説明

乾式金属蒸着フィルムコンデンサ

【課題】小型である上に長期にわたって電気絶縁破壊強度が低下することのない乾式金属蒸着フィルムコンデンサを提供すること。
【解決手段】金属蒸着層2を有するポリフッ化ビニリデン樹脂フィルム1を巻回し、その端面に金属を溶射して電極3a、3bを形成し、その電極3a、3bに外部端子4a、4bを接続固着してコンデンサ素子を形成し、前記外部端子4a、4bを導出して、表面樹脂層5a、金属層5bおよび内面樹脂層5cで形成された金属ラミネートフィルム5で外装して乾式金属蒸着フィルムコンデンサを形成する。この外装によって比誘電率の大きいポリフッ化ビニリデン樹脂フィルムを誘電体とする小型で絶縁破壊強度の優れた乾式金属蒸着フィルムコンデンサが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器などに使用するポリフッ化ビニリデン樹脂フィルムを誘電体とした乾式金属蒸着フィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子フィルムの表面にアルミニウム、亜鉛あるいはこれらの合金などの金属を蒸着した金属蒸着フィルムを巻回し、その両端面に亜鉛、鉛、錫あるいはこれらの合金を溶射して電極を形成し、その電極に端子を固着して構成した乾式コンデンサ素子は、電気機器などのたとえば時定数回路や発振回路に使用されている。
【0003】
ところで、近年、電気機器などの小型化が進められているが、上記のようなポリプロピレンフィルム(以下、PPフィルムという。)やポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという。)を誘電体とするコンデンサ素子では、同一の静電容量、電圧において小型化することができず電気機器の小型化に対応することができないという問題がある。
【0004】
この問題を解消するためPPフィルムやPETフィルムに代えて、PPフィルム(比誘電率2.2)やPETフィルム(比誘電率3.2)よりも数倍比誘電率の大きいポリフッ化ビニリデン樹脂フィルム(比誘電率10)を用いることが考えられている。
【特許文献1】特公昭47−49661号公報
【特許文献2】特公昭46−37972号公報
【0005】
しかし、ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルムを誘電体とするコンデンサ素子は、比誘電率が大きい分PPフィルムやPETフィルムよりも小型化することが可能であるが、そのコンデンサ素子を缶内に封入しても、ウレタンゴムでモールド外装しても、劣化が急速に進み実用に供することができないといった問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、小型である上に長期にわたって電気絶縁破壊強度が低下することのない乾式金属蒸着フィルムコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属蒸着ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルムを巻回し、その端面に金属を溶射して電極を形成してなるコンデンサ素子を、表面樹脂層、金属層および内面樹脂層で形成された金属ラミネートフィルムで外装してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、コンデンサ素子の誘電体としてポリフッ化ビニリデン樹脂フィルムを使用するので、小型のコンデンサ素子とすることができるとともに、そのコンデンサ素子を、表面樹脂層、金属層および内面樹脂層で形成された金属ラミネートフィルムで外装するので、コンデンサ素子が完全に密封され、これにより長期にわたって電気絶縁破壊強度が低下することがなくなり、信頼性の高い乾式金属蒸着フィルムコンデンサを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
小型である上に長期にわたって電気絶縁破壊強度が低下することのない乾式金属蒸着フィルムコンデンサを提供する目的を、表面に金属層を蒸着したポリフッ化ビニリデン樹脂フィルムを巻回してコンデンサ素子を形成し、そのコンデンサ素子を、表面樹脂層、金属層および内面樹脂層で形成された金属ラミネートフィルムで外装することにより実現した。
【実施例】
【0010】
図1は本発明の実施例に係る金属蒸着フィルムコンデンサの構成を示す断面図である。図1において、1はポリフッ化ビニリデン樹脂フィルム、2は蒸着金属層、3aおよび3bは電極、4aおよび4bは外部端子、5は金属ラミネートフィルムである。金属ラミネートフィルム5は、表面樹脂層5a、金属層5bおよび内面樹脂層5cで構成、具体的には表面樹脂層5aおよび内面樹脂層5cは厚み約30μmのプラスチック層をなし、金属層5bは厚み約40μmのアルミニウムで構成されている。
【0011】
このように構成したコンデンサ素子は、表面にアルミニウム、亜鉛あるいはこれらの合金などの金属を蒸着したポリフッ化ビニリデン樹脂フィルムの1対を重ねて巻回し、その後、電極引き出すため両端面に亜鉛などの金属を溶射して電極3aおよび3bを形成し、各電極に外部端子4aおよび4bを接続固定してコンデンサ素子を形成する。その後、このコンデンサ素子を、外部端子4aおよび4bを導出した状態で金属ラミネートフィルム5で覆い、周囲3辺を熱溶着して閉じ、所定の熱処理を行った後残りの1辺を熱溶着してコンデンサ素子を金属ラミネートフィルム5で密閉する。
【0012】
実施例1として、12μm厚の金属蒸着ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルムを巻回し、定格2000V、40μFのコンデンサ素子を上記のように金属ラミネートフィルムで外装して形成した。このときの体積は0.2リットルである。
【0013】
比較例1として、実施例1と同様に12μm厚の金属蒸着ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルムを巻回し、定格2000V、40μFのコンデンサ素子を形成し、所定の熱処理後ウレタンゴムでモールドしたコンデンサを形成した。このときの体積は0.2リットルである。
【0014】
比較例2として、実施例1と同様に12μm厚の金属蒸着ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルムを巻回し、定格2000V、40μFのコンデンサ素子を形成し、金属缶ケースに収納し、結線後、所定の熱処理を施し、蓋を溶接してコンデンサを形成した。このときの体積は0.4リットルである。
【0015】
比較例3として、8μ厚の金属蒸着PPフィルムを巻回し、定格2000V、40μFのコンデンサ素子を形成し、金属ラミネートフィルムで外装してコンデンサを形成した。このときの体積は0.3リットルである。
【0016】
比較例2は実施例1と比較例1と比べ体積が2倍に増大し、小型に構成することはできないことが分かる。そこで、実施例1と比較例1および比較例3について、定格電圧にて長期課電を行い、その途中で素子を取り出し絶縁強度を測定した。その結果を図2に示す。この図2において菱形記は実施例1、四角記は比較例3、丸記は比較例1を示し、縦軸は定格電圧を100として表し、横軸は経過時間である。図2から明らかなように、実施例1と比較例3は10000時間経過しても絶縁強度は最初の状態が維持されているが、比較例1は80時間辺りから急激に絶縁強度が低下している。
【0017】
また、実施例1と比較例1および比較例3について、数種の電圧にて長期課電を行い、破壊時の電圧と時間を評価した。その結果を図3に示す。この図3において菱形記は実施例1、四角記は比較例3、丸記は比較例1を示し、縦軸は定格電圧を100として表し、横軸は時間である。図3から明らかなように、実施例1と比較例3は125つまり2500Vの課電では10000時間経過してもコンデンサ素子は破壊しないが、比較例1では、2000Vの定格電圧の課電においてもコンデンサ素子は破壊する。
【0018】
すなわち、以上の結果から、本発明に係るコンデンサは、金属蒸着PPフィルムを巻回したコンデンサよりも大幅に小型化することができ、長期にわたり金属蒸着PPフィルムを巻回したコンデンサとほぼ同等の電気絶縁特性が安定で信頼性の高いコンデンサであることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係る乾式金属蒸着フィルムコンデンサの構成を示す断面図である。
【図2】乾式金属蒸着フィルムコンデンサ素子の絶縁破壊強度の測定結果を示す特性図である。
【図3】乾式金属蒸着フィルムコンデンサ素子の破壊時の電圧と時間を示す評価図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルム
2 蒸着金属層
3a、3bは電極
4a、4b 外部端子
5 金属ラミネートフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属蒸着ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルムを巻回し、その端面に金属を溶射して電極を形成してなるコンデンサ素子を、表面樹脂層、金属層および内面樹脂層で形成された金属ラミネートフィルムで外装してなることを特徴とする乾式金属蒸着フィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−94122(P2009−94122A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260767(P2007−260767)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】