説明

乳化型整髪料

【課題】なめらかで、のびがよく、べたつかず、アレンジ力および整髪力に優れ、きしみ感のない水中油型乳化型整髪料を提供する。
【解決手段】(a)カチオン界面活性剤(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム)を好ましくは0.1〜10質量%、(b)高級脂肪族アルコールを好ましくは0.1〜20質量%、(c)ロウ類を0.5〜25質量%、(d)水、および(e)(e−1)整髪樹脂を0.1〜8質量%、(e−2)粉末成分を0.1〜3質量%、の中から選ばれる1種または2種以上を含む水中油型乳化型整髪料。所望によりさらに(f)液状油分を配合してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乳化型整髪料に関する。さらに詳しくは、なめらかで、のびがよく、べたつかず、アレンジ力および整髪力に優れ、きしみ感のない水中油型乳化型整髪料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭髪用化粧料においては、毛髪をセット、固定する目的で、ワックスなどの油分、整髪樹脂(高分子化合物)等が用いられてきた(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、従来のワックスや整髪樹脂を配合した毛髪化粧料は、固着力を増すためにワックスや樹脂量を増量すると、セット性(整髪力)は向上するが、それに伴ってごわつき感やべたつきが増大し、滑らかさが低減し、伸びが悪くなるという問題がある。また、毛髪のくせやパーマのウェーブを残し髪の動きを出しつつまとめてヘアスタイルをアレンジしてソフトに固定するという、いわゆるアレンジ力も十分に発揮できなかった。
【0003】
【特許文献1】特開平10−45546号公報
【特許文献2】特開2002−12521号公報
【特許文献3】特開2004−67622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、なめらかで、のびがよく、べたつかず、アレンジ力および整髪力に優れ、きしみ感のない水中油型乳化型整髪料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために本発明は、下記(a)〜(e)成分を含む乳化型整髪料を提供する。
【0006】
(a)成分:カチオン界面活性剤、
(b)成分:高級脂肪族アルコール、
(c)成分:ロウ類を0.5〜25質量%、
(d)成分:水、および
(e)成分:(e−1)整髪樹脂を0.1〜8質量%、(e−2)粉末成分を0.1〜3質量%、の中から選ばれる1種または2種以上。
【0007】
また本発明は、(a)成分を0.1〜10質量%、(b)成分を0.1〜20質量%含有する、上記乳化型整髪料を提供する。
【0008】
また本発明は、(a)成分:(b)成分=1:4〜1:30(モル比)である、上記乳化型整髪料を提供する。
【0009】
また本発明は、さらに(f)液状油分(25℃で液状を呈する油分)を配合する、上記乳化型整髪料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、なめらかで、のびがよく、べたつかず、アレンジ力および整髪力に優れ、きしみ感のない水中油型乳化型整髪料が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の(a)成分であるカチオン界面活性剤としては、一般に化粧料に用いられるものであれば特に限定されるものでなく、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化ポリ(N,N’−ジメチル−3,5−メチレンピペリジニウム)、塩化セチルピリジニウム等のアルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモリホニウム塩、POEアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が例示される。(a)成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0012】
本発明における(b)成分としての高級脂肪族アルコールは、化粧品、医薬品、医薬部外品等の分野において用いられ得るものであれば特に限定されるものでない、例えば、飽和直鎖一価アルコール、不飽和一価アルコールなどが挙げられる。飽和直鎖一価アルコールとしては、ドデカノール(=ラウリルアルコール)、トリデカノール、テトラデカノール(=ミリスチルアルコール)、ペンタデカノール、ヘキサデカノール(=セチルアルコール)、ヘプタデカノール、オクタデカノール(=ステアリルアルコール)、ノナデカノール、イコサノール(=アラキルアルコール)、ヘンイコサノール、ドコサノール(=ベヘニルアルコール)、トリコサノール、テトラコサノール(=カルナービルアルコール)、ペンタコサノール、ヘキサコサノール(=セリルアルコール)等が挙げられる。不飽和一価アルコールとしてはエライジルアルコール等が挙げられる。本発明では安定性等の点から飽和直鎖一価アルコールが好ましい。
【0013】
(b)成分は1種または2種以上を用いることができるが、高温安定性等の点から、算術平均により得られる平均アルキル鎖長が18以上であることが望ましい。平均アルキル鎖長の好適上限値は特に限定されるものではないが、アルキル鎖22程度とするのが好ましい。
【0014】
本発明では上記(a)成分と(b)成分の一部〜全部が、後述する(d)成分中でゲルを形成する。(a)成分の配合量は、整髪料全量に対し0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%、特には0.1〜3質量%が好ましい。また(b)成分の配合量は、整髪料全量に対し0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%、特には3〜12質量%が好ましい。
【0015】
また(a)成分と(b)成分の配合比は、上記ゲルを効果的に形成するために、本発明では(a)成分:(b)成分=1:4〜1:30(モル比)となるよう配合するのが好ましい。上記モル比範囲を外れると、ゲル形成が難しく、基剤全体のなめらかさが減少し、油分のベタつきが大きくなる。
【0016】
本発明における(c)成分としてのロウ類は、融点が55℃以上のワックス類を指し、例えば、キャンデリラロウ、カルナバロウ、ミツロウ、ラノリン等の天然ワックスエステルや、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の合成ワックスエステル等が挙げられる。(c)成分はセット力、毛髪の立ち上げ、アレンジ力等に寄与する。(c)成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
(c)成分の配合量は、整髪料全量に対し0.5〜25質量%であり、好ましくは3〜20質量%である。0.5質量%未満では整髪力効果を得ることができず、一方、25質量%超ではべたつきを生じるので、好ましくない。
【0018】
本発明整髪料は水中油型乳化型の整髪料であり、(d)成分としての水は外相(水相)の主成分をなす。
【0019】
(e)成分は、(e−1)整髪樹脂を0.1〜8質量%、(e−2)粉末成分を0.1〜3質量%、の中から選ばれる1種または2種以上である。
【0020】
上記(e−1)成分である整髪樹脂としては、特に限定されるものでなく、例えば造膜性のある非イオン性、陰イオン性、両性、陽イオン性高分子化合物の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられ、具体的には以下の化合物が例示される。ただしこれら例示に限定されるものでない。
(1)ポリビニルピロリドンや、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体などのビニルピロリドン系高分子化合物(BASF社のルビスコールK−90,VA73など)、
(2)ポリビニルアルコールや、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物(日本合成化学社のゴーセノール、電気化学工業社のデンカポバールなど)、
(3)ビニルメチルエーテル/マレイン酸ブチルなどの酸性ビニルエーテル系高分子化合物(大阪有機化学社のアニエールBEM−42S、ISP社のガントレッツES−225など)、
(4)アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸アルキルエステル・ジアセトンアクリルアミド・メタクリル酸共重合体液、アクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸・アクリル酸アミド・アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸系高分子化合物(BASF社のルビマー100P、ウルトラホールドストロング、三菱化学社のダイヤホールドHR−200、互応化学社のプラスサイズL−53Pなど)、
(5)N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル共重合体、アクリル酸オクチルアミド・アクリル酸ヒドロキシプロピル・メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体などの両性アクリル酸系高分子化合物(三菱化学社のユカフォーマーAM−75、日本NSC社のアンフォマー28−4910など)、
(6)ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド共重合体、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ビニルピロリドン・N,N'−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩液、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体等の含窒素陽イオン性高分子化合物(アマコール社のポリマーJR−125、ライオン社のレオガードGP、日本NSC社のセルコートL−200,ISP社のガフコート734、大阪有機化学社のH.C.ポリマー1N、ナルコ社のマーコート550など)。
【0021】
(e−1)成分は、整髪効果のキープ力(持続力)向上に寄与し、(c)成分によりセット力が付与された毛髪化粧料に(e−1)成分を配合した場合、セット力を持ちながら、そのセット力をキープさせることができる。(e−1)成分を配合する場合、その配合量(実分)は整髪料全量に対し0.1〜8質量%であり、好ましくは0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。0.1質量%未満では整髪力効果の持続性向上を図ることができず、一方、8質量%超ではべたつきやゴワゴワ感、バリバリ感を生じるので、好ましくない。なお本発明では、(e−1)成分を(c)成分と併用する形で用いるが、(e−1)成分単独で用いるより、(c)成分と併用することで上記のゴワゴワ感、バリバリ感がより低減され、指どおりがよくなるという効果も奏する。
【0022】
上記の整髪樹脂のうち、陰イオン性、および両性の高分子については、そのままでは水に不溶な場合、必要に応じて官能基の一部または全部を無機または有機アルカリ剤で中和し、水溶性としてもよい。
【0023】
上記の中和を目的として用いられるアルカリ剤は、無機アルカリ剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。またアンモニア、モルホリン等の揮発性アルカリ剤、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールなどのアルカノールアミン類、L−アルギニン、リジンなどのアミノ酸類などが挙げられる。
【0024】
上記(e−2)成分である粉末成分は、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されることなく使用することができ、例えば、タルク、マイカ、カオリン、雲母、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、バーミキュライト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、マグネシウム、球状シリカ、無水ケイ酸〔例えば、「アエロジル#200」(日本アエロジル社製)等〕、シリル化処理無水ケイ酸〔例えば、「アエロジル#972」(日本アエロジル社製)等〕、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、弗素アパタイト、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸(ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウムなど)、窒化ホウ素等の無機粉末;ポリアミド球状樹脂粉末(ナイロン球状粉末)、球状ポリエチレン、架橋型ポリ(メタ)クリル酸メチル球状樹脂粉末、球状ポリエステル、架橋ポリスチレン球状樹脂粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体球状樹脂粉末、ベンゾグアナミン球状樹脂粉末、ポリ四弗化エチレン球状粉末、球状セルロース等の球状の有機粉末;二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料;酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等の無機赤色系顔料;γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、カーボンブラック、低次酸化チタン等の無機黒色系顔料;マンゴバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色系顔料;酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等の無機緑色系顔料;群青、紺青等の無機青色系顔料;酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドオキシ塩化ビスマス、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等のパール顔料;アルミニウムパウダー、カッパーパウダー等の金属粉末顔料;赤色、黄色、橙色、黄色、緑色、青色等の色材、あるいはこれらをジルコニウム、バリウムまたはアルミニウム等でレーキ化した色材(有機顔料);クロロフィル、β−カロリン等の天然色素などが例示される。中でも、カオリン、無水ケイ酸(「アエロジル#200」)、シリル化処理無水ケイ酸(「アエロジル#972」)等が、使用性等の点から好ましく用いられる。
【0025】
(e−2)成分は、ふんわり感向上に寄与し、(c)成分によりセット力が付与された毛髪化粧料に(e−2)成分を配合した場合、セット力を持ちながら、空気感のあるふんわりとした軽さが得られ、(c)成分による重さを軽減することができる。(e−2)成分の形状は特に限定されるものでないが、球状のものよりも不定形のもののほうが、ひっかかりがあり、毛束をうまくアレンジしやすいので好ましい。(e−2)成分を配合する場合、その配合量は整髪料全量に対し0.1〜3質量%であり、好ましくは0.3〜1.2質量%である。0.1質量%未満ではふんわり感向上効果を得ることができず、一方、3質量%超ではきしみ感を生じるので、好ましくない。
【0026】
本発明ではさらに、油相成分として(f)液状油分(25℃で液状を呈する油分)を配合することができる。液状油分としては、一般に毛髪化粧料に用いられるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、重質イソパラフィン(=水添ポリイソブテン)、スクワラン、流動パラフィン等の炭化水素油;セチル−2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、2−オクチルドデシルミリステート、ネオペンチルグリコール−2−エチルヘキサノエート、イソプロピルミリステート、ミリスチルミリステート、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル等のエステル類;オリーブ油、アボカド油、ホホバ油、ヒマワリ油、サフラワー油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、液状ラノリン、酢酸ラノリン、ヒマシ油等の油脂;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、高重合度のガム状ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等のシリコーン系油分;フッ素変性ジメチルポリシロキサン、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、パーフロロポリエーテル、パーフロロカーボン等のフッ素系油分等が挙げられる。(f)成分は1種または2種以上を用いることができる。
【0027】
(f)成分を配合する場合、整髪力効果がありながらべたつき感がない、等の点から、その配合量は、整髪料全量に対し1〜30質量%とするのが好ましく、より好ましくは225質量%、特には5〜20質量%である。
【0028】
本発明における整髪料にはさらに、本発明の効果が損なわれない範囲で、通常の化粧料、医薬部外品に用いられる成分を配合することができる。このような成分としては、例えば、界面活性剤(上記(a)成分を除く)、保湿剤、揮発性油分(25℃で揮発性有する油分)、分散剤、防腐剤、香料、薬剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0029】
上記界面活性剤としては、2−エチルヘキサン酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、2−パルミトレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、アラキン酸、ベヘニン酸、ペトロセリン酸、エライジン酸、リノエライジン酸、アラキドン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩や、アルキル硫酸エステル塩、長鎖アシルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルカルボキシヒドロキシイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレン付加高級脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコールエステル類や多価アルコールエステル系、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体等のノニオン界面活性剤;高分子界面活性剤等が挙げられる。なおこれら(a)成分以外の界面活性剤を配合する場合、その配合量は低配合に抑えるのが好ましい。
【0030】
上記保湿剤としては、例えば、ダイナマイトグリセリン,1,3−ブチレングリコール,ジプロピレングリコール,プロピレングリコール等の多価アルコール、ヒアルロン酸,コンドロイチン硫酸等の水溶性高分子等が挙げられる。配合量としては0.1〜65質量%が好ましい。
【0031】
上記揮発性油分としては、低沸点(常圧における沸点260℃以下)イソパラフィン系炭化水素油や低沸点シリコーン油等が好ましく用いられる。上記低沸点イソパラフィン系炭化水素油(軽質イソパラフィン)としては、具体的には、アイソパーA、同C、同E、同G、同H、同K、同L、同M(以上、いずれもエクソン社製)、シェルゾール71(シェル社製)、ソルトロール100、同130、同220(以上、いずれもフィリップ社製)等が市販品として挙げられる。上記低沸点シリコーン油としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルテトラシクロシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン等が挙げられる。
【0032】
本発明整髪料は、各配合成分を混合し、公知の方法、例えばホモミキサーを用いて転相乳化法により乳化することにより製造することができる。ただしこの製造方法に限定されるものでない。混合と乳化は別々に行ってもよく、あるいは同時に行ってもよい。
【0033】
本発明の水中油型乳化型整髪料は、ワックス状、クリーム状、ゲル状、乳液状等の種々の剤型に適用することができ、ヘアワックス、ヘアミルク、ヘアクリーム等として好適に用いられる。
【実施例】
【0034】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
【0035】
(実施例1、比較例1)
下記に示す実施例1、比較例1の組成の水中油型乳化整髪料を調製し、これを試料として、下記試験方法、評価基準に従って、のびのよさ(動粘度挙動)、塗布後、乾く時のべたつき感(転がり摩擦)の評価を行った。結果を図1、図2に示す。
【0036】
〈実施例1〉
(配 合 成 分) (質量%)
(1)メチルポリシロキサン 2.0
(2)マイクロクリスタリンワックス 12.0
(3)流動パラフィン 3.5
(4)水添ポリイソブテン 3.5
(5)テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 3.0
(6)イソステアリン酸PEG−60グリセリル 1.0
(7)ステアリン酸グリセリル 1.0
(8)脱臭セタノール(植物油系) 3.3
(9)ステアリルアルコール 0.9
(10)トコフェロール 0.5
(11)香料 0.1
(12)イオン交換水 残 余
(13)プロピレングリコール 8.0
(14)塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1.2
(15)カオリン 2.5
(16)トリエタノールアミン 0.4
(17)ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体 1.8
(製造方法)
(1)〜(11)を85℃で撹拌溶解させた(油相部)。他方、(12)〜(14)を75℃で撹拌溶解させた(水相部)。水相部に油相部を加え乳化させた後、(15)を加えた。次いで(16)を加えて中和させた後、(17)を加え、脱気、冷却した。
【0037】
〈比較例1〉
(配 合 成 分) (質量%)
(1)イオン交換水 残 余
(2)プロピレングリコール 10.0
(3)カルボキシビニルポリマー 0.1
(4)ポリアクリル酸ナトリウム 0.05
(5)EDTA−2Na・2H2O 0.02
(6)POE硬化ヒマシ油(60E.O.) 3.0
(7)ステアリン酸グリセリル 2.0
(8)POEオレイルエーテルリン酸(10E.O.) 2.0
(9)ステアリン酸(植物油系) 4.5
(10)イソステアリン酸 1.0
(11)流動パラフィン 3.0
(12)合成イソパラフィン 6.0
(13)テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 5.0
(14)メチルポリシロキサン 0.5
(15)マイクロクリスタリンワックス 7.0
(16)カルナバロウ 3.0
(17)キャンデリラロウ 3.0
(18)ステアリルアルコール 1.0
(19)トコフェロール 0.05
(20)フェノキシエタノール 0.5
(21)香料 0.1
(22)トリエタノールアミン 1.8
(23)メタクリル酸ブチルアミノエチル 1.2
(24)メタクリル酸ブチルアミノエチル共重合体 0.3
(製造方法)
(1)〜(5)を70〜80℃で撹拌溶解させた(水相部)。他方、(6)〜(21)を75℃で撹拌溶解させた(油相部)。水相部に油相部を加え乳化させた後、(22)を加えて中和させた後、(23)、(24)を加え、脱気、冷却した。
【0038】
[のびのよさ(動粘度挙動)]、
上記実施例1、比較例1で得た試料にストレスをかけて、その際の応力とずり速度の関係(動粘度)をコーンプレート型レオメータにて計測した。
【0039】
[塗布後、乾く時のべたつき感(転がり摩擦)]
上記実施例1、比較例1で得た試料を水平可動プレート上にのせ、プローブに作用する転動力を測定することで試料とプローブ間にかかる摩擦を測定した。
【0040】
図1の結果から明らかなように、実施例1は、比較例1に比べ、ストレスをかけた際の応力が低く、製剤(試料)ののびがよいことが確認された。
【0041】
また図2の結果から明らかなように、実施例1は、比較例1に比べ、転がり摩擦度が低く、乾く時のべたつきが少ないことが確認された。なお図2の縦軸は転がり摩擦の程度を示す。グラフの伸びが高いほど転がり摩擦度が高い。
【0042】
(実施例2〜5、比較例2−3)
下記表1に示す組成の整髪料を常法により調製し、これを試料として、下記評価基準により整髪力、なめらかさ、アレンジ力、べたつき、のび、きしみ感を実使用評価した。結果を表1に示す。
【0043】
〈整髪力〉
専門パネル(20名)により使用テストを行い、自然な髪の流れを有した、ナチュラルな整髪力が得られ、それらが持続するということについて評価した。評価方法は、下記基準により各人に評価点を付けてもらい、その評価点の合計点で評価した。
(評価点)
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:悪い
1点:非常に悪い
(評価基準)
◎:合計点が90点以上である
○:合計点が60点以上90点未満である
△:合計点が30点以上60点未満である
×:合計点が30点未満である
【0044】
〈なめらかさ〉
専門パネル(20名)により使用テストを行い、整髪した後・また経時での髪の毛の触り心地のよさについて評価した。評価方法は、下記基準により各人に評価点を付けてもらい、その評価点の合計点で判定した。
(評価点)
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:悪い
1点:非常に悪い
(評価基準)
◎:合計点が90点以上である
○:合計点が60点以上90点未満である
△:合計点が30点以上60点未満である
×:合計点が30点未満である
【0045】
〈アレンジ力〉
専門パネル(20名)により使用テストを行い、毛先の動き・毛束のまとまりなどの出しやすさについて評価した。評価方法は、下記基準により各人に評価点を付けてもらい、その評価点の合計点で評価した。
(評価点)
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:悪い
1点:非常に悪い
(評価基準)
◎:合計点が90点以上である
○:合計点が60点以上90点未満である
△:合計点が30点以上60点未満である
×:合計点が30点未満である
【0046】
〈べたつき〉
専門パネル(20名)により使用テストを行い、手に対してべたつきがないということについて評価した。評価方法は、下記基準により各人に評価点を付けてもらい、その評価点の合計点で評価した。
(評価点)
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:悪い
1点:非常に悪い
(評価基準)
◎:合計点が90点以上である
○:合計点が60点以上90点未満である
△:合計点が30点以上60点未満である
×:合計点が30点未満である
【0047】
〈のび〉
専門パネル(20名)により使用テストを行い、のびが軽く、髪での手グシが通りやすいということについて評価した。評価方法は、下記基準により各人に評価点を付けてもらい、その評価点の合計点で評価した。
(評価点)
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:悪い
1点:非常に悪い
(評価基準)
◎:合計点が90点以上である
○:合計点が60点以上90点未満である
△:合計点が30点以上60点未満である
×:合計点が30点未満である
【0048】
〈きしみ感〉
専門パネル(20名)により使用テストを行い、手グシの際、髪の毛がひっかからず、からまないということについて評価した。評価方法は、下記基準により各人に評価点を付けてもらい、その評価点の合計点で評価した。
(評価点)
5点:非常に良い
4点:良い
3点:普通
2点:悪い
1点:非常に悪い
(評価基準)
◎:合計点が90点以上である
○:合計点が60点以上90点未満である
△:合計点が30点以上60点未満である
×:合計点が30点未満である
【0049】
【表1】

【0050】
(実施例6〜9、比較例4〜5)
下記表2に示す組成の整髪料を常法により調製し、これを試料として、上記評価基準により整髪力、なめらかさ、アレンジ力、べたつき、のび、きしみ感を実使用評価した。結果を表2に示す。
【0051】
【表2】

【0052】
(実施例10〜13、比較例6〜7)
下記表3に示す組成の整髪料を常法により調製し、これを試料として、上記評価基準により整髪力、なめらかさ、アレンジ力、べたつき、のび、きしみ感を実使用評価した。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】

【0054】
(実施例14〜16、比較例8)
下記表4に示す組成の整髪料を常法により調製し、これを試料として、上記評価基準により整髪力、なめらかさ、アレンジ力、べたつき、のび、きしみ感を実使用評価した。結果を表4に示す。
【0055】
【表4】

【0056】
以下さらに処方例を示す。
【0057】
(実施例17)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)メチルポリシロキサン 2.0
(2)キャンデリラロウ 3.0
(3)マイクロクリスタリンワックス 6.0
(4)流動パラフィン 3.5
(5)水添ポリイソブテン 3.5
(6)テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 3.0
(7)イソステアリン酸PEG−60グリセリル 1.0
(8)ステアリン酸グリセリル 1.0
(9)脱臭セタノール(植物油系) 3.3
(10)ステアリルアルコール 0.9
(11)トコフェロール 0.5
(12)香料 0.1
(13)イオン交換水 残 余
(14)プロピレングリコール 8.0
(15)塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1.2
(16)無水ケイ酸(「アエロジル#200」) 1.0
(17)トリエタノールアミン 0.4
(18)ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体 1.8
(製造方法)
(1)〜(12)を85℃で撹拌溶解させた(油相部)。他方、(13)〜(15)を75℃で撹拌溶解させた(水相部)。水相部に油相部を加え乳化させた後、(16)を加えた。次いで(17)を加えて中和させた後、(18)を加え、脱気、冷却した。
【0058】
(実施例18)
(配 合 成 分) (質量%)
(1)メチルポリシロキサン 2.0
(2)マイクロクリスタリンワックス 12.0
(3)流動パラフィン 3.5
(4)水添ポリイソブテン 3.5
(5)テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 3.0
(6)イソステアリン酸PEG−60グリセリル 1.0
(7)ステアリン酸グリセリル 1.0
(8)脱臭セタノール(植物油系) 3.3
(9)ステアリルアルコール 0.9
(10)トコフェロール 0.5
(11)香料 0.1
(12)イオン交換水 残 余
(13)プロピレングリコール 8.0
(14)塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 1.2
(15)カオリン 3.0
(16)トリエタノールアミン 0.4
(17)ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体 1.8
(製造方法)
(1)〜(11)を85℃で撹拌溶解させた(油相部)。他方、(12)〜(14)を75℃で撹拌溶解させた(水相部)。水相部に油相部を加え乳化させた後、(15)を加えた。次いで(16)を加えて中和させた後、(17)を加え、脱気、冷却した。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1および比較例1の、応力とずり速度の関係を示す図である。
【図2】実施例1および比較例1の、転がり摩擦の程度を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(e)成分を含む乳化型整髪料。
(a)成分:カチオン界面活性剤、
(b)成分:高級脂肪族アルコール、
(c)成分:ロウ類を0.5〜25質量%、
(d)成分:水、および
(e)成分:(e−1)整髪樹脂を0.1〜8質量%、(e−2)粉末成分を0.1〜3質量%、の中から選ばれる1種または2種以上。
【請求項2】
(a)成分を0.1〜10質量%、(b)成分を0.1〜20質量%含有する、請求項1記載の乳化型整髪料。
【請求項3】
(a)成分:(b)成分=1:4〜1:30(モル比)である、請求項1または2記載の乳化型整髪料。
【請求項4】
さらに(f)液状油分(25℃で液状を呈する油分)を配合する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の乳化型整髪料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−173602(P2009−173602A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15581(P2008−15581)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】