説明

二色成形品及びその製造方法

【課題】二色成形品及びその製造方法に関し、二次側成形時に発生するガス焼けやウエルドラインの発生を防止する。
【解決手段】一次側成形品30は、一次側ベース部50、一次側装飾用凸部60、立上面61,62、交差面63〜66、該立上面及び該交差面とで少なくとも囲まれ、該一次側装飾用凸部の外側に位置する該一次側ベース部上の袋小路部70,71、該袋小路部に形成され、該一次側ベース部の意匠面側から裏面側に貫通する二次側樹脂流動路80,81、一次側ベースの裏面側から突出し、該二次側樹脂流動路の周囲を囲む防護壁90を有する。二次側成形品40は、意匠面側成形部100、裏面側成形部110、該二次側樹脂流動路を意匠面側から裏面側に流動し、該防護壁をはさんで該裏面側成形部と離れて点在する点在成形部120を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二色成形品及びその製造方法に関し、一次側成形品の意匠面側に形成された、文字ないしは図形等の装飾部を構成する一次側装飾用凸部の周囲に、意匠面側から裏面側に貫通する二次側樹脂流動路を形成し、一次側成形品の裏面側に二次側樹脂流動路の周囲を囲む防護壁を形成することで、二次側成形時に発生するガス焼けやウエルドラインの発生を防止することができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、数字「0」、文字の「B」、「P」等のように閉塞領域を有するキートップを作成するための二色成形方法が知られている(例えば特許文献1の3頁右上欄2行〜同頁右下欄9行、第1図及び第2図参照)。
上記した二色成形方法で一次成形する一次側成形品の閉塞領域の内外に、当該一次側成形品の表裏面に貫通する連通孔をそれぞれ形成する。一次側成形品の裏面側に、スライドコアを配置し、当該スライドコアを後退させることで、一次側成形品の裏面とスライドコアとの間に形成される下側空間部内に、二次側成形品の樹脂を充填する。充填された樹脂は、連通孔を通って、一次側成形品の意匠面側に形成された閉塞領域の内外に流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64-20109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来の二色成形方法では、一次側成形品の意匠面側に形成された閉塞領域に、裏面側から二次側成形品の樹脂を充填するので、ガス焼けやウエルドラインが発生し易いという問題点があった。
そこで、各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次の点にある。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、二色成形品に関し、次の点を目的とする。
【0005】
すなわち、請求項1に記載の発明は、一次側成形品の意匠面側に形成された、文字ないしは図形等の装飾部を構成する一次側装飾用凸部の周囲に、意匠面側から裏面側に貫通する二次側樹脂流動路を形成し、一次側成形品の裏面側に二次側樹脂流動路の周囲を囲む防護壁を形成することで、二次側成形時に発生するガス焼けやウエルドラインの発生を防止することができるようにしたものである。
【0006】
すなわち、二次成形時に、一次側ベース部の意匠面側から射出され、一次側ベース部の周囲を通って裏面側に回り込んだ溶融樹脂は、防護壁に遮られて、二次側樹脂流動路を通って防護壁内に充填された溶融樹脂と交わることがない。
このため、請求項1に記載の発明によれば、一次側装飾用凸部の袋小路部において発生し易い、ガス焼けやウエルドラインの発生を未然に防止することができる。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、二色成形品に関し、上記した請求項1に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0007】
すなわち、請求項2に記載の発明は、一次側成形品を二次側成形品の樹脂で囲い込むとともに、意匠面側成形部の体積と、裏面側成形部の体積との体積比を同等に設定することで、樹脂の収縮の力を二色成形品の表裏で拮抗させ、反りの発生を打ち消すことができるようにしたものである。
(請求項3〜5)
請求項3〜5に記載の発明は、二色成形品に関し、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0008】
すなわち、請求項3〜5に記載の発明は、ガス焼けやウエルドラインが発生し易い袋小路部に、二次側樹脂流動路を適切に配置することができるようにしたものである。
(請求項6及び請求項7)
請求項6及び請求項7に記載の発明は、二色成形品に関し、上記した請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0009】
すなわち、請求項6及び請求項7に記載の発明は、防護壁を適切に形成することができるようにしたものである。
(請求項8)
請求項8に記載の発明は、二色成形品の製造方法に関し、次の点を目的とする。
すなわち、請求項8に記載の発明は、一次側成形品の意匠面側に形成された、文字ないしは図形等の装飾部を構成する一次側装飾用凸部の周囲に、意匠面側から裏面側に貫通する二次側樹脂流動路を形成し、一次側成形品の裏面側に二次側樹脂流動路の周囲を囲む防護壁を形成することで、二次側成形時に発生するガス焼けやウエルドラインの発生を防止することができるようにしたものである。
(請求項9及び請求項10)
請求項9及び請求項10に記載の発明は、二色成形品の製造方法に関し、上記した請求項8に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0010】
すなわち、請求項9及び請求項10に記載の発明は、スライドコアにより、一次側成形品の点在成形部を適切に形成することができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した各目的を達成するためになされたものであり、各発明の特徴点を図面に示した発明の実施の形態を用いて、以下に説明する。
なお、カッコ内の符号は、発明の実施の形態において用いた符号を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
また、図面番号も、発明の実施の形態において用いた図番を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、二色成形品に関し、次の点を特徴とする。
【0012】
第1に、一次側成形品(30)の周囲を、例えば図1に示すように、二次側成形品(40)で略覆うようにした二色成形品(10)である。
第2に、一次側成形品(30)は、例えば図8〜16に示すように、次の構成を有する。
(1)一次側ベース部(50)
(2)一次側装飾用凸部(60)
一次側装飾用凸部(60)は、例えば図14及び図15に示すように、一次側ベース部(50)の意匠面側から突出し、文字ないしは図形等の装飾部(20)を構成するものである。
【0013】
(3)立上面(61,62)
立上面(61,62)は、例えば図14及び図15に示すように、一次側ベース部(50)から立ち上がるものである。
(4)交差面(63〜66)
交差面(63〜66)は、例えば図14及び図15に示すように、立上面(61,62)と交わるとともに、一次側ベース部(50)から立ち上がるものである。
【0014】
(5)袋小路部(70,71)
袋小路部(70,71)は、例えば図14及び図15に示すように、一次側ベース部(50)上に位置し、立上面(61,62)及び交差面(63〜66)とで少なくとも囲まれ、一次側装飾用凸部(60)の外側に位置するものである。
(6)二次側樹脂流動路(80,81)
二次側樹脂流動路(80,81)は、例えば図13〜16に示すように、袋小路部(70,71)に形成され、一次側ベース部(50)の意匠面側から裏面側に貫通するものである。
【0015】
(7)防護壁(90)
防護壁(90)は、例えば図9、図11〜13及び図16に示すように、一次側ベースの裏面側から突出し、二次側樹脂流動路(80,81)の周囲を囲むものである。
第3に、二次側成形品(40)は、例えば図1〜7に示すように、次の構成を有する。
(8)意匠面側成形部(100)
意匠面側成形部(100)は、例えば図1、図2、図4、図6及び図7に示すように、一次側ベース部(50)の意匠面側から充填され、一次側装飾用凸部(60)の周囲を覆うものである。
【0016】
(9)裏面側成形部(110)
裏面側成形部(110)は、例えば図1、図3、図5、図6及び図7に示すように、一次側ベース部(50)の意匠面側から裏面側に回り込み、一次側ベース部(50)の裏面側を覆うものである。
(10)点在成形部(120)
点在成形部(120)は、例えば図1、図5及び図7に示すように、二次側樹脂流動路(80,81)を意匠面側から裏面側に流動し、防護壁(90)をはさんで裏面側成形部(110)と離れて点在するものである。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、二色成形品に関し、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0017】
すなわち、意匠面側成形部(100)の体積と、裏面側成形部(110)の体積との体積比を同等に設定している。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、二色成形品に関し、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0018】
すなわち、交差面(63〜66)は、例えば図14及び図15に示すように、立上面(61,62)と直角又は鋭角的に交わっている。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、二色成形品に関し、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0019】
第1に、交差面(63〜66)は、例えば図14及び図15に示すように、立上面(61,62)の両側に位置する。
第2に、袋小路部(70,71)は、三方が囲まれている。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、二色成形品に関し、上記した請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0020】
すなわち、二次側樹脂流動路(80,81)は、例えば図14及び図15に示すように、立上面(61,62)又は交差面(63〜66)のいずれか一方に面している。
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、二色成形品に関し、上記した請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0021】
すなわち、防護壁(90)は、例えば図9に示すように、筒形に形成されている。
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、二色成形品に関し、上記した請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
すなわち、防護壁(90)は、例えば図16に示すように、隣接する2個以上の二次側樹脂流動路(80,81)にまたがって形成されている。
(請求項8)
請求項8に記載の発明は、二色成形品の製造方法に関し、上記した請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0022】
第1に、一次側成形品(30)の周囲を、二次側成形品(40)で略覆うようにした二色成形品(10)の製造方法である。
第2に、一次側成形品(30)を、例えば図17に示すように、一次成形する。
第3に、一次側成形品(30)は、例えば図8〜16に示すように、次の構成を有する。
(1)一次側ベース部(50)
(2)一次側装飾用凸部(60)
一次側装飾用凸部(60)は、例えば図14及び図15に示すように、一次側ベース部(50)の意匠面側から突出し、文字ないしは図形等の装飾部(20)を構成するものである。
【0023】
(3)立上面(61,62)
立上面(61,62)は、例えば図14及び図15に示すように、一次側ベース部(50)から立ち上がるものである。
(4)交差面(63〜66)
交差面(63〜66)は、例えば図14及び図15に示すように、立上面(61,62)と交わるとともに、一次側ベース部(50)から立ち上がるものである。
【0024】
(5)袋小路部(70,71)
袋小路部(70,71)は、例えば図14及び図15に示すように、一次側ベース部(50)上に位置し、立上面(61,62)及び交差面(63〜66)とで少なくとも囲まれ、一次側装飾用凸部(60)の外側に位置するものである。
(6)二次側樹脂流動路(80,81)
二次側樹脂流動路(80,81)は、例えば図13〜16に示すように、袋小路部(70,71)に形成され、一次側ベース部(50)の意匠面側から裏面側に貫通するものである。
【0025】
(7)防護壁(90)
防護壁(90)は、例えば図9、図11〜13及び図16に示すように、一次側ベースの裏面側から突出し、二次側樹脂流動路(80,81)の周囲を囲むものである。
第4に、二次側成形品(40)を、例えば図1に示すように、二次成形する。
第5に、二次側成形品(40)は、例えば図1〜7に示すように、次の構成を有する。
【0026】
(8)意匠面側成形部(100)
意匠面側成形部(100)は、例えば図1、図2、図4、図6及び図7に示すように、一次側ベース部(50)の意匠面側から充填され、一次側装飾用凸部(60)の周囲を覆うものである。
(9)裏面側成形部(110)
裏面側成形部(110)は、例えば図1、図3、図5、図6及び図7に示すように、一次側ベース部(50)の意匠面側から裏面側に回り込み、一次側ベース部(50)の裏面側を覆うものである。
【0027】
(10)点在成形部(120)
点在成形部(120)は、例えば図1、図5及び図7に示すように、二次側樹脂流動路(80,81)を意匠面側から裏面側に流動し、防護壁(90)をはさんで裏面側成形部(110)と離れて点在するものである。
(請求項9)
請求項9に記載の発明は、二色成形品の製造方法に関し、上記した請求項8に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0028】
第1に、可動側金型(300)には、例えば図1及び図17に示すように、二次側樹脂流動路(80,81)にはまり込むスライドコア(310)を有する。
第2に、可動側金型(300)の後退時に、例えば図1に示すように、スライドコア(310)を後退させることで、一次側ベース部(50)の意匠面側から充填され二次成形樹脂を、裏面側に流動させるようにしている。
(請求項10)
請求項10に記載の発明は、二色成形品の製造方法に関し、上記した請求項8又は請求項9に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0029】
第1に、可動側金型(300)には、例えば図1及び図17に示すように、二次側樹脂流動路(80,81)にはまり込むスライドコア(310)を有する。
第2に、可動側金型(300)の後退時に、例えば図1に示すように、スライドコア(310)を後退させるとともに、後退させた当該スライドコア(310)を二次側樹脂流動路(80,81)内に留まらせるようにしている。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
(請求項1)
請求項1に記載の発明によれば、二色成形品に関し、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、一次側成形品の意匠面側に形成された、文字ないしは図形等の装飾部を構成する一次側装飾用凸部の周囲に、意匠面側から裏面側に貫通する二次側樹脂流動路を形成し、一次側成形品の裏面側に二次側樹脂流動路の周囲を囲む防護壁を形成することで、二次側成形時に発生するガス焼けやウエルドラインの発生を防止することができる。
【0031】
すなわち、二次成形時に、一次側ベース部の意匠面側から射出され、一次側ベース部の周囲を通って裏面側に回り込んだ溶融樹脂は、防護壁に遮られて、二次側樹脂流動路を通って防護壁内に充填された溶融樹脂と交わることがない。
このため、請求項1に記載の発明によれば、一次側装飾用凸部の袋小路部において発生し易い、ガス焼けやウエルドラインの発生を未然に防止することができる。
(請求項2)
請求項2に記載の発明によれば、二色成形品に関し、上記した請求項1に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0032】
すなわち、請求項2に記載の発明によれば、一次側成形品を二次側成形品の樹脂で囲い込むとともに、意匠面側成形部の体積と、裏面側成形部の体積との体積比を同等に設定することで、樹脂の収縮の力を二色成形品の表裏で拮抗させ、反りの発生を打ち消すことができる。
(請求項3〜5)
請求項3〜5に記載の発明によれば、二色成形品に関し、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0033】
すなわち、請求項3〜5に記載の発明によれば、ガス焼けやウエルドラインが発生し易い袋小路部に、二次側樹脂流動路を適切に配置することができる。
(請求項6及び請求項7)
請求項6及び請求項7に記載の発明によれば、二色成形品に関し、上記した請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0034】
すなわち、請求項6及び請求項7に記載の発明によれば、防護壁を適切に形成することができる。
(請求項8)
請求項8に記載の発明によれば、二色成形品の製造方法に関し、次のような効果を奏する。
【0035】
すなわち、請求項8に記載の発明によれば、一次側成形品の意匠面側に形成された、文字ないしは図形等の装飾部を構成する一次側装飾用凸部の周囲に、意匠面側から裏面側に貫通する二次側樹脂流動路を形成し、一次側成形品の裏面側に二次側樹脂流動路の周囲を囲む防護壁を形成することで、二次側成形時に発生するガス焼けやウエルドラインの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】二次成形時の金型の概略縦断面図である。
【図2】二色成形品の意匠面側から見た斜視図である。
【図3】二色成形品の裏面側から見た斜視図である。
【図4】二色成形品の平面図である。
【図5】二色成形品の裏面図である。
【図6】二色成形品の側面図である。
【図7】図5のA−A線に沿う断面図である。
【図8】一次側成形品の意匠面側から見た斜視図である。
【図9】一次側成形品の裏面側から見た斜視図である。
【図10】一次側成形品の平面図である。
【図11】一次側成形品の裏面図である。
【図12】一次側成形品の側面図である。
【図13】図13のB−B線に沿う断面図である。
【図14】図8の一次側装飾用凸部の拡大図である。
【図15】図10の一次側装飾用凸部の拡大図である。
【図16】図11の一次側装飾用凸部の拡大図である。
【図17】一次成形時の金型の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図2〜7中は、10は、本発明に係る製造方法により製造した二色成形品であり、その表面には、英大文字の「E」からなる装飾部20が形成されている。
なお、装飾部20として、英大文字の「E」を例示したが、これに限定されず、他の文字、図形、記号等でも良い。
二色成形品10は、大別すると、図7に示すように、次の各部から構成されている。
【0038】
なお、次の(1)及び(2)については、後述する。
(1)一次側成形品30
(2)二次側成形品40
なお、二色成形品10は、上記した(1)及び(2)に限定されず、2種類以上の色や樹脂を使用しても良い。
(一次側成形品30)
一次側成形品30は、適度な剛性を有するABS(Acrylonitrile butadiene styrene)等の熱可塑性樹脂を使用している。
【0039】
なお、一次側成形品30の成形材料として、ABSを例示したが、これに限定されず、例えばPP(polypropylene)を使用しても良い。
具体的には、一次側成形品30には、図8〜16に示すように、大別すると、次の各部を有する。
なお、次の(1)〜(5)については、後述する。
【0040】
(1)一次側ベース部50
(2)一次側装飾用凸部60
(3)袋小路部70,71
(4)二次側樹脂流動路80,81
(5)防護壁90
なお、一次側成形品30の各部は、上記した(1)〜(5)に限定されない。
(二次側成形品40)
二次側成形品40は、
具体的には、二次側成形品40には、図2〜7に示すように、次の各部を有する。
【0041】
(1)意匠面側成形部100
意匠面側成形部100は、図1、図3、図5、図6及び図7に示すように、一次側ベース部50の意匠面側から充填され、一次側装飾用凸部60の周囲を覆うものである。
すなわち、意匠面側成形部100は、図1に示すように、後述する固定側金型200のゲートから射出され、固定側金型200のキャビティと、一次側ベース部50の意匠面との間に充填される二次側の成形材料により成形される。
【0042】
(2)裏面側成形部110
裏面側成形部110は、図1、図3、図5、図6及び図7に示すように、一次側ベース部50の意匠面側から裏面側に回り込み、一次側ベース部50の裏面側を覆うものである。
すなわち、裏面側成形部110は、図1に示すように、一次側ベース部50の意匠面側から裏面側に回り込み、後述する固定側金型200のキャビティと、一次側ベース部50の裏面との間に充填される二次側の成形材料により成形される。
【0043】
また、裏面側成形部110の体積は、意匠面側成形部100の体積と比較し、両者の体積比を同等に設定している。
具体的には、二色成形品10の厚みを、例えば「3.9mm」と仮定した場合に、意匠面側成形部100の厚みを「1.3mm」に設定し、裏面側成形部110の厚みを「1.1mm」に設定している。意匠面側成形部100の厚みを、裏面側成形部110の厚みに比較して厚く設定したのは、一次側ベース部50の意匠面側には、後述する一次側装飾用凸部60が形成されているためである。
【0044】
(3)点在成形部(120)
点在成形部120は、図1、図5及び図7に示すように、後述する二次側樹脂流動路80,81を意匠面側から裏面側に流動し、防護壁90をはさんで裏面側成形部110と離れて点在するものである。
すなわち、点在成形部120は、図1に示すように、後述する二次側樹脂流動路80,81を意匠面側から裏面側に流動し、防護壁90内に充填される二次側の成形材料により成形される。
(一次側ベース部50)
一次側ベース部50は、図8〜13に示すように、板状に形成されている。一次側ベース部50は、図1に示すように、二次成形時に、意匠面側成形部100と裏面側成形部110とに表裏面からサンドイッチ状に挟まれ、これらの成形部100,110中に埋没する。
(一次側装飾用凸部60)
一次側装飾用凸部60は、図14及び図15に示すように、一次側ベース部50の意匠面側から突出し、英大文字の「E」からなる装飾部20を構成するものである。
【0045】
具体的には、一次側装飾用凸部60は、図14及び図15に示すように、次の各面を有する。
なお、一次側装飾用凸部60の各面は、次の(1)〜(3)に限定されない。
(1)立上面61,62
立上面61,62は、図14及び図15に示すように、一次側ベース部50から立ち上がるものである。
【0046】
具体的には、立上面61,62は、一次側装飾用凸部60の周囲の外側面に位置し、二次成形時に、意匠面側成形部100中に埋没する。
なお、立上面61,62として、2個の面を例示したが、これらに限定されず、1個或いは3個以上の面から構成しても良い。
(2)交差面63〜66
交差面63〜66は、図14及び図15に示すように、立上面61,62と交わるとともに、一次側ベース部50から立ち上がるものである。
【0047】
また、交差面63〜66は、立上面61,62と直角又は鋭角的に交わっている。
さらに、交差面63〜66は、立上面61,62の両側に位置する。
なお、交差面63〜66を、立上面61,62の両側に位置させたが、これに限定されず、立上面61,62の片側に位置させても良い。
具体的には、交差面63〜66は、立上面61,62と同様に、一次側装飾用凸部60の周囲の外側面に位置し、二次成形時に、意匠面側成形部100中に埋没する。
【0048】
なお、交差面63〜66として、4個の面を例示したが、これらに限定されず、1〜3個或いは5個以上の面から構成しても良い。
(3)表層面67
表層面67は、図14及び図15に示すように、二次側成形品40の表層、すなわち一次側装飾用凸部60の上面に位置し、二次成形時に、意匠面側成形部100から露出する。
(袋小路部70,71)
袋小路部70,71は、図14及び図15に示すように、一次側ベース部50上に位置し、立上面61,62及び交差面63〜66とで少なくとも囲まれ、一次側装飾用凸部60の外側に位置するものである。
【0049】
なお、袋小路部70,71として、2個を例示したが、これらに限定されず、例えば英大文字の「E」以外の文字、図形、記号の場合に、1個或いは3個以上となる場合もある。
(二次側樹脂流動路80,81)
二次側樹脂流動路80,81は、図9、図13及び図14〜16に示すように、袋小路部70,71に形成され、一次側ベース部50の意匠面側から裏面側に貫通するものである。
【0050】
また、二次側樹脂流動路80,81は、図14〜16に示すように、立上面61,62又は交差面63〜66のいずれか一方に面している。
すなわち、2個の二次側樹脂流動路80,81のうち、二次側樹脂流動路80は、図14〜16に示すように、立上面61と交差面64との二面に面している。
また、二次側樹脂流動路81は、立上面62と交差面65との二面に面している。
【0051】
なお、二次側樹脂流動路80,81を、二面に面させたが、これに限定されず、一面或いは三面以上に面させても良い。
また、二次側樹脂流動路80,81の断面を、扇形に形成したが、これに限定されず、断面が円形、長円形、楕円形、方形或いは幾何学模様形を成すように形成しても良い。
(防護壁90)
防護壁90は、図9、図13及び図14〜16に示すように、一次側ベースの裏面側から突出し、二次側樹脂流動路80,81の周囲を囲むものである。
【0052】
また、防護壁90は、筒形、例えば円筒形に形成されている。
なお、防護壁90として、円筒形を例示したが、これに限定されず、角筒形に形成しても良い。
さらに、防護壁90は、隣接する2個以上の二次側樹脂流動路80,81にまたがって形成されている。
【0053】
なお、防護壁90を、隣接する2個以上の二次側樹脂流動路80,81にまたがって形成したが、これに限定されず、隣接する2個以上の二次側樹脂流動路80,81に独立して計2個形成しても良い。
(製造方法)
つぎに、図1及び図17を用いて、二色成形品10の製造方法について説明する。
【0054】
まず、金型から説明すると、金型は、大別すると、次の金型から構成されている。
なお、次の(1)及び(2)については、後述する。
(1)固定側金型200
(2)可動側金型300
なお、金型は、上記した(1)及び(2)に限定されない。
(固定側金型200)
固定側金型200の表面には、図17に示すように、一次側成形品30及び二次側成形品40の片半、すなわち意匠面側の形状に適合したキャビティが形成され、キャビティには、図示しないが、ゲートが臨んでいる。
【0055】
なお、一次成形時には、固定側金型200のキャビティ内に、図示しないが、スライドコアを進入させ、一次側成形品30の一次側装飾用凸部60を成形している。
(可動側金型300)
可動側金型300は、図1及び図17に示すように、固定側金型200に対して可動に構成され、一次側成形品30及び二次側成形品40の他の片半、すなわち裏面側の形状に適合したキャビティが形成されている。
【0056】
可動側金型300には、図1に示すように、次のコアを有する。
なお、可動側金型300のコアは、次の(1)及び(2)に限定されない。
(1)スライドコア310
スライドコア310は、図1に示すように、可動側金型300にスライド可能に支持され、一次成形時に二次側樹脂流動路80,81にはまり込むものである。
【0057】
また、スライドコア310は、図1に示すように、可動側金型300の後退時に後退し、一次側ベース部50の意匠面側から充填され二次成形樹脂を、裏面側に流動させるようにしている。
さらに、後退させた当該スライドコア310を、図1に示すように、二次側樹脂流動路80,81内に留まらせるようにしている。
【0058】
具体的には、スライドコア310の後退量を、可動側金型300の後退量より小さく設定している。
(2)一次側変形防止コア320
一次側変形防止コア320は、図1に示すように、可動側金型300の後退時に動かないものであり、可動側金型300の後退時に、一次側成形品30の防護壁90の先端部の端面に当接した状態を維持する。一次側変形防止コア320により、二次成形時の防護壁90の形状を保持している。
(一次側成形方法)
つぎに、図17を用いて、一次側成形方法について説明する。
【0059】
まず、固定側金型200と可動側金型300とを型締めした後、一次側成形用の溶融樹脂を固定側金型200側から射出し、図17に示すように、一次側成形品30を一次成形する。
なお、一次成形時には、可動側金型300のスライドコア310を、図示しないが、二次側樹脂流動路80,81を成形するキャビティ内に進入させておく。
(二次側成形方法)
つづいて、図1を用いて、二次側成形方法について説明する。
【0060】
一次成形後、図1に示すように、可動側金型300を後退させる。
このとき、スライドコア310を、図1に示すように、可動側金型300とともに後退させるが、このときの後退量を、可動側金型300の後退量より小さく設定し、後退させたスライドコア310を、図1に示すように、二次側樹脂流動路80,81内に留まらせるようにしている。
【0061】
その後、二次側成形用の溶融樹脂を固定側金型200側から射出し、図1に示すように、一次側成形品30の周囲を二次側成形品40で略覆うようにして、二色成形品10が成形される。
すなわち、固定側金型200側から射出した二次側成形用の溶融樹脂は、固定側金型200のキャビティ内に充填され、一次側装飾用凸部60の周囲を覆う意匠面側成形部100が二次成形される。
【0062】
同時に、溶融樹脂は、一次側ベース部50の周囲と固定側金型200のキャビティとの間の隙間を通って、一次側ベース部50の裏面と、後退した可動側金型300のキャビティとの間に充填され、裏面側成形部110が二次成形される。
一方、意匠面側成形部100の二次成形時に、溶融樹脂は、一次側装飾用凸部60の周囲の袋小路部70,71に達し、二次側樹脂流動路80,81を通って防護壁90内に充填される。
【0063】
このとき、二次側樹脂流動路80,81を通った溶融樹脂は、防護壁90の内周面と、防護壁90内に留まっているスライドコア310との間に、充填される。
二次成形時に、一次側ベース部50の周囲を通って裏面側に回り込んだ溶融樹脂は、防護壁90に遮られて、二次側樹脂流動路80,81を通って防護壁90内に充填された溶融樹脂と交わることがない。
【0064】
このため、袋小路部70,71において発生し易い、ガス焼けやウエルドラインの発生を未然に防止することができる。
また、二次成形後、一次側成形品30と二次側成形品40とが異なる比率で収縮する。このとき、一次側成形品30の一次側ベース部50の周囲を、二次側成形品40の樹脂で囲い込むとともに、意匠面側成形部100の体積と、裏面側成形部110の体積との体積比を同等に設定していることから、二色成形品10の表裏方向の収縮率をほぼ等しくできることから、二色成形品10の厚み方向の反りの発生を緩和することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 二色成形品 20 装飾部
30 一次側成形品 40 二次側成形品
50 一次側ベース部 60 一次側装飾用凸部
61,62 立上面 63〜66 交差面
67 表層面
70,71 袋小路部 80,81 二次側樹脂流動路
90 防護壁
100 意匠面側成形部 110 裏面側成形部
120 点在成形部
200 固定側金型 300 可動側金型
310 スライドコア 320 一次側変形防止コア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側成形品の周囲を、二次側成形品で略覆うようにした二色成形品において、
前記一次側成形品は、
一次側ベース部と、
前記一次側ベース部の意匠面側から突出し、文字ないしは図形等の装飾部を構成する一次側装飾用凸部と、
前記一次側ベース部から立ち上がる立上面と、
前記立上面と交わるとともに、前記一次側ベース部から立ち上がる交差面と、
前記立上面及び前記交差面とで少なくとも囲まれ、一次側装飾用凸部の外側に位置する前記一次側ベース部上の袋小路部と、
前記袋小路部に形成され、前記一次側ベース部の意匠面側から裏面側に貫通する二次側樹脂流動路と、
前記一次側ベースの裏面側から突出し、前記二次側樹脂流動路の周囲を囲む防護壁とを有し、
前記二次側成形品は、
前記一次側ベース部の意匠面側から充填され、前記一次側装飾用凸部の周囲を覆う意匠面側成形部と、
前記一次側ベース部の意匠面側から裏面側に回り込み、前記一次側ベース部の裏面側を覆う裏面側成形部と、
前記二次側樹脂流動路を意匠面側から裏面側に流動し、前記防護壁をはさんで前記裏面側成形部と離れて点在する点在成形部とを有することを特徴とする二色成形品。
【請求項2】
請求項1に記載の二色成形品であって、
前記意匠面側成形部の体積と、前記裏面側成形部の体積との体積比を同等に設定していることを特徴とする二色成形品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の二色成形品であって、
前記交差面は、
前記立上面と直角又は鋭角的に交わっていることを特徴とする二色成形品。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の二色成形品であって、
前記交差面は、
前記立上面の両側に位置し、
前記袋小路部は、三方が囲まれていることを特徴とする二色成形品。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の二色成形品であって、
前記二次側樹脂流動路は、
前記立上面又は前記交差面のいずれか一方に面していることを特徴とする二色成形品。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の二色成形品であって、
前記防護壁は、
筒形に形成されていることを特徴とする二色成形品。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の二色成形品であって、
前記防護壁は、
隣接する2個以上の前記二次側樹脂流動路にまたがって形成されていることを特徴とする二色成形品。
【請求項8】
一次側成形品の周囲を、二次側成形品で略覆うようにした二色成形品の製造方法において、
一次側ベース部と、
前記一次側ベース部の意匠面側から突出し、文字ないしは図形等の装飾部を構成する一次側装飾用凸部と、
前記一次側ベース部から立ち上がる立上面と、
前記立上面と交わるとともに、前記一次側ベース部から立ち上がる交差面と、
前記立上面及び前記交差面とで少なくとも囲まれ、一次側装飾用凸部の外側に位置する前記一次側ベース部上の袋小路部と、
前記袋小路部に形成され、前記一次側ベース部の意匠面側から裏面側に貫通する二次側樹脂流動路と、
前記一次側ベースの裏面側から突出し、前記二次側樹脂流動路の周囲を囲む防護壁とを有する前記一次側成形品を、一次成形し、
可動側金型を、前記一次側ベースの裏面側から離隔させる方向に後退させることで、
前記一次側ベース部の意匠面側から充填され、前記一次側装飾用凸部の周囲を覆う意匠面側成形部と、
前記一次側ベース部の意匠面側から裏面側に回り込み、前記一次側ベース部の裏面側を覆う裏面側成形部と、
前記二次側樹脂流動路を意匠面側から裏面側に流動し、前記防護壁をはさんで前記裏面側成形部と離れて点在する点在成形部とを有する前記二次側成形品を、二次成形したことを特徴とする二色成形品の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の二色成形品の製造方法であって、
前記可動側金型には、
前記二次側樹脂流動路にはまり込むスライドコアを有し、
前記可動側金型の後退時に、
前記スライドコアを後退させることで、前記一次側ベース部の意匠面側から充填され二次成形樹脂を、裏面側に流動させるようにしていることを特徴とする二色成形品の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の二色成形品の製造方法であって、
前記可動側金型には、
前記二次側樹脂流動路にはまり込むスライドコアを有し、
前記可動側金型の後退時に、
前記スライドコアを後退させるとともに、後退させた当該スライドコアを前記二次側樹脂流動路内に留まらせるようにしていることを特徴とする二色成形品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−156836(P2011−156836A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22714(P2010−22714)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】