説明

乳化物または分散物の製造方法、並びにこれを含む食品、皮膚外用剤及び医薬品

【課題】微細な乳化粒子または分散粒子を含み且つ保存経時における品質劣化が極めて少ない乳化物または分散物の製造方法及びこれにより得られた乳化物または分散物を提供する。
【解決手段】本発明の乳化物または分散物の製造方法は、水溶性有機溶媒と少なくとも一つの疎水性機能成分とを含有すると共に界面活性剤の含有量が油相全体の質量に対して0.1質量%以下である油相を、水相と接触する直前のレイノルズ数を1000以上として、水相中に注入することを含む。また、これにより得られた乳化物または分散物を含む食品、皮膚外用剤及び医薬も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性機能成分を含む乳化物又は分散物を製造する方法、並びにこれを含む食品組成物、皮膚外用剤組成物及び医薬品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、天然の動植物や発酵法で増殖させた酵母等の細胞壁から、アルコール等の水溶性有機溶媒を用いて疎水性機能成分抽出し、これを食品添加物として食品や飲料に用いられたり、機能性化粧品として化粧品に添加される事が行われてきた。近年、健康ブームに乗って、種々の天然素材からの抽出が盛んに行われている。また、これまでは廃棄物であった物、例えば、バナナ葉、柑橘類残渣、タマネギの鬼皮等から有効成分をアルコールで抽出する事も行われている。
【0003】
このように、アルコール等の水溶性有機溶媒で抽出された疎水性機能成分は、抽出液から有機溶媒を除去、濃縮乾燥工程を経て、疎水性機能成分の粉末、油またはワックスとして取り出され、食品や飲料の原料とされるのが普通である。しかし、これらの機能成分は水には容易に溶けないものである事が大半であるため、水性食品、水性飲料、また触感に優れる水性化粧品にこれらの成分を使用するには、機能成分を別な溶剤や油脂で溶解させるか、それ自身を高温で溶融させた後乳化や分散の工程を経る必要があり、工程上の高コストにならざるを得なかった。特に疎水性機能成分を効果的に吸収させるためには、機能成分の油滴の大きさを1μm以下に微細化する必要があり、そのために大きな乳化エネルギーが必要であった。また、機能成分を一旦乾燥させ、それを再溶解または溶融させる過程で、機能成分が変質するために、成分量の減少や、変質成分による副作用もしばしば問題であった。
【0004】
疎水性機能成分を含む水性有機溶媒溶液に乳化剤を加えて、水相中に通常の乳化法、すなわち外部から強い剪断力を与えることで油滴を分裂させる方法で乳化分散を行っても、水溶性有機溶媒を多量に含む系の乳化を行うことは非常に困難であることが知られている。またこの場合には、粒径分布もブロードになり、粗大粒子が短時間に分離してくるために、このような乳化分散物を含む食品や化粧品の保存性が充分でない。
【0005】
一方、特許文献1にはマイクロミキサ−を用いて天然物質のマイクロ粒子またはナノ粒子を連続的に製造する方法が開示されている。天然有効成分の粒子形成相と、水を主成分とする水相をそれぞれマイクロ流路に導入し、お互いが層状の液となって周期的に混合することで天然有効成分の粒子化を試みている。しかしながら、できた粒子の平均粒径は1000nmを下回ること無く、目指すところの200nmには遠く及ばない事が明らかであった。
【0006】
特許文献2には、ジェット流を用いた超高圧乳化装置を用いて、グリコシルセラミドを分散する方法が開示されているが、粒径が200nmを切ることはできなかった。
また、特許文献3には、水溶性溶媒中にシリコンオイルと界面活性剤を溶かした溶液を、水相中に300m/min以上の速度で外部環境に触れることなく直接注入する方法が開示されている。しかしながら、この方法は現実にはシリコンオイルにのみ有効な方法であって、動植物から抽出された疎水性素材には不向きである。また、この方法は多量の界面活性剤を併用するため、その副作用に関しても好ましくなかった。
【0007】
一方、有機ナノ粒子の製造に関しては、気相法(不活性ガス雰囲気下で試料を昇華させ、粒子を基板上に回収する方法)、液相法(例えば、良溶媒に溶解した試料を攪拌条件や温度を制御した貧溶媒に注入することにより、微粒子を得る再沈法)、レーザーアブレーション法(溶液中に分散させた試料に、レーザーを照射しアブレーションさせることにより粒子を微細化する方法)などが研究されている。また、これらの方法により、所望のサイズで単分散化を試みた製造例が報告されている。
【0008】
中でも、特許文献4及び特許文献5等に開示される再沈法は、簡易性および生産性に優れた有機ナノ粒子の製造法として注目される。これは、良溶媒に溶解した有機材料の溶液をノズルやチューブ等の液供給口から貧溶媒を満たした撹拌槽に注入させるものである。撹拌槽は、マグネチックスターラー、スリーワンモーター、ディスパー、ラモンドスターラー等の撹拌手段により攪拌されている。撹拌槽に注入された有機材料は直ちに貧溶媒に曝されるため、結晶核を生成しこれが短時間のうちに成長してナノ結晶になる。この代表的な例として、ナノ結晶が水性溶媒中に分散した、有機ナノ粒子分散物が挙げられる。この方法は、インクジェット用顔料分散物や、カラーフィルター用顔料分散物の製造方法としてこれらの上記の特許文献等に開示されている。
【0009】
しかしながら、動植物から抽出された疎水性機能成分は、顔料等の合成素材とは異なり、それ自身が液状の油脂や、ワックス状油脂のように結晶化しにくいものである場合が多い。また、結晶化するような疎水性機能成分であっても、一旦溶解状態から貧溶媒中に移しても直ぐに結晶化することは稀である。このため、動植物から抽出された疎水性機能成分に対して特許文献4及び特許文献5に開示された再沈法を適用しても、良好なナノ粒子を形成することは困難である。
【0010】
【特許文献1】欧州特許1180062号明細書
【特許文献2】特開2001−340738号公報
【特許文献3】特開2005−103421号公報
【特許文献4】特開平6−79168号公報
【特許文献5】特開2006−341242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、微細な乳化粒子または分散粒子を含み且つ保存経時における品質劣化が極めて少ない乳化物または分散物の製造方法及びこれにより得られた乳化物または分散物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記実情に鑑み本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、上記課題を解決しうることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の手段により達成されるものである。
【0013】
<1> 水溶性有機溶媒と少なくとも一つの疎水性機能成分とを含有すると共に界面活性剤の含有量が油相全体の質量に対して0.1質量%以下である油相を、水相と接触する直前のレイノルズ数を1000以上として、水相中に注入することを含む乳化物または分散物の製造方法。
<2> 上記乳化物または分散物の体積平均粒子径が1nm〜200nmの範囲にある<1>記載の乳化物または分散物の製造方法。
<3> 上記油相中に、スフィンゴ脂質類、リン脂質類およびステロール類から選ばれた少なくとも1つの脂質を含む<1>〜<2>記載の乳化物または分散物の製造方法。
【0014】
<4> 上記水相中に少なくとも1種のHLB10〜16の非イオン性界面活性剤を含む<1>〜<3>記載の乳化物または分散物の製造方法。
<5> 上記注入後に、得られた乳化物または分散物から水溶性有機溶媒を除去することを含む<1>〜<4>記載の乳化物または分散物を製造する方法。
<6> 上記水溶性有機溶媒がエタノールである<1>〜<5>記載の乳化物または分散物の製造方法。
<7> <1>〜<6>記載の製造方法により製造された乳化物または分散物。
【0015】
<8> 上記疎水性機能成分が機能性食品成分である<1>〜<6>記載の乳化物または分散物の製造方法。
<9> <8>記載の製造方法により製造された乳化物または分散物を含む食品。
<10> 上記水不溶性機能成分が皮膚外用剤成分である<1>〜<6>記載の乳化物または分散物の製造方法。
<11> <10>記載の製造方法により製造された乳化物または分散物を含む皮膚外用剤。
<12> 上記水不溶性機能成分が医薬成分である<1>〜<6>記載の乳化物または分散物の製造方法。
<13> <12>記載の製造方法により製造された乳化物または分散物を含む医薬品。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、微細な乳化粒子または分散粒子を含み且つ保存経時における品質劣化が極めて少ない乳化物または分散物の製造方法及びこれにより得られた乳化物または分散物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の製造方法は、水溶性有機溶媒と少なくとも一つの疎水性機能成分とを含有すると共に界面活性剤の含有量が油相全体の質量に対して0.1質量%以下である油相を、水相と接触する直前のレイノルズ数を1000以上として、水相中に注入することを含むものである。
この製造方法によれば、界面活性剤が油相全体の質量に対して0.1質量%以下である油相とすると共に、このような油相を水相中に注入する際(水相と接触する直前)のレイノルズ数を1000以上とすることにより、疎水性機能成分を含む乳化物または分散物を、微細な乳化粒子または分散粒子を含み保存安定性に優れたものとすることができる。
なお、本発明における「分散物」とは、主として乳化若しくは分散またはその後の処理によって得られた固体が分散粒子として分散媒に分散している「固体分散物」ないしは「固形の分散物」をいう。
以下、本発明について説明する。
【0018】
本発明における、粒子を形成する疎水性機能成分とは、25℃における水に対する溶解度が1質量%以下のもの、好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下のものを指す。
本発明の疎水性機能成分は動植物由来のもの、石油、石炭、天然ガス等の化石燃料由来のもの、またそれらを素原料にした合成品、半合成品など限定されるものではないが、特に動植物から有機溶剤を用いて抽出操作によって分離したものが好ましい。
抽出とは化学的分離操作法の一つで、液体または固体原料を溶剤と接触させ、原料中に含まれている溶剤に可溶な成分を、溶剤に不溶または難溶性成分から選択的に分離する操作を指す。本発明における抽出操作は、上記一般的な抽出操作に含まれるが、原料が動植物の固体であり、溶剤として水溶性溶媒を用いるものである。
【0019】
本発明に用いる動植物原料は特に限定されるものではない。主として健康食品や健康飲料を最終用途に想定した場合、臭い、味、健康イメージの観点から動物原料より植物原料の方が好ましい。植物の部位としては、葉、茎、皮、実などあらゆる部分が原料となり得る。また、藻類、菌糸類、酵母類、菌類も好ましいものである。
【0020】
陸上植物原料の例としては、アシタバ、アズキ、アマチャヅル、アルファルファ、アロエ、イチョウ、イラクサ、インドセンダン、インディアン・グースベリー、ウイキョウ、ウコン、ウメ、ウンシュウミカン、エキナセア、エゾウコギ、エルダー、オウギ、オオバコ、オオヒレアザミ、オオムギ、オオムギワカバ、オクラ、オタネニンジン、オーツ麦、オリーブ、柿、ガジュツ、カノコソウ、カミツレ、ガラナ、カンゾウ、ガルニシア・カンボジア、キダチアロエ、ギムネマ、キャッツクロー、ギョウジャニンニク、グァバ、クコ、クズ、クマザサ、クミスクチン、クランベリー、グレープフルーツ、クワ、ケイヒ、ゲッケイジュ、ケール、ゲンチアナ、コタラヒムブツ、コーヒー、ゴマ、コメ、コムギ、コンニャクイモ、ザクロ、サフラン、サンザシ、サンシチニンジン、シソ、シタン、ジャスミン、シラカンバ、ショウガ、スギナ、ステビア、スピルリナ、セイヨウオトギリソウ、セイヨウサンザシ、セイヨウスモモ(プルーン)、セイヨウタンポポ、セイヨウトチノキ(マロニエ)、ソバ、ダイズ、ダイダイ、タイム、タマリンド、タマネギ、タラ、チェストツリー、チャ(茶)、チョウセンアザミ、ツバキ、ツボクサ、テンチャ、トウガラシ、ドクダミ、トチュウ(杜仲)、トマト、ニンジン、ナツメヤシ、ニンニク、ノコギリヤシ、パウ・ダルコ、ハス、パセリ、ハトムギ、パプリカ、バラ、ヒバマタ、ビルベリー、ビワ、フキタンポポ、ブドウ、ブラックコホシュ、ブルーベリー、プロポリス、ベニバナ、ホウレンソウ、ボルド、マカ、マカデミアナッツ、マコモ、マツ、マテ、マリーゴールド、ミカン、メグスリノキ、メマツヨイグサ、メリッサ(レモンバーム)、メリロート、モロヘイヤ、ユッカ、ヨモギ、ラフマ、ラベンダー、リンゴ、ライチ、レモン、ローズマリー、ワルテリアインディカ、コケ植物、シダ植物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0021】
藻類は水中の酸素発生型光合成生物の全てがその対象になる。藻類の例としては、藍藻、原核緑色藻、灰色藻、紅藻、プラシノ藻、アオサ藻、緑藻、トレボキシア藻、シャジクモ藻、クリプト藻、クロララクニオン藻、ユーグレナ藻、渦鞭毛藻、黄金色藻、ラフィド藻、真眼点藻、黄緑色藻、褐藻、珪藻、ディクティオカ藻、ペラゴ藻、ハプト藻等が挙げられる。この中でも特に、緑藻綱に分類されるヘマトコッカス藻、褐藻綱に分類されるモズク、コンブ、ワカメ等は重要な原料である。
【0022】
菌糸類、酵母類、菌類は種々のものがある。これらの例としては、アガリクス、イースト、シイタケ、シャンピニオン、トウチュウカソウ、ナットウ、ビフィズス菌、ベニコウジ、シロキクラゲ、マイタケ、マッシュルーム、メシマコブ、ヤマブシタケ、レイシ等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0023】
これらの天然原料から抽出される成分としては多種多様なものがある。代表的なものとしては動植物に含まれる脂質成分がある。脂質成分としては、脂肪酸類、グリセリド類、複合脂質類、テルペノイド類、ステロイド類、プロスタグランジン類などがある。
脂質成分の中で有効成分の例としては、リノール酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、γ−アミノ酪酸、チオクト酸等が挙げられる。グリセリド類としては、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロールがある。複合脂質類としては、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール等のリン脂質、スフィンゴシン、スフィンゴミエリンなどのスフィンゴ脂質、モノガラクトシルグリセリド、グルコシルセラミド等の糖脂質が挙げられる。
【0024】
テルペノイド類の有効成分としては、リナロール、シトロネラール、ミルセン、リモネン、ピネン、メントール、シネオール、ショウノウ、ロンジホリン、セドロール、カリオフィレン等のモノテルペン、フィトール、アビエチン酸、カウレン、ジベレリン等のジテルペノイド、スクアレン、ダマレンジオール、ウルソル酸等のトリテルペノイド、カロテノイド色素に代表されるテトラテルペノイド、グッタペルカ、ビタミンK2、ユビキノン、ビタミンK1等のポリテルペノイドがある。これらの中で、カロテノイド色素は抗酸化力で特に注目される素材であり、カロテノイドの代表的なものとしては、アスタキサンチン、リコペン、ゼアキサンチン、ルテイン、カプサンチン、フコキサンチン、α-カロテン、β−カロテン等がある。
【0025】
ステロイド類の有効成分としては、スクアレン、コレステロール、エルゴステロール、スチグマステロール、でヒドロコレステロール、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、25-ヒドロキシビタミンD3等のステロール類、テストステロン、アンドロステロン、プロゲステロン、エストロン、エストラジオール等の性ホルモン類、コルチゾン、デキサメタゾン等の副腎皮質ホルモン類、ジキトキシゲニン、ジコキシゲニン、ギトキシゲニン等の強心配糖体類、ジオスゲニン、コルチゾン等のステロイドサポゲニン類、コール酸、デオキシコール酸等の胆汁酸類が挙げられる。
【0026】
脂質成分以外の有効成分として重要なものの一つがポリフェノールである。ポリフェノールとは、同一分子内に複数のフェノール性水酸基を持つ植物成分の総称で、光合成によってできた植物の色素や苦み成分を構成し、特に抗酸化力に優れたものである。ポリフェノールには、フラボノイド類、クロロゲン酸類、没食子酸類、エラグ酸系、リグナン類、クルクミン類、クマリン類に分類される。フラボノイド類には、ゲニスチン、ダイゼン等を含むイソフラボン、ケルセチン、ケンフェロール、ミリセチン、ルチン等を含むフラボノール、ヘスペリジン、ナリンギン等を含むフラバノン、シアニジン、デルフィニジンを含むアントシアニン、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、テアフラビン等を含むフラバノール、クリシン、アピゲニン、ルテオリン等を含むフラボンがある。ポリフェノールの中には、健康食品、美容成分として注目されている素材も多く、ガランジン、フィセチン、カルコン、プエラリン、レスベラトロール等が挙げられる。
【0027】
その他の有効成分として、特に医薬分野で有用な成分としてアルカロイド類が挙げられる。アルカロイド類としては、アコニチン、アトロピン、エフェドリン、カフェイン、カプサイシン、キニーネ、クラーレ、コカイン、コルヒチン、スコポラミン、ストリキニーネ、ソラニン、タキシン、テオフィリン、ドーパミン、ニコチン、ビンカ、ベルベリン、モルヒネ、リコリン等が挙げられる。
【0028】
また、その他の有効成分として、生姜から抽出されるショウガオール、ジンゲロール、ワサビや芥子の成分であるアリルイソチオシアネート、ニンニク等の成分であるアリシン、アリイン、スコルジン等が挙げられる。
【0029】
本発明に用いられる水溶性有機溶媒とは、水に対する25℃での溶解度が10質量%以上の有機溶媒を指す。水に対する溶解度は、乳化物または分散物の安定性の観点から30質量%以上が好ましく、50質量%が更に好ましい。
【0030】
水溶性有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メチル、アセト酢酸メチル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルフォキシド、エチレングリコール、1,3ブタンジオール、1,4ブタンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等及びそれらの混合物を挙げられる。これらの中でも、食品への用途に限定した場合、エタノール、プロピレングリコール、アセトンが好ましく、また化粧品用に限定した場合、エタノール、2-プロパノールが好ましく、エタノールが特に好ましい。
【0031】
水溶性有機溶媒は、抽出の際には単独で用いてもよく、複数の水溶性有機溶媒の混合溶媒でもよい。また、水との混合物として用いてもよい。水との混合物を用いる場合には、上記水溶性有機溶媒は、少なくとも50容量%以上含まれていることが好ましく、70容量%以上であることがより好ましい。
上記動植物原料から水溶性有機溶媒を用いて有効成分を抽出する方法は、従来法を用いて行うことができる。このような方法では、一般に、微粉砕した固体原料を使用し、例えば0℃〜300℃の温度で抽出を行う。
【0032】
本発明における水溶性有機溶媒溶液(油相)は、界面活性剤を実質的に含まない。即ち、油相全体の質量に対して0.1質量%以下とするものであり、得られる乳化物または分散物における粒子の安定性の観点からより好ましくは、0.01質量%以下である。
【0033】
油相中に界面活性剤を含有させることは、撹拌乳化や高圧乳化法等、粗大油滴を分裂させる乳化方法において、普通に行われている。これは、液滴が大きく変形した際にできた新しい界面にできるだけ速く界面活性剤を配向させることで界面張力を低下させ、微細な滴への分裂へと導く必要があるからである。そのためには、拡散距離が短くて済む油相からの界面活性剤の供給が圧倒的に有利だからである。微細な油滴に分裂させるためには、界面活性剤の拡散を極めて高速に行う必要があり、界面活性剤濃度勾配を大きくとる必要がある。このため、できた液滴に吸着する以上の過剰な界面活性剤が必要になり、この過剰な界面活性剤はオストワルド成長等の機構により乳化後の安定性をかえって悪くする。また、食品や化粧品にこの乳化物を用いた場合、味の悪さや皮膚刺激性等を引き起こす原因となり得る。
【0034】
これに対し本発明においては、油相成分が、一度エタノール等に完全に溶けた状態から所定の条件で貧溶媒に接することで凝縮して粒子を形成するため、界面活性剤を用いて微細な粒子を形成する必要がない。しかも、動植物から抽出された疎水性機能成分はそれ自身で水相中にある程度配向する等の理由により、できた微粒子を安定に保つことができる。この結果、乳化後の粒子の安定性等に不利になり得る界面活性剤を実質的に油相中に含有する必要性を排除することができる。乳化物または分散物の安定化を向上させるために界面活性剤が必要な場合、水相中に界面吸着に見合う分だけ添加しておけば十分である。
【0035】
油相には、疎水性添加剤が水相中に微細分散されたときの構造変化を防ぐために天然の協働添加剤を含めてもよい。このような協働添加剤としては、スフィンゴ脂質類、コレステロール類、リン脂質類から選ばれる脂質を挙げることができる。
スフィンゴ脂質類とは、長鎖塩基成分としてスフィンゴイド類を含む複合脂質であり、いわゆるセラミドと呼ばれるスフィンゴ脂質、フィトスフィンゴ脂質の他に、スフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリン、スフィンゴエタノールアミンなど)、スフィンゴ糖脂質(セレブロシド、ガングリオシドなど)、セラミドの前駆体であるスフィンゴシンやフィトスフィンゴシン等がある。また、スフィンゴイドの代わりにグリセロールを含むグリセロ脂質もこの範疇に含まれる。
【0036】
リン脂質類としては、グリセロリン脂質およびグリセロリン脂質の1位または2位に結合した脂肪酸の一方が失われたリゾリン脂質を含む。リン脂質リン酸部に結合している化合物の種類によって種々のリン脂質が存在し、ホスフォファチジルコリン、ホスフォファチジルエタノールアミン、ホスフォファチジルイノシトール、ホスフォファチジルセリン、ホスフォファチジン酸、ホスフォファチジルグリセロール等が挙げられる。これらのリン脂質は、通常、動植物から抽出されたレシチンの形で供給されるが、これらの高純度レシチン以外にも、水素添加レシチン、酵素分解レシチン、酵素分解水素添加レシチン、ヒドロキシレシチン等も使用することができる。
ステロール類としては、コレステロール、フィトステロール(βシトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロールなど)、コレステノン、フィトステノン、コレステロールエステル、フィトステロールエステル、コレステロール配糖体、フィトステロール配糖体等を挙げることができる。
【0037】
本発明の油相に添加する脂質としては上記のものはいずれも使用できるが、乳化分散状態の安定性の観点からスフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質、フィトスフィンゴシンは特に好ましい。本発明で用いることができるこれらの脂質は、単独又は複数種の混合物の形態で用いることができる。
これらの脂質としては、乳化物または分散物の安定性の観点から油相全体の質量に対して0.1質量%〜30質量%で含むことができ、より好ましくは1質量%〜10質量%で含むことができる。
【0038】
本発明の水相すなわち水性溶液は水を主成分とする水溶液である。
この水相中には下記に示すような非イオン界面活性剤、イオン性界面活性剤、水溶性の塩類、糖類、多糖類、タンパク質、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、色素、香料等を含むことができる。
【0039】
イオン性界面活性剤の例としては、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、モノアルキルリン酸塩、脂肪酸塩、レシチン等が挙げられる。塩類としては、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム等が用いられる。糖類としては、グルコース、フルクトース、スクロース、アラビノース、セロビオース、ラクトース、マルトース、トレハロース等が挙げられる。また、多糖類としては、マルトデキストリン、オリゴ糖、イヌリン、アラビアガム、キトサン等がある。タンパク質としては、各種アミノ酸類、オリゴペプチド、ゼラチン、水溶性コラーゲン、カゼイン、シクロデキストリン等が挙げられる。
【0040】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム等の塩基、塩酸等の酸、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液等の緩衝液を用いることができる。酸化防止剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、クエン酸モノグリセリド等がある。
【0041】
水相全体の質量に対するこれらの添加剤の添加量は、20質量%以下、好ましくは10質量%以下とすることができる。また、必要に応じて水相中にあらかじめ少量の水溶性有機溶媒を添加しておくこともできる。この場合の水溶性有機溶媒の添加量は乳化物及び分散物の安定性の観点から20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。
【0042】
また水相中に、分散性向上のためHLB10以上でHLB16以下の非イオン性界面活性剤(単に、非イオン性界面活性剤ともいう)を含有することができる。
本発明で使用できる非イオン性界面活性剤は、分散安定化の観点から、水溶性非イオン性界面活性剤であることが好ましい。水溶性非イオン性界面活性剤としては、水に溶解する非イオン性界面活性剤であれば特に限定は無い。
前記非イオン性界面活性剤は、前述の通り、HLB10以上でHLB16以下とする必要があるが、乳化物または分散物の安定性の観点から好ましくは12以上16以下である。
【0043】
ここで、HLBとは、通常界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスであり、通常用いる計算式として、例えば川上式等が使用できる。
本発明においては、下記川上式を採用する。
HLB=7+11.7log(Mw/Mo)
ここで、Mwは親水基の分子量、Moは疎水基の分子量である。
また、メーカーが公表しているカタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の非イオン性界面活性剤を得ることができる。
【0044】
本発明で好適に使用できる非イオン性界面活性剤の例としては、(モノ、ジ、トリ)グリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン有機酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、などが挙げられる。上記の中でも、分散物の安定性向上の観点から、より好ましくは、ポリグリセリン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステルである。これらの非イオン性界面活性剤をそれぞれ単独または、それらの2種以上を任意の割合で併用する事もできる。また、上記の非イオン性界面活性剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。
【0045】
本発明に用いられる、ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が4以上、好ましくは6〜10のポリグリセリンと、炭素数8〜18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、およびリノール酸とのエステルである。ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL Hexaglyn 1−L,NIKKOL Hexaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−L,NIKKOL Decaglyn 1−M,NIKKOL Decaglyn 1−SV,NIKKOL Decaglyn 1−50SV,NIKKOL Decaglyn 1−ISV,NIKKOL Decaglyn 1−O,NIKKOL Decaglyn 1−OV,NIKKOL Decaglyn 1−LN,三菱化学フーズ(株)社製リョートーポリグリエステル L−10D、L−7D、M−10D、M−7D、P−8D、S−28D、S−24D、SWA−20D、SWA−15D、SWA−10D、O−15D、理研ビタミン(株)社製ポエムJ−0381V、ポエムJ−0021Vなどが挙げられる。
【0046】
本発明に用いられる、ショ糖脂肪酸エステルは、脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12〜20のものがより好ましい。
ショ糖脂肪酸エステルの好ましい例としては、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられる。
本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。市販品としては、例えば、三菱化学フーズ(株)社製リョートーシュガーエステルS−1170、S−1170S、S−1570、S−1670、P−1570、P−1670、M−1695、O−1570、OWA−1570、L−1695、LWA−1570、第一工業製薬(株)社製の、DKエステルF140、DKエステルF160、DKエステルSS等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
これら非イオン性界面活性剤の添加量は、分散物全質量に対して、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%、更に好ましくは0.1〜2質量%である。また、疎水性機能成分に対しては、好ましくは0.1〜100質量%、より好ましくは1〜10質量%である。
水相中に非イオン性界面活性剤の添加量を0.1質量%以上とすることにより分散物の安定性が向上する点で好ましい。また、2質量%以下とすることにより、分散物の泡立ちが激しくなる等の問題点を生じ難くなる点でも好ましい。
【0048】
(ジェット注入法)
本発明の製造方法では、上記油相を、水相との接触する直前のレイノルズ数を1000以上として、水相中に注入することを含む。
顔料や染料等とは別な機構でナノ粒子化するために、本発明者は鋭意研究した結果、上記各成分で構成された油相を、水相中にレイノルズ数が1000以上の条件下でジェット状に注入することによって、疎水性機能成分が結晶化しない場合でもナノ粒子化可能で、微細な乳化物または分散物が得られることが明らかになった。
更に、食品、化粧品、医薬品で機能性素材を通常の分散方法でナノ化する際に多量に用いられる界面活性剤を、本発明では、上記のような条件で水相中に油相を注入することによって、含有しないか、または大幅に減量することが可能となり、大きなメリットとなることが分かった。
本明細書において、このような注入法を「ジェット注入法」という。
【0049】
本発明で言うレイノルズ数Reは、油相を注入する管またはノズルの内径をD、油相の断面平均速度をU、油相の密度をρ、油相の粘度をμとすると、下記式で表される無次元数で表される。
Re= DUρ/μ
油相を水相中に注入する管の断面形状が円でない場合には、水力相当直径DeqがDの代わりに用いられる。水力相当直径Deqは流れの断面積Aと濡れ縁長さLから次の式で与えられる。
Deq= 4A/L
【0050】
本発明における油相が水相に接する瞬間における油相のレイノルズ数は1000以上であり、微細子化の観点から1500以上が更に好ましく、2000〜10000が特に好ましい。1000以下の場合には、乳化粒子または分散粒子の微粒子化が充分でなく、本発明の効果を達成できない。一方、10000を超えると、例えば油相を送液するためのポンプが高圧仕様となるため、設備コストと電力消費上現実的ではない。
【0051】
油相の添加流量は送液の安定性の観点から0.1〜500ml/minが好ましく、1〜400ml/minがより好ましく、2〜300ml/minが特に好ましい。
また、添加流量を添加口の断面積で割った値、即ち、添加線速度は200〜2000m/minの範囲が分散粒子径の微細化とポンプの運転コストの観点から好ましく、300〜1500m/minの範囲が特に好ましい。
【0052】
ジェット注入時には、水溶性溶媒を攪拌しながら行うことが好ましい。このとき、水性溶媒撹拌槽の温度は0℃〜100℃であることが好ましく、5℃〜60℃であることが特に好ましい。疎水性機能成分溶液の液供給口の数は、1個でも複数個でもよいが1〜5個が好ましい。このように複数個の供給口を設けることで複数種の疎水性機能成分からなる微細乳化物または分散物も製造することができる。
【0053】
本発明のジェット注入法においては、撹拌槽内に疎水性機能成分溶液を送液する際に、ポンプを用いることができるが、用いなくてもよい。ポンプを用いない場合の添加方法は、重力落下などがある。
【0054】
ポンプを用いる場合、送液ポンプの種類としては、プランジャー、ダイアフラム、ギア、ペリスタリック、モーノ等の市販ポンプを用いることができるが、脈動の小ささと耐圧性の観点から、プランジャーポンプが好ましい。
【0055】
本発明のジェット注入において、疎水性機能成分溶液の液供給口は単なる円筒状のチューブでもよいし、ノズル状やオリフィス状になっていてもよい。供給口の形状断面は円が好ましいが、楕円でも矩形でも三角形でも良い。供給口の材質は各種金属、樹脂類、セラミック類等いずれのものも使用できるが、ステンレス製、セラミック製等の摩耗に強い素材が好ましい。
撹拌槽の撹拌速度は攪拌機の周速において、10〜1500m/分が好ましく、20〜1300m/分がより好ましく、50〜1000m/分が特に好ましい。また撹拌槽内の相対向する2箇所に離間して配置した一対の撹拌羽根により撹拌を行う場合には、各撹拌羽根の撹拌速度は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0056】
本発明のジェット注入法は、バッチ方式でも、連続フロー方式でも微細乳化物や分散物の製造をすることができる。連続フロー方式は大量生産に有利であり好ましい。
本発明のジェット注入法は、疎水性機能成分溶液の液供給口は水性溶液中に浸せきされた状態で注入する、すなわち液中ジェット状態で実施するのが好ましいが。水性溶液表面近傍の空間中で疎水性機能成分溶液を噴出させることもできる。
【0057】
本発明で用いた水溶性有機溶媒は、ジェット注入法で乳化または分散後、除去する事が好ましい。溶媒を除去する方法としては、ロータリーエバポレーター、フラッシュエバポレーター、超音波アトマイザー等を用いた蒸発法、限外濾過膜、逆浸透膜等の膜分離法が知られているが、分離効率および分散物の品質劣化の観点から限外濾過膜法およびフラッシュエバポレーター法が特に好ましい。
【0058】
限外濾過(Ultra Filter:略してUF)とは、原液(水、高分子物質、低分子物質、コロイド物質等の混合水溶液)を加圧し、UF装置に注水することにより、原液を透過液(低分子物質)と濃縮液(高分子物質、コロイド物質)2系統の溶液に分離し、取り出す事ができる装置である。
【0059】
限外濾過膜はロブ−スリーラーヤン法により作成される典型的な非対称膜である。使用される高分子素材は、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル−ポリアクリロニトリル共重合体、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、フッ化ビニリデン、芳香族ポリアミド、酢酸セルロースなどである。最近ではセラミックス膜も使われるようになってきた。限外濾過法では逆浸透法等と異なり、前処理をおこなわないので、膜面に高分子などが堆積するファウリングがおこる。そのため膜を薬品や温水で定期的に洗浄するのが普通である。このため膜素材は薬品に対する耐性や耐熱性が求められる。限外濾過膜の膜モジュールは平膜型、管状型、中空糸型、スパイラル型と各種ある。限外濾過膜の性能指標は分画分子量であり、これが1,000〜300,000まで各種の膜が市販されている。市販の膜モジュールとしては、マイクローザーUF(旭化成ケミカルズ(株))、キャピラリー型エレメントNTU−3306(日東電工(株))等があるがこれに限定されるものではない。
【0060】
本発明の疎水性機能成分エマルションからの溶媒除去には、膜の材質は溶媒耐性の観点から、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、芳香族ポリアミドが特に好ましい。膜モジュールの形態としては、実験室スケールでは平膜が主に用いられるが工業的には中空糸型、スパイラル型が用いられるが、中空糸型が特に好ましい。また、分画分子量は有効成分の種類によって異なるが、通常、5,000〜100,000の範囲のものが用いられる。
操作温度は0℃〜80℃まで可能であるが、有効成分の劣化を考慮すると10〜40℃の範囲が特に好ましい。
【0061】
ラボスケールの限外濾過装置としては、平膜型モジュールを用いる、ADVANTEC−UHP(アドバンテック(株))、フロータイプラボテストユニットRUM−2(日東電工(株))等がある。工業的にはそれぞれの膜モジュールを必要能力に応じた大きさと本数を任意に組み合わせてプラントを構成することができる。ベンチスケールのユニットとしては、RUW−5A(日東電工(株))等が市販されている。
【0062】
溶媒除去に引き続き、濃縮化することが好ましい。濃縮方法としては、蒸発法、濾過膜法等溶媒除去と同じ方法、装置を用いることができる。濃縮の場合も限外濾過膜法が好ましい方法である。溶媒除去と同一膜を使うことができれば好ましいが、必要に応じて、分画分子量の異なる限外濾過膜を使用することもできる。また、溶媒除去とは異なる温度で運転し、濃縮効率を高めることも可能である。
【0063】
本発明に用いられるフラッシュエバポレーターは、薄膜真空蒸発装置の一種であり、例えば、濃縮すべき分散物を入れる液溜め、蒸発を行うための撹拌羽根とヒーターを備えたスピニングカラム、蒸発した溶媒を冷却して液体に戻すための冷却器、液体に戻った溶媒を受けるための溶媒溜め、溶媒が除去された溶液を受ける残渣溜めからなるものを使用することができる。濃縮したい分散液を液溜めからスピニングカラムへ少しずつ導入する。スピニングカラム内の撹拌羽根を回転させることによっては壁面に液を押し付けて薄い液膜を形成させ、壁面をヒーターで加熱して溶媒を蒸発させる。この液の薄膜化によって蒸発の効率を高めている。これらのフラッシュエバポレーターとしては、薄膜式エバポレータ F−70型(東京理化器械(株))、薄膜式エバポレータF−200型(同)、薄膜式エバポレータ MF−10A型(同)、フラッシュエバポ(大川原製作所(株))等があるがこれらに限定されるものではない。
また、撹拌羽根の代わりに遠心力を用いた、遠心式薄膜真空蒸発装置は特に濃縮効率に優れている。この例としては、エバポール(大川原製作所(株))等が挙げられる。
【0064】
本発明により得られた乳化物は水中油滴型エマルションであり、その油滴(乳化粒子)の体積平均粒径(メジアン径)は、得られた乳化物の透明性の観点から、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは1nm〜100nm、更に好ましくは1nm〜50nmである
また、本発明の製造方法によって得られた分散物は、水性固体分散物であり、その中の疎水性固体微粒子(分散粒子)の体積平均粒径(メジアン径)は、得られた分散物の透明性の観点から、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは1〜100nm、更に好ましくは1〜50nmである。
【0065】
本発明の乳化粒子または分散粒子の粒径は市販の粒度分布計等で計測することができる。エマルションの粒度分布測定法としては、光学顕微鏡法、共焦点レーザー顕微鏡法、電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、静的光散乱法、レーザー回折法、動的光散乱法、遠心沈降法、電気パルス計測法、クロマトグラフィー法、超音波減衰法等が知られており、それぞれの原理に対応した装置が市販されている。
【0066】
本発明における粒径範囲および測定の容易さから、本発明のエマルション粒径測定では動的光散乱法が好ましい。動的光散乱を用いた市販の測定装置としては、ナノトラックUPA(日機装(株))、動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550((株)堀場製作所)、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子(株))等が挙げられるが、本発明における粒径は、日機装社製ナノトラックUPA-EX150を用いて25℃で測定し、粒径、単分散度を評価した。粒径は体積平均粒径Mvで評価した。単分散度は体積平均粒径Mvを数平均粒径Mnで除した値(Mv/Mn)で評価した。
【0067】
本発明により得られた乳化物または分散物は、疎水性機能成分の品質劣化が著しく低い微細な乳化物または分散物である。このため、疎水性機能成分の種類に応じた種々の用途に好ましく用いられる。
このような用途としては、例えば食品、皮膚外用剤及び医薬品を挙げることができる。
即ち、本発明にかかる食品は、上述した疎水性機能成分が機能性食品成分のものである。ここで機能性食品成分としては、上述した天然成分のうち食品用途で使用可能なものであればよく、特に、テルペノイド類、ポリフェノール類等を挙げることができるが、これらに限定されない。
また本発明にかかる皮膚外用剤は、上述した疎水性機能成分が皮膚外用剤成分であるものである。ここで皮膚外用剤成分としては、上述した疎水性機能成分のうち皮膚外用用途で使用可能なものであればよく、特に脂肪酸類、複合脂質類、テルペノイド類等を挙げることができるが、これらに限定されない。
本発明にかかる医薬品は、上述した疎水性機能成分が医薬成分であるものである。ここで医薬成分としては、上述した疎水性機能成分のうち医薬用途で使用可能なものであればよく、特に、アルカロイド類、ステロイド類等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0068】
以下に実施例で本発明を更に具体的に説明する。なお、以下の記載で「部」と「%}表示してあるものは、特にことわらない限り質量基準である。
【0069】
<実施例1>
(エマルションAの調製)
水相Aとして、下記成分を60℃にて1時間溶解後、25℃まで冷却した。
・ショ糖オレイン酸エステル 0.2g
・モノオレイン酸デカグリセリル 0.2g
・精製水 300g
また、下記成分を、40℃にて1時間溶解した後25℃まで冷却し、油相Aを得た。
・ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチン類含有率20質量%) 0.5g
・ミックストコフェロール 0.1g
・エタノール 68g
【0070】
ここで、ショ糖オレイン酸エステルは三菱化学フーズ(株)製リョートーシュガーエステルS−1670(HLB=15)、モノオレイン酸デカグリセリルは日光ケミカルズ(株)製NIKKOL Decaglyn 1−O(HLB=12)を使用した。ヘマトコッカス藻抽出物は、武田紙器(株)製ASTOTS−Sを使用した。ミックストコフェロールは理研ビタミン(株)製の理研Eオイル800を使用した。エタノールは和光純薬試薬特級を使用した。精製水はDirect−Q(日本ミリポア製)を用いてつくった超純水を用いた。
【0071】
水相Aをマグネチックスターラーにて500rpmで撹拌しながら、プランジャーポンプを用い、0.5mmφのステンレスチューブを通して油相Aを80ml/minの添加速度で水相A中に液中ジェット注入を行った。ここで、25℃において油相の密度及び動粘度を測定したところ、油相の密度はピクノメーターによる測定で785(kg/m)であり、油相の動粘度はブルックフィールドE型粘度計による測定で1.183g/m・secであったことから、レイノルズ数を求めたところ、このジェット注入条件は、油相のレイノルズ数(油相Re)2254であった。なお、注入口は水相Aの液面から、2cm下に設定した。36秒間連続的に添加した後、ポンプを停止すると同時に添加口を液面から外した。
続いて、得られたエマルションを採取し、アスタキサンチン含有エマルションAとした。エマルションAの油滴粒径は、ナノトラックUPA(日機装(株))で測定したところ、メジアン径で120nmであった。
【0072】
(エマルションBの調製)
エマルションAにおける、水相を以下のように変更した以外はエマルションAと同様に作製し、エマルションBとした。
水相B
・精製水 300g
エマルションBの油滴粒径を同様に測定したところ、135nmであった。
【0073】
(エマルションCの調製)
エマルションAにおける、水相、油相を以下のように変更した以外はエマルションAと同様に作製しエマルションCとした。
水相C
・精製水 300g
油相C
・ヘマトコッカス藻抽出物(アスタキサンチン類含有率20質量%) 0.5g
・ミックストコフェロール 0.1g
・ショ糖オレイン酸エステル 0.3g
・モノオレイン酸デカグリセリル 0.3g
・エタノール 68g
エマルションCの油滴粒径を同様に測定したところ、155nmであった。
また本ジェット注入のレイノルズ数を同様に求めたところ、2078であった。
【0074】
(エマルションDの調製)
油相Aと水相Aと同一組成の液をそれぞれ用い、油相の添加速度を160ml/minとし、添加時間を18秒に変更した以外は、エマルションAと同様にエマルションDを作製した。
エマルションDの油滴粒径を同様に測定したところ、57nmであった。
また本ジェット注入のレイノルズ数を同様に求めたところ、4507であった。
【0075】
(エマルションEの調製)
油相Aと水相Aと同一組成の液をそれぞれ用い、油相の添加速度を240ml/min.とし、添加時間を12秒に変更した以外は、エマルションAと同様にエマルションEを作製した。
エマルションEの油滴粒径を同様に測定したところ、25nmであった。
また本ジェット注入のレイノルズ数を同様に求めたところ、6761であった。
【0076】
(エマルションFの調製)
油相Aと水相Aと同一組成の液をそれぞれ用い、油相の添加速度を40ml/min.とし、添加時間を72秒に変更した以外は、エマルションAと同様にエマルションFを作製した。
エマルションFの油滴粒径を同様に測定したところ、187nmであった。
また本ジェット注入のレイノルズ数を同様に求めたところ、1126であった。
【0077】
(エマルションGの調製)
油相Aと水相Aと同一組成の液をそれぞれ用い、油相の添加速度を30ml/min.とし、添加時間を96秒に変更した以外は、エマルションAと同様にエマルションGを作製した。
エマルションGの油滴粒径を同様に測定したところ、356nmであった。
また本ジェット注入のレイノルズ数を同様に求めたところ、4507であった。
【0078】
(エマルションHの調製)
油相Aと水相Aと同一組成の液をそれぞれ用い、ポンプ、添加チューブを用いないで油相を水相中に添加した後、高圧乳化装置であるスターバーストミニ((株)スギノマシン製)を用いて、200MPaの圧力で3パス処理し、エマルションHを作製した。
エマルションHの油滴粒径を同様に測定したところ、396nmであった。
【0079】
上記エマルションA〜Hについて、ラボスケール限外濾過装置、ADVANTEC−UHP−43K型を用い、限外濾過膜としては、ポリスルホン製Q0500043E(50000Da)を用いて、エタノールを0.1%含有量まで除去し、更に同装置で濃縮操作を行い、アスタキサンチン濃度1.0%になるまで濃縮化し、濃縮エマルションA〜Hを作製した。
【0080】
濃縮エマルションA〜Hについて、50℃で28日間保存し、油滴粒径変化および色素残存率を測定した。油滴粒径変化は保存経時前の粒径測定と同様にナノトラックUPA(日機装(株))で25℃にて測定した。また、色素残存率は保存後のエマルションと保存前のエマルションについてそれぞれ、純水で3000倍に希釈した液を分光光度計にて吸光度を測定し、保存後の478nm吸光度と保存前の478nm吸光度の比より求めた。
【0081】
上記、50℃28日保存前後の油滴粒径、色素残存率の結果を表1にまとめた。
本発明に従い、油相中に界面活性剤が存在せず、ジェット注入時のレイノルズ数が1000以上であればあるほど粒径が小さく、エマルションの透明性も高い事が明らかになった。また、50℃保存経時での粒径の変化、色素残存率においても、本発明の従ったものは良好であった。これに比べ、油相に界面活性剤を含むエマルションCおよび、高圧乳化により調製したエマルションHでは、保存経時での粒径変化が大きく、色素残存率も良くない結果であった。
【0082】
<実施例2>
(分散物2Aの作製)
水相2Aとしては300gの精製水を用いた。
油相2Aとして、下記の組成のセラミド溶液を、60℃で1時間溶解した後25℃に冷却することで調製した。
・セラミドII 0.3g
・セラミドIIIB 0.7g
・セラミドVI 0.4g
・フィトスフィンゴシン塩酸塩 0.7g
・エタノール 68g
【0083】
ここで、セラミドIIは高砂香料(株)製、セラミドIIIB、セラミドVIおよびフィトスフィンゴシン塩酸塩はいずれもデグサ社製ものを使用した。また、エタノールは和光純薬試薬特級を使用した。
実施例1のエマルションAにおける添加チューブの径0.5mmφから1.0mmφとし、油相の添加速度を160ml/minに変更した以外はエマルションAと同じ方法で、セラミドの分散物2A作製した。得られた分散物を採取し、分散粒子粒径は、ナノトラックUPA(日機装(株))で測定したところ、体積平均径で28nmであった。
また本ジェット注入のレイノルズ数を実施例1と同様に求めたところ、1928であった。
【0084】
(分散物2Bの作製)
油相組成を下記組成に変えた以外は、分散物2Aと同様に、分散物2Bを作製した。
・セラミドII 0.3g
・セラミドIIIB 0.7g
・セラミドVI 0.4g
・フィトスフィンゴシン塩酸塩 0.7g
・ショ糖オレイン酸エステル 0.3g
・モノオレイン酸デカグリセリル 0.3g
・エタノール 68g
分散物2Bの平均粒子径は、36nmであった。
また本ジェット注入のレイノルズ数を同様に求めたところ、1684であった。
【0085】
(分散物2Cの作製)
油相、水相の組成は分散物2Aと全く同じで、ポンプ、添加チューブを用いないで油相を水相中に添加した後、高圧乳化装置であるスターバーストミニ((株)スギノマシン製)を用いて、200MPaの圧力で5パス処理し、分散物2Cを作製した。
分散直後から固形分が分離してきたため、粒径測定は不能であった。
【0086】
(分散物2Dの作製)
油相、水相の組成は分散物2Aと全く同じだが、油相を320ml/min.の添加速度で水相中に液中ジェット注入を行った以外は、分散物2Aと同様に作製した。
分散物2Dの平均粒子径は、24nmであった。
また本ジェット注入のレイノルズ数を同様に求めたところ、3856であった。
【0087】
(分散物2Eの作製)
油相、水相の組成は分散物2Aと全く同じだが、油相を120ml/min.の添加速度で水相中に液中ジェット注入を行った以外は、分散物2Aと同様に作製した。
分散物2Eの平均粒子径は、44nmであった。
また本ジェット注入のレイノルズ数を同様に求めたところ、1446であった。
【0088】
(分散物2Fの作製)
油相、水相の組成は分散物2Aと全く同じだが、油相を80ml/min.の添加速度で水相中に液中ジェット注入を行った以外は、分散物2Aと同様に作製した。
分散物2Fの平均粒子径は、265nmであった。
また本ジェット注入のレイノルズ数を同様に求めたところ、962であった。
【0089】
(分散物2Gの作製)
油相、水相の組成は分散物2Aと全く同じだが、油相を注入するステンレスチューブ径を0.5mmφに交換し、油相を320ml/min.の添加速度で水相中に液中ジェット注入を行った以外は、分散物2Aと同様に作製した。
分散物2Gの平均粒子径は、15nmであった。
また本ジェット注入のレイノルズ数を同様に求めたところ、7712であった。
【0090】
(分散物2Hの作製)
分散物2Aの油相に対して、フィトステノン(東洋発酵製ユニフェス)0.2gを添加した以外は分散物2Aと同様に作製した。
また本ジェット注入のレイノルズ数を同様に求めたところ、1928であった。
【0091】
上記セラミド分散物2A〜2Hについて、実施例1と同様の装置、条件にて限外濾過を行い、エタノールの除去ならびに1%までの濃縮化を行った。
こうして得られた濃厚セラミド分散物2A〜2Hについて、50℃で28日間保存し、分散物の状態観察、粒径測定を行い、この結果を表2に示した。
高圧分散である2Cはうまく分散できず、また油相に界面活性剤を含む2Bでは分散可能であったが、経時で析出が現れ、不安定であった。これに対し本発明サンプルは、液の透明性を保持して安定であった。特にレイノルズ数が高いほど粒径が細かく、安定であることが明らかになった。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性有機溶媒と少なくとも一つの疎水性機能成分とを含有すると共に界面活性剤の含有量が油相全体の質量に対して0.1質量%以下である油相を、水相と接触する直前のレイノルズ数を1000以上として、水相中に注入することを含む乳化物または分散物の製造方法。
【請求項2】
前記乳化物または分散物の体積平均粒子径が1nm〜200nmの範囲にある請求項1記載の乳化物または分散物の製造方法。
【請求項3】
前記油相中に、スフィンゴ脂質類、リン脂質類およびステロール類から選ばれた少なくとも1つの脂質を含む請求項1または請求項2記載の乳化物または分散物の製造方法。
【請求項4】
前記水相中に少なくとも1種のHLB10〜16の非イオン性界面活性剤を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の乳化物または分散物の製造方法。
【請求項5】
前記注入後に、得られた乳化物または分散物から水溶性有機溶媒を除去することを含む請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の乳化物または分散物の製造方法。
【請求項6】
前記水溶性有機溶媒がエタノールである請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の乳化物または分散物の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の製造方法により製造された乳化物または分散物。
【請求項8】
前記疎水性機能成分が、機能性食品成分である請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の乳化物または分散物の製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の製造方法により製造された乳化物または分散物を含む食品。
【請求項10】
前記疎水性機能成分が、皮膚外用剤成分である請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の乳化物または分散物の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の製造方法により製造された乳化物または分散物を含む皮膚外用剤。
【請求項12】
前記疎水性機能成分が、医薬成分である請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の乳化物または分散物の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の製造方法により製造された乳化物または分散物を含む医薬品。

【公開番号】特開2009−183809(P2009−183809A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23278(P2008−23278)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】