説明

乾燥装置

【課題】 乾燥装置内部や攪拌翼などに付着しやすい湿潤原料であっても、安定的に攪拌乾燥ができる乾燥装置および乾燥方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る乾燥装置は、本体容器1と、本体容器1の一方の端部に配設され湿潤原料を投入させる投入口2と、本体容器1の他方の端部に配設され湿潤原料を攪拌乾燥させて得られる乾燥原料を排出させる排出口3と、本体容器1の内部にその長手方向に沿って配設された回転可能な撹拌軸4と、撹拌軸4に取り付けられた撹拌翼5,5…と、本体容器1の内壁から攪拌軸4に向かって配置されたバッフル6と、を備える乾燥装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を含む湿潤原料を攪拌乾燥させるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
湿潤原料を攪拌乾燥させる装置は、本体容器の内部に、複数の撹拌翼を配設させた一対の攪拌軸を有する機械式攪拌乾燥装置が知られている(例えば、特許文献1や特許文献2参照。)。これらの乾燥装置は、撹拌翼や攪拌軸、本体容器の外側にジャケットを設けて、これらの部材に熱媒油や加熱蒸気などの熱媒体を供給して本体容器に供給された湿潤原料を間接的に加熱し、撹拌翼で撹拌しながら乾燥させるものである。
また、湿潤原料の滞留をなくすために、本体容器の底部に湿潤原料をかき上げるための攪拌手段を設ける技術や、乾燥装置の小型化や均一な乾燥を行うために、本体容器の上部に湿潤原料から発生する蒸気を吸引する吸引手段を設ける技術が知られている(例えば、特許文献3や特許文献4参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−199684公報
【特許文献2】特開2005−241239公報
【特許文献3】特開2003−202187公報
【特許文献4】特開2008−151430公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では、乾燥装置内部や攪拌翼などに付着しやすい湿潤原料であっても、安定的に攪拌乾燥ができる乾燥装置および乾燥方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る乾燥装置は、本体容器1と、本体容器1の一方の端部に配設され湿潤原料を投入させる投入口2と、本体容器1の他方の端部に配設され湿潤原料を攪拌乾燥させて得られる乾燥原料を排出させる排出口3と、本体容器1の内部にその長手方向に沿って配設された回転可能な撹拌軸4と、撹拌軸4に取り付けられた撹拌翼5,5…と、本体容器1の内壁から攪拌軸4に向かって配置されたバッフル6と、を備える乾燥装置である。
【0006】
従来の乾燥装置では、攪拌翼5の周縁に湿潤原料が堆積して攪拌能力が低下し、乾燥能力が著しく悪化してしまう場合がある。しかしながら、本発明に係る乾燥装置では、本体容器1の内壁に配置されたバッフル6によって、攪拌翼5の周縁に堆積する湿潤原料をかき落とすことができるため、攪拌能力が低下することがない。このため、湿潤原料を安定的に攪拌することができ、初期の乾燥能力を維持し続けることができる。
【0007】
バッフル6は、攪拌翼5と干渉しない位置に取り付けられ、かつ、その先端部が撹拌翼5の先端部よりも本体容器1の中心側にあることが好ましく、攪拌軸が2本であることが好ましい。また、バッフル6が、棒状のバッフルであり、その直径が、攪拌翼5とこれに隣接する攪拌翼5との距離の30〜90%であることが好ましい。
【0008】
バッフル6の形状をこのようなものにすることにより、特に水分量の多い湿潤原料を安定的に乾燥できる。水分量の多い湿潤原料は、攪拌翼5とこれに隣接する攪拌翼5との間に堆積してしまい、攪拌翼5の攪拌能力が低下してしまう場合がある。本発明に係る乾燥装置では、本体容器1の内壁に配置されたバッフル6によって、攪拌翼5同士の間に堆積する湿潤原料や乾燥原料をかき出すことができるため、攪拌翼5の攪拌能力が低下することがない。このため、湿潤原料を安定的に攪拌することができ、初期の乾燥能力を維持し続けることができる。
【0009】
乾燥装置は、本体容器1の一方の端部に配設された熱媒体供給口7と、本体容器1の他方の端部に配設された熱媒体排出口8と、をさらに備えることが好ましく、攪拌軸4が中空の軸であり、その内部に熱媒体を導入しながら湿潤原料を乾燥させることが好ましい。
このような構成にすることによって、湿潤原料を効率よく加熱することができ、乾燥能力を向上させて乾燥処理時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0010】
乾燥装置内部や攪拌翼などに付着しやすい湿潤原料であっても、安定的に攪拌乾燥ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好例な実施形態について説明する。なお、添付図面に示された形態は本発明に係る代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0012】
<第一実施形態>
本実施形態に係る乾燥装置は、図1および図2に示すように、本体容器1と、本体容器1の一方の端部に配設され湿潤原料を投入させる投入口2と、本体容器1の他方の端部に配設され湿潤原料を攪拌乾燥させて得られる乾燥原料を排出させる排出口3と、本体容器1の内部にその長手方向に沿って配設された回転可能な撹拌軸4と、撹拌軸4に取り付けられた撹拌翼5,5…と、本体容器1の内壁から攪拌軸4に向かって配置されたバッフル6を備える。
【0013】
本体容器1は、半円筒状の下部とほぼ四角柱の上部を有する箱状のものであり、攪拌軸4を水平となるように保持している。攪拌軸4は、軸受け(図示しない)を介して本体容器1の長手方向両端部に回転可能に取り付けられている。この攪拌軸4は、中空の筒状のものであり、その一方の端部から熱媒体を導入し他方の端部からこれを排出する。また、駆動装置(図示しない)によって回転させられるものであり、その周縁取り付けられた攪拌翼(5,5…)を介して湿潤原料やこれを乾燥させて得られる乾燥原料を加熱し、攪拌乾燥できるものである。
【0014】
攪拌翼5は、扇形状のものであり、攪拌軸4の外周部に対峙するように取り付けられている。本実施形態においては、本体容器1の長手方向に沿って14対の攪拌翼を取り付けた。なお、この攪拌翼5の取り付け位置や枚数は、湿潤原料の組成や量によって適宜設計すればよい。
【0015】
バッフル6は、本体容器1の上面から攪拌翼5と干渉しない位置で、その先端を攪拌翼5の先端より攪拌軸4に近い位置になるように、つまり、攪拌翼5とこれに隣接する攪拌翼5の間に挟まれるように取り付けられている。
本実施形態においては、バッフル6は、攪拌翼5とこれに隣接する攪拌翼5の距離の60%の直径の棒状のものであり、本体容器1の長手方向ほぼ中央部に3本取り付けられている。なお、このバッフル6は、湿潤原料の組成や量によってその取り付け位置や本数を適宜変更可能である。
【0016】
また、バッフル6の形状や長さも湿潤原料の組成や量によって適宜設計すればよい。バッフル6を棒状のものとする場合は、攪拌翼5とこれに隣接する攪拌翼5の距離の30〜90%とすることにより、構造をシンプルにするとともにバッフル6自体に被乾燥物が堆積することを防止できる。
【0017】
<第二実施形態>
図3に示すように、第一実施形態の乾燥装置における攪拌軸4を2本に変更したものである。また、攪拌軸4の増加にあわせてバッフル6の本数を増加させている。バッフル6の取り付け位置は、第一実施形態の取り付け位置と同様であり、本体容器1の長手方向ほぼ中央部に本体容器1の上面から攪拌軸4の中心に向かってそれぞれ3本取り付けた。
このような形態にすることにより、湿潤原料および乾燥原料の攪拌能力が向上するため、乾燥時間を短縮することができる。また、攪拌翼5と他の攪拌軸4に取り付けられた攪拌翼5により、相互に堆積する湿潤原料をかき出す効果も得られるため、乾燥能力も向上する。
【0018】
なお、本実施形態にあっては、攪拌軸4の回転方向は、本体容器1の内側両側面部において湿潤原料および乾燥原料がかき上げられる方向とした。この回転方向も、湿潤原料の組成や量によって適宜設計すればよい。
【0019】
<第三実施形態>
図4に示すように、第二実施形態の乾燥装置において、バッフル6の取り付け位置を本体容器1の側壁から攪拌軸4に向かうように変更したものである。
【0020】
<第四実施形態>
図5に示すように、第三実施形態におけるバッフル6の長さを攪拌翼5の外周部より外側になるように変更したものである。
本実施形態においては、特に攪拌翼5の外縁部に付着しやすい湿潤原料を攪拌乾燥させる場合に効果を発揮する。つまり、攪拌翼5の外縁部に付着する湿潤原料および乾燥原料をバッフル6によってかき落とすことができるものである。
【0021】
<第五実施形態>
図6および図7に示すように、第2実施形態の乾燥装置における本体容器1の外表面にジャケット7を取り付けたものである。
ジャケット7は、その一方の端部に配設された熱媒体供給口8と、他方の端部に配設された熱媒体排出口9とを備えるものであり、その内部に熱媒体を導入しながら本体容器1を介して湿潤原料を加熱できるものである。
このような形態にすることによって、湿潤原料を効率的に加熱することができるため、乾燥時間を短縮することができる。
【0022】
各実施形態で用いる熱媒体としては、乾燥に用いる熱媒体は、特に限定するものではないが、例えば、加熱油や飽和水蒸気などを用いることができる。
【0023】
乾燥装置で乾燥させる湿潤原料としては、特に限定するものではないが、例えば、クロロプレンゴムラテックスやアクリルゴムラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合ゴムラテックスなどの合成ゴムラテックスを廃棄する際に発生する有機汚泥がある。
【実施例】
【0024】
<実施例1>
乾燥装置として、第二実施形態のものを用い、クロロプレンゴムラテックスを凝集処理して発生した湿潤原料を攪拌乾燥した。
バッフル6として、直径6mmの棒状のものを用いた。バッフル6先端と攪拌軸4とのクリアランスは10mmとし、撹拌翼5とこれに隣接する攪拌翼5との中心部に位置するように設置した。また、攪拌翼5とこれに隣接する攪拌翼5との距離は30mmとした。バッフル6は、各攪拌軸4の上部で、乾燥装置のほぼ中央部にそれぞれ3本(合計6本)取り付けた。
【0025】
攪拌軸の回転数は30rpmとし、湿潤原料を投入口2より60kg/hrで連続供給し乾燥前後での湿潤原料の含水率を測定した。
なお、試験は運転困難となる事例が発生しない限りにおいて、湿潤原料の供給開始から50時間で終了した。
【0026】
熱媒体としては、7kg/cm2の飽和水蒸気を用いた。
【0027】
湿潤原料およびこれを乾燥させて得られる乾燥原料の水分は、定温乾燥器DO−600FA(アズワン株式会社製)を使用し、測定サンプル約10.0gを秤量後、乾燥器にセットして器内温度100℃で24時間乾燥を行い、前後の重量変化から水分量を測定した。サンプリングは運転困難となる事例が発生しない限りにおいては8時間毎に、運転困難となった場合は測定を見送った。その結果を表1に示した。
【0028】
(実施例2)
実施例1におけるバッフル6の直径を9mmのものに変更した以外は、実施例1と同様の手順にて湿潤原料を乾燥させてその水分量を測定した。
【0029】
(実施例3)
実施例1におけるバッフル6の直径を15mmのものに変更した以外は、実施例1と同様の手順にて湿潤原料を乾燥させてその水分量を測定した。
【0030】
(実施例4)
実施例1におけるバッフル6の直径を24mmのものに変更した以外は、実施例1と同様の手順にて湿潤原料を乾燥させてその水分量を測定した。
【0031】
(実施例5)
実施例1におけるバッフル6の直径を27mmのものに変更した以外は、実施例1と同様の手順にて湿潤原料を乾燥させてその水分量を測定した。
【0032】
(比較例1)
バッフルを装着せずに実施例1と同様の手順にて湿潤原料を乾燥させてその水分量を測定したが、攪拌翼5とこれに隣接する攪拌翼5との間に湿潤原料が堆積して運転不可能となったため試験を中止した。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示す通り、本発明の乾燥装置は、付着性の高い湿潤原料が撹拌翼5とこれに隣接する攪拌翼5との間に堆積して目詰まりすることがないため、安定的に攪拌乾燥ができた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第一実施形態に係る乾燥装置の部分断面を模式的に示した図である。
【図2】第一実施形態に係る乾燥装置を、その軸方向と直行する方向で切断した断面を模式的に示した図である。
【図3】第二実施形態に係る乾燥装置を、その軸方向と直行する方向で切断した断面を模式的に示した図である。
【図4】第三実施形態に係る乾燥装置を、その軸方向と直行する方向で切断した断面を模式的に示した図である。
【図5】第四実施形態に係る乾燥装置を、その軸方向と直行する方向で切断した断面を模式的に示した図である。
【図6】第五実施形態に係る乾燥装置の外観を模式的に示した図である。
【図7】第五実施形態に係る乾燥装置を、その軸方向と直行する方向で切断した断面を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0036】
1…本体容器、2…投入口、3…排出口、4…攪拌軸、5…撹拌翼、6…バッフル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体容器(1)と、本体容器(1)の一方の端部に配設され湿潤原料を投入させる投入口(2)と、本体容器(1)の他方の端部に配設され湿潤原料を攪拌乾燥させて得られる乾燥原料を排出させる排出口(3)と、本体容器(1)の内部にその長手方向に沿って配設された回転可能な撹拌軸(4)と、撹拌軸(4)に取り付けられた撹拌翼(5,5…)と、本体容器(1)の内壁から攪拌軸(4)に向かって配置されたバッフル(6)と、を備える乾燥装置。
【請求項2】
バッフル(6)が、攪拌翼(5,5…)と干渉しない位置に取り付けられ、且つ、その先端部が撹拌翼(5,5…)の先端部よりも本体容器(1)の中心側にあることを特徴とする請求項1記載の乾燥装置。
【請求項3】
攪拌軸(4)が、2本であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の乾燥装置。
【請求項4】
バッフル(6)が、棒状のバッフルであり、その直径が、攪拌翼(5)とこれに隣接する攪拌翼(5)との距離の30〜90%であることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項記載の乾燥装置。
【請求項5】
さらに、本体容器(1)の外表面の一部または全部を覆うジャケット(7)を有することを特徴とする請求項1〜4いずれか一項記載の乾燥装置。
【請求項6】
ジャケット(7)が、その一方の端部に配設された熱媒体供給口(8)と、他方の端部に配設された熱媒体排出口(9)とを備え、その内部に熱媒体を導入しながら本体容器(1)を介して湿潤原料を加熱できるものであることを特徴とする請求項5記載の乾燥装置。
【請求項7】
攪拌軸(4)が、中空の軸であり、その内部に熱媒体を導入しながら湿潤原料を加熱できるものであることを特徴とする請求項1〜6いずれか一項記載の乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−96424(P2010−96424A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267494(P2008−267494)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】