示せず)の作動により、かかる圧縮空気供給源から供給されて、圧縮空気流通パイプ60内を流通せしめられる圧縮空気を、充填型42の空気噴出孔56の上側開口部から噴出させて、パリソン31内に吹き込む。そして、それにより、パリソン31を膨張させて、成形キャビティ48の内面形状に対応した形状に成形する。かくして、充填型42の筒部形成キャビティ62内で充填方式にて成形された小径筒部14の外方への開口側端部を除く吸気ホース10部分、つまり、小径筒部14の内方への開口側端部と、蛇腹部12と大径筒部14とをブロー成形して、中間成形体96を得る。
【0053】
その後、中間成形品96をブロー成形用型26から取り出した後、大径筒部14の先端部位をカットして、大径筒部14を外方に開口せしめ、以て、目的とする図1に示される如き構造を有する吸気ホース10を得るのである。
【0054】
このように、本実施形態の中空樹脂成形品の製造装置にあっては、先ず、充填型42を用いた充填方式によって、吸気ホース10に連結されるべき部材の小径連結筒部18が内挿される小径筒部14部分が、充填型42の筒部形成キャビティ62内で成形され、次いで、ブロー成形方式によって、かかる小径筒部14部分を除いた吸気ホース10の全体が、成形キャビティ48内でブロー成形されるようになっている。そのため、小径連結筒部18が内挿される小径筒部14部分が、高い寸法精度をもって、筒部形成キャビティ62に対応した所望の形状において確実に形成され得る。そして、それ故に、かかる小径筒部14部分を含めた吸気ホース10の全体をブロー成形によって成形する場合とは異なって、ブロー成形後に、小径筒部14に対する内径切削加工等、小径筒部14の寸法精度を高めるための後加工を行う必要が、有利に解消され得る。
【0055】
しかも、かかる本実施形態装置は、従来のブロー成形装置にも用いられるものと同様な構造を有する押出機22及び成形機ヘッド24とを有し、そして、それらに加えて、圧縮空気を吹出可能とされた充填型42と、充填型42が収容可能なブロー成形用型26と、移動機構52とロック機構54とを含んで構成されている。
【0056】
つまり、本実施形態の製造装置においては、既存のブロー成形装置を構成する押出機22や成形機ヘッド24が、そのままの構造で利用されており、それ故、ブロー成形後の内径切削が不要な中空樹脂成形品を製造可能ではあるものの、既存のブロー成形装置の設備を何等利用することなしに構成された従来の内径切削レスタイプの中空樹脂成形品の製造装置に比して、押出機22を成形機ヘッド24を利用している分だけ、設備コストが効果的に低く抑えられ得る。また、ブロー成形用型26も、左分割型35と右分割型36とに、キャビティ形成凹所38,40に加えて、単なる凹部たる充填型収容凹所44,46が設けられてなるだけの簡略な構造を有するものであり、それによっても、キャビティ形成凹所のみを有する従来のブロー成形用型に比しての型制作費の上昇が、可及的に抑制され得る。
【0057】
従って、かくの如き本実施形態の中空樹脂成形品の製造装置を用いれば、他部材(小径連結筒部18)が内挿される小径筒部14に対するブロー成形後の内径切削が不要とされた吸気ホース10が、可及的に低い設備費で、ひいては低い製造コストで、極めて有利に製造され得るのである。
【0058】
また、本実施形態では、支持体70が、充填型42を成形機ヘッド24に当接させる位置まで上昇せしめられたときに、かかる支持体70の上昇が自動的に停止されるように、移動機構52の作動が、コントローラ65にて制御されると共に、そのような支持体70の停止状態下で、ロック機構52の二つの油圧シリンダ84,84が、コントローラ65にて自動的に突出作動せしめられて、充填型42と成形機ヘッド24の当接状態がロックされ、そして、それと同時に、或いはその後に、押出機22のスクリュが、コントローラ65にて自動的に回転せしめられて、充填型42の筒部形成キャビティ62内に、パリソン31が充填されるようになっているところから、目的とする吸気ホース10の小径筒部14の形成作業、ひいては吸気ホース10の製造作業の効率化が、有利に図られ得る。
【0059】
加えて、本実施形態においては、コントローラ65の作動制御の下で、充填型42に埋設された圧力センサ63から出力される充填完了信号に基づいて、ロック機構52による充填型42と成形機ヘッド24との当接状態のロックの解除と、充填型42を下側基準位置にまで下降させる支持体70の下降と、かかる支持体70の下降速度に同期した速度での成形機ヘッド24からのパリソン31の押出しとが、全て自動的に行われるようになっており、これによっても、目的とする吸気ホース10の製造作業の効率化が、極めて有利に実現され得るのである。
【0060】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0061】
例えば、移動機構52の構造は、電動モータを駆動源とするねじ送り機構を利用した例示の構造に何等限定されるものではなく、その他、電動モータを駆動源とする、ラックとピニオンを含む公知のギヤ機構やリンク機構等を利用した構造や、油圧シリンダや空気圧シリンダ等のアクチュエータを利用した構造等が、適宜に採用され得る。
【0062】
また、かかる移動機構52は、充填型42を上昇させる機能を有しないものであっても、何等差し支えない。
【0063】
さらに、ロック機構54も、充填型42の筒部形成キャビティ62内へのパリソン31の充填圧に抗して、充填型42と成形機ヘッド24との当接状態を維持し得る構造のものであれば、例示の構造以外のものも、適宜に採用され得る。
【0064】
更にまた、気体吹込手段も、従来と同様に、ブロー成形用型26を貫通して、パリソン31の内部に差し込まれる圧縮空気注入用ノズル(針体)等を利用して、パリソン31内に圧縮空気等を吹き込む構造のものを用いることも、勿論可能である。
【0065】
また、充填型42の筒部形成キャビティ62内へのパリソン31の充填完了を検出する第一の検出手段として、例示の圧力センサ63に代えて、或いはそれに加えて、例えば、成形機ヘッド24のダイ間隙30や樹脂流路の内圧を検出する圧力センサや、筒部形成キャビティ62内に充填されるパリソン31(樹脂材料)の重量を検出するセンサ、成形機ヘッド24や充填型42の温度を検出するセンサ、或いは押出機22の加熱筒28内のスクリュの回転量を検出するセンサ等を利用することが出来る。また、そのようなセンサ等を用いることなく、例えば、コントローラによる押出機22のスクリュの回転数の制御のみによって、筒部形成キャビティ62内へのパリソン31の充填完了を検出するように為すことも出来る。
【0066】
さらに、前記実施形態では、充填型42が、予め設定された下側基準位置に到達したときに、移動機構52の支持体70の下降が、コントローラ65にて停止せしめられるようになっていたが、例えば、充填型42が下側基準位置に到達したときに、かかる充填型42に係合し、支持体70から離脱させた状態で保持する保持部を、ブロー成形用型26の左及び右分割型35,36に設け、それによって、充填型42が下側基準位置に到達した時点で、支持体70の下降を停止させることなく、充填型42の下降を停止させるようにしても良い。このような構造によれば、充填型42の下降を下側基準位置で停止させるために、支持体70の下降位置乃至は下降量を厳密に管理する必要が解消され、以て、移動機構52、ひいては製造装置全体の構造の簡略化が、有利に図られ得ることとなる。
【0067】
また、充填型42が、予め設定された下側基準位置に到達したときに、それを検出するセンサを設け、このセンサによる検出信号に基づいて、移動機構52による充填型42の下降を停止するように為すことも出来る。
【0068】
加えて、前記実施形態では、本発明を、自動車の吸気ホースの製造装置と製造方法に適用したものの具体例を示したが、本発明は、かかる吸気ホース以外の、外方に開口する筒部が端部部位に設けられた中空樹脂成形品の製造装置と製造方法の何れに対しても、有利に適用されるものであることは、勿論である。
【0069】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に従う構造を有する製造装置を用いて製造された吸気ホースの一例を示す縦断面説明図である。
【図2】本発明に従う構造を有する吸気ホースの製造装置の一実施形態を示す縦断面説明図である。
【図3】図2に示された製造装置を用いて、図1に示される吸気ホースを製造する際に実施される工程の一例を説明するための図であって、充填型の筒部形成キャビティ内に、パリソンを充填して、小径筒部を形成している状態を示している。
【図4】図3に示される工程に引き続いて実施される工程例を説明するための図であって、パリソンを所定長さで押出成形した状態を示している。
【図5】図4に示される工程に引き続いて実施される工程例を説明するための図であって、ブロー成形用型を型閉じして、パリソンを成形キャビティ内に収容せしめた状態を示している。
【図6】図5に示される工程に引き続いて実施される工程例を説明するための図であって、成形キャビティ内に収容されたパリソンの内部に圧縮空気を吹き込んで、ブロー成形を行っている状態を示している。
【符号の説明】
【0071】
10 吸気ホース 14 小径筒部
22 押出機 24 成形機ヘッド
26 ブロー成形用型 30 ダイ間隙
31 パリソン 32,64 係合突起
42 充填型 48 成形キャビティ
50 充填型収容空間 52 移動機構
54 ロック機構 56 空気噴出孔
60 圧縮空気流通パイプ 63 圧力センサ
65 コントローラ 70 支持体
76 ボールねじ軸 80 モーターユニット
84 油圧シリンダ 88 クランプ部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外方に開口する筒部が端部部位に設けられた中空樹脂成形品を製造する装置にして、
押出機と、
筒状のダイ間隙を有して、前記押出機の先端に取り付けられ、該ダイ間隙を通じて、筒状のパリソンを上下方向に延びるように押し出す押出ダイと、
該押出ダイの下方に、水平方向において互いに接近離隔可能に配置された複数の分割型を有し、それら複数の分割型同士の間で形成される成形キャビティ内に、該押出ダイから押し出される前記パリソンを収容可能とされたブロー成形用型と、
目的とする前記中空樹脂成形品の前記筒部に対応した形状を呈する、上方に開口する筒部形成キャビティを有して、前記ブロー成形用型の前記複数の分割型同士の間で上下動し得るように配置され、前記押出ダイに当接して、該筒部形成キャビティを該押出ダイの前記ダイ間隙に連通せしめた状態下で、該押出ダイから押し出された前記パリソンの一部が、該筒部形成キャビティ内に充填されることにより、前記筒部を形成する充填型と、
該充填型が、前記押出ダイに当接せしめられた状態下で、該押出ダイから該充填型の前記筒部形成キャビティ内への前記パリソンの充填圧に抗して、それら充填型と押出ダイとの離間を阻止するように、該充填型と該押出ダイとの当接状態をロックし、且つ該筒部形成キャビティ内へのパリソンの充填完了によって、それら充填型と押出ダイとの当接状態のロックを解除するロック機構と、
該ロック機構による前記充填型と押出ダイとの当接状態のロックの解除状態において、該充填型を、該押出ダイへの当接位置から前記ブロー成形用型の下端側の予め設定された下側位置にまで、該押出ダイからの該パリソンの押出速度と同期して、下降せしめる移動機構と、
前記ブロー成形用型の前記成形キャビティ内に収容された前記パリソンの内部に圧力気体を吹き込んで、膨張させることにより、前記中空樹脂成形品の前記筒部を除く部分をブロー成形する気体吹込出手段と、
を含んで構成したことを特徴とする中空樹脂成形品の製造装置。
【請求項2】
前記充填型の前記筒部形成キャビティ内への前記パリソンの充填完了を検出する第一の検出手段と、該第一の検出手段による該筒部形成キャビティ内への該パリソンの充填完了の検出に基づいて、前記ロック機構による前記充填型と押出ダイとの当接状態のロックを解除するように、該ロック機構の作動を制御すると共に、前記移動機構による前記充填型の下降を開始するように、該移動機構の作動を制御する第一の制御手段とが、更に設けられている請求項1に記載の中空樹脂成形品の製造装置。
【請求項3】
前記充填型が、前記移動機構による下降により、前記ブロー成形用型の下端側の前記下側位置に到達したときに、それを検出する第二の検出手段と、該第二の検出手段による該充填型の該下側位置への到達の検出に基づいて、該移動機構による該充填型の下降を停止するように、該移動機構の作動を制御すると共に、前記押出機の内部に設けられるスクリュの回転を停止して、前記押出ダイからの前記パリソンの押出しを停止させるように、該押出機の作動を制御する第二の制御手段とが、更に設けられている請求項1又は請求項2に記載の中空樹脂成形品の製造装置。
【請求項4】
外方に開口する筒部が端部部位に設けられた中空樹脂成形品を製造する方法であって、
目的とする前記中空樹脂成形品の前記筒部に対応した形状を呈する、上方に開口する筒部形成キャビティを備えた充填型を、押出ダイに当接して、該充填型の該筒部形成キャビティを該押出ダイのダイ間隙に連通せしめた状態下で、該押出ダイから押し出されるパリソンの一部を、該筒部形成キャビティ内に充填して、該筒部を形成する工程と、
前記押出ダイの下方に配置されたブロー成形用型が有する、水平方向に互いに接近離隔可能とされた複数の分割型同士の間に位置するように、前記パリソンを前記押出ダイから押し出す一方、かかる複数の分割型同士の間において、該パリソンの一部が前記筒部形成キャビティ内に充填された前記充填型を、該押出ダイへの当接位置から該ブロー成形用型の下端側の予め設定された下側位置にまで、該押出ダイからのパリソンの押出速度と同期して、下降せしめる工程と、
前記パリソンの一部が前記筒部形成キャビティ内に充填された前記充填型が、前記ブロー成形用型の前記下側位置に位置せしめられた状態下において、該ブロー成形用型の前記複数の分割型同士を互いに接近せしめて、それら複数の分割型同士の間に成形キャビティを形成すると共に、該成形キャビティ内に、前記押出ダイと該充填型との間に延びる前記パリソンを収容せしめる工程と、
前記成形キャビティ内に収容された前記パリソンの内部に圧力気体を吹き込んで、該パリソンを膨張させることにより、前記中空樹脂成形品の前記筒部を除く部分をブロー成形する工程と、
を含むことを特徴とする中空樹脂成形品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−298087(P2009−298087A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157112(P2008−157112)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】