説明

中継装置、受信装置及び送信装置

【課題】伝送遅延が発生する通信システムにおいて、送信装置から受信装置でデータを処理するまでの伝送遅延を所望の目標伝送遅延に合わせて、伝送遅延の変動をなくす。
【解決手段】中継装置が、データを受信するとともに、前記データを受信した際に受信フラグの信号を生成するデータ受信部と、前記データ受信部により受信された前記データを送信するとともに、前記データが送信可能な状態になった際に送信フラグの信号を生成するデータ送信部と、前記受信フラグの信号と前記送信フラグの信号との間隔を計時することにより遅延時間を測定する遅延測定部と、外部から遅延情報を受信する遅延情報受信部と、前記遅延測定部により測定された前記遅延時間に基づいて遅延情報を送信する遅延情報通知部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継装置、受信装置及び送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の通信の技術において、伝送遅延を一定に保つためには、その通信のための通信路もしくは通信帯域を専有させるようにして、他の通信の影響を受けないようにしていた。
【0003】
また、パケット交換型の通信では、パケットを一旦蓄積して転送する際の遅延時間の量が本質的に変動しうるため、タイムスタンプを用いた制御も行なわれていた。例えば、送信装置と、複数の中継装置と、受信装置とが順に通信路で結ばれて構成され、IP(Internet Protocol、インターネットプロトコル)を用いて通信する通信システムを考える。従来技術では、送信装置は、送信するためのデータを生成する際に、タイムスタンプをデータに付加する。このタイムスタンプは現在時刻Tに目標伝送遅延Dを加えた(T+D)の時刻を表わす。このタイムスタンプ付きデータが、送信装置から、中継装置を経て、受信装置に伝送される。そのとき、途中の各々の中継装置で遅延時間が発生する。受信装置は、そのタイムスタンプ付きデータを受信すると、タイムスタンプを解釈し、上記の(T+D)の時刻情報を得る。そして、受信装置は、自己が保有する時計を参照しながら、当該時刻が到来するまでデータの処理を延期し、当該時刻が到来したらデータの処理を開始する。
【0004】
なお、特許文献1には、伝送遅延の変動を小さくする技術として、通信の手続において、ある送信装置が他の送信装置のデータ送信を禁止する手順を取り決め、特定の送信装置に通信の優先権を持たせる構成が記載されている。
【特許文献1】特開2006−229982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現在、IP(Internet Protocol,インターネットプロトコル)通信技術を活用した通信が広く利用されるようになり、これまではIP以外の通信技術により伝送されていた各種の通信がIP通信網に統合されていく流れにある。そして、放送技術と通信技術の融合の流れにおいて、映像や音声などといったリアルタイム性を有するコンテンツもIPに代表されるパケット交換型の通信技術に統合することが試みられている。このような分野では、例えば、MPEG−2 TS(Moving Picture Experts Group phase 2 Transport Stream)方式などによる符号化映像・音声の多重化技術が用いられる。
このような、リアルタイム性を有するコンテンツの信号や、他にも、クロック周期の開始タイミングを示すクロック同期用の校正信号の伝送においては、パケット交換型の通信を用いる場合においても、送信元の装置から受信先の装置までの伝送遅延が一定であることが望ましい。
また、その際には適用可能な通信路の種類を特に限定することなく、一般的な通信路に適用可能であることも求められる。
【0006】
一方で、従来技術として述べたタイムスタンプをデータに付加する方法では、所望の目標伝送遅延を実現するためには、タイムスタンプを計算する際に用いられる送信装置側の時計と、タイムスタンプを解釈して処理を延期する際に用いられる受信装置側の時計とが、常に一致していなければならない。例えば、受信装置側の時計が送信装置側の時計に対して1秒遅れており目標伝送遅延が1秒である場合であって、送信装置側の時計が時刻「9:59:59」であるときに、目標伝送遅延1秒を加えて時刻「10:00:00」のタイムスタンプを付加して送信されたデータは、受信装置側の機能によってその時計が時刻「10:00:00」になるときまで処理が延期されるが、上記の通り両装置の時計がずれているため、そのときの送信装置側の時計が指す時刻は「10:00:01」である。つまり、送受信装置間の伝送遅延は2秒となってしまっており、目標伝送遅延(1秒)を実現することができない。
【0007】
また、同期するしくみを持たない複数の時計は、それらの間の時刻のズレの量が常に変動する可能性がある。そのため、送信装置側から見たときの、受信装置においてデータを処理する時刻も、時々刻々と変動する。結果として、送信装置と受信装置の間の伝送遅延は一定とならず、変動が生じてしまう。
送受の時計のズレを無くすために、GPS(Global Positioning System)などの外部の高精度な基準時計と送受の時計とを同期させる方法があるが、外部の基準時計を参照できない場合には解決できない。
【0008】
本発明はこれらの事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、IP通信網のように、エンド・トゥ・エンドの伝送遅延が本来ならば変動する通信網においても、通信網内で生じる通信の伝送遅延を常に一定に保つことのできる、あるいは伝送遅延の変動を所定量以下に保つことのできる、中継装置、受信装置、送信装置、通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、データを受信するとともに、前記データを受信した際に受信フラグの信号を生成するデータ受信部と、前記データ受信部により受信された前記データを送信するとともに、前記データが送信可能な状態になった際に送信フラグの信号を生成するデータ送信部と、前記受信フラグの信号と前記送信フラグの信号との間隔を計時することにより遅延時間を測定する遅延測定部と、外部から遅延情報を受信する遅延情報受信部と、前記遅延測定部により測定された前記遅延時間に基づいて、前記遅延情報受信部により受信された前記遅延情報を更新して新たな遅延情報を生成する遅延情報更新部と、前記遅延情報更新部により生成された前記新たな遅延情報を送信する遅延情報通知部と、を備えることを特徴とする中継装置である。
上記の構成によれば、データ受信部がデータを受信したタイミングで受信フラグが生成される。そして、データ送信部がデータを送信可能になったタイミングで(即ち、データの一時的な蓄積や送信権の調停動作などの送信準備動作を全て完了した後の、実際にデータの送信が可能となったタイミングで)送信フラグが生成される。遅延測定部は、これらのタイミングに基づき、データ受信のタイミングとデータ送信のタイミングの差、即ち当該中継装置内における遅延時間を測定する。遅延情報更新部は、この測定された遅延時間を用いて遅延情報受信部が受信した遅延情報を更新する。即ち、外部から受信した遅延情報に測定された遅延時間を加算するなどして当該装置における遅延時間を反映した新たな遅延情報を生成する。そして、遅延情報通知部は、更新された新たな遅延情報を送信する。このような中継装置を多段に接続することにより、各中継装置での遅延時間を積算して受信装置に通知することができる。受信装置は、その通知を受けて、目標伝送遅延と実際の伝送遅延の差分を計算することができる。その計算された差分の時間だけ、受信装置がデータの処理を延期することにより、受信装置側では、目標伝送遅延に合わせてデータの処理を開始するようにできる。
【0010】
(2)また、本発明の一態様は、上記の中継装置において、前記データ送信部と前記遅延測定部と前記遅延情報更新部と前記遅延情報通知部とをN組(Nは2以上の整数)備え、前記遅延測定部は、対応する前記データ送信部からの前記送信フラグの信号に基づき前記遅延時間を測定し、前記遅延情報更新部は、対応する前記遅延測定部により測定された前記遅延時間に基づいて前記新たな遅延情報を生成し、前記遅延情報通知部は、対応する前記遅延情報更新部により生成された前記新たな遅延情報を送信することを特徴とするものである。
上記の構成によれば、中継装置において、送信先がN個に分岐する場合に、つまりデータ送信部がN個存在する場合に、個々のデータ送信部についてそれぞれ遅延時間を測定し、それぞれの分岐先に対して当該分岐先特有の遅延情報を通知することが可能となる。
【0011】
(3)また、本発明の一態様は、データを受信するデータ受信部と、遅延情報を受信し、前記遅延情報に含まれる遅延時間と目標伝送遅延との差分を計算する遅延情報受信部と、前記遅延情報受信部により計算された前記差分に基づいて前記データ受信部により受信された前記データの処理を延期させるとともに、延期が完了した際に処理延期完了フラグの信号を生成する処理延期部と、前記処理延期部により延期された前記データを送信するとともに、前記データが送信可能な状態になった際に送信フラグの信号を生成するデータ送信部と、前記処理延期完了フラグの信号と前記送信フラグの信号との間隔を計時することにより遅延時間を測定する遅延測定部と、前記遅延情報部により測定された前記遅延時間を含んだ遅延情報を送信する遅延情報通知部と、を備えることを特徴とする中継装置である。
上記の構成によれば、中継装置において、遅延情報受信部が遅延情報を受信し、目標伝送遅延とその遅延情報に含まれる遅延時間との差分を計算できる。つまり、上流から通知された遅延時間に基づき、目標伝送遅延に合わせて処理を延期することができる。そして、処理延期部は処理の延期が完了したタイミングで処理延期完了フラグを生成する。また、データ送信部は、データの送信が可能となったタイミングで(即ち、データの一時的な蓄積や送信権の調停動作などの送信準備動作を全て完了した後の、実際にデータの送信が可能となったタイミングで)送信フラグを生成する。遅延測定部は、これら両フラグのタイミングの差の時間を測定することができる。この差が即ち当該中継装置において測定された遅延時間である。そして、遅延情報通知部は、この遅延時間を含んだ遅延情報を送信する。このような中継装置を多段に接続することにより、各中継装置は、前段の中継装置で測定された遅延時間に基づいて、目標伝送遅延に合わせるための処理延期を行なえる。各中継装置間でこのような処理延期を行なうと、送信装置から、中継装置を経由して受信装置までのトータルな伝送遅延も目標伝送遅延に合わせることができる。
【0012】
(4)また、本発明の一態様は、上記の中継装置において、前記データ送信部と前記遅延測定部と前記遅延情報通知部とをN組(Nは2以上の整数)備え、前記遅延測定部は、対応する前記データ送信部からの前記送信フラグの信号に基づき前記遅延時間を測定し、前記遅延情報通知部は、対応する前記遅延測定部により測定された前記遅延時間に基づく遅延情報を送信することを特徴とするものである。
上記の構成によれば、中継装置において、送信先がN個に分岐する場合に、つまりデータ送信部がN個存在する場合に、個々のデータ送信部についてそれぞれ遅延時間を測定し、それぞれの分岐先に対して当該分岐先特有の遅延情報を通知することが可能となる。
【0013】
(5)また、本発明の一態様は、データを受信するデータ受信部と、遅延情報を受信し、前記遅延情報に含まれる遅延時間と目標伝送遅延との差分を計算する遅延情報受信部と、前記遅延情報受信部により計算された前記差分に基づいて、受信された前記データの処理を延期させる処理延期部と、を備えることを特徴とする受信装置である。
なお、ここで、目標伝送遅延は、送信装置から単数または複数の中継装置を経由して当該受信装置までのトータルな伝送遅延の目標値であっても良いし、あるいは、目標伝送遅延は、直近の前段の中継装置から当該受信装置までの伝送遅延の目標値であっても良い。
このような受信装置に適切な目標伝送遅延を設定しておくことにより、中継装置側から通知された遅延情報に基づき、処理延期部が適切な時間だけデータの処理を延期させる。つまり、目標伝送遅延に合わせてデータの処理を開始することが可能となる。
【0014】
(6)また、本発明の一態様は、上記の受信装置において、前記データ受信部が受信するデータに時刻情報が含まれ、さらに、前記時刻情報に基づき受信装置の時刻基準であるクロックを校正するデータ処理部を備えることを特徴とするものである。
上記のような構成により、送信装置から受信装置に対して送るデータに含まれる時刻情報を、所望の目標伝送遅延に合わせて、受信装置側で処理開始することが可能となる。
この構成は、MPEG−2 TS方式や、NTPプロトコルなどに応用できる。
【0015】
(7)また、本発明の一態様は、送信するデータの生成が完了した際に生成完了フラグの信号を生成するデータ生成部と、前記データ生成部により生成されたデータを送信するとともに、前記データが送信可能な状態になった際に送信フラグの信号を生成するデータ送信部と、前記生成完了フラグの信号と前記送信フラグの信号との間隔を計時することにより遅延時間を測定する遅延測定部と、前記遅延測定部により測定された前記遅延時間を含んだ遅延情報を送信する遅延情報通知部と、を備えることを特徴とする送信装置である。
上記のような構成により、データ生成部はデータの生成が完了したタイミングで生成完了フラグを生成する。また、データ送信部はデータの送信が可能な状態となったタイミングで(即ち、データの一時的な蓄積や送信権の調停動作などの送信準備動作を全て完了した後の、実際にデータの送信が可能となったタイミングで)送信フラグを生成する。遅延測定部はこれら両フラグに基づき、当該送信装置における遅延時間を測定する。そして、遅延情報通知部は、測定された遅延時間を含む遅延情報を送信することができる。これにより、下流の装置では、当該送信装置で発生した遅延時間を取得することができ、この遅延時間を用いて目標伝送遅延に合わせて処理を延期することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、中継装置内における遅延時間を測定することができる。この遅延時間の情報を上流の中継装置から下流の中継装置に段階的に更新しながら通知していくことにより、最終的にデータを受信する受信装置においては、目標伝送遅延と実際に測定された伝送遅延の差を取り、その差の時間分だけデータの処理を延期できるので、伝送遅延を一定にすることができる。あるいは伝送遅延の変動を所定量以下に抑えることができる。
また、中継装置内で測定された遅延時間の情報を、次段の中継装置に通知することにより、その通知を受けた中継装置においては、目標伝送遅延と実際に測定された遅延時間の差を取り、その差の時間分だけデータの処理を延期できるので、伝送遅延を一定にすることができる。あるいは伝送遅延の変動を所定量以下に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
[第一の実施形態]
図1は、本発明の第一の実施形態による通信システム1の構成を示すブロック図である。図示するように、この通信システム1は、データを生成し送信する送信装置100と、データを受信しデータ処理する受信装置130と、送信装置100と受信装置130との間の通信を中継するn台(nは1以上の整数)の中継装置110と、を含んで構成される。ここで、Dは目標伝送遅延であり、送信装置100がデータを送信した時刻と、受信装置130がデータ処理を開始する時刻との間の差分の時間の目標値である。目標伝送遅延Dは、通信システム1の利用者によって規定される、一定とすべき伝送遅延である。目標伝送遅延の具体的な値は、設定情報として受信装置130の内部に記憶されている。
【0018】
なお、伝送遅延は、通信路上を信号が電気的に伝わることで生じる伝播遅延と、中継装置110などの各装置内でデータの適切な出力先を決定するために一時的にデータを蓄積したり送信前に送信権の調停動作などの送信準備をしたりするために生じる遅延とを含む。しかしながら、伝播遅延はこれらの遅延と比較して充分に小さく、また、伝播遅延には変動もほとんど生じないので、伝播遅延を無視しても実際には差し支えない。よって、以下では伝播遅延を問題にしない。
【0019】
また、図示するように、n台のうちのi番目(1≦i≦n)の中継装置110において時間δの遅延時間が生じる。また、i番目の中継装置は、直近の前段の(つまり(i−1)番目の)中継装置110から、遅延情報として自装置より上流の中継装置110で生じた遅延時間の総和(つまり、δ+δ+・・・+δi−1)を表わす遅延情報を受信する。そして、i番目の中継装置は、自装置で生じる遅延時間δの情報を用いてこの遅延情報を更新し、自装置を含めた遅延時間の総和(つまり、δ+δ+・・・+δ)を表わす遅延情報を次段の(つまり(i+1)番目の)中継装置110に宛てて送信する。
但し、1番目の中継装置110は、直近の前段の中継装置110がないため、上流からの遅延情報を受信せず、自装置で生じる遅延時間δの情報を遅延情報として下流に向けて送信する。あるいは、送信装置100から「遅延なし」を表わす遅延情報を送信し、これを1番目の中継装置110が受信するようにしても良い。
【0020】
図2は、本実施形態における送信装置100の機能構成を示すブロック図である。図示するように、送信装置100は、データ生成部101とデータ送信部102とを含んで構成される。データ生成部101は、送信するためのデータを生成する。そして、データ送信部102は、データ生成部101により生成されたデータを外部に対して送信する。送信されるデータは、中継装置によって中継され、最終的に受信装置に伝送される。
【0021】
図3は、本実施形態による中継装置110の構成を示すブロック図である。図示するように、中継装置110は、データ受信部121と、データ送信部122と、計時部123と、遅延測定部124と、遅延情報受信部125と、遅延情報更新部126と、遅延情報通知部127と、を含んで構成される。
【0022】
データ受信部121は、送信装置100又は通信路上で上流の中継装置110からデータを受信し、受信したデータをデータ送信部122に出力するとともに、データを受信した際に受信フラグの信号を生成し、この受信フラグを遅延測定部124に出力する。
データ送信部122は、データ受信部121から出力されたデータを送信すべく送信動作を開始し、データの一時的な蓄積や送信準備動作を全て完了してデータを通信路に送信可能な状態になった際に、送信フラグの信号を生成し、生成した送信フラグの信号を遅延測定部124に出力するとともに、通信路上で下流にある中継装置110あるいは受信装置130にデータを送信する。
【0023】
ここで、受信フラグの信号は、中継装置110内の信号線を介して、電気信号としてデータ受信部121から遅延測定部124に伝えられる。同様に、送信フラグの信号は、中継装置110内の信号線を介して、電気信号としてデータ送信部122から遅延測定部124に伝えられる。あるいは、信号線を介して電気信号として直接、これら各々のフラグの信号を伝える代わりに、フラグの信号を発生する側(データ受信部121やデータ送信部122)が、書換可能なメモリ上のフラグに相当するデータを書き換え、このデータを遅延測定部124が電気信号として読み出す形態としても良い。この、メモリを介する形態とする場合は、メモリの読み書きに要する時間が充分に小さくなるように、高速なメモリを用いる。
【0024】
計時部123は、内部にクロックを有しており、計時を行う。そして、遅延測定部124は、計時部123による計時の結果を用いながら、受信フラグの信号がデータ受信部121から通知された時刻(受信フラグの信号が生成された時刻)と、送信フラグの信号がデータ送信部122から通知された時刻(送信フラグの信号が生成された時刻)との差分、すなわち、両フラグの時間的間隔を測定する。これは、当該中継装置110で生じた遅延時間を測定していることになる。そして、遅延測定部124は、測定された遅延時間を遅延情報更新部126に出力する。ここで、図示するように、i番目の中継装置110において生じる遅延時間はδである。
【0025】
遅延情報受信部125は、通信路上で上流にある外部の中継装置110から遅延情報を受信する。この遅延情報には、i−1番目の中継装置110までに生じた遅延時間の総和(つまり、δ+δ+・・・+δi−1)を表わす情報が含まれている。
ただし、上流に遅延情報を送信する中継装置110を持たない場合(つまり、i=1の場合)は、遅延情報受信部125は遅延情報を受信しない。あるいは、その場合、遅延情報受信部は、送信装置100から、「遅延なし」を表わす遅延情報を受信するようにしても良い。
【0026】
遅延情報更新部126は、遅延測定部124が測定した遅延時間に基づいて、遅延情報受信部125が受信した遅延情報を更新して新たな遅延情報を生成し、遅延情報通知部127に出力する。すなわち、通信路上でi番目の中継装置110の遅延情報更新部126は、自装置の遅延測定部124による測定結果である遅延時間δを用いて、遅延情報受信部125が受信した遅延情報を更新し、その結果として新たな遅延情報を生成する。この新たな遅延情報は、送信装置100からi番目の中継装置110までに生じた遅延時間の総和を表すものであり、この遅延時間の総和は、次の式(1)で表わされる。
【0027】
【数1】

【0028】
遅延情報通知部127は、遅延情報更新部126が出力した遅延情報を、通信路上で下流にある中継装置110あるいは受信装置130に向けて送信する。遅延情報を通知する形式および通知する方法については、後で図を参照しながら述べる。
なお、中継装置110において、遅延情報受信部125はデータ受信部121と共通の信号受信手段(図示せず)を介して遅延情報を受信するようにしてもよい。また、遅延情報通知部127はデータ送信部122と共通の信号送信手段(図示せず)を介して遅延情報を送信するようにしてもよい。
【0029】
図4は、本実施形態による受信装置130の機能構成を示すブロック図である。図示するように、受信装置130は、データ受信部131と、処理延期部135と、データ処理部132と、遅延情報受信部134と、計時部133とを含んで構成される。
【0030】
データ受信部131は、通信路上で最終段の(つまり、n番目の)中継装置110からデータを受信し、処理延期部135に出力する。遅延情報受信部134は、最終段の(つまり、n番目の)中継装置110が送信した遅延情報を受信し、受信した遅延情報に含まれる遅延時間と目標伝送遅延Dとの差分を計算し、処理延期部135に出力する。
この目標伝送遅延Dと受信した遅延情報が表わす遅延時間の総和との差分は、次の式(2)で表わされる。
【0031】
【数2】

【0032】
計時部133は、内部にクロックを有しており、計時を行う。そして、処理延期部135は、計時部133による計時の結果を用いながら、目標伝送遅延Dと遅延情報の差分の時間だけ受信したデータの処理を延期させた後、受信したデータをデータ処理部132に出力する。すなわち、処理延期部135は、上記式(2)で表わされる時間だけ受信したデータを保持する。
なお、受信装置130において、遅延情報受信部134はデータ受信部131と共通の信号受信手段(図示せず)を介して遅延情報を受信するようにしてもよい。
【0033】
次に、本実施形態における遅延情報の通知方法について説明する。
図5、図6、および図7は、それぞれ、最終段の(つまり、n番目の)中継装置110から受信装置130へデータ及び遅延情報を送るシーケンスを示した概略図である。なお、これらの図では、最終段の(つまり、n番目の)中継装置110から受信装置130への送信を例として示しているが、i番目(1≦i≦n−1)の中継装置110から(i+1)番目の中継装置110へデータ及び遅延情報を送信する場合についても、これらと同様である。以下、それぞれの図を参照しながら3種類の送信方法について説明する。
【0034】
図5に示す実施例では、中継装置110が送信するデータに、当該データの遅延情報を付加した形態で、遅延情報が中継装置110から受信装置130へ送信される。つまり、図示するようにj番目のデータ(jはデータの順序を表わす)にj番目の遅延情報を付加した形態で、遅延情報の通知が行なわれる。ここで、付加した形態とは、例えば、同一のデータパケット内に含める形態である。なお、遅延情報をデータに付加する位置や遅延情報を符号化する方法など、遅延情報の通知形式は限定されるものではなく、中継装置110と受信装置130の間で事前に規定しておくようにする。
【0035】
図6に示す実施例では、中継装置110は、データと遅延情報とを分けて受信装置130へ送信する。ここで、分けて送信するとは、例えば、データ用のパケットと遅延情報用のパケットとを別々に送信する形態である。図示するように、中継装置110は、j番目のデータを送信した後で当該j番目のデータに関するj番目の遅延情報を送信する。そして、中継装置110は、その後、(j+1)番目のデータを送信し、その後それに対応する(j+1)番目の遅延情報を送信する。本実施例では、データと遅延情報とをそれぞれ別の通信路を介して次段の中継装置110あるいは受信装置130に送信してもよい。
【0036】
なお、j番目のデータを送信してからj番目の遅延情報を送信するまでの時間が目標伝送遅延の時間に比べて充分に小さくなるように、中継装置110は遅延情報の通知を行なう。
受信装置130は、j番目のデータを受信すると、そのデータを処理延期部(135)において一時的に蓄積する。そして、j番目の遅延情報が到着すると、処理延期部(135)は目標伝送遅延に一致させる延期処理を実施する。また、上記の通り、j番目のデータとj番目の遅延情報との時間差は目標遅延時間Dに比べて充分に小さいので、処理延期部(135)においてデータが蓄積されてから目標遅延時間Dが経過するよりも充分に前に、処理延期部(135)は遅延情報を取得することができる。なお、遅延情報を符号化する方法など、遅延情報の通知形式は限定されるものではなく、中継装置110と受信装置130の間で事前に規定しておくようにする。
【0037】
図7に示す実施例では、中継装置110は、あるデータに関する遅延情報を次に送信するデータに付加して送信する。つまり、中継装置110は、j番目のデータの中継で生じた遅延時間を含むj番目の遅延情報を、(j+1)番目のデータに付加して送信する。
【0038】
なお、j番目のデータを送信してから(j+1)番目のデータを送信するまでの時間が目標伝送遅延の時間に比べて充分に小さくなるようにする。
j番目のデータを受信すると、そのデータを処理延期部(135)において一時的に蓄積する。そして、j番目の遅延情報が付加された(j+1)番目のデータが到着すると、処理延期部(135)はj番目のデータに関して目標伝送遅延に一致させる延期処理を実施する。また、上記の通り、j番目のデータと(j+1)番目のデータとの時間差は目標遅延時間Dに比べて充分に小さいので、処理延期部(135)においてj番目のデータが蓄積されてから目標遅延時間Dが経過するよりも充分に前に、処理延期部(135)はj番目の遅延情報を取得することができる。なお、遅延情報をデータに付加する位置や遅延情報を符号化する方法など、遅延情報の通知形式は限定されるものではなく、中継装置110と受信装置130の間で事前に規定しておくようにする。
【0039】
なお、本実施形態において、仮に中継装置110および受信装置130それぞれが持つ時計にズレが生じたとしても、一つのデータを中継する極めて短い時間に生じる各時計のズレは極めて小さい。従って、各中継装置110が相対的に計測した遅延時間を積算したとしても、伝送遅延の変動量を小さく抑えることができる。
【0040】
例えば、送信装置100、中継装置110、受信装置130がそれぞれ、1秒あたりに1ミリ秒のズレを生じ得る時計(すなわち10−3の精度)を持っている場合、従来技術として述べたタイムスタンプを用いる方法では、タイムスタンプ(T+D)を生成・処理する送信装置とそのタイムスタンプを付加したデータを受信する受信装置との間である時点で時計を正確に合わせたとしても、その1秒後には最大1ミリ秒ずれるため、目標伝送遅延Dに対して実際の伝送遅延が最大1ミリ秒の誤差を生じる可能性がある。送信装置と受信装置との間で時計を合わせてから長時間運用を継続すれば、その誤差の量は運用時間に比例して増加し得る。
しかし、本実施形態の構成を用いれば、同じ精度の時計を用いたとしても、データの平均的な中継時間が1ミリ秒(10−3秒)である中継装置において、その中継装置が計測する遅延時間は平均1ミリ秒であり、その中継装置の時計のずれに起因する遅延時間の測定誤差は最大1マイクロ秒(10−6秒)である。そして、この中継装置をn台経由した場合の遅延時間の総和はnミリ秒で、その測定誤差は最大nマイクロ秒であり、従来技術の場合に比べて目標伝送遅延に対する誤差を大幅に小さく抑えることができる。また、本実施形態による通信システムの運用を長時間継続しても、誤差の量が運用時間に比例して増加することはない。
【0041】
このように、本実施形態の通信システムにおいて、一連の中継装置110は、中継装置110毎に生じた遅延時間を遅延情報に追加・更新し、中継装置110で生じた遅延時間の総和を受信装置130に通知する。この遅延時間の総和は、次の式(3)で表わされる。
【0042】
【数3】

【0043】
また、受信装置130は、一連の中継装置110で生じた遅延時間の総和を受信し、遅延時間の総和と目標伝送遅延との差分の時間だけデータの処理を延期させるため、目標伝送遅延に一致させてデータ処理を行うことができる。これにより、他の通信の存在により通信の伝送遅延が変化する通信網において、通信網内で生じる通信の伝送遅延を常に一定、あるいは伝送遅延の変動を所望の量以下に抑えることができる。
【0044】
[第二の実施形態]
次に、この発明の第二の実施形態による通信システム2について説明する。
図8は、本実施形態による通信システム2の構成を示すブロック図である。図示するように、この通信システム2は、送信装置100と、受信装置230と、送信装置100と受信装置230との間に配置され両者間の通信を中継するn台の中継装置210(nは1以上の整数)とを含んで構成される。送信装置100は、データを生成し送信する。受信装置230は、送信されたデータを受信しデータ処理する。中継装置210は、データおよび遅延情報を受信し、受信したデータを次の中継装置210に向けてあるいは受信装置230に向けて送信するとともに、受信した遅延情報に基づく処理延期を行なう。
【0045】
この図において、i番目(1≦i≦n)の中継装置210における遅延時間はδである。
また、dは目標伝送遅延であり、本実施形態における目標伝送遅延dは、ある中継装置210から隣接する次段の中継装置210の間、あるいは、最終段の中継装置210から受信装置230の間で生じる伝送遅延の目標値である。より厳密に言うと、目標伝送遅延dは、伝送される通信データがi番目の中継装置210の処理延期部228より出力されてから(i+1)番目の中継装置210の処理延期部228より出力されるまでの時間、あるいは、伝送される通信データがn番目(最終段)の中継装置210の処理延期部22より出力されてから受信装置230の処理延期部235より出力されるまでの時間である。本実施形態においても、前の実施形態と同様に、通信路上の信号伝播時間は、中継装置210内での一時的なデータの蓄積や送信権の調停動作などの送信準備動作に起因して生じる遅延時間の量に比較して充分小さく、また、変動もほとんど生じないので、問題にする必要がない。目標伝送遅延dは、本通信システムにおいて規定され一定とすべき伝送遅延の目標値である。目標伝送遅延の具体的な値は、設定情報として中継装置210や受信装置230の内部に記憶されている。
なお、本実施形態では、各々の中継装置210から隣接する次段の中継装置210の間の目標伝送遅延も、最終段の中継装置210から受信装置230の間の目標伝送遅延も、すべて同じくdとしているが、各段階における装置間で目標伝送遅延の量が異なっていてもよい。
【0046】
本実施形態における送信装置100の内部の構成は、第一の実施形態におけるそれと同様であるため、ここでは説明を省略する。
図9は、i番目(1≦i≦n)の中継装置210の機能構成を示すブロック図である。図示するように、中継装置210は、データ受信部221と、データ送信部222と、計時部223と、遅延測定部224と、遅延情報受信部225と、処理延期部228と、遅延情報通知部227とを含んで構成される。
【0047】
データ受信部221は、通信路上で上流の(つまり、(i−1)番目の)中継装置210又は送信装置100からデータを受信し、受信したデータを処理延期部228に出力する。
遅延情報受信部225は、同じく(i−1)番目の中継装置210(外部の中継装置210)から遅延情報を受信し、受信した遅延情報に含まれる遅延時間δi−1と目標伝送遅延dとの差分(d−δi−1)を計算し、計算した差分を処理延期部228に通知する。
処理延期部228は、計時部223から得る計時結果を用いながら、目標伝送遅延dと遅延情報δi−1の差分(d−δi−1)の時間だけ受信したデータの処理を延期させた後、受信したデータをデータ処理部222に出力するとともに、処理延期が完了した際に、処理延期完了フラグの信号を生成し、遅延測定部224に通知する。
なお、i=1のときは、遅延情報受信部225は遅延情報(δ)を受信せず、その場合には処理延期部228はデータの処理を延期せずに直ちにデータをデータ処理部222に送るとともに、処理延期完了フラグの信号を遅延測定部224に通知する。なお、i=1のとき、遅延情報受信部225が、送信装置100から「遅延なし」を表わす遅延情報を受信するようにしても良い。
【0048】
データ送信部222は、処理延期部228から受け取ったデータを送信すべく送信動作を開始し、データの一時的な蓄積や送信権の調停動作などの送信準備動作を全て完了してデータを実際に通信路にデータを送信可能な状態になった際に、送信フラグの信号を生成し、遅延測定部224に通知するとともに、通信路上の下流にある(i+1)番目の中継装置210あるいは受信装置230にデータを送信する。
【0049】
なお、処理延期完了フラグの信号および送信フラグの信号は、いずれも、第一の実施形態と同様に、中継装置210内の信号線を介して電気信号として遅延測定部224に伝えられる形態でも良いし、中継装置210内の書換可能なメモリ上のフラグに相当するデータが書き換えられ、このデータを遅延測定部224が電気信号として読み出す形態としても良い。
【0050】
計時部223は、内部にクロックを有しており、計時を行う。そして、遅延測定部224は、計時部223による計時の結果を用いながら、処理延期完了フラグの信号が処理延期部228から通知された時刻(処理延期完了フラグの信号が生成された時刻)と、送信フラグの信号がデータ送信部222から通知された時刻(送信フラグの信号が生成された時刻)との差分(両フラグの時間的間隔)、すなわち、当該中継装置210で生じた遅延時間δを測定し、遅延情報通知部227に出力する。
【0051】
遅延情報通知部227は、遅延測定部224が測定した遅延時間δを含む遅延情報を、通信路上で下流にある(i+1)番目の中継装置210あるいは受信装置230に送信する。なお、遅延情報を通知する形式や手順などについては、第一の実施形態と同様である。
なお、中継装置210において、遅延情報受信部225はデータ受信部221と共通の信号受信手段(図示せず)を介して遅延情報を受信するようにしてもよい。また、遅延情報通知部227はデータ送信部222と共通の信号送信手段(図示せず)を介して遅延情報を送信するようにしてもよい。
【0052】
図10は、受信装置230の機能構成を示すブロック図である。受信装置230は、データ受信部231と、データ処理部232と、計時部233と、遅延情報受信部234と、処理延期部235とを含んで構成される。
【0053】
データ受信部231は、通信路上のn番目の中継装置210からデータを受信し、処理延期部235に出力する。
遅延情報受信部234は、同じくn番目の中継装置210から遅延情報を受信し、遅延情報に含まれる遅延時間δと目標伝送遅延dとの差分(d−δ)を計算し、この差分(d−δ)を処理延期部235に出力する。
【0054】
計時部233は、内部に有しているクロックを用いて計時を行う。
処理延期部235は、計時部233による計時結果を用いながら、遅延情報受信部234から取得した差分(d−δ)の時間だけ受信したデータの処理を延期させた後、受信データをデータ処理部232に出力する。
データ処理部232は、処理延期部235から受け取ったデータを対象とする処理を行なう。
なお、受信装置230において、遅延情報受信部234はデータ受信部231と共通の信号受信手段(図示せず)を介して遅延情報を受信するようにしてもよい。
【0055】
このように、本実施形態の通信システム2では、通信路上の各々の中継装置210および受信装置230において目標伝送遅延dを設定する。そして、各々の中継装置210は、前段の中継装置210から遅延情報を受信し、この遅延情報を用いて、目標伝送遅延dに合わせてデータ送信のタイミングを遅延させる。また、受信装置230は、前段の中継装置210から遅延情報を受信し、この遅延情報を用いて、目標伝送遅延dに合わせてデータの処理を延期させる。このため、送信装置100から受信装置230までのトータルの伝送遅延は(n×d)となり、目標伝送遅延に一致させてデータ処理を行うことができる。また、各中継装置210における目標伝送遅延を異ならせても良いことは前にも述べたが、この場合にi番目の目標伝送遅延をdとすると、トータルの伝送遅延は(d+d+・・・+d)となり、同様に目標伝送遅延に一致させてデータ処理を行うことができる。
これにより、本実施形態を用いる場合も、他の通信の存在により通信の伝送遅延が変化する通信網において、通信網内で生じる通信の伝送遅延を常に一定にし、また伝送遅延の変動を所望の量以下に抑えることができる。
【0056】
[第三の実施形態]
次に、この発明の第三の実施形態について説明する。IPマルチキャストに代表される1対多の通信では、通信路上の中継装置は、通信データを複製し、複数のデータ送信部から通信路上で下流にある複数の中継装置もしくは受信装置に向けて、通信データを送信する場合がある。本実施形態による中継装置は、受信したデータを複数の方路に向けて送信する構成を有する。
【0057】
図11は、本実施形態による中継装置310の機能構成を示すブロック図である。図示するように、この中継装置310は、データ受信部321と、データ送信部322Aおよび322Bと、遅延情報受信部325と、計時部323と、遅延測定部324Aおよび324Bと、遅延情報更新部326Aおよび326Bと、遅延情報通知部327Aおよび327Bとを含んで構成される。この中継装置310は第一の実施形態における中継装置と類似の構成を有しているが、これを一部改変し、出力先ごとにデータ送信部と遅延測定部と遅延情報更新部と遅延情報通知部とを有していることがこの中継装置310の特徴である。なお、本実施形態では、1入力2出力の中継装置について説明するが、これをさらに拡張して1入力N出力(N≧2)の中継装置について、出力先ごとに必要な構成を有するようにしても良い。
【0058】
この中継装置310の場合、データ送信部(322Aおよび322B)ごとに、データの一時的な蓄積や送信準備動作を全て完了するまでの時間が異なることがある。つまり、データ送信部ごとに、本中継装置内で生じる遅延時間が異なることがある。そのため、データ送信部ごとに遅延時間を測定し、測定された遅延時間を用いてそれぞれ遅延情報の更新を行い、それぞれの遅延情報通知部が更新された遅延情報を下流の装置に対して送信する。つまり、データ送信部322Aと遅延測定部324Aと遅延情報更新部326Aと遅延情報通知部327Aとが第1の出力先のための機能グループ(組)となっている。また、データ送信部322Bと遅延測定部324Bと遅延情報更新部326Bと遅延情報通知部327Bとが第2の出力先のための機能グループ(組)となっている。
【0059】
そして、データ送信部322Aからデータを送信する際に中継装置310で生じる遅延時間はδであり、データ送信部322Bからデータを送信する際に中継装置310で生じる遅延時間はδである。
遅延測定部324Aは、データ受信部321からの受信フラグの信号と、データ送信部322Aからの送信フラグの信号を用いて、両フラグの時間的間隔、即ち遅延時間δを測定し、遅延情報更新部326Aに出力する。遅延情報更新部326Aは、遅延時間δを用いて、遅延情報受信部325が外部から受信した遅延情報(δ+δ+・・・+δi−1)を更新して、新たな遅延情報(δ+δ+・・・+δi−1+δ)を生成する。遅延情報通知部327Aは、この生成された新たな遅延情報を、次段の中継装置または受信装置(つまりデータ送信部322Aがデータを送信する先の装置と同装置)に向けて送信する。
同様に、遅延測定部324Bは、データ受信部321からの受信フラグの信号と、データ送信部322Bからの送信フラグの信号を用いて両フラグの時間的間隔、即ち遅延時間δを測定し、遅延情報更新部326Bに出力する。遅延情報更新部326Bは、遅延時間δを用いて、遅延情報受信部325が受信した遅延情報(δ+δ+・・・+δi−1)を更新して、新たな遅延情報(δ+δ+・・・+δi−1+δ)を生成する。遅延情報通知部327Bは、この生成された新たな遅延情報を、次段の中継装置または受信装置(つまりデータ送信部322Bがデータを送信する先の装置と同装置)に向けて送信する。
【0060】
なお、中継装置310において、遅延情報受信部325はデータ受信部321と共通の信号受信手段(図示せず)を介して遅延情報を受信するようにしてもよい。また、遅延情報通知部327Aはデータ送信部322Aと共通の信号送信手段(図示せず)を介して遅延情報を送信するようにしてもよい。また、遅延情報通知部327Bはデータ送信部322Bと共通の信号送信手段(図示せず)を介して遅延情報を送信するようにしてもよい。
【0061】
このように、本実施形態では、複数のデータ送信部がある場合にも、それぞれのデータ送信部に対応する、遅延測定部と遅延情報更新部と遅延情報通知部とを設けたことにより、データ送信部ごとに異なる遅延時間を含む場合にも、それぞれ適切な遅延情報を、通信路上の下流にある中継装置あるいは受信装置に通知することが可能となる。
【0062】
[第四の実施形態]
次に、この発明の第四の実施形態による中継装置について説明する。本実施形態の中継装置は、第二の実施形態による中継装置を、複数出力方路に分岐できるように拡張したものである。
図12は、本実施形態による中継装置410の構成を示すブロック図である。図示するように、中継装置410は、データ受信部421と、データ送信部422Aおよび422Bと、遅延情報受信部425と、計時部423と、処理延期部428と、遅延測定部424Aおよび424Bと、遅延情報通知部427Aおよび427Bとを含んで構成される。この中継装置410は第二の実施形態における中継装置を一部改変し、出力先ごとにデータ送信部と遅延測定部と遅延情報通知部とを有している。なお、本実施形態では、1入力2出力の中継装置について説明するが、これをさらに拡張して1入力N出力(N≧2)の中継装置について、出力先ごとに必要な構成を有するようにしても良い。
【0063】
この中継装置410の場合、データ送信部ごとに、データの一次的な蓄積や送信準備動作を全て完了するまでの時間が異なることがあるため、それぞれ、本中継装置内で生じる遅延時間が異なることがある。そのため、データ送信部ごとに遅延時間を測定し、測定された遅延時間をそれぞれの遅延情報通知部が下流の装置に対して送信する。つまり、データ送信部422Aと遅延測定部424Aと遅延情報通知部427Aとが第1の出力先のための機能グループ(組)となっている。また、データ送信部422Bと遅延測定部424Bと遅延情報通知部427Bとが第2の出力先のための機能グループ(組)となっている。
【0064】
ここで、データ送信部422Aからデータを送信する際に中継装置410で生じる遅延時間はδであり、データ送信部422Bからデータを送信する際に中継装置410で生じる遅延時間はδである。
遅延測定部424Aは、処理延期部428からの処理延期完了フラグの信号と、データ送信部422Aからの送信フラグの信号を用いて両フラグの時間的間隔、即ち遅延時間δを測定し、遅延情報通知部427Aに出力する。遅延情報通知部427Aは、遅延時間δを含む遅延情報を、次段の中継装置または受信装置(つまりデータ送信部422Aがデータを送信する先の装置と同装置)に向けて送信する。
同様に、遅延測定部424Bは、処理延期部428からの処理延期完了フラグの信号と、データ送信部422Bからの送信フラグの信号を用いて両フラグの時間的間隔、即ち遅延時間δを測定し、遅延情報通知部427Bに出力する。遅延情報通知部427Bは、遅延時間δを含む遅延情報を、次段の中継装置または受信装置(つまりデータ送信部422Bがデータを送信する先の装置と同装置)に向けて送信する。
【0065】
なお、中継装置410において、遅延情報受信部425はデータ受信部421と共通の信号受信手段(図示せず)を介して遅延情報を受信するようにしてもよい。また、遅延情報通知部427Aはデータ送信部422Aと共通の信号送信手段(図示せず)を介して遅延情報を送信するようにしてもよい。また、遅延情報通知部427Bはデータ送信部422Bと共通の信号送信手段(図示せず)を介して遅延情報を送信するようにしてもよい。
なお、中継装置410のその他の構成については、第二の実施形態と同様であるためここでは説明を省略する。
【0066】
このように、本実施形態では、複数のデータ送信部がある場合にも、それぞれのデータ送信部に対応する、遅延測定部と遅延情報通知部とを設けたことにより、データ送信部ごとに異なる遅延時間を生ずる場合にも、それぞれ適切な遅延情報を、通信路上の下流にある中継装置あるいは受信装置に通知することが可能となる。
【0067】
[第五の実施形態]
次に、この発明の第五の実施形態による通信システムについて説明する。本実施形態は、第一の実施形態おける通信システム1を用いながら、通信のアプリケーション層において、MPEG−2 TS方式で多重化された符号化映像・音声の通信を行う。なお、MPEG−2 TS方式の詳細はISO/IEC13818−1標準としてまとめられている。
【0068】
本実施形態では、送信装置100で符号化した映像や音声のリアルタイムストリームデータを受信装置130で復号・提示するタイミングを制御するために、送信装置100と受信装置130がそれぞれ保持する周波数27MHz(メガヘルツ)のクロックSTC(System Time Clock、システム時刻クロック)の同期を維持する必要がある。なお、符号化映像・音声の生成及び処理はアプリケーション層で行われるものであり、送信装置100および受信装置130それぞれの中のアプリケーション層の処理を行なう部分が、このクロックSTCの管理および同期維持を行なう。
【0069】
送信装置100と受信装置130の間でのSTCの同期を維持するために、送信装置100は、少なくとも0.1秒間に1回、自らのSTCの値を受信装置130に伝えるためのPCR(Program Clock Reference、プログラムクロック参照)データ(時刻情報)を映像・音声データに多重して受信装置130に送信する。そして、受信装置130は、送信装置100から送られてきたPCRに記述された送信装置100のSTCの値と自らのSTCの値を比較して自らのSTCを校正する。
【0070】
ISO/IEC13818−1標準では、PCRの伝送に際しては伝送遅延の変動を±500ナノ秒の範囲に抑えることを求めているが、本実施形態によって、前述の通り、受信装置130(図4参照)内の処理延期部135が目標伝送遅延と伝送遅延の差分の時間だけ受信したデータの処理を延期させるので、MPEG−2 TS方式の映像・音声通信における伝送遅延を高い精度で一定、あるいは伝送遅延の変動を所望の量以下に抑えることが可能となる。
【0071】
本実施形態における送信装置100(図2参照)のデータ生成部101は、映像や音声等のリアルタイム信号をMPEG−2 TS方式を用いて多重化したデータ(符号化リアルタイム情報)を生成する。
受信装置130(図4参照)内のデータ処理部132は、受信したMPEG−2 TSデータを復号・提示し、MPEG−2 TSデータからPCRを抽出した場合、STCの値を校正する。
なお、上では第一の実施形態における通信システム1を用いてMPEG−2 TS方式のデータ伝送を行なう例を説明したが、第二から第四までのいずれかの実施形態における通信システムを用いて同様にPCRを伝送して、受信側のSTCを校正するようにしてもよい。
【0072】
このように、本実施形態によれば、第一から第四までのいずれかの実施形態における通信システムを用いてMPEG−2 TS方式で多重化された符号化映像・音声の通信を行う。これにより、IP通信網を使用してMPEG−2 TS方式で多重化された符号化映像・音声の通信を行った場合にも、ISO/IEC13818−1標準を満たすよう、伝送遅延の変動を所望の範囲内に抑えることが可能となる。
【0073】
[第六の実施形態]
次に、この発明の第六の実施形態について説明する。本実施形態は、第一の実施形態おける通信システム1を用いながら、所定の周期を有するクロックの同期のための校正信号の伝送を行うものである。
例えば、システム内で同一の周期で機器の制御を行う制御システムなどがある。そのようなシステムでは、システム内で周期を一致させるために、送信装置が受信装置宛てに、自らのクロックの周期が開始されるタイミング(つまり、クロック信号の位相が0度)で周期スタート信号を送信し、受信装置はスタート信号の到着したタイミングを周期の開始タイミングとみなして、自らのクロックを微調整(校正)する、という方法を取る。
【0074】
このようなクロック校正信号の伝送では、通信路上で生じた伝送遅延の変動がそのまま受信装置のクロック校正に悪影響を与え、受信装置側でのクロック信号の周期が不安定になる。このようなことを防止するために、本実施形態では、送信装置100が周期スタート信号を送信し、第一の実施形態で述べたように各中継装置では遅延時間の測定を行い、測定に基づく遅延情報の通知を行い、最終的に受信装置130(図4参照)の処理延期部135が目標伝送遅延Dと遅延情報から得られる遅延の総和との差分の時間だけ受信したデータの処理を延期させるので、要求される周期の一致精度に応じて、通信路の伝送遅延の変動量を所望の範囲内に抑えることが可能となる。
【0075】
本実施形態における送信装置100(図2参照)のデータ生成部101は、送信装置100が有するクロック信号の周期が開始されるタイミングで周期スタート信号のデータ(時刻情報)を生成する。そして、データ送信部102はこのデータを送信する。このデータは、複数の中継装置110によって中継され、受信装置130へ伝送される。
受信装置130(図4参照)のデータ処理部132は、周期スタート信号が入力された場合、周期スタート信号が入力したタイミングをクロックの周期の開始タイミングとして受信装置130のクロックを微調整(校正)する。
なお、上では第一の実施形態における通信システム1を用いた例を説明したが、第二から第四までのいずれかの実施形態における通信システムを用いてもよい。
このように、本実施形態によれば、第一から第四いずれかの実施形態における通信システムを用いて周期スタート信号の伝送を行う。これにより、システム内で同一の周期で機器の制御を行う制御システムにおいて、周期の一致精度を向上させることが可能となる。
【0076】
[第七の実施形態]
次に、この発明の第七の実施形態について説明する。本実施形態は、第一の実施形態おける通信システム1を用いて、IP通信網を介して二地点間で時計を一致させるNTP(Network Time Protocol)プロトコルの通信を行う。NTPプロトコルの詳細はRFC1305に詳しく記載されている。
【0077】
NTPプロトコルでは、マスター機器とスレーブ機器とが通信を行なう。スレーブ機器は、自己の時計をマスター機器の時計に一致させることを目的として、マスター機器へ問い合わせのパケットを送信する。これに応じて、マスター機器は、自己の時計を参照し、応答のパケットをスレーブ機器に送信する。この応答を受けたスレーブ機器は、応答に含まれるデータを用いて、マスター機器との時計のズレの大きさを計算できるようになっている。
しかしながら、NTPプロトコルを用いる場合、スレーブ機器からマスター機器への上りの問い合わせパケットの伝送遅延d1と、マスター機器からスレーブ機器への下りの応答パケットの伝送遅延d2が等しくない場合、上記の時計のズレの大きさの計算に誤差が生じてしまう。
【0078】
そこで、本実施形態の通信システムは、第一の実施形態で示した通信システム1を用いて、上りの問い合わせパケットの伝送遅延d1と下りの応答パケットの伝送遅延d2とが、共に等しくdとなるような制御を行なう。
【0079】
本実施形態では、マスター機器及びスレーブ機器は、第一の実施形態における送信装置100及び受信装置130の各部を含んで構成される。
スレーブ機器からマスター機器に対して問い合わせパケットを送るときは、スレーブ機器が送信装置100(図1参照)であり、マスター機器が受信装置130という位置付けである。そして、この通信システム1を用いて、目標伝送遅延をdと設定することにより、前述の通り、問い合わせパケットはスレーブ機器から送信されるタイミングの丁度dの伝送遅延の後に、マスター機器のデータ処理部132(図4参照)で処理が開始される。
そして逆に、マスター機器からスレーブ機器に対して応答パケットを送るときは、マスター機器が送信装置100(図1参照)であり、スレーブ機器が受信装置130という位置付けである。そして、同様に目標伝送遅延をdと設定することにより、応答パケットはマスター機器から送信されるタイミングの丁度dの伝送遅延の後に、スレーブ機器のデータ処理部132(図4参照)で処理が開始される。
なお、上では第一の実施形態における通信システム1を用いた例を説明したが、第二から第四までのいずれかの実施形態における通信システムを用いてもよい。
【0080】
このように、本実施形態によれば、IP通信網を介して二地点間で時計を一致させるNTPプロトコルの通信において、第一から第四の実施形態いずれかにおける通信システムを適用し、上りと下りの伝送遅延を等しくすることができる。これにより、NTPプロトコルを用いる際にも、時計のズレの大きさの計算に誤差が生じず、マスター機器とスレーブ機器の時計を正確に一致させることが可能となる。
【0081】
[第八の実施形態]
次に、この発明の第八の実施形態について説明する。本実施形態では、第一の実施形態おける通信システム1を用いて、IEEE802.1および802.3標準に準拠したいわゆるイーサネット(登録商標)による通信を行う。この場合、中継装置110は、通信ハブ(集線装置)に相当する。この通信ハブは、イーサネット(登録商標)通信で使用される金属ケーブルや光ケーブルなどの伝送媒体を複数収容する。通常、このようなイーサネット(登録商標)の通信ハブを用いて通信を行なう場合、トラフィックの輻輳状態によっては、データパケットが通信ハブを通過する際の遅延時間が数ミリ秒単位で変動する。
【0082】
本実施形態では、送信装置100(図2参照)のデータ送信部102は、IEEE802.1および802.3に従った通信方式でイーサネットにデータを送信する。また、中継装置110(図3参照)のデータ受信部121やデータ送信部122、および、受信装置130(図4参照)のデータ受信部131もまた、IEEE802.1および802.3に従った通信方式でイーサネット(登録商標)を用いたデータの送受信をする。
なお、上では第一の実施形態における通信システム1を用いた例を説明したが、第二から第四までのいずれかの実施形態における通信システムを用いてイーサネット(登録商標)による通信を行うようにしても良い。
【0083】
このように、本実施形態によれば、イーサネット通信において、第一から第四までの実施形態いずれかにおける通信システムを適用して、伝送遅延が常に一定の通信、あるいは伝送遅延の変動を所望の量以下に抑えた通信を実現することが可能となる。
【0084】
[第九の実施形態]
次に、この発明の第九の実施形態について説明する。本実施形態は第一の実施形態おける通信システム1を用いて、ATM(Asynchronous Transfer Mode、非同期伝送モード)によるパケット交換通信を行う。この場合、中継装置110は、集線装置に相当する。
【0085】
本実施形態では、送信装置100(図2参照)のデータ送信部102は、ATM方式に従った通信方式でデータを送信する。また、中継装置110(図3参照)のデータ受信部121やデータ送信部122、および、受信装置130(図4参照)のデータ受信部131もまた、ATMによるパケット交換通信を行う。
なお、上では第一の実施形態における通信システム1を用いた例を説明したが、第二から第四までのいずれかの実施形態における通信システムを用いてATMによるパケット交換通信を行うようにしても良い。
【0086】
このように、本実施形態によれば、ATM通信において、第一から第四までの実施形態いずれかにおける通信システムを適用して、伝送遅延が常に一定の通信、あるいは伝送遅延の変動を所望の量以下に抑えた通信を実現することが可能となる。
【0087】
[第十の実施形態]
次に、この発明の第十の実施形態について説明する。本実施形態は、第一の実施形態おける通信システム1を用いて、メディア(通信媒体)共有型のパケット交換通信を行う。
【0088】
パケット交換通信の中でも特に、多数の送信装置が一本の通信メディアを共有するメディア共有型のネットワーク構成をとっている場合には、伝送遅延の変動の問題が深刻である。メディア共有型のネットワークでは、他の送信装置のデータ送信動作によって、自らの送信が待機させられる可能性を考慮しなければならないからである。メディア共有型である半二重通信モードイーサネット通信を例にとると、ある機器がパケットを送信中であれば、通信メディアを共有する他の機器はパケットを送信できない。パケットの長さは送信するデータの内容により様々に変化するため、パケットを送信可能になるまでの待機時間は、他の機器の通信状況の影響を受けて様々に変動する。
このような通信においては、中継装置によるデータパケットの中継動作の他にも、送信装置のデータパケット送信動作にも伝送遅延が変動する要因を含んでいる。つまり、中継装置だけでなく、送信装置においても遅延時間が発生し、伝送遅延が変動する要因となる。よって、本実施形態では、送信装置にも伝送遅延を一定にするための構成を持たせるようにする。
【0089】
図13は、本実施形態による送信装置500の機能構成を示すブロック図である。図示するように、送信装置500は、データ生成部501と、データ送信部502と、計時部503と、遅延測定部504と、遅延情報通知部507とを含んで構成される。
【0090】
データ生成部501は、送信するためのデータを生成し、生成したデータをデータ送信部502に出力とともに、データの生成が完了した際には生成完了フラグの信号を遅延測定部504に出力する。
データ送信部502は、データ生成部501から出力されたデータを送信すべく送信動作を開始し、他の送信装置の送信終了の待機動作や送信準備動作を全て完了して自らがデータを通信路に送信できる状況になったら、データを受信装置に向けて送信するとともに、送信フラグの信号を生成し、遅延測定部504に出力する。なお、データ送信部502から送信されたデータは、必要に応じて中継装置で中継されてから受信装置に伝送される。
【0091】
計時部503は、内部にクロックを備えており、計時結果を出力する。
遅延測定部504は、計時部503による計時結果を用いながら、生成完了フラグの信号がデータ生成部501から通知された時刻(生成完了フラグの信号が生成された時刻)と、送信フラグの信号がデータ送信部502から通知された時刻(送信フラグの信号が生成された時刻)との差分、すなわち、送信装置500で生じた遅延時間δを測定し、遅延情報通知部507に出力する。
【0092】
遅延情報通知部507は、遅延時間δを含む遅延情報を送信する。
なお、送信装置500において、遅延情報通知部507はデータ送信部502と共通の信号送信手段(図示せず)を介して遅延情報を送信するようにしてもよい。
【0093】
このように本実施形態によれば、送信装置500は、送信装置500で生じた遅延時間を測定してその遅延時間の情報を含む遅延情報を送信するため、データ及び遅延情報を受信する中継装置や受信装置は、送信装置500で生じた遅延時間を含めた遅延時間の総和と目標伝送遅延との差分の時間だけ遅延を発生させることができる。つまり、本実施形態の通信システムでは、目標伝送遅延に一致させてデータ処理を行うことができる。つまり、メディア共有型パケット通信網を用いる場合も、伝送遅延を常に一定とした通信、あるいは伝送遅延の変動を所望の量以下に抑えた通信を実現できる。
【0094】
なお、本実施形態の通信システムは、第一から第四までのいずれかの実施形態に記載した中継装置および受信装置と送信装置500を用いて構成されるが、メディア共有型のネットワーク構成をとっているために衝突により再送が行われる可能性がある。そこで、送信装置および中継装置における遅延時間の測定も次のように行なう。即ち、第一の実施形態で示した中継装置110(図3参照)の場合、データ送信部122は、衝突により同一のデータを再送する場合であってもその再送データの送信が可能になる毎に、送信フラグの信号を生成し、遅延測定部124に出力する。これにより、遅延測定部124は、衝突による再送で生じた遅延時間を含んだ遅延情報を送信することができる。
なお、第二から第四までの実施形態に記載した中継装置および送信装置500を用いる場合にも、それぞれ同様に、再送するデータをデータ送信部が送信可能になる毎に送信フラグの信号を生成するようにして、その都度遅延測定部が遅延時間を測定する。
【0095】
[第十一の実施形態]
次に、この発明の第十一の実施形態について説明する。本実施形態は、第十の実施形態おける通信システム1を用いて、IEEE802.11方式のいわゆる無線LAN通信を行う。
【0096】
本実施形態では、送信装置500(図13参照)のデータ送信部502は、IEEE802.11に従った通信方式で無線LANにデータを送信する。また、中継装置110(図3参照)のデータ受信部121やデータ送信部122、および、受信装置130(図4参照)のデータ受信部131もまた、IEEE802.11に従った通信方式で無線LANによるデータの送受信を行う。なお無線LAN通信は、通信帯域を他の通信機器と共用するメディア共有型ネットワークであるため、送信装置100や中継装置110が、データの送信を開始しようとした際に無線信号の衝突が発生する可能性があり、衝突を予防するため、データパケットの送信に先立ってあらかじめ無線局毎に異なるランダムな時間だけ送信を待機する規定になっている。そのため、実際に衝突が起こるか否かに関わらず、データパケットの送信動作そのものに伝送遅延が変動する要因を含んでいる。そこで、本実施形態においても、遅延を一定にするための構成を持たせた送信装置500を用いる。
【0097】
このように、本実施形態によれば、無線LAN通信において、第一から第四までの実施形態いずれかにおける通信システムと送信装置500を組み合わせて、伝送遅延が常に一定の通信、あるいは伝送遅延の変動を所望の量以下に抑えた通信を実現できる。
【0098】
以上、図面を参照してこの発明の複数の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】第一の実施形態による通信システムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】第一の実施形態による送信装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】第一の実施形態による中継装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】第一の実施形態による受信装置の機能構成を示すブロック図である。
【図5】第一の実施形態における遅延情報を通知する方法の実施例を示した概略図である。
【図6】第一の実施形態における遅延情報を通知する方法の実施例を示した概略図である。
【図7】第一の実施形態における遅延情報を通知する方法の実施例を示した概略図である。
【図8】第二の実施形態による通信システムの構成を示すブロック図である。
【図9】第二の実施形態による中継装置の機能構成を示すブロック図である。
【図10】第二の実施形態による受信装置の機能構成を示すブロック図である。
【図11】第三の実施形態による中継装置の機能構成を示すブロック図である。
【図12】第四の実施形態による中継装置の機能構成を示すブロック図である。
【図13】第十および第十一の実施形態による送信装置の機能構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0100】
1,2 … 通信システム
100,500 … 送信装置
101,501 … データ生成部
102,502 … データ送信部
503 … 計時部
504 … 遅延測定部
507 … 遅延情報通知部
110,210,310,410 … 中継装置
121,221,321,421 … データ受信部
122,222,322A,322B,422A,422B … データ送信部
123,223,323,423 … 計時部
124,224,324A,324B,424A,424B … 遅延測定部
125,225,325,425 … 遅延情報受信部
126,326A,326B … 遅延情報更新部
127,227,327A,327B,427A,427B … 遅延情報通知部
130,230 … 受信装置
131,231 … データ受信部
132,232 … データ処理部
133,233 … 計時部
134,234 … 遅延情報受信部
135,228,235,428 … 処理延期部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを受信するとともに、前記データを受信した際に受信フラグの信号を生成するデータ受信部と、
前記データ受信部により受信された前記データを送信するとともに、前記データが送信可能な状態になった際に送信フラグの信号を生成するデータ送信部と、
前記受信フラグの信号と前記送信フラグの信号との間隔を計時することにより遅延時間を測定する遅延測定部と、
外部から遅延情報を受信する遅延情報受信部と、
前記遅延測定部により測定された前記遅延時間に基づいて、前記遅延情報受信部により受信された前記遅延情報を更新して新たな遅延情報を生成する遅延情報更新部と、
前記遅延情報更新部により生成された前記新たな遅延情報を送信する遅延情報通知部と、
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記データ送信部と前記遅延測定部と前記遅延情報更新部と前記遅延情報通知部とをN組(Nは2以上の整数)備え、
前記遅延測定部は、対応する前記データ送信部からの前記送信フラグの信号に基づき前記遅延時間を測定し、
前記遅延情報更新部は、対応する前記遅延測定部により測定された前記遅延時間に基づいて前記新たな遅延情報を生成し、
前記遅延情報通知部は、対応する前記遅延情報更新部により生成された前記新たな遅延情報を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
データを受信するデータ受信部と、
遅延情報を受信し、前記遅延情報に含まれる遅延時間と目標伝送遅延との差分を計算する遅延情報受信部と、
前記遅延情報受信部により計算された前記差分に基づいて前記データ受信部により受信された前記データの処理を延期させるとともに、延期が完了した際に処理延期完了フラグの信号を生成する処理延期部と、
前記処理延期部により延期された前記データを送信するとともに、前記データが送信可能な状態になった際に送信フラグの信号を生成するデータ送信部と、
前記処理延期完了フラグの信号と前記送信フラグの信号との間隔を計時することにより遅延時間を測定する遅延測定部と、
前記遅延情報部により測定された前記遅延時間を含んだ遅延情報を送信する遅延情報通知部と、
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項4】
前記データ送信部と前記遅延測定部と前記遅延情報通知部とをN組(Nは2以上の整数)備え、
前記遅延測定部は、対応する前記データ送信部からの前記送信フラグの信号に基づき前記遅延時間を測定し、
前記遅延情報通知部は、対応する前記遅延測定部により測定された前記遅延時間に基づく遅延情報を送信する
ことを特徴とする請求項3に記載の中継装置。
【請求項5】
データを受信するデータ受信部と、
遅延情報を受信し、前記遅延情報に含まれる遅延時間と目標伝送遅延との差分を計算する遅延情報受信部と、
前記遅延情報受信部により計算された前記差分に基づいて、受信された前記データの処理を延期させる処理延期部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項6】
前記データ受信部が受信するデータに時刻情報が含まれ、
さらに、前記時刻情報に基づき受信装置の時刻基準であるクロックを校正するデータ処理部を備える
ことを特徴とする請求項5に記載の受信装置。
【請求項7】
送信するデータの生成が完了した際に生成完了フラグの信号を生成するデータ生成部と、
前記データ生成部により生成されたデータを送信するとともに、前記データが送信可能な状態になった際に送信フラグの信号を生成するデータ送信部と、
前記生成完了フラグの信号と前記送信フラグの信号との間隔を計時することにより遅延時間を測定する遅延測定部と、
前記遅延測定部により測定された前記遅延時間を含んだ遅延情報を送信する遅延情報通知部と、
を備えることを特徴とする送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−153055(P2009−153055A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331003(P2007−331003)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】