説明

中間転写ベルト

【課題】トナーの転写効率を高め高画質化を達成するとともに廃トナーを著しく減少させ、その結果廃トナーボックスの小型化あるいはメンテナンス時間の削減を達成できる画像形成装置用の中間転写ベルトを提供する。
【解決手段】画像形成装置用の積層型無端の中間転写ベルトであって、25℃におけるtanδが0.01以上10未満で、かつ最上層の表面硬度が2GPa以上、15GPa以下であり、さらに下記(a)〜(c)の規定を満たすことを特徴とする中間転写ベルト。
(a)Tgが70℃以上である高分子あるいは架橋した高分子の基材層であり
(b)弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層を有する
(c)無機ガラス板に塗布した時の表面抵抗率が1010Ω/□以上1014Ω/□未満の表面層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置の中間転写ベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置によって得られる画像の高画質化を目的として、柔らかいゴム弾性層を有する2層又は3層構成の中間転写ベルトが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このようなゴム弾性層を有する中間転写ベルトは柔軟性に優れることから、中間転写ベルトと圧接される画像担持体(感光体等)との転写領域を安定に形成することができると共に、感光体等との間でトナーに加えられる応力を軽減することが出来る。従って、ゴム弾性層を有する中間転写ベルトを採用することによって、画像の中抜け防止、細線印字の鮮明度向上等を達成できる。また、表面が粗い用紙(ラフ紙)を使用した場合、紙の凹凸への追従性が向上することから、画像品質低下を防止できることが知られている。
【0004】
又、高画質対応の中間転写ベルトにおいては、ベルトの厚み方向にゴム弾性を付与する一方、中間転写ベルトに必要なトナー離型性も重要な要素として要求される。すなわち、中間転写ベルト表面から紙等の媒体へトナーを移し替えるうえで、トナーに対する離型性が必要となる。
【0005】
従って、トナーに対して粘着性をもつゴム弾性層が中間転写ベルトの表面に露出することは好ましくない。そのため、従来技術ではゴム弾性層上に摩擦係数が低く、トナー離型性に優れた樹脂製の表面層を設ける技術も提案されている。また、高画質化を達成するために表面層材料の力学物性に着目し、硬い層を表面に形成した2層又は3層構成の中間転写ベルトが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
このように、画像形成装置によって得られる画像の高画質化のために中間転写ベルトを多層化する試みや表面層の工夫がなされてきたが、トナーの転写効率を95%以上安定的に達成することが難しかった。
【0007】
また、有効に使用されないトナー、すなわち廃トナーの処理が課題になっていて、前記課題の改善提案がなされている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−258715号公報
【特許文献2】特開2009−15006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、上記文献技術では転写効率を十分満足に改善することはできなかった。現象を解析すると、感光体上のトナー画像が転写プロセスを経て、転写紙上のトナー画像を形成する際、感光体から中間転写ベルトへ転移する時点において、転写残りが多く発生していることが判明した。原因を追究したところ、以下の様なことが起っていることが分かった。
【0010】
まず原因の1つとして、中間転写ベルトから記録紙へトナーが移動する際の離型性を向上させたことにより、感光体上トナーを中間転写ベルトへ移動させる際の、トナーと中間転写ベルトとの間の吸着力が低下してしまったことにある。感光体上トナーを中間転写ベルトへ移動させるために転写ニップを形成しなければならないが、転写ニップ形成時の中間転写ベルトから感光体に対する圧力が感光体上トナーに作用する。その時に感光体表面とトナー間、ならびに、中間転写ベルト表面とトナー間に、それぞれ吸着力が発生するが、中間転写ベルト表面トナー間の吸着力よりも、感光体表面とトナー間の吸着力の方が勝ってしまい、結果として、転写残りが増加することである。
【0011】
次に、第2の原因として、画像形成動作に中間転写ベルトの振動が大きく影響し、感光体から中間転写ベルトへトナーが静電移動する際、その振動の影響を受け、正しく転写されないことが発生することが判明した。すなわち、上述した転写ニップが、中間転写ベルトの振動により、その形成状態が不安定になる。それにより、感光体および中間転写ベルトの移動方向に対して、転写ニップの上流側において、中間転写ベルトから感光体に向かって放電が発生する。その結果として、感光体上トナーの電荷の低下から、転写ニップ内で中間転写ベルトへトナーが静電移動する力が低下してしまい、転写残りが増加すると言うものである。
【0012】
また、さらなる原因としては、従来技術の中間転写ベルトの構成において、最表面に形成される表面層が絶縁体であったため、画像形成プロセスの連続動作を行うと、中間転写ベルトに蓄積された電荷が次回の転写までに除電できず、転写不足による転写不良が起きていたことが判明した。転写不良は静電気量が不足するため、感光体上のトナーを十分に中間転写ベルトに移すことができない。
【0013】
本発明は、上記問題であった、中間転写ベルトの駆動中振動と連続動作中に発生し易い転写不良を改善し、トナーの転写効率を高め高画質化を達成するとともに廃トナーを著しく減少させ、その結果廃トナーボックスの小型化あるいはメンテナンス時間の削減を達成できる画像形成装置用の中間転写ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)
画像形成装置用の積層型無端の中間転写ベルトであって、25℃におけるtanδが0.01以上10未満で、かつ最上層の表面硬度が2GPa以上、15GPa以下であり、さらに下記(a)〜(c)の規定を満たすことを特徴とする中間転写ベルト。
(a)Tgが70℃以上である高分子あるいは架橋した高分子の基材層であり、
(b)弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層を有する、
(c)無機ガラス板に塗布した時の表面抵抗率が1010Ω/□以上1014Ω/□未満の表面層である。
【0015】
(2)
前記基材層が架橋した高分子で、主成分がポリイミド樹脂であることを特徴とする(1)に記載の中間転写ベルト。
【0016】
(3)
前記Tgが70℃以上である高分子の基材の主成分がポリフェニレンスルフィドである(1)又は(2)に記載の中間転写ベルト。
【0017】
(4)
前記弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層が、熱可塑性エラストマー(TPE)を主成分とする層であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の中間転写ベルト。
【0018】
(5)
前記弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層が、ゴムを主成分とする層であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の中間転写ベルト。
【0019】
(6)
前記弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層が、発泡体の層であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の中間転写ベルト。
(7)
前記弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層が、ハロゲンを含む高分子を主成分とする層であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の中間転写ベルト。
【0020】
(8)
前記弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層を、塗布手段で形成または押出手段でシート化後、該シートを他の層と貼り合わせる工程を経て形成することを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の中間転写ベルト。
【0021】
(9)
前記無機ガラス板に塗布した時の表面抵抗率が、1010Ω/□以上1014Ω/□未満である表面層が紫外線硬化樹脂を主成分とした層であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の中間転写ベルト。
【0022】
(10)
前記無機ガラス板に塗布した時の表面抵抗率が、1010Ω/□以上1014Ω/□未満である表面層がスプレーコート、インクジェット方式、ワイヤーバー方式、ドクターブレード方式のいずれかの塗布手段で形成された層であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の中間転写ベルト。
【発明の効果】
【0023】
従来技術では、積層型無端の中転ベルトにおいて、材料のエネルギー損失の大きさを表す正接損失:tanδの値が室温近辺において、0.01未満に設計されており、上記値が小さいと外部からの振動に対して、振動の影響をうけ、感光体から中間転写ベルトへ静電吸着したトナーが振動によって、正規な位置へ転移できず、に位置がずれる、もしくはベルトから落下して、飛び散ることで、結果的に廃トナーとなっていたことを発見した。逆にtanδの値が大きいと、振動が発生したときに、材料自身が振動を吸収し、防振効果を発揮する。
【0024】
本発明は中間転写ベルトを構成する材料のTanδに着目し、ベースとなる基材層と他の層との弾性率の関係を規定することで、積層ベルトとしてのTanδを高くすることを可能とした。
【0025】
さらには、最表面層となる表面層を絶縁体から半導電体とすることで、連続動作中の帯電を防止することができ、また、適正な表面層硬度に設定し、組み合わせることで、耐磨耗性や適正画像を得ることが可能となる。つまり、次回の転写動作においても、前回の転写で残った静電気力を常時、十分に除電することが可能となって、帯電を防ぐことができ、転写不良することなく、適正な転写が行われる。
【0026】
本発明者は上記積層ベルトにおいて、基材層の弾性率とその他の層の弾性率とがある特定の比率となったときに、各層が一体化されて積層となった中間転写ベルトのtanδを従来よりも大きくすることができることを発見した。基材層の弾性率は材質や材料硬度によって、異なるが、上記関係を抑えることで、安定した防振効果を持続することができる。
【0027】
以上のことから、本発明により、トナーの転写効率を高め高画質化を達成するとともに廃トナーを著しく減少させ、その結果廃トナーボックスの小型化あるいはメンテナンス時間の削減を達成できる画像形成装置用の中間転写ベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】画像形成装置用中間転写ベルトの層構成の一例を示す断面図。
【図2】本発明の中間転写体を用いた電子写真方式の画像形成装置の一例の構成断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者らは、画像形成装置の中間転写ベルトの動作時において発生する振動に着目し、この振動を抑制するベルトの力学物性およびその適正値を見出し本発明を完成させた。すなわち本発明の中間転写ベルトを用いると、画像形成装置が動作中に中間転写ベルトに発生する振動を低減でき、感光体から中間転写ベルトへ安定な転写を実現しトナーの飛び散りを防止することで、中間転写ベルト上に形成されたトナー画像を安定に搬送することが可能となり、高画質を達成するとともに、転写効率を95%以上まで高めることが可能となった。その結果廃トナーを減少することに成功し、廃トナーボックスの交換時期を長期化でき作業性も改善することができる。
【0030】
本発明は、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果完成されたものである。
【0031】
本発明の画像形成装置用中間転写ベルト(以下、本発明の中間転写ベルトということもある)は、(a)Tgが70℃以上である高分子あるいは架橋した高分子の基材層、(b)弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層及び(c)無機ガラス板に塗布した時の表面抵抗率が1010Ω/□以上1014Ω/□未満である表面層の少なくとも3層からなり(例えば、図1を参照)、該中間転写ベルトの25℃におけるtanδが0.01以上10未満かつ最上層の表面硬度が2GPa以上15GPa以下であることを特徴とする。
【0032】
尚、本発明において各物性の測定方法については下記の如く行った。
【0033】
測定環境は特にことわりがない限り、室温25℃、相対湿度50%にて行った。
【0034】
〈中間転写ベルトの25℃におけるtanδ〉
上記tanδは、粘弾性に属する特性であり、材料が変形する際に材料がどのくらいエネルギーを吸収するか(熱に変わる)を示していて、動的粘弾性測定より得られる。tanδの値が大きければ、エネルギーを多く吸収していることを示している。
【0035】
25℃におけるtanδは、プログラム温度25℃、試料寸法・長さ20mmで幅10mm、引張力10gf(98mN)、測定周波数0.01〜100Hzの条件で、エスアイアイ・ナノテクノジー株式会社製EXSTAR DMS6100を使用して測定を行った。
【0036】
〈最上層の表面硬度〉
最上層表面硬度は、装置MH400(日本電気株式会社製)を使用し、以下の試験条件で0.5μm変位時の押込み硬度を測定した。
【0037】
・測定圧子:ダイアモンド製三角錐針(対稜角 100°)
・押込み速度:21nm/sec
・押込み深さ:1.0μm
・試料調整:試料を、概ね1cm角に切り取り、これを1cm角の硝子板に市販の接着剤で貼り合せた。貼り合せ時には、硝子板とサンプル間に浮きが生じず、また接着剤層が極力薄くなるように、貼り合せ直後に、試料上面より1kgf(9.8N)/cmの荷重を12時間加え、接着を行った。
【0038】
・本形態のサンプルを、直接測定機である荷重検出計の上に乗せ測定を行った。
【0039】
〈基材層のTg〉
基材層として、熱可塑性樹脂を使用する場合、基材層のガラス転移温度(Tg)は、ASTMD3418−8に準拠して、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製:EXSTRA6000シリーズ、TG/DTA6200)を用い、室温(25℃)から550℃まで昇温速度10℃/分の条件下で測定することにより求めた。なお、基材のガラス転移温度Tgは吸熱部におけるベースラインと立ち上がりラインとの延長線の交点の温度とした。
【0040】
〈弾性率〉
弾性率は、温度25℃、相対湿度50%の条件下で、JIS−6号ダンベルにて打ち抜いて試験片を作製し、インストロン社製5568引張り試験機にて、引張り速度5mm/minの条件で行った。
【0041】
〈表面抵抗率〉
表面抵抗率は、印加電圧100V、温度25℃、相対湿度50%の条件下で、株式会社三菱化学アナリテック製抵抗率計・ハイレスタUP MCP−HT450型を使用して測定を行った。
【0042】
以下にそれぞれの層について詳述する。
【0043】
〔基材層〕
本発明の中間転写ベルトにおける基材層は、駆動時にかかる応力でベルトの変形を回避するために、Tgが70℃以上である高分子あるいは架橋した高分子、すなわち機械物性に優れた材料で構成される。好ましくは基材層は、樹脂に導電剤が分散され体積抵抗率が1013Ω・cm以下10Ω・cm以上、好ましくは1012Ω・cm以下10Ω・cm以上の基材層材料によって形成される。
【0044】
基材層の材料の主成分としては、例えば、ポリイミド(以下PI)、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド(以下PPS)、これらの混合物等が例示される。ここで主成分とは60%以上含まれている成分を意味する。以下にPPSとPIの例を述べるが本発明に制限を加えるものではなく、本発明の目的を達成できるならば他の材料でも良い。
【0045】
例えば、PPSは、そのままでは靱性が低いので特許文献(特開2009−1608号、特開2009−1609号の公報)にあるようにナイロンを3質量%以上20質量%未満で相溶化させて用いると靱性が向上し信頼性が上がるので好ましい。導電材としてカーボンを用いた場合には、3質量%以上30質量%未満添加するのが好ましく、PPSは60質量%以上90質量%未満含まれていることが好ましい。PPSが60質量%未満の場合には難燃性が劣化したり、引張り強度が低下したりするので好ましくなく、90質量%以上では安定な抵抗を達成できる導電材の添加量を含有させることが出来ない。
【0046】
またPIは、通常、モノマー成分としてテトラカルボン酸二無水物とジアミン又はジイソシアネートとを、公知の方法により縮重合して製造される。通常、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶媒中で反応させて、一旦ポリアミック酸溶液とする。このとき、導電剤をポリアミック酸溶液中に分散させて基材層を形成することによって、ポリイミド樹脂中に導電剤が分散された基材層とすることができる。
【0047】
テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸、ナフタレン−1,4,5,8テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、2,3,5,6ビフェニルテトラカルボン酸、2,2′,3,3′−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、アゾベンゼン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、β,β−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、β,β−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等の二無水物が挙げられる。
【0048】
ジアミンとしては、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4′−ジアミノビフェニル、ベンジジン、3,3′−ジメチルベンジジン、3,3′−ジメトキシベンジジン、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、4,4′ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノアゾベンゼン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、β,β−ビス(4−アミノフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0049】
前記ジイソシアネートとしては、上記したジアミン成分におけるアミノ基がイソシアネート基に置換した化合物等が挙げられる。
【0050】
また、ポリアミドイミドは、トリメリット酸とジアミン又はジイソシアネートとを、公知の方法により縮重合して製造される。この場合、ジアミン又はジイソシアネートは、上記のポリイミドの原料と同じものを用いることができる。
【0051】
基材層中に分散される導電剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト等の導電性炭素系物質;アルミニウム、銅合金等の金属または合金;更には酸化錫、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物等が挙げられ、これらの微粉末を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の基材層に配合される導電剤としては、導電性炭素系物質が好ましく、カーボンブラックがさらに好ましい。
【0052】
導電剤の含有量は、通常、基材層中5〜30質量%程度であればよい。これにより基材層に、中間転写ベルトに適した導電性が付与される。
【0053】
基材層の厚さは、駆動時にベルトにかかる応力と柔軟性を考慮して、通常、30〜140μmであり、50〜110μmが好ましい。
【0054】
〔弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層〕
本発明の中間転写ベルトにおいて、基材層の弾性率を基準とした場合、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層(弾性層と記すことあり)は、主に、中間転写ベルトのtanδをあげベルト走行時の振動を軽減する目的で設けられる。
【0055】
該層(または弾性層)の弾性率が基材層の弾性率に対して、1/10以上となると、材料物性が変形し難い方向となるので、ラフ紙などの凹凸のある紙を用いた場合に追従性が劣りラフ紙転写性が悪くなる。また、上記弾性率の比が1/(10)未満となると、例えば、ベルトを画像形成装置にセットした状態で、しばらく放置された後のベルト張架ローラに対応した部分の変形(クリープ)が大きくなり、その部分で転写不良が発生してしまう。
【0056】
該層は、熱可塑性エラストマー(TPE)を主成分とする材料、加硫ゴムを主成分とする材料、あるいは高分子材料の発泡体により形成される。
【0057】
該層中には基材層と同様の導電材料あるいは高分子導電体、ポリエーテル系化合物などの高分子半導体が分散され、and/or該層を構成する高分子の分子構造中にスルホン酸基、アミノ基、カルボキシル基等のイオン性官能基が導入され、体積抵抗率が1013Ω・cm以下10Ω・cm以上であることが好ましい。
【0058】
また弾性率が本発明の範囲内で、tanδを向上させる目的で層状粘土鉱物や酸化鉄等の平板状のフィラーを含有させてもよい。
【0059】
層状粘土鉱物とは、Si四面体やAl八面体等の多面体が平面上に連なったシート構造を層状に重ねた結晶構造を有する、層間にイオン吸着サイトを有する化合物である。層状粘土鉱物としては、例えば、スメクタイト、ハイドロタルサイト等が挙げられ、本発明においてはスメクタイト(特に有機変性した合成スメクタイト)を使用することが好ましい。スメクタイトの層間にはイオン吸着サイトが存在し、溶液中で種々の化合物を吸着する特徴を持つ。また、層間に水または有機溶媒が入り込むことにより、体積が十数倍に膨れあがる特徴(膨潤性)を有している。層状粘土鉱物に分類される化合物としては、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、マイカ等が挙げられ、本発明に用いられる層状粘土鉱物として好ましくはモンモリロナイトである。また、これら層状粘土鉱物は、天然物でも合成品でもよい。例えば、合成モンモリロナイトとして、クニミネ工業(株)製のクニピアF等;合成ヘクトライトとして、ラポート社のラポナイトXLG、ラポナイトRD、コープケミカル(株)製のルーセンタイトSWN等;合成サポナイトとして、クニミネ工業(株)製のスメクトンSA等が挙げられ、これらは商業的に入手することが可能である。
【0060】
例えば、モンモリロナイトは、厚さが約1nm、一片の長さが約100nmのシート状シリケート層が重なって構成され、層間の距離は約1.0nmである。このシリケート層間に水や有機溶媒が入り込むと、層間距離が5.0nm程度に膨潤するとされている。
【0061】
本発明においては、上記層状粘土鉱物を有機変性させて用いることもできる。有機変性処理を行うことによって、水中でのみ膨潤する層状粘土鉱物が有機溶媒中においても膨潤して層間距離が広がる、有機溶媒に溶解したポリマー鎖が層状粘土鉱物の層間に入りやすくなり分散性が向上する等の効果が知られている。有機変性の処理としては、ジメチルステアリルアンモニウム塩やトリメチルステアリルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩やアニオン系ポリマーによる層表面修飾による変性処理や、アルキルトリアルコキシシランによる端面修飾処理や、カルボキシビニルポリマーや極性有機溶剤を複合処理したものが挙げられる。アンモニウム塩以外に、フォスフォニウム塩やイミダゾリウム塩を用いることもできる。
【0062】
このような有機変性された層状粘土鉱物は、有機変性モンモリロナイトとして(株)ホージュン製エスベン及びオルガナイト、Nanocor社製Nanomer、SouthernClay Product社製Cloisite等;有機変性ヘクトライトとして、コープケミカル(株)製ルーセンタイトSPN、ルーセンタイトSEN及びルーセンタイトSTN等;有機変性合成雲母として、コープケミカル(株)製ソマシフMPE等が挙げられ、これらは商業的に入手することが可能である。
【0063】
上記層状粘土鉱物を1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
熱可塑性エラストマー(TPE)としては、例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)等のスチレン系TPE、ウレタン系TPE(TPU)、オレフィン系TPE(TPO)、ポリエステル系TPE(TPEE)、ポリアミド系TPE、フッ素系TPE、塩ビ系TPE等である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0065】
加硫ゴムとしては、加硫してゴム弾性を示す高分子材料であれば特に限定はないが、高分子材料の例をあげれば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素添加NBR(H−NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム、クロロプレンゴム(CR)、塩素化ポリエチレン(Cl−PE)、エピハロヒドリンゴム(ECO,CO)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンジエンポリマー(EPDM)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム(IIR)、アクリルゴム(ACM)等が例示される。これらの中でも好ましくは、CR,ECO,シリコーンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムが挙げられる。
【0066】
シリコーンゴムとしては、例えば、付加型液状シリコーンゴムが挙げられ、具体的には、信越化学(株)製の、KE−106、KE1300等が例示される。
【0067】
ブチルゴムとしては、イソブチレン−イソプレン共重合体が挙げられる。
【0068】
アクリルゴムは、アクリル酸エステルの重合、またはそれを主体とする共重合により得られるゴム状弾性体である。
【0069】
ウレタンゴムとしては、例えば、主鎖がエステル結合のポリエステル系ウレタンゴム(AU)、主鎖がエーテル結合のポリエーテル系ウレタンゴム(EU)等が挙げられる。
【0070】
ECOとしては、エピハロヒドリン単独重合体およびエピハロヒドリンとアルキレンオキサイドおよび/又はアリルグリシジルエーテルとの共重合体があげられる。代表的な例としてはエピクロロヒドリン単独重合体、エピブロムヒドリン単独重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロロヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロロヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキサイドープロピレンオキサイド共重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキサイドーアリルグリシジルエーテル共重合体があげられる。
【0071】
ECOについては特許文献(特開平3−78429号公報)に記載されている方法で体積抵抗率を1013Ω・cm以下10Ω・cm以上に調整可能で、本発明では好ましい実施態様である。
【0072】
弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層が発泡体の場合には、上記の材料に発泡剤を添加し発泡させた材料、基材層を発泡体にした材料、あるいはイソシアネート化合物とポリエーテルポリオールあるいはポリエステルポリオールと水を反応させたポリウレタン発泡体を用いることが可能である。また、これまで記載した材料以外の発泡体でも、本発明の目的を損なわない限り、使用可能である。すなわち基材層よりも弾性率が高い材料でも発泡体とすることで弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層を形成することができ本発明に使用可能である。発泡体でも体積抵抗率を1013Ω・cm以下10Ω・cm以上に調整して用いることが好ましい。
【0073】
該層にも、上記(a)基材層において例示される導電剤が配合される。導電剤の含有量は、通常、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層内に5〜30質量%程度であればよい。これにより、中間転写ベルトに適した電気特性が付与される。
【0074】
また、該層には、必要に応じて硬化剤を添加することができる。例えば、シリコーンゴムの場合、硬化剤としてハイドロジェンオルガノポリシロキサン等が挙げられ、ウレタンゴムの場合、硬化剤としてジイソシアネートまたはポリオールを用いることができる。これらの硬化剤は、該層材料中に配合して用いればよい。
【0075】
弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の厚さは、本発明の目的を達成できる限り特に規定しないが、紙の厚みに柔軟に対応できる中間転写ベルトの機能を考慮すると、通常、50μm以上であり、50〜300μmが好ましく、100〜300μmがより好ましく、150〜300μmがさらに好ましい。
【0076】
該層の硬度も本発明の目的を達成できる限り特に規定しない。紙の厚みに柔軟に対応できる中間転写ベルトの機能を考慮すると、タイプA硬度(JIS K6253)は、80°以下であることが好ましく、20〜80°がより好ましく、30〜70°がさらに好ましい。ここで、タイプA硬度とはゴムの柔らかさを示す値である。タイプA硬度が80°を超える場合は、弾性層が硬すぎて凹凸のある紙を用いた場合に追従性が劣り、1次転写時にトナーが濃く乗っているところに応力が集中して中抜け現象を起こしやすくなる。一方、タイプA硬度が20°未満の場合は、柔らかすぎてベルト駆動時に発生する応力が表面層へ集中しやすくなり、表面層がひび割れたりして十分な耐久性が得られない傾向がある。
【0077】
〔表面層〕
本発明の中間転写ベルトにおける表面層に使用可能な樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ケトン樹脂、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体及びスチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体及びスチレンアクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂及びアクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂及び変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等から1種類あるいは2種類以上を用いることができる。
【0078】
また、中間転写ベルトの電気抵抗を調整するために、前述した樹脂に各種導電剤を添加することも可能である。導電剤としては、カーボン、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化チタン等の金属酸化物、4級アンモニウム塩含有ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアニリン、ポリビニルピロール、ポリジアセチレン、ポリエチレンイミン、含硼素高分子化合物及びポリピロール等の導電性高分子化合物等から1種類あるいは2種類以上を用いることができる。
【0079】
また、上記中間転写ベルトの表面には、必要に応じて離型層をコートしてもよい。
【0080】
このコートに用いる材料としては、ETFE、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、PVDF、PEA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体)、PVF(フッ化ビニル)等のフッ素樹脂が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
本発明の目的を達成するために、硬度は、基材層と等しいかあるいはそれ以上であることが好ましく、2GPa以上15GPa以下であると良い。あまり硬すぎると靱性が低下するので硬度の上限は、10GPa未満がより好ましい。
【0082】
〔本発明の層構成〕
本発明の実施態様が3層の場合に、その構成は、
基材層−弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層−表面層、
弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層−基材層−表面層、
であると効果的に振動を防止でき本発明の目的を達成できるが、表面層は、直接トナーを乗せし、トナーを紙へ転写、離型するための層なので、表面精度に優れていることが求められる。また転写プロセスでは、静電気でトナーの移動を行うので、表面層の材料は帯電しやすく放電しやすい性質が求められている。表面層が絶縁体であると放電に時間がかかり、中間転写ベルトから紙への転写効率が下がったり、前の画像情報が中間転写ベルト上に残るメモリー効果が現れたりする。すなわち表面層は絶縁体であることは好ましくなく、絶縁体であると本発明の目的を達成できない。本発明の目的を達成するために、表面層は体積抵抗率で1014Ω・cm未満であることが必要であるが、高抵抗領域の薄膜の体積抵抗率を精度よく測定するために、本発明では表面層の材料を無機ガラス板に塗布した試料の表面抵抗率を測定する。単一材料であれば、表面抵抗率に試料の膜厚を掛けたものが体積抵抗率となるので、本発明に好適な高抵抗領域の材料を計測するには、膜厚は1μm以上の試料を用いることが好ましい。さらに好ましくは10μm、あるいは100μm以上であると精度よく計測することが可能である。本発明では絶縁体であるケイ酸塩ガラスなどの無機ガラス板に塗布した時の表面抵抗率が1014Ω/□未満であると表面層の体積抵抗率は好ましい値となるので、本発明では試料の膜厚を制限しない。すなわち無機ガラス板に塗布した時の表面抵抗率が1010Ω/□以上1014Ω/□未満でなければならない、とは表面層の材料が絶縁体であってはならないことを規定している。すなわち好ましい体積抵抗率を参考に示せば、10Ω・cm以上1014Ω・cm未満である。
【0083】
このような表面層は大気圧プラズマを用いて形成された金属酸化物、例えば珪素酸化物でも達成でき、本発明に好適に用いることが可能であるが、さらに好適なのは以下のように形成された表面層である。
【0084】
基材層上に弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層を形成した後、活性エネルギー線硬化型モノマーと、反応性金属酸化物微粒子と、ラジカル重合性不飽和結合部を有するフッ素樹脂/シロキサングラフト型樹脂とを有する組成から成る表面層層形成用塗布液を弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層に、例えば、浸漬塗布方法、環状塗布槽を使用した環状塗布方法、スプレイ塗布方法、インクジェット塗布方法、ワイヤーバーによる塗布方法、ドクターブレードによる塗布方法、超音波アトマイザーによる塗布方法等で塗布し、活性エネルギー線照射装置より活性エネルギー線を照射することで硬化させることによって形成される。
【0085】
表面層の表面粗さ(Rz)は、0.1〜1.5μmが好ましく、0.25〜1.2μmがより好ましく、0.4〜1μmがさらに好ましい。表面粗さが0.1μm未満の場合は、ロール等の摺動する部材と張り付いてしまいやすくなるため駆動時のトルクオーバーの原因となってしまい、1.5μmを超える場合は、トナーの固着(フィルミング)の原因や中抜け等の画像欠陥となるため好ましくない。なお、本発明において、表面層の表面粗さは、基材層、弾性層、表面層からなる本発明の中間転写ベルトの表面層において測定した表面粗さを示すものである。
【0086】
本発明において表面層の厚みは、0.5〜20μmであり、0.5〜10μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。表面層の厚みが前記範囲を超えると弾性層のゴム弾性を損なうことになるため好ましくない。また、表面層の厚みが前記範囲を下回ると、表面層の穴があきやすい等の耐久性に問題が生じる。
【0087】
表面層の静摩擦係数は、ブレード鳴きを防ぐ観点から0.1〜1が好ましく、0.2〜0.8がより好ましく、0.2〜0.6がさらに好ましい。なお、本発明において、表面層の静摩擦係数は、基材層、弾性層、表面層からなる本発明の中間転写ベルトの表面層において測定した静摩擦係数を示すものである。
【0088】
本中間転写ベルトの構成は、3層以上10層未満の無端ベルトであり、無機ガラス板に塗布した時の表面抵抗率が1010Ω/□以上1014Ω/□未満である表面層(C)は1層であるが、Tgが70℃以上である高分子あるいは架橋した高分子の基材層(A)と、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層(B)は、それぞれ1層以上6層未満有していてもよい。
【0089】
下記にその好ましい構成例を示すが本発明の目的を達成できるならば下記以外他の層を含んでいてもよい。以下は発明に制約を加えるものではない。
【0090】
(A)+(B)+(C)
(B)+(A)+(B)+(C)
(A)+(B)+(A)+(B)+(C)
(B)+(A)+(B)+(A)+(B)+(C)
(A)+(B)+(A)+(B)+(A)+(B)+(C)
(B)+(A)+(B)+(A)+(B)+(A)+(B)+(C)
(A)+(B)+(A)+(B)+(A)+(B)+(A)+(B)+(C)
〔中間転写ベルトの製造方法〕
以上のような構成を有する画像形成装置用中間転写ベルトの各層の製造方法、および一例として(A)+(B)+(C)の構成の中間転写ベルトの製造方法を、以下に詳述する。
【0091】
本発明の画像形成装置用中間転写ベルトは、以下の工程を含む製造方法により得ることができる。
(1)基材層を製膜する工程。
(2)弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層を製造する工程
(3)表面層をコーティングする工程
各工程については本発明の目的を達成できる中間転写ベルトを製造できるのであれば、これを制限しない。また、各工程の順序も制限をしない。
【0092】
例えば、各層を貼り合わせて製造する場合には、中間転写ベルトの製造全工程の中に(1)(2)(3)の順に各工程が、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の上にあらかじめ表面層を形成させた後、基材層を組み合わせるのであれば、(2)(3)(1)の順に各工程が並ぶ。
【0093】
溶媒を用いた製膜プロセスで製造されるPIを基材とする場合について示すと以下になる。
【0094】
工程(1)(基材層の形成)
基材層は次のようにして製膜することができる。
【0095】
上記したポリイミドの原料であるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを溶媒中で反応させて、一旦ポリアミック酸溶液とする。
【0096】
溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と呼ぶ。)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、1,3−ジメチル−2イミダゾリジノン等の非プロトン系有機極性溶媒が使用される。これらのうちの1種又は2種以上の混合溶媒であってもよい。これらの中でもNMPが好ましい。
【0097】
基材層に所望の半導電性を付与するために、基材層中5〜30質量%程度(前記ポリアミック酸溶液の固形分濃度10〜40質量%のうち5〜30質量%)になるように、上記したカーボンブラック等の導電剤を上記ポリアミック酸溶液に添加する。この場合、ボールミルにてカーボンブラックの均一分散を行ってもよい。
【0098】
得られたカーボンブラックが分散されたポリアミック酸を用い、回転ドラム(円筒状金型)等による遠心成型を行う。加熱は、ドラム内面を徐々に昇温し100〜190℃程度、好ましくは110〜130℃程度に到達せしめる(第1加熱段階)。昇温速度は、例えば、1〜2℃/分程度であればよい。上記の温度で20分〜3時間維持し、およそ半分以上の溶剤を揮発させて自己支持性のある管状ベルトを成形する。
【0099】
また、第1加熱段階における回転ドラムの回転速度は重力加速度の0.5〜10倍の遠心加速度であることが好ましい。一般に、重力加速度(g)は9.8(m/s)である。遠心加速度(G)は下記式(I)から導かれる。
【0100】
G(m/s)=r・ω=r・(2・π・n) (I)
ここで、rは円筒金型の半径(m)、ωは角速度(rad/s)、nは1秒間での回転数(60秒間の回転数がrpm)を示す。前記式(I)より、円筒状金型の回転条件を適宜設定することができる。
【0101】
次に、第2段階加熱として、温度280〜400℃程度、好ましくは300〜380℃程度で処理してイミド化を完結させる。この場合も、第1段階加熱温度から一挙にこの温度に到達するのではなく、徐々に昇温して、その温度に達するようにすることが望ましい。なお、第2段階加熱は、管状ベルトを回転ドラムの内面に付着したまま行っても良いし、第1加熱段階終了後に、回転ドラムから管状ベルトを剥離し、取り出して別途イミド化のための加熱手段に供して、280〜400℃になるように加熱してもよい。このイミド化の所用時間は、通常約20分〜3時間程度である。
【0102】
基材層の材料としてポリアミドイミドを用いる場合も同様にして、ジアミン或いはジアミンから誘導されたジイソシアネートと、トリメリット酸とを溶媒中で反応させて直接ポリアミドイミドとし、これを遠心成型して、継目のない(シームレス)ポリアミドイミドの基材層を製膜できる。
【0103】
また、本工程の途中で得られたカーボンブラックが分散されたポリアミック酸をキャスト製膜し、ポリアミック酸のシートを製造後、貼合わせてシームレスベルトとし、その後本工程と同様の熱処理条件でPIシームレスベルトを得る方法も、継目のない基材層を製膜できる。キャスト法における溶液の薄膜化に際しては、バーコーター、ドクターブレード、スライドホッパー、スプレーコート、Tダイ押出しなどの薄膜化手段を用いても良い。
【0104】
キャスト法において溶媒を蒸発させるための乾燥方法としては、特に制限されず、例えば、溶液を流延させる支持体および溶液を注入する金型を加熱する方法が使用できる。このとき、当該支持体および金型と同程度に加熱されたロール形状またはボード形状の加熱体もしくは風を用いて溶媒の蒸発を促進させてもよい。乾燥温度(加熱温度)は、イミド化開始温度より低い温度であって、溶媒が蒸発し得る温度であれば特に制限されず、例えば、40℃以上280℃未満、特に80〜260℃であり、好ましくは120〜240℃、より好ましくは120〜220℃である。キャスト法において支持体および金型におけるポリイミド前駆体溶液との接触面は鏡面加工されていることが好ましく、通常は表面粗さRzが10〜3000nmのものが使用される。
【0105】
得られたポリアミック酸のシートを両端部で接合して環状に加工する。加工後にシートが有する形状は環状であり、目的とする環状ベルトと略同様の形状である。詳しくは、四角形状のシート1を両端部で接合することによって、環状、特に筒状に加工する。接合とは、接合部において段差を生じさせることなく、シート1の両端部を環の軸方向において連続的に面一で連結させることである。
【0106】
接合は、耐熱テープなどの接合手段を用いることにより達成されてもよいし、または接合処理を行うことにより達成されてもよい。詳しくは、シートの両端部の接合は、該シートの両端部における端面同士を接触させた状態で耐熱テープにより固定するテープ固定法によって達成されてもよいし、または該シートの両端部を厚み方向で重ね合わせた状態で加熱および加圧することにより平坦化する加熱溶融法によって達成されてもよい。
【0107】
テープ固定法では、シートをドラムに巻き付け、両端部の接合部分に段差ができないように、かつ隙間ができないように、ドラム上でシートの両端部における端面同士を接触させた状態で耐熱テープにより固定する。耐熱テープによる固定に先立って、予め加熱したこてを接合部に押し当てることにより簡易的な接合を達成しておくことが好ましい。
【0108】
ドラムのシート接触面は鏡面加工されていることが好ましく、通常は表面粗さRz10〜3000nmの外周表面を有するものが使用される。耐熱テープは、イミド化時においても固定を維持できる程度の耐熱性を有していれば良く、例えば、ガラステープ、耐火マイカテープ、アセテート布粘着テープ等が使用できる。そのような耐熱テープは市販品として入手可能であり、例えば、日東電工No.5(日東電工社製)、耐熱ガラス粘着テープ(3M社製)、耐火マイカテープ(岡部マイカ工業所)等が挙げられる。
【0109】
加熱溶融法では、に示すように、シート1を、両端部で重なり部が形成されるようにドラムに巻き付ける。その後、加熱した加圧ローラを押し付け、回転するドラムおよび加圧ローラの間にシート重なり部を通過させることにより、溶融および加圧によって重なり部分を平坦化する。これによって重なり部における両端部間の界面は消失し、一体化される。ドラムはテープ固定法で使用されるドラムと同様のものが使用できる。加圧ローラ4の外周表面は鏡面加工されていることが好ましく、通常は表面粗さRz5〜500nmの外周表面を有するものが使用される。加圧ローラ4の加熱温度は、イミド化が生じることなしに、シートを溶融可能な温度であり、例えば、40〜270℃、好ましくは80〜220℃である。ドラム2をそのような温度に加熱して使用してもよい。加圧ローラによる圧力は本発明の目的が達成される限り特に制限されず、例えば、0.1〜2000MPaであり、好ましくは0.1〜500MPaである。
【0110】
シートを環状に加工した後は、イミド化反応を行う。イミド化によってシートを構成するポリアミック酸がポリイミドとなり、環状ベルトにおいて膜厚、導電性および表面粗さなどの物性について十分な均一性を達成しながらも、ポリイミドが本来的に有する耐熱性、剛性が有効に発揮される。特に上記したテープ固定法において、接合時にシート両端部の端面同士が接触した状態で固定されているだけであっても、当該端面間の界面はイミド化によって消失し、両端部は一体化され、環状ベルトとして所定の剛性、特に引張強度を得ることができる。
【0111】
イミド化反応は、環状に加工されたシートを加熱し、当該加熱温度で所定時間保持することによって達成される。加熱温度はイミド化開始温度であって、通常は280℃以上、特に280〜400℃であり、好ましくは300〜380℃、より好ましくは330〜380℃である。反応時間は通常、10分間以上であり、好ましくは30〜240分間である。
【0112】
また、基材層の材料としてポリカーボネート、PVdF、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等を用いる場合は、これらの樹脂を溶融して押出成型することによりシームレスの基材層を製膜できる。
【0113】
このようにして、継目のない基材層を製膜できる。
【0114】
工程(2)(表面層の形成)
表面層は、例えば、次のようにして製膜することができる。
【0115】
前記した表面層用樹脂を用いた樹脂溶液に必要に応じて導電剤等の添加を行い得られた混合溶液(表面層組成液)を表面粗さ(Rz)0.1〜1.5μmを有する円筒状金型を用いて遠心成型を行う。この場合、得られる表面層の厚みが0.5〜4μm程度となるように調整する。表面層材料に用いられる樹脂の固形分濃度が0.5〜10質量%程度であればよい。
【0116】
表面層の遠心成型は、例えば、重力加速度の0.5〜10倍の遠心加速度に回転した回転ドラム(円筒状金型)内面に最終厚さを得るに相当する量の表面層材料を注入した後、徐々に回転速度あげ重力加速度の2〜20倍の遠心加速度に回転を上げて遠心力で内面全体に均一に流延する。
【0117】
回転ドラムは、その内面が所定の表面精度に研磨されており、この回転ドラムの表面状態が、本発明の中間転写ベルトの表面層外面にほぼ転写される。従って、回転ドラムの内面の表面粗さを制御することにより、表面層の表面粗さを所望の範囲に調節することができる。回転ドラムの内面の平均表面粗さ(Rz)を、0.1〜1.5μmの範囲で設定すると、ほぼそれに対応した表面粗さ(Rz)0.1〜1.5μmを有する表面層を形成できる。
【0118】
但し、中間転写ベルトの表面層の表面粗さは、ベルトの微妙なタワミやウネリを測定上拾ってしまうため、回転ドラムの内面の平均表面粗さ(Rz)に比してやや高めの値になる傾向がある。そのため、ベルト表面層の所望の表面粗さに対して、やや小さめの内面の平均表面粗さ(Rz)を有する回転ドラムを採用することもできる。なお、使用する金型内面の粗度は、内面仕上げ時に使用する研磨紙の番手等により任意に制御できる。
【0119】
回転ドラムは回転ローラー上に載置し、該ローラーの回転により間接的に回転が行われる。また該ドラムの大きさは、所望する中間転写ベルトの大きさに応じて適宜選択できる。
【0120】
加熱は、該ドラムの周囲に、例えば遠赤外線ヒータ等の熱源が配置され外側からの間接加熱により行われる。加熱温度は樹脂の種類に応じて変化し得るが、通常、室温から樹脂の融点前後の温度、例えば、樹脂の融点Tmとした場合に、(Tm±40)℃程度、好ましくは(Tm−40)℃〜Tm℃程度まで徐々に昇温し、昇温後の温度で10〜60分程度加熱すればよい。これにより、ドラム内面に継目のない(シームレス)管状の表面層が製膜できる。
【0121】
工程(3)(2層化)
上記工程(2)で得られた表面層の内面に、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層(以下弾性層)の材料を遠心成型して得られる弾性層を製膜して2層膜とする。ゴム弾性をもつゴム弾性樹脂(例えば、ウレタンエラストマー等)を溶媒に溶解させて液状とする。液状のゴム弾性樹脂には、導電性を付与するための導電剤と、必要に応じて硬化剤を添加する。この液状のゴム弾性樹脂の固形分濃度は、通常、導電剤や硬化剤を含めて20〜70質量%程度である。
【0122】
溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;或いはこれらの混合溶媒等が用いられる。これらのうちの1種又は2種以上の混合溶媒であってもよい。中でも、トルエン、キシレン、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルが好ましい。
【0123】
弾性層に所望の半導電性を付与するために、弾性層中5〜30質量%程度(前記液状の弾性樹脂中の固形分濃度20〜70質量%のうち、5〜30質量%)になるように、上記したカーボンブラック等の導電剤を液状の弾性樹脂に添加する。この場合、ボールミルにてカーボンブラックの均一分散を行ってもよい。
【0124】
カーボンブラックが分散された液状のゴム弾性樹脂(弾性層材料)を、表面層が形成された回転ドラム(円筒状金型)の表面層の内面上に均一に塗布して遠心成型を行い、その後、回転ドラムを回転させながら加熱処理を行う。加熱は、ドラム内面を徐々に昇温し100〜180℃程度、好ましくは110〜160℃程度に到達せしめる。昇温速度は、例えば、1〜3℃/分程度であればよい。上記の温度で20分〜3時間維持し、ドラム内に表面層、その上に弾性層を有する2層膜を成形する。
【0125】
工程(4)(3層化)
上記工程(1)で得られた基材層の外面と、上記(3)で得られた2層膜(表面層と弾性層)の弾性層の内面とを重ね合わせて、加熱処理する。
【0126】
具体的には、回転ドラム内に製膜した2層膜の弾性層内面に公知の接着用プライマー等を塗布、風乾した後、外面にドライラミ接着剤等を塗布した基材層を挿入し、重ね合わせる。重ね合わせた両層をベルト内面から圧着した後、円筒状金型内面を徐々に昇温し40〜120℃程度、好ましくは50〜90℃程度に到達せしめる。昇温速度は、例えば、1〜10℃/分程度であればよい。上記の温度で2〜30分維持し、円筒状金型内に表面層、弾性層及び基材層を有する3層ベルトを成形する。
【0127】
張り合わせた3層ベルトを円筒状金型から剥離し、両端部を所望の幅にカットして3層の中間転写ベルトを製造する。
【0128】
上記3層化工程の具体例を挙げる。
【0129】
ドラム内面に製膜された表面層の内面に、公知の接着用プライマー等を均一塗布して風乾する。製膜した基材層外面にもプライマーを塗布して、これを表面層内面に重ね合わせ、減圧状態でこの管状ベルト両端部に内側からOリングを押し当てて、重ね合わせた表面層及び基材層間を密閉状態とする。次に、この両層の隙間に、弾性層材料をインジェクション法にて注入し、基材層内面側から金属ロールを用いて、弾性層材料を周方向に均一になるように流延する。
【0130】
或いは、他の実施態様として以下のような方法も挙げられる。
【0131】
ドラム内面に製膜された表面層の内面に、公知の接着用プライマーを均一塗布する。製膜した基材層外面にもプライマーを塗布した後、これを円柱状の芯体外面に被せる。この芯体を、内面に表面層が製膜されているドラム内面に挿入し、芯体とドラムを同心軸上に固定する。次に、ドラムの片側から、両層の隙間にペースト状の弾性層材料をインジェクション法にて注入する。なお、該ドラムは長手方向左右を一対の治具で挟まれて固定したものであり、一方の治具には弾性層材料の入口が設けられ、他方の治具にはその出口が設けられている。
【0132】
3層化した後の加熱処理は、110〜220℃まで徐々に加熱して(例えば、昇温速度1〜3℃/分程度)、その温度で0.5〜4時間処理する。これにより、ベルトの架橋・硬化が完了する。加熱終了後、ドラムを冷却し、3層化された管状ベルトをドラム内面から剥離して、本発明の中間転写ベルトを得る。
【0133】
なお、上記の接着用プライマーの使用は任意であるが、接着強度向上の点から使用するのが好ましい。接着用プライマーとしては、例えば、東レダウコーニング製プライマーDY39−067等が例示される。
【0134】
かくして得られる中間転写ベルトは表面精度が高く、表面層における表面粗さは十点平均粗さ(Rz)にて0.1〜1.5μm程度が好ましく、0.25〜1.2μm程度がより好ましく、0.4〜1μm程度がさらに好ましい。
【0135】
中間転写ベルトの平均総厚みは、通常、150〜420μm程度、好ましくは200〜400μm程度である。各層の厚さは、駆動時にベルトにかかる応力と柔軟性を考慮して上記に記載される各層の厚みの範囲内から適宜設定され得るが、各層の厚みの割合は、通常、基材層を1とした場合、弾性層1.5〜5.0程度、好ましくは2〜4程度;表面層0.005〜0.05程度である。上記したような3層化工程を採用することによって、ベルトの厚みのばらつきは小さくなり、均質なベルトが製造できる。
【0136】
本発明の中間転写ベルトの表面摩擦係数は、0.1〜1が好ましく、0.2〜0.8程度がより好ましい。また、本発明の中間転写ベルトの表面抵抗率は1×1010〜1×1015Ω/□程度、体積抵抗率は1×10〜1×1014Ω・cm程度であることが好ましく、弾性層及び/又は基材層に添加する導電剤の添加量に応じてこの範囲で可変である。
【0137】
以上のような構成を有する中間転写ベルトは、優れた画質を長期に亘って提供することができ、耐久性にも優れることから、複写機(カラー複写機を含む)、プリンター、ファクシミリ等の電子写真方式を採用する画像形成装置の中間転写ベルトとして好適に使用され得る。
【0138】
〔画像形成方法、画像形成装置〕
本発明の中間転写体は、電子写真方式の複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成方法、画像形成装置に好適に用いられる。
【0139】
本発明の中間転写体を用いることができる画像形成装置について、カラー画像形成装置を例に取り説明する。
【0140】
図1は、カラー画像形成装置の一例を示す断面構成図である。
【0141】
このカラー画像形成装置10は、タンデム型フルカラー複写機と称せられるもので、自動原稿送り装置13と、原稿画像読み取り装置14と、複数の露光手段13Y、13M、13C、13Kと、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、中間転写体ユニット17と、給紙手段15及び定着手段124とからなる。
【0142】
画像形成装置の本体12の上部には、自動原稿送り装置13と原稿画像読み取り装置14が配置されており、自動原稿送り装置13により搬送される原稿dの画像が原稿画像読み取り装置14の光学系により反射・結像され、ラインイメージセンサCCDにより読み込まれる。
【0143】
ラインイメージセンサCCDにより読み取られた原稿画像を光電変換されたアナログ信号は、図示しない画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、露光手段13Y、13M、13C、13Kに各色毎のデジタル画像データとして送られ、露光手段13Y、13M、13C、13Kにより対応する第1の像担持体としてのドラム状の感光体11Y、11M、11C、11Kに各色の画像データの潜像を形成する。
【0144】
画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されており、感光体11Y、11M、11C、11Kの図示左側方にローラ171、172、173、174を巻回して回動可能に張架された半導電性でシームレスベルト状の第2の像担持体である本発明の中間転写体(以下、中間転写ベルトともいう)170が配置されている。
【0145】
そして、本発明の中間転写ベルト170は図示しない駆動装置により回転駆動されるローラ171を介し矢印方向に駆動されている。
【0146】
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、感光体11Yの周囲に配置された帯電手段12Y、露光手段13Y、現像手段14Y、1次転写手段としての1次転写ローラ15Y、クリーニング手段16Yを有する。
【0147】
マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、感光体11M、帯電手段12M、露光手段13M、現像手段14M、1次転写手段としての1次転写ローラ15M、クリーニング手段16Mを有する。
【0148】
シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、感光体11C、帯電手段12C、露光手段13C、現像手段14C、1次転写手段としての1次転写ローラ15C、クリーニング手段16Cを有する。
【0149】
黒色画像を形成する画像形成部10Kは、感光体11K、帯電手段12K、露光手段13K、現像手段14K、1次転写手段としての1次転写ローラ15K、クリーニング手段16Kを有する。
【0150】
トナー補給手段141Y、141M、141C、141Kは、現像装置14Y、14M、14C、14Kにそれぞれ新規トナーを補給する。
【0151】
ここで、1次転写ローラ15Y、15M、15C、15Kは、図示しない制御手段により画像の種類に応じて選択的に作動され、それぞれ対応する感光体11Y、11M、11C、11Kに中間転写ベルト170を押圧し、感光体上の画像を転写する。
【0152】
この様にして、画像形成部10Y、10M、10C、10Kにより感光体11Y、11M、11C、11K上に形成された各色の画像は、1次転写ローラ15Y、15M、15C、15Kにより、回動する中間転写ベルト170上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。
【0153】
即ち、中間転写ベルトは感光体の表面に担持されたトナー画像をその表面に1次転写され、転写されたトナー画像を保持する。
【0154】
又、給紙カセット151内に収容された記録媒体としての転写材Pは、給紙手段15により給紙され、次いで複数の中間ローラ122A、122B、122C、122D、レジストローラ123を経て、2次転写手段としての2次転写ローラ117まで搬送され、2次転写ローラ117により中間転写体上の合成されたトナー画像が転写材P上に一括転写される。
【0155】
即ち、中間転写体上に保持したトナー画像を被転写物の表面に2次転写する。
【0156】
ここで、2次転写手段6は、ここを転写材Pが通過して2次転写を行う時にのみ、転写材Pを中間転写ベルト170に圧接させる。
【0157】
カラー画像が転写された転写材Pは、定着装置124により定着処理され、排紙ローラ125に挟持されて機外の排紙トレイ126上に載置される。
【0158】
一方、2次転写ローラ117により転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した中間転写ベルト170は、クリーニング手段8により残留トナーが除去される。
【0159】
ここで、中間転写体は前述したような回転するドラム状のものに置き換えても良い。
【0160】
次に、中間転写ベルト170に接する1次転写手段としての1次転写ローラ15Y、15M、15C、15K、と、2次転写ローラ117の構成について説明する。
【0161】
1次転写ローラ15Y、15M、15C、15Kは、例えば外径8mmのステンレス等の導電性芯金の周面に、ポリウレタン、EPDM、シリコーン等のゴム材料に、カーボン等の導電性物質を分散させたり、イオン性の導電材料を含有させたりして、体積抵抗が1×10〜1×10Ω・cm程度のソリッド状態又は発泡スポンジ状態で、厚さが5mm、ゴム弾性率が20〜70°程度(アスカー弾性率C)の半導電弾性ゴムを被覆して形成される。
【0162】
2次転写ローラ117は、例えば外径8mmのステンレス等の導電性芯金の周面に、ポリウレタン、EPDM、シリコーン等のゴム材料に、カーボン等の導電性物質を分散させたり、イオン性の導電材料を含有させたりして、体積抵抗が1×10〜1×10Ω・cm程度のソリッド状態又は発泡スポンジ状態で、厚さが5mm、ゴム弾性率が20〜70°程度(アスカー弾性率C)の半導電弾性ゴムを被覆して形成される。
【0163】
〔転写材〕
本発明に用いられる転写材としては、トナー画像を保持する支持体で、通常画像支持体、転写材或いは転写紙といわれるものである。好ましくは薄紙から厚紙までの普通紙、アート紙やコート紙等の塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等の各種転写材を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0164】
以下、本発明の代表的実施態様を示し、本発明につきさらに説明するが、無論、本発明がこれらの実施態様に限定されるものではない。尚、文中「部」とは「質量部」を示す。
【0165】
〔1〕中間転写ベルト1の作製
(1)基材層の製膜
窒素流通下、N−メチル−2−ピロリドン488gに、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)47.6gを加え、50℃に保温、撹拌して完全に溶解させた。この溶液に、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)70gを徐々に添加し、ポリアミック酸溶液605.6gを得た。このポリアミック酸溶液の数平均分子量は17000、粘度は3.5Pa・s、固形分濃度は18.0質量%であった。
【0166】
次に、このポリアミック酸溶液450gに、酸性カーボン(pH3.0)21gとN−メチル−2−ピロリドン80gを加えて、ボールミルにてカーボンブラック(CB)の均一分散を行った。このマスターバッチ溶液は、固形分濃度18.5質量%、該固形分中のCB濃度は20.6質量%であった。そして該溶液から276gを採取し、基材成型用円筒状金型を用意し、次の条件で成形した。
【0167】
基材成型用金型
内径301.5mm、幅540mmの内面鏡面仕上げの円筒状金型であり、該金型が2本の回転ローラー上に載置され、該ローラーの回転とともに回転する状態に配置した。
【0168】
加熱装置
該金型の外側面に遠赤外線ヒータを配置し、該金型の内面温度が120℃に制御されるように設計した装置である。
【0169】
まず、円筒状金型を回転した状態で276gの該溶液を金型内面に均一に塗布し、加熱を開始した。加熱は1℃/minで120℃まで昇温して、その温度で60分間その回転を維持しつつ加熱した。
【0170】
回転、加熱が終了した後、冷却せずそのまま金型を離脱して熱風滞留式オーブン中に静置してイミド化のための加熱を開始した。この加熱は徐々に320℃に達するまで昇温した。そして、この温度で30分間加熱した後常温に冷却して、該金型内面に形成された半導電性管状ポリイミドベルトを剥離し取り出した。なお、該ベルトは厚さ82μm、外周長944.3mm、体積抵抗率1×1010Ω・cmであった。
【0171】
(2)弾性層の製膜
キシレン1250gにポリウレタンエラストマー(ウレハイパーRUP、DIC(株)製)を1000g溶解させた溶液に酸性カーボン(pH3.5)250gを加え、ボールミルにて均一分散を行い、固形分濃度50質量%、該固形分中のカーボンブラック(CB)濃度は20質量%のマスターバッチ溶液を作製した。このマスターバッチ209gに硬化剤CLH−5(DIC(株)製)を9.0g添加し撹拌を行った。
【0172】
この溶液を金型を回転した状態で、最終的に200μmの厚みを有する弾性層になる量で均一に塗布し、加熱を開始した。加熱は2℃/minで130℃まで昇温して、その温度で60分間その回転を維持しつつ加熱し、金型内面に弾性層を形成した。
【0173】
(3)弾性層内面と基材層外面の貼り合わせ
上記(2)で製膜した弾性層内面にプライマーDY39−067(東レ・ダウコーニング(株)製)を塗布、風乾した後に、ドライラミ接着剤(三井化学ポリウレタン(株)製タケラックA−969)を薄く外面に塗布した(1)のポリイミドベルト(基材層)を挿入し重ね合わせた。次に基材内面から圧着した状態で加熱(80〜100℃)を行い、貼り合わせを完了させた。貼り合わせた積層ベルトを金型から剥離し両端部をカットし幅360mmの積層ベルトを採取した。
【0174】
(4)表面層の製膜
反応性金属酸化物粒子の製造には、ラジカル重合性官能基を有する不飽和シラン化合物を使用し、金属酸化物粒子(酸化アルミニウム、粒径34nm)の表面処理を行う。
【0175】
この金属酸化物粒子100質量部に対し、ラジカル重合性官能基を有する化合物を表面処理剤として15質量部、溶媒(トルエン:イソプロピルアルコール=1:1の混合溶媒)400質量部を用いて湿式メディア分散型装置を使用して分散した後、溶媒を除去してラジカル重合性官能基を有する化合物で表面を処理した反応性金属酸化物粒子を製造した。
【0176】
製造された反応性金属酸化物粒子のラジカル重合官能基を有する化合物の表面処理量(ラジカル重合性官能基を有する化合物の被覆量)は、金属酸化物微粒子に対して12質量%であった。ラジカル重合性官能基を有する化合物の表面処理量は、表面処理後の金属酸化物粒子を55℃で3時間熱処理し、その残分を蛍光X線にて定量分析し、Si量から分子量換算で求めた値を示す。
【0177】
表面層形成用塗布液の調製
反応性金属酸化物粒子100体積部と、活性エネルギー線硬化型モノマー100体積部と、フッ素樹脂/シロキサングラフト型樹脂ZX−212(不揮発分47%、富士化成工業(株)製)50体積部とを溶媒(メチルイソブチルケトン)5000体積部と混合し、横型循環分散機(ディスパーマット:英弘精機)にて、φ0.5mmのジルコニアビーズを充填率80%となるように仕込み、1000rpmで分散を行った。分散液に、光重合開始剤(イルガキュアー379:BASFジャパン)13体積部を混合し、表面層形成用塗布液を調製した。
【0178】
表面層形成用塗布液の塗布
準備した積層ベルトの表面に、浸漬塗布方法で、調製した表面層形成用塗布液を乾燥膜厚が2μmとなる様に塗布膜を形成した後、活性エネルギー線として紫外線を使用し、硬化処理装置で塗布膜を硬化し表面層を形成し中間転写ベルトを作製した。尚、紫外線を照射する時、光源を固定し、多層ベルトを保持した円筒状基体を60mm/sで回転しながら行った。
【0179】
塗布条件
塗布液供給量:1l/min
引き上げ速度:4.5mm/min
紫外線照射条件
光源の種類:高圧水銀ランプ(H04−L41:アイグラフィックス(株)製)
照射口から表面層形成用塗膜の表面までの距離:100mm
照射光量:1J/cm
照射時間(基体を回転させている時間):240秒
該表面層を塗布した中間転写ベルトは厚さ280μm、外周長945.0mm、tanδ:0.5、表面硬度8GPa、基材層の弾性率をEbと表記し、弾性層の弾性率をEeと表記すると定義した場合、EbとEeの比率をEe/Ebとすると、Ee/Ebは1/10(後述の記載では、“弾性層の基材層に対する弾性率”と表記)、無機ガラス板に塗布した時の表面層の表面抵抗率1×1012Ω/□(後述の実施例および比較例では無機ガラス板塗布の記載は省略)、基材のTg:273℃であった。これを中間転写ベルト1とする。
【0180】
〔2〕中間転写ベルト2〜18の作製
上記中間転写ベルト1と同様に作製したが、その特性を表1に記載されている値に成るよう作製方法・条件を変更して、表1に示す特性を示す中間転写ベルト2〜18を作製した。
【0181】
中間転写ベルト2(実施例2)
弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の厚さを100μmに調整した以外は、基材層、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の成膜、表面層の成膜は、実施例1と同様の方法で行った。
【0182】
得られた表面層を塗布した多層積層ベルトは厚さ180μm、外周長945.0mm、tanδ:0.02、表面硬度8GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×1012Ω/□であった。これを中間転写ベルト2とする。
【0183】
中間転写ベルト3(実施例3)
弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の厚さを300μmに調整した以外は、基材層、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の成膜、表面層の成膜は、実施例1と同様の方法で行った。
【0184】
得られた表面層を塗布した多層積層ベルトは厚さ380μm、外周長945.0mm、tanδ:9、表面硬度8GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×1012Ω/□であった。これを中間転写ベルト3とする。
【0185】
中間転写ベルト4(実施例4)
表面層の成膜条件として、紫外線照射時間を120秒とした以外は、基材層、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の成膜、表面層の成膜は、実施例1と同様の方法で行った。
【0186】
得られた表面層を塗布した多層積層ベルトは厚さ280μm、外周長945.0mm、tanδ:0.5、表面硬度2GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×1012Ω/□であった。これを中間転写ベルト4とする。
【0187】
中間転写ベルト5(実施例5)
表面層の成膜条件として、紫外線照射時間を350秒とした以外は、基材層、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の成膜、表面層の成膜は、実施例1と同様の方法で行った。
【0188】
得られた表面層を塗布した多層積層ベルトは厚さ280μm、外周長945.0mm、tanδ:0.5、表面硬度15GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×1012Ω/□であった。これを中間転写ベルト5とする。
【0189】
中間転写ベルト6(実施例6)
弾性層の成膜条件として、硬化剤CLH−1(DIC(株)製)6.6gとした以外は、基材層、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の成膜、表面層の成膜は、実施例1と同様の方法で行った。
【0190】
得られた表面層を塗布した多層積層ベルトは厚さ280μm、外周長945.0mm、tanδ:0.5、表面硬度8GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×1012Ω/□であった。これを中間転写ベルト6とする。
【0191】
中間転写ベルト7(実施例7)
弾性層の成膜条件として、硬化剤CLH−5(DIC(株)製)18.0gとした以外は、基材層、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の成膜、表面層の成膜は、実施例1と同様の方法で行った。
【0192】
得られた表面層を塗布した多層積層ベルトは厚さ280μm、外周長945.0mm、tanδ:0.1、表面硬度8GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×1012Ω/□であった。これを中間転写ベルト7とする。
【0193】
中間転写ベルト8(実施例8)
表面層形成用塗布液の調製時に使用した反応性金属酸化物粒子が350体積部であった以外は、基材層、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の成膜、表面層の成膜は、実施例1と同様の方法で行った。
【0194】
得られた表面層を塗布した多層積層ベルトは厚さ280μm、外周長945.0mm、tanδ:0.5、表面硬度8GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×1010Ω/□であった。これを中間転写ベルト8とする。
【0195】
中間転写ベルト9(実施例9)
表面層形成用塗布液の調製時に使用した反応性金属酸化物粒子が30体積部であった以外は、基材層、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の成膜、表面層の成膜は、実施例1と同様の方法で行った。
【0196】
得られた表面層を塗布した多層積層ベルトは厚さ280μm、外周長945.0mm、tanδ:0.5、表面硬度8GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×1014Ω/□であった。これを中間転写ベルト9とする。
【0197】
中間転写ベルト10(実施例10)
基材層の作製は、下記の如くである。
【0198】
ポリフェニレンサルファイド樹脂(E2180、東レ社製) 100質量部
導電フィラー(ファーネス#3030B、三菱化学社製) 16質量部
グラフト共重合体(モディパーA4400、日本油脂社製) 1質量部
滑材(モンタン酸カルシウム) 0.2質量部
上記材料を単軸押出機に投入し、溶融混練させて樹脂混合物とした。単軸押出機の先端にはスリット状でシームレスベルト形状の吐出口を有する環状ダイスが取り付けてあり、混練された上記樹脂混合物を、シームレスベルト形状に押し出した。押し出されたシームレスベルト形状の樹脂混合物を、吐出先に設けた円筒状の冷却筒に外挿させて冷却し、固化することにより無端状で、かつ円筒状のベルト基材層を作製した。なお、環状ダイスの径Dと冷却筒の径dの比D/dは1.00とした。
【0199】
得られたベルト基材層は、Tgが90℃、厚さ120μm、外周長945mm、体積抵抗率1×1010Ω・cmであった。
【0200】
その後、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の製膜、弾性層内面と基材層外面の貼り合わせ、表面層の成膜は、実施例1と同様の方法で行った。
【0201】
得られた表面層を塗布した多層ベルトは、厚さ320μm、外周長945.0mm、tanδ:0.5、表面硬度8GPa、弾性層の基材層に対する弾性率3/10、表面抵抗率1×1012Ω/□であった。これを中間転写ベルト10とする。
【0202】
中間転写ベルト11(実施例11)
弾性層の作製において、実施例1と同様の材料に加え、発泡剤として、ADCA:アゾジカルボンアミド「ビニホールAC」(商品名、永和化成工業株式会社製)を80g、加硫促進剤として、硫黄:硫黄「サルファックスPMC」(商品名、鶴見化学工業株式会社製)を32g添加した以外は、基材層、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の成膜、表面層の成膜は、実施例1と同様の方法で行った。
【0203】
得られた表面層を塗布した多層ベルトは、厚さ280μm、外周長945.0mm、tanδ:0.5、表面硬度8GPa、弾性層の基材層に対する弾性率7/10、表面抵抗率1×1012Ω/□であった。これを中間転写ベルト11とする。
【0204】
中間転写ベルト12(比較例1)
基材層の作製は、結晶性PET樹脂(クラレ社製、商品名クラペットKS−710B4[固有粘度=1.25,DSC結晶融解ピーク温度=237℃、結晶融解熱(ΔH)=62J/g])を1軸スクリュー押出機に供給して、リップクリアランス0.7mmのT型ダイからシート状に溶融押出し、直ちに30℃の冷却ロールによって冷却して、厚みが約100μmのシート(フィルム)に成形した。ただし、導電性カーボンブラック(アセチレンブラック;電気化学工業社製、商品名デンカブラック[揮発分=0.03質量%,DBP吸油量=125ml/100g,pH=9])は、予め濃度30質量%(結晶性PET樹脂(A)への希釈物)のマスターバッチペレットを作製しておき、これを他の成分と共に押出機に供給して押出機内でペレットブレンドした。マスターバッチペレットの作製には、2軸スクリュー押出機を用いた。
【0205】
成形したシートを所定の大きさに切り出し、両端部を0.5mm重ね合わせ、超音波接合し、無端状のベルト基材層を作製した。
【0206】
得られたベルト基材層は、Tgが67℃、厚さ100μm、外周長944.3mm、体積抵抗率1×1010Ω・cmであった。
【0207】
その後、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の製膜、弾性層内面と基材層外面の貼り合わせ、表面層の成膜は、実施例1と同様の方法で行った。
【0208】
得られた表面層を塗布した多層ベルトは、厚さ300μm、外周長945.0mm、tanδ:0.5、表面硬度8GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×1012Ω/□であった。これを中間転写ベルト12とする。
【0209】
中間転写ベルト13(比較例2)
基材層の成膜は、実施例1と同様の方法で行った。その後、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層は、以下の方法でした。
【0210】
実施例1と同様に、キシレン1250gにポリウレタンエラストマー(ウレハイパーRUP、DIC(株)製)を1000g溶解させた溶液に酸性カーボン(pH3.5)250gを加え、ボールミルにて均一分散を行い、固形分濃度50質量%、該固形分中のカーボンブラック(CB)濃度は20質量%のマスターバッチ溶液を作製した。このマスターバッチ209gに硬化剤CLH−5(DIC(株)製)を9.0g添加し撹拌を行った。
【0211】
この溶液を金型を回転した状態で、最終的に30μmの厚みを有する弾性層になる量で均一に塗布し、加熱を開始した。加熱は2℃/minで130℃まで昇温して、その温度で60分間その回転を維持しつつ加熱し、金型内面に弾性層を形成した。
【0212】
基材層との貼り合わせ、表面層の成膜は、実施例1と同じ方法で行った。
【0213】
得られた表面層を塗布した多層積層ベルトは厚さ110μm、外周長945.0mm、tanδ:0.005、表面硬度8GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×1012Ω/□であった。これを中間転写ベルト13とする。
【0214】
中間転写ベルト14(比較例3)
基材層の成膜は、実施例1と同様の方法で行った。その後、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層は、以下の方法でした。
【0215】
実施例1と同様に、キシレン1250gにポリウレタンエラストマー(ウレハイパーRUP、DIC(株)製)を1000g溶解させた溶液に酸性カーボン(pH3.5)250gを加え、ボールミルにて均一分散を行い、固形分濃度50質量%、該固形分中のカーボンブラック(CB)濃度は20質量%のマスターバッチ溶液を作製した。このマスターバッチ209gに硬化剤CLH−5(DIC(株)製)を9.0g添加し撹拌を行った。
【0216】
この溶液を金型を回転した状態で、最終的に500μmの厚みを有する弾性層になる量で均一に塗布し、加熱を開始した。加熱は2℃/minで130℃まで昇温して、その温度で60分間その回転を維持しつつ加熱し、金型内面に弾性層を形成した。
【0217】
基材層との貼り合わせ、表面層の成膜は、実施例1と同じ方法で行った。
【0218】
得られた表面層を塗布した多層積層ベルトは厚さ580μm、外周長945.0mm、tanδ:11、表面硬度8GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×1012Ω/□であった。これを中間転写ベルト14とする。
【0219】
中間転写ベルト15(比較例4)
基材層、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の作製、および、基材層と弾性層との貼り合わせは、実施例1と同様の方法で行った。
【0220】
また、表面層成膜のための、表面層塗布液の調整も、実施例1と同様の方法で行った。
【0221】
なお、表面層塗布液の塗布条件は以下のように変更して行った。
【0222】
準備した積層ベルトの表面に、浸漬塗布方法で、調製した表面層形成用塗布液を乾燥膜厚が2μmとなる様に塗布膜を形成した後、活性エネルギー線として紫外線を使用し、硬化処理装置で塗布膜を硬化し表面層を形成し中間転写ベルトを作製した。尚、紫外線を照射する時、光源を固定し、多層ベルトを保持した円筒状基体を60mm/sで回転しながら行った。
【0223】
塗布条件
塗布液供給量:1l/min
引き上げ速度:4.5mm/min
紫外線照射条件
光源の種類:高圧水銀ランプ(H04−L41:アイグラフィックス(株)製)
照射口から表面層形成用塗膜の表面までの距離:100mm
照射光量:1J/cm
照射時間(基体を回転させている時間):100秒
得られた表面層を塗布した多層ベルトは厚さ280μm、外周長945.0mm、tanδ:0.5、表面硬度1GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×1012Ω/□、であった。これを中間転写ベルト15とする。
【0224】
中間転写ベルト16(比較例5)
基材層、弾性層の作製、および、基材層と弾性層との貼り合わせは、実施例1と同様の方法で行った。
【0225】
また、表面層成膜のための、表面層塗布液の調整も、実施例1と同様の方法で行った。なお、表面層塗布液の塗布条件は以下のように変更して行った。
【0226】
準備した積層ベルトの表面に、浸漬塗布方法で、調製した表面層形成用塗布液を乾燥膜厚が2μmとなる様に塗布膜を形成した後、活性エネルギー線として紫外線を使用し、硬化処理装置で塗布膜を硬化し表面層を形成し中間転写ベルトを作製した。尚、紫外線を照射する時、光源を固定し、多層ベルトを保持した円筒状基体を60mm/sで回転しながら行った。
【0227】
塗布条件
塗布液供給量:1l/min
引き上げ速度:4.5mm/min
紫外線照射条件
光源の種類:高圧水銀ランプ(H04−L41:アイグラフィックス(株)製)
照射口から表面層形成用塗膜の表面までの距離:100mm
照射光量:1J/cm
照射時間(基体を回転させている時間):400秒
得られた表面層を塗布した多層ベルトは厚さ280μm、外周長945.0mm、tanδ0.5:表面硬度16GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×1012Ω/□、であった。これを中間転写ベルト16とする。
【0228】
中間転写ベルト17(比較例6)
基材層の成膜は、実施例1と同様の方法で行った。その後、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層は、以下の方法でした。
【0229】
実施例1と同様に、キシレン1250gにポリウレタンエラストマー(ウレハイパーRUP、DIC(株)製)を1000g溶解させた溶液に酸性カーボン(pH3.5)250gを加え、ボールミルにて均一分散を行い、固形分濃度50質量%、該固形分中のカーボンブラック(CB)濃度は20質量%のマスターバッチ溶液を作製した。このマスターバッチ209gに硬化剤CLH−1(DIC(株)製)を5.0g添加し撹拌を行った。
【0230】
この溶液を金型を回転した状態で、最終的に200μmの厚みを有する弾性層になる量で均一に塗布し、加熱を開始した。加熱は2℃/minで130℃まで昇温して、その温度で60分間その回転を維持しつつ加熱し、金型内面に弾性層を形成した。
【0231】
基材層との貼り合わせ、表面層の成膜は、実施例1と同じ方法で行った。
【0232】
得られた表面層を塗布した多層積層ベルトは厚さ280μm、外周長945.0mm、tanδ:0.5、表面硬度8GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/9、表面抵抗率1×1012Ω/□であった。これを中間転写ベルト17とする。
【0233】
中間転写ベルト18(比較例7)
基材層の成膜は、実施例1と同様の方法で行った。その後、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層は、以下の方法でした。
【0234】
実施例1と同様に、キシレン1250gにポリウレタンエラストマー(ウレハイパーRUP、DIC(株)製)を1000g溶解させた溶液に酸性カーボン(pH3.5)250gを加え、ボールミルにて均一分散を行い、固形分濃度50質量%、該固形分中のカーボンブラック(CB)濃度は20質量%のマスターバッチ溶液を作製した。このマスターバッチ209gに硬化剤CLH−5(DIC(株)製)を19.0g添加し撹拌を行った。
【0235】
この溶液を金型を回転した状態で、最終的に200μmの厚みを有する弾性層になる量で均一に塗布し、加熱を開始した。加熱は2℃/minで130℃まで昇温して、その温度で60分間その回転を維持しつつ加熱し、金型内面に弾性層を形成した。
【0236】
基材層との貼り合わせ、表面層の成膜は、実施例1と同じ方法で行った。
【0237】
得られた表面層を塗布した多層積層ベルトは厚さ280μm、外周長945.0mm、tanδ:0.1、表面硬度8GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×1012Ω/□であった。これを中間転写ベルト18とする。
【0238】
中間転写ベルト19(比較例8)
基材層、弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層の作製、および、基材層と弾性層との貼り合わせは、実施例1と同様の方法で行った。
【0239】
表面層成膜用塗布液作製のための反応性金属酸化物粒子の製造は、実施例1と同様の方法で行った。
【0240】
表面層塗布液の調整は、以下の方法で行った。
【0241】
反応性金属酸化物粒子500体積部と、活性エネルギー線硬化型モノマー100体積部と、フッ素樹脂/シロキサングラフト型樹脂ZX−212(不揮発分47%、富士化成工業(株)製)50体積部とを溶媒(メチルイソブチルケトン)5000体積部と混合し、横型循環分散機(ディスパーマット:英弘精機)にて、φ0.5mmのジルコニアビーズを充填率80%となるように仕込み、1000rpmで分散を行った。分散液に、光重合開始剤(イルガキュアー379:BASFジャパン)13体積部を混合し、表面層形成用塗布液を調製した。
【0242】
表面層形成用塗布液の塗布は、実施例1と同様の方法で行った。
【0243】
得られた表面層を塗布した多層ベルトは厚さ280μm、外周長945.0mm、tanδ:0.5、表面硬度8GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×10Ω/□、であった。これを中間転写ベルト19とする。
【0244】
中間転写ベルト20(比較例9)
基材層、弾性層の作製、および、基材層と弾性層との貼り合わせは、実施例1と同様の方法で行った。
【0245】
表面層成膜用塗布液作製のための反応性金属酸化物粒子の製造は、実施例1と同様の方法で行った。
【0246】
表面層塗布液の調整は、以下の方法で行った。
【0247】
反応性金属酸化物粒子10体積部と、活性エネルギー線硬化型モノマー100体積部と、フッ素樹脂/シロキサングラフト型樹脂ZX−212(不揮発分47%、富士化成工業(株)製)50体積部とを溶媒(メチルイソブチルケトン)5000体積部と混合し、横型循環分散機(ディスパーマット:英弘精機)にて、φ0.5mmのジルコニアビーズを充填率80%となるように仕込み、1000rpmで分散を行った。分散液に、光重合開始剤(イルガキュアー379:BASFジャパン)13体積部を混合し、表面層形成用塗布液を調製した。
【0248】
表面層形成用塗布液の塗布は、実施例1と同様の方法で行った。
【0249】
得られた表面層を塗布した多層ベルトは厚さ280μm、外周長945.0mm、tanδ:0.5、表面硬度8GPa、弾性層の基材層に対する弾性率1/10、表面抵抗率1×1015Ω/□であった。これを中間転写ベルト20とする。
【0250】
【表1】

【0251】
〔性能評価〕
上記で試作した多層ベルトを用いて性能評価を行った結果を下表に示す。
【0252】
(評価方法)
〈画像形成装置〉
上記で作製した中間転写体の評価は、画像形成装置「bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)」に装着して行った。
【0253】
画像品質にまつわる項目(転写率、中抜け、ラフ紙転写性、飛散り、ゴースト)については、初期状態での評価を行い、ベルトクリープ性や、清掃性はA4横サイズ紙で20万枚出力後に評価を行った。
【0254】
尚、画像形成には体積基準におけるメディアン粒径(D50)が4.5μmのトナーと60μmのコートキャリアよりなる2成分現像剤を使用した。
【0255】
〈転写効率〉
一次転写効率は、転写前の感光体上トナー質量及び転写後の中間転写ベルト上のトナー質量を測定し下記式1から求めた。また、二次転写効率は、前記中間転写ベルト上のトナー質量及び転写後の転写紙上のトナー質量を測定し下記式2から求めた。
【0256】
よって、最終的な総合転写効率は、下記式3で求めることができる。
【0257】
式1:一次転写効率=(中間転写ベルト上トナー質量/感光体上トナー質量)×100[%]
式2:二次転写効率=(転写紙上トナー質量/中間転写ベルト上トナー質量)×100[%]
式3:総合転写効率=(転写紙上トナー質量/感光体上トナー質量)×100[%]
転写効率は次の基準で評価した。
【0258】
○:95%〜100%
△:90%〜95%
×:90%未満
下記、表2で一次転写効率と二次転写効率より、総合転写効果への変換を行い、それを評価ランクに置き換えて表3に示す。
【0259】
【表2】

【0260】
【表3】

【0261】
〈ライン中抜け〉
ライン中抜け(一次転写効率)は、ライン画像のみの画像にて転写前及び転写後の感光体上のトナー質量を測定し上記の転写効率の式から求めた。ライン中抜けは次の基準で評価した。
【0262】
○:90%より高い
△:85〜90%
×:85%未満
〈ラフ紙転写性〉
凹凸が50μm程度のストラスモア社製 ストラスモアライティングレイドを用い、マゼンタでベタ印刷を行って、最深部(凹部)のトナーの乗りを目視で判断した。評価基準は以下の通りである。
【0263】
◎:完全にムラなく転写できている
○:やや色が薄い
△:僅かに白抜けしている
×:トナーの乗りがなく白抜けしている
〈飛散り〉
10倍ルーペで覗いた時の、黒および赤線の飛散り状態より判定した。
【0264】
◎:飛散りが無い
○:トナー数個の飛散りがある
△:トナー10個以内の飛散りが有る
×:トナー10個超の飛散りが有る
〈ゴースト〉
転写ベルト1周前の画像が、ハーフトーン画像内にうつっているか否かで判定した。
【0265】
○:ゴーストの発生が無い
△:僅かなゴーストが発生する
×:明らかなゴーストが発生する
〈ベルトクリープ性〉
張架ローラ(駆動ローラ/従動ローラ)の巻き癖部のCD白帯、即ち、転写紙搬送方向に対して横切る方向の白帯の発生の有無で判定した。尚、CDとは、Cross Directionの略である。
【0266】
○:白帯の発生がない
△:かすかなCD白帯の発生がある
×:CD白帯の発生がある
〈清掃性(表面層割れ)〉
転写ベルトフィルミングによる拭き残しの有無で判定した。
【0267】
○:フィルミングも無く、拭き残しも未発生
△:僅かなフィルミングは発生しているものの、拭き残しは未発生
×:フィルミングが発生し、拭き残しも発生する
総合判定は、各性能評価結果に基づいて、全体的に見て実用性が有るか否かを判断した。○、△は実用性あり、×、××は無しのレベルである。
【0268】
結果は、表4に示す。
【0269】
【表4】

【0270】
本発明内の実施例1〜11はいずれも実用可能範囲にあるが、本発明外の比較例1〜9は少なくとも何れかの特性に大きな問題があり、実用性に問題があることがわかる。
【符号の説明】
【0271】
A 基材層
B 弾性層
C 表面層
10Y、10M、10C、10K 画像形成部
14 原稿画像読み取り装置
13Y、13M、13C、13K 露光手段
17 中間転写体ユニット
170 中間転写ベルト
171、172、173、174 中間転写ベルト搬送用ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置用の積層型無端の中間転写ベルトであって、25℃におけるtanδが0.01以上10未満で、かつ最上層の表面硬度が2GPa以上、15GPa以下であり、さらに下記(a)〜(c)の規定を満たすことを特徴とする中間転写ベルト。
(a)Tgが70℃以上である高分子あるいは架橋した高分子の基材層であり、
(b)弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層を有する、
(c)無機ガラス板に塗布した時の表面抵抗率が1010Ω/□以上1014Ω/□未満の表面層である。
【請求項2】
前記基材層が架橋した高分子で、主成分がポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項3】
前記Tgが70℃以上である高分子の基材の主成分がポリフェニレンスルフィドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の中間転写ベルト。
【請求項4】
前記弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層が、熱可塑性エラストマー(TPE)を主成分とする層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の中間転写ベルト。
【請求項5】
前記弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層が、ゴムを主成分とする層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の中間転写ベルト。
【請求項6】
前記弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層が、発泡体の層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の中間転写ベルト。
【請求項7】
前記弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層が、ハロゲンを含む高分子を主成分とする層であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の中間転写ベルト。
【請求項8】
前記弾性率が基材層の1/10未満から1/(10)以上の層を、塗布手段で形成または押出手段でシート化後、該シートを他の層と貼り合わせる工程を経て形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の中間転写ベルト。
【請求項9】
前記無機ガラス板に塗布した時の表面抵抗率が、1010Ω/□以上1014Ω/□未満である表面層が紫外線硬化樹脂を主成分とした層であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の中間転写ベルト。
【請求項10】
前記無機ガラス板に塗布した時の表面抵抗率が、1010Ω/□以上1014Ω/□未満である表面層がスプレーコート、インクジェット方式、ワイヤーバー方式、ドクターブレード方式のいずれかの塗布手段で形成された層であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の中間転写ベルト。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−247599(P2012−247599A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118810(P2011−118810)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】