説明

乳癌耐性蛋白阻害剤

BCRPを阻害する薬剤のスクリーニングに有用な癌細胞およびBCRPを阻害する薬剤を提供する。
下記式(1)、(2)、(3)、(4)又は(5):


で表されるフラボノイド化合物、又はその配糖体、エステル若しくは塩を有効成分とするBCRP阻害剤、および該BCRP阻害剤とBCRPの基質となり得る抗癌剤を含有する抗癌剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は乳癌耐性蛋白(BCRP)阻害剤およびBCRP阻害剤のスクリーニングに有用なSN−38耐性癌細胞に関する。
【背景技術】
癌化学療法において、治療開始時から抗癌剤に無効である自然耐性や、抗癌剤を長期に連用するとその効果が低下する獲得耐性の出現は大きな問題となっている。この抗癌剤に対する耐性の克服は、癌化学療法の治療成績向上につながることが期待され、これまでに様々な耐性機構の存在が明らかにされてきた。その中でも抗癌剤を細胞外へ能動輸送し、その細胞内蓄積量を減少させる薬剤輸送蛋白質の発現は、耐性機構の中心的な役割を果たしていると考えられている。
特に、1970年代に発見されたMDR1遺伝子にコードされる薬剤輸送蛋白質P−糖蛋白質は、化学構造や作用機序が異なる複数の抗癌剤に対して交叉耐性を生じることから、多剤耐性克服剤の有力な標的分子とされてきた。しかし、P−糖蛋白質だけでは抗癌剤耐性機構を説明しきれないことも次第に明らかとなり、さらに新しい薬剤輸送蛋白質を標的分子とした耐性克服剤の開発が望まれている。
その様な中、1998年に、P−糖蛋白質と同じくATP結合カセット(ABC)トランスポータースーパーファミリーと呼ばれる一群に属する薬剤輸送蛋白質として、乳癌耐性蛋白質(BCRP)が発見された(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95,15665−15670(1998))。BCRPの構造にはATP結合カセットが一つしか存在せず、二つのATP結合カセットを有するP−糖蛋白質や他の薬剤輸送蛋白質とは構造的に異なっている。BCRPは塩酸イリノテカン(CPT−11)やトポテカン等のトポイソメラーゼI阻害剤、ミトキサントロン等のトポイソメラーゼII阻害剤に対する耐性機構に深く関与する。一方、BCRPはP−糖蛋白質により排出されるパクリタキセルやビンクリスチン等に対しては作用しないこと、またP−糖蛋白質ではほとんど細胞外へ排出されないCPT−11やSN−38(CPT−11の活性体)等のカンプトテシン誘導体の排出に関わることから(Cancer Res.59,5938−5946(1999))、P−糖蛋白質とは異なる基質特異性を有することが明らかにされている。さらに、BCRPは経口投与された抗癌剤のバイオアベイラビリティの限界にも関与していることが示唆されている(J.Clin.Oncol.20,2943−2950(2002))。これらの事実から、BCRPを阻害する薬剤は、従来の耐性克服剤では克服され得なかった抗癌剤の耐性に対して克服効果を発揮し、さらには抗癌剤のバイオアベイラビリティをも向上させることが期待され、その開発が望まれる。
これまでに、抗癌剤に対する耐性克服を目的として数多くのP−糖蛋白質阻害剤が開発されている。一方、BCRPに対する特異的な阻害剤に関する報告は少なく、またその阻害作用も十分とはいえないことから、より強力なBCRP阻害作用を有する薬剤が要望されていた(Mol.Cancer.Ther.1,427−434(2002))。なお、フラボノイド化合物の中にはP−糖蛋白質に対して阻害作用を示すものが報告されている(J.Med.Chem.41,4161−4164(1998);Biochem.Biophys.Res.Commun.295,832−840(2002))が、BCRPに対して阻害作用を示すフラボノイド化合物については知られていない。
本発明は、BCRPを阻害する薬剤のスクリーニングに有用な癌細胞およびBCRPを阻害する薬剤を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明者は、上記課題を解決すべく、ヒト非小細胞肺癌由来の癌細胞であるA549細胞をSN−38含有培地にて継代培養することにより、BCRPを高発現することで抗癌剤耐性を獲得したヒト癌細胞を樹立した。さらに、該癌細胞を用いて、耐性克服作用を指標に様々な植物由来の成分についてスクリーニングを行った結果、下記式(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)で表されるフラボノイド化合物に強力なBCRP阻害作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記式(1)、(2)、(3)、(4)又は(5):

〔式中、Rは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基又は低級アルキル基を示し、7個のRは同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルキル基、低級アルケニル基又は糖残基を示すか、或は隣接するRと共に低級アルキル基で置換されていてもよいピラン環を形成してもよく、Rは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基又はニトロ基を示す。〕

〔式中、Rは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、低級アルキル基又は低級アルケニル基を示し、7個のRは同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基、低級アルコキシ基又は低級アルキル基を示すか、或は隣接する二つのRは共に低級アルキル基で置換されていてもよいピラン環を形成してもよく、Rは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、低級アルキル基、アミノ基又はニトロ基を示す。〕

〔式中、Rは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基又は低級アルキル基を示し、2個のRは同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基、低級アルコキシ基又は低級アルキル基を示し、Rは水素原子、水酸基、ハロゲン原子又は低級アルコキシ基を示し、5個のR10は同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基又は低級アルコキシ基を示す。〕

〔式中、3個のR11は同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基又は低級アルコキシ基を示す。〕

〔式中、R12は水素原子又は低級アルケニル基を示し、R13は水素原子又は水酸基を示し、R14は水素原子を示す。〕
で表されるフラボノイド化合物、又はその配糖体、エステル若しくは塩を有効成分とするBCRP阻害剤、BCRP関与の耐性を獲得した癌に対する抗癌剤耐性克服剤、又はBCRPを発現し、抗癌剤に対して低感受性の癌に対する抗癌剤耐性克服剤を提供するものである。
また本発明は、上記のBCRP阻害剤およびBCRPの基質となり得る抗癌剤を含有する抗癌剤を提供するものである。
また、本発明は下記式(6):

〔式中、R15はアミノ基またはニトロ基を示す。〕
で表される新規なフラボノイド化合物を提供するものである。
さらに本発明は、BCRPを高発現するSN−38耐性ヒト非小細胞肺癌A549細胞を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
図1は、A549/SN−38−4細胞のSN−38(A)およびミトキサントロン(B)に対する耐性獲得の程度を示す図である。
図2は、A549細胞およびA549/SN−38細胞における各種薬剤輸送蛋白質のmRNAの発現をRT−PCR法により解析した結果を示す図である。
図3は、A549細胞およびA549/SN−38細胞におけるBCRP(A)およびMRP2(B)mRNAの発現をリアルタイムRT−PCR法により定量的に解析した結果を示す図である。
図4は、A549細胞およびA549/SN−38−4細胞のSN−38(A)およびSN−38グルクロン酸抱合体(B)の蓄積量を示す図である。
図5は、P388/BCRP細胞のSN−38耐性に対するフラボノイド化合物〔化合物1−1(A)、化合物1−4(B)、化合物1−6(C)、化合物1−14(D)、化合物3−4(E)、化合物3−6(F)〕の克服作用を示す図である。
図6は、フラボノイド化合物によるP388/BCRP細胞のSN−38蓄積増大作用を示す図である。
図7は、フラボノイド化合物によるMCF−7細胞のSN−38蓄積増大作用を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
ヒト非小細胞肺癌A549細胞は、培養が容易であり、マウスに移植することが可能であるとともに、CPT−11の活性本体であるSN−38に対して高い感受性を示すことが知られている(J.Clin.Invest.101,1789−1796(1998))。このA549細胞を培地中のSN−38濃度を段階的に上げながら継続的に培養することにより、SN−38耐性A549細胞を樹立した。得られたSN−38耐性A549細胞は、後記の実施例に示すように、BCRPを高発現し、SN−38の細胞内蓄積を減少させることにより耐性を獲得しており、BCRP阻害剤のスクリーニングに有用である。SN−38耐性A549細胞は、in vitroのスクリーニングに用いてもよく、また、マウスに移植することによりin vivoのスクリーニングに用いることも可能である。
当該細胞を用いて、SN−38耐性克服作用を指標に様々な植物由来の成分についてスクリーニングを行った結果、フラボノイド化合物に強力なBCRP阻害作用があることを見出した。
本発明のフラボノイド化合物は、上記の式(1)で示されるフラボン誘導体、式(2)で示されるフラバノン誘導体、式(3)で示されるカルコン誘導体、式(4)で示されるイソフラボン誘導体、又は式(5)で表されるフラボノイド誘導体である。
式(1)〜(4)中、R〜R11としての低級アルコキシ基は、炭素数1〜4であるのが好ましく、特にメトキシ基が好ましい。また、R〜Rとしての低級アルキル基は、炭素数1〜4であるのが好ましく、特にメチル基が好ましい。式(1)、(2)及び(5)中のR、R又はR12としての低級アルケニル基は、炭素数2〜5であるのが好ましく、特に3−メチル−1又は2−ブテニル基が好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子が挙げられ、塩素又は臭素原子が好ましい。式(1)において隣接するRとRが形成するピラン環は、炭素数1−4の低級アルキル基、特にメチル基、で置換されていてもよい。式(2)においてピラン環を形成する隣接する二つのRは、ジヒドロベンゾピラン環上にあるのが好ましい。隣接する二つのRが形成するピラン環は、炭素数1−4の低級アルキル基、特にメチル基、で置換されていてもよい。
式()において、R15がニトロ基である化合物(2’−ニトロ−4’,5,5’,6,7,8−ヘキサメトキシフラボン)は2’−ニトロノビレチンとも呼ばれ、R15がアミノ基である化合物(2’−アミノ−4’,5,5’,6,7,8−ヘキサメトキシフラボン)は2’−アミノノビレチンとも呼ばれ、いずれも新規化合物である。
上記のフラボノイド化合物には、例えばβ−D−グルコシド等の糖が付加した配糖体も含まれる。また、ナトリウム、カリウム、塩酸塩等が付加して薬理学的に許容される塩を形成することができ、斯かる塩もまた本発明に含まれる。さらには、例えば酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸等の低級脂肪酸類が付加して、薬理学的に許容されるエステルを形成することができ、斯かるエステル体もまた本発明に含まれる。また、フラボノイド化合物は水和物等の溶媒和物の形態で存在することもあり、当該溶媒和物も本発明に含まれる。さらには、各異性体及びその混合物も本発明に含まれる。
本発明のフラボノイド化合物の由来については特に制限はなく、植物由来のものであってもよいし、化学合成品や半合成品であってもよい。植物から本発明のフラボノイド化合物を取得する方法に特に限定はなく、例えば植物の根、茎、葉、果実、及び/又は花部を水、メタノール、エタノール等の低級アルコール又はアセトンのような水溶性有機溶媒で室温又は加熱にて抽出する方法、水とこれらの水溶性有機溶媒との混合物により抽出する方法、更にクロロホルム、ジクロロメタン、酢酸エステル類、トルエン、又は炭酸ガスによる超臨界流体等の疎水性有機溶媒とメタノール等の水溶性有機溶媒の混合物により抽出する方法があるが、特に、根、茎、及び/又は葉を細断または粉砕し、メタノール等の低級アルコールで抽出するのが好ましい。そして、得られた抽出物はさらにカラムクロマトグラフィー等を用いて分画、精製することにより、本発明のフラボノイド化合物を単離することができる。
式(6)でR15がニトロ基である2’−ニトロ−4’,5,5’,6,7,8−ヘキサメトキシフラボンは、4’,5,5’,6,7,8−ヘキサメトキシフラボンを慣用の方法に従ってニトロ化することにより製造することができる。ニトロ化剤としては、例えば硝酸−硫酸のような混酸が用いられる。
式(6)でR15がアミノ基である2’−アミノ−4’,5,5’,6,7,8−ヘキサメトキシフラボンは、2’−ニトロ−4’,5,5’,6,7,8−ヘキサメトキシフラボンを常法に従って還元することにより製造することができる。
本発明のフラボノイド化合物は、そのままでも投与することができるが、効果を低減させない範囲内で、分散補助剤、賦形剤等の通常製剤化に使用されるような担体と混合し、粉剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、リモネーデ剤等の経口剤又は注射剤等の剤形で使用することができる。
この様な担体としては、例えば、マンニトール、乳糖、デキストラン等の水溶性の単糖類ないしオリゴ糖類もしくは多糖類;例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のゲル形成性又は水溶性のセルロース類;例えば結晶性セルロース、α−セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びそれらの誘導体等の水吸収性でかつ水難溶性のセルロース類;例えばヒドロキシプロピル澱粉、カルボキシメチル澱粉、架橋澱粉、アミロース、アミロペクチン、ペクチン及びそれらの誘導体等の水吸収性でかつ水難溶性の多糖類;例えばアラビアガム、トラガントガム、グリコマンナン及びそれらの誘導体等の水吸収性でかつ水難溶性のガム類;例えばポリビニルピロリドン、架橋ポリアクリル酸及びその塩、架橋ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート及びそれらの誘導体等の架橋ビニル重合体類;リン脂質、コレステロール等のリポソーム等分子集合体を形成する脂質類等を挙げることができる。
本発明のフラボノイド化合物の溶解性が低い場合には、可溶化処理を施すことができる。可溶化処理としては通常医薬に適用できる方法、例えば、ポリオキシエチレンアルコールエーテル類、ポリオキシエチレンアシルエステル類、ソルビタンアシルエステル類やポリオキシエチレンソルビタンアシルエステル類等の界面活性剤を添加する方法、ポリエチレングリコール等の水溶性高分子を使用する方法等が挙げられる。また、必要により、可溶性の塩にする方法、シクロデキストリン等を用いて包接化合物を形成させる方法等も使用できる。可溶化処理の方法は、目的とするフラボノイド化合物に応じて適宜変更できる。
BCRP阻害剤は、抗癌剤の投与によってBCRP関与の耐性を獲得した癌に対しては抗癌剤耐性克服剤として使用することが出来る。また、もとからBCRPを発現し、抗癌剤に対して低感受性の癌に対しては抗癌剤効果増強剤として使用することが出来る。BCRP阻害剤を有効成分とする抗癌剤耐性克服剤および抗癌剤効果増強剤の対象となる抗癌剤としては、BCRPの基質となり得る抗癌剤であれば特に制限はないが、例えば塩酸イリノテカン/CPT−11(活性本体:SN−38)やトポテカン等のトポイソメラーゼI阻害剤や、ミトキサントロン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ビスアントレン、エトポシド等のトポイソメラーゼII阻害剤や、メトトレキサート等の葉酸代謝拮抗薬等が挙げられる。
本発明のBCRP阻害剤の投与量は、投与法や患者の症状等に合わせて適宜調整すればよいが、成人1日あたり1mg〜10g、更に100mg〜10g、特に500mg〜10g投与するのが好ましい。また、抗癌剤とBCRP阻害剤との比率は、特に限定されず、その好適な範囲は用いる抗癌剤、阻害剤の種類等により異なるが、例えば抗癌剤として塩酸イリノテカンを用いる場合には、抗癌剤:BCRP阻害剤が重量換算で1:1〜1:500、特に1:1〜1:100、更に1:1〜1:10の比率とすることが好ましい。
本発明に用いられるフラボノイド化合物の具体例を表1、表2、表3、表4及び表5に示す。






【実施例】
次に本発明を実施例を挙げて更に詳細に説明するが、これは単に例示であって本発明を限定するものではない。
実施例1:3’,5−ジヒドロキシ−4’,6,7−トリメトキシフラボン(化合物1−6)の単離
ブラジル産生薬のカルケージャ368gをメタノールで二時間還流し、抽出液を減圧乾固した。得られたエキス8.1gのうち、5.09gを中圧クロマトグラフィーによりヘキサンで溶出した後(A画分)、ヘキサン−酢酸エチル(4:1)混合溶液で溶出し(B画分)、続いて酢酸エチル溶出して(C画分)、更にメタノールで溶出した(D画分)。得られたC画分1.53gのうち、1.0gを中圧クロマトグラフィーにより254nmにてモニターしながらヘキサンで溶出した後、ヘキサン−酢酸エチル(2:1)混合溶液、同(1:1)混合溶液、続いて酢酸エチル、メタノールの順に溶出し、12画分を得た。ヘキサン−酢酸エチル混合溶液(2:1)で溶出されたC6画分(100.1mg)を高速液体クロマトグラフィー〔Mightysil RP−18 GP、6.0×250mm、アセトニトリル−水の(45:55)混合溶液で溶出〕で分析した結果、保持時間15.2分のピークを示す画分が得られた。このC6画分をクロロホルム−メタノール(1:1)混合溶液により再結晶し、化合物1−6を47.9mg得た。この化合物の分析結果は次の通りである。
IR νmax(KBr)cm−1:1649(C=O)
EI−MS m/z:315[M]
H−NMR(DMSO−d)δ:3.74(C6−OCH,s),3.88(C4’−OCH,s),3.94(C7−OCH,s),6.83(C3−H,s),6.92(C8−H,s),7.10(C5’−H,d,J=8.8Hz),7.48(C2’−H,d,J=2.2Hz),7.57(8.5,C6’−H,dd,J=2.4Hz),9.44(C3’−OH,s),12.90(C5−OH,s),
13C−NMR(DMSO−d)δ:56.2(C6−OCH),56.9(C7−OCH),60.5(C6−OCH),92.0(C−8),103.7(C−3),105.4(C−10),112.5(C−5’),113.2(C−2’),119.3(C−6’),123.2(C−1’),132.2(C−6),147.0(C−3’),151.7(C−4’),152.0(C−5),153.1(C−9),159.1(C−7),164.3(C−2),182.5(C−4)
実施例2:5,4’−ジヒドロキシ−6,7−ジメトキシフラボン(化合物1−19)の単離
高砂薬業(株)より入手したインチンコウ(茵陳蒿)500gをメタノールで二時間還流し、抽出液を減圧乾固した。得られたエキス40.1gのうち5.07gをシリカゲルにまぶし、中圧クロマトグラフィーによりヘキサンで溶出した後(A画分)、ヘキサン−酢酸エチル(4:1)混合溶液で溶出し(B画分)、続いて酢酸エチル溶出して(C画分)、更にメタノールで溶出した(D画分)。得られたC画分1.56gのうち1.5gを中圧クロマトグラフィーにより254nmにてモニターしながらクロロホルムで溶出した後、クロロホルム−メタノール(99:1)混合溶液、同(19:1)混合溶液、続いて同(9:1)混合溶液、メタノールの順に溶出し、14画分を得た。クロロホルムで溶出されたC6画分(112.4mg)をメタノールに溶解し、C6メタノール不溶性画分(70mg)を得た。このC6メタノール不溶性画分を高速液体クロマトグラフィー〔Mightysil RP−18 GP、6.0×250mm、アセトニトリル−0.7%蟻酸溶液の(30:70)混合溶液で溶出〕で分析した結果、保持時間28.0分のピークを示した。この保持時間28.0分のピークを有する画分を精製して得た化合物1−19の分析結果は次の通りである。
IR νmax(KBr)cm−1:1655(C=O)
MS(ESI)m/z:315[M+H]
H−NMR(CDCL)δ:3.87(OCH,s),3.99(OCH,s),6.57(C3−H,s),6.62(C8−H,s),6.96(C3’−H,C5’−H,dd,J=8.8Hz,1.7),7.79(C2’−H,C6’−H,dd,J=8.8Hz,1.5),9.89(C4’−OH,s),12.88(C5−OH,s)
実施例3:2’−ニトロ−4’,5,5’,6,7,8−ヘキサメトキシフラボン(化合物1−20)の合成
4’,5,5’,6,7,8−ヘキサメトキシフラボン831mgを氷浴中で濃硫酸17mlに溶解した。溶液に5%発煙硝酸−硫酸混液1.7mlを滴下し、そのまま氷浴中で30分間攪拌した。反応液を50mlの氷水にあけ、10分間攪拌した。析出した結晶を吸引濾過し、結晶を酢酸エチルにて洗浄した。水層は酢酸エチル50mlにて2回抽出した。得られた酢酸エチル層を減圧下濃縮乾固した。得られた固形物を先の結晶と併せ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[関東化学製SiO、ヘキサン−酢酸エチル(1:1)で溶出]にて分画した。目的の画分を減圧下濃縮乾固することにより、2’−ニトロ−4’,5,5’,6,7,8−ヘキサメトキシフラボンを得た(収量326mg:収率35%)。
IR νmax(KBr)cm−1:3489,2943,2838,1655,1530
MS(ESI)m/z:448[M+H]
H−NMR(CDCl)δ:3.83(3H,s),3.95(3H,s),3.97(3H,s),3.98(3H,s),4.03(3H,s),4.08(3H,s),6.41(1H,s),7.00(1H,s),7.67(1H,s)
実施例4:2’−アミノ−4’,5,5’,6,7,8−ヘキサメトキシフラボン(化合物1−5)の合成
2’−ニトロ−4’,5,5’,6,7,8−ヘキサメトキシフラボン135mgを濃塩酸−メタノール(1:1)混液5mlに溶解し、鉄粉末51.6mgを加え、室温にて4時間攪拌した。反応液に精製水20ml、酢酸エチル20mlを加え、分液した。得られた水層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にてpH8に調整し、酢酸エチル130mlにて2回抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水70mlにて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別し、酢酸エチルにて洗浄した後、酢酸エチル層を減圧下濃縮乾固した。得られた固形物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[関東化学製SiO、ヘキサン−酢酸エチル(1:1)で溶出]にて分画した。目的の画分を減圧下濃縮乾固することにより、2’−アミノ−4’,5,5’,6,7,8−ヘキサメトキシフラボンを得た(収量66mg:収率52%)。
IR νmax(KBr)cm−1:3496,3326,1624,1560,1520
MS(ESI)m/z:418[M+H]
H−NMR(CDCl)δ:3.85(3H,s),3.89(3H,s),3.96(6H,s),3.99(3H,s),4.09(3H,s),6.28(1H,s),6.48(1H,s),6.96(1H,s)
実施例5:4’,5−ジヒドロキシ−3,3’,7−トリメトキシフラボン(化合物1−22)の単離
タイ産生薬のPogostemon cablinの枝葉53.8gをメタノールで一週間室温抽出し、抽出液を減圧乾固した。得られたエキス4.9gのうち、4.7gを中圧クロマトグラフィーによりヘキサンで溶出した後(A画分)、ヘキサン−酢酸エチル(4:1)混合溶液で溶出し(B画分)、続いて酢酸−エチル溶出して(C画分)、更にメタノールで溶出した(D画分)。得られたB画分1.3gのうち、0.5gを遠心クロマトグラフィーにより254nmにてモニターしながらクロロホルムで溶出した後、クロロホルム−メタノール(9:1)混合溶液、メタノールの順に溶出し、18画分を得た。クロロホルム−メタノール(9:1)混合溶液で溶出されたB9画分(14.8mg)を高速液体クロマトグラフィー(Mightysil RP−18 GP、6.0×250mm、アセトニトリル−水の(45:55)混合溶液で溶出)で分析した結果、保持時間14.5分のピークを示す画分が得られた。この化合物の分析結果は次の通りである。
MS(ESI)m/z:345[M+H],343[M−H]
H−NMR(CDCl)δ:3.85(C3’−OCH,s),3.88(C7’−OCH,s),3.98(C−OCH,s),6.36(C−H,d,J=2.4),6.44(C−H,d,J=2.4),7.09(C5’−H,d,J=8.8),7.67(C6’−H,dd,J=8.8,2.0),7.70(C2’−H,d,J=2.0
13C−NMR(CDCl)δ:55.8(C3’−OCH),56.1(C−OCH),60.2(C−OCH),92.2(C−8),97.8(C−6),106.0(C−10),110.9(C−2’),114.6(C−5’),122.4(C−1’),122.7(C−6’),138.8(C−3),146.3(C−3’),148.3(C−4’),155.9(C−2),156.7(C−5),162.0(C−9),165.4(C−7),178.7(C−4)
実施例6:5−ヒドロキシ−3’,4’,7−トリメトキシフラボン(化合物1−23)の単離
中国産生薬の独角柑(Striga asiaticaの全草)約300gをメタノールで二時間還流抽出し、抽出液を減圧乾固した。得られたエキス6.8gのうち、5.0gを中圧クロマトグラフィーによりヘキサンで溶出した後(A画分)、ヘキサン−酢酸エチル(4:1)混合溶液で溶出し(B画分)、続いて酢酸−エチル溶出して(C画分)、更にメタノールで溶出した(D画分)。得られたB画分480mgを遠心クロマトグラフィーにより254nmにてモニターしながらクロロホルムで溶出した後、クロロホルム−メタノール(9:1)混合溶液、メタノールの順に溶出し、9画分を得た。クロロホルムで溶出されたB3およびB4画分(各42.3mg)を高速液体クロマトグラフィー(Mightysil RP−18 GP、6.0×250mm、アセトニトリル−メタノール−水の(45:5:50)混合溶液で溶出)で分析し、保持時間16.5分のピークを分取した。この化合物の分析結果は次の通りである。
MS(ESI)m/z:329[M+H]
H−NMR(CDCl)δ:3.89,3.97,3.99(C,C3’,C4’−OCH,s),6.38(C−H,d,J=2.4),6.50(C−H,d,J=2.4),6.59(C−H,s),6.98(C5’−H,d,J=8.8),7.34(C2’−H,d,J=2.4),7.53(C6’−H,dd,J=8.8,2.4),12.79(C−OH,s)
13C−NMR(CDCl)δ:55.8(C−OCH),56.1(C3’−OCH3,4’−OCH),92.7(C−2),98.1(C−8),104.7(C−3),105.6(C−10),108.9(C−2’),111.2(C−5’),120.1(C−6’),123.8(C−1’),149.3(C−3’),152.3(C−4’),151.7(C−4’),157.7(C−9),162.2(C−2),164.0(C−5),165.5(C−7),182.4(C−4)
実施例7:3,3’,4’,5,6,7,8−ヘプタメトキシフラボン(化合物1−24)および3’,4’,5,6−ペンタメトキシフラボン(化合物1−25)の単離
中国産生薬の橘皮(Citrus tangerinaの果皮)約2Kgをメタノールで二時間還流抽出し、抽出液を減圧乾固した。得られたエキス356.5gのうち、35.2gを中圧クロマトグラフィーによりヘキサンで溶出した後(A画分)、ヘキサン−酢酸エチル(4:1)混合溶液で溶出し(B画分)、続いて酢酸−エチル溶出して(C画分)、更にメタノールで溶出した(D画分)。得られたC画分556mgを中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィにより254nmにてモニターしながらクロロホルムで溶出した後、クロロホルム−メタノール(98:2)混合溶液、同(95:5)混合溶液、メタノールの順に溶出し10画分を得た。クロロホルムで溶出されたC3およびC4画分(計230mg)を中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィにより254nmにてモニターしながらヘキサンで溶出した後、ヘキサン−酢酸エチル(19:1)混合溶液、同(9:1)、(8:2)、(7:3)、(5:5)、(1:2)混合溶液、酢酸エチル、メタノールの順に溶出し10画分を得た。ヘキサン−酢酸エチル(5:5)混合溶液で溶出されたC23G画分(90.0mg)および(1:2)混合溶液で溶出されたC23J画分(5.2mg)を高速液体クロマトグラフィー(Mightysil RP−18 GP、6.0×250mm、アセトニトリル−5%蟻酸−メタノール−水の(30:10:20:40)混合溶液で溶出)で分析した結果、保持時間18.3分(化合物1−24)および10.6分(化合物1−25)のピークを示す画分が得られた。この化合物の分析結果は次の通りである。
化合物1−24
MS(ESI)m/z:433[M+H]
H−NMR(CDCl)δ:3.91(OCH,s),3.96(OCH,s),3.98(OCH×2,s),3.99(OCH,s),4.02(OCH,s),4.11(OCH,s),7.03(C5’−H,d,J=8.3),7.82(C2’−H,d,J=2.4),7.85(C6’−H,dd,J=8.3,2.4)
13C−NMR(CDCl)δ:56.6,56.7(C3’,C4’−OCH),60.5,62.4,62.5,62.7,63.0(C,C,C,C,C−OCH),107.4(C−2’),111.7(C−5’),115.2(C−10),122.7(C−6’),124.1(C−1’),138.6(C−8),141.5(C−6),144.6(C−3),147.4(C−5),148.9(C−9),149.5(C−3’),151.8(C−2),152.0(C−7),153.8(C−4’),174.6(C−4)
化合物1−25
MS(ESI)m/z:373[M+H],371[M−H]
H−NMR(CDCl)δ:3.93(OCH,s),3.96(OCH,s),3.98(OCH,s),3.99(OCH×2,s),6.60(C−H,s),6.80(C−H,s),6.97(C5’−H,d,J=8.8),7.33(C2’−H,d,J=2.0),7.51(C6’−H,J=8.3,2.0)
13C−NMR(CDCl)δ:56.3,56.3,56.5(C,C3’,C4’−OCH),61.7,62.5(C,C−OCH),96.4(C−8),107.6(C−3),108.8(C−2’),111.3(C−5’),112.9(C−10),119.8(C−6’),124.3(C−1’),140.4(C−6),139.3(C−3’),152.0(C−4’),152.6(C−9),154.7(C−5),157.8(C−7),161.3(C−2),177.4(C−4)
実施例8:5−ヒドロキシ−6,7−ジメトキシフラボン−4’−グルコシド(化合物1−26)の単離
北海道産のチシマアザミの茎葉55.0gをメタノールで一週間室温抽出し、抽出液を減圧乾固した。得られたエキス13.5gのうち、5.1gを中圧クロマトグラフィーによりヘキサンで溶出した後(A画分)、ヘキサン−酢酸エチル(4:1)混合溶液で溶出し(B画分)、続いて酢酸−エチル溶出して(C画分)、更にメタノールで溶出した(D画分)。得られたD画分3.8gのうち2.0gを中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィにより254nmにてモニターしながらクロロホルムで溶出した後、クロロホルム−メタノール(9:1)混合溶液、同(8:1)、(3:7)混合溶液、メタノールの順に溶出し10画分を得た。クロロホルム−メタノール(9:1)混合溶液で溶出されたD4画分1.34gをクロロホルムにて再結晶し、白色結晶を得た。高速液体クロマトグラフィー(Mightysil RP−18 GP、6.0×250mm、アセトニトリル−水の(20:80)混合溶液で溶出)で分析した結果、保持時間27.6分のピークを示す化合物が得られた。この化合物の分析結果は次の通りである。
MS(ESI)m/z:477[M+H]
H−NMR(DMSO−d6)δ:3.74(C−CH3,s),3.94(C6’−CH,s),4.59(t,J=5.6),5.04(d,J=7.8),5.06(d,J=5.6),5.13(d,J=4.4),5.37(d,J=4.6),6.98(C−H,s),6.96(C−H,s),7.20(C3’−H,C5’−H,d,J=9.0),8.07(C2’−H,C6’−H,d,J=9.0),12.9(C−OH,s)
13C−NMR(DMSO−d6)δ:56.5(C−OCH),60.0(C−OCH3),60.6(C−6’’),69.6(C−4’’),73.1(C−2’’),76.5(C−3’’),77.2(C−5’’),91.7(C−8),99.8(C−1’’),103.6(C−3),105.2(C−10),116.6(C−3’,C−5’),123.8(C−1’),128.2(C−2’,C−6’),131.9(C−6),152.0(C−5),152.7(C−9),158.7(C−7),160.3(C−4’),163.4(C−2),182.3(C−4)
実施例9:5−ヒドロキシ−7−メトキシフラボン−4´−グルコシド(化合物1−27)の製造
化合物1−1(5,4’−ジヒドロキシ−7−メトキシフラボン)(100mg)をアセトンに溶解し、これにα−D−アセトブロモグルコース(647mg)と炭酸カリウム(231mg)を加え、激しく攪拌しながら一昼夜煮沸還流した。濾過により不溶物を除き、濾取物をクロロホルムで洗浄し、濾洗液を合し、これを減圧下濃縮乾固した。残留物をクロロホルム/メタノール系でシリカゲルクロマトグラフィーにて精製した。これを無水メタノールに懸濁し、28%NaOMeを滴下し、室温で0.5h攪拌した。反応混合物に水を加え、イオン交換樹脂(スルホン酸−H型)で中和した。樹脂を濾過により除き、溶媒を減圧下濃縮乾固し、クロロホルム/メタノール系でシリカゲルクロマトグラフィーにて精製して、目的物を得た(収量10mg:収率6%)。
淡黄色結晶、MS(ESI)m/z:447[M+H]
H−NMR(DMSO−d6)δ3.18(1H,t,J=9Hz),3.28(1H,t,J=9Hz),3.32(1H,t,J=9Hz),3.41(1H,m),3.50(1H,dd,J=6Hz,12Hz),3.71(1H,dd,J=2Hz,11Hz),3.88(3H,s),5.04(1H,d,J=7Hz),6.40(1H,d,J=2Hz),6.83(1H,d,J=2Hz),6.94(1H,s),7.21(2H,d,J=9Hz),8.07(2H,d,J=9Hz)
実施例10:4H,8H−ベンゾ[1,2−b:3,4−b’]ジピラン−4−オン,2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−5−ヒドロキシ−8,8−ジメチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)(化合物1−28)の単離
タイ産生薬のJack Fruit Tree(Artocarpus heterophyllusの木部)169gをメタノールで一週間室温抽出し、抽出液を減圧乾固した。得られたエキス8.1gのうち、4.7gを中圧クロマトグラフィーによりヘキサンで溶出した後(A画分)、ヘキサン−酢酸エチル(4:1)混合溶液で溶出し(B画分)、続いて酢酸−エチル溶出して(C画分)、更にメタノールで溶出した(D画分)。得られたC画分3.2gを中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィにより254nmにてモニターしながらクロロホルムで溶出した後、クロロホルム−メタノール(98:2)混合溶液、同(19:1)、(9:1)、(4:1)、(2:1)、(1:1)混合溶液、メタノールの順に溶出し10画分を得た。クロロホルムで溶出されたC4画分(217mg)を高速液体クロマトグラフィー(Mightysil RP−18 GP、6.0×250mm、アセトニトリル−水の(70:30)混合溶液で溶出)で分析し、保持時間9.8分(化合物1−28)のピークを分取した。この化合物の分析結果は次の通りである。
化合物1−28
MS(ESI)m/z:421[M+H],419[M−H]
H−NMR(CDOD)δ:1.36(CH,s),1.43(CH×2,s),1.58(CH,s),3.08(H,d,J=6.8),5.09(H,tt,J=6.8,3.9),5.66(C−H,d,J=9.8),6.25(C−H,s),6.39(C5’−H,dd,J=8.3,2.4),6.40(C3’−H,s),6.67(C10−H,d,J=9.8),7.06(C6’−H,d,J=8.3)
13C−NMR(CDOD)δ:24.6(CH),25.6(CH),28.3(C−CH×2),78.7(C−8),95.4(C−6),103.5(C−3’),105.8,107.7(C−9),113.0(C−1’),116.1(C−5’),121.8(C−3),122.5,132.2(C−10),132.5,157.0,157.5(C−2’),158.7(C−4’),160.3(C−7),161.7(C−2),163.4(C−5),183.6(C−4)
実施例11:2’,4’,5−トリヒドロキシ−7−メトキシ6−(3−メチル−1−ブテニル)−3−(3−メチル−2−ブテニル)−フラボン(化合物1−29)の単離
タイ産生薬のJack Fruit Tree(Artocarpus heterophyllusの木部)169gをメタノールで一週間室温抽出し、抽出液を減圧乾固した。得られたエキス8.1gのうち、4.7gを中圧クロマトグラフィーによりヘキサンで溶出した後(A画分)、ヘキサン−酢酸エチル(4:1)混合溶液で溶出し(B画分)、続いて酢酸−エチル溶出して(C画分)、更にメタノールで溶出した(D画分)。
クロロホルムで溶出されたC4画分(217mg)を高速液体クロマトグラフィー(Mightysil RP−18 GP、6.0×250mm、アセトニトリル−水の(70:30)混合溶液で溶出)で分析し、保持時間8.5分(化合物1−29)のピークを分取した。この化合物の分析結果は次の通りである。
化合物1−29
MS(ESI)m/z:437[M+H],435[M+H]
H−NMR(CDOD)δ:1.02(C1718−CH,d,J=6.83),1.33(C12−CH,s),1.52(C13−CH,s),2.33(C16−H,m),3.02,3.04(C−CH,s),3.77(C−OCH,s),5.04(C10−H,tt,J=5.4,1.5),6.33(C−H,s),6.34(C5’−H,d,J=9.3),6.36(C3’−H,d,J=3.4),6.43(C14−H,dd,J=16.1,1.0),6.56(C15−H,dd,J=16.1,7.3),7.02(C6’−H,J=8.3)
13C−NMR(CDOD)δ:18.5(C−13),24.1(C−17,C−18),25.8(C−9),26.7(C−12),35.2(C−16),57.3(C−OCH),91.5(C−8),104.6(C−3’),106.7(C−4a),108.8(C−5’),111.2(C−6),114.1(C−1’),118.0(C−14),122.9(C−3),123.7(C−10),133.4(C−11),133.5(C−6’),143.5(C−15),158.6(C−2’),158.6(C−8a),160.4(C−5),162.6(C−4’),164.3(C−2),165.0(C−7),184.6(C−4)
実施例12:2H,6H−ベンゾ[1,2−b:5,4−b’]ジピラン−6−オン,7,8−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−8−(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−ジメチル−10−(3−メチル−2−ブテニル)(化合物2−3)の単離
タイ産生薬のAlbizzia myriophyllaの枝60.0gをメタノールで一週間室温抽出し、抽出液を減圧乾固した。得られたエキス4.4gのうち、3.80gを中圧クロマトグラフィーによりヘキサンで溶出した後(A画分)、ヘキサン−酢酸エチル(4:1)混合溶液で溶出し(B画分)、続いて酢酸−エチル溶出して(C画分)、更にメタノールで溶出した(D画分)。得られたB画分1.2gを高速液体クロマトグラフィー(Mightysil RP−18 GP、6.0×250mm、アセトニトリル−水の(70:30)混合溶液で溶出)で分析した結果、保持時間15.2分のピークを示す画分が得られた。この化合物の分析結果は次の通りである。
MS(ESI)m/z:407[M+H],405[M−H]
H−NMR(CDCl)δ:1.43,1.45(C2’’’−CH×2,s),1.65(C3’’−CH×2,s),2.80(C−H,dd,J=17.1,3.2),3.39(C−H,dd,J=17.1,2.9),3.21(C’’−H,d,J=7.3),5.14(C2’’−H,t,J=7.3),5.34(C−H,dd,J=12.7,2.9),5.50(C−‘’’H,d,J=10.0),6.63(C4’’’−H,d,J=10.0),6.87(C−H,C’−H,d,J=8.8),7.32(C2’−H,C’−H,d,J=8.8)
13C−NMR(CDCl)δ:17.8(C−5’’−CH),21.5(C−1’’),25.8(C4’’−CH),28.3(C6’’’−CH3),28.4(C−5’’’−CH3),43.2(C−3),78.1(C−2’’’),78.5(C−2),102.7(C−10),102.8(C−6),108.6(C−8),115.5(C−3’,C−5’),115.7(C−4’’’),122.5(C−2’’),126.0(C−1’),127.7(C−2’,C−6’),131.1(C−3’’’),155.8(C−4’),156.6(C−9),159.3(C−5),160.0(C−7),196.4(C−4)
実施例13:6H,7H−[1]ベンゾピラノ[4,3−b][1]ベンゾピラン−7−オン,3,8,10−トリヒドロキシ−9−(3−メチル−1−ブテニル)−6−(2−メチル−1−プロペニル)(化合物5−1)の単離
タイ産生薬のJack Fruit Tree(Artocarpus heterophyllusの木部)169gをメタノールで一週間室温抽出し、抽出液を減圧乾固した。得られたエキス8.1gのうち、4.7gを中圧クロマトグラフィーによりヘキサンで溶出した後(A画分)、ヘキサン−酢酸エチル(4:1)混合溶液で溶出し(B画分)、続いて酢酸−エチル溶出して(C画分)、更にメタノールで溶出した(D画分)。得られたC画分3.2gを中圧シリカゲルカラムクロマトグラフィにより254nmにてモニターしながらクロロホルムで溶出した後、クロロホルム−メタノール(98:2)混合溶液、同(19:1)、(9:1)、(4:1)、(2:1)、(1:1)混合溶液、メタノールの順に溶出し10画分を得た。クロロホルムで溶出されたC3画分を高速液体クロマトグラフィー(Mightysil RP−18 GP、6.0×250mm、アセトニトリル−水の(70:30)混合溶液で溶出)で分析し、保持時間10.8分(化合物5−1)のピークを分取した。
この化合物の分析結果は次の通りである。
化合物5−1
MS(ESI)m/z:421[M+H]
H−NMR(CDOD)δ:1.92(CH3×2,d,J=6.6),1.70(CH3,d,J=1.2),1.95(CH3,d,J=1.2),2.41(CH,m),5.40(CH=,dt,J=9.5,1.2),6.14(C−H,d,J=9.3),6.30(C−H,d,J=2.2),6.42(C11−H,s),6.50(C−H,dd,J=8.5,2.2),6.53(=CH,dd,J=16.1,1.0),6.68(CH=,dd,J=16.1,7.0),7.59(C−H,d,J=8.5)
13C−NMR(CDOD)δ:19.3(CH3),23.9(CH3×2),26.6(CH3),35.0,67.3,71.3,95.0(C−11),105.6(C−4),106.0,109.3,110.9,111.6,118.0(C−2),123.2,126.8(C−5),140.4,143.2,156.9,157.6(C−5),160.1,161.2(C−8),163.6(C−3),165.3(C−10),180.4(C−7)
実施例14:SN−38耐性A549細胞の樹立
ヒト非小細胞肺癌A549細胞は、10%FBS、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを含有したHam’s F−12培地(10%FBS/Ham’s F−12)を使用して5%CO,37℃条件下で継代培養した。SN−38耐性A549細胞は、A549細胞を培地中のSN−38濃度を段階的(4〜10ng/ml)に増加させて2ヶ月間継代培養して選択した。さらに、このSN−38耐性A549細胞から限界希釈法によるクローン化を行い、6株のクローン化SN−38耐性A549細胞(A549/SN−38−1〜6)を樹立した。
実施例15:A549/SN−38細胞の抗癌剤感受性試験
A549またはA549/SN−38−1〜6の各細胞を10%FBS/Ham’s F−12に懸濁し、96ウェルマイクロプレートに播種して5%CO、37℃条件下で培養した(2 x 10 cells/50μl/well)。一晩培養後、抗癌剤を溶解した10%FBS/Ham’s F−12を50μl加え、5%CO、37℃条件下で48時間培養した。培養後、生細胞測定用試薬〔TetraColor ONE(商標名)、生化学工業製〕を使用して、添付の操作手順に従って生細胞数を測定した。各種抗癌剤に対するA549細胞およびA549/SN−38細胞6株の感受性を表6および図1に示す。なお、IC50値は細胞増殖を50%抑制する抗癌剤の濃度である。また、相対耐性度は、A549/SN−38細胞におけるIC50値をA549細胞におけるIC50値で除した値であり、この値が大きいほど耐性獲得が大きいことを意味する。A549/SN−38細胞は、BCRPの基質であるSN−38およびミトキサントロンに対して特に強い耐性を示した。

実施例16 A549/SN−38細胞のRT−PCR解析
A549細胞、A549/SN−38細胞6株およびBCRPを発現していることが知られるヒト乳癌MCF−7細胞における各種薬剤輸送蛋白質のmRNAの発現をRT−PCR法により解析した。細胞よりRNA抽出用試薬〔ISOGEN(商標名)、ニッポンジーン製〕を用いて全RNAを抽出し、RT−PCR用試薬〔Ready・To・Go RT−PCR Beads(商標名)、アマシャム ファルマシア バイオテク(Amersham pharmacia biotech)製〕およびサーマルサイクラー〔iCycler(商標名)、バイオ・ラッド(BIO−RAD)製〕を使用して添付の操作手順に従ってRT−PCRを行った(全RNA:0.5μg)。PCR産物は、2%アガロースゲルを用いて電気泳動後、エチジウムブロマイド染色を施してトランスイルミネーターにて検出した。また、リアルタイムRT−PCR用試薬〔SYBR Green RT−PCR Reagents(商標名)、アプライド バイオシステムズ(Applied Biosystems)製〕およびPCRプロダクト自動検出/定量システム〔ABI PRISM 7000(商標名)、アプライド バイオシステムズ製〕を使用して添付の操作手順に従ってリアルタイムRT−PCR法を行い、定量的な解析を行った(全RNA0.1μg)。なお、BCRP、MDR1、MRP1、MRP2、MRP3および内在性コントロール遺伝子のG3PDHに対する各PCRプライマーは、それぞれ公知のmRNA塩基配列(アクセッション番号No.AF098951、AF016535、L05628、U63970、AF009670、M33197)よりデザインした。RT−PCRの結果を図2に、リアルタイムRT−PCRの結果を図3に示す。A549細胞に比較してA549/SN−38細胞6株では全てにおいてBCRPの発現が顕著に増加していた。一方、BCRPと同じくSN−38を基質とするMRP2の発現量に大きな違いは認められなかった。また、その他の薬剤輸送蛋白質についてもA549細胞およびA549/SN−38細胞間で発現量に違いは認められなかった。これらの結果から、BCRPがA549/SN−38細胞の抗癌剤耐性機構に関与することが示唆された。なお、本RT−PCR解析で、ヒト乳癌MCF−7細胞におけるBCRP発現も確認された。一方、薬剤輸送蛋白質の発現の他にも、トポイソメラーゼ−I、トポイソメラーゼ−II、Bcl−2、BaxおよびIκBαの発現をウェスタンブロット法により、トポイソメラーゼ−I活性についてDNA弛緩反応を指標に検討したが、これらがA549/SN−38細胞の抗癌剤耐性機構に関与することを示唆するデータは得られなかった。
実施例17:A549/SN−38細胞の抗癌剤蓄積量
A549細胞またはA549/SN−38−4細胞(4 x 10 cells/ml)を懸濁した10%FBS/RPMI1640 1mlにSN−38DMSO溶液1μl(最終濃度:300ng/ml)を加えて37℃にて60分間インキュベート後、遠心(2℃、1,400 x g、1min)して上清を除去した。沈殿した細胞に氷冷PBSを加えて再懸濁後、遠心(2℃、1,400 x g、1min)して細胞を洗浄した。この洗浄操作をさらに1回行った後、PBS 375μlを加えて超音波処理により細胞を破壊した。この細胞破壊液にメタノール375μlおよび10%硫酸亜鉛溶液15μlを加えて攪拌後、遠心(2℃、12,500 x g、5min)して上清を回収した。蛍光強度測定用の白色96ウェルマイクロプレートに回収した上清を分注後(200μ/well)、マイクロプレート蛍光光度計〔SPECTRA max GEMINI XS(商標名)、モレキュラー デバイス(Molecular Devices)製〕により上清中のSN−38およびSN−38グルクロン酸抱合体量を測定し(SN−38:励起波長380nm、測定波長560nm;SN−38グルクロン酸抱合体:励起波長370nm、測定波長430nm)、細胞内の蓄積量を算出した。その結果、図4に示すように、A549/SN−38−4細胞のSN−38蓄積量はA549細胞におけ蓄積量に比較して約1/5に減少していた。この結果はA549/SN−38細胞の抗癌剤耐性機構にBCRPが関与することを支持するものである。一方、SN−38グルクロン酸抱合体は両細胞においてほとんど検出されず、グルクロン酸抱合活性の耐性機構への関与はないことが示された。
実施例18:フラボノイド化合物によるA549/SN−38細胞の抗癌剤耐性に対する克服作用
A549細胞またはA549/SN−38−4細胞を10%FBS/Ham’s F−12に懸濁し、96ウェルマイクロプレートに播種して5%CO、37℃条件下で培養した(2 x 10 cells/50μl/well)。一晩培養後、フラボノイド化合物およびSN−38を溶解した10%FBS/Ham’s F−12をそれぞれ25μl加え、5%CO、37℃条件下で48時間培養した。培養後、TetraColor ONEを使用して、添付の操作手順に従って生細胞数を測定した。各フラボノイド化合物の耐性克服効果を表7にEC50値で示す。なお、EC50値は、相対耐性度を50%低下させる時のフラボノイド化合物の濃度である。その結果、フラボノイド化合物はA549/SN−38−4細胞のSN−38耐性に対して強力な克服作用を示した。一方、濃度依存的に耐性を克服する濃度範囲において、フラボノイド化合物自体はA549細胞およびA549/SN−38−4細胞の増殖に影響を及ぼさなかった。この結果は、本発明のフラボノイド化合物がBCRPを阻害し、癌細胞の抗癌剤耐性を克服することを示唆するものである。


実施例19:フラボノイド化合物によるMCF−7細胞の抗癌剤に対する感受性増強作用
BCRPを発現していることが知られるヒト乳癌MCF−7細胞(Blood 99,3763−3770(2002))を用いて、癌細胞の抗癌剤に対する感受性に及ぼすフラボノイド化合物の作用を検討した。MCF−7細胞を10%FBS/RPMI1640に懸濁し、96ウェルマイクロプレートに播種して5%CO、37℃条件下で培養した(3 x 10 cells/50μl/well)。一晩培養後、フラボノイド化合物およびSN−38を溶解した10%FBS/RPMI1640をそれぞれ25μl加え、5%CO2、37℃条件下で48時間培養した。培養後、TetraColor ONEを使用して、添付の操作手順に従って生細胞数を測定した。表8にフラボノイド化合物によるMCF−7細胞のSN−38に対する感受性の変化を、IC50値(細胞増殖を50%抑制するSN−38の濃度)で表した。その結果、フラボノイド化合物はMCF−7細胞のSN−38に対する感受性を増強した。一方、濃度依存的に感受性を増強する濃度範囲において、フラボノイド化合物自体はMCF−7細胞の増殖に影響を及ぼさなかった。この結果は、本発明のフラボノイド化合物がBCRPを阻害し、抗癌剤に対する癌細胞の感受性を増強することを示唆するものである。

実施例20:フラボノイド化合物によるヒトBCRP遺伝子導入マウス白血病P388細胞の抗癌剤耐性に対する克服作用
マウス白血病P388細胞またはヒトBCRP遺伝子導入P388細胞(P388/BCRP細胞、財団法人癌研究会癌化学療法センター 杉本芳一氏より入手)を10%FBS/RPMI1640に懸濁して96ウェルマイクロプレートに播種後(1 x 10 cells/50μl/well)、フラボノイド化合物およびSN−38を溶解した10%FBS/RPNI1640をそれぞれ25μl加え、5%CO、37℃条件下で48時間培養した。培養後、TetraColor ONEを使用して、添付の操作手順に従って生細胞数を測定した。その結果を図5に示す。フラボノイド化合物はP388/BCRP細胞のSN−38耐性に対して強力な克服作用を示した。一方、P388細胞のSN−38に対する感受性に対しては影響を及ぼさなかった。この結果は、本発明のフラボノイド化合物にBCRP阻害作用があることを確証づけるものである。
実施例21:フラボノイド化合物によるMES−SA/Dx5細胞の多剤耐性に及ぼす作用
ヒト子宮癌MES−SA細胞またはP−糖蛋白質を高発現して多剤耐性を獲得したMES−SA/Dx5細胞(Cancer Res.45,4091−4096(1985))を10%FBS/DMEMに懸濁し、96ウェルマイクロプレートに播種して5%CO、37℃条件下で培養した(3 x 10 cells/50μl/well)。一晩培養後、フラボノイド化合物およびパクリタキセルを溶解した10%FBS/DMEMをそれぞれ25μl加え、5%CO、37℃条件下で48時間培養した。培養後、TetraColor ONEを使用して、添付の操作手順に従って生細胞数を測定した。各フラボノイド化合物の多剤耐性に及ぼす作用を表9にEC50値で示す。なお、EC50値は、相対耐性度を50%低下させる時のフラボノイド化合物の濃度である。その結果、検討した濃度範囲において、フラボノイド化合物はMES−SA/Dx5細胞のパクリタキセル耐性に影響を及ぼさなかった。また、フラボノイド化合物自体はMES−SA細胞およびMES−SA/Dx5細胞の増殖に影響を及ぼさなかった。この結果から、本発明のフラボノイド化合物はP−糖蛋白質には作用せず、BCRPに対して特異性を有することが示された。


実施例22:フラボノイド化合物によるBCRP発現細胞の抗癌剤蓄積量に及ぼす作用
P388細胞およびP388/BCRP細胞(1 x 10 cells/ml)、またはMCF−7細胞(3 x 10 cells/ml)を懸濁した10%FBS/RPMI1640 1mlにフラボノイド化合物およびSN−38(最終濃度:500ng/ml)を加えて37℃にて60分間インキュベート後、遠心(2℃、1,400 x g、1min)して上清を除去した。沈殿した細胞に氷冷10%FBS/RPMI1640を加えて再懸濁後、遠心(2℃、1,400 x g、1min)して細胞を洗浄した。この洗浄操作をさらに1回行った後、PBS 375μlを加えて超音波処理により細胞を破壊した。この細胞破壊液にメタノール375μlおよび10%硫酸亜鉛溶液15μlを加えて攪拌後、遠心(2℃、12,500 x g、5min)して上清を回収した。蛍光強度測定用の白色96ウェルマイクロプレートに回収した上清を分注後(200μ/well)、マイクロプレート蛍光光度計により上清中のSN−38量を測定し(SN−38:励起波長380nm、測定波長560nm)、細胞内の蓄積量を算出した。その結果、図6に示すように、本発明のフラボノイド化合物はP388/BCRP細胞のSN−38細胞内蓄積量を増加させた。また、図7に示すように、本発明のフラボノイド化合物はMCF−7細胞のSN−38蓄積量を増加させた。この結果は、本発明のフラボノイド化合物がBCRPを阻害し、抗癌剤の細胞内取り込み量を増加させることを示唆するものである。
実施例23:フラボノイド化合物のin vivoにおける抗癌剤耐性克服効果
6週齢のCDF系、雌マウス(5匹/群)の腹腔内に、P388細胞またはP388/BCRP(1 x 10 cells/mouse)を移植し、フラボノイド化合物および塩酸イリノテカン(CPT−11)を腫瘍移植1日後より10日後まで1日1回、計10回腹腔内に投与した。なお、フラボノイド化合物はエタノール、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート〔Tween 80(商標名)、東京化成工業製〕および5%グルコース混合液(エタノール/Tween 80/5%グルコース=5:5:90)に懸濁し、CPT−11は生理食塩水に溶解して投与し、対照群には溶媒のみを投与した。腫瘍移植後のマウスの生存日数を調べ、次式より延命率T/C(%)を求め、抗腫瘍効果を判定した。
延命率T/C(%)=
(投与群マウスの平均生存日数)÷(対照群マウスの平均生存日数)×100
結果を表10に示す。本発明のフラボノイド化合物はin vivoにおいてもBCRPを阻害し、抗癌剤耐性克服効果を発揮することが示された。

実施例24:以下に示す成分を混和して、その混和物を打錠した。

本発明によって、BCRPが関与する抗癌剤耐性を克服することが可能となる。また、もとからBCRPを発現する癌に対して抗癌剤の効果を増強させることが可能である。さらには抗癌剤のバイオアベイラビリティを向上させることも期待され、癌化学療法における治療成績の向上につながることが期待される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)、(2)、(3)、(4)又は(5):

〔式中、Rは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基又は低級アルキル基を示し、7個のRは同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基、低級アルコキシ基、低級アルキル基、低級アルケニル基又は糖残基を示すか、或は隣接するRと共に低級アルキル基で置換されていてもよいピラン環を形成してもよく、Rは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、アミノ基又はニトロ基を示す。〕

〔式中、Rは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、低級アルキル基又は低級アルケニル基を示し、7個のRは同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基、低級アルコキシ基又は低級アルキル基を示すか、或は隣接する二つのRは共に低級アルキル基で置換されていてもよいピラン環を形成してもよく、Rは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、低級アルキル基、アミノ基又はニトロ基を示す。〕

〔式中、Rは水素原子、水酸基、ハロゲン原子、低級アルコキシ基又は低級アルキル基を示し、2個のRは同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基、低級アルコキシ基又は低級アルキル基を示し、Rは水素原子、水酸基、ハロゲン原子又は低級アルコキシ基を示し、5個のR10は同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基又は低級アルコキシ基を示す。〕

〔式中、3個のR11は同一でも異なってもよく、水素原子、水酸基又は低級アルコキシ基を示す。〕

〔式中、R12は水素原子又は低級アルケニル基を示し、R13は水素原子又は水酸基を示し、R14は水素原子を示す。〕
で表されるフラボノイド化合物、又はその配糖体、エステル若しくは塩を有効成分とする乳癌耐性蛋白阻害剤。
【請求項2】
請求項1記載のフラボノイド化合物(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)、その配糖体、エステル若しくは塩を有効成分とする、BCRP関与の耐性を獲得した癌に対する抗癌剤耐性克服剤又はBCRPを発現し、抗癌剤に対して低感受性の癌に対する抗癌剤効果増強剤。
【請求項3】
請求項1記載のフラボノイド化合物(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)、又はその配糖体、エステル若しくは塩、およびBCRPの基質となり得る抗癌剤を含有する抗癌剤。
【請求項4】
下記式(6):

〔式中、R15はアミノ基またはニトロ基を示す。〕
で表されるフラボノイド化合物。
【請求項5】
式(6)においてR15がニトロ基を示す請求項4記載のフラボノイド化合物。
【請求項6】
式(6)においてR15がアミノ基を示す請求項4記載のフラボノイド化合物。
【請求項7】
BCRPを高発現する7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(SN−38)耐性ヒト非小細胞肺癌A549細胞。

【国際公開番号】WO2004/069233
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【発行日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504830(P2005−504830)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001054
【国際出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【Fターム(参考)】