説明

乗り物の断熱に用いられるフォイル積層体の製造方法

【課題】良好な熱遮断効果を有する、乗り物の断熱用の絶縁パックを製造するための費用のかからない方法ならびに装置を提供する。
【解決手段】エンボス加工された複数のフォイルウェブ5e,5f,5g,5hからなるフォイル積層体9を製造するための方法および装置において、少なくとも二つの互いに上下に重なるフォイルウェブ5a,5b,5c,5dが一緒にエンボス加工され、異なる搬送径路W,W1,W2,W3に沿って搬送され、その後、一つの積層体9に一体化される。隣り合って配置されたエンボス加工されたフォイルウェブ5e,5f,5g,5hは、異なる搬送径路W,W1,W2,W3のゆえに、交互にずれた状態で積層される。エンボス加工用ローラ1a,1bの特に好ましい実施形態によって、複数の瘤状部に襞状の構造部が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分おいて書き部に特定されるような、乗り物の断熱に用いられるエンボス加工されたフォイルウェブ(薄膜連続体)の積層体を製造するための方法、及び、この方法によって作製された、請求項8の前提部分おいて書き部に特定されるような積層体、及び、このような積層体を製造するための、請求項6の前提部分おいて書き部に特定されるような装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなフォイル積層体は、例えば、吸熱体として、あるいは吸音体として用いられ、表面に凸凹等の形状が形成された互いに重なり合う複数のフォイル(薄膜ないし薄板)から構成され、特に例えばアルミニウムといった非鉄金属から構成されている。以下に述べる積層体は、乗り物用の音を吸収する絶縁パック(絶縁葉板束)ないし熱シールドとして、特に自動車業界で好適に用いられる。
【0003】
このような積層体を作製するには、平らな材料ないしシート状の材料が一対のエンボス加工ローラの間を通過するように導かれる。このとき、これらのローラは、通常、これらのローラの一方が所望の構造を有し、同時に、他方のローラが弾性的な表面を有しているか、もしくは補完形状(雌型の形状)を備えるものとされている。平坦な材料に構造を与え、あるいはエンボス加工を行なうということは、この平坦な材料を局所的に広げたり引き伸ばしたりすることと密接に関係している。上述のようにして平坦材料ないしシート状材料に構造を付与する例は、当業者には良く知られている。こういった構造が与えられた部分ないしエンボス加工部分は、瘤状、波形状、ないし菱形のダイヤモンド形状にすることができる。
【0004】
吸音する絶縁パックないし熱シールドは、特に乗り物ないし自動車を製造する際に用いられ、通常、構造が与えられた平坦材料ないしシート状材料、特にエンボス加工されたフォイルないし薄板の形態とされているが、これらの材料が互いに複数重なり合って構成されている。このとき、構造が与えられた平坦材料は、絶縁効果を得るために、個々の層の間に空気ないしガスの空間が形成され、互いに重ねて設けられた層の間での接触面積が大きくならないように形成されている。個々のシートは、このようにして、できるだけ互いに離れていなければならない。エンボス加工部の深さを深くするために、個々の変形部の間が離されるが、これは、曲げこわさ(曲げ剛性)及び圧縮に対する剛性や耐性(耐圧縮性)の低下につながる。そのため、平坦材料をこのように変形することによって、例えば過失によって又は意図せず圧力を加えてしまうことで生じる比較的弱い表面圧力でさえ、構造を与えられた平坦材料が容易に元に押し潰され、それとともに絶縁効果が失われてしまうといった問題が引き起こされる。ここで、構造が与えられた斯かる平坦材料の斯かる比較的低い耐圧縮性は、単位面積当たりの変形部の個数(以後、構造体密度、あるいは瘤状部密度ないし波形状部密度とも称する)が比較的少ないということだけでなく、エンボス加工中の延びや広がりが原因となって、構造が与えられた平坦材料の厚さが薄くなっているということにも起因している。構造体密度が小さくなり、しかも局所的に材料の厚さが薄くなる結果、平坦材料は、個々の変形部(瘤、波の山ないし波の谷)の領域において、目的の用途には不十分な剛性を有している。このため、例えば、従来の瘤が設けられた平坦材料の場合、個々の瘤は、僅かな圧力が加わっただけでも元通り平らに押されてしまうか、あるいは容易に変形されてしまうことになる。さらに、斯かる構造を有する平坦材料は、この平坦材料が個々の瘤の領域で比較的小さな耐圧縮性と比較的小さい剛性とを有しているために、全体的な曲げ剛性が小さくなっている。
【0005】
特許文献1には、表面形状が形成された複数のフォイルからなる吸熱材料および吸音材料が記載されている。このとき、フォイルは、平行な波の山ならびに波の谷からなる波形の形状を有し、なおも波の谷にはガセットが折り込まれている。もっとも、実際には、斯かるフォイルパックは、自動車産業の要望を満足に満たさないことが分かっている。しかも、個々の波の山や波の谷の領域における剛性は、上記の用途には不十分であることも示されている。
【0006】
今日知られている方法の場合、フォイル積層体を製造するために、フォイルウェブ(フォイルの連続体)が一対のローラの間を通り抜けるように導かれ、こうしてエンボス加工されたフォイルウェブが、互いに上下に積み重ねられ、又は積み上げられる複数の部分に切り分けられる。複数のローラ対が同時に用いられ、エンボス加工されるフォイルウェブが互いに重ねられた状態で導かれて一緒に切断されるという方法も知られている。こういった全ての方法において、エンボス加工されたフォイルが互いに内側に入り込む、つまり、個々のエンボスが正確に上下に重なって、それために個々のフォイルが互いに嵌り込んでしまう(卵の容器が積み重なるのと同じ)といったことがある。このため、個々のフォイルは、もはや意図したように互いに離されるのではなく、むしろ、互いに密に積み重なることになる。
【0007】
特許文献2より、複数のエンボス加工ローラが用いられるフォイル積層体を製造するための方法ならびに装置が知られている。同様にこの製造方法も、極めて手間がかかり、それに応じてコスト高であることが判明している。フォイルの構造、あるいは平坦材料ないしシート状材料の構造を変更可能にするために、この装置においては、多くのエンボス加工用ローラが取り替えられなければならない。
【0008】
あらゆる類の薄板材料、平坦材料、ないしシート状材料をまとめて言うのに、以後、「フォイルウェブ」という概念を用いることにする。加工処理されたフォイルウェブから切断されたあらゆる類の積層された薄板形状、平坦材料、ないしシート状材料に対して、「シート」という概念を用いる。このウェブ状の材料は、例えば、加工された紙、適切なプラスチックないし金属、穴が開けられるか又は開けられないフォイル、薄い金属シートないし金属薄板からなるものでも構わないことは明らかである。これらの材料は、コーティングされていてもよいし、および/または若干の変形模様、穴や裂け目を有していてもよい。
【特許文献1】独国特許出願公開第4329411号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0439046号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の基本的な課題は、良好な熱遮断効果を有するとともに良好に音を吸収する、乗り物の断熱用の絶縁パックを製造するための費用のかからない方法ならびに装置を提供することにある。さらに、この絶縁パックは、高い曲げ剛性ならびに高い耐圧縮性を備えていなければならない。
【0010】
本発明のさらなる課題は、従来のフォイルウェブの欠点を持たないような、エンボス加工されたフォイルウェブを提供することにある。特に、本発明の課題は、高められた剛性、そしてその中でも高められた曲げ剛性、そして高められた耐圧縮性を備えるフォイルウェブを提供することにある。
【0011】
さらに、本発明の課題は、音を吸収する乗り物用熱シールドとして用いるのに適し、かつ個々のシートが確実に互いに離れた状態で維持される、エンボス加工されたフォイルウェブからなる積層体を提供することにある。特に、高められた曲げ剛性と高められた耐圧縮性とを備えた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1に記載の方法を用いて解決される。下位請求項2ないし請求項5は、さらなる好ましい方法の工程に関係する。この目的のために、請求項6の特徴を有してなる、積層体を製造するための装置が用いられる。下位請求項7は、この装置のさらなる好ましい形態に関係する。本発明により製造された積層体は、請求項8の特徴を有している。この積層体の実施形態は、下位請求項9および請求項10の特徴を有していることが好ましい。
【0013】
上記の課題は、本発明により、エンボス加工された複数のフォイルウェブからなる積層体を製造するための方法および装置を用いて解決される。このとき、少なくとも二つのエンボス加工前のフォイルウェブがフィーダ装置(供給装置)から引き出され、少なくとも一つのエンボス加工用ローラ対の間でエンボス加工され、特に瘤状部が設けられる。このようにエンボス加工された、あるいは瘤が形成されたフォイルウェブは、その後、積層装置内で積層体へと一体化される。この積層装置は、一体に接合されたフォイルウェブを所望の長さに切断するための切断器具をも有している。本発明によれば、エンボス加工用ローラ対と積層装置との間に搬送装置が設けられ、この搬送装置を用いて、エンボス加工されたフォイルウェブが異なる搬送径路に沿って搬送される。この搬送装置は、少なくとも二つの隣接して配置されるエンボス加工されたフォイルウェブが、これらが積層装置に供給されるまで、異なる搬送径路を進まなければならないように構成されている。異なる搬送径路の長さが異なることから、様々なフォイルウェブのエンボス模様が積層装置上流側で交互にずれている。本発明に係る方法の好ましい実施形態において、複数のフォイルウェブには、異なるエンボス模様が設けられている。この場合、襞状構造部を有する瘤状部が個々にエンボス加工される。斯かる襞状構造部によって、個々の瘤状部が一層高い耐圧縮性を有するとともに、フォイルウェブ全体が一層大きな曲げ剛性を有することになる。この方法によれば、裂け目や亀裂が形成されたフォイルウェブも生成することができ、このとき、これらのフォイルは、裂け目がないフォイルウェブに比べて音響学的に一層大きな効果を有する。
【0014】
本方法は、互いに上下に重なった平坦材料またはシート状材料からなるウェブないしフォイルウェブが、互いに上下に重なった全てのウェブを同時にエンボス加工するような好ましくは唯一のエンボス加工用ローラ対を用いて、全て一緒にエンボス加工されるという長所を有している。このように一緒にして構造を付与する、あるいは一緒にしてエンボス加工を施すことは、多くのエンボス加工用ローラ対を節約するという点において、それに対応するコストを低下させる。加えて、このエンボス加工用ローラを別のエンボス模様を有したエンボス加工用ローラ対と取り替えることによって、エンボス模様を極めて容易に変更することができる。特に、複数の異なるエンボス模様を有するフォイルウェブを簡単な方法で製造できる。
【0015】
本発明に係る方法により、互いに上下に重なったフォイルウェブをエンボス模様が交互にずれた状態で互いに積層することができる。本発明に係る方法の一発展形態において、フォイルウェブの個々の搬送径路の長さを、搬送装置の領域内で様々に設定することができる。これにより、エンボス模様の異なるずらし方が実現され、さらに所望のやり方でフォイルウェブを積層することができる。
【0016】
積層体を製造するための本発明に係る装置は、フィーダ装置と、エンボス加工用ローラ対と、搬送装置と、積層装置とを備えている。この装置を用いて、未だエンボス加工されていないフォイルウェブがフィーダ装置からエンボス加工用ローラ対に供給される。エンボス加工用ローラ対を用いて、供給されたフォイルウェブが所望の仕方でエンボス加工される。本発明によれば、エンボス加工用ローラは、フォイルウェブに多くの瘤状部が設けられ、このとき、これらの瘤状部が襞に似た構造を有するようにして構成される。このエンボス加工用ローラの好ましい発展形態において、エンボス加工用ローラは、エンボス加工時にフォイルウェブに裂け目が形成されるように構成されている。
【0017】
この装置の他の実施形態において、第1のエンボス加工用ローラは、周方向に二つの異なるエンボス模様を有している。この第1のエンボス加工用ローラとともにエンボス加工用ローラ対を形成する第2のエンボス加工用ローラは、第1のエンボス加工用ローラに対して埋め合わせをするように構成され、これにより、このようにエンボス加工されたフォイルウェブが搬送方向に交互に第1のエンボス模様と第2のエンボス模様とを有するようになっている。
【0018】
好ましい実施形態において、個々のエンボス加工されたフォイルウェブのエンボス模様のずれは、積層体内で隣り合わせに設けられるエンボス加工された二つのシートがそれぞれ異なるエンボス模様を有するように選択される、つまり、一方のシートの第1のエンボス模様が他方のシートの第2のエンボス模様の上にそれぞれ載るように選択される。
【0019】
本発明に係る装置の場合、エンボス加工用ローラは、個々の変形部、特に瘤状部の側面傾斜部分に、エンボス加工工程を通して襞に似た構造が生成されるように構成されている。個々の瘤状部の側面におけるこの襞状構造部によって、個々の瘤状部が高められた耐圧縮性能を示し、さらにシート材料全体が高められた曲げ剛性を有するようになる。その上、このように生成された補強部によって、周知の平坦材料によって達成されるのと同じような物理的効果を得るのに、さらに薄いフォイルを用いることが可能となる。加えて、折り曲げられた構造を通じて高められた全体強度によって、付加的な保持板ないし支持板を用いる必要なしに、より大きな構成部材を製造することが可能になる。
【0020】
本発明により製造された積層体は、エンボス加工された多くのシートを有している。これらのシートは、本発明によりエンボス加工され、ずらされた状態で積み重ねられたフォイルウェブから切断されている。この積層体の基本的な特徴は、隣り合うフォイルウェブが、異なる又は交互にずらされたエンボス模様を有している点である。本発明により製造された積層体のさらなる特徴は、エンボス模様が襞状の構造を有する多くの変形部を有している点である。この積層体の好ましい発展形態は、裂け目が形成された複数のシートを有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図面を用いながら実施形態に基づいて詳述する。
【0022】
図1に示された装置は、フィード装置10(供給装置)を備え、このフィード装置には、繰り出されるフォイルウェブ5a,5b,5c,5dを有する互いに上下に配置された四つのローラ5が設けられている。上記フォイルウェブ5a,5b,5c,5dは、進行方向Fに進みながらローラ5から引き出され、互いに上下に位置した状態でエンボス加工用ローラ対1に供給される。このエンボス加工用ローラ対1は、第1のエンボス加工用ローラ1aと第2のエンボス加工用ローラ1bとを備え、これらの二つのエンボス加工用ローラは、回転方向1cに回転可能に支持されている。第1のエンボス加工用ローラ1aは、その表面が円周方向に180°にわたって第1の構造部2と、続くさらなる180°にわたって第2の構造部3とを有するように構成されている。第2のエンボス加工用ローラ1bは、第1の構造部2ならびに第2の構造部3を形成するために、上記第1のエンボス加工用ローラ1aに対してちょうど正反対となってそれを相殺するように、それを埋め合わせるように構成されている。互いに上下に重なるウェブ5a,5b,5c,5dは、一緒になってエンボス加工され、その際、これらのウェブは、エンボス加工用ローラ対1によって構造が付与され、これにより、エンボス加工されたウェブ5e,5f,5g,5hが形成されるようになっている。これらのウェブ5e,5f,5g,5hは、エンボス加工用ローラ対1の構成のために、第1のエンボス模様6と、第2のエンボス模様7とを交互に有している。エンボス加工用ローラ対1の下流側に、搬送径路を延長するための装置8が設けられている。この装置8によって、ウェブ5e,5f,5g,5hが異なる長さの搬送径路W,W1,W2,W3に沿って搬送可能となり、このとき、ウェブ5fが最も短い搬送径路Wに沿って搬送されるのに対して、ウェブ5e,5g,5hが延長された搬送径路W1,W2,W3に沿って搬送される。最短の搬送径路Wに対して加わる径路は、複数の偏向ローラ8aによって決定される。これらの偏向ローラ8は、固定して設けてもよいし、あるいは、ここでは図示されない位置調節装置によって、例えば、移動方向8bに制御可能に位置を設定できるものであってもよい。これらの個々のウェブ5e,5f,5g,5hは、偏向ローラ8cによって、積層体9を形成するようにして積層装置9aに供給される。
【0023】
図示された実施形態において、延長された搬送径路W1,W2,W3は、最短の搬送径路Wに対して次のように選ばれている。すなわち、積層体9内のウェブ5e,5f,5g,5hは、互いに上下に重なる際に、図2に示されるように、二つの隣接して設けられたウェブ5e,5f,5g,5hのそれぞれが、平行にずらされたエンボス模様6,7を有した状態で互いに積層されるようになっている。
【0024】
ウェブ5e,5f,5g,5hの交互のずれは、延長された搬送径路W1,W2,W3ないし偏向ローラ8aの位置を適宜選択することによって、他に選択することもできる。
【0025】
図3は、エンボス加工用ローラ対1a,1bの或る特定の実施形態を示している。エンボス加工用ローラ1aの表面は、これらのエンボス加工用ローラが、円周方向に、90°での或る長さ2aにわたって第1の瘤配列部2と、それに続く90°での或る長さ3aにわたって第2の瘤配列部3とを有し、このとき、これら構造部2,3がもう一度繰り返すように構成されている。エンボス加工用ローラ1bは、エンボス加工用ローラ1aの表面に対して相反するように形成されている。
【0026】
エンボス加工用ローラ1aは、全周長にわたって第1の瘤配列部2だけを有してもよい。こうしてウェブ5e,5f,5g,5hに構造を付与するには、隆起部と陥没部とが形成されるようにし、このとき、上側のウェブ5eのそれぞれの陥没部が下側のウェブ5fの隆起部に載るようにしてウェブ5e,5f,5g,5hが搬送方向Fにずらされた状態で一緒にされ、積層体9になるようにする。このようにしても、ウェブ5e,5f,5g,5hを有する積層体9を製造することができる。他の実施形態において、エンボス加工用ローラ1aの全周に形成された構造が連続的に変化し、ずらされて上下に配置されたフォイルが同じエンボス模様を持たないようにしてもよい。
【0027】
図4は、一つ一つの瘤状部11の形状を明確に示すものである。これらの瘤状部は、急傾斜の側面12を有し、本発明により形成された襞構造部13を有している。この襞構造部13は、シート状材料14が不可逆な弾性限界の領域に至るまで延伸されたときに生じる。この弾性限界は、音響学的な効果を有する裂け目が発生する程度まで超過しても構わないものであることは明らかである。裂け目(亀裂)が生じたシートを用いた熱シールドは、PCT出願第PCT/CH00/00058号明細書(未公開)に記載されている。この文献の技術思想は、本明細書にも包括的に取り入れられている。
【0028】
当業者であれば、さらなる発明的行為を付け加えることなしに、音響学的ならびに熱的な要求に合うように瘤状部ならびにその構造や配置を作製するであろう。
【0029】
この瘤状部は、規則的ないし不規則的に設けてもよいことは明らかである。エンボス加工は、それに合わせて構成されたエンボス加工用ローラ対を用いて行なわれる。エンボス加工されたフォイルウェブは、一つの積層体に一体化され、さらに、ずれた状態だけでなく確実に隔たりを設けられた状態で互いに上下に重なる。
【0030】
第1のエンボス加工用ローラは、周方向に二つよりも多い異なるエンボス模様、例えば三つのエンボス模様を有することもできる。第1のエンボス加工用ローラは、周方向に二つの異なるエンボス模様を有し、これらのエンボス模様が、エンボス加工用ローラの一部の領域にのみ延在し、周方向に何度も繰り返し配置されるようにしてもよい。
【0031】
本発明の長所は、当業者には直ぐに分かることであり、特に製造工程を著しく簡潔化する点に見ることができるし、しかも、所望の音響学的および熱的な特性を柔軟に選択できることが容易に可能であるという点に見ることができる。こうして、音響学的な効果を有する熱シールドを製造するために、単に一対のエンボス加工用ローラしか必要でないような装置を用いることができる。したがって、エンボス模様の変更や、あるいは装置のメインテナンスが著しく簡単になる。さらに、所望の襞構造部(補強)の付与および/または裂け目の形成(音の吸収)がなされるように、エンボス加工対象のフォイルウェブを簡単な方法で故意に可塑変形により延伸できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明によるフォイル積層体を製造するための装置を概略的に示す図である。
【図2】本発明による積層体を概略的に示す図である。
【図3】エンボス加工用ローラ対の或る特殊な実施形態を示す図である。
【図4】個々の瘤状部を詳細に示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1・・・エンボス加工用ローラ対
1a,1b・・・エンボス加工用ローラ
1c・・・エンボス加工用ローラの回転方向
2・・・第1の構造部(エンボス加工部、瘤状エンボス加工部、瘤状部)
2a・・・第1の構造部の周方向の長さ
3・・・第2の構造部(エンボス加工部、瘤状エンボス加工部、瘤状部)
3a・・・第2の構造部の周方向の長さ
5・・・平坦材料ないしシート状材料からなるウェブのローラ
5a,5b,5c,5d・・・エンボス加工前のウェブ
5e,5f,5g,5h・・・エンボス加工後のウェブ
6・・・第1のエンボス模様
7・・・第2のエンボス模様
8・・・搬送装置(搬送径路を延長するための装置)
8a・・・偏向ローラ 8b・・・偏向ローラのための位置調節装置
9・・・積層体
9a・・・積層装置
10・・・フィード装置
F・・・搬送方向
W・・・最短の搬送径路
W1,W2,W3・・・異なる搬送径路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物の熱シールドに用いられるエンボス加工された複数のフォイルウェブ(5e,5f,5g,5h)からなる積層体であって、
隣接する前記フォイルウェブ(5e,5f,5g,5h)は、異なるか又は交互に平行にずれたエンボス模様を有し、ここの前記エンボス加工されたフォイルウェブ(5e,5f,5g,5h)は、襞状の構造(13)を有するそれぞれ複数の瘤状部(11)を有している積層体。
【請求項2】
前記瘤状部(11)は、裂け目(15)を有していることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
乗り物の熱シールドに用いられる、エンボス加工された複数のフォイルウェブからなる積層体(9)を製造するための方法であって、
少なくとも二つの未だエンボス加工されていないフォイルウェブ(5a,5b,5c,5d)をフィード装置(10)から搬送方向(F)に搬送し、エンボス加工用ローラ対(1)の間でエンボス加工するステップと、
エンボス加工されたフォイルウェブ(5e,5f,5g,5h)を引き続き積層装置(9a)内で一緒にして積層体(9)を形成するステップであって、隣接して配置された前記エンボス加工されたフォイルウェブ(5e,5f,5g,5h)を搬送装置(8)を用いて異なる搬送径路(W,W1,W2,W3)に沿って搬送し、よって前記積層体(9)内で隣接して配置されるエンボス加工された少なくとも二つのフォイルウェブ(5e,5f,5g,5h)が、異なる搬送径路(W,W1,W2,W3)の長さの違いのために、搬送方向(F)における交互のずれを有する、ステップと、
を備える方法において、
前記互いに上下に重なる前記未だエンボス加工されていないフォイルウェブ(5a,5b,5c,5d)をエンボス加工中に所定の強度の過剰な引っ張りを加え、よって、前記エンボス加工されたフォイルウェブ(5e,5f,5g,5h)に、襞状の構造(13)を有する瘤状部(11)を形成することを特徴とする方法。
【請求項4】
互いに上下に重なる前記未だエンボス加工されていないフォイルウェブ(5a,5b,5c,5d)は、唯一のエンボス加工用ローラ対によってエンボス加工を施されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
互いに上下に重なる前記未だエンボス加工されていないフォイルウェブ(5a,5b,5c,5d)は、第1のエンボス模様(6)及び第2のエンボス模様(7)の少なくとも二つの異なるエンボス模様(6,7)でエンボス加工を施されることを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記搬送方向(F)における前記第1及び第2のエンボス模様は同じ長さに設けられ、前記エンボス加工されたフォイルウェブ(5e,5f,5g,5h)は前記異なる搬送径路(W,W1,W2,W3)に沿って導かれ、よって前記積層体(9)内で隣り合わせに配置されたフォイルウェブ(5e,5f,5g,5h)が、異なるエンボス模様(6,7)を有することを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記瘤状部(11)に裂け目(15)が形成されることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−107344(P2009−107344A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311210(P2008−311210)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【分割の表示】特願2001−576208(P2001−576208)の分割
【原出願日】平成12年7月3日(2000.7.3)
【出願人】(501306450)リーテル・オートモティブ・(インターナショナル)・アーゲー (1)
【Fターム(参考)】