説明

乾燥肌及び鱗屑肌のための、及び乾癬、皮膚炎、及び湿疹の治療のためのトール油脂肪酸及び植物油を含むスキンケア製品

【課題】乾燥肌及び鱗屑肌のための、及び乾癬、皮膚炎、及び湿疹の治療のためのトール油脂肪酸及び植物油を含むスキンケア製品の提供。
【解決手段】本発明は、乾燥肌及び鱗屑肌のためのオイル、クリーム、エマルジョン、ゲル、液体及びスティック形態にあるスキンケア製品に関する。製品は、トール油脂肪酸1ないし90質量%及び種々の植物油及びそれらの脂肪酸99ないし10質量%を含む。さらに、製品は、皮膚の種々の部分に対する製品の使用の目的に応じて、乳化剤、増粘剤、溶媒及び粉体を含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明の対象は、乾燥肌及び鱗屑肌の治療のためのすべてのタイプの皮膚に適するスキンケア製品である。本発明に従う製剤は好ましくはクリーム又はオイルであるが、エマルジョン、ゲル、スプレー、フォーム、スティック、ロールオン、又はスカルプでもまたあり得る。これらスキンケア製品は、乾癬の治療における使用のために設計されてきた。スキンケア製品はまた、以下の皮膚病:皮膚炎、湿疹、鱗屑化の治療においてもまた使用され得る。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、傷等を治療するために動物の皮膚に用いられ、及び未精製トール油又は該トール油の処理により得られた生成物を含む組成物が開示されている。該特許によると、前記油はトール油脂肪酸及びまたそのエステルを含んでいる。特許文献2から、蒸留トール油を含み、及びとりわけ乾癬の治療において使用される製剤が既知である。米国特許出願公開第2002/0039591号明細書から、植物油及び鉱油を含むスキンケア製剤が既知である。
【特許文献1】米国特許第4,443,437号明細書
【特許文献2】中国特許第1246367号明細書
【発明の開示】
【0003】
本発明の背景
乾癬は治療法の見出されていない代謝病である。乾癬患者の大多数は、施設によらない介護下に、局部治療及び光療法により治療され得る。乾癬プラクの鱗屑剥離のための局部治療として、毎夕プラク上に薄く塗られる5%のサリチル酸ワセリン(サリチル酸0.5/ワセリンアルブミン100.0まで)が使用されてきた。該薬剤は朝洗い落とされる。頭皮の鱗屑の剥離のためには、ホワイトワセリンは、例えば「スアヴェ(Suave)」ヘアクリームにより、軟膏マクロゲル(Macrogel)DFにより、又はヒマシ油により置き換えられる。ほんの少しの乾癬プラクの短期治療のためには、強力又は非常に強力なコルチコステロイドクリームが適している。
頻繁な使用においては、局部皮膚の萎縮を回避するために及び代替治療への十分早期の変換のために注意されなければならない。長期の及び頻繁な治療においては、効果は弱まり(効果減弱)、また、局部の逆効果への危険性が高まる。コルチコステロイド製剤は又、頭皮の乾癬の治療にも適している。アルコールを含有する溶液は汚さないが、それらの問題はヒリヒリすることである。
コルチコステロイドエマルジョン、クリーム又はゲルは、少なくとも溶液と同様に効果的である。中程度に強力なコルチコステロイドは、萎縮の危険性を考慮しつつではあるが、屈曲領域や顔に短期間使用可能である。病院での介護の間に、乾癬の治療のためディトラノール(ditranol)が使用される。ディトラノールは皮膚を刺激し、また皮膚及び衣服の両方を汚す。ディトラノールをSUP又はUVB光療法と組み合わせることにより治療はより効果的にされ得る。
【0004】
タール製剤は通常乾癬の治癒には不充分であるが、太陽又は光療法(SUP、UVB)の増強剤として使用しうる。タール製剤(ピロール.リタントル(Pyrol.lithantr.)1.0/アムビラン(Ambilan)100.0まで、又は商業上入手可能なアルフォシル(Alphosyl)塗布薬又はクリーム)は夕方に乾癬プラクに塗布し、朝に太陽の下又は光療法に行く前に洗い落とされる。頭皮の乾癬の治療のためにター
ルシャンプーが使用され得る。
カルシポトリオール(Calcipotriol)は、おそらく強力コルチコステロイドと同様に効果的なビタミンD誘導体である。カルシポトリオール(Calcipotriol)クリームを週当り50グラム以上使うことは推奨されず、従って、非常に大きな乾癬には使用できない。時に副作用として起こる皮膚への刺激のため、顔の乾癬の治療にもまた推奨されない。
紫外線は乾癬に対し明確な治癒効果を有する。太陽の下に留まること(日光療法)は非常に薄く又小さいプラクを有する乾癬を治癒し、また、かなり厚いプラクであってもより薄くする。その効果は、太陽の下に行く前に既に鱗屑をサリチル酸ワセリンで剥離すること、又はより厚いプラク上に適当な局部治療(タール、カルシポトリオール)を用いることにより増強し得る。最も困難な形態の乾癬の治療には、体内投薬法が用いられる。アシトレチン(Acitretin)は、乾癬の治療のために体内で使用されるレチノイド又はビタミンB誘導体である。メトトレキセート(Metotrexate)は、乾癬用に最も効果的な単一薬である。しかし、それは多くの副作用を有し、そのうち最も一般的なものは、吐き気、腹痛、白血球減少及び肝臓毒性である(Vaino Havu,Ihotaudit,第1版,Kustannus Oy duodecim 1995,ヘルシンキ)。
【0005】
エマルジョンは化粧品に広く用いられている。通常、エマルジョンは、互いに不溶な少なくとも2つの液体からなり、そのうち一方が他方内に微細な液滴として混合されている、熱力学的に不安定な系として記載される。エマルジョンが安定化されていない場合、互いに不混和性の該液体は分離する傾向がある。
境界に乳化剤を添加すること、及び、更に、ポリマー、固体物質及び液体−クリスタール相を使用することにより、安定化が達成される。例えば、ステアリン酸アルミニウムが乳化剤として使用されてきた。典型的なエマルジョンは、水−油エマルジョンである(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版、完全改訂版、A24巻)。
グリースは、通常金属セッケンを用いて増粘される。アルミニウムセッケン脂肪は、通常事前に作られたアルミニウムセッケン、例えばステアリン酸アルミニウムから、及び鉱油から製造されてきた(Ullmann‘s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版、完全改訂版、A15巻)。
スウェーディッシュ ボフォーズ(Swedish Bofors)社の銃用グリースである、ヴァペンフェット(Vapenfett)Iは、そのタイプについては、鉱油から製造されたアルミニウムセッケングリースである。ヴァペンフェット(Vapenfett)Iは、植物油を含有しない。滑剤は、機械の潤滑のために使用される物質、通常は油、である(オックスフォード英語辞典、第2版、クラレドンプレス(Claredon
Press)、オックスフォード、1989)。滑剤はスキンクリームとしての使用を意図されていない。
【0006】
皮膚保護効果が望まれる場合、脂質ゲル又は脂肪質ゲルが最も良く知られている。脂肪質ゲルは長期にわたり皮膚表面に付着して耐水効果を生ずる。意図された使用目的に従い、脂肪質ゲルは、揮発性シリコン油(例えば、シクロメティコン)又はコロイド状膨潤剤(アエロジル(Aerosil)、ベントナイト)中に、鉱油又は植物油と共に混合された、半固体の脂肪及びワックスから製造される。脂肪質ゲルは、互いに不混和性の2種以上の液体を含有しないので、エマルジョンではない。脂肪質ゲルは水−油エマルジョンが含有するような水を含有しない。
今日乾癬治療に使用されるコルチコステロイドは、局部の副作用のため継続使用には適さない。乾癬の鱗屑剥離のために使用されるホワイトワセリンをベースとするクリームは、皮膚を乾燥させ、従って、健康な皮膚には適さない。日光療法においては、太陽光の効果を増強するために、ホワイトワセリンとタール生成物の両方が使用される。ホワイトワ
セリンとタールクリームは、太陽光の紫外線に対する何の保護も与えない。タール製剤は太陽の下あるいは日光療法に行く前に洗い落とされねばならない。今日、該製剤は何の紫外線保護剤も添加含有しない。
【0007】
発明の要旨
本発明の目的は、全てのタイプの皮膚のための継続使用に適するスキンケア製品を提供することである。前記スキンケア製品は、鱗屑の剥離及び除去のため、剥離段階後の皮膚の紅斑化の治療のため、及び健康な皮膚上の治癒された皮膚の維持処置のために使用し得る。
本発明の対象であるスキンケア製品の効果は、トール油脂肪酸又はその誘導体と植物油の組合せ効果に基づく。ケア製品は、全脂肪製品(必須脂肪酸)として、又は皮膚の水分バランスを維持するために、例えば、水−油エマルジョンとして及び油−水エマルジョンとして製造され得る。
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、トール油脂肪酸又はその誘導体及び1種以上の植物油を含有するスキンケア製品に関する。本発明に従う製剤は、好ましくはクリーム又はオイルである。
本発明に従うクリーム状又はオイル状製剤は、局部治療のため又は全身のための何れかに意図される。クリーム状製剤は、有益な成分がトール油から及び異なる植物からの脂肪酸の混合物である製品であって、必要であれば例えば増粘剤及び乳化剤並びに水分結合成分を該混合物に添加したものを意味する。
オイル状スキンケア製品は、その粘度についてはかなり流動性で、殆ど液体形態にある製品を意味するが、それは希薄なエマルジョンでもあり得る。オイルとして、製剤のベースは、植物油(群)及びトール油脂肪酸からなる。オイル状製剤は全身に、及び頭皮にも適しており、鱗屑の除去にアルコール誘導体又はプロピレングリコールが該製剤中で使用される。治療の間の健康な皮膚の乾燥を防止するために、皮膚柔軟性の植物油が該製剤に添加されている。頭皮に使用される場合、該製剤は鱗屑を除去し、また頭皮の皮膚を治癒する。
スキントリートメント製剤は、該製剤の太陽下での使用を可能にする紫外線保護剤を与えられ得る。例えば、本発明に従う製剤に二酸化チタンを、例えば0.1ないし10質量%のような適する量で添加し得る。
【0009】
本発明に従う製剤は、エマルジョン、ゲル、スプレー、フォーム、スティック、ロールオン、又はスカルプであっても良い。エマルジョン様製剤は、油−水エマルジョン、水−油エマルジョン、又は二重エマルジョン(double emulsion)を含む製品を意味する。油−水エマルジョンは、有益な成分として、上記と同様のトール油及び異なる植物の脂肪酸が使用され、また必要ならば、防腐剤、溶媒、及び乳化剤が使用される製品を意味する。油−水エマルジョンにおいて、有益な脂肪酸の割合は50ないし80%である。レシチンE322、エチルセルロースE462、微晶質セルロースE460又は脂肪酸モノ−及びジグリセリドのような数種の物質が乳化剤として使用し得る。
上記のように、本発明の対象である製品の治癒効化は、トール油脂肪酸又はその誘導体と植物油の相乗作用に基づく。本発明に従う製剤は、1ないし90質量%のトール油脂肪酸又はその誘導体及び99ないし10質量%の植物油を含有し得る。未精製トール油は樹脂酸及び脂肪酸の混合物であり、少量の脂肪酸エステル、ステロール、高級アルコール及び炭化水素をも含有し得る。正確な組成は、元の木材源及び該油の純度等級に依り異なる。本明細書の開示内において、「トール油」、「トール油脂肪酸」及び「トール脂肪酸」は、未精製トール油及びそれから精錬又は精製された生成物の両方を含む。樹脂アレルギーを患う人には、未精製トール油の樹脂酸は症状を引き起こすこともあり、従って、樹脂酸の割合がより少なくまたトール油脂肪酸の割合が出来る限り高い精製トール油を使用することがより好ましい。本発明に従うスキンケア製品においては、好ましくは、有益なト
ール油脂肪酸(TOFA)又はモノ−、ジ−或いはトリグリセリドのようなトール油脂肪酸誘導体の割合がおよそ80ないし100%、好ましくは90ないし100%、例えばおよそ96%であるようなトール油が使用される。脂肪酸グリセリドは、トール脂肪酸をグリセロールでエステル化することにより得られる。実施例において使用されたトール油脂肪酸は、純度ほぼ96%である。
【0010】
本発明に従うスキンケア製品に使用される植物油は、好ましくは、例えば、ヒマワリ油、トール種子油、ブドウ種子油、ベニバナ油、アマニ油、菜種油、クロウメモドキ油、クロフサスグリ種子油、シベリアマツの実油、ピーナッツ油及びプリムローズ油のような、高リノール酸及びリノレン酸含量を有する植物油である。天然成分から作られた製品に対する傾向が、冷圧製品へと向かっている。シードオイルが皮膚の治療のための元来の及び最良の成分であるが、主に精製生成物が依然として使用されている。
本発明に従う製剤におけるトール油脂肪酸又はその誘導体と植物油の割合は、製品の形態に依り異なり、10:1ないし1:50、好ましくはおよそ1:1ないし1:10、例えば、およそ1:1ないし1:3、オイル状製剤においては、例えば、2:1ないし1:10、好ましくはおよそ1:1であり得る。
本発明に従う製剤が使用された試験においては、トール油脂肪酸及びヒマワリ油の50:50混合物が、明らかに、乾癬患者の皮膚の鱗屑及び紅斑化を減少させ、厚い皮膚層をより薄くし、痒みを減少させた(実施例9)。参照物質は鉱油−脂質ゲル製剤であった。また、この製剤は、トール油脂肪酸とヒマワリ油の混合物より低度ではあるが、乾癬の上記の皮膚症状を明らかに減少させた。
本発明に従う製剤又は偽薬を使用した比較盲検試験において、皮膚の鱗屑、厚み、紅斑化及び痒みは著しく減少し、また、14人の患者において損傷が完全に回復し、6人の患者(試験グループは20人の患者からなった)においてほぼ完全に回復した。偽薬使用グループにおいては、鱗屑のみは減少したが、その他になんの改善も検知されなかった(実施例10)。
【0011】
本発明に従うスキンケア製品は、使用目的及び皮膚の状態に依り、非常に多くの異なる形態で、例えば、オイル、エマルジョン、ゲル、ローション、スプレー、フォーム、スティック、ロールオンとして、頭皮に対する所謂スカルプ(液体)として、及び通常また、基礎クリームとして調製され得る。製品はこのように完全な所謂“家庭医薬”を構成する。それらは、各対象に対し個別に、又は全身用製品として、安全に使用され得る。
本発明に従うスキンケア製品は、例えば、以下の3つのグループに分類され得る:
1.植物及び木からの脂肪酸及び油のみを混合物として含有する製品。
2.植物及び木からの油(脂肪酸)、及び鉱油を含有する製品。
3.木油及び植物油及び/又は鉱油の増粘剤として、ステアリン酸塩としての金属誘導体、例えばマグネシウム、アルミニウム等のものが使用され得る製品。
更に、必要であれば、製剤は、安定剤、乳化剤、キャリヤー、保湿剤、例えばカルバミド、剥離剤、例えば尿素、サリチル酸又は硫黄、ビタミン、例えばビタミンA、D、E及びC、並びに酸化防止剤及び防腐剤、例えば安息香酸、ソルビン酸、クエン酸、ブチルヒドロキシアニソール又はビタミンEのような、スキンケア製品に一般的に用いられる成分を含有し得る。
【0012】
本発明に従うオイル状製品は、例えば、およそ35ないし50%のトール油脂肪酸又はその誘導体、およそ35ないし50%の植物油、及び0ないし30%の上記スキンケア製品に一般的に使用される成分を含有し得る。本発明に従うオイル状製品はまた、多量の、およそ90%にも上る、植物油、特に、異なる植物油の混合物、及びおよそ1ないし10%のトール油脂肪酸又はその誘導体、及び、必要であれば、スキンケア製品に一般的に使用される成分も含有し得る。
本発明に従うエマルジョンは、例えば1ないし50%のトール脂肪酸又はその誘導体及
び10ないし50%の植物油を含有し得、本発明に従うクリームは、例えば1ないし10%のトール脂肪酸又はその誘導体及び10ないし40%の植物油を含有し得る。本発明に従う製剤中のトール脂肪酸又はその誘導体及び植物油の合計量は、製剤に依り、およそ10ないし100%、好ましくは例えば20ないし95%、であり得る。製品の形態により、成分と付加的な慣用の成分の相互の割合は、本発明の範囲内で非常に広く変化し得ると理解されるべきである。しかしながら、本発明に従う製剤は、常にトール油脂肪酸又はその誘導体及び植物油を含む。
本発明に従う製剤は、鉱油及び金属をも含有し得る。そのようなスキンケア製品は、オイル、クリーム、エマルジョン、及び液体として製造し得る。スキンケアに使用されるクリームのベースは、鉱油(例えば、パラフィン、ホワイト油)及び/又は植物油(例えば、ヒマワリ油、ブドウ種子油、菜種油、トール種子油、ピーナッツ油、ベニバナ油等)及びトール油脂肪酸(TOFA)、又はモノ−、ジ−及びトリグリセリドのようなトール油脂肪酸の誘導体から製造し得る。該製剤中の鉱油の量は、たとえば、1ないし30質量%であり得る。
クリームベースは、植物油から、又はパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、2−エチルヘキサデカン酸及びアルミニウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩及び亜鉛塩のような金属塩から製造された金属セッケンを使用することにより増粘され得る。また、増粘のために固形パラフィンも使用し得る。製剤中の増粘剤の量は、例えば1ないし30質量%の間で変化し得る。
前記クリームの紫外線保護は、例えば二酸化チタンを添加することにより与え得る。
クリームとして、前記製剤の金属セッケン及び鉱油は、皮膚を外的影響から保護する耐水性、治癒性のフィルムを形成する。フィルムは、温水及び石鹸を使用して洗い落とし得る。クリームの植物油及びトール油脂肪酸は、皮膚を軟化及び治癒し、皮膚の乾燥を予防する。二酸化チタンは、有害な紫外線に対する効果的な遮蔽物を与える。製剤は全身への使用及び太陽下の使用のために意図されている。
本発明に従う製剤は、化粧品及び医薬産業において使用される既知の方法により製造され得る。
【0013】
重度の皮膚症状を治療する場合、本発明に従う製剤、好ましくはオイルを、疾患の性質により、1日2ないし3回、2ないし6週間の間、適当にこすることにより症状を有する皮膚に薄く塗る。症状のある皮膚のみを治療する場合に、プラクの側から乾癬が生じる傾向にあるので、クリームはまた、症状のない、健康な皮膚領域にも使用し得る。治療は油−水エマルジョンを用いて開始され得るが、重度の乾癬にはオイルが最も有効である。治療の効果は、一般的に、使用1週間後で既に示され及び感じられる。角質層(鱗屑)はほぼ消失する。
紅斑化は同様の方法で、即ち、紅斑化が消失するまで1日1ないし2回治療を続けることにより、治療される。オイルの代替は、使用により心地よい油−水エマルジョンである。
症状のない期間、皮膚の水分バランスを維持するために水−油エマルジョンのような、より軽い製品を使用し得る。水−油エマルジョンは又、皮膚の水分バランスを維持するために、全治療の期間の間オイル又は油−水エマルジョンに付加的に使用することも出来る。
【0014】
本発明は又、トール油脂肪酸又はその誘導体及び植物油の、乾燥及び鱗屑性皮膚用製品の製造のための、並びに乾癬、皮膚炎、湿疹又は鱗屑の治療のための製品の製造のための使用にも関する。乾癬、皮膚炎、湿疹又は鱗屑の治療及び予防のための本発明に従う方法においては、トール油脂肪酸又はその誘導体及び植物油を含む本発明に従う製剤の有効量を皮膚に塗布する。
【0015】
以下の実施例は、スキントリートメントの為に使用される製品の例示的な組成を開示す
ることにより、本発明を更に説明する。パーセントは、特に表示のない限り質量で示される。実施例9及び10は前記製剤を使用して得た治療結果を記載する。
【0016】
実施例1 オイル

トール油脂肪酸 42.0%
ヒマワリ油 42.0
蜜蝋 3.5
二酸化チタン 3.5
タルク 1.5
固形パラフィン 3.5
ビタミンE 4.0
100.0%

調製:
1.最初に、100gのヒマワリ油及び10gの蜜蝋を加温し冷却した。冷却により固体混合物が得られた。それを再び液体まで加温した。
2.150gのヒマワリ油及び250gのトール油脂肪酸を90℃まで加温し、ヒマワリ油及び蜜蝋に注いだ。冷却した。
55℃において完全に流動性、粘度の上昇なし。
35℃、粘度僅かに上昇。
22℃、十分な粘度なし、我々は、二酸化チタン最初に10グラムを用いて白化し始めた。
3.再び加温し、及び10gの蜜蝋及び10gの二酸化チタンを添加した。115℃、10gのタルクを更に添加した。冷却した。十分な粘度なし。
4.加温し、及び20gの固形パラフィンを添加した。140℃にて加温した。冷却した。
5.30℃にて乳化器を用いておよそ1分間混合(24000rpm)した。
製品は25℃にて良好だった。
【0017】
実施例2 オイル
アマニ油 30.0%
シベリアマツの実油 30.0
プリムローズ油 30.0
トール油脂肪酸 2.0
ビタミンE 8.0
100.0%

調製:混合冷却。
【0018】
実施例3 水−油エマルジョン
I レシチン 4.0%
ベニバナ油 9.0
トール油脂肪酸 9.0
ヒマワリ油 9.0
ステアリン酸亜鉛 1.0
トコフェリル(ビタミンE) 4.0
II 86%グリセリン 5.0
硫酸マグネシウム7H2O 1.0
水 58.0
100.0%

調製:
1.I 生成物を混合し、80ないし85℃に加熱した。
II 生成物を混合し、80ないし85℃に加熱した。
2.生成物I及びIIを組合せ、及び同じ容器内で混合した。混合物を65ないし55℃まで冷却させ、それにより急速乳化器を用いて10000ないし20000回転/分で均質化(乳化)させた。均質化後、混合物を30℃まで冷却した。充填した。
これは、水が内相内にあり、それにより水分が皮膚上に長期間維持されかつ容易に蒸発しない製品である。
【0019】
実施例4 油−水エマルジョン
I レシチン 4.0%
トール油脂肪酸 29.0
ヒマワリ油 29.0
トコフェリル 4.0
ステアリン酸亜鉛 1.0
II 86%グリセリン 5.0
硫酸マグネシウム 7H2O 1.0
水 27.0

調製は実施例3の水−油エマルジョンと同様である。
【0020】
実施例5 粘度についてはクリーム状である製剤
【表1】

【表2】

調製:
I. 生成物を混合し、80ないし85℃に加熱した。
II.生成物を混合し、80ないし85℃に加熱した。

生成物I及びIIを組合せ、同一の容器内で混合した。
混合物を65ないし66℃まで冷却させ、及び乳化ブレードを有する急速10000な
いし20000回転/分の乳化器を用いて均質化(乳化)させた。均質化後、混合物をおよそ30℃まで冷却した。充填した。
これは、水が内相内にあり、それにより皮膚上に水分が長期間維持されかつ容易に蒸発しない製品である。
【0021】
実施例6 鉱油もまた含有するクリーム
6%ステアリン酸アルミニウム、
25%鉱油、
51%トール油脂肪酸及び植物油(例えば、ヒマワリ油、ブドウ種子油、菜種油、トール種子油)、
15%固形パラフィン、
3%二酸化チタン(UV等級、例えばケミラUVチタン(Kemira UV Titan))及び酸化防止剤及び防腐剤(例えば、安息香酸、ソルビン酸、クエン酸、ブチルヒドロキシアニソール BHA、ビタミンE)。
【0022】
実施例7
6%ステアリン酸アルミニウム、
76%トール油脂肪酸及び植物油(例えば、ヒマワリ油、ブドウ種子油、菜種油、トール種子油)、
15%固形パラフィン、
3%二酸化チタン、及び
酸化防止剤及び防腐剤(例えば、安息香酸、ソルビン酸、クエン酸、ブチルヒドロキシアニソール BHA、ビタミンE)。
【0023】
実施例8 オイル
45%トール油脂肪酸、
5%グリセロール、
47ないし49.1%植物油(例えば、ヒマワリ油、ブドウ種子油、菜種油、トール種子油)
0.1ないし3.0%二酸化チタン、及び
酸化防止剤及び防腐剤(例えば、安息香酸、ソルビン酸、クエン酸、ブチヒドロキシアニソール BHA、ビタミンE)。
【0024】
実施例9
全員で20人の慢性のプラク型乾癬を有する患者を2種のオイル混合物を用いて6週間治療した。製品を1日2回特定の乾癬プラク上に塗布した。10人の患者がトール油脂肪酸とリノール脂肪酸の混合物を受け(治療1)、及び10人の患者が、添加された有機アルミニウム化合物を有する対応する混合物を受けた(治療2)。調査の開始前4週間の間は患者の乾癬は治療されず、及び調査の間に他の同様な治療は許容されなかった。調査の開始時において及び6週間後、鱗屑、紅斑化、皮膚損傷の厚み、むず痒さを4ポイント基準(0=症状なし、1=僅か、2=中程度、3=重度)を使用して評価した。試験の前後に、各々のパラメータに対して平均値を計算した。

表1.患者データ及び治療結果
治療1 治療2
患者数 10 10
男性/女性 9/1 5/5
平均年齢 55.0 49.4
乾癬の平均期間 16.7 14.6
プラクの場所:
肘/膝 8 10
臀部 2 0
治療感応:
完全回復 7 6
顕しく回復 2 3
乏しい治療感応 1 1

治療の間の単一乾癬症状の平均変化:
鱗屑 2.5−0.4 2.7−0.9
紅斑化 2.5−0.4 2.7−1.0
厚み 2.4−1.0 2.4−1.0
むず痒さ 1.2−0.3 1.2−0.3

治療1は治療2よりいくらか効果的であると証明された。治療グループ1では、プラクは7人の患者において完全に回復し、他の2人については著しく回復した。一人の患者のプラクは、明らかにオイルに起因する痒みのせいで、悪化した。治療グループ2では、対応する数値は、それぞれ6人、3人及び1人であった。
【0025】
実施例10
調査を、偽薬対照物を使用して、40人の患者で行った。患者の全てがフィンランド乾癬協会の会員であり、慢性の持続性乾癬を有していた。事前の2週間、患者は、彼/彼女の乾癬の治療を受けなかった。半数の患者が有効成分を含有するクリームを受け、他の半数が偽薬を受けるように、クリームの投薬を無作為にした。調査は4週間継続し、及びクリームは1日2回(調査期間の間朝夕)使用した。腕又は足に位置する一つの損傷を選択し、及び調査の間追跡した。選択した損傷の臨床的評価を、治療の開始前及び4週間後、鱗屑、損傷の厚み、むず痒さについて4ポイント基準(0=症状なし、1=僅か、2=中程度、3=重度)を使用して行った。表2は選択した損傷の調査期間の間の変化を示す。表皮肥厚の厚さをダーマスキャン(Dermascan)C−装置を用いて測定し、紅斑化は分光光度法を用いて測定した。
【表3】

両グループ共に鱗屑は著しく減少した一方、厚み、紅斑化及びむず痒さの減少は本発明に従う製剤を受けたグループ(調査グループ)でのみ検知された。調査グループでは、選択した損傷が14人の患者において完全に回復し、他の6人においてほぼ回復した。偽薬グループにおいては、選択した損傷の治癒は見られなかった。調査グループにおいては、表皮肥厚は0.45mmから0.25mmに減少し、紅斑化指標は20.3から13.7(共に平均値)に減少した。偽薬グループでは変化は検知されなかった。逆の変化はどちらのグループにおいても見られなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トール油脂肪酸又はその誘導体及び1種又は数種の植物油を含むことを特徴とする、スキンケア製品。
【請求項2】
トール油脂肪酸又はその誘導体1ないし90質量%及び植物油(群)99ないし10質量%を含むことを特徴とする、請求項1記載の製品。
【請求項3】
前記植物油は、ヒマワリ油、ブドウ種子油、菜種油、トール種子油、アマニ油、ピーナッツ油、クロウメモドキ油、クロフサスグリ種子油、シベリアマツの実油、ベニバナ油、プリムローズ油、及び2種以上のオイルの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の製品。
【請求項4】
UV保護剤、例えば二酸化チタンを含むことを特徴とする、請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の製品。
【請求項5】
前記UV保護剤の量は、0.1ないし10質量%であることを特徴とする、請求項4に記載の製品。
【請求項6】
クリーム、オイル、エマルジョン、ゲル、スプレー、フォーム、スティック、ロールオン又はスカルプであることを特徴とする、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の製品。
【請求項7】
鉱油、好ましくはパラフィン油又はホワイト油を含むことを特徴とする、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の製品。
【請求項8】
前記鉱油の量は、1ないし30質量%であることを特徴とする、請求項7に記載の製品。
【請求項9】
金属セッケン又は固形パラフィンのような増粘剤を含むことを特徴とする、請求項1ないし8のうちいずれか1項に記載の製品。
【請求項10】
前記増粘剤の量は、1ないし30質量%であることを特徴とする、請求項9に記載の製品。
【請求項11】
グリセロールを0.1ないし10質量%含むことを特徴とする、請求項1ないし10のうちいずれか1項に記載の製品。
【請求項12】
乾燥肌及び鱗屑肌のためのスキンケア製品の調製のための、トール油脂肪酸又はその誘導体及び植物油の使用。
【請求項13】
乾癬、皮膚炎、湿疹又は鱗屑化の予防及び治療のための製剤の調製のための、トール油脂肪酸又はその誘導体及び植物油の使用。
【請求項14】
トール油脂肪酸又はその誘導体及び植物油を含む製剤の有効量が皮膚に塗布される、乾癬、皮膚炎、湿疹又は鱗屑化の治療及び予防方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トール油脂肪酸又はその誘導体、及びヒマワリ油、ブドウ種子油、菜種油、トール種子油、アマニ油、ピーナッツ油、クロウメモドキ油、クロフサスグリ種子油、シベリアマツの実油、ベニバナ油、プリムローズ油及び二種以上のオイルの混合物よりなる群から選択された1種又は数種の植物油、を含むことを特徴とするスキンケア製品。
【請求項2】
トール油脂肪酸又はその誘導体1ないし90質量%及び植物油(群)99ないし10質量%を含むことを特徴とする、請求項1記載の製品。
【請求項3】
UV保護剤、例えば二酸化チタンを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の製品。
【請求項4】
前記UV保護剤の量は、0.1ないし10質量%であることを特徴とする、請求項3に記載の製品。
【請求項5】
クリーム、オイル、エマルジョン、ゲル、スプレー、フォーム、スティック、ロールオン又はスカルプであることを特徴とする、請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の製品。
【請求項6】
鉱油、好ましくはパラフィン油又はホワイト油を含むことを特徴とする、請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の製品。
【請求項7】
前記鉱油の量は、1ないし30質量%であることを特徴とする、請求項6に記載の製品。
【請求項8】
金属セッケン又は固形パラフィンのような増粘剤を含むことを特徴とする、請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載の製品。
【請求項9】
前記増粘剤の量は、1ないし30質量%であることを特徴とする、請求項8に記載の製品。
【請求項10】
グリセロールを0.1ないし10質量%含むことを特徴とする、請求項1ないし9のうちいずれか1項に記載の製品。
【請求項11】
トール油脂肪酸又はその誘導体,及びヒマワリ油、ブドウ種子油、菜種油、トール種子油、アマニ油、ピーナッツ油、クロウメモドキ油、クロフサスグリ種子油、シベリアマツの実油、ベニバナ油、プリムローズ油及び二種以上のオイルの混合物よりなる群から選択された植物油の、乾燥肌及び鱗屑肌用のスキンケア製品の製造のための使用。
【請求項12】
トール油脂肪酸又はその誘導体,及びヒマワリ油、ブドウ種子油、菜種油、トール種子油、アマニ油、ピーナッツ油、クロウメモドキ油、クロフサスグリ種子油、シベリアマツの実油、ベニバナ油、プリムローズ油及び二種以上のオイルの混合物よりなる群から選択された植物油の、乾癬、皮膚炎、湿疹又は鱗屑の予防及び治療用製剤の製造のための使用。
【請求項13】
トール油脂肪酸又はその誘導体及び植物油を含む製剤の有効量を皮膚に塗布するところの、乾癬、皮膚炎、湿疹又は鱗屑の治療及び予防方法。

【公表番号】特表2006−520769(P2006−520769A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505621(P2006−505621)
【出願日】平成16年3月17日(2004.3.17)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000154
【国際公開番号】WO2004/082642
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(505353766)オイ プソリオイル リミテッド (1)
【Fターム(参考)】