説明

乳癌の免疫療法および診断のための化合物ならびにそれらの使用のための方法

【課題】乳癌の処置および診断のための化合物および方法を提供する。
【解決手段】乳房腫瘍タンパク質の少なくとも一部を含むポリペプチド。このようなポリペプチドを含む、乳癌の免疫療法のためのワクチンおよび薬学的組成物、またはこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子。ポリペプチドを調製するためのポリヌクレオチド分子。より詳細には、乳房腫瘍組織で優先的に発現されるタンパク質の一部を少なくとも一部含むポリペプチド、およびそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子。ポリペプチドは、乳癌の処置のためのワクチンおよび薬学的組成物において使用され得る。さらに、そのようなポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、乳癌の免疫診断において使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般に、乳癌の処置および診断のための組成物および方法に関する。本発明は、より詳細には、乳房腫瘍組織で優先的に発現されるタンパク質の一部を少なくとも一部含むポリペプチド、およびそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子に関する。そのようなポリペプチドは、乳癌の処置のためのワクチンおよび薬学的組成物において使用され得る。さらに、そのようなポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、乳癌の免疫診断において使用され得る。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
乳癌は、米国および世界中で、女性についての重大な健康問題である。その疾患の検出および処置において、進歩が成されてきたが、乳癌は、女性の癌関係の第二番目の死因のままであり、毎年、米国で180,000人を超える女性が罹患している。北米の女性に関して、生存中の乳癌に罹る可能性は、現在8人に1人である。
【0003】
現在のところ利用可能である、乳癌の予防または処置のためのワクチンまたは他の一般に優れた方法は存在しない。その疾患の対応は、現在のところ、早期の診断(慣用的な乳房のスクリーニング手順を通じて)および積極的な処置の組み合わせに依存し、その処置は、手術、放射線治療、化学療法、およびホルモン療法のような、1以上の種々の処置を含み得る。特定の乳癌の処置の過程は、しばしば、特異的な腫瘍マーカーの分析を含む、種々の予後のパラメーターに基づいて選択される。例えば、Porter−JordanおよびLippman、Breast Cancer 8:73−100(1994)を参照のこと。しかし、確立されたマーカーの使用は、しばしば、解釈が難しい結果を導き、そして乳癌患者において観察される高い死亡率は、その疾患の処置、診断、および予防において、改善が必要とされることを示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Porter−JordanおよびLippman、Breast Cancer 8:73−100(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、当該分野において、乳癌の治療および診断の改善された方法の必要性が存在する。本発明は、これらの必要性を満たし、さらに他の関係する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、乳癌の免疫治療のための化合物および方法を提供する。1つの局面において、単離されたポリペプチドを提供し、それは、乳房腫瘍タンパク質または保存的置換および/または改変においてのみ異なるそのタンパク質の改変体の少なくとも免疫原性部分を含む。ここで、乳房腫瘍タンパク質は、以下からなる群より選択される部分配列を有するポリヌクレオチド分子によりコードされるアミノ酸配列を含む;(a)配列番号3、10、17、24、45〜52、および55〜67,72,73、および89〜94に示されるヌクレオチド配列、(b)それらのヌクレオチド配列の相補体、および(c)中程度のストリンジェント条件下で、(a)または(b)の配列にハイブリダイズする配列。
【0007】
関連する局面において、上記のポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。特定の実施態様において、そのようなポリヌクレオチド分子は、配列番号3、10、17、24、45〜52、および55〜67,72,73、および89〜94に提供される部分配列を有する。本発明はさらに、上記のポリヌクレオチド分子を含む発現ベクター、およびそのような発現ベクターで形質転換した、またはトランスフェクトした宿主細胞を提供する。好ましい実施態様において、その宿主細胞は、E.coli、酵母、および哺乳動物細胞からなる群より選択される。
【0008】
別の局面において、本発明は、第一および第二の本発明のポリペプチドを含む融合タンパク質、あるいは、本発明のポリペプチドおよび公知の乳房抗原を含む融合タンパク質を提供する。
【0009】
本発明はまた、少なくとも1つの上記のポリペプチド、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子、および生理学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物を、少なくとも1以上のそのようなポリペプチドまたはポリヌクレオチド分子を非特異的な免疫応答エンハンサーと組み合わせて含むワクチンと共に提供する。1以上の上記の融合タンパク質を含む、薬学的組成物およびワクチンもまた提供する。
【0010】
関連する局面において、少なくとも1つのポリペプチドおよび生理学的に受容可能なキャリアを含む、乳癌処置のための薬学的組成物を提供する。ここで、そのポリペプチドは、乳房腫瘍タンパク質またはその改変体の免疫原性部分を含み、その乳房腫瘍タンパク質は、以下からなる群より選択される部分配列を有するポリヌクレオチド分子によりコードされる;(a)配列番号1、2、4〜9、11〜16、18〜23、25〜44,53、54、68〜71、および74〜88に示されるヌクレオチド配列、(b)それらのヌクレオチドの相補体、および(c)中程度のストリンジェント条件下で、(a)または(b)の配列にハイブリダイズする配列。本発明はまた、そのようなポリペプチドを非特異的な免疫応答エンハンサーと組み合わせて含む、乳癌の処置のためのワクチンを、配列番号1、2、4〜9、11〜16、18〜23、25〜44,53、54、68〜71、および74〜88に提供される部分配列を有する、少なくとも1つのポリヌクレオチド分子を含む薬学的組成物およびワクチンと共に提供する。
【0011】
さらに別の局面において、患者における乳癌の発生を阻害するための方法を提供し、それは、有効量の少なくとも1つの上記の薬学的組成物および/またはワクチンを投与する工程を含む。
【0012】
本発明はまた、乳癌の免疫診断の方法を、そのような方法において使用するキットと共に提供する。本発明の1つの特定の局面において、患者内の乳癌を検出する方法を提供し、それは、以下を含む;(a)患者から採取した生物学的サンプルを、本発明のポリペプチドの1つに結合し得る、結合剤と接触させる工程;および(b)そのサンプルにおいて、結合剤に結合したタンパク質またはポリペプチドを検出する工程。好ましい実施態様において、結合剤は抗体であり、最も好ましくは、モノクローナル抗体である。
【0013】
関連する局面において、患者内の乳癌の進行をモニターするための方法を提供し、それは、以下を含む;(a)患者から採取した生物学的サンプルを、上記のポリペプチドの1つに結合し得る、結合剤と接触させる工程;(b)そのサンプルにおいて、その結合剤に結合するタンパク質またはポリペプチドの量を決定する工程;(c)工程(a)および(b)を繰り返す工程;および工程(b)および(c)で検出されたポリペプチドの量を比較する工程。
【0014】
関係する局面において、本発明は、本発明のポリペプチドに結合する抗体、好ましくはモノクローナル抗体、ならびにそのような抗体を含む診断キット、および乳癌の発生を阻害するためにそのような抗体を使用する方法を提供する。
【0015】
本発明はさらに、乳癌を検出する方法を提供し、それは以下を含む;(a)患者から生物学的サンプルを採取する工程;(b)そのサンプルを、ポリメラーゼ連鎖反応において第一および第二のオリゴヌクレオチドプライマーと接触する工程で、そのオリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つは、上記のポリペプチドの1つをコードするDNA分子に特異的である、工程;および(c)第一および第二のオリゴヌクレオチドプライマーの存在下で増幅するDNA配列を、そのサンプルにおいて検出する工程。好ましい実施態様において、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号1〜94からなる群より選択される部分配列を有するDNA分子の、少なくとも約10の連続したヌクレオチドを含む。
【0016】
さらなる局面において、本発明は、患者内の乳癌を検出する方法を提供し、それは以下を含む;(a)患者から生物学的サンプルを採取する工程;(b)そのサンプルを、上記のポリペプチドの1つをコードするポリヌクレオチド分子に特異的なオリゴヌクレオチドプローブと接触させる工程;および(c)そのオリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を、そのサンプルにおいて検出する工程。好ましくは、そのオリゴヌクレオチドプローブは、配列番号1〜94からなる群より選択される部分配列を有するDNA分子の、少なくとも約15の連続したヌクレオチドを含む。
【0017】
関係する局面において、上記のオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを含む診断キットを提供する。
【0018】
本発明のこれらの、または他の局面は、以下の詳細な説明を参照して明らかとなる。本明細書に記載される全ての参考文献は、各々が個々に援用されるように、その全体が参考として本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1AおよびBは、それぞれ、第一のおよび第二のB511S特異的CTLクローンの溶解比活性を示し、それらは、B511(黒四角)またはHLA−A3(白四角)を形質導入した自己のLCLについて測定された。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
上記のように、本発明は、一般的に、乳癌の免疫治療および診断のための組成物および方法に関する。本発明の組成物は、一般的に、乳房腫瘍タンパク質の少なくとも一部分を含む単離されたポリペプチドである。本発明のポリペプチドに結合する分子(例えば、抗体またはそのフラグメント)もまた、本発明内に含まれる。このような分子は、本明細書中で「結合因子」といわれる。
【0021】
特に、本発明は、ヒト乳房腫瘍タンパク質の少なくとも一部分を含むポリペプチド、またはその改変体を開示する。ここで、乳房腫瘍タンパク質は、以下からなる群より選択される配列を含むポリヌクレオチド分子によってコードされるアミノ酸配列を含む:配列番号1〜94に記載されるヌクレオチド配列、このヌクレオチド配列の相補物、およびそれらの改変体。本明細書中で使用される用語「ポリペプチド」は、任意の長さのアミノ酸鎖を含み、これらには、全長タンパク質が含まれ、ここでアミノ酸残基は、共有ペプチド結合によって連結される。従って、上記の乳房タンパク質のうちの1つの一部分を含むポリペプチドは、完全にこの部分から構成されてもよいし、またはこの部分は、さらなる配列を含むより大きなポリペプチド内に存在してもよい。このさらなる配列は、天然タンパク質由来であってもよいし、異種であってもよく、このような配列は、免疫反応性および/または抗原性であってもよい。
【0022】
本明細書中で記載される、ヒト乳房腫瘍タンパク質の「免疫原性部分」は、乳癌に罹患する患者における免疫応答を惹起させ得る部分であり、そして乳癌患者由来の血清に存在する抗体に結合する。このような免疫原性部分は、一般的に、少なくとも約5つのアミノ酸残基、より好ましくは、少なくとも約10のアミノ酸残基、そして最も好ましくは、少なくとも約20のアミノ酸残基を含む。本明細書中に記載されるタンパク質の免疫原性部分は、抗体結合アッセイで同定され得る。このようなアッセイは、例えば、HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,1988に記載されるように、一般的に当業者に公知の任意の種々の手段によって行われ得る。例えば、ポリペプチドは、(以下に記載のように)固体支持体上に固定化され得、そして固定化されたポリペプチドに血清中の抗体が結合されるように、患者血清と接触される。次いで、非結合血清は取り除かれ得、そして結合抗体は、例えば、125I標識プロテインAを用いて検出され得る。あるいは、ポリペプチドは、乳癌患者の血中または他の体液中のポリペプチドを検出することに使用するためのモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を生成するために使用され得る。公知の配列の抗原の免疫原性部分を調製および同定する方法は、当該分野で周知である、そしてこれらの方法としては、Paul,Fundamental Immunology、第3版、Raven Press,1993,第243〜247頁に要約される方法が挙げられる。
【0023】
本明細書中で使用される用語「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖ポリマーを意味し、そしてこれらには、DNA分子および対応するRNA分子(HnRNAおよびmRNA分子、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含む)が挙げられ、そしてcDNA、ゲノムDNA、および組換えDNA、ならびに全体的または部分的に合成されたポリヌクレオチドが含まれる。HnRNA分子はイントロンを含み、そして一般的に1対1の様式でDNA分子に対応する。mRNA分子は、HnRNAおよびDNA分子に対応するが、これらからは、イントロンは除外される。ポリヌクレオチドは、遺伝子全体から構成されてもよいし、そのいずれかの部分から構成されてもよい。作動可能なアンチセンスポリヌクレオチドは、対応するポリヌクレオチドのフラグメントを含み得、そのために「ポリヌクレオチド」の定義は、このような全ての作動可能なアンチセンスフラグメントを含む。
【0024】
本発明の組成物および方法はまた、上記のポリペプチドおよびポリヌクレオチドの改変体を含む。本明細書中で使用されるポリペプチド「改変体」は、このポリペプチド治療的特性、抗原性特性、および/または免疫原性特性が保持されるように、保存的置換および/または改変においてのみ、記載されるポリペプチドとは異なるポリペプチドである。好ましい実施態様において、改変ポリペプチドは、5以下のアミノ酸の置換、欠失または付加によって同定される配列とは異なる。このような改変体は、一般的に、上記ポリペプチド配列のうちの1つを改変し、そして例えば、本明細書中に記載される代表的な手順を用いて改変されたポリペプチドの抗原性特性を評価することによって同定され得る。ポリペプチド改変体は、同定されたポリペプチドに対して、好ましくは、少なくとも約70%の同一性、より好ましくは、少なくとも約90%の同一性、そして最も好ましくは、少なくとも約95%の同一性(以下に記載されるように決定される)を示す。
【0025】
本明細書中で記載される「保存的置換」は、アミノ酸が、類似の特性を示す別のアミノ酸と置換されている置換をいい、そのために、ペプチド化学の当業者は実質的に変化されないポリペプチドの二次構造および疎水親水指数特性を予測する。一般的に、以下のアミノ酸群は、保存的変更を示す:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。
【0026】
改変体はまた、あるいは、他の改変を含み得、これらは、ポリペプチドの抗原性性質、二次構造および疎水親水指数の性質に対して最小の影響を有するアミノ酸の欠失または付加を含む。例えば、ポリペプチドは、タンパク質のN末端でシグナル(またはリーダー)配列と結合され得、このシグナル(またはリーダー)配列は、翻訳と同時にまたは翻訳後にタンパク質の輸送に指向する。このポリペプチドはまた、ポリペプチドの合成、精製もしくは同定を容易にするため(例えば、ポリHis)に、または固体支持体へのポリペプチドの結合を増大するために、リンカーまたはその他の配列と結合され得る。例えば、ポリペプチドは、イムノグロブリンFc領域に結合され得る。
【0027】
ヌクレオチド「改変体」は、1つ以上のヌクレオチド欠失、置換、または付加を有することにおいて記載されたヌクレオチド配列とは異なる配列である。このような改変は、標準的な変異誘発技術(例えば、Adelmanら(DNA 2:183,1983)に教示される、オリゴヌクレオチド指向性部位特異的変異誘発)を使用して、容易に導入され得る。ヌクレオチド改変体は、天然に存在する対立遺伝子改変体または天然には存在しない改変体であり得る。改変ヌクレオチド配列は、好ましくは、記載された配列に対して、少なくとも約70%、より好ましくは、少なくとも約80%、そして最も好ましくは、少なくとも約90%の同一性(以下に記載されるように決定される)を示す。
【0028】
本発明によって提供される抗原は、本明細書中に詳細に記載される1つ以上のDNA配列に対して実質的に相同なDNA配列によってコードされる改変体を含む。本明細書中で使用される「実質的な相同性」とは、中程度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNA配列をいう。適切な、中程度にストリンジェントな条件は、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中での予備洗浄;50℃〜65℃、5×SSC、一晩、または交叉種(cross−species)相同性の事象においては、0.5×SSCで45℃でのハイブリダイゼーション;次いで0.1% SDSを含む、2×、0.5×、および0.2×SSCで、65℃で20分、それぞれ2回洗浄を含む。このようなハイブリダイズするDNA配列はまた、本発明の範囲内である。コード縮重に起因して、ハイブリダイズするDNA配列によってコードされる免疫原性ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列も同様に含まれる。
【0029】
2つのヌクレオチド配列またはポリペプチド配列は、以下に記載のように最大の対応でアラインするときに2つの配列中のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の配列が同じである場合、「同一」であるといわれる。2つの配列間の比較は、代表的には、比較ウインドウによって配列を比較して、配列類似性の局所的領域を同定および比較することによって行われる。本明細書中で使用される「比較ウインドウ」とは、少なくとも約20の連続する位置、通常は30〜約75、より好ましくは、40〜約50の連続する位置のセグメントをいう。ここで、配列は、2つの配列が必要に応じてアラインされた後、同じ数の連続する位置の参照配列に対して比較され得る。
【0030】
比較のための配列の最適なアラインメントは、Lasergene suite of bioinformatics software(DNASTAR,Inc.,Madison,WI)のMegalignプログラムを用い、デフォルトパラメーターを使用して行われ得る。このプログラムは、以下の参考文献に記載されるいくつかのアラインメントスキームを含む:

好ましくは、「配列同一性のパーセント割合」は、少なくとも20の位置の比較ウインドウによって、2つの最適にアラインされた配列を比較することによって決定される。ここで、比較ウインドウ中のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアラインメントについて参照配列(これは、付加または欠失を有さない)と比較して、20%以下、通常は5〜15%、または10〜12%の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。このパーセント割合は、位置の数(ここで、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列で生じて、マッチした位置の数を得る)を決定し、参照配列中の位置の総数(すなわち、ウインドウサイズ)でマッチした位置の数を割り、そして結果に100をかけて配列同一性のパーセント割合を得ることによって計算される。
【0031】
本明細書に記載されるヌクレオチド配列をコードする遺伝子の対立遺伝子もまた本発明の範囲に含まれる。本明細書に使用される「対立遺伝子」または「対立遺伝子の配列」は、核酸配列における少なくとも1つの変異に起因し得る、遺伝子の代替形態である。対立遺伝子は、構造または機能が変化しても変化しなくともよい、変化したmRNAまたはポリペプチドを生じ得る。任意の所定の遺伝子は、対立遺伝子形態を有さないか、1つ以上の対立遺伝子形態を有し得る。対立遺伝子を生じさせる通常の変異的な変化は、一般的に、ヌクレオチドの自然な欠失、付加、または置換に起因する。これらの変化のそれぞれの型は、単独でまたは他との組み合わせで、所定の配列中に1回以上生じ得る。
【0032】
あるいは、免疫反応性特性を有する乳房腫瘍ポリペプチドについては、改変体は、上述のポリペプチドのうちの1つのアミノ酸配列を改変し、そして改変されたポリペプチドの免疫反応性を評価することにより同定され得る。診断用結合薬剤を産生するために有用な乳房腫瘍ポリペプチドについては、改変体は、乳癌の存在または不在を検出する抗体を産生する能力について、改変されたポリペプチドを評価することにより同定され得る。このような改変された配列は、例えば、本明細書に記載される代表的な手順を用いて、調製および試験され得る。
【0033】
本発明の乳房腫瘍タンパク質およびそのようなタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子が、当該分野で周知である種々の方法のいずれかを用いて乳房腫瘍組織から単離され得る。本発明の乳房腫瘍タンパク質の1つをコードする遺伝子(またはその一部)に対応するポリヌクレオチド配列が、以下で詳細に記載される差し引き(subtraction)技術を用いて乳房腫瘍cDNAライブラリーから単離され得る。このようなDNA配列の例が、配列番号1〜94において提供される。このようにして、得られた部分的ポリヌクレオチド配列は、当該分野で周知の技術を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)における、全長ポリヌクレオチド配列を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーを設計するために用いられ得る(例えば、Mullisら、Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol.、51:263、1987;Erlich編、PCR Technology、Stockton Press、NY、1989 を参照のこと)。一旦、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列が得られると、上述の改変のいずれかが、例えば、Adelmanら(DNA、2:183、1983)によって教示されるように、オリゴヌクレオチド指定部位特異的変異誘発のような標準的な変異誘発技術を用いて容易に導入され得る。
【0034】
本明細書に開示される乳房腫瘍ポリペプチドはまた、合成手段または組換え手段により作製され得る。約100より少ないアミノ酸、および一般的に、約50より少ないアミノ酸を有する合成ポリペプチドが、当業者に周知の技術を用いて作製され得る。例えば、このようなポリペプチドは、伸長しているアミノ酸鎖にアミノ酸が順次加えられるMerrifield固相合成法(例えば、Merrifield、J.Am.Chem.Soc.85:2149−2146、1963を参照のこと)のような、商業的に利用可能な固相技術のいずれかを用いて合成され得る。ポリペプチドの自動合成装置は、Perkin Elmer/Applied BioSystems Division(Foster City、CA)のような供給業者から市販されており、そして製造業者の使用説明書に従って操作し得る。
【0035】
あるいは、上述のポリペプチドのいずれかは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を発現ベクター中に挿入すること、および適切な宿主において、このタンパク質を発現することによって、組換えにより産生され得る。当業者に公知である種々の発現ベクターのいずれかが、本発明の組換えポリペプチドを発現するために用いられ得る。発現は、組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子を含む発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた任意の適切な宿主細胞において達成され得る。適切な宿主細胞は、原核生物、酵母および高等真核生物細胞を含む。好ましくは、用いられる宿主細胞は、E.coli、酵母またはCHO細胞のような哺乳動物細胞株である。この手法により発現されるポリヌクレオチド配列は、天然に生じるポリペプチド、天然に生じるポリペプチドの一部、またはそれらの他の改変体をコードし得る。
【0036】
一般的に、調製方法に関係なく、本明細書に開示されるポリペプチドは、単離された実質的に純粋な形態で調製される(すなわち、ポリペプチドは、アミノ酸組成および一次配列分析によって決定した場合に均質である)。好ましくは、このポリペプチドは、少なくとも約90%純粋であり、より好ましくは、少なくとも約95%純粋であり、そして最も好ましくは、少なくとも約99%純粋である。以下にさらに詳細に記載される、特定の好ましい実施態様において、実質的に純粋なポリペプチドは、本明細書に開示された1つ以上の方法において使用するための薬学的組成物またはワクチンに組み入れられる。
【0037】
関連した局面において、本発明は、本発明の第一および第二のポリペプチドを含む融合タンパク質、またはあるいは本発明のポリペプチドおよび公知の乳房腫瘍抗原を含む融合タンパク質を、このような融合タンパク質の改変体とともに提供する。
【0038】
本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、第一および第二のポリヌクレオチドをコードする別々のポリヌクレオチド配列を適切な発現ベクター中へ組み立てるために公知の組換えDNA技術を用いて構築される。第一のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の3’末端は、配列のリーディングフレームが第一および第二のポリペプチドの両方の生物学的活性を保持する単一の融合タンパク質への2つのDNA配列のmRNA翻訳が可能となるように組み合わせて、第二のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の5’末端にペプチドリンカーと共にまたはペプチドリンカーなしで連結される。
【0039】
ペプチドリンカー配列は、各ポリペプチドがその二次構造および三次構造へと折り畳まれるのを保証するために十分な距離によって第一および第二のポリペプチドを隔てるために用いられ得る。このようなペプチドリンカー配列は、当該分野で周知の標準的な技術を用いて融合タンパク質中に取り込まれる。適切なペプチドリンカー配列は、以下の要素に基づいて選択され得る:(1)フレキシブルな伸長したコンホメーションを採る能力;(2)第一および第二のポリペプチド上の機能的なエピトープと相互作用し得る二次構造を採ることができないこと;および(3)ポリペプチドの機能的なエピトープと反応し得る疎水性または荷電した残基の欠損。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly、AsnおよびSer残基を含む。ThrおよびAlaのような中性に近い他のアミノ酸もまた、リンカー配列に用いられ得る。リンカーとして有用に用いられ得るアミノ酸配列は、Marateaら、Gene 40:39−46、1985;Murphyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:8258−8262、1986;米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号に開示されるアミノ酸配列を含む。リンカー配列は、1から約50アミノ酸長であり得る。ペプチド配列は、第一および第二のポリペプチドが、機能的ドメインを分離するため、および立体的な干渉を防ぐために用いられ得る非必須N末端アミノ酸領域を有する場合、必要とされない。
【0040】
連結されたポリヌクレオチド配列は、適切な転写または翻訳調節エレメントに作動可能に連結される。ポリヌクレオチドの発現を担う調節エレメントは、第一のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の5’側にのみ位置する。同様に、翻訳および転写終結シグナルを終了するために必要とされる停止コドンは、第二のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の3’側にのみ存在する。
【0041】
本発明のポリペプチドを関係のない免疫原性タンパク質とともに含む融合タンパク質もまた提供される。好ましくは、免疫原性タンパク質は、リコール(recall)応答を惹起し得る。このようなタンパク質の例としては、破傷風タンパク質、結核タンパク質および肝炎タンパク質が挙げられる(例えば、Stouteら、New Engl.J.Med.、336:86−91(1997)を参照のこと)。
【0042】
乳房腫瘍タンパク質の免疫原性部分を含む本発明のポリペプチドは、一般的に、乳癌の免疫治療に用いられ得、ここで、このポリペプチドは、乳房腫瘍細胞に対する患者自身の免疫応答を刺激する。さらなる側面において、本発明は、配列番号1〜94において提供される配列を有するポリヌクレオチド分子によってコードされる1つ以上の免疫応答性ポリペプチド(または、1つ以上のそのようなポリペプチドおよび/もしくはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む融合タンパク質)を患者における乳癌の免疫治療のために用いるための方法を提供する。本明細書に用いられる、「患者」は、任意の温血動物、好ましくはヒトをいう。患者は、疾患に罹患していてもよいし、検出可能な疾患を有さなくともよい。従って、上述の免疫応答性ポリペプチド(または、融合タンパク質もしくはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子)は、乳癌を処置するために用いられ得るか、または乳癌の進行を阻害するために用いられ得る。ポリペプチドは、原発性腫瘍の外科的除去および/または放射線治療および従来の化学療法薬物の投与による処置に先だってか、またはそれに続いてかのいずれかで投与され得る。
【0043】
これらの側面において、ポリペプチドまたは融合タンパク質は、一般的に、薬学的組成物および/またはワクチン内に存在する。薬学的組成物は、上述の配列のうちの1つ以上(または、それらの変異体)をそれぞれ含み得る1つ以上のポリペプチド、および生理的に受容可能なキャリアを含み得る。ワクチンは、1つ以上のこのようなポリペプチドおよび非特異的免疫応答エンハンサーを含み得、ここで、この非特異的免疫応答エンハンサーは、外来抗原に対する免疫応答を誘発または増強し得る。非特異的免疫応答エンハンサーの例としては、アジュバント、生体分解性ミクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ガラクチド(polylactic galactide))およびリポソーム(この中に、ポリペプチドが取り込まれる)が挙げられる。薬学的組成物およびワクチンはまた、組み合わせポリペプチド(すなわち、複数のエピトープを含む単一ポリペプチド)中に組込まれて、または別々のポリペプチド内に存在してのいずれかで、乳房腫瘍抗原の他のエピトープを含み得る。
【0044】
あるいは、薬学的組成物またはワクチンは、上記の1つ以上のポリぺプチドをコードするポリヌクレオチドを含み得るため、ポリぺプチドはインサイチュで産生される。このような薬学的組成物およびワクチンにおいて、ポリヌクレオチドは、核酸発現系、細菌およびウイルス発現系を含む、当業者に公知の種々の送達系のいずれかの中に存在し得る。適切な核酸発現系は、患者における発現に必要なポリヌクレオチド配列(例えば、適切なプロモーター)を含む。細菌送達系は、細胞表面に存在する乳房腫瘍細胞抗原のエピトープを発現する細菌(例えば、Bacillus−Calmette−Guerrin)の投与を包含する。好ましい実施態様において、ポリヌクレオチド分子は、ウイルス発現系(例えば、痘疹または他のポックスウイルス、レトロウイルス、あるいはアデノウイルス)を使用して導入され得、この系は、非病原性(欠損)の、複製コンピテント細胞の使用を含み得る。適切な系は、例えば、Fisher−Hochら,PNAS 86:317−321,1989;Flexnerら,Ann.N.Y.Acad.Sci.569:86−103,1989;Flexnerら,Vaccine 8:17−21,1990;米国特許第4,603,112号、同第4,769,330号、および同第5,017,487号;WO 89/01973;米国特許第4,777,127号;GB 2,200,651;EP 0,345,242;WO 91/02805;Berkner,Biotechniques 6:616−627,1988;Rosenfeldら,Science 252:431−434,1991;Kollsら,PNAS 91:215−219,1994;Kass−Eislerら,PNAS 90:11498−11502,1993;Guzmanら,Circulation 88:2838−2848,1993;およびGuzmanら,Cir.Res 73:1202−1207,1993に開示される。このような発現系にポリヌクレオチドを組み入れるための方法は、当業者に周知である。ポリヌクレオチドはまた、「裸(naked)」であり得る(例えば、公開されたPCT出願WO 90/11092,およびUlmerら,Science 259:1745−1749,1993,Cohenによる評論,Science 259:1691−1692,1993に記載される)。裸のポリヌクレオチドの取り込みは、ポリヌクレオチドを生分解可能なビーズ上に被覆することによって増加され得、これは、細胞内に効率的に輸送される。
【0045】
投与の経路および頻度、ならびに投薬量は、個人間で変化し、そして他の疾患の免疫治療において現在使用されるそれらと類似し得る。一般的に、薬学的組成物およびワクチンは、注射(例えば、皮内、筋内、静脈内または皮下)、鼻腔内(例えば、吸引により)または経口で投与され得る。1から10用量が、3−24週間にわたって投与され得る。好ましくは、3ヶ月間隔で4用量を投与し、そしてその後に、追加免疫投与が定期的に行われ得る。代替のプロトコルは、各患者に適し得る。適切な用量は、処置患者における乳房腫瘍細胞に対する免疫応答(細胞性および/または体液性)を生じるのに効果的な、ポリぺプチド分子またはポリヌクレオチド分子の量である。適切な免疫応答は、基底(すなわち、未処理)レベルより少なくとも10〜50%上回る。一般的に、1用量に存在する(または1用量のポリヌクレオチドによってインサイチュで産生される)ポリぺプチドの量は、宿主1kgあたり約1pg〜約100mgの範囲にわたり、代表的には、約10pg〜約1mg、そして好ましくは、約100pg〜約1μgである。適切な用量サイズは、患者のサイズに伴って変化するが、代表的には、約0.01mL〜約5mLの範囲にわたる。
【0046】
当業者に公知の任意の適切なキャリアが、本発明の薬学的組成物に利用され得るが、キャリアの型は投与の様式に依存して変化する。非経口的な投与(例えば、皮下注射)のためには、キャリアは好ましくは、水、生理食塩水、アルコール、脂質、ワックスおよび/または緩衝液を含む。経口投与のためには、上記のキャリアまたは固体キャリア(例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石(talcum)、セルロース、グルコース、スクロース、および/または炭酸マグネシウム)のいずれかが利用され得る。生分解可能なマイクロスフェア(例えば、ポリ乳酸グリコリド(polylactic glycolide))もまた、本発明の薬学的組成物のためのキャリアとして利用され得る。適切な生分解可能なマイクロスフェアは、例えば、米国特許第4,897,268号および同第5,075,109号に開示される。
【0047】
種々の非特異的免疫応答増強剤のいずれかが、本発明のワクチンに利用され得る。例えば、アジュバントが含まれ得る。ほとんどのアジュバントは、迅速な異化作用から抗原を保護するために設計された物質を含む(例えば、水酸化アルミニウムまたは鉱油、およびリピドA、Bordella pertussisまたはMycobacterium tuberculosisのような免疫応答の非特異的な刺激物質)。このようなアジュバントは、例えば、フロイント不完全アジュバントおよびフロイント完全アジュバント(Difco Laboratories,Detroit,MI)ならびにメルクアジュバント65(Merck and Company,Inc.,Rahway,NJ)として市販されている。
【0048】
本明細書に開示されたポリぺプチドはまた、癌の処置のための養子免疫治療において用いられ得る。養子免疫治療はまた、広範には、能動的免疫治療または受動的免疫治療のいずれかに分類され得る。能動的免疫治療において、処置は、内因性の宿主免疫系のインビボでの刺激に依存し、免疫応答改変薬剤(例えば、腫瘍ワクチン、細菌アジュバント、および/またはサイトカイン)の投与で腫瘍に反応する。
【0049】
受動的免疫治療において、処置は、確立された腫瘍−免疫反応性を有する生物学的試薬(例えば、エフェクター細胞または抗体)の送達を包含する。この確立された腫瘍−免疫反応性は、抗腫瘍効果を直接的または間接的に媒介し得、そしてインタクトの宿主免疫系に必ずしも依存しない。エフェクター細胞の例としては、Tリンパ球(例えば、CD8+細胞傷害性Tリンパ球、CD4+Tヘルパー、腫瘍浸潤性リンパ球)、キラー細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞、リンフォカイン活性化キラー細胞)、B細胞、または開示された抗原を発現する抗原提示細胞(例えば、樹状細胞およびマクロファージ)が挙げられる。本明細書に開示されたポリぺプチドはまた、受動的免疫治療のために、抗体または抗イディオタイプ抗体を産生するため(米国特許第4,918,164号と同様)に使用され得る。
【0050】
養子免疫治療のための適当数のT細胞を調達する優勢な方法は、インビトロで免疫T細胞を増殖することである。単一の抗原特異的なT細胞をインビボでの抗原認識の保持を伴って数十億数まで拡大するための培養条件は、当該分野で周知である。これらのインビトロ培養条件は、代表的には、しばしばIL−2のようなサイトカインおよび非分裂(non−dividing)フィーダー細胞の存在下における、抗原を用いた断続的刺激を利用する。上記に記載したように、本明細書に記載された免疫反応性ポリぺプチドは、免疫治療のための十分数の細胞数を生成するために、抗原特異的なT細胞培養物を迅速に拡大するために使用され得る。特に、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージまたはB細胞)は、当該分野に周知の標準的な技術を使用して、免疫反応性ポリぺプチドでパルス(pulse)され得るか、またはポリヌクレオチド配列(複数または単数)を用いてトランスフェクトされ得る。例えば、抗原提示細胞は、ポリヌクレオチド配列を用いてトランスフェクトされ得(ここでこの配列は、発現を増大させるために適したプロモーター領域を含む)、そして組換えウイルスまたは他の発現系の一部として発現され得る。培養T細胞が治療において有効であるためには、培養T細胞は、増殖し、かつ、広範に分布し得、かつ、インビボで長期生存し得なければならない。研究は、培養T細胞が、IL−2を補充された抗原での反復刺激により、インビボで増殖し、かつ、実質的な数において長期生存するように誘導され得ることを明らかにした(例えば、Cheever,M.ら、「Therapy With Cultured T Cells:Principles Revisited」Immunological Reviews,157:177,1997を参照のこと)。
【0051】
本明細書中に開示されたポリぺプチドはまた、腫瘍反応性のT細胞を生成および/または単離するために用いられ得、このT細胞は、次いで、患者に投与され得る。1つの技術において、抗原特異的なT細胞株は、開示されたポリぺプチドの免疫原性部分に対応する短いペプチドを用いて、インビボで免疫化することによって生成され得る。得られた抗原特異性CD8+ CTLクローンが患者から単離され得、標準的な組織培養技術を使用して拡大され得、そして患者に戻され得る。
【0052】
あるいは、ポリぺプチドの免疫原性部分に対応するペプチドは、例えば、Changら(Crit.Rev.Oncol.Hematol.,22(3),213,1996)に記載されるように、自己T細胞のインビトロでの選択的な刺激および拡大によって腫瘍反応性のT細胞サブセットを生成し、続いて患者に移入され得る抗原特異的なT細胞を提供するために用いられ得る。T細胞のような免疫系の細胞は、例えば、CellPro Incorporated’s(Bothell,WA)CEPRATETMシステム(米国特許第5,240,856号;米国特許第5,215,926号;WO 89/06280;WO 91/16116およびWO 92/07243を参照のこと)のような市販の細胞分離システムを使用して、患者の末梢血から単離され得る。分離された細胞は、送達ビヒクル(例えば、マクロスフェア)内に含まれる免疫反応性ポリぺプチドの1つ以上で刺激され、抗原特異性のT細胞を提供する。次いで、腫瘍抗原特異的なT細胞の集団が、標準的な技術を使用して拡大され、そしてその細胞は患者に戻し投与される。
【0053】
別の実施態様において、ポリぺプチドに特異的なT細胞および/または抗体レセプターがクローン化され得、拡大され得、そして養子免疫治療における使用のために、他のベクターまたはエフェクター細胞に移入され得る。
【0054】
さらなる実施態様において、同系または自己樹状細胞は、本明細書に開示されたポリぺプチドの少なくとも免疫原性部分に対応するペプチドでパルスされ得る。得られた抗原特異的な樹状細胞は、患者に移入され得るか、またはT細胞を刺激して順に患者に投与され得る抗原特異的なT細胞を提供するために用いられ得るかのいずれかである。抗原特異的なT細胞を生成するためのペプチドパルスされた樹状細胞の使用、ならびにマウスモデルにおいて腫瘍を根絶するためのこのような抗原特異的なT細胞の続く使用が、Cheeverら(Immunological Reviews,157:177,1997)により示される。
【0055】
さらに、開示されたポリヌクレオチドを発現するベクターは、患者から採取された幹細胞に導入され得、そして同患者への自己移植のためにインビトロでクローン増殖され得る。
【0056】
本発明のポリぺプチドはまた、あるいは、代替的に、転移性のヒト乳房腫瘍を検出し得る結合薬剤(例えば、抗体またはそれらのフラグメント)を生成するために使用される。本発明の結合薬剤は、一般的に、本明細書に記載した代表的な手順を含む、当業者に公知の方法を使用して調製され得る。結合薬剤は、本明細書に記載の代表的なアッセイを使用して、乳癌を有する患者と有さない患者との間を区別し得る。つまり、乳房腫瘍タンパク質に対して産生された抗体または他の結合薬剤、あるいはそれらの適切な部分は、その疾患に冒されている患者の少なくとも約20%において、原発性または転移性の乳癌の存在を示すシグナルを生成し、ならびに原発性または転移性の乳癌を有さない個体の少なくとも約90%において、疾患の非存在を示す陰性シグナルを生成する。このような乳房腫瘍タンパク質の適切な部分は、乳癌が完全長タンパク質を使用して示される実質的に全て(すなわち、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%)の患者において、原発性または転移性の乳癌の存在を示し、ならびに完全長のタンパク質を用いて試験される場合、陰性である実質的に全てのサンプルにおいて、乳癌の非存在を示す結合薬剤を生成し得る部分である。以下に記載される代表的なアッセイ(例えば、2抗体サンドイッチアッセイ(two−antibody sandwich assay))は、一般的に、転移性のヒト乳房腫瘍を検出する結合薬剤の能力を評価するために用いられ得る。
【0057】
原発性ヒト乳房腫瘍または転移性ヒト乳房腫瘍を検出し得る抗体を産生する、本明細書中に記載のように調製されたポリペプチドの能力は、一般に、このポリペプチドに対する1つ以上の抗体を惹起することによって(例えば、本明細書中に記載の代表的な方法を使用して)、および患者におけるこのような腫瘍を検出するためのこのような抗体の能力を決定することによって評価され得る。この決定は、生じた抗体に結合するポリペプチドの存在について、原発性ヒト乳房腫瘍または転移性乳房腫瘍を有するかあるいは有さない患者由来の生物学的サンプルをアッセイすることによって行われ得る。このような試験アッセイは、例えば、下記に示す代表的な手順を用いて実行され得る。このような手順によって、原発性ヒト乳房腫瘍または転移性ヒト乳房腫瘍の少なくとも20%を検出し得る抗体を産生するポリペプチドは、原発性ヒト乳房腫瘍または転移性のヒト乳房腫瘍を検出するためのアッセイに有用であると考えられる。ポリペプチド特異的抗体は、感度を改善するために単独でまたは組み合せて使用され得る。
【0058】
原発性ヒト乳房腫瘍または転移性ヒト乳房腫瘍を検出し得るポリペプチドは、乳癌を診断するためまたは患者の疾患の進行をモニタリングするためのマーカーとして使用され得る。1つの実施態様において、患者の乳癌は、患者から得られた生物学的サンプルの、あらかじめ決定されたカットオフ値に関する1つ以上の上記ポリペプチドのレベルについて評価されることによって診断され得る。本明細書中で使用される場合、適切な「生物学的サンプル」には、血液、血清および尿が挙げられる。
【0059】
1つ以上の上記ポリペプチドのレベルは、このポリペプチドに対して特異的な任意の結合剤を使用して評価され得る。本発明の状況における「結合剤」とは、上記のようなポリペプチドに結合する任意の薬剤(例えば、化合物または細胞)である。本明細書で使用される場合、「結合」とは、2つの別々の分子(各分子が遊離し得るか(すなわち、溶液中)、または細胞もしくは固体支持体の表面上に存在し得る)間での、「複合体」が形成されるような非共有結合的な会合をいう。このような複合体は、遊離であり得るかまたは支持物質上に固定化され得る(共有結合的にもしくは非共有結合的にのいずれかで)。結合能力は、一般に、複合体の形成に対する結合定数を決定することによって、評価され得る。この結合定数は、複合体の濃度が成分の濃度の積で除算された場合に得られる値である。一般に、本発明の状況において、複合体形成についての結合定数が約103L/molを超える場合、2つの成分は「結合」するといわれる。結合定数は、当業者に周知の方法を用いて決定され得る。
【0060】
上記の要求をみたす任意の薬剤は、結合剤であり得る。例えば、結合剤は、ペプチド成分を有するかまたは有さないリボソーム、RNA分子あるいはペプチドであり得る。好ましい実施態様において、この結合パートナーは、抗体であり、またはそのフラグメントである。このような抗体は、ポリクローナル抗体であり得るか、またはモノクローナル抗体であり得る。さらに、この抗体は、単鎖抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、またはヒト化抗体であり得る。抗体は、本明細書中に記載の方法および当業者に周知の他の方法によって、調製され得る。
【0061】
サンプルにおいてポリペプチドマーカーを検出するための結合パートナーの使用について、当業者に公知の種々のアッセイ様式が存在する。例えば、HarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、1988を参照のこと。好ましい実施態様において、このアッセイは、サンプルの残余物中のポリペプチドと結合し、そしてそこからポリペプチドを除去するために固体支持体上に固定化される結合パートナーの使用を含む。次いで、この結合したポリペプチドは、レポーター基を含む第2の結合パートナーを使用して検出され得る。適切な第2の結合パートナーには、結合のパートナー/ポリペプチド複合体に結合する抗体が挙げられる。あるいは、ポリペプチドが、レポーター基で標識され、そしてサンプルと結合パートナーとのインキュベーションの後、固定化された結合パートナーへの結合を可能にする競合アッセイが利用され得る。サンプル成分が、標識されたポリペプチドの結合パートナーへの結合を阻害する程度は、固定化された結合パートナーとのサンプルの反応性を示す。
【0062】
固体支持体は、抗原が付着され得る、当業者に公知の任意の物質であり得る。例えば、固体支持体は、マイクロタイタープレートの試験ウェル、またはニトロセルロース膜もしくは他の適切な膜であり得る。あるいは、この支持体は、ビーズまたはディスク(例えば、ガラス、ファイバーガラス、ラテックス、またはプラスチック物質(例えば、ポリスチレンもしくはポリ塩化ビニル))であり得る。この支持体はまた、磁気性粒子または光ファイバーセンサー(fiber optic sensor)(例えば、米国特許第5,359,681号に開示されるようなもの)であり得る。結合剤は、当業者に公知の種々の技術を使用して固体支持体上に固定化され得、これは特許および科学文献に十分に記載されている。本発明の状況において、用語「固定化」とは、非共有結合的な会合(例えば、吸着)および共有結合的な付着(これは、抗原と支持体上の官能基との間で直接結合され得るかまたは架橋剤を用いて結合され得る)の両方をいう。マイクロタイタープレートのウェル、または膜への吸着による固定化は好ましい。このような場合、吸着は、適切な緩衝液中で固体支持体を用いて適切な時間で結合剤に接触させることによって達成され得る。接触時間は、温度によって変化するが、代表的には、約1時間から約1日の間である。一般的には、約10ng〜約10μg、そして好ましくは約100ng〜約1μgの範囲の量の結合剤とプラスチックマイクロタイタープレート(例えば、ポリスチレンまたはポリ塩化ビニル)のウェルを接触させることは、適切な量の結合剤を固定化するのに十分である。
【0063】
固体支持体への結合剤の共有結合的付着は、一般に、支持体および結合剤上の官能基(例えば、水酸基またはアミノ基)の両方と反応する二官能性試薬と支持体を最初に反応させることによって達成され得る。例えば、この結合剤は、ベンゾキノンを用いるかまたは結合パートナー上のアミンおよび活性水素を用いる支持体上のアルデヒド基の縮合によってコートする適切なポリマーを有する支持体に、共有結合的に付着され得る(例えば、Pierce Immunotechnology Catalog and Handbook、1991、A12−A13を参照のこと)。
【0064】
特定の実施態様において、このアッセイは、2抗体サンドイッチアッセイである。本アッセイは、最初に、固体支持体(通常、マイクロタイタープレートのウェル)上で固定化されている抗体をサンプルと接触させて、サンプル内のポリペプチドを固定化抗体に結合させることによって実施され得る。次いで、非結合サンプルは固定化ポリペプチド−抗体複合体から除去され、そしてそのポリペプチド上の異なる部位に結合し得る第2の抗体(レポーター基を含む)が添加される。次いで、固体支持体に結合したままである第2の抗体の量が、特定のレポーター基に関して適切な方法を用いて決定される。
【0065】
より詳細には、一旦抗体が上記のように支持体上に固定化されると、支持体上の残りのタンパク質結合部位は、通常ブロックされる。任意の適切なブロック剤(例えば、ウシ血清アルブミンまたはTween20TM(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO))は、当業者に公知である。固定化抗体は次いで、サンプルとインキュベートされ、そしてポリペプチドをこの抗体に結合させる。インキュベーションの前に、このサンプルは適切な希釈液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS))で希釈され得る。概して、適切な接触時間(すなわち、インキュベーション時間)は、乳癌を有する個体から得られたサンプル内のポリペプチドの存在を検出するのに十分な時間である。好ましくは、この接触時間は、結合ポリペプチドと非結合ポリペプチドとの間の平衡が少なくとも約95%で達成される結合レベルを達成するのに十分な時間である。当業者は、ある時間にわたって起こる結合レベルをアッセイすることによって、平衡に達するまでに必要な時間が容易に決定され得ることを認識する。室温では、一般に、約30分間のインキュベーション時間で十分である。
【0066】
次いで、非結合サンプルが、適切な緩衝液(例えば、0.1%Tween20TMを含むPBS)を用いて固体支持体を洗浄することによって除去される。レポーター基を含む第2の抗体が次いで、固体支持体に添加され得る。好ましいレポーター基は、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、基質、補因子、インヒビター、色素、放射性核種、発光基、蛍光基およびビオチンを含む。レポーター基への抗体の結合体化は、当業者に公知の標準方法を使用して達成され得る。
【0067】
次いで、第2の抗体が、結合されたポリペプチドを検出するのに十分な量の時間、固定化抗体−ポリペプチド複合体とインキュベートされる。適切な量の時間は、一般に、ある時間にわたって起こる結合のレベルをアッセイすることによって決定され得る。次いで、非結合の第2の抗体は除去され、そして結合した第2の抗体は、レポーター基を用いて検出される。レポーター基を検出するために使用される方法は、レポーター基の性質に依存する。放射性基について、一般的には、シンチレーション計数法またはオートラジオグラフィー法が適切である。分光法は、色素、発光基および蛍光基を検出するために使用され得る。ビチオンは、異なるレポーター基(一般に、放射性もしくは蛍光基または酵素)に結合されたアビジンを使用して検出され得る。酵素レポーター基は、一般に、基質の添加(一般には、特定の時間の間)、続いて反応産物の分光分析または他の分析により検出され得る。
【0068】
乳癌の存在または非存在を決定するために、固体支持体に結合したままのレポーター基から検出されるシグナルが、一般に、所定のカットオフ値と対応するシグナルと比較される。1つの好ましい実施態様において、このカットオフ値は、固定化抗体を、乳癌を有さない患者由来のサンプルとインキュベートした際に得られた平均シグナル値である。概して、所定のカットオフ値を3標準偏差上回るシグナルを生じるサンプルが、乳癌に対して陽性とみなされる。代わりの好ましい実施態様において、このカットオフ値は、Sackettら、Clinical Epidemiology:A Basic Science for Clinical Medicine,Little Brown and Co.,1985,106〜7頁の方法に従って、レシーバーオペレーターカーブ(Receiver Operator Carve)を使用して決定される。簡単に言うと、本実施態様において、このカットオフ値は、診断試験結果について各可能なカットオフ値に対応する真の陽性割合(すなわち、感度)および偽陽性割合(100%−特異性)の対のプロットから決定され得る。プロット上の上方左手角に最も近いカットオフ値(すなわち、最大領域を囲む値)が、最も正確なカットオフ値であり、そして本方法によって決定されたカットオフ値より高いシグナルを生ずるサンプルが陽性と見なされ得る。あるいは、カットオフ値は、偽陽性割合を最小にするためにプロットに沿って左へシフトされ得るか、または偽陰性割合を最小にするために右へシフトされ得る。概して、本方法によって決定されたカットオフ値より高いシグナルを生ずるサンプルが、乳癌に対して陽性と見なされる。
【0069】
関連の実施態様において、このアッセイは、フロースルー試験形式またはストリップ試験形式で実行される(ここで、抗体は、ニトロセルロースのような膜上で固定化される)。フロースルー試験では、サンプル内のポリペプチドは、サンプルが膜を通過するにつれて固定化抗体に結合する。次いで、第2の標識化された抗体が、この第2の抗体を含む溶液がその膜を介して流れるにつれて、抗体−ポリペプチド複合体と結合する。次いで、結合した第2の抗体の検出は、上記のように実行され得る。ストリップ試験形式では、抗体が結合される膜の一端をサンプルを含む溶液中に浸す。このサンプルは、膜に沿って、第2の抗体を含む領域を通って、そして固定化抗体の領域まで移動する。固定化抗体の領域での第2の抗体の濃度が、乳癌の存在を示す。代表的には、その部位での第2の抗体の濃度は、視覚的に読みとられ得るパターン(例えば、線)を生成する。このようなパターンを示さないことは陰性の結果を示す。概して、この膜上に固定化される抗体の量は、生物学的サンプルが、上記の形式において、2抗体サンドイッチアッセイにおいて陽性シグナルを生じるのに十分であるレベルのポリペプチドを含む場合、視覚的に識別可能なパターンを生じるように選択される。好ましくは、膜上に固定化される抗体の量は、約25ng〜約1μgの範囲であり、そしてより好ましくは、約50ng〜約500ngの範囲である。このような試験は、代表的には、非常に少ない量の生物学的サンプルを用いて実行され得る。
【0070】
もちろん、本発明の抗原または抗体との使用に適する多数の他のアッセイ手順が存在する。上記の記載は、例示のみを意図する。
【0071】
別の実施態様において、上記のポリペプチドは、乳癌の進行に対するマーカーとして用いられ得る。この実施態様において、乳癌の診断のための上記のようなアッセイは、経時的に実施され得、そして反応性ポリヌクレオチド(単数または複数)のレベルにおける変化が評価され得る。例えば、このアッセイは、6ヶ月〜1年の期間、24〜72時間ごとに行われ得、その後は必要な場合に行われ得る。一般に、乳癌は、結合剤によって検出されるポリペプチドのレベルが、経時的に増加するような患者において進行している。対照的に、反応性ポリペプチドのレベルが時間と共に一定に保たれるか、または低下するかのいずれかの場合、乳癌は、進行していない。
【0072】
上記の方法における使用のための抗体は、当業者に公知の任意の多様な技術によって調製され得る。例えば、HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照のこと。このような技術の1つに、抗原性ポリペプチドを含有する免疫原が、任意の広範な種々の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、およびヤギ)の中に初めに注射される。この工程において、本発明のポリペプチドは、改変することなく免疫原として供され得る。あるいは、特に比較的短いポリペプチドに対して、このポリペプチドが、キャリアタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミンまたはキーホールリンペットヘモシニアン)と結合される場合、優れた免疫応答が惹起され得る。この免疫原は、(好ましくは1つ以上の追加免疫を組み入れる、所定のスケジュールに従って)動物宿主中へ注射され、そしてこの動物は定期的に採血される。次いで、このポリペプチドに対して特異的なポリクローナル抗体は、このような抗血清から、例えば、適切な固体支持体に結合されたポリペプチドを用いるアフィニティクロマトグラフィーによって精製され得る。
【0073】
目的の抗原性ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体が、例えば、KohlerおよびMilstein,Eur.J.Immunol.6:511−519,1976の技法およびそれに対する改良を利用して調製され得る。手短に言えば、これらの方法は、所望する特異性(すなわち、目的のポリペプチドとの反応性)を有する抗体を産生し得る不死化細胞株の調製を含む。このような細胞株は、例えば、上記のように免疫化された動物から得られた脾臓細胞から調製され得る。次いで、この脾臓細胞は、例えば、(好ましくは、免疫化された動物と同質遺伝子的である)ミエローマ細胞融合パートナーとの融合によって不死化され得る。種々の融合技術が利用され得る。例えば、脾臓細胞およびミエローマ細胞は、数分間、非イオン性の界面活性剤と組み合わされ得、次にハイブリット細胞の増殖を支持するがミエローマ細胞の増殖を支持しない選択培地上に低密度でプレートされ得る。好ましい選択技法は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)選択を用いる。十分な時間(通常約1〜2週間)の後、ハイブリッドのコロニーが観察される。単一コロニーが選択され、そしてポリペプチドに対する結合活性について試験される。高い反応性および特異性を有するハイブリドーマが、好ましい。
【0074】
モノクローナル抗体は、増殖するハイブリドーマコロニーの上清から単離され得る。さらに、適切な脊椎動物宿主(例えば、マウス)の腹腔内へのハイブリドーマ細胞株の注射のような種々の技法が、収量の増加のために利用され得る。次いで、モノクローナル抗体は、腹水または血液から収集され得る。共雑物は、クロマトグラフィー、ゲルろ過、沈降、および抽出のような従来の技法によってこの抗体から除去され得る。本発明のポリペプチドは、例えば、アフィニティクロマトグラフィー工程における精製プロセスにおいて用いられ得る。
【0075】
本発明のモノクローナル抗体はまた、乳癌を消滅または除去する治療薬として用いられ得る。この抗体は、それら自身で(例えば、転移を阻止するために)用いられ得るか、または1つ以上の治療薬と組み合わせられ得る。この点において、適切な物質として、放射性核種、分化誘導物質、薬物、毒素、およびそれらの誘導体が挙げられる。好ましい放射性核種として、90Y、123I、125I、131I、186Re、188Re、211At、および212Biが挙げられる。好ましい薬物として、メトトレキセート、ならびにピリミジンアナログおよびプリンアナログが挙げられる。好ましい分化誘導物質として、フォルボールエステルおよび酪酸が挙げられる。好ましい毒素として、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、コレラ毒素、ゲロニン(gelonin)、シュードモナス外毒素、赤痢菌毒素、およびアメリカヤマゴボウ抗ウィルス性タンパク質が挙げられる。
【0076】
治療薬は、適切なモノクローナル抗体と、直接的にかまたは(例えば、リンカー基を介して)間接的にかのいずれかで結合(例えば、共有結合)され得る。各々が、他と反応し得る置換基を有する場合、物質と抗体との間の直接的な反応が可能である。例えば、アミノ基またはスルフヒドリル基のような求核基は、無水物または酸ハロゲン化物のようなカルボニル含有基と、あるいは他方では良好な脱離基(例えば、ハロゲン化物)を有するアルキル基と反応し得る。
【0077】
あるいは、リンカー基を介して治療薬と抗体と結合することが望ましいであろう。リンカー基は、結合能力の妨害を避けるために、物質から抗体を離すスペーサーのように機能し得る。リンカー基はまた、物質または抗体上の置換基の化学反応性を増大するために供し得、従って結合効率を増大する。化学反応性の増大はまた、(さもなければ不可能である)物質または物質上の官能基の使用を容易にし得る。
【0078】
ホモ官能性およびヘテロ官能性の両方の種々の二官能性試薬または多官能性試薬(例えば、これらは、Pierce Chemical Co.,Rockford,ILのカタログに記載されている)が、リンカー基として利用され得ることが当業者に明らかである。カップリングは、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、または酸化された炭化水素残基を通じてなされ得る。このような方法論(例えば、Rodwellらに与えられた、米国特許第4,671,958号)を記載する多数の参考文献が存在する。
【0079】
本発明の免疫複合体の抗体部分がないときに治療薬がより効き目のある場合は、細胞中への内在化の間か、あるいは内在化の際に切断され得るリンカー基を用いることが望ましいだろう。多数の異なる切断可能なリンカー基が、記載されている。これらリンカー基からの物質の細胞内放出に関するメカニズムとして、ジスルフィド結合の還元(例えば、Spitlerに与えられた、米国特許第4,489,710号)、感光性結合の照射(例えば、Senterらに与えられた、米国特許第4,625,014号)、誘導されたアミノ酸側鎖の加水分解(Kohnらに与えられた、米国特許第4,638,045号)、血清補体を媒介した加水分解(Rodwellらに与えられた、米国特許第4,671,958号)、および酸触媒加水分解(例えば、Blatterらに与えられた、米国特許第4,569,789号)による切断が挙げられる。
【0080】
抗体に対する1つ以上の物質の結合が所望され得る。1つの実施態様において、物質の複数の分子が、1つの抗体分子に対して結合される。別の実施態様において、1つ以上のタイプの物質が、1つの抗体分子に対して結合され得る。特定の実施態様に関係なく、1つ以上の物質を有する免疫複合体が、多様な方法で調製され得る。例えば、1つ以上の物質が、抗体分子に直接的に結合され得るか、または付着のための複数の部位を提供するリンカーが用いられ得る。あるいは、キャリアが用いられ得る。
【0081】
キャリアは、直接的にかまたはリンカー基を介してかのいずれかで共有結合を含む、多様な方法でこの物質を保持し得る。適切なキャリアとして、アルブミンのようなタンパク質(例えば、Katoらに与えられた、米国特許第4,507,234号)、アミノデキストランのようなペプチドおよびポリサッカライド(例えば、Shihらに与えられた、米国特許第4,699,784号)が挙げられる。キャリアはまた、非共有結合によるか、またはカプセル化(例えば、リポソーム小胞中(例えば、米国特許第4,429,008号および米国特許第4,873,088号))により物質を運び得る。放射性核種物質に特異的なキャリアとして、放射ハロゲン化(radiohalogenated)低分子およびキレート化合物が挙げられる。例えば、米国特許第4,735,792号は、代表的な放射ハロゲン化低分子およびそれらの合成を開示する。放射性核種キレートは、金属放射性核種、または金属酸化物放射性核種を結合するための供与体原子として、窒素原子および硫黄原子を含むようなキレート化合物から形成され得る。例えば、Davisonらに与えられた、米国特許第4,673,562号は、代表的なキレート化合物およびそれらの合成を開示する。
【0082】
この抗体および免疫複合体に関して種々の投与経路が用いられ得る。代表的には、投与は、静脈内、筋肉内、皮下、または切除した腫瘍の床(bed)内である。抗体/免疫複合体の正確な用量は、用いる抗体、腫瘍に対する抗原密度、および抗体のクリアランス速度に依存して変化する。
【0083】
本発明の診断試薬はまた、1つ以上の上記ポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチド配列、または1つ以上のそれらの部分を含み得る。例えば、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマーが、生物学的サンプル由来の乳癌特異的cDNAを増幅するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づくアッセイにおいて利用され得、ここで、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプライマーが、本発明の乳癌タンパク質をコードするDNA分子に特異的である。次いで、増幅したcDNAの存在は、ゲル電気泳動のような当該分野で周知の技法を用いて検出される。同様に、本発明の乳癌タンパク質をコードするDNA分子に特異的なオリゴヌクレオチドプローブは、生物学的サンプルにおける本発明のポリペプチドの存在を検出するために、ハイブリダイゼーションアッセイにおいて用いられ得る。
【0084】
本明細書で用いられるように、用語「DNA分子に特異的なオリゴヌクレオチドプライマー/プローブ」とは、問題のDNA分子に対して、少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約75%、そしてより好ましくは少なくとも約90%の同一性を有するオリゴヌクレオチド配列を意味する。本発明の診断方法において有用に利用され得るオリゴヌクレオチドプライマーおよび/またはプローブは、好ましくは少なくとも約10〜40ヌクレオチドを有する。好ましい実施態様において、このオリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号1〜94から選択される部分配列を有するDNA分子の少なくとも 約10の連続したヌクレオチドを含有する。好ましくは、本発明の診断方法における使用のためのオリゴヌクレオチドプローブは、配列番号1〜94において提供される部分配列を有するDNA分子の少なくとも約15の連続したオリゴヌクレオチドを含有する。PCRに基づくアッセイおよびハイブリダイゼーションアッセイの両方に関する技法は、当該分野において周知である(例えば、Mullisら前述;Ehrlich,前述を参照のこと)。従って、プライマーまたはプローブは、血液、尿、および/または乳癌組織を含む生物学的サンプルにおいて乳癌に特異的な配列を検出するために用いられ得る。
【0085】
(実施例)
以下の実施例は、例示を目的として提供され、限定を目的とはしない。
【実施例1】
【0086】
(乳房腫瘍ポリペプチドの単離と特徴づけ)
本実施例は、乳房腫瘍cDNAライブラリー由来の乳房腫瘍ポリペプチドの単離を記載する。
【0087】
ヒトの乳房腫瘍cDNA発現ライブラリーを、製造業者のプロトコールに従って、cDNA合成およびプラスミドクローニングキット(BRL Life Technologies,Gaithersburg,MD 20897)のためのスーパースクリプトプラスミドシステムを用いて、3人の患者由来の乳房腫瘍ポリA+RNAのプールから構築した。詳細には、乳房腫瘍組織を、ポリトロン(polytron)(Kinematica,Switzerland)でホモジナイズし、そして全RNAを、製造業者により指示されるようにTrizol試薬(BRL Life Technologies)を用いて抽出した。次いで、ポリA+RNAを、製造業者のプロトコルに従って、Qiagen oligotexスピンカラムmRNA精製キット(Qiagen,Santa Clarita,CA 91355)を用いて精製した。第1のcDNA鎖を、NotI/Oligo−dT18プライマーを用いて合成した。二本鎖cDNAを合成し、EcoRI/BstX Iアダプター(Invitrogen,Carlsbad,CA)を用いてライゲーションし、そしてNotIで切断した。Chroma Spin−1000カラム(Clontech,Palo Alto,CA 94303)でのサイズ分画後、このcDNAを、pCDNA3.1(Invitrogen,Carlsbad,CA)に連結し、そしてエレクトロポレーションによりElectroMax E.coli DH10B細胞(BRL Life Technologies)に形質転換した。
【0088】
同じ手順を用いて、正常なヒト乳房cDNA発現ライブラリーを4つの正常乳房組織試料のプールから調製した。このcDNAライブラリーは、独立したコロニー数、インサートを保有するクローンの百分率(パーセンテージ)、平均インサートサイズを決定すること、および配列分析により特徴付けられる。乳房腫瘍ライブラリーは、1.14×107の独立したコロニーを含み、コロニーの90%より多くが明白なインサートを有しており、そして平均インサートサイズは、936塩基対であった。正常な乳房cDNAライブラリーは、6×106の独立したコロニーを含み、コロニーの83%がインサートを有しており、そして平均インサートサイズは、1015塩基対であった。配列決定分析は、両方のライブラリーが、rRNAおよびミトコンドリアDNAの混入配列が最小限である、mRNAから合成された良好な複合cDNAクローンを含むことを示した。
【0089】
cDNAライブラリーの差し引きを、Haraら(Blood,84:189〜199、1994)によって記載されたように(いくつかの改変を伴い)、上記の乳房腫瘍cDNAライブラリーおよび正常乳房cDNAライブラリーを用いて実行した。詳細には、乳房腫瘍特異的に差し引きされた(subtracted)cDNAライブラリーを以下の様に作製した。正常乳房cDNAライブラリー(70μg)をEcoRI、NotIおよびSfuIで消化し、次に、DNAポリメラーゼクレノウフラグメントで充填反応を行った。フェノール−クロロホルム抽出およびエタノール沈殿の後、そのDNAを100μlのH2Oに溶解し、熱変性し、そして100μl(100μg)の光プローブビオチン(Photoprobe biotin)(Vector Laboratories,Burlingame,CA),と混合し、得られた混合物に20分間、氷上で270Wの太陽灯を照射した。さらなる光プローブビオチン(50μl)を添加し、そしてビオチン化反応を繰り返した。ブタノールでの5回の抽出後、DNAをエタノール沈殿し、そして23μlのH2Oに溶解し、ドライバー(driver)DNAを形成した。
【0090】
トレーサーDNAを形成するため、10μgの乳房腫瘍cDNAライブラリーをBamHIおよびXhoIで切断し、フェノールクロロホルム抽出し、そしてChroma spin−400カラム(Clontech)を通過させた。エタノール沈殿後、このトレーサーDNAを5μlのH2Oに溶解した。トレーサーDNAを15μlのドライバーDNAおよび20μlの2×ハイブリダイゼーション緩衝液(1.5M NaCl/10mM EDTA/50 mM HEPES pH7.5/0.2%ドデシル硫酸ナトリウム)と混合し、鉱油でオーバーレイし、そして完全に熱変性した。このサンプルを直ちに68℃の水槽に移し、そして20時間インキュベートした(長期ハイブリダイゼーション[LH])。次いで、反応混合物をストレプトアビジン処理にかけ、次いでフェノール/クロロホルム抽出を行った。このプロセスをさらに3回、繰り返した。差し引きしたDNAを沈殿し、12μlのH2Oに溶解し、8μlのドライバーDNAおよび20μlの2×ハイブリダイゼーション緩衝液と混合し、そして68℃で2時間のハイブリダイゼーションに供した(短期ハイブリダイゼーション[SH])。ビオチニル化二本鎖DNAの除去後、差し引きされたcDNAをクロラムフェニコール耐性pBCSK+(Strategene,La Jolla,CA 92037)のBamHI/XhoI部位にライゲーションし、そしてエレクトロポレーションによってElectroMax E.coli DH10B細胞に形質転換し、乳房腫瘍特異的な差し引きcDNAライブラリーを作製した。
【0091】
差し引きcDNAライブラリーを分析するため、差し引き乳房腫瘍特異的ライブラリーから無作為に選択された100の独立クローンからプラスミドDNAを調製し、そしてPerkin Elmer/Applied Biosystems DivisionのAutomated Sequencer 373Aモデル(Foster City,CA)を用いたDNA配列決定により特徴付けた。38個の異なるcDNAクローンを差し引き乳房腫瘍特異的cDNAライブラリーにおいて見出した。これらのクローンの14について決定された3’cDNA配列を配列番号1〜14に提供する。これは配列番号15〜28にそれぞれに提供される5’cDNA配列と対応する。残りのクローンについて決定された一本鎖(5’または3’)cDNA配列は、配列番号29〜52に提供する。EMBLおよびGenBankデータベース(Release97)を用いた遺伝子バンク(ジーンバンク)での公知の配列とのこれらのcDNA配列の比較は、配列番号3、10、17、24、および45〜52に提供された配列に対して有意な相同性がないことを明らかにした。配列番号1、2、4〜9、11〜16、18〜23、25〜41、43および44に提供される配列は、公知のヒト遺伝子に対する相同性を少なくともある程度を示すことを見出した。配列番号42の配列は、公知の酵母遺伝子に対するいくらかの相同性を示すことが見出された。
【0092】
GEMTOOLSソフトウエアのSynteniを用いてデータを分析した。21の異なるcDNAクローンが乳房腫瘍では過剰発現し、試験されたすべての正常な組織では低レベルで発現することを見出した。これらのクローンについて決定された部分的なcDNA配列を、配列番号53〜73に提供する。上記のような遺伝子バンクの配列と配列番号53、54および68〜71の配列の比較は、以前に同定されたヒト遺伝子に対するいくらかの相同性を表した。配列番号55〜67、72(JJ 9434,7117と呼ばれる)、および73(B535Sと呼ばれる)の配列に有意な相同性は見出されなかった。
【0093】
さらなる実験において、DNAマイクロアレイ(微小整列:microarray)により分析されたcDNAフラグメントは、上記のように、従来のサブトラクションによって得られた2つのサブトラクションライブラリーから得られた。1つの例では、テスターは、原発性乳房腫瘍に由来した。第2の例では、転移性の乳房腫瘍を、テスターとして用いた。ドライバーは、正常な乳房からなる。
【0094】
これらの2つのライブラリー由来のcDNAフラグメントをDNAマイクロアレイ分析のためのテンプレートとして提示した。DNAチップを、腫瘍組織および正常組織の両方に由来するmRNA由来の蛍光プローブを用いてハイブリダイズすることにより分析した。このデータの分析を、プローブのセットから3つの群を作製することにより達成した。これらのプローブ群の組成物を、乳房腫瘍/mets、正常非乳房組織、および転移性乳房腫瘍とよぶ。改変Gemtools分析を用いて2つの比較を実施した。第1の比較は、乳房腫瘍における発現増加を有するテンプレートを同定することであった。第2は、転移性乳房腫瘍において発現増加を生じる第1の比較において回収されないテンプレートを同定することであった。発現上昇の任意のレベル(正常組織発現の平均に対する腫瘍発現の平均)を約2.2で設定した。
【0095】
乳房腫瘍における過剰発現を同定するための第1回の比較において、2つの新規な遺伝子配列(本明細書において以降、B534SおよびB538S(配列番号89,90)という)ならびに、以前に同定された遺伝子とある程度の相同性を示す6つの配列(配列番号74〜79)を同定した。さらに、転移性乳房腫瘍における発現上昇を同定するための第2の比較において、5つの新規な配列を同定し、本明細書において以降B535S(この分析および上記の分析において過剰発現した)、これをB542S、B543S、P501SおよびB541S(配列番号73、および91〜94)という。また公知の遺伝子とある程度の相同性を示す9つの遺伝子(配列番号80〜88)を同定した。クローンB534SおよびB538S(配列番号89,および90)が乳房腫瘍および転移性乳房腫瘍の両方において過剰発現されることを見出した。
【実施例2】
【0096】
(乳房腫瘍抗原を発現する抗原提示細胞を認識するヒトCD8+細胞傷害性T細胞の産生)
本実施例は、1016−F8(配列番号56)としても公知のB511S抗原を発現する標的細胞を認識するT細胞の産生を例証する。ヒトCD8+T細胞を以下の様に、B511Sを発現するように操作された組換えワクシニアウイルスで感染した樹状細胞を用いてインビトロでB511S遺伝子産物へ刺激(prime)した(Yeeら、Journal of Immunology(1996)157(9):4079〜4086も参照のこと)。樹状細胞(DC)を、50μg/mlのGMCSFおよび30μg/mlのIL−4の存在下で5日間の分化により末梢血由来単球から産生した。DCを収集し、2×105細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートのウェルにプレートし、そして5の感染多重度でワクシニアを発現するB511Sで12時間、感染した。次いで、DCを3μg/mlのCD40−リガンドの添加により一晩成熟し、そして10分間100μWでUV照射した。CD8+T細胞を磁気ビーズを用いて単離し、そしてプライミング培養を、7×105個のCD8+T細胞および1×106個の照射CD8枯渇化PBMCを用いて個々のウェル(代表的には、24ウェルプレートの24ウェルプレート中)で開始した;1日目に10ng/mlのIL−7を培養物に添加した。B511Sおよび同時刺激分子B7.1を用いてレトロウイルスにより形質導入された自己の初代線維芽細胞を用いて7〜10日ごとに培養を再刺激した。培養物に15 I.U.のIL−2を1日目に追加した。このような4回の刺激サイクルの後、インターフェロンγElispotアッセイ(Lalvaniら J.Experimental Medicine(1997)186:859〜965参照のこと)を用いて、B511Sで形質導入された自己の線維芽細胞を特異的に認識するCD8+の能力について、CD8+培養を試験した。簡略にいえば、個々の微小培養由来のT細胞を、B511Sまたは陰性コントロール抗原のEGFPのいずれかを発現するように形質導入した自己線維芽細胞を含む96ウェルのElispotプレートに添加し、そして37℃で一晩インキュベートした;ウェルはまた、10ng/mlのIL−12も含んだ。培養物が、B511Sで形質導入された線維芽細胞への応答でのみインターフェロンγを特異的に産生したことを確認した;このような株をさらに増殖し、そしてまたB511Sでレトロウイルスにより形質導入された自己B−LCLでの限界希釈によりクローニングした。細胞株およびクローンがB511で形質導入された自己B−LCLを特異的に認識し得るが、コントロール抗原EGFPまたはHLA−A3で形質導入された自己B−LCLは認識しないことを確認した。標的を発現するB5115を特異的に認識し、そして溶解するこのような実験に由来するヒトCTL細胞株の能力を実証する例を図1に示す。
【実施例3】
【0097】
(ポリペプチドの合成)
ポリペプチドは、HPTU(O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート)活性化を用いるFMOC化学を使用しPerkin Elmer/Applied Biosystems Divisionのペプチド合成装置430Aで合成し得る。Gly−Cys−Gly配列は、ペプチドのアミノ末端に付着し、固定化表面またはペプチドの標識に結合する結合体化の方法を提供し得る。固体支持体からのペプチドの切断は、以下の切断混合物を用いて実行され得る:トリフルオロ酢酸:エタンジチオール:チオアニソール:水:フェノール(40:1:2:2:3)。2時間の切断の後、このペプチドを、冷却したメチル−t−ブチル−エタノール中に沈殿し得た。次いで、このペプチドペレットを0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を含有する水に溶解し、C18逆相HPLCによる精製の前に凍結乾燥し得た。水(TFA0.1%含有)中での0%〜60%のアセトニトリル(TFA0.1%含有)の勾配をペプチド溶出のために使用し得た。純粋な画分の凍結乾燥後に、エレクトロスプレーまたは他のタイプの質量分析法を用い、そしてアミノ酸分析によりペプチドを特徴付け得た。
【0098】
前述により、本発明の特定の実施態様が、例証の目的のために本明細書中に記載されているが、種々の改変が本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたポリペプチドであって、該ポリペプチドは、乳房タンパク質、または保存的置換および/もしくは修飾においてのみ異なる該タンパク質の改変体の免疫原性部分を含み、ここで該タンパク質は、ポリヌクレオチド分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該ポリヌクレオチド分子は、以下:(a)配列番号3、10、17、24、45〜52、56〜67、72、73、および89〜94に列挙されるヌクレオチド配列;(b)該ヌクレオチド配列の相補体;ならびに(c)中程度のストリンジェントな条件下で(a)または(b)の配列にハイブリダイズする配列、からなる群より選択される配列を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項3】
配列番号3、10、17、24、45〜52、56〜67、72、73、および89〜94に提供される配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子。
【請求項4】
請求項2および3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド分子を含む、発現ベクター。
【請求項5】
請求項4に記載の発現ベクターを用いて形質転換した、宿主細胞。
【請求項6】
前記宿主細胞が、E.coli、酵母および哺乳動物細胞株からなる群より選択される、請求項5に記載の宿主細胞。
【請求項7】
請求項1に記載のポリペプチド、ならびに
単離されたポリペプチドであって、該ポリペプチドは、乳房タンパク質、または保存的置換および/もしくは修飾においてのみ異なる該タンパク質の改変体の免疫原性部分を含み、ここで該タンパク質は、ポリヌクレオチド分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該ポリヌクレオチド分子は、以下:(a)配列番号55のヌクレオチド配列;(b)該ヌクレオチド配列の相補体;および(c)中程度のストリンジェントな条件下で(a)または(b)の配列にハイブリダイズする配列からなる群より選択される配列を含む上記単離されたポリペプチド
からなる群より選択されるポリペプチドと、生理的に受容可能なキャリアとを含む、薬学的組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のポリペプチド、ならびに
単離されたポリペプチドであって、該ポリペプチドは、乳房タンパク質、または保存的置換および/もしくは修飾においてのみ異なる該タンパク質の改変体の免疫原性部分を含み、ここで該タンパク質は、ポリヌクレオチド分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該ポリヌクレオチド分子は、以下:(a)配列番号55のヌクレオチド配列;(b)該ヌクレオチド配列の相補体;および(c)中程度のストリンジェントな条件下で(a)または(b)の配列にハイブリダイズする配列からなる群より選択される配列を含む上記単離されたポリペプチド
からなる群より選択されるポリペプチドと、非特異的免疫応答エンハンサーとを含む、ワクチン。
【請求項9】
前記非特異的免疫応答エンハンサーがアジュバントである、請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
(i)請求項2および3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド分子、
(ii)単離されたポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド分子であって、該ポリペプチドは、乳房タンパク質、または保存的置換および/もしくは修飾においてのみ異なる該タンパク質の改変体の免疫原性部分を含み、ここで該タンパク質は、ポリヌクレオチド分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該ポリヌクレオチド分子は、以下:(a)配列番号55のヌクレオチド配列;(b)該ヌクレオチド配列の相補体;ならびに(c)中程度のストリンジェントな条件下で(a)または(b)の配列にハイブリダイズする配列からなる群より選択される配列を含む、上記ポリヌクレオチド分子、ならびに
(iii)配列番号55に提供される配列を含む、単離されたポリヌクレオチド分子
からなる群より選択されるポリヌクレオチド分子と、非特異的免疫応答エンハンサーとを含む、ワクチン。
【請求項11】
前記非特異的免疫応答エンハンサーがアジュバントである、請求項10に記載のワクチン。
【請求項12】
乳癌の処置のための薬学的組成物であって、該組成物は、ポリペプチドおよび生理的に受容可能なキャリアを含み、該ポリペプチドは、乳房タンパク質の免疫原性部分を含み、ここで該タンパク質は、ポリヌクレオチド分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該ポリヌクレオチド分子は、以下:(a)配列番号1、2、4〜9、11〜16、18〜23、25〜44、53、54、68〜71、および74〜88に列挙されるヌクレオチド配列;(b)該ヌクレオチド配列の相補体;ならびに(c)中程度のストリンジェントな条件下で(a)または(b)の配列にハイブリダイズする配列、からなる群より選択される配列を含む、薬学的組成物。
【請求項13】
乳癌の処置のためのワクチンであって、該ワクチンは、ポリペプチドおよび非特異的免疫応答エンハンサーを含み、該ポリペプチドは、乳房タンパク質の免疫原性部分を含み、ここで該タンパク質は、ポリヌクレオチド分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該ポリヌクレオチド分子は、以下:(a)配列番号1、2、4〜9、11〜16、18〜23、25〜44、53、54、68〜71、および74〜88に列挙されるヌクレオチド配列;(b)該ヌクレオチド配列の相補体;ならびに(c)中程度のストリンジェントな条件下で(a)または(b)の配列にハイブリダイズする配列、からなる群より選択される配列を含む、ワクチン。
【請求項14】
前記非特異的免疫応答エンハンサーがアジュバントである、請求項13に記載のワクチン。
【請求項15】
乳癌の処置のためのワクチンであって、該ワクチンは、ポリヌクレオチド分子および非特異的免疫応答エンハンサーを含み、該ポリヌクレオチド分子は、以下:(a)配列番号1、2、4〜9、11〜16、18〜23、25〜44、53、54、68〜71、および74〜88に列挙されるヌクレオチド配列;(b)該ヌクレオチド配列の相補体;ならびに(c)中程度のストリンジェントな条件下で(a)または(b)の配列にハイブリダイズする配列、からなる群より選択される配列を含む、ワクチン。
【請求項16】
前記非特異的免疫応答エンハンサーがアジュバントである、請求項15に記載のワクチン。
【請求項17】
患者における乳癌の発達を阻害するための医薬の製造に使用するための、請求項7または12に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
患者における乳癌の発達を阻害するための医薬の製造に使用するための、請求項8、10、13、または15のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項19】
請求項1に記載のポリペプチドを少なくとも1つ含む、融合タンパク質。
【請求項20】
請求項19に記載の融合タンパク質および生理的に受容可能なキャリアを含む、薬学的組成物。
【請求項21】
請求項19に記載の融合タンパク質、ならびに
単離されたポリペプチドであって、該ポリペプチドは、乳房タンパク質、または保存的置換および/もしくは修飾においてのみ異なる該タンパク質の改変体の免疫原性部分を含み、ここで該タンパク質は、ポリヌクレオチド分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該ポリヌクレオチド分子は、以下:(a)配列番号55のヌクレオチド配列;(b)該ヌクレオチド配列の相補体;および(c)中程度のストリンジェントな条件下で(a)または(b)の配列にハイブリダイズする配列からなる群より選択される配列を含む上記単離されたポリペプチドを少なくとも1つ含む融合タンパク質
からなる群から選択される融合タンパク質と、
非特異的免疫応答エンハンサーとを含む、ワクチン。
【請求項22】
前記非特異的免疫応答エンハンサーがアジュバントである、請求項21に記載のワクチン。
【請求項23】
患者における乳癌の発達を阻害するための医薬の製造に使用するための、請求項20に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
患者における乳癌の発達を阻害するための医薬の製造に使用するための、請求項21に記載のワクチン。
【請求項25】
患者における乳癌を検出するための方法であって、該方法は以下の工程:
(a)患者からの生物学的サンプルを、ポリペプチドに結合し得る結合剤と接触させる工程であって、該ポリペプチドは、乳房タンパク質の免疫原性部分を含み、ここで該タンパク質は、ポリヌクレオチド分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該ポリヌクレオチド分子は、配列番号1〜54、56〜94に列挙されるヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の相補体、および中程度のストリンジェントな条件下で配列番号1〜54、56〜94で提供される配列にハイブリダイズする配列からなる群より選択される配列を含む、工程;ならびに
(b)サンプル中の、該結合剤に結合するタンパク質またはポリペプチドを検出し、それによって該患者における乳癌を検出する工程、を包含する、方法。
【請求項26】
前記結合剤がモノクローナル抗体である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記結合剤がポリクローナル抗体である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
患者における乳癌の進行をモニタリングするための方法であって、該方法は以下の工程:
(a)患者からの生物学的サンプルを、ポリペプチドに結合し得る結合剤と接触させる工程であって、該ポリペプチドは、乳房タンパク質の免疫原性部分を含み、ここで該タンパク質は、ポリヌクレオチド分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該ポリヌクレオチド分子は、配列番号1〜54、56〜94に列挙されるヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の相補体、および中程度のストリンジェントな条件下で配列番号1〜54、56〜94で提供される配列にハイブリダイズする配列からなる群より選択される配列を含む、工程;
(b)該サンプル中の、該結合剤に結合するタンパク質またはポリペプチドの量を決定する工程;
(c)工程(a)および(b)を反復する工程;ならびに
(d)工程(b)および(c)において検出されたポリペプチドの量を比較して、該患者における乳癌の進行をモニタリングする工程、
を包含する、方法。
【請求項29】
ポリペプチドに結合するモノクローナル抗体であって、該ポリペプチドは、乳房タンパク質、または保存的置換および/もしくは修飾においてのみ異なる該タンパク質の改変体の免疫原性部分を含み、ここで該タンパク質は、ポリヌクレオチド分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該ポリヌクレオチド分子は、以下:(a)配列番号3、10、17、24、45〜52、56〜67、72、73、および89〜94に列挙されるヌクレオチド配列;(b)該ヌクレオチド配列の相補体;ならびに(c)中程度のストリンジェントな条件下で(a)または(b)の配列にハイブリダイズする配列、からなる群より選択される配列を含む、モノクローナル抗体。
【請求項30】
患者における乳癌の発達を阻害するための医薬の製造における使用のための、請求項29に記載のモノクローナル抗体。
【請求項31】
前記モノクローナル抗体が治療用薬剤と結合体化される、請求項30に記載のモノクローナル抗体。
【請求項32】
患者における乳癌を検出するための方法であって、該方法は以下の工程:
(a)患者からの生物学的サンプルを、ポリメラーゼ連鎖反応における少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマーと接触させる工程であって、該オリゴヌクレオチドの少なくとも1つは、乳房タンパク質の免疫原性部分を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子に特異的であり、ここで該タンパク質は、ポリヌクレオチド分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該ポリヌクレオチド分子は、配列番号1〜54、56〜94に列挙されるヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の相補体、および中程度のストリンジェントな条件下で配列番号1〜54、56〜94の配列にハイブリダイズする配列からなる群より選択される配列を含む、工程;ならびに
(b)サンプル中の、該オリゴヌクレオチドプライマーの存在下で増幅するポリヌクレオチド配列を検出し、それにより乳癌を検出する工程、
を包含する、方法。
【請求項33】
前記オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つが、配列番号1〜54、56〜94から選択される配列を含むポリヌクレオチド分子の少なくとも約10の連続するヌクレオチドを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
診断用キットであって、以下:
(a)請求項29に記載の1つ以上のモノクローナル抗体;および
(b)検出試薬、を含む、キット。
【請求項35】
診断用キットであって、以下:
(a)ポリヌクレオチド分子によってコードされるポリペプチドに結合する1つ以上のモノクローナル抗体であって、該ポリヌクレオチド分子は、配列番号1、2、4〜9、11〜16、18〜23、25〜44、53、54、68〜71、および74〜88からなる群より選択されるヌクレオチド配列、該配列の相補体、ならびに中程度のストリンジェントな条件下で配列番号1、2、4〜9、11〜16、18〜23、25〜44、53、54、68〜71または74〜88の配列にハイブリダイズする配列からなる群より選択される配列を含む、モノクローナル抗体;ならびに
(b)検出試薬、
を含む、キット。
【請求項36】
前記モノクローナル抗体が固体支持体に固定されている、請求項34または35に記載のキット。
【請求項37】
前記固体支持体が、ニトロセルロース、ラテックス、またはプラスチック材料を含む、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記検出試薬が、結合剤に結合体化されたレポーター基を含む、請求項34または35に記載のキット。
【請求項39】
前記結合剤が、抗イムノグロブリン、プロテインG、プロテインA、およびレクチンからなる群より選択される、請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記レポーター基が、放射性同位体、蛍光基、発光基、酵素、ビオチン、および色素粒子からなる群より選択される、請求項38に記載のキット。
【請求項41】
少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマーを含む診断用キットであって、該オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つは、乳房タンパク質の免疫原性部分を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子に特異的であり、該タンパク質はポリヌクレオチド分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該ポリヌクレオチド分子は、配列番号1〜54、56〜94に列挙されるヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の相補体、および中程度のストリンジェントな条件下で配列番号1〜54、56〜94の配列にハイブリダイズする配列からなる群より選択される配列を含む、診断用キット。
【請求項42】
前記オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つが、配列番号1〜54、56〜94から選択される配列を含むポリヌクレオチド分子の少なくとも約10の連続するヌクレオチドを含む、請求項41に記載の診断用キット。
【請求項43】
患者における乳癌を検出するための方法であって、該方法は以下の工程:
(a)該患者から生物学的サンプルを得る工程;
(b)該生物学的サンプルを、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子に特異的なオリゴヌクレオチドプローブと接触させる工程であって、該ポリペプチドは、乳房タンパク質の免疫原性部分を含み、該タンパク質は、ポリヌクレオチド分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該ポリヌクレオチド分子は、配列番号1〜54、56〜94に列挙されるヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の相補体、および中程度のストリンジェントな条件下で配列番号1〜54、56〜94の配列にハイブリダイズする配列からなる群より選択される配列を含む、工程;ならびに
(c)該サンプル中の、該オリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を検出し、それにより該患者における乳癌を検出する工程、
を包含する、方法。
【請求項44】
前記オリゴヌクレオチドプローブが、配列番号1〜54、56〜94からなる群より選択される配列を含むポリヌクレオチド分子の少なくとも約15の連続するヌクレオチドを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを含む診断用キットであって、該ポリペプチドは、乳房タンパク質の免疫原性部分を含み、該タンパク質は、ポリヌクレオチド分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該ポリヌクレオチド分子は、配列番号1〜54、56〜94に列挙されるヌクレオチド配列、該ヌクレオチド配列の相補体、および中程度のストリンジェントな条件下で配列番号1〜54、56〜94の配列にハイブリダイズする配列からなる群から選択される配列を含む、診断用キット。
【請求項46】
前記オリゴヌクレオチドプローブが、配列番号1〜54、56〜94からなる群より選択される配列を含むポリヌクレオチド分子の少なくとも約15の連続するヌクレオチドを含む、請求項45に記載の診断用キット。
【請求項47】
T細胞が増殖するように請求項1に記載の少なくとも1つのポリペプチドの存在下でインキュベートした、患者における乳癌を処置するための医薬の製造における使用のための、患者からの末梢血細胞。
【請求項48】
前記T細胞が1回以上反復される、請求項47に記載の末梢血細胞。
【請求項49】
患者における乳癌の処置のための組成物であって、請求項1に記載のポリペプチドの存在下で増殖したT細胞を、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む、組成物。
【請求項50】
請求項1に記載の少なくとも1つのポリペプチドの存在下でインキュベートした、患者における乳癌を処置するための医薬の製造における使用のための、抗原提示細胞。
【請求項51】
前記抗原提示細胞が、樹状細胞およびマクロファージ細胞からなる群より選択される、請求項50に記載の細胞。
【請求項52】
患者における乳癌の処置のための組成物であって、請求項1に記載のポリペプチドの存在下でインキュベートした抗原提示細胞を、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む、組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−195236(P2009−195236A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102870(P2009−102870)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【分割の表示】特願2000−526543(P2000−526543)の分割
【原出願日】平成10年12月22日(1998.12.22)
【出願人】(397069329)コリクサ コーポレイション (38)
【Fターム(参考)】