説明

中間転写ベルトの製造方法

【課題】安定した表面粗さ(Rz)と、膜厚が安定し、二次転写後のブレードによるトナーの除去による耐摩耗性、擦り傷耐性等の耐久性に優れた表面層を有する中間転写ベルトの製造方法及び中間転写ベルトの提供。
【解決手段】無端のベルト状基体の表面上に、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を一次転写する表面層を有する中間転写ベルトの製造方法において、前記表面層を形成する表面層形成用塗布液を超音波アトマイザーを使用し、前記超音波アトマイザーと前記ベルト状基体の表面までの距離を20mmから300mmで前記表面層形成用塗布液を前記ベルト状基体の表面に塗布すること特徴とする中間転写ベルトの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式の画像形成装置に使用する中間転写ベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、近年では高画質フルカラー化、高品質化の要求が強く求められている。電子写真方式の画像形成装置は、従来から知られているように、感光体を一様に帯電する帯電部材、感光体上に静電潜像を形成する露光部材、静電潜像をトナー像で現像する現像部材、得られたトナー像を転写体に転写する転写部材、トナー像を転写体上に定着させる定着部材、感光体上の残留トナーをクリーニングするクリーニング部材、感光体上の静電潜像を除去する除電部材等の構成部材を有している。
【0003】
電子写真方式の画像形成装置は、帯電したトナーを感光体上の静電潜像に接触或いは非接触で供給し、静電潜像を顕像にする現像過程を経て形成したトナー像を転写工程で中間転写ベルトに一次転写した後、転写材に二次転写し、更に定着して最終画像を形成するものである。
【0004】
転写工程では中間転写ベルト材にトナー像を一次転写するための転写帯電と除電、転写後の中間転写材に残ったトナーを除去するためのブレードによるクリーニング等の様々な機械的及び電気的外力が中間転写ベルトに加えられる。
【0005】
このため、中間転写ベルトにはこれらの外力に対する耐久性、即ち機械的強度や耐摩耗性及び電気的耐久性と言った様々な特性が要求されている。
【0006】
中間転写ベルトに使用する材料としては、ポリカーボネート樹脂、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリアルキレンフタレート、PC(ポリカーボネート)/PAT(ポリアルキレンテレフタレート)のブレンド材料、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)/PC、ETFE/PAT、PC/PATのブレンド材料、ポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の導電性材料を分散させた材料等が知られている。
【0007】
これらの熱可塑性樹脂を使用する場合、単独では、滑り性、耐傷性、クリーニング性に劣るため、これらの性能を補うために表面層を設けて使用することが知られている。
【0008】
例えば、特開2000−330390号公報には、中間転写ベルト材料の伸びやクリープなどに起因する色ずれ、色相変化などの画像欠陥や、ベルト亀裂、破断などによるベルト寿命の短縮や、表面抵抗率低下によるベルト劣化等を防止するため、導電剤が分散された樹脂材料よりなる表面層を設けるとからなることが開示されている。特開2000−330390号公報には、付着、巻き上がり現象を防ぎ、二次転写材の剥離性を向上させるために、フッ素樹脂を含む水系エマルジョン塗料をドライコーティングして、転写基材の表面粗さ(Rz)を10ないし30μmの範囲とする技術が開示されている。
【0009】
トナーには、転写効率を向上させるために無機微粒子、磁性粉、フェライト等を混入して使用されている。
【0010】
この様なトナーを使用し、従来の技術を使用した表面層を設けた中間転写ベルトでも、二次転写後に中間転写ベルトの上に残ったトナーをブレードにより除去する際トナーによる引っ掻き傷が発生し、中間転写ベルトの耐久性を低下させる原因の1つになっている。
【0011】
このため、表面層の耐久性を向上させる対策が検討されてきた。例えば、熱可塑性樹脂を基材とし、導電性粒子を含むペンタエリスリトールヘキサアクリレートを使用した塗工液をディップコート法に基材上に塗工し、表面粗さ(Rz)が0.2≦Rz≦0.5の硬化膜としての表面層が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
特許文献1に記載の表面層を使用した場合、ブレードによる耐摩耗性、擦り傷に対する耐久性は確かに向上するが、次の問題点があることが判った。
1.表面粗さ(Rz)のバラツキが安定しないため、滑り性、クリーニング性が劣り、画像性能に影響を与える。
2.膜厚が安定しないため、表面抵抗がバラツキ、ブレードによる二次転写後のトナーの除去にムラが生じ、長時間の使用で濃度ムラ、カブリ濃度の上昇等が発生する。
【0013】
この様な状況から、安定した表面粗さ(Rz)と、膜厚が安定し、二次転写後のブレードによるトナーの除去による耐摩耗性、擦り傷耐性等の耐久性に優れた表面層を有する中間転写ベルトの製造方法及びこの製造方法により製造した中間転写ベルトの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−183401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、この様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、安定した表面粗さ(Rz)と、膜厚が安定し、二次転写後のブレードによるトナーの除去による耐摩耗性、擦り傷耐性等の耐久性に優れた表面層を有する中間転写ベルトの製造方法及び中間転写ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成された。
【0017】
1.無端のベルト状基体の表面上に、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を一次転写する表面層を有する中間転写ベルトの製造方法において、
前記表面層を形成する表面層形成用塗布液を超音波アトマイザーを使用し、前記超音波アトマイザーと前記ベルト状基体の表面までの距離を20mmから300mmで前記表面層形成用塗布液を前記ベルト状基体の表面に塗布することを特徴とする中間転写ベルトの製造方法。
【0018】
2.前記表面層形成用塗布液の固形分濃度が5質量%から30質量%であることを特徴とする前記1に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【0019】
3.前記表面層形成用塗布液の粘度が2mPa・sから50mPa・sであることを特徴とする前記1又は2に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【0020】
4.前記表面層形成用塗布液を前記無端のベルト状基体の表面上に塗布する時、該無端のベルト状基体を600mm/minから2000mm/minで回転搬送させながら、且つ前記超音波アトマイザーを毎秒当たり、該超音波アトマイザーによる塗布幅の50%から90%に相当する長さを、該無端のベルト状基体の回転搬送方向に直角に交わる方向に移動しながら塗布することを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【0021】
5.前記超音波アトマイザーの塗布幅が5mmから200mmであることを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【0022】
6.前記超音波アトマイザーの前記表面層形成用塗布液の噴霧量が2ml/minから350ml/minであることを特徴とする前記1から5の何れか1項に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【発明の効果】
【0023】
安定した表面粗さ(Rz)と、膜厚が安定し、二次転写後のブレードによるトナーの除去による耐摩耗性、擦り傷耐性等の耐久性に優れた表面層を有する中間転写ベルトの製造方法及び中間転写ベルトを提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略断面構成図である。
【図2】図1に示す中間転写ベルトの構成を示す概略部分断面図である。
【図3】、無端の中間転写ベルトの無端ベルト状基体の表面に表面層を形成する製造工程の一例の概略図である。
【図4】図3に示す塗布装置の超音波アトマイザーにより塗布している状態を示すに示すA−A′に沿った概略図である。
【図5】図3に示す製造工程で、超音波アトマイザーを使用して無端ベルト状基体の表面に表面層形成用塗布液を塗布するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施する形態を図1から図4を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
図1は、電子写真方式の画像形成装置の一例を示す概略断面構成図である。尚、本図はフルカラー画像形成装置の場合を示している。
【0027】
図中、1はフルカラー画像形成装置を示す。フルカラー画像形成装置1は、複数組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状中間転写体形成ユニット7と、記録媒体Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としてのベルト式定着装置24とを有する。フルカラー画像形成装置1の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0028】
各感光体1Y、1M、1C、1Kに形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成ユニット10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Y、感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像ローラー4Y1を有する現像手段4Y、一次転写手段としての一次転写ローラー5Y、クリーニング手段6Yを有する。
【0029】
又、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成ユニット10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像ローラー4M1を有する現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラー5M、クリーニング手段6Mを有する。
【0030】
又、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成ユニット10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像ローラー4C1を有する現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラー5C、クリーニング手段6Cを有する。
【0031】
又、更に他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成ユニット10Kは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1K、感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像ローラー4K1を有する現像手段4K、一次転写手段としての一次転写ローラー5K、クリーニング手段6Kを有する。
【0032】
無端ベルト状中間転写体形成ユニット7は、複数のローラーにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体として無端の中間転写ベルト70を有する。
【0033】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端の中間転写ベルト70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された記録媒体として用紙等の記録媒体Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、レジストローラー23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラー5Aに搬送され、記録媒体P上にカラー画像が一括転写される。
【0034】
カラー画像が転写された記録媒体Pは、熱ローラー定着器270が装着された定着装置24により定着処理され、排紙ローラー25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0035】
一方、二次転写ローラー5Aにより記録媒体Pにカラー画像を転写した後、記録媒体Pを曲率分離した無端の中間転写ベルト70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
【0036】
画像形成処理中、一次転写ローラー5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の一次転写ローラー5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
【0037】
二次転写ローラー5Aは、ここを記録媒体Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端の中間転写ベルト70に圧接する。
【0038】
又、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。筐体8は、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体形成ユニット7とを有する。
【0039】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体形成ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体形成ユニット7は、ローラー71、72、73、74、76を巻回して回動可能な無端の中間転写ベルト70、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5K及びクリーニング手段6Aとを有している。
【0040】
筐体8の引き出し操作により、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体形成ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
【0041】
この様に感光体1Y、1M、1C、1Kの外周面上を帯電、露光し外周面上に潜像を形成した後、現像によりトナー像(顕像)を形成し、無端ベルト状の中間転写体70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して記録媒体Pに転写し、ベルト式定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。尚、本発明で像形成時とは潜像形成、トナー像(顕像)を記録媒体Pに転写し最終画像を形成することを含む。
【0042】
トナー像を記録媒体Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、各感光体1Y、1M、1C、1Kに配設されたクリーニング手段6Y、6M、6C、6Kで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
【0043】
上記カラー画像形成装置では、中間転写体をクリーニングするクリーニング手段6Aのクリーニング部材として、弾性ブレードを用いる。又、各感光体に脂肪酸金属塩を塗布する手段(11Y、11M、11C、11K)を設けている。尚、脂肪酸金属塩としては、トナーで用いたと同じものを用いることが出来る。
【0044】
図2は図1に示す中間転写ベルトの構成を示す概略部分断面図である。
【0045】
中間転写ベルトの構成は特に限定はなく、必要に応じて適宜選択することが可能である。以下、(a)から(d)に代表的な中間転写ベルトの構成を示す。
【0046】
(a)に示す中間転写ベルトの構成に付き説明する。
【0047】
図中、70aは中間転写ベルトを示す。中間転写ベルト70aは、基体701と、表面層702とを有する構成を有している。
【0048】
(b)に示す中間転写ベルトの構成に付き説明する。
【0049】
図中、70bは中間転写ベルトを示す。中間転写ベルト70bは、基体701と、中間層703、表面層702とを有する構成を有している。基体701と表面層702との密着強度を向上させ、しかも、これらの層が相溶しないようにするために、中間層を設けることは好ましい。
【0050】
(c)に示す中間転写ベルトの構成に付き説明する。
【0051】
図中、70cは中間転写ベルトを示す。中間転写ベルト70cは、基体701と、第1中間層703aと、第2中間層703bと、表面層702とを有する構成を有している。中間層を第1中間層703aと、第2中間層703bとに多層化することで中間転写ベルトの強度がより増大する。
【0052】
(d)に示す中間転写ベルトの構成に付き説明する。
【0053】
図中、70dは中間転写ベルトを示す。中間転写ベルト70dは、基体701と、弾性層704と、表面層702とを有する構成を有している。
【0054】
基体701は、ヤング率が200MPa(200kg/mm)以上となる材料を用いて形成することが好ましく、300MPa(300kg/mm)以上の材料がより好ましい。基体701の厚さは、20μmから150μmが好ましい。表面層の厚さは0.1μmから10μmが好ましい。中間層の厚さは20μmから200μmが好ましい。弾性層の厚さは50μmから500μmが好ましく、80μmから200μmがより好ましい。
【0055】
本図に示す中間転写ベルトの物性を以下に示す。
【0056】
ベルト表面の表面抵抗率は、記録媒体と中間転写ベルトとが剥離する箇所での局所的な剥離放電の抑制、記録媒体と中間転写体とが接触開始する個所での電界強度の均一化を考慮し、1×1010Ω/□から1×1014Ω/□であることが好ましい。
【0057】
表面抵抗率は、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「HRプローブ」)を用い、JIS K6991に基づいて測定することが可能である。
【0058】
表面層の表面エネルギーは、トナーの付着性、画像形成を考慮し、30mN/m以下となることが好ましい。
【0059】
又、中間転写ベルトの体積抵抗率は、トナー同士の静電的反発力、画像エッジ付近のフリンジ電界の影響等を考慮し、1×10Ω・cmから1×1012Ω・cmであることが好ましい。体積抵抗率の測定は、前述の表面抵抗率と同様に円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPのHRプローブ)を用い、JIS K6991に基づいて測定することが可能である。
【0060】
中間転写体ベルトの表面硬度は85N/mmから130N/mmが好ましい。ここで、表面硬度は金属材料の硬さ測定等に広く用いられているビッカース圧子により、圧子が試料にどれだけ侵入したかを測定する方法によって求めることが出来る。試験荷重P(mN)、圧子の試料への侵入量(押し込み深さ)D(μm)とした時、表面硬度DHは下記式(3)で定義される。
【0061】
式(3)
DH≡αP/D
ここで、αは圧子形状による定数で、α=3.8584(使用圧子:ビッカース圧子の場合)である。
【0062】
この表面硬度は、圧子を押し込んで行く過程の過重と押し込み深さから得られる硬さで、試料の塑性変形だけでなく、弾性変形をも含んだ状態での材料の強度特性を表すものである。尚、その計測面積は微小である。
【0063】
尚、中間転写体の転写面における微小表面硬度は、DIN50 359に準拠するユニバーサル硬度により測定される。具体的には、微小硬度計H100(フィッシャーインストルメンツ社製)にて測定し、プログラムWIN−HCUによって解析した。測定条件は、以下の通りである。
測定環境:23℃、55%RH
使用圧子:ビッカース圧子
負荷速度:10mN/20sec
最大押し込み深さ:0.5μm
本発明は、基体の上に少なくとも1層の表面層を有する図1、図2に示す無端の中間転写ベルトの製造方法及びこの製造方法で製造した中間転写ベルトに関するものである。
【0064】
図3は、無端の中間転写ベルトの無端ベルト状基体の表面に表面層を形成する製造工程の一例の概略図である。図3(a)は無端の中間転写ベルトの無端ベルト状基体の表面に表面層を形成する製造工程の一例の概略斜視図である。図3(b)は図3(a)に示される製造工程の一例の概略平面図である。
【0065】
図中、9は製造工程を示す。製造工程9は保持部9aと塗布部9bとを有している。保持部9aは回転可能な第1保持ローラー9a1と、回転可能な第2保持ローラー9a2と、基体701の平面性を保持する保持部材9a3とを有している。本図では第2保持ローラー9a2が駆動用になっており、第1保持ローラー9a1が張力調整用となっている。第1保持ローラー9a1と、第2保持ローラー9a2とを駆動用及び張力調整用にするかは必要に合わせ適宜設定することが可能である。無端ベルト状基体701は第1保持ローラー9a1と、第2保持ローラー9a2とに保持された状態で駆動用の第2保持ローラー9a2の回転により回転可能となっている。
【0066】
保持部材9a3は第1保持ローラー9a1と、第2保持ローラー9a2とに保持された状態で回転する無端ベルト状基体701の揺れ、バタツキを抑えるために第1保持ローラー9a1と、第2保持ローラー9a2との間に無端ベルト状基体701の裏面と接触する様に配設されている。更に、保持部材9a3の基体701の裏面と接触する面には、基体701の平面性に影響がない程度の複数の孔(不図示)を設け、保持部材9a3の内部を基体701の搬送に影響が出ない程度に減圧し、無端ベルト状基体701を保持部材9a3に吸引保持出来る様にすることが好ましい。
【0067】
塗布部9bは、塗布装置の超音波アトマイザー9b1と、駆動部9b2とを有している。9b11は超音波アトマイザー9b1に表面層形成用塗布液を供給する塗布液供給管を示す。超音波アトマイザー9b1は取り付け部材9b12によりガイドレール9b4に無端ベルト状基体701の搬送方向に対して直角に交わる方向に移動可能に取り付けられている。尚、本図では超音波アトマイザー9b1への塗布液供給部、制御部は省略してある。
【0068】
駆動部9b2はモーター9b21とガイドレール取り付け板9b3とを有している。ガイドレール取り付け板9b3には、取り付け部材9b12を取り付け、保持部9aに保持された無端ベルト状基体701の搬送方向に対して直角に交わる方向に移動させるための2本のガイドレール9b4が配設されている。
【0069】
モーター9b21は、取り付け部材9b12の上に取り付けられたスライド用ネジ9b13と螺合し、取り付け部材9b12を保持部9aに保持された無端ベルト状基体701の幅よりも長く移動させる長さの雌ネジ9b22を有している。
【0070】
モーター9b21を駆動させることで、スライド用ネジ9b13の回転に伴い、取り付け部材9b12に取り付けられた超音波アトマイザー9b1が無端ベルト状基体701の搬送方向に対して直角に交わる方向に移動することが可能となっている。
【0071】
本図は、無端ベルト状基体701を回転させながら、且つ塗布装置を無端ベルト状基体701の搬送方向に対して直角に交わる方向に往復移動させ塗布する方式の塗布装置である。
【0072】
尚、本図は第1保持ローラー9a1と、第2保持ローラー9a2とで無端ベルト状基体701を保持する方式であるが、第1保持ローラー9a1と、第2保持ローラー9a2の代わりに無端ベルト状基体701の直径と同じ直径の円筒状(円柱状)の枠体に無端ベルト状基体701を保持し、枠体を回転させる方式であっても構わない。
【0073】
超音波アトマイザー9b1としては市販されているものの使用が可能である。例えば、超音波アトマイザー(ティックコーポレーション(株)製)、超音波スプレーコーティング装置(USI社製)、超音波スプレーノズルシステム(ソノテック社製)が挙げられる。
【0074】
無端ベルト状基体701の製造方法としては、例えば、ポリアミド酸溶液を円筒状金型の外周面に浸漬する方式や、内周面に塗布する方式や更に遠心する方式、或いは注形型に充填する方式などの適宜な方式でリング状に展開し、その展開層を乾燥製膜してベル卜形に成形し、その成形物を加熱処理してポリアミド酸をイミドに転化して型より回収する方法などの従来に準じた適宜な方法により行うことが出来る(特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報、特開平3−180309号公報等)。無端ベルトの形成に際しては、型の離型処理や脱泡処理などの適宜な処理を施すことが出来る。
【0075】
図4は図3に示す塗布装置の超音波アトマイザーにより塗布している状態を示す、A−A′に沿った概略図である。図4(a)は図3に示す塗布装置の超音波アトマイザーにより塗布している状態を示す、A−A′に沿った概略断面図である。図4(b)は図4(a)のPに示す部分の概略拡大平面図である。尚、本図では取り付け部材、ガイドレール、スライド用ネジ等は省略してある。
【0076】
図中、Jは超音波アトマイザー9b1の噴霧口9b1aから無端ベルト状基体701の表面までの距離を示す。距離Jは、20mmから300mmである。
【0077】
20mm未満の場合は、噴霧口から噴霧された液滴が基材から跳ね返ることにより、膜厚と表面粗さが不均一となるため好ましくない。
【0078】
300mmを超える場合は、噴霧口9b1aから噴霧された液滴が風(環境)の影響を受け、所望位置を外れ、膜厚と表面粗さが不均一となるため好ましくない。
【0079】
Kは噴霧口9b1aから噴霧された液滴により無端ベルト状基体701の上に形成された円形の塗布領域Lの幅を示す。幅Kは塗布領域Lの直径を示すと同時に塗布幅も示す。幅Kは、液滴同士が隣接することによる液滴の粗大化、液滴間の隙間、膜厚と表面粗さの安定化等を考慮し、5mmから200mmが好ましい。
【0080】
Mは円形の塗布領域Lの周辺を示す。Nは円形の塗布領域Lの中心を示す。
【0081】
塗布液供給管9b11から超音波アトマイザー9b1に供給される表面層形成用塗布液の固形分濃度は、ウエット膜厚、ベルト搬送時の膜厚ムラ、膜厚コントロール、表面粗さ等を考慮し、5質量%から30質量%であることが好ましい。
【0082】
表面層形成用塗布液の粘度は、液滴形成性を考慮し、50mPa・s以下であることが好ましい。更に好ましくは、2mPa・sから50mPa・sである。
【0083】
表面層形成用塗布液を塗布している時、無端ベルト状基体701の搬送速度は、液滴への搬送時の風邪の影響による膜厚、表面粗さ等を考慮し、2000mm/min以下とすることが好ましい。更に好ましくは600mm/minから2000mm/min以下である。
【0084】
表面層形成用塗布液を塗布している時、無端ベルト状基体701の搬送方向に対して直角に交わる方向へ移動させる超音波アトマイザー9b1の長さは、液滴への超音波アトマイザー9b1の移動に伴う風邪の影響による膜厚、表面粗さ等を考慮し、超音波アトマイザーによる塗布幅の50%から90%に相当する長さが好ましい。具体的には、幅Kが80mmの場合、超音波アトマイザー9b1は40mm/secから72mm/secで移動することになる。
【0085】
表面層形成用塗布液の無端ベルト状基体701の表面への塗布回数は、必要に応じて適宜設定することが好ましい。尚、塗布回数とは、超音波アトマイザー9b1が無端ベルト状基体701の端部の塗布開始点で塗布を開始し、対向する端部にまで移動し無端ベルト状基体701の全幅で全長に塗布した時を塗布1回とした回数を言う。
【0086】
表面層形成用塗布液を塗布する時、超音波アトマイザー9b1からの噴霧量は、液滴形成、液垂れ、ベルト表面からの液滴の跳ね返り等を考慮し、350ml/min以下であることが好ましい。更に好ましくは2ml/minから350ml/minである。
【0087】
次に、図3に示す製造工程で、超音波アトマイザーを使用して無端ベルト状基体の表面に表面層形成用塗布液の塗布するフローを図5に示す。
【0088】
図5は図3に示す製造工程で、超音波アトマイザーを使用して無端ベルト状基体の表面に表面層形成用塗布液を塗布するフロー図である。尚、本図は超音波アトマイザーは省略してある。
【0089】
本発明の中間転写ベルトの製造方法に係わる超音波アトマイザーによる塗布方法は、無端ベルト状基体を回転させながら、且つ超音波アトマイザーを無端ベルト状基体の回転移動方向と直交する方向に移動させ塗布する方法である。
【0090】
ステップ1は、塗布開始点に超音波アトマイザーを設定し、表面層形成用塗布液を塗布する塗布開始の状態を示す。この時、円形の噴霧領域Lの辺Mは無端ベルト状基体の端部の予め設定された位置になるように設定される。尚、塗布開始点は噴霧領域Lの中心Nを言う。
【0091】
ステップ2は、表面層形成用塗布液の塗布が開始された後、数分後の状態を示す。塗布は無端ベルト状基体701と超音波アトマイザー9b1(不図示)とが同時に移動(噴霧領域Lが移動する)しながら行われる。無端ベルト状基体701は矢印aの方向に600mm/minから2000mm/minの速度で回転移動することが好ましい。超音波アトマイザーは、無端ベルト状基体701の回転移動方向と直交する方向に、毎秒当たり、超音波アトマイザーによる塗布幅(図4に示す塗布領域Lの幅K)の50%から90%に相当する長さを移動することが好ましい。本図は超音波アトマイザーを無端ベルト状基体701の回転移動方向と直交する方向に、毎秒当たり超音波アトマイザーによる塗布幅(図4に示す塗布領域Lの幅K)の50%に相当する長さを移動しながら塗布を行っている状態を示す。
【0092】
ステップ3は、超音波アトマイザーが移動し、噴霧領域Lの周辺Mが無端ベルト状基体701の開始した端辺と対向する端辺に設定された位置に到達した状態を示す。
【0093】
ステップ4は、ステップ3の状態から無端ベルト状基体701が1回転して無端ベルト状基体701の表面全面(但し、両端は塗布しない領域を残す)に表面層形成用塗布液が塗布された状態を示す。
【0094】
本発明では、ステップ4に示す状態を塗布1回と言う。以後、必要に応じて、塗布開始した無端ベルト状基体701の端部に向けて超音波アトマイザーを移動(図中の矢印c方向)し、ステップ2からステップ3の操作を繰り返すことで設定した厚さの表面層を形成することが可能である。
【0095】
超音波アトマイザーを使用して無端ベルト状基体の表面に、表面までの距離を、20mmから300mmで表面層形成用塗布液を塗布し表面層を形成することで次の効果が得られた。
1)導電性粒子が凝集することがなく、安定した表面粗さを有した表面層の形成が可能となった。
2)安定した膜厚の表面層の形成が可能となった。
【0096】
次に、本発明の無端の中間転写ベルトを構成している材料に付き説明する。
【0097】
(無端ベルト状基体)
例えば、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリイミド、PEEK(ポリエーテル・エーテルケトン)、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフロロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)等の樹脂材料及びこれらを主原料としてなる樹脂材料が挙げられる。更に、これらの樹脂材料と弾性材料とをブレンドした材料を使用することも可能である。
【0098】
弾性材料としては、例えば、ポリウレタン、塩素化ポリイソプレン、NBR、クロロピレンゴム、EPDM、水素添加ポリブタジエン、ブチルゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
樹脂材料の中でも機械特性の点からポリイミド樹脂が好ましい。具体的には、ポリイミド樹脂材料として、DuPont(株)のカプトンHA等のポリピロメリット酸イミド系のイミド樹脂材料、宇部興産(株)のユーピレックスS等のポリビフェニルテトラカルボン酸イミド系樹脂材料、宇部興産(株)のユーピレックスR、三井東圧化学工業(株)のLARC−TPI(熱可塑性ポリイミド樹脂)等のポリベンゾフェノンテトラカルボン酸イミド酸系樹脂材料等が挙げられ。
【0100】
図2(b)に示される中間層に使用可能な材料としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、マレイン酸の共重合体樹脂や、ポリアミド樹脂などが挙げられる。具体的なポリアミド樹脂の例としては、N−メトキシメチル化ナイロン(以下「ナイロン8」と略す)、ナイロン12、共重合ナイロン等が挙げられる。
【0101】
ポリアミド樹脂の溶剤としては、メタノール、エタノール等の単独溶剤又はそれら単独溶剤に水、トルエン等を混合させた混合溶剤、1−プロパノール、2−プロパノール等が用いられる。中でも、ナイロン8とメタノール/水混合溶剤(メタノール/水=3/1)との組合せが好適である。
【0102】
図2(c)に示される第1中間層703aと、第2中間層703bの場合、第2中間層703bには上述の中間層の樹脂材料を使用することが好ましい。又、第1中間層703aに使用可能な樹脂材料としては、前述したポリイミド樹脂やポリアミド樹脂の他に、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン共重合体、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素樹脂が挙げられる。
【0103】
表面層
表面層を形成する樹脂材料としては、中間転写ベルトの表面からのトナー画像の離れを促進させてるため、低表面エネルギーを有する材料を使用することが好ましい。低表面エネルギーを有する材料としては、例えば、フッ素系材料、シリコーン系材料、或いはこれらを主成分とする材料、フッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂、シリコーンオイル成分を分散してなる材料等が挙げられる。
【0104】
この中でも、シリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂は、特に限定されるものではないが、通常、作業効率から液状のシリコーン樹脂が好ましく、n−ヘキサン等の有機溶剤を含有したものや有機溶媒を使用しない反応型のものが挙げられる。又、特にハードタイプの一液又は二液の硬化型のシリコーン樹脂が好ましい。中でも、加熱硬化型シリコーン樹脂(メチル系)や室温硬化型シリコーン樹脂が好適である。表面層に添加する材料に付き説明する。
【0105】
表面層には、導電性を向上させ、二次転写時の局所的な剥離放電の発生をなくして、画像欠陥の発生を回避する目的として、導電性物質を添加することが好ましい。
【0106】
(導電性微粒子)
樹脂微粒子表面に金属の薄層を被覆した導電性微粒子を添加することが可能である。導電性微粒子の製造方法としては、例えば、表面を多孔質化した樹脂微粒子や、酸やアルカリによるエッチング処理を施した樹脂微粒子を用いて金属層の被覆を行う方法や、樹脂微粒子表面に金属をメッキする方法が挙げられる。又、特開平8−311655号公報や特開2001−247974号公報等に開示される無電界メッキによる導電性微粒子の作製方法は、多孔質化や表面性改質といった処理を行わずに良好な密着性が得られるので好ましい。
【0107】
導電性微粒子を構成する樹脂微粒子材料としては、金属層を被覆する時に使用する水溶性有機溶剤や無電解メッキ液に溶解することなく、せいぜい若干の膨潤が起こる程度の樹脂材料が使用される。具体的には、架橋構造を形成する樹脂材料が特に好ましい。
【0108】
架橋構造の樹脂材料を形成する重合性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサトリエン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジアリルカルビノール、アルキレンジアクリレート、オリゴ又はポリアルキレングリコールジアクリレート、オリゴ又はポリアルキレングリコールジメタクリレート、アルキレントリアクリレート、アルキレンテトラアクリレート、アルキレントリメタクリレート、アルキレンテトラメタクリレート、アルキレンビスアクリルアミド、アルキレンビスメタクリルアミド、両末端アクリル変性ポリブタジエンオリゴマー等を単独又は他の重合性単量体と重合させて得られる網状重合体;フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0109】
上記架橋構造を有する重合体の合成方法は特に限定されず、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法、分散重合法等の公知の合成方法を適宜選択することで形成可能である。又、上記架橋構造を形成する樹脂材料の他に、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル共重合体少なくとも1種を含有した樹脂粒子も使用可能である。
【0110】
樹脂微粒子の粒子径は、0.5μmから50.0μm、好ましくは、0.5μmから25.0μmである。又、表面層に含有される金属被覆した樹脂微粒子の量は、必要とする導電性を保持、転写不良、転写率を考慮し、単位面積当たり20個から80個であり、好ましくは、30個から70個である。
【0111】
樹脂微粒子表面に被膜可能な金属としては、特に限定されず、例えば、Au、Ag、Co、Ni、Pd、Pt、Sn等が挙げられる。これらの金属は、合金であってもよく、2種以上の複層被覆であってもよい。
【0112】
金属層の厚みは、導電性の発現を考慮し5nmから100nmが好ましく、より好ましくは10nmから80nmである。
【0113】
(金属アルコキシド化合物)
一般式(1) M(O−C2n+1
式中、Mはケイ素、アルミニウム、ジルコニウム又はチタンの何れかであり、mはMの価数となる。一般式(1)で表される化合物は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタンの金属アルコキシド化合物であるが、この中でもMがケイ素である下記に示す一般式(2)のテトラアルコキシシラン化合物が好ましく用いられる。
【0114】
一般式(2) Si(O−C2n+1
上記テトラアルコキシシラン化合物では、式中のアルコキシ基は炭素数が1〜8、好ましくは1〜4のアルコキシ基である。テトラアルコキシシラン化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
【0115】
上記以外の使用可能な金属アルコキシドの具体例として、アルコキシシラン化合物は、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラフェノキシシランなどが挙げられる。又、アルコキシチタン化合物は、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタンなどが、アルコキシアルミニウム化合物は、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウムなどが挙げられる。
【0116】
更に、アルコキシジルコニウム化合物は、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウムなどが挙げられる。
【0117】
尚、上述した一般式(1)、(2)で表される化合物を用いて形成されるものが含有されるが、ここで、一般式(1)、(2)で表される化合物を用いて形成されるものとは、上記化合物が単体で含有されている場合や、これらの化合物と結着樹脂とがカップリング反応などにより結合したものを含有する場合を意味するものである。
【0118】
(電子伝導性を付与する導電性物質)
電子伝導性を付与する導電性物質としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル、銅合金等の金属又は合金、酸化錫、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化錫−酸化インジウム又は酸化錫−酸化アンチモン複合酸化物等の金属酸化物等が挙げられる。この中でもファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックが代表的なものである。具体的には、電気化学(株)製粒状アセチレンブラック、旭カーボン(株)製HS−500、アサヒサーマルFT、アサヒサーマルMT、ライオンアグゾ(株)製ケッチェンブラック、キャボット(株)製バルカンXC−72、Degussa社製SPECIAL BLACK4等が挙げられる。これらのカーボンブラックは1種単独で使用する他に、2種以上を併用してもよい。
【0119】
電子伝導性導電性物質の含有量は、前記表面層中の結着樹脂100質量部に対して、4質量部から20質量部が好ましく、5質量部から15質量部がより好ましい。電子伝導性導電性物質の含有量を上記範囲とすることにより、表面層に適度な電子伝導性が付与される。
【0120】
(イオン伝導性を付与する導電性物質)
イオン伝導性導電性物質としては、例えば、カルボキシル基に4級アンモニウム塩基を結合する(メタ)アクリレートとの各種(例えばスチレン)共重合体、4級アンモニウム塩基と結合するマレイミドとメタアクリレートとの共重合体等の4級アンモニウム塩基を結合するポリマー、ポリスルホン酸ナトリウム等に見られるスルホン酸のアルカリ金属塩を結合するポリマー、分鎖中に少なくともアルキルオキシドの親水性ユニットを結合するポリマー、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール系−ポリアミド共重合体、ポリエチレン−エピクロルヒドリン共重合体、ポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルをセグメントとするブロック型のポリマー等の各種の界面活性剤が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。又、イオン伝導性導電性物質と前述の電子伝導性導電性物質とを組合せてもよく、安定した電気抵抗値が得られる。
【0121】
イオン伝導性導電性物質の含有量は、表面層中の結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部から30質量部が好ましく、1質量部から20質量部がより好ましい。
【0122】
(導電性フィラー)
中間転写ベルトを構成している各層に導電性フィラーと呼ばれる導電性もしくは半導電性の微粉末を含有させることにより、中間転写ベルトにおける抵抗率の調整や抵抗バラツキの抑制、更には、表面層に含有させた導電性樹脂微粒子を補助して、転写電圧による電界集中の発生の抑制をより効果的に行える。
【0123】
使用可能な導電性フィラーとしては、例えば、カーボンブラック等の導電性粉末、アルミニウム粉末、ニッケル粉末、ステンレス粉末等の金属粉末、c−ZnO、c−TiO、c−ZnO、c−SnO等の導電性金属酸化物、グラファイト、4級アンモニウム塩、リン酸エステル、スルホン酸塩、脂肪族多価アルコール、脂肪族アルコールサルフェート塩等のイオン性導電材等が挙げられる。これら導電性フィラーの中でも、良好な分散安定性が得られるケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックやc−TiO、c−SnOが好ましい。尚、「c−」は、導電性を有するという意味である。これらの導電性フィラーは、単独でもしくは2種以上を併せて用いられる。次に、本発明の中間転写ベルトが使用可能な画像形成装置について説明する。
【0124】
本発明の中間転写ベルトの使用が可能な画像形成装置としては、例えば、複写機やレーザプリンタ等が挙げられるが、特に、5000枚以上の連続プリントを行うような画像形成装置が含まれる。この様な画像形成では、中間転写ベルトと記録紙との間での電界発生が頻繁に行われるが、本発明の中間転写ベルトの製造方法に係る中間転写ベルトを使用することにより画像欠陥を発生させることのない安定した二次転写を実現している。
【0125】
本発明に使用可能な画像形成装置は、画像情報に応じた静電潜像を形成する像担持体、像担持体に形成した静電潜像をトナーを用いて可視化する現像装置、像担持体に担持されたトナー像を本発明の中間ベルトの製造方法に係る中間転写ベルトに転写する一次転写手段、中間転写ベルト上のトナー像を紙やOHPシートといった記録媒体上に転写する二次転写手段とを有する。そして、本発明の中間転写ベルトを中間転写体として備えることにより、剥離放電による画像欠陥を発生させることのない安定した画像形成が行える。
【0126】
本発明に使用可能な中間転写方式の画像形成装置は、特に限定されるものではなく、例えば、単色のトナーのみにより画像形成を行うモノクロの画像形成装置や、感光体ドラム等の像担持体上に担持されたトナー像の中間転写体への一次転写を順次繰り返してカラー画像を形成する装置や、各色毎の現像器を備えた複数の像担持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置と呼ばれるものが挙げられる。
【0127】
(弾性層)
弾性層に使用する材料としては、例えば、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、EPDM、アクリルゴム、シリコーンゴムの様なゴム材料にカーボンブラックや各種金属粉などの導電剤粒子を配合して、その体積抵抗率を108.5Ω・cmから1011.5Ω・cmの範囲に調整した材料からなるものを挙げられる。
【実施例】
【0128】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0129】
実施例1
図2(a)に示す基体/表面層の構成を有する中間転写ベルトを以下に示す方法で作製した。
【0130】
(無端ベルト状基体の作製)
3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とp−フェニレンジアミン(PDA)とからなるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液(宇部興産製ユーワニスS(固形分18質量%))に、乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH3.0、揮発分:14.0%))をポリイミド系樹脂固形分100質量部に対して、23質量部になるよう添加して、衝突型分散機(シーナス製GeanusPY)を用い、圧力200MPaで、最小面積が1.4mmで2分割後衝突させ、再度2分割する経路を5回通過させて、混合して、カーボンブラック入りポリアミド酸溶液を得た。
【0131】
カーボンブラック入りポリアミド酸溶液を円筒状金型内面に、ディスペンサーを介して0.5mmに塗布し、1500rpmで15分間回転させて均一な厚みを有する展開層とした後、250rpmで回転させながら、金型の外側より60℃の熱風を30分間あてた後、150℃で60分間加熱した。その後、360℃まで2℃/分の昇温速度で昇温し、更に360℃で30分加熱して溶媒の除去、脱水閉環水の除去、及びイミド転化反応の完結を行った。その後室温に戻し、金型から剥離し、総厚0.1mmの無端ベルト状基体を作製した。
【0132】
(表面層の形成)
(表面層形成用塗布液の調製)
オルガノポリシロキサン樹脂A液の調製
モノメチルトリメトキシシロキサン136g、トルエン200g、水酸化ナトリウム0.9gを1L(リットル)フラスコに採り、水20gを撹拌しながら加えた。40℃で2時間、ついで70℃で2時間熟成した後、常圧で285gまで濃縮した。この濃縮液中のシロキサン濃度は40%であり、又留分中には約70gのメタノールが含まれていた。次に、上記濃縮液に濃塩酸7g、水25gを40℃で加え40℃で2時間撹拌して熟成した。ついで10%硫酸ナトリウム水溶液100gによる水洗洗浄を3回繰り返し、系のpHを7にした。得られたオルガノポリシロキサン(272g)の濃度は40%であり、この液を樹脂A液とする。
【0133】
(カーボンブラックマスタA液の調製)
ファーネスカーボンブラック(平均一次粒径21nm、BET比表面積242m/g、DBP吸油量169ml/g、pH7.0、揮発分1.0%) 30g
アクリル系分散助剤(固形分30%) 10g
MEK(メチルエチルケトン) 160g
シクロヘキサン 40g
上記組成物をサンドグラインダーにて1000rpmで1時間分散し、カーボンブラックマスタA液を得た。
【0134】
上記樹脂A液100g、テトラメトキシシラン2g、MEK80g、メチルイソブチルケトン20gを添加し、サンドミルにて20分間、1000rpmで分散混合して、固形分7.8質量%の表面層形成用塗布液を得た。
【0135】
粘度は20mPa・sであった。粘度はビスコテック(株)回転式粘度計で測定した値を示す。
【0136】
(表面層形成用塗布液の塗布)
準備した無端ベルト状基体の表面に図3に示す塗布装置として超音波アトマイザー(ティックコーポレーション(株)製)を使用し、塗布液吐出ノズルの噴出口と電荷輸送層の表面までの距離を表1に示す様に変化し調製した表面層形成用塗布液を塗布した後、乾燥膜厚が5μmとなる様に表面層を塗設した。この時の乾燥・熱処理条件は、塗布後室温で5分間回転させ、その後、120℃で60分間熱処理し、中間転写ベルトを作製し試料No.101から106とした。
【0137】
尚、表面層形成用塗布液の塗布方法は、図5に示すステップ1からステップ4を5回繰り返し行った。又、無端のベルト状基体を1200mm/minで回転移動させ、且つ、超音波アトマイザーを無端のベルト状基体の回転搬送方向に直角に交わる方向に1.1mm/secで移動しながら塗布を行った。
【0138】
表面層形成用塗布液の他の塗布条件を以下に示す。
【0139】
吐出ノズル直径:2mm
超音波周波数:100kHz
平均液滴径:200μm
噴霧量:100ml/min
塗布回数:5回
評価
作製した試料No.101から106に付き、膜厚安定性、表面粗さ安定性、耐久性に付き以下に示す方法で評価し、以下に示す評価ランクに従って評価した結果を表1に示す。
【0140】
膜厚安定性
表面層の膜厚を長手方向60箇所、幅方向20箇所を測定し、以下に示す式から膜厚のバラツキを計算で求め膜厚安定性とした。膜厚は、フィッシャーインストルメンツ(株)製 MMSで測定した。
【0141】
膜厚のバラツキ(%)=((最大膜厚−最小膜厚)/平均膜厚)×100
膜厚安定性の評価ランク
○:5%未満
△:5%以上、9%未満
×:9%以上
表面粗さ安定性
表面層の表面粗さを長手方向20箇所、幅方向10箇所を測定し、以下に示す式から表面粗さのバラツキを計算で求め表面粗さ安定性とした。表面粗さは東京精密(株)製、表面粗さ形状測定機サーフコム1400Dで測定した。
【0142】
表面粗さのバラツキ(%)=((最大表面粗さ−最小表面粗さ)/平均表面粗さ)×100
表面粗さ安定性の評価ランク
○:11%未満
△:11%以上、21%未満
×:21%以上
耐久性
市販のフルカラー複合機「8050(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)」に中間転写ベルトを順次装着して、白地部、べた黒部及びレッド、グリーン、ブルーのソリッド画像部、文字画像部を1/4ずつ有するA4サイズの原稿を上質紙(64g/m)に10万枚プリントを行い、得られたプリントの画像濃度ムラに付き評価し耐久性の代用評価とした。尚、感光体のクリーニングは厚さ2mmのポリウレタン弾性体のブレードを使用した。
【0143】
画像濃度ムラ
プリント開始から、1万枚毎のプリント10枚に付き、べた黒画像の濃度ムラの有無を目視にて評価した。
【0144】
画像濃度ムラの評価ランク
○:画像濃度ムラがなく良好
△:画像濃度ムラがかすかに認められるが実用上問題ないレベル
×:画像濃度ムラが明らかに認められ実用上問題となるレベル
膜厚は、フィッシャーインストルメンツ(株)製 MMSで測定した値を示す。
【0145】
【表1】

【0146】
超音波アトマイザーを使用し、噴出口と基体の表面までの距離を本発明の20mmから300mmとして表面層形成用塗布液を塗布し作製した試料No.102から105は何れも膜厚安定性、表面粗さ安定性、耐久性で優れた性能を示すことが確認された。
【0147】
超音波アトマイザーを使用し、噴出口と基体の表面までの距離を本発明の10mmとして表面層形成用塗布液を塗布し作製した試料No.101は、表面粗さのバラツキが大きいことでクリーニング性が低下し画像ムラが認められ耐久性が劣る結果となった。
【0148】
超音波アトマイザーを使用し、噴出口と基体の表面までの距離を本発明の310mmとして表面層形成用塗布液を塗布し作製した試料No.106は、膜厚安定性と、表面粗さのバラツキが大きいことでクリーニング性が低下し画像ムラが認められ耐久性が劣る結果となった。本発明の有効性が確認された。
【0149】
実施例2
図2(a)に示す基体/表面層の構成を有する中間転写ベルトを以下に示す方法で作製した。
【0150】
(無端ベルト状基体の作製)
実施例1と同じ無端ベルト状基体を作製した。
【0151】
(表面層の形成)
(表面層形成用塗布液の調製)
実施例1で使用した表面層形成用塗布液を調製する時、表2に示す様に固形分濃度を変化した他は同じ方法で表面層形成用塗布液を調製した。尚、固形分濃度は、MEKとシクロヘキサンの添加量を変化させることで行った。又、粘度は増粘剤の添加量で一定となる様に調整することで行った。
【0152】
(表面層形成用塗布液の塗布)
準備した表面層形成用塗布液を、実施例1の試料No.103を作製した時と同じ塗布条件で準備した無端ベルト状基体の上に塗設し、中間転写ベルトを作製し試料No.201から206とした。
【0153】
評価
作製した試料No.201から206の膜厚安定性、表面粗さ安定性、耐久性に付き実施例1と同じ方法で評価し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表2に示す。
【0154】
【表2】

【0155】
超音波アトマイザーを使用し、噴出口と基体の表面までの距離を本発明の50mmとして表面層形成用塗布液を塗布する際、表面層形成用塗布液の固形分濃度が5質量%から30質量%であれば何れも膜厚安定性、表面粗さ安定性、耐久性で優れた性能を示すことが確認された。本発明の有効性が確認された。
【0156】
実施例3
図2(a)に示す基体/表面層の構成を有する中間転写ベルトを以下に示す方法で作製した。
【0157】
(無端ベルト状基体の作製)
実施例1と同じ無端ベルト状基体を作製した。
【0158】
(表面層の形成)
(表面層形成用塗布液の調製)
実施例1で使用した表面層形成用塗布液を調製する時、表2に示す様に、粘度を変化した他は同じ方法で表面層形成用塗布液を調製した。尚、粘度は、増粘剤の添加量を変化させることで行った。粘度は、ビスコテック(株)製回転式粘度計で測定した値を示す。
【0159】
(表面層形成用塗布液の塗布)
実施例1の試料No.103を作製した時と同じ塗布条件で調製した表面層形成用塗布液を準備した無端ベルト状基体の上に塗設し、中間転写ベルトを作製し試料No.301から306とした。
【0160】
評価
作製した試料No.301から306の膜厚安定性、表面粗さ安定性、耐久性に付き実施例1と同じ方法で評価し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表3に示す。
【0161】
【表3】

【0162】
超音波アトマイザーを使用し、噴出口と基体の表面までの距離を本発明の50mmとして表面層形成用塗布液を塗布する際、表面層形成用塗布液の粘度が2mPa・sから50mPa・sであれば何れも膜厚安定性、表面粗さ安定性、耐久性で優れた性能を示すことが確認された。本発明の有効性が確認された。
【0163】
実施例4
図2(a)に示す基体/表面層の構成を有する中間転写ベルトを以下に示す方法で作製した。
【0164】
(無端ベルト状基体の作製)
実施例1と同じ無端ベルト状基体を作製した。
【0165】
(表面層の形成)
(表面層形成用塗布液の調製)
実施例1で使用した表面層形成用塗布液と同じ表面層形成用塗布液を実施例1と同じ方法で調製した。
【0166】
(表面層形成用塗布液の塗布)
準備した無端ベルト状基体の表面に図3に示す塗布装置として超音波アトマイザー(ティックコーポレーション(株)製)を使用し、塗布液吐出ノズルの噴出口と基材の表面までの距離を250mmとし、調製した表面層形成用塗布液を以下に示す様な塗布方法で塗布した後、乾燥膜厚が5μmとなる様に表面層を塗設した。この時の乾燥・熱処理条件は、塗布後室温で5分間回転させ、その後、120℃で60分間熱処理し、中間転写ベルトを作製し試料No.401から419とした。
【0167】
(塗布方法)
表面層形成用塗布液の塗布方法は、表面層形成用塗布液を無端のベルト状基体の表面上に超音波アトマイザーで塗布幅80mmで塗布する時、表4に示す様に無端のベルト状基体と、超音波アトマイザーを無端のベルト状基体と直交する方向に移動しながら図5に示すフローに従って5回塗布を行った。その他の条件は実施例1と同じ方法で行った。尚、超音波アトマイザーの移動の長さは、毎秒当たりの超音波アトマイザーによる塗布幅に対する%を示す。
【0168】
【表4】

【0169】
評価
作製した試料No.401から419の膜厚安定性、表面粗さ安定性、耐久性に付き実施例1と同じ方法で評価し、実施例と同じ評価ランクに従って評価した結果を表5に示す。
【0170】
【表5】

【0171】
表面層形成用塗布液を無端のベルト状基体の表面上に塗布する時、超音波アトマイザーの移動を一時止め、無端のベルト状基体を600mm/minから2000mm/minで回転移動させながら、且つ前記超音波アトマイザーを毎秒当たり、該超音波アトマイザーによる塗布幅の50%から90%に相当する長さを、該無端のベルト状基体の回転搬送方向に直角に交わる方向に移動しながら塗布することを繰り返し行い塗布する方法で塗布した試料No.402から406、409から412、415から419は、何れも膜厚安定性、表面粗さ安定性、耐久性で優れた性能を示すことが確認された。本発明の有効性が確認された。
【0172】
実施例5
図2(a)に示す基体/表面層の構成を有する中間転写ベルトを以下に示す方法で作製した。
【0173】
(無端ベルト状基体の作製)
実施例1と同じ無端ベルト状基体を作製した。
【0174】
(表面層の形成)
(表面層形成用塗布液の調製)
実施例1で使用した表面層形成用塗布液と同じ表面層形成用塗布液を実施例1と同じ方法で調製した。
【0175】
(表面層形成用塗布液の塗布)
準備した表面層形成用塗布液を準備した無端ベルト状基体の上に塗布する際、表6に示す様に塗布幅を変えて塗布した以外は、実施例1の試料No.103を作製した時と同じ塗布条件で塗設し、中間転写ベルトを作製し試料No.501から508とした。尚、超音波アトマイザーの塗布幅は超音波アトマイザーの噴出口と基体の表面までの距離を変えることで行った。
【0176】
評価
作製した試料No.501から508の膜厚安定性、表面粗さ安定性、耐久性に付き実施例1と同じ方法で評価し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表6に示す。
【0177】
【表6】

【0178】
超音波アトマイザーを使用し、表面層形成用塗布液を塗布する際、超音波アトマイザーの塗布幅が5mmから200mmであれば何れも膜厚安定性、表面粗さ安定性、耐久性で優れた性能を示すことが確認された。本発明の有効性が確認された。
【0179】
実施例6
図2(a)に示す基体/表面層の構成を有する中間転写ベルトを以下に示す方法で作製した。
【0180】
(無端ベルト状基体の作製)
実施例1と同じ無端ベルト状基体を作製した。
【0181】
(表面層の形成)
(表面層形成用塗布液の調製)
実施例1で使用した表面層形成用塗布液と同じ表面層形成用塗布液を実施例1と同じ方法で調製した。
【0182】
(表面層形成用塗布液の塗布)
準備した表面層形成用塗布液を準備した無端ベルト状基体の上に塗布する際、表9に示す様に噴霧量を変えて塗布した以外は、実施例1の実施例1の試料No.103を作製した時と同じ塗布条件で塗設し、中間転写ベルトを作製し試料No.601から608とした。尚、音波アトマイザーの噴霧量はポンプの送液量を変えることで行った。
【0183】
評価
作製した試料No.601から608の膜厚安定性、表面粗さ安定性、耐久性に付き実施例1と同じ方法で評価し、実施例1と同じ評価ランクに従って評価した結果を表7に示す。
【0184】
【表7】

【0185】
超音波アトマイザーを使用し、噴出口と基体の表面までの距離を本発明の50mmとして表面層形成用塗布液を塗布する際、超音波アトマイザーの噴霧量を2ml/minから350ml/minであれば何れも膜厚安定性、表面粗さ安定性、耐久性で優れた性能を示すことが確認された。本発明の有効性が確認された。
【符号の説明】
【0186】
1 フルカラー画像形成装置
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
1Y、1M、1C、1K 感光体
4Y1、4M1、4C1、4K1 現像ローラー
4Y1a、4Y′1a、10 導電性基体
4Y1a1 第1樹脂層
4Y1a2 第2樹脂層
4Y1a3、4Y′1d 表面層
4Y′1b 弾性層
4Y′1c 樹脂層
6A、6Y、6M、6C、6K クリーニング手段
7 無端ベルト状中間転写体形成ユニット
70、70aから70d 中間転写ベルト
701 基体
702 表面層
703 中間層
703a 第1中間層
703b 第2中間層
704 弾性層
9 製造工程
9a 保持部
9b 塗布部
9b1 超音波アトマイザー
9b11 塗布液供給管
9b2 駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端のベルト状基体の表面上に、電子写真感光体の表面に形成されたトナー像を一次転写する表面層を有する中間転写ベルトの製造方法において、
前記表面層を形成する表面層形成用塗布液を超音波アトマイザーを使用し、前記超音波アトマイザーと前記ベルト状基体の表面までの距離を20mmから300mmで前記表面層形成用塗布液を前記ベルト状基体の表面に塗布することを特徴とする中間転写ベルトの製造方法。
【請求項2】
前記表面層形成用塗布液の固形分濃度が5質量%から30質量%であることを特徴とする請求項1に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項3】
前記表面層形成用塗布液の粘度が2mPa・sから50mPa・sであることを特徴とする請求項1又は2に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項4】
前記表面層形成用塗布液を前記無端のベルト状基体の表面上に塗布する時、該無端のベルト状基体を600mm/minから2000mm/minで回転搬送させながら、且つ前記超音波アトマイザーを毎秒当たり、該超音波アトマイザーによる塗布幅の50%から90%に相当する長さを、該無端のベルト状基体の回転搬送方向に直角に交わる方向に移動しながら塗布することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項5】
前記超音波アトマイザーの塗布幅が5mmから200mmであることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の中間転写ベルトの製造方法。
【請求項6】
前記超音波アトマイザーの前記表面層形成用塗布液の噴霧量が2ml/minから350ml/minであることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の中間転写ベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−118026(P2011−118026A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273305(P2009−273305)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】